「無題①」
昼間なのに薄暗い部屋の中、カーテンは今日もその弱みたる宇宙の燃え盛る光を防ぐ。
部屋のベッドには人型の何かが横たわっている。
寝息を立てているので、どうやら睡眠中のようだ。
白い肌、青いような白いような色をした髪、頭の大きさの割りに短い手足。
寝巻きに包まれて、心地よく時折寝返りをうつ。
その幼さに寝姿となれば微笑ましい光景であるが、実際中は殺伐としている。
緊張が張り込める、とでも言うのだろうか。
何より薄暗いとはいえ部屋の中は赤い。
桃色を濃くしたような生易しい色ではなく、黒を紅くしたどす黒い色だ。
家具類はほとんどなく、廊下と部屋を繋ぐ扉も木製の重厚な造りをしているため、さらに緊張を煽る。
ベッドに居る”彼女”は依然としてさほど気にした様子もなく白日の昇り続ける中、寝続ける。
常人には信じられない緊張で寝ているが、彼女にとってそれは日常である。
彼女は吸血鬼であった。
苦手なものが多く退治そのものは非常に簡単な拍子抜けの西洋の妖怪のあれである。
昔は目撃例やらなんやらが多かったこの妖怪も、実のところ居たかどうかは定かではない。
しかしはっきりいえるのが、今日目撃例は無い。
妖怪とは一昔人々の常識では計り知れなかった事柄の原因としてでっち上げられた。
というのが、最近の人々の妖怪への考え方である。
居たかどうかの物的根拠がなく、あっても科学的な調査によって嘘だと面前にさらされる。
それが現状である。
幻想となりて行き場を失ふた魑魅魍魎、妖怪、神、これら己の郷を求め、ある内陸の山奥に逃げけり。
それが、幻想卿の始まりとされる。
後、妖怪の類ばかり集まるその場所の周りに結界を張り、それに便乗して内側から妖怪の類が結界をさらに上書きして、今では完全孤立となっている。
結果の管理は代々博麗神社の者が担っている。
しかし完璧に孤立を保っているわけではない。
結界は世の幻想となったものをいつの間にか吸い込むという特質を持っている。
日本のどこか、内陸の忘れられた土地に幻想卿はある。
そこに流れ水を超えられない、すなわち海を渡れない吸血鬼が居ることが何よりの証拠である。
つまり場所に限らず、全ての幻を吸う地となっている。
どんな忌み嫌われた者でも受け入れ、ある程度の規制と簡単な法があるものの、至って簡単に住める。
まさに人間から嫌われた妖怪の類の楽園である。
唯一ここに住めないものをあげるなら海坊主などの海に住まう妖怪どもだろう。
今彼らがどこに居るのか、海の藻屑となって消えたのか、竜宮城にでも住み込んだかはわからない。
はっきりしているのは、幻想卿に海以外なら全てがそろっている。
山もあり川もあり天もあり地もあり、地底もあり天界もあり冥界もあり、三途の川もあり人里もある。
さらに専属の閻魔様まで居る始末だ。
人間には住み辛いかといえばそうでもない。
簡単な法には、妖怪は無闇に人を襲うことを禁ず、人里に害を与えることを禁ず、とある。
意味は至って簡単、やたら滅多なことが無い限り妖怪から人間に害は及ばない。
随分と昔から孤立していたが、文明も不便で無い程度に発展している。
例をあげるなら江戸時代程度だろうか。
紅い館の部屋で寝ていた彼女は名を「レミリア・スカーレット」という。
この幼い姿で五百年もの時を経てきた正真正銘の吸血鬼である。
といっても吸血鬼にも何種類かいる。
キョンシー、グール、バンパイヤ、世界各地に吸血鬼と呼ばれるものは居る。
この場合の吸血鬼はバンパイヤのことである。
バンパイヤは繁殖方法が故に莫大に種の数を増やせない。
自然の理として、弱いものは繁殖力強力、強いものは繁殖力が貧弱、というものがある。
つまり吸血鬼は強いのだ。
生命力然り判断力然り行動力然り瞬発力然り、全てが動物の上をいく。
繁殖方法は人間の血を飲み干すことで一種の呪いをかけ吸血鬼に変貌させる。
元は人間なのだ。
これは重要事項だ。
元は人間なのである。
元が人間であるため友を求める、恋焦がれる、寂しがるのも道理というもの。
それがいかにアブノーマルなものであっても、である。
今レミリアは一人の人間に恋慕なのか、憧れなのかわからない感情を抱いている。
恋慕だとしたら余りに恥ずかしく、憧れだとしても何か釈然としない。
