レティとチルノという仲良しのふたりがいました
しかしあるときふたりは喧嘩をし、絶交してしまいました
それは、まぁ良かったのですが、まもなく春がおとずれ、それにともない冬の妖怪であるレティは消えてしまいました
チルノは大いに悔やみました
「こんなことなら」
「せめて仲直りしておけば良かった!」
そこでチルノは次の冬が来たら、レティに謝ろうと誓ったのでした
ところが、ようやっと冬になったにもかかわらず、レティは現れませんでした
「どうしたっていうんだろう」
「あたしに会うのが嫌で、寝たままなのかしら?」
不安にさいなまれたチルノは、仲間の大妖精に相談しました
大妖精がいうには
「チルノは寝ているとき、どうしたら起きるかしら?」
「そりゃ、大きな音を聞いたりとか」
じゃあ、と大妖精はいうのでした
「とびきり大きな音を鳴らせば、どんな眠りも覚めてしまうというものではないかしら」
「なるほど!」
そこでチルノはめいっぱい大声を張り上げ、叫び、吼え、怒鳴り、唸り、喚きました
ところがしかし、まるでレティが起きてくる気配はなく、ただ大妖精が迷惑がっただけなのでした
「なんてこと」
「あたしの声くらいじゃあ足りないのか……」
そこで騒霊姉妹や夜雀に頼み、大音量で演奏してもらったり歌ったりしてもらいましたが、てんで効果はないのでした
せめて報酬でも出せば、少しは違ったかもしれませんけれど
「頼みにならない連中!」
「いったい、どうすれば……」
そんなおり、ふと小耳にはさんだ話によれば
「魔法使いの魔理沙が、とびきり音の出る魔砲を持っている」
「その音たるや、あまり大きいので魔理沙本人も耳栓なしでは使えないほどだという」
そこでチルノが思うには
「いい話! その魔砲とやらを撃たせれば」
「きっとレティも目を覚ますに違いない」
さっそくすぐさまおっとり刀、魔法使いの棲む森へまっしぐらで駆け寄せるという按配
ちょうど魔理沙はいい具合に、魔砲を試し撃たんとスタンバっている真っ最中
「こりゃラッキー!」
「さぁ、撃ってもらうわよ、魔砲!!」
と突然襲い掛かってきたチルノにも、魔理沙あわてずさわがずたじろがず
「やっぱり的がなくっちゃ」
「試し撃ちも甲斐がないからな!」
とて、魔砲門をギラリと開き、チルノを的に狙い撃ちというところ
しかしチルノもさるものひっかくもの、ヒラリかわしてアカンベー
「そんな程度じゃ話にならない」
「もっともっと撃ってきなさいよ!」
そんなら遠慮もいるまいて、と魔理沙、魔砲門を全開で撃ちまくろうという寸法
魔砲の轟音地を揺らし、天を震わせ雲つんざく、というありさま
「はぁ、はぁ……っ」
「まだ、まだ……っ」
かくも滅法撃たれては、チルノとても無事ならず、いまや焦げやや溶けかけの風情
「フム。なかなか頑張るじゃあないか?」
「ご褒美に、とっておきの一発を、くれてやろう――」
と魔理沙、魔砲門を回転させつつ、最大出力でぶっ放してくれようという態勢です
「恋魔砲――」
「――『ファイナル・ノンディクショナル・イリュージョンスパーク』」
ふた筋の光芒が渦を巻き、爆音ともなう閃光となってほとばしり、目くるめく白い壁と化してチルノを覆いつくそうという様相
チルノもはや浮かぶのがやっと、光の束に巻き込まれ、チリとなルノは必至の情勢
「レ」
「テ」
かすれた声も地鳴りに呑まれ、寂滅消滅影もなし
魔理沙耳栓外し辺りを見渡し、鼻を鳴らし
「逃げ足のはやい――」
「……連中だな」
しかし彼女はそれ以上、この件を考えることはできずじまい
なんとなれば今まさに、森の住人七色魔女が、騒音に抗議せんものと人形引き連れ、押し寄せてくるところだったので
「やれやれ、どうしてくれる」
「こっちは、弾切れだぜ……」
はや雨よあられよと飛び来る魔弾をかわしつつ、魔理沙はぼやくことしきり
それを遠目に眺めつつ、間一髪でチルノを救った大の寝坊屋レティはといえば
「喧嘩するほど」
「仲が良い、というものよね」
なんてことを、ぽつりとつぶやいているのでした
しかしあるときふたりは喧嘩をし、絶交してしまいました
それは、まぁ良かったのですが、まもなく春がおとずれ、それにともない冬の妖怪であるレティは消えてしまいました
