Coolier - 新生・東方創想話

紅魔館・月光祭

2004/10/11 09:27:31
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 今日は紅魔館を上げてのイベント、『月光祭』の日。紅魔館の使用人一同とレミリア様
は、当然このイベントの成功のために尽力している。私・紅美鈴(ホン メイリン)もこ
の日は一段と張り切って仕事をしている。咲夜さんは私よりもさらに張り切りすぎている
のか、さっきからあちらこちらで姿を見かける。
 『月光祭』は年に3回、紅魔館のうち玄関ホールとその隣の大食堂、そして廊下の一部
を開放し、参加者が思い思いの展示やら発表やら講演やらをするというイベントである。
フリーマーケット気味に物々交換をする者、歌を聴けとリサイタルを行う者、自慢の人形
やら料理を展示する者と十人十色だが、毎回開放しているスペースが人やら妖怪やらで埋
めつくされ移動にも一苦労するほどの盛況である。

 今日の私は、門番だけでなく雑務全般も行っている。とにかく手が足りないのだ。何せ
紅魔館が大々的に人を招く機会である、ただでさえ珍しがって入ってくる人間が絶えない。
出展者の準備の時間に出展者じゃない者が会場内にいるのも迷惑なので、とりあえず今は
ホール・大食堂入り口の門番兼出展受付案内である。
「申しわ……あ、美鈴か。椅子の貸し出しはどこ?」
さっそく質問が来た。
「事前に申告してない人の分の椅子は、玄関ホールの階段前です」
「分かった。」
 ……彼女は半分人間半分幽霊の妖夢だったか、たしか主人が美食嗜好でその関連の展示
をしてた筈だ。椅子が事前申告じゃないってことは、やっぱり主人の幽々子が申し込んで
手伝いに借り出されたのだろうことが察される。しかし、出展者もやはり見知った顔が多
いのは、主に咲夜さんが宣伝したからであろうか。
 ちなみに今回基本的に、人間の出展者は大食堂、人間以外の出展者は廊下と玄関ホール
に配置してある。やはり妖怪は人間を食うこともあり(一応私も食べられるし)、咲夜さ
んやら私やらが万全の警備体制を強いている。紅魔館の名誉と威信にかけて、この日ばか
りは館の中での殺生は許されないのである。

 おおよそ出展者が出揃い始めたところで、お決まりのおめでたい人間がやって来た。こ
ういうところに参加する人間は得てして祭り好き、同じく祭りを催す人間が宣伝に来ても
おかしくない。そして、そのおめでたい人間……イベントの主犯という意味もあるが、実
際におめでたい服装をしている……がビラをばら撒いている。
「霊夢じゃない、お疲れ様」
「そちらもね。で、首尾はどう?」
「今のところ滞りなしよ」
 そう会話している間に、黒尽くめの魔女と眼鏡をかけた長身の男が視界に入ってくる。
「おう、お疲れ様だぜ」
「っって魔理沙、なんでここに居るのよ」
 そう、ここに魔理沙が居るのは非常に不思議なことである。
「そんなのは私が聞きたいぜ」
 だが、魔理沙もおどける様子はなく、こう答えた。
「……どういうことかしら?」
「昨日帰り際に通行証もらったあとに、霊夢が『ビラ撒くの手伝って』って」
 そして眼鏡の男……これは香霖堂の主人だ、が続けた。
「ツケが溜まっているからな、ちゃんと神社の主らしい事して返してもらわないと」
「今日の手伝いのツケは昼御飯で返すわよ」
「まぁ、お呼ばれしようじゃないか」
「お呼ばれするぜ」
「私もその時間休憩ならご一緒したいんだけど、ちょっと無理そうだわ」
 残念であるが、まぁ咲夜さんの弁当も美味しいので会食は別の機会だ。
「んじゃ、仕事頑張れ美鈴」
「ありがとう~」

 さて、多少ありつつも特に滞りなく開場時間がやって来た。ここからしばらくが正念場
である、訪れる大量の参加者の中でどさくさに紛れて通行証なしで入場しようとする者、
盗みを働く者、人を食おうとする者、こういった連中が居ないかどうか厳しく見張らなけ
ればならないのだ。今日紅魔館に訪れた人間が全員満足して帰ることができること、それ
が今日の紅魔館の住民に課せられた役割であり、また喜びであるのだ。当然私もそのため
に全身全霊をかけているし、咲夜さんをはじめとするほかの使用人達も自分の役割を真っ
当しようとしている。
 幸い、やはり初動に人が殺到し多少の混乱が発生こそしたが、それもレミリア様の察し
ていた程度であり、時間と共に落ち着きを見せた。それでも私達は警戒を怠ることなく、
全ての参加者に今以上の満足を与えられるよう、念を入れての巡回を行う。顔色の悪い参
加者には「大丈夫ですか?」と一声かけ、暇を持て余している参加者には調子を尋ね、床
に落ちているゴミがあればそれを拾いながら歩く。目立つところ目立たぬところ問わず考
え得る範囲で盛り上げる努力をし、また事故の発生防止に努める。