何せ人間は年端も行かぬ少女であり、レミリアと同姓であり、圧倒的に少女は卑下な存在である。
ただ一緒に居ると楽しいというのか、そんな簡単な感情では無いと思うのだが、実際一緒にいると楽しい。
五百年間にこれまで会ったことの無い人種だった。
少女はまるで暗闇の中を照らし虫らを自然と集めるような光を持っていた。
この場合の虫は彼女のような妖怪の類のことで、光とは少女の特性にあった。
妖怪に一切恐れず、種の違いなど無視した隔たりの無い付き合いをする。
ベッタリというよりはアッサリと、突き放すようなことはないが近づきすぎることもない。
それでいて人間の癖に強い。
スペルカードルールという、妖怪やらと人間どもとが対等に渡り合える決闘方法の発案者も彼女である。
強いだけでなく頭も切れる。
クールで誰にもなびかず切れ者で、妖怪が興味を持たないはずがない人種だった。
実際少女の家には小さい鬼が住んでるし、天狗をはじめとする妖怪もよく出向いていると聞く。
ちなみに彼女は日傘を指していれば昼間の行動も可能なので、この情報は伝聞ではなく経験である。
彼女が少女に興味を持つのは自然な流れだった。
彼女が眠る紅い館の中を縦横無尽に駆け巡る、同じく人間の姿があった。
タイムスリップ、もしくはタイムトラベル、人類の誰かは夢見たことがある能力である。
今日言われなくなったこの夢は幻想と化して、幻想卿にその最後の砦がある。
メイド服を見に纏い、時折消えたように姿を消す。
と思いきや、次の瞬間現れる。
本気を出せばできないことは無い、と言っても過言ではない瀟洒だった。
メイドは瀟洒であり、また最後の砦だった。
その砦はあまりに難攻不落で、落とせたものは未だ居ない。
死を伴わない決闘方式のスペルカード対戦で、前記の少女に負けた以外に敗北は無い。
そのときは自分の能力で広げすぎた空間の掃除に四苦八苦して冷静な判断ができなかったからだろう。
彼女は砦であり、砦の空間は自在だった。
難攻不落もなるほどである。
時間を用いて、空間も自在となってはどんな妖怪も手がつかない。
勝負は四半秒ですら長い。
一瞬というのも甘い。
刹那ではない。
同時である。
攻撃開始とすれすれ同時に終わる。
攻撃開始の瞬間に時を止め、勢いをつけたナイフを心臓辺りにこしらえる。
「そして時は動き出す」──終了だ。
もちろん相手によってはナイフの位置を加減するし、ナイフではなく関節技で締めることもある。
そんな彼女を唯一負かしたのがここに主人であるレミリア・スカーレットだった。
吸血鬼の討伐方法は弱点が多いにも関わらず、あまりない。
心臓に杭を打つか、打ち首しかない。
それ以外では死なない。
たとえ用いたのが聖なる銀製ナイフだとしてもだ。
負けたとき、信じられなかった。
無敵と思い続けてきた自信の戦闘に欠陥を見つけ、勝者ではなく敗者となった。
急所にこしらえたはずのナイフにも屈しず、こちらの首を持たれ、もだえたとき人間はもう私は死んだんだと思った。
しかしそうでもなかった。
人間の背の半分と少しほどの高さの吸血鬼は首を持ち、抱えている様は非常に滑稽であった。
滑稽である以上に畏怖も感じる。
吸血鬼はその姿を一舐めし、明らかに栄養の足りてないその貧相な体を確認し、内に秘められた能力も確認し、そしてこう言う。
「貴女、衣食住の完備された仕事に興味は無いかしら?」
そして現在に至る。
人間が思い返して見ると、なぜ自分が今この状況になれたのか理解できない。
お嬢様の意図の一切が不明。
しかし住むところに困らず、食事にも困らず、服も困らないならそれ以上のことを詮索するのは愚の骨頂という奴だ。
それが誰かの意思なのか、この世の運命なのか、それはレミリアのみぞ知る。
どちらも可能性もあるが、無い可能性もあるが、また両方の可能性でもある。
昼間なのに薄暗い部屋の中、カーテンは今日もその弱みたる宇宙の燃え盛る光を防ぐ。
部屋のベッドには人型の何かが横たわっている。
寝息を立てているので、どうやら睡眠中のようだ。
白い肌、青いような白いような色をした髪、頭の大きさの割りに短い手足。
寝巻きに包まれて、心地よく時折寝返りをうつ。
その幼さに寝姿となれば微笑ましい光景であるが、実際中は殺伐としている。
緊張が張り込める、とでも言うのだろうか。
