Coolier - 新生・東方創想話

少女と猫の物語

2009/02/22 19:53:59
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 今日も八雲家の一日はつつがなく過ぎていく。
「らんさま~今日もご本を読んで欲しいです」
「よ~しじゃあこれを読んだらちゃんと寝るんだぞ?」
八雲家の一室である橙の部屋には寝巻き姿の藍と橙が布団の中に入っていた。
藍の手には一冊の本があった。つい最近藍は橙に絵本を読み聞かせてからというもの、橙は絵本の魅力にとりつかれ、毎晩寝る前に一冊の絵本を読んでもらっていた。

「今日のご本はなんですか?」
「今日は、とある少女と猫の物語だよ。じゃあ読むぞ」





その昔、あるところに一人の無口な少女と一匹の猫がいました。
少女はある理由で村の皆から恐れられていたそうです。
今日は自分でも驚くくらい料理が美味しくできたのでおすそ分けをしようと
村に配りに行こうと料理を持って少女は家を出ました。
ところが隣の家や向かいの家に声をかけても誰も出てくれません。
そのうちどこかから小石が飛んできて少女にあたりました。
少女はそれでも村人から嫌われているのを我慢して村中を回りました。

結局料理は誰ももらってくれませんでした。
しかし少女は悲しくなんかありませんでした。
少女にはいつもそばにいてくれる猫がいたからです。
少女が家に帰ると猫が一鳴きして迎え入れてくれました。
少女はすっかり冷め切ってしまった料理を火にかけ温めなおしました。


それから何日かたったある日のことでした。
少女が住む村に一つの噂が流れてきました。
それは鬼が暴れて村という村に悪さをしているという噂でした。
それを聞いた少女は猫を連れて鬼を退治しに行きました。
武器を何も持たない少女は村から村へと噂を聞いては歩き続けました。


ある村に入った少女はそこで今日の宿をとろうと村人に事情を説明して泊めてもらいました。
少女が噂のことを聞くと家人は不思議がりました。
少女が鬼を退治しようとしていることを話すと家人は頑張ってねとだけ言ってくれましたが少女には全て分かってしまいました。
その家人が心の中では少女の事を馬鹿にしていることが分かってしまったのです。


少女には心を読むことができるという特殊な力がありました。
そしてみんなの嘘を見透かしていると次第に村から孤立していったのです。
少女はそれでも心が読めるということを隠さずにその村で過ごしました。


そしていく日かたったある夜、ついに鬼が少女の泊まっていた村にもやってきました。
村人たちは玄関の戸を閉めて必死に声を押し殺しました。
その中で少女だけが村の外に出て鬼を待ち続けました。
傍らには少女にいつもくっついてきた一匹の猫が寄り添っていました。
鬼は少女よりもひとまわりもふたまわりも大きくて少女は鬼を見上げながらこういいました。

「村の人に悪さをしないで」


しかしそれを聞いた鬼はニヤリと笑みを浮かべ問答無用で少女に襲い掛かってきました。
だけど少女は鬼がどう攻撃してくるのかが分かっていました。
心が読める少女には鬼の攻撃は効きませんでした。
でもただ避けているだけでは鬼は倒せません。少女は鬼の記憶から弾幕を再現してそれを鬼へとぶつけました。
自分の弾幕がそのまま返ってきた鬼は慌てて避けようとしましたが間に合わずに地面に倒れました。
ボロボロになった鬼に近づいた少女は鬼を一瞥するとすぐに背を向けて去ろうとしました。


そして少女が後ろを振り向くのと猫が少女に向けて駆けていくのと鬼が少女に攻撃しようとするのはほぼ同時でした。
猫が少女の胸にありったけの力でぶつかると少女は身体はのけぞるように1歩後ずさりました。
そして今まで少女の身体があった場所を鬼の大きな手が横なぎに通過していきました。
猫は鬼の大きな手で少女の身代わりに空のかなたまで飛んでいってしまいました。

それ以降鬼が動くことはありませんでした。
少女は鬼に勝って村という村の平和を取り戻しました。
それをこっそり見ていた村の人たちは大喜びして少女を迎えにいきました。
みんなが少女を歓迎して宴を開こうと言ってくれました。
その言葉に嘘はありませんでした。

少女は嬉しかったのですが少女の身代わりとなった猫を探したかったのです。
いつも隣にいてくれた猫。寂しいときも辛いときも傍らにはあの猫がいました。
孤立していた少女の唯一の友達だった猫。
少女は村人たちにどこかへ飛ばされてしまった猫を探すことを伝えて名残惜しくも村を出発しました。
少女は今も猫を探し続けています。
猫は生きているのかどうかさえもわかりませんがそれでも少女は猫を探し続けます。
いつか人のいないところで一緒に住もうと心に決めて・・・・・・



「おしまい・・・・・・っと」
絵本を閉じた藍は橙の方を見るとすやすやと寝息を立てていました。

「ふふ・・・・・・お休み橙」
初めまして。ということで初投稿です。絵本風にしてみましたけどいかがだったでしょうか?今日は猫の日ということで猫を登場させたかった・・・んですが登場シーンがえらく少なくなってしまいました(笑
まぁそんなこんなでたのしんで頂けたら幸いです。

あ・・・ちなみに今日は食器洗い乾燥機の日でもあるんですよー・・・
え?そんな事はどうでもいい?・・・サーセンorz
PONZA
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