紫と萃香が熱海へでかけるそうな。
聞くところによると、日頃の骨休めとかこつけて、二人で温泉を渡り歩いてくるらしい。
「一ヶ月は戻らんかんねっ!」と意気込む萃香と、「がんばった自分へのご褒美」と悪びれずに言う紫。
押しかけてくる連中の中でも特にうるさい二人。それが一ヶ月も来ないとなると私も骨休めができそうだ。
というわけで、昨晩はお別れ会と称して思いっきりに呑んだ。呑まれた。寒っ!
「あー、頭いったぁ……。う゛ぁー」
飲んでるときはいいけども、次の日二日酔いになっているときには本当に気持ちが萎える。
居間には空いた酒瓶が所狭しと転がっていて、ついでに紫と萃香も寝転がっている。
重い体を引き摺りながら二人の尻を蹴っ飛ばすと、眼を擦りながらもだらだら起きてきた。
「二人とも温泉行くんじゃないの?」
「温泉でも飲むよぉー、もちろん」
「呑む話をしてるんじゃなくて」
「こう、お湯に浸かりながら日本酒を頂くの。いいわよぉ」
「あーはいはい、さっさといけ」
「霊夢も来ればいいのにー」
生まれてこの方、私は外の世界になんて行ったことはありません。
というか、ホイホイ外の世界に出られると風紀が乱れるからできれば控えてもらいたいのだけど。
今回紫と萃香が温泉に行くということを知っているのは、当人たちを除けば私と藍の二人だけ。
魔理沙だとかの耳に入ったら、当然私も行きたいと騒ぎ出すに決まっているから、このことはもちろん内緒にしてある。
私はその点、原宿という場所は「ヤマンバ」という妖怪が数多く住んでいる魔境だということを知っている。
外の世界にはこのように危険な場所があると紫から教えられており、積極的に出たいとは思わない。
「んじゃぁ、私が結界開くから裏にきて」
「はいはーい」
「お土産買ってくるからね!」
紫の隙間を通ればいつでも行って来れる気がするのだけど、博麗の巫女の承諾を得るのがトレンドなんだとか。
妖怪の美学はいつも人間とはズレていて、その全てを理解することは難しかったし、別に理解したくもない。
ブンブン両手を振る萃香と、大きなバッグを手で提げながら手を振る紫。
申し訳程度に手を振ってやりながら、無理をすれば親子に見えんこともないなとぼんやりと思っていた。
さってと、邪魔者も消えたことだし寝なおしますか。
コタツの中でうとうとしてもいいし、きちんと布団を敷いて寝るのも良い。
冬の朝は空気が澄み切っていて、息を吐くたびに目の前が白く曇る。
余裕があれば楽しめそうな気もするが、目下のところは眠たいのでどうでもいい。
ああ今日は雲ひとつ無いけど寒いなぁ、なんて思うことは本当に瑣末でどうでもいいことなのだ。
「ぉー」
社務所のほうから猫がにゃーおと鳴くような、それよかもっとか細い声が聞こえてきた。
さてはまた、地霊殿から猫が潜りこんできたかそうでなければ空耳か。
いずれにせよ、相手にする気なんて欠片もなくて、寝てからどんな夢を見るかということで頭の中は一杯だった。
声の主を、見るまでは。
「うーうー」
眼を擦ってみたが、それはいなくならない。
しかしたしかに、目の前では萃香が酒瓶へとよじ登っている。
いやいや、萃香がよじ登れるって一体どれぐらいでかい酒瓶なんだろうか。
そんなものが建物の中に入るわけがないし、落ち着いて考えれば答えは至極単純なことだった。
「ちっさっ!」
「おさけー」
掌大のちび萃香が、一升瓶に一生懸命よじ登って蓋を取ろうとしている。
私の姿に気づいているのか気づいていないのか、いや気づいていないんだろうね。ちび萃香はこれ以上ないほどに必死だったから。
