この作品は「作品集56・天人と妖精」の続きになります。
宜しければ先にそちらをご覧になってください。
ある雪の日。
「ん~………晴れた日も良いけど、雪の日も悪くないわね」
天界の天人、比那名居天子は地上へと降りていた。
「まぁ、空を飛ぶにはちょっとアレだけど」
以前にチルノと大妖精と仲良くなって以来、天子はちょくちょく地上に降りるようになっていた。
そして、二人と他愛もない話などをしては去っていく。
刺激的な何かがある訳では無いが、不思議と天子は満たされていた。
「っにしても今日はいつにも増して冷え込んでるわね~」
しかし、常に地上よりも気温の低い天界に居る天子にとってこの程度はどうと言う事はない。
「チルノはまぁ問題ないとしても、大ちゃんがきつそうねぇ………」
そんな事を考えている時だった。
「冷えろ冷えろ~!!」
視界に騒いでいる妖怪が映った。
天子はその妖怪に近づく。
「ちょっとあんた」
「ん?」
天子に呼ばれて妖怪は振り向く。
「この寒気はあんたのせい?」
天子は妖怪に尋ねた。
「ご名答。で、それがどうかした?」
妖怪も天子に聞き返す。
「私の友達があまり寒さに強くないのよ。止めてくれない?」
「そんな事は知らないわよ。冬にしか力を発揮出来ないんだから、そのくらい見逃しなさいよ」
「こっちだってそっちの事情は知らないわ。止めないなら力尽くで止めるわよ?」
「へぇ、面白い。あんたが何者か知らないけど、シーズン中の冬の妖怪をナメない事ね!!」
「ふん。八雲紫クラスの妖怪ならいざ知らず、あんたみたいな下級妖怪など私の相手じゃないわよ」
「上等!!」
妖怪が襲いかかり、天子と妖怪の戦いが始まった。
が、10秒で終わった。
「うぐぁ……………ほ、本当に何者……?」
一瞬でボッコボコにされた妖怪が尋ねる。
「私は天人、比那名居天子。あんたみたいなのが喧嘩売って良い相手じゃないのよ」
「げぇっ!?天人!?」
妖怪が驚くのも無理はない。
妖怪にとって天人は天敵とは言わないが、はっきり言って相手にしても何の旨味もない相手である。
これが人間などが相手であれば、倒した後に食料にしたり、その力を取り込んだりとメリットはある。
が、天人は妖怪にとって毒にしかならない。
しかも、天人は仙人が修業したり、死んだ人間が昇華した存在である為、当然総じて強い。
倒すのにも一苦労。
倒してもメリットなし。
妖怪にとってこれ程嫌な相手も居ないだろう。
まぁ、天子に至っては親のついでに天人になっただけなので昇華した存在でも何でもないが。
しかし、それでも実力は折り紙つきである。
なんせ、幻想郷において上位クラスの者達を数人連続で相手にして全部倒してしまってる程である。
少なくとも、眼前の冬の妖怪の手に負える相手では無い。
「ま、そう言う事だから大人しくしてなさい」
そう言って天子は去って行った。
紅魔館近くの森
「お、居た居た」
天子はチルノ達を見つけて近寄る。
「あ、天子!」
「あ、天子さん。いらっしゃい」
チルノと大妖精が天子を迎え入れる。
「邪魔するわね」
「はい、今お茶をお持ちしますね」
大妖精はそう言ってお茶を取りに行った。
「天子!桃!」
チルノは天子に天界の桃を催促する。
「はいはい。あんた、本当にこれ好きね」
天子は言ってチルノに渡す。
「うん!美味しいじゃない!!」
チルノは満面の笑みでそう返す。
「私は食べ飽きたわよ」
天界には殆ど食べ物が無いのだから仕方がないと言えば仕方がない。
「はい、お茶持ってきましたよ~」
そして大妖精がお茶を持って現れた。
「ありがと。しかし、大ちゃん、厚着ね~」
大妖精はいつもの様な薄手の服で無く、上に何枚か羽織っている。
「今日は雪の所為(せい)か、いつもより冷え込んでるので」
加えて近くに氷精たるチルノが居れば当然だ。
が、大妖精は勿論、天子もその事には触れない。
悪く言えば単純、良く言えば純粋なチルノにそう言えば、気にして会わなくなる事すらあり得るからだ。
「天子さんは寒くないんですか?」
お茶を置きながら大妖精は尋ねる。
「私の住んでる天界は山よりもっと上にあるからね」
基本的に高度が高くなればなるほど気温も下がる。
山のさらに上空にある天界ともなれば、その気温は如何ほどの物であろうか。
そこに常時住んでいる天子に取って天界の寒さなど大した事もないのだろう。
「でもまぁ、こう言った景色も見れないから面白みに欠けるけどね」
そう言って天子は辺りを見回す。
まだ積もってはいないが、ちらほらと辺りが白く染まっていく。
「天子の住んでる所って雪降らないの?」
チルノが尋ねる。
「天界は雲より上だから雪なんて降らないわ」
天子はそう返す。
「雲より上だと雪が降らないの?」
「雪って雲から降ってるのよ?」
「そうなの!?」
天子の返答にチルノが驚く。
「そうだよ、チルノちゃん。私も詳しくは知らないけど、空が物凄く冷えると雨が雪に変わるんだって」
大妖精がそう言う。
「ま、詳しく言うと少し違うけど、大体そんな感じよ」
天子もそう言った。
「あ、雪と言えば、レティ来るかな!?」
チルノが思い出したように叫ぶ。
「あ、来るんじゃないかな。今日寒かったし」
大妖精もそう言う。
「レティ?」
聞きなれない単語、と言うか人名に天子は聞き返す。
「そう、レティ!友達よ!!」
チルノがそう返す。
「雪って言ってたけど、雪の妖精か何か?」
天子は再度尋ねる。
「いえ、レティちゃんは妖精で無く……」
大妖精が言い掛けた時
「ったくもう………最悪だわ」
声が聞こえて来た。
「あ、レティだ!」
「でも、この声の調子は………」
声のした方を向いてチルノと大妖精が言う。
(…………この声………まさか)
天子は聞き覚えのある声に考えを巡らせる。
「お邪魔するわよ、チルノ、大ちゃん」
ボロボロの姿の先程の冬の妖怪が姿を現した。
「ど、どうしたの!?」
「レティぼろぼろ!!」
大妖精とチルノもその姿に驚く。
「いや~、それがさぁ」
レティが喋ろうとした時。
「やっぱりね……あんただったの」
天子がそう言う。
「ん?……………あんた!!さっきの!!!」
レティが天子を指さして叫ぶ。
「人に対して指を向けるなんて礼儀がなってないわね」
天子はお茶を飲みながらそう返す。
「うっさい!何であんたがここに居るのよ!!」
「何であんたに文句言われなきゃならないのよ」
叫ぶレティに天子も返す。
「て、天子さん?レティちゃん?」
行き成り言い合いを始めた二人に大妖精が驚く。
「どったの?二人とも」
チルノも不思議そうな顔してる。
「どうしたもこうしたも………こいつにやられたのよ!!」
レティは叫ぶ。
「あんたが鬱陶しい事してるからでしょう」
寒気を強めている事を言わなかったのはチルノの手前ゆえだ。
「冬の妖怪が冬の妖怪らしい事して何が悪いって言うのよ!!」
「寒い」
ズバッと天子は言う。
「んが…………」
あっさりと返されてレティも一瞬言葉を失う。
「ねぇ、大ちゃん。前に聞いてた新しい友達ってまさか………」
レティは大妖精に尋ねる。
「うん、天子さんの事」
「天人じゃん!!」
レティは叫ぶ。
「天人だったら何なのよ?」
天子が尋ねる。
「なんで天人が地上に居んのよ。普通天界で歌って踊ってるもんじゃないの?」
「そんなの私の勝手でしょう」
レティの言葉に天子はそう返す。
「ふ、二人とも落ち着いて…………」
大妖精がなだめようとする。
「…………ふん」
天子は視線を外してお茶を飲む。
「っく」
大妖精が割って入ったお陰で何とか一触即発の雰囲気は収まった。
が、依然重い空気が流れている。
「ほら、レティちゃん、治療しないと」
「あ、うん」
大妖精がレティの怪我の治療をする。
暫く無言の時が流れたが
「帰るわ」
気まずくなったのか、天子がそう言って席を立った。
「あ、天子さん!?」
「気が向いたらまた来るわ。じゃあね」
天子はそう言うと振り向きもせずに去って行った。
「天子さん…………」
大妖精が天子の背中を見送る。
「どうせ天人なんて私達の事なんか気にしてないっての」
そんな大妖精にレティが言う。
「違うよ!天子さんはそんな人じゃないよ!」
が、それに大妖精はそう返した。
「そうだよレティ!天子は悪い奴じゃないわよ!!」
チルノもそう叫ぶ。
「う……わ、悪かったわよ」
二人にそう叫ばれては、そう返すしかないレティだった。
それから暫くの間、天子は地上に降りなかった。
何度かチルノや大妖精に会おうと思ったが、レティと鉢合わせたらと思うとどうにも行けなかった。
別段、レティを力尽くで排除するなど天子には容易い。
が、そんな事をすれば大妖精やチルノに嫌われるのは火を見るより明らかだ。
とは言え、うっかり鉢合わせたりすれば、また気まずい空気になる。
「何を悶々としてるのか知れないけどさ~」
突如響いた声。
天界に居候している鬼の伊吹萃香だ。
「気晴らしに地上に行って来れば~?」
萃香はそう言う。
「それが出来ればとっくにそうしてるわよ」
「ふ~ん」
天子の返答に萃香は興味無さ気に返す。
「ったく…………」
そう呟きながら天子は地上を見下ろす。
「あ~………もう!なんでこうなるのよ!!」
レティは叫ぶ。
「あんたが無意味に寒気を撒き散らすからでしょ」
そう言ってレティの前に立ちはだかっているのは、博麗の巫女、博麗霊夢だった。
「冬が寒いのは当り前じゃないの!!」
「だからって余計に寒くする事無いでしょ!!」
「そんなに寒いなら家に閉じこもってりゃ良いでしょう!?」
「家に居たらあんたが見えたから退治しに来たのよ!!」
「放っておいてよ!!」
「だが断る!!」
レティは霊夢に抗議するが平行線を辿るばかりだ。
「あんたを倒せば少しはマシになるでしょうから…………」
「げっ!?」
霊夢に霊力が集中し、焦るレティ。
「大人しく退治されなさい!!夢想封印!!」
「っきゃああぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドゴォォォォォォンッ!!!
極彩色の霊玉がレティに命中した。
「う~………寒っ!どうせならもっと体動かしておくべきだったかしら?」
そう言って霊夢は神社の方へと振り返る。
「なら、少し私と遊んでく?」
が、不意に響いてきた声に再び振り向く。
「あ、あんた…………」
レティが驚いたような声を出す。
「天子?なんのつもり?」
夢想封印からレティを庇った天子を見て霊夢が訝(いぶか)しそうな顔で尋ねる。
「ちょっとした知り合いでね。弱っちぃから私が助けてやるべきだと思ったのよ」
天子はそう返す。
霊夢は頭に?を浮かべて居る。
「だ、誰が助けてって言ったのよ!!」
「勘違いしないでくれる?あんたなんてどうでも良いのよ。ただ、あんたが傷つくと大ちゃんとチルノが悲しむでしょ。それが嫌なだけよ」
天子はレティにそう