東方永夜抄のアフターストーリー的なものです
まぁ、じっさいかなり短いですけど
○
なぜ人は永遠でないのか
それは人の弱さゆえその重みに耐え切れないから
それならば
永遠をその身に宿したものたちは
これからどう生きるのだろう
ただただ無限にある時間を消費するだけ
そんなものに意味などあるのだろうか
◇
美しい月が満ちた中、小高い丘で二人がその光を見つめていた
『月』
輝夜にとってその月は故郷である
しかし実際には帰りたいとも思っていない、地上の暮らしが好きだから
今の生活で十分だったから
幻想郷に移り住んだ彼女らは今は土地を変えたりせずただただ平穏に過ごしていた
とはいったものの輝夜は今隣で座っている妹紅と殺しあうのが日常だが
それも輝夜自身暇つぶしにはなるため嫌がるどころかむしろ好んでしているぐらいだ
それに妹紅の方もそれが何よりの楽しみだったりする
喧嘩するほど仲がいいとはこのことか、喧嘩って言うほど可愛いものじゃないけれど
「それで、いったいどんな風の吹き回しだ?一緒に月を見ようだなんて」
「たまにはね、こういうのもいいかと思って」
ただそこに座って月を眺めるだけ、お互い不思議と退屈はしない
「なんだかんだだな私たち、最近そう思うんだ」
「なんだかんだね」
くすりと二人で笑いあう
何か特別なことをする必要もない、殺し合いにしろ月見にしろ
二人でいれれば退屈しない
「なぁ輝夜」
「なに?」
「月に帰ろうとか思わないのか?あんたの故郷だろ」
「そうね、最近帰ってもいいかなとか思ってるのよね」
輝夜が冗談めかして言うと妹紅が突然あせりだす
「ちょ、ちょっと待てよ、私が怖くなって逃げるっていうのか?」
「そうね、そういうことにしておくわ」
「・・・っ」
悲しい目をする妹紅、それを見た輝夜は可笑しくなって耐え切れずに笑ってしまった
「な!笑うことないだろ・・・私は―――」
「冗談よ、月に戻っても退屈なだけだろうし、ここにあなたや永琳といたほうがおもしろいわ」
「なんだよ、それ、まるで私といると楽しいみたいなこと言ってないか?」
「楽しいわよ、だって、あなたといてつまらなかったためしがないもの」
「奇遇だな、私もだよ、だからあんたに月に帰られると困るんだよ」
「それはないわね、多分、もう私は一生見るだけだと思うわ」
「終わりのない一生だから、もしかしたらいつか帰りたくなるかもな」
「私は未来とか過去の話が嫌いなの、どうせ永遠に訪れるものなんだから、大事なのは“今”よ、“今”はこの一瞬にしかないもの」
「確かにな、その今も過ぎ去ってしまえば過去の話、実にあんたらしいよ」
「永遠の私たちにとって唯一限りあるものよね、この一瞬は」
「だな、私もあんたが帰っちまうことを心配するんじゃなくて、あんたとこうしていれる“今”を大切にするよ」
「それこそあなたらしからぬ発言ね」
「私にもたまにはという時があるんだ」
そこで二人とも黙ってしまい、夜空に輝く星と蒼い月を眺めていた
その沈黙を破ったのはぐきゅるる~という妹紅のお腹の音
「はははっ、なによそれ!」
「しょうがないだろ、腹減ったんだよ」
「お腹はすいても死にはしないわよ」
「あたりまえだ、何しても死ぬかバーカ」
「そうよね、それじゃそろそろ帰りますか」
「なぁ」
「なに?」
「またいつか、一緒に月見ないか?」
「そうね、気が向いたら、どうせ時間なんていくらでもあるんだから」
そういうと輝夜は手を振って永遠亭に戻っていった
◆
「ねぇ、永琳、あなたはずっと私と一緒にいてくれるの?」
「いきなりどうしたんですか?」
「いや、ちょっと妹紅と話してね、思ったのよ、あなたたちがいるなら永遠も悪くないかなって」
すると永琳はニッコリと微笑んで
「そうですね、姫や優曇華、てゐと一緒なら、確かにそれも悪くないですね」
「そもそも私たち、最後にはどうなるのかしらね」
「最後すらきませんよ、ずっとこのまま何も変わらないでしょうね、それにしても姫の口から未来の言葉が聞けるなんて」
「ちょっと確認したかっただけよ」
「そうですか」
表情こそ変えていないものの永琳はちょっとだけ嬉しそうだった
永琳は月の都を裏切り輝夜についた身、自らも蓬莱の薬を服用し不死の存在であった
だから輝夜の言葉がとても嬉しくて
彼女はこれからも輝夜のそばにいることを再確認したのであった