例えるならば、牛の赤ん坊が自らの体重をはじめて支えるぐらいに全力で、酒瓶へと立ち向かっていた。
もーうわかった、萃香はちっちゃくなっても萃香なのだ。
体が小さくなったとしても、酒に対する欲望は普段と同じか、いやそれ以上かもしれない。
掌大の体しかないのだから、おちょこ一杯で下手すれば満腹になるだろう容量しか体にはないはずだけど。
一升瓶の蓋を外そうとしている萃香からは、全部飲み干すであろう予感を感じた。
というか、確実に呑む。
「こらっ」
「あーん!」
萃香の背中を掴むと、バタバタと手足を動かして一升瓶を求めている。
ちょっと面白かったのでそのままぶらさげていると、萃香は泣きはじめてしまった。
そんな体でも酒が欲しいか、この鬼は。
呆れながらもあやしているうちに、萃香のトレードマークになっている瓢箪も一緒にミニマムサイズになっているのに気づいた。
それをひょいと摘みあげ、蓋を外してひっくり返すとなんとびっくり、少量ではあるが酒が垂れる。
垂れた酒は萃香が口で受け止め、んぐんぐと喉を鳴らしている。
酒を垂らさないようにすると、小さな体に似つかわしくない大きな瞳に涙を溜め始める。
酒を垂らすと喉を鳴らす。止めると泣きそうになる。飲んだら飲んだで酒臭い息を吐く。
「さけー」
言う台詞と態度がもう少し可愛ければ許せる気がしないでもないのだけど、世の中そんな上手くは出来ていないわけで。
いつまでも摘み上げているのも疲れるので放してみると、まだ中身が入っていたとっくりをひっくり返して転んだ。
しかも、流れ出した酒を見て、「あぁああおさけがあああ」だなんて言いながらまた泣きはじめた。
ちっこくなると、涙もろくなるのかもしれない。
うりうりと指で突っつくと、生きる気力を失ったみたいに全身の力が抜けてた。
「仕方ないなぁ……」
棚の奥にはまだ酒があったはず。自分で飲もうと作った濁り酒だったが、萃香にやるには十分過ぎるものだろう。
それにいつまでも泣いていると、体の水分が無くなって干からびるかもしれない。
そうなってしまえば、本体の萃香が癇癪を起こして神社が吹き飛ぶ、なんてこともありえない話じゃなかった。
泣きっ面に酒である。子供にお酒を飲ますのは道徳上良くないなとは思うけど、それで泣き止むのならば何も問題はない。
現に、お猪口に濁り酒を注いでやった途端萃香は泣き止んだ。実に現金な鬼だ。
あーもう、飲んだら飲んだで満足して寝ちゃったよ。
ひっくり返って鼻ちょうちんを膨らませはじめた萃香。
満足したからといって、おなかを出して寝ていい理由にはなるまいて。
仕方が無いので手ぬぐいを畳み、掛け布団代わりに被せてから、そこにきてようやく眠いことを思い出した。
「あー、寝よ」
敷いてあった布団に潜りこむと、そこからはすっかり温気(ぬくっけ)は抜けていて、くしゃみの一つも二つも出そうになった。
お酒の一杯や二杯も飲めば体は温まるだろうけど、酔いが残ってる体に酒を注ぐような真似はしたくない。
小さいながらも存在感のある寝息を子守唄代わりにしていると、だんだん眠気がやってきて、そのままぽやーんと
ん。
なんか。
鼻が、
苦し
「ぶはっ!」
「おきた、さけー」
なんかやったらめったら小さい萃香に鼻と口を塞がれて起きるウララカな昼。
幻想郷の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