 開催中、全参加者に開示している寄せ書きコーナーがあまりの盛況に書く場所が無くな
ったり、ミニイベントのクイズ大会でちょっとしたハプニングがあったりと、細かいとこ
ろでの粗はあったがほぼ好評のまま閉幕の時間を迎えた。
 咲夜さんのアナウンスが流れるや否や、出展者・閲覧者ともにそそくさと会場を後にす
る。さっきまで出来ていた人溜まりは徐々に小規模に、そして居なくなっていく。大方、
閉場後に何処かで打ち上げをしたりするのだろう。そしてとうとう紅魔館の人間だけが残
された、しかし私達は打ち上げ以前に、まずこの会場の片付けをしなければならない。先
ほどまで喧騒に包まれて居たこの大食堂も、今はただテーブルを戻す作業で生じるわずか
な音が空しく響くのみ。寂しく感じるのは祭りが楽しかったからに他ならないことは分か
っている、でも分かっていてもやはりこの寂しさは堪える。紅魔館が昨日までの姿を取り
戻した時、日はどっぷりと沈んでいた。言いかえればお嬢様の時間とも言える。
「皆、今日はお疲れ様。今晩は咲夜のご馳走よ」
 お嬢様が皆にねぎらいの言葉をかける。さて、咲夜さんは片付けでも陣頭指揮をしてい
たと思うのだが、いつの間に調理したのだろうか。若干疑問に思いつつ、食べ物に手をつ
ける。
「うん、働いた後の料理は美味しい~」
 思わず声に出る。その声に反応したのか、咲夜さんが傍に来る。……いやな予感がする。
「じゃあ、もっと働いてから食べる?」
「え、何のことですか?」
「そろそろ門番の交代の時間でしょ」
「打ち上げはおろか、まだ一口しか食べてないですが……」
「あなたの本職はなんだったっけ?」
「……行って来ます」
「まぁ、そっちが終わったら、ちゃんと美味しい料理をつくったげるから」
 仕方がないとはいえ、こうも急に祭りから日常に戻されるとすこしやるせない。でも、
楽は苦の種苦は楽の種、また次の『楽』までしっかり働かないと。そう思った。


 ……勤務も明け、やっと堂々と食事をとる時間を迎えた私を待っていたのは、昨日の打
ち上げのような豪華な料理ではなく、いつもの食事だった。
「咲夜さん~」
 思わず声が出る。
「ん、どうしたのかしら」
「美味しい料理を作ってくれるんじゃなかったんですか?」
「『空腹に不味いもの無し』、よ」
「そんな……ひどい……」
「でもしっかり平らげてるじゃないの」
「いやまぁ、その」

 紅魔館は今日もいつも通り、湖の傍でひっそりと構えている。次の祭りまで、また変わ
らぬ日常を刻みながら。
「魔理沙~、今は入館禁止よ~」
「ほれ、こいつが目に入らないのか?」
「それは月光祭の入場証、しかも私があげた奴だし」
「まぁ、止められても入るから気にせず邪魔させてもらうぜ」
「ああ、今は掃除中なのに……また咲夜さんに怒られる……」
 そんな日常。
前回没にしたネタ。結局何とかいじって一応の完成……ここのところ割と黒幕で走り回っ
ていたせいもあり、書く気力には事欠かないんですが(むしろ有り余っている)、肝心の
筆が進まず……涙。このテキストも最後の1/4だけで50時間ぐらいかかってるし……
今回もオチて無い気がする。前回は落ちていないと自覚している(涙)。上手に書けない
時もあるさ、そんなときはそのときの自分が出来たのを正直に見せればいいのさ。そして
今回は……はい、どうやらまだスランプです。でも週1のペースは守りたいんで。
そしてそう書いておいて見事にうpするに至れない自分にも涙。
あと、最初に閃いたオチが「アフターイベントで名前を間違えられる」だったとか内緒だ。

閃く力と、それを形にする力。SSを書くには両方必要だなぁと痛切に感じる今日この頃
です。というか、これもSSかどうか怪しいです。ごめんなさいごめんなさいorz
とりあえずイベントスタッフの人に感謝感激雨霰とお疲れ様のねぎらいを、そんな感じ。
って、言い過ぎると知っている人に怒られそうだから上の行は半分ぐらい無かったことに

次回作は黒幕とは関係ないはずですが、いろいろ暗躍しました。パロディの予定です。
来週は2つ書いて、先週の埋め合わせをするつもり。まぁ、やや前後編気味なのですが。
今回の作中に若干ヒントがあります(というより、書き始めた瞬間にこれに匂わせるのを
企んだ)が、関連性は事実上ゼロと言うことで一つ。ちなみにタイトルは「TH○○Q」。

ほなみん@イベント会場で声を大にして叫ぶ程度の能力
Honami.Y
[email protected]
http://www8.plala.or.jp/ganesh/
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コメント



0.630簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
やたらに人間よりの設定に違和感が…
9.無評価いち読者削除
祭りの日に裏方で頑張る美鈴の苦労話、といった作品だと思いますが、全体としてあっさりしすぎな気がします。
やはり、せっかくの「お祭り」という設定なのだから、祭りの中身が描写されていた方が面白いのではと思います。
それがあって初めて、
>寂しく感じるのは祭りが楽しかったからに他ならない
という一文も、意味を持つのでは。
15.無評価名前が無い程度の能力削除
よかったと思います