何より薄暗いとはいえ部屋の中は赤い。
桃色を濃くしたような生易しい色ではなく、黒を紅くしたどす黒い色だ。
家具類はほとんどなく、廊下と部屋を繋ぐ扉も木製の重厚な造りをしているため、さらに緊張を煽る。
ベッドに居る”彼女”は依然としてさほど気にした様子もなく白日の昇り続ける中、寝続ける。
常人には信じられない緊張で寝ているが、彼女にとってそれは日常である。
彼女は吸血鬼であった。
苦手なものが多く退治そのものは非常に簡単な拍子抜けの西洋の妖怪のあれである。
昔は目撃例やらなんやらが多かったこの妖怪も、実のところ居たかどうかは定かではない。
しかしはっきりいえるのが、今日目撃例は無い。
妖怪とは一昔人々の常識では計り知れなかった事柄の原因としてでっち上げられた。
というのが、最近の人々の妖怪への考え方である。
居たかどうかの物的根拠がなく、あっても科学的な調査によって嘘だと面前にさらされる。
それが現状である。
幻想となりて行き場を失ふた魑魅魍魎、妖怪、神、これら己の郷を求め、ある内陸の山奥に逃げけり。
それが、幻想卿の始まりとされる。
後、妖怪の類ばかり集まるその場所の周りに結界を張り、それに便乗して内側から妖怪の類が結界をさらに上書きして、今では完全孤立となっている。
結果の管理は代々博麗神社の者が担っている。
しかし完璧に孤立を保っているわけではない。
結界は世の幻想となったものをいつの間にか吸い込むという特質を持っている。
日本のどこか、内陸の忘れられた土地に幻想卿はある。
そこに流れ水を超えられない、すなわち海を渡れない吸血鬼が居ることが何よりの証拠である。
つまり場所に限らず、全ての幻を吸う地となっている。
どんな忌み嫌われた者でも受け入れ、ある程度の規制と簡単な法があるものの、至って簡単に住める。
まさに人間から嫌われた妖怪の類の楽園である。
唯一ここに住めないものをあげるなら海坊主などの海に住まう妖怪どもだろう。
今彼らがどこに居るのか、海の藻屑となって消えたのか、竜宮城にでも住み込んだかはわからない。
はっきりしているのは、幻想卿に海以外なら全てがそろっている。
山もあり川もあり天もあり地もあり、地底もあり天界もあり冥界もあり、三途の川もあり人里もある。
さらに専属の閻魔様まで居る始末だ。
人間には住み辛いかといえばそうでもない。
簡単な法には、妖怪は無闇に人を襲うことを禁ず、人里に害を与えることを禁ず、とある。
意味は至って簡単、やたら滅多なことが無い限り妖怪から人間に害は及ばない。
随分と昔から孤立していたが、文明も不便で無い程度に発展している。
例をあげるなら江戸時代程度だろうか。
紅い館の部屋で寝ていた彼女は名を「レミリア・スカーレット」という。
この幼い姿で五百年もの時を経てきた正真正銘の吸血鬼である。
といっても吸血鬼にも何種類かいる。
キョンシー、グール、バンパイヤ、世界各地に吸血鬼と呼ばれるものは居る。
この場合の吸血鬼はバンパイヤのことである。
バンパイヤは繁殖方法が故に莫大に種の数を増やせない。
自然の理として、弱いものは繁殖力強力、強いものは繁殖力が貧弱、というものがある。
つまり吸血鬼は強いのだ。
生命力然り判断力然り行動力然り瞬発力然り、全てが動物の上をいく。
繁殖方法は人間の血を飲み干すことで一種の呪いをかけ吸血鬼に変貌させる。
元は人間なのだ。
これは重要事項だ。
元は人間なのである。
元が人間であるため友を求める、恋焦がれる、寂しがるのも道理というもの。
それがいかにアブノーマルなものであっても、である。
今レミリアは一人の人間に恋慕なのか、憧れなのかわからない感情を抱いている。
恋慕だとしたら余りに恥ずかしく、憧れだとしても何か釈然としない。
何せ人間は年端も行かぬ少女であり、レミリアと同姓であり、圧倒的に少女は卑下な存在である。
ただ一緒に居ると楽しいというのか、そんな簡単な感情では無いと思うのだが、実際一緒にいると楽しい。
五百年間にこれまで会ったことの無い人種だった。
少女はまるで暗闇の中を照らし虫らを自然と集めるような光を持っていた。
この場合の虫は彼女のような妖怪の類のことで、光とは少女の特性にあった。
妖怪に一切恐れず、種の違いなど無視した隔たりの無い付き合いをする。
ベッタリというよりはアッサリと、突き放すようなことはないが近づきすぎることもない。
それでいて人間の癖に強い。
スペルカードルールという、妖怪やらと人間どもとが対等に渡り合える決闘方法の発案者も彼女である。
強いだけでなく頭も切れる。
クールで誰にもなびかず切れ者で、妖怪が興味を持たないはずがない人種だった。
実際少女の家には小さい鬼が住んでるし、天狗をはじめとする妖怪もよく出向いていると聞く。
ちなみに彼女は日傘を指していれば昼間の行動も可能なので、この情報は伝聞ではなく経験である。
彼女が少女に興味を持つのは自然な流れだった。
彼女が眠る紅い館の中を縦横無尽に駆け巡る、同じく人間の姿があった。
タイムスリップ、もしくはタイムトラベル、人類の誰かは夢見たことがある能力である。
今日言われなくなったこの夢は幻想と化して、幻想卿にその最後の砦がある。
メイド服を見に纏い、時折消えたように姿を消す。
と思いきや、次の瞬間現れる。
本気を出せばできないことは無い、と言っても過言ではない瀟洒だった。
メイドは瀟洒であり、また最後の砦だった。
その砦はあまりに難攻不落で、落とせたものは未だ居ない。
死を伴わない決闘方式のスペルカード対戦で、前記の少女に負けた以外に敗北は無い。
そのときは自分の能力で広げすぎた空間の掃除に四苦八苦して冷静な判断ができなかったからだろう。
彼女は砦であり、砦の空間は自在だった。
難攻不落もなるほどである。
時間を用いて、空間も自在となってはどんな妖怪も手がつかない。
勝負は四半秒ですら長い。
一瞬というのも甘い。
刹那ではない。
同時である。
攻撃開始とすれすれ同時に終わる。
攻撃開始の瞬間に時を止め、勢いをつけたナイフを心臓辺りにこしらえる。
「そして時は動き出す」──終了だ。
もちろん相手によってはナイフの位置を加減するし、ナイフではなく関節技で締めることもある。
そんな彼女を唯一負かしたのがここに主人であるレミリア・スカーレットだった。
吸血鬼の討伐方法は弱点が多いにも関わらず、あまりない。
心臓に杭を打つか、打ち首しかない。
それ以外では死なない。
たとえ用いたのが聖なる銀製ナイフだとしてもだ。
負けたとき、信じられなかった。
無敵と思い続けてきた自信の戦闘に欠陥を見つけ、勝者ではなく敗者となった。
急所にこしらえたはずのナイフにも屈しず、こちらの首を持たれ、もだえたとき人間はもう私は死んだんだと思った。
しかしそうでもなかった。
人間の背の半分と少しほどの高さの吸血鬼は首を持ち、抱えている様は非常に滑稽であった。
滑稽である以上に畏怖も感じる。
吸血鬼はその姿を一舐めし、明らかに栄養の足りてないその貧相な体を確認し、内に秘められた能力も確認し、そしてこう言う。
「貴女、衣食住の完備された仕事に興味は無いかしら?」
そして現在に至る。
人間が思い返して見ると、なぜ自分が今この状況になれたのか理解できない。
お嬢様の意図の一切が不明。
しかし住むところに困らず、食事にも困らず、服も困らないならそれ以上のことを詮索するのは愚の骨頂という奴だ。
それが誰かの意思なのか、この世の運命なのか、それはレミリアのみぞ知る。
どちらも可能性もあるが、無い可能性もあるが、また両方の可能性でもある。
私にはただそれが起こったことや事実だけを
ただ書いたようにしか見えなかったのですが………。
レミリアのことを書くのならそれだけに絞ったほうが宜しいかと。
最後も尻切れみたいに思えます。
文章自体は悪くなかったと思います。
ただ、話としては微妙といったふうです。
おめでたいですね。
疑問が湧いたら調べて見てください、だと。上から目線なんですね。
こっちが知らないことを前提とした。
行き場に困るような作品をここにあげなくてもいいんじゃないですか?
わざわざ創想話本家に。
古典から順々に文章に慣れていくという斬新な勉強法をしてるんですね。わかります。
見栄えばかりで中身が全く伴っていません。
正直、文章から見える作者像は「ゴミの分別も出来ない潔癖症」というイメージです。
…行き場に困ったら此処に投稿するんですか?
話が見えてこないんだけど……
何にせよ適当に書いた作品を投稿するような場所じゃないので
他所でやるなりしてください