私は萃香の手の届かない場所に酒瓶を吊るし、手を伸ばして跳ねて転げる姿を見ながら遅い朝食を摂っております。
時折私のほうを恨みがましい目で見つめてきたり、ウルウルと瞳を潤わせてきたりしても、折れてしまえば博麗の巫女としての名折れ。
入らないので味噌汁だけを口に運びつつ、懐柔を諦めた萃香が今日何度目かの大ジャンプを決行して失敗。
したたかに鼻を打ち、床につっぷしたまま小刻みに揺れ出した。
あー、まーた、泣いた。
「泣き虫ねぇ」
はぁ、とため息をひとつ吐いたところで泣き止むわけでもなく。紫や本体の萃香が帰ってくるわけでもない。
味噌汁を飲み干してから、しょうがないから背中をつまみあげると、萃香が手で顔を隠した。「はずかしい」だと。
またひとつ大きなため息を吐いてしまった。ばかばかしいほどふてぶてしく酒を求めているくせに、正面から目は合わせられないのか。
怪訝な顔をしているのがツボにはまったのか、今度はケタケタと笑い出した。
もうこのちびっ子、どこかへ放り投げようか。
「えーこちらー熱海ー」
「……」
私ではない。無論、宙吊りにしている萃香でもない。
声は縁側に転がされていた陰陽玉から出てきていた。
ちび萃香を手から離してやると、ちび萃香は陰陽玉に抱きついた。
声に懐かしさでも感じたんだろうか。
「やほー聞こえるー? もう着いちゃったー。寝たりしてない?」
「うおー、温泉でも飲むぞー!」
陰陽玉を魔改造するだなんて、幻想郷広しといえど紫しかいまい。
そんな能天気なバカ二人からの通話ですが、こっちはあんたらの置き土産処理に困っております。
「うー!」
「あら霊夢ったら、やけに甘えん坊な声を出すのね」
「霊夢が幼児化したかー。それもまぁ面白いかもね」
「ぎゃーん!」
あ、縁側から転げおちた。
そのまま階段まで行けばいいのに。
「おぅわ! 赤ちゃんか! 霊夢の赤ちゃんなのか!」
「あらま、誰の子かしら。ちょっと目を離すだけで赤ん坊を産むだなんて最近の若い子って凄いのね」
萃香、あんたの分身だよ。紫もわけのわからないツッコミを入れるな。
このままだと収拾がつかないので、もう何度目かわからないぐらいに泣き喚くちび萃香のために酒を注ぐ。
お猪口を地面に置いてやると、涙目でとことこ駆けてきた。陰陽玉は置いてきた。
「……取りにいくのは私なのねー」
勢い余ってひっくり返してびーびー泣き始めたちび萃香はとりあえずは放っておいて、陰陽玉へと応答することにする。
「はいはいこちら博麗霊夢」
「やっほー、今ひとっ風呂浴びたから、萃香と卓球しようと思ってー」
「負けないぞー! 鬼だけに勝負の鬼って奴だね!」
「テンションたっかぁ、頭にガンガン響くわ」
「まーそっちは元気にやってる? なんか赤ん坊の声が聞こえてきたけど」
「あー、あれ萃香の分身」
「あら? 萃香ー? 萃香どっか行っちゃったみたい。卓球の道具でも借りにいったのかしら」
「ま、うちでしばらく預かってればいいわけ? 回収しにくる?」
「んー、できれば預かっててほしいかな。一度戻るのも骨だし。電車移動って結構時間かかるのよー」
「隙間でいいじゃん」
無茶苦茶な通話をしているとは思うけど、いちいち常識を考えなおしていたら身は持たない。
適度に考えないようにするのが幻想郷で生きるコツなのだ。
「あ、そろそろ十円玉がなくなっちゃう。ばばーい」
「へ? あ? ……切れた」
陰陽玉からはプープーという無機質な音だけが聞こえてくる。
その音もすぐに消えてしまって、萃香のすすり泣きだけが聞こえてきた。