チルノは大いに悔やみました
「こんなことなら」
「せめて仲直りしておけば良かった!」
そこでチルノは次の冬が来たら、レティに謝ろうと誓ったのでした
ところが、ようやっと冬になったにもかかわらず、レティは現れませんでした
「どうしたっていうんだろう」
「あたしに会うのが嫌で、寝たままなのかしら?」
不安にさいなまれたチルノは、仲間の大妖精に相談しました
大妖精がいうには
「チルノは寝ているとき、どうしたら起きるかしら?」
「そりゃ、大きな音を聞いたりとか」
じゃあ、と大妖精はいうのでした
「とびきり大きな音を鳴らせば、どんな眠りも覚めてしまうというものではないかしら」
「なるほど!」
そこでチルノはめいっぱい大声を張り上げ、叫び、吼え、怒鳴り、唸り、喚きました
ところがしかし、まるでレティが起きてくる気配はなく、ただ大妖精が迷惑がっただけなのでした
「なんてこと」
「あたしの声くらいじゃあ足りないのか……」
そこで騒霊姉妹や夜雀に頼み、大音量で演奏してもらったり歌ったりしてもらいましたが、てんで効果はないのでした
せめて報酬でも出せば、少しは違ったかもしれませんけれど
「頼みにならない連中!」
「いったい、どうすれば……」
そんなおり、ふと小耳にはさんだ話によれば
「魔法使いの魔理沙が、とびきり音の出る魔砲を持っている」
「その音たるや、あまり大きいので魔理沙本人も耳栓なしでは使えないほどだという」
そこでチルノが思うには
「いい話! その魔砲とやらを撃たせれば」
「きっとレティも目を覚ますに違いない」
さっそくすぐさまおっとり刀、魔法使いの棲む森へまっしぐらで駆け寄せるという按配
ちょうど魔理沙はいい具合に、魔砲を試し撃たんとスタンバっている真っ最中
「こりゃラッキー!」
「さぁ、撃ってもらうわよ、魔砲!!」
と突然襲い掛かってきたチルノにも、魔理沙あわてずさわがずたじろがず
「やっぱり的がなくっちゃ」
「試し撃ちも甲斐がないからな!」
とて、魔砲門をギラリと開き、チルノを的に狙い撃ちというところ
しかしチルノもさるものひっかくもの、ヒラリかわしてアカンベー
「そんな程度じゃ話にならない」
「もっともっと撃ってきなさいよ!」
そんなら遠慮もいるまいて、と魔理沙、魔砲門を全開で撃ちまくろうという寸法
魔砲の轟音地を揺らし、天を震わせ雲つんざく、というありさま
「はぁ、はぁ……っ」
「まだ、まだ……っ」
かくも滅法撃たれては、チルノとても無事ならず、いまや焦げやや溶けかけの風情
「フム。なかなか頑張るじゃあないか?」
「ご褒美に、とっておきの一発を、くれてやろう――」
と魔理沙、魔砲門を回転させつつ、最大出力でぶっ放してくれようという態勢です
「恋魔砲――」
「――『ファイナル・ノンディクショナル・イリュージョンスパーク』」
ふた筋の光芒が渦を巻き、爆音ともなう閃光となってほとばしり、目くるめく白い壁と化してチルノを覆いつくそうという様相
チルノもはや浮かぶのがやっと、光の束に巻き込まれ、チリとなルノは必至の情勢
「レ」
「テ」
かすれた声も地鳴りに呑まれ、寂滅消滅影もなし
魔理沙耳栓外し辺りを見渡し、鼻を鳴らし
「逃げ足のはやい――」
「……連中だな」
しかし彼女はそれ以上、この件を考えることはできずじまい
なんとなれば今まさに、森の住人七色魔女が、騒音に抗議せんものと人形引き連れ、押し寄せてくるところだったので
「やれやれ、どうしてくれる」
「こっちは、弾切れだぜ……」
はや雨よあられよと飛び来る魔弾をかわしつつ、魔理沙はぼやくことしきり
それを遠目に眺めつつ、間一髪でチルノを救った大の寝坊屋レティはといえば
「喧嘩するほど」
「仲が良い、というものよね」
なんてことを、ぽつりとつぶやいているのでした
これほどに適当に適切に感じられるという旨さ。
氏の作品は寿司ネタのようにヴァリエーションに富んでおられて、
そのどれもが江戸っ子のように気風が良い。
そのせいで、ついつい食べ過ぎてしまいます。ごっそさんした。
でも情景が浮かんでくるような流れは、さすがはレティとチルノを書かせたら右に出る者はいないであろうSTRさんですね。