「ねぇ、永琳」
「なんですか?」
「料理、教えて欲しいの」
◇
それから1ヵ月後の満月の日、再び妹紅と輝夜はあの丘に月を見に来ていた
「今度はあなたからのお誘いだったからね、ちょっとお弁当を作ってみたのよ」
「あんたがか?正気か?」
妹紅としては実際にはすごく嬉しいのだが『輝夜が作った』のワードがものすごく気になるのだ
なんたってお姫様だから、自分で料理したことなど生まれてこの方あるのだろうかと不安になっていた
「失礼ね、一応永琳に習ったんだから大丈夫よ」
「それじゃあいただこうか、って・・・おにぎりかよ・・・」
「なによ、嫌いなの?」
「いや・・・おにぎりを習うってなぁ・・・」
と、恐る恐る口にする
「以外に美味いな、具なしで塩だけってのもいい」
「ありがとう、私頑張ったのよ」
妹紅は輝夜が嬉しそうだったのでちょっとだけからかってみようと思った
「あんた最初塩と砂糖間違えたりしなかったか?」
妹紅としては鎌をかけるつもりだったのもあるし、まさかそこまで何も知らないわけはないと思って聞いてみたが
「あら、よくわかったわね、だって同じ白い粒じゃないの」
なんていうからそれを聞いた妹紅は突然ほかのおにぎりが怖くなってきた
これはたまたま永琳が作ったもので輝夜の作った『ハズレ』があるかもしれないからだ
「ほら、ご飯粒ついてるわよ」
そういって妹紅の口元に指を伸ばしそれをぬぐって自分の口に入れた
妹紅はなんだかすごく恥ずかしくなって顔を真赤にしながら照れ隠しに月を見ていた
「なぁ、あんたはこの前帰らないって言ってたけどさ、月からまた迎えが来たらどうするんだ?」
「もし迎えがきたら、あなたは永琳みたいに私を守ってくれるのかしら」
「そうだな、こうしてあんたと月を見たり弁当食べたり殺しあったりできなくなるんだな」
「そうね、もう二度と地上に降りてくることはできないでしょうね」
「だったら守るさ、命に代えてもな、ま、代えられる命もあってないようなものだからな、ははは」
「そう」
「あんたがいない、死ねもしない、そんなのは地獄や拷問でしかないからな、ある意味死ぬより怖いよ」
「妹紅、顔貸しなさい」
「お、なんだやろうってのか?」
夜空を包み込む静寂
輝夜の唇が妹紅のそれにそっとふれている
しばらく時も忘れ、ずっとそうしていた二人
蒼く輝く月だけがその二人を見ていた
そうしてどちらからともなく離れては、またふれ合う
「こんなときがいつまでも続けばいいのにね」
「続くよ、永遠にな」
「なんだか結婚式みたいね」
「そうだな、今なら永久の愛とやらを誓ってもいい気分だ」
「人間には無茶な話よね、永久の愛って」
「それぐらい好きってことなんだろ、愛に形はないからもしかしたら永遠なのかもな」
「形あるものにいつか終わりは来る、人だってすぐに散ってしまう儚いもの、だからこそ美しいのね」
「永遠だって美しいだろ、だって好きなことを永遠にできるんだ、時間なんて忘れて、気ままにな」
「あなたらしいわね、それならそのあなたの好きなことに、付き合ってあげるわ、永遠にね」
そうして二人が見上げた月は、いつまでも輝いていて、いつまでもそこにあった
●
生きていくことに意味などない
同時に彼女たちにとって過去や未来も意味がない
だから二人は
今を楽しんでいる
“今”しかないこの一瞬を
終わることのない一生の思い出にして
殺し愛もいいけど、こういった二人も好きですね。
それとこれは最初から疑問というか、思っていたのですが。
地の文の文末に少々、「。」をいれたほうが良い部分もあるかと思います。
読む人によっては違和感を与えたりということもあるでしょうし。
脱字?の報告
>それならそのあなた好きなことに
「あなたの好きなことに」でしょうか?
殺し合いしてない輝夜ともこたんもいいものですね
最後がちょっとほろりときました
いあ~よかったですね~
なんというか、真面目にほのぼの締めた?
あーもう言葉なんていりません、よかったです
おもしろかったね
いつか、この二人は殺し合いはしなくなるんじゃないか、と。
今を楽しむことに気づいた二人は、殺し合い以外の楽しみを見つけ出すんじゃないだろか、と。
まあ、その逆もしかりですが……。
私もそう思います、そしてこの作品は彼女たちの遠い行く末を書いたような話ですね
とても良かったと思います