ああもうこいつは、いつまで地面に染み込んだお酒を見ているんだろうか。
ちょっと面白いからいいけどさ。
お茶を淹れて戻ってきても、まだ零した跡を涙を流しながら見ていた。
一杯目のお茶を頂いても、まだお酒の零れた跡を見ていた。
お代わりを飲んでいる途中、魔理沙がやってきた。
降りてくるときに起きた風で、萃香が転がってきた。
摘み上げたらまたバタバタと暴れ出したので、とりあえず膝にのせておくことにする。
「なんだその萃香」
「分身」
「そりゃ見たらわかるぜ。私が聞きたいのは分身だけが膝に乗っかっている現状について知りたいんだ」
「あー……」
本当のことを言ったら面倒くさい。
咄嗟に私は嘘をつくことにした。
「一家に一台萃香の時代なのよ」
あ、滑った。
「勝手に酒を飲まれるマイナス効果しかないと思うんだが……」
「現にうちの消費量も増えてるわ」
「ま、話したくないならいいんだぜ?」
なぜかぽんぽんと肩を叩かれる。
そうか、私の苦労を察してくれたのね。
ありがとう魔理沙、さすがは私の親友だわ。
「うちでは引き取らんからな」
ちくしょうめ。
さとりかお前は。
「大方萃香が忘れてったんだろ。あいつ平気で数ヶ月は消えるからな。
気がついたら天界で桃食ってたり食ってなかったりでようわからん」
隣座るぜ、と魔理沙が腰掛けてきたので、承諾代わりに萃香を放り投げておいた。
「おおい放り投げてやるなよ、可哀想だろ」
「お茶淹れてくるのよ。それに萃香だったらそれぐらい大丈夫でしょ」
「おー。ちっこいなこいつ」
そりゃ掌に乗っかるぐらいだから小さいに決まってる。
魔理沙は面白がって、萃香を宙吊りにして遊びはじめた。萃香も心なしか楽しそうだった。
私はそれを背にして、お茶を淹れに台所へと出向くことにした。
お湯を沸かしている最中、何度か泣き声が聞こえてきたが、それは華麗に無視。
どうせお酒が切れたか魔理沙が泣かせたかのどちらかだろうし。
「おーい霊夢、萃香がお前の湯のみひっくり返したぞ」
ああもう勘弁してください。
「でまぁ、萃香のいない間、その分身はお前が養うってことなのか」
「そういうことになるわねぇ……」
萃香は境内で、陰陽玉を転がして遊んでいた。
私はそれを眺めながら、今日何度目かのため息を吐いた。ため息でそのまま転がっていってしまえばいい。
魔理沙はお茶請けのお煎餅を齧りながら、萃香に向かってお煎餅の欠片を放り投げた。
おっと、見事にキャッチした。
「あんましため息を吐いてると運気が逃げるぜ? いいじゃないか、一風変わったペットが増えたとかそういう風に思えば」
「この前猫が一匹増えたのよ? これ以上居てもしょうがないわ」
「まーでも、放っておいたら鴉にでも連れてかれるぜ?」
「あー……」
萃香は茂みの前でしゃがみこんで、何かを覗き込むようにしていた。
背丈が小さくなると、見えている世界はどう変わるのだろう。
気になるところではあったが、今現在鴉と死闘を繰り広げ始めたところを見る限りは、安穏とは縁遠い世界なのだろう。
拾った小枝を構え、じりじりと一歩ずつ後退していく萃香と、構わず間を詰める鴉。
小石でも投げて手助けしてやろうと腰を浮かせると、それを魔理沙に止められた。
「ちょっと見てようぜ。体の大きい相手にどうやって立ち向かうかが私は見たい。
それにあのチビ萃香だって鬼は鬼だ。下手に手を貸したらきっとひんしゅくを買うぜ」
「なるほど」
無闇やたらに甘えさせたところで得るものもあるまい。
ブンブンと小枝を振り回していた萃香は、ついさっきまで転がしていた物。
陰陽玉の存在に気づいたようだった。
小枝を鴉へと投げつけ、自分の体とさほど大きさの変わらない陰陽玉を持ち上げる萃香。
軽々と持ち上げるあたり、さすがは鬼と言うべきか。
怒ってカァカァと羽を声をあげはじめた鴉へ向かって、萃香が思いっきりに陰陽玉を投げつける。
「うわ」
「うへぇ……鴉が可哀想だぜ」
予想以上にエグいスピードで、陰陽玉が鴉へとぶち当たった。
慌てて、体勢を崩しながらも逃げていく鴉。
追い払うことに成功した萃香は、胸を張り、どこか誇らしそうにしていた。
「なー見たか今の。相変わらずものすげーパワーだな」
「ホント。番犬ぐらいは務められそうね」
「番犬にしては燃費が相当悪いぜ。なんたって、毎日酒を供給してやらなきゃ機嫌を損ねるだろうしな」
「違いないわね」
また萃香は陰陽玉を転がして遊び始めたが、もう少ししたら酒をねだってくるだろう。
ううん。酒の備蓄が足りないかもしれない。
「魔理沙、明日とかってうちにくる用事ある?」
「ああ? 気が向いたなら遊びに来ると思うぜ?」
「うーん、お酒買ってきてくれたら嬉しいなって思って」
「あー。私にお遣いをしてこいっていうことか」
「そゆこと」
魔理沙は大袈裟に、ううんと考える仕草をし始めた。
そこで私は追撃をかける。
「あの子を連れてってもいいんだけど、途中で落っことしたりしたら怖いし」
「巾着袋にでも入れとけばいいんじゃないか? ま、明日来るかはわからんが、買ってくることは了解したぜ」
「ありがと。あんたのほうが足が速いから、頼まれてくれて助かるわ」
「そっちが本音なんだろ? ちび萃香のことなんておまけで」
「だって、寒い中飛ぶのってめんどくさいし」
「あーあ、どうせなら霊夢が私んち来ればいいんだ」
「あんたんち、散らかっててまったくくつろげないじゃないの」
「それを言ったら終わりだぜ」
あ、またこけてる。
「泣くかな?」
「泣かないと思うぜ」
萃香はぐしぐしと目を拭ってから、また陰陽玉を転がしはじめた。
「な?」
「成長したのかしら」
「きっとそうなんだろ、わたしゃ知らん」
魔理沙はそう言って、二枚目のお煎餅に手を伸ばしていた。
魔理沙の食い意地も成長して収まればいいのに。そのことは思うだけにして、口には出さないことにする。無駄な詭弁を今は聞きたくはないのだ。
よっぽど暇なときならば、『もてなされるのが客としての務め。出されたお菓子に手をつけないのは恥』だとか適当な事を喋らせておくんだけども。
……今もよっぽど暇なんだけどさ。
「暇だな、霊夢」
「そうね」
ぼーっと萃香のことを眺めているうちに一日が終わりそうだ。
そんなことを思っているうちに、萃香は四匹の鴉に追い回されていた。
さっき陰陽玉を当てて目を回した一匹が、仲間を引き連れて報復にきたのだ。
仕方が無いので、冬の備蓄の中から干した魚を放り投げてやる。
追い払うだけでは鴉の気も収まるまいとの判断からだった。
「甘いんじゃないのか?」
「まさか」
野にいる動物には恩は売っても、恨みを買うのは利口であるとは到底いえない。
それも鴉となれば、あの厄介極まりない鴉天狗たちの忠実なる僕たちだ。
博麗の巫女は動物を虐待して鬱憤を晴らしている! だなんて記事を書かれた日には、お天道さまの下を歩けなくなる。
さて、鴉たちはもくろみ通り、干物を咥えて去っていった。
散々突っつかれて逃げ回っていた萃香は、大嵐の吹き荒れた後みたいに呆然と座り込んでいる。
その後も何かと面白い萃香を眺め、世間話をしているうちに、いつの間にか日は暮れていた。
夕方になり、魔理沙が帰るというので見送った。また明日もくるかもしれないらしい。
それから思い立ってすることにした居間の片付けは、大層困難を極めた。
なんせところ構わず膨大な量の酒瓶が転がっており、どこから持ってきたのか(萃香が担いできたものだが)甕まで空っぽになって転がっている有様だ。
ため息を吐いたら酒瓶が全て吹き飛ばないかという淡い期待も、馬鹿げた考えだと自分で一蹴した。
ちびぃほうの萃香は、昼間遊んだせいで疲れていたのか、手拭いに包まってウトウトしていた。
邪魔をされるよりはよっぽどいいので放っておいたが、夜中は手拭い一枚では寒いかもしれない。
ううん、風邪をひかれても困るし、足袋の中にでも入れようか。
少し可哀想かなとは思ったけれど、別に可愛がらなければいけないということもあるまい。
結局片づけを完全に終えたのは夜の帳は完全に落ちきったあとで、模様代わりにお星様がぴかぴかと瞬いていた。
「あー疲れた」
コタツの火は既に落としてしまった。
中が温いのももうほんの少しの間だけで、冷める前に布団に入らなければいけない。
ぼんやりと今日あったことを思い返してみると、見事なまでに暇な一日であった。
「ん?」
不意に袖が引っ張られた。
目を向けてやると、萃香がニコニコ笑いながら後ろ手に何かを隠し持っていた。
「何? どうしたの?」
恥ずかしそうに目線を逸らしてから、萃香がちっちゃな掌を開けて、山吹色に輝く粒を数個乗せてきた。
「おれい!」
そのままどこかへ走り去っていく萃香。
と思ったら、柱の陰からこちらの様子を覗っている。
「んー?」
思ったよりもずっと重かった粒を、失くさないようにとりあえず巾着袋に放り込んでおく。
すると萃香がまた小走りで近づいてきて、飛びついてきた。
「だいすき。いっしょに、いてね」
「はぁ」
萃香はまたすぐに離れて、自分の寝床である手拭のほうへと戻って行こうとした。
その小さな背中を、指で摘み上げる。
「うー?」
「そこじゃ寒いでしょ」
今夜はきっと、一年の中でも特別寒くなることが予想された。
その寒さは一人で寝るにはどうしようもなく耐え難い種類の寒さなのだ、たぶんね。
だから、
「一緒に寝るよ」
「うー、おさけー」
「あんたはそればっかりか」
ま、迎え酒も悪くはないかと思いなおし、心元ない量にまで減った濁り酒を取りに棚まで歩いたところで、
今日のところは、おしまい。
でも熱海に行ってる二人の方も気になった。
締めにもそっと薬味が欲しかったかも知れない。
個人的に紫vs萃香の卓球はぜひとも見てみたいものですw
誤字です。後退?
ちっこい萃香にものすごい和んだ!うちにも一匹……いや、酒の面で無理か。
あと、最後のって砂金?
個人的には熱海に行った紫と本体萃香のお話ももっとみたいところ。
これに誰か加わっても大好き。
ちび萃香和むよかわいいよ・・・
素直で泣き虫で頑張り屋さんで・・・もう何も言うことはない・・・
たまにはちゅっちゅ以外も良いもんだ・・・
禁断症状で泣き出す萃香かわいいよ萃香
いい子に育つよ、この子鬼は。
霊夢もこんな感じで育てられたんだろうか。
角だけ霧にしてるのか?
いいなぁ、ちび萃香。昔、酒屋だったので、ウチでなら少しは養えるかも。
続くみたいですので、楽しみです♪
是非、うちにも!
よし、私が変わりに入ろう。
すいむそう魔理沙EDのチビ萃香を幻視した。
つまんで持てる萃香はとってもジャスティス。
外で萃香は角をどうしているのかちょっと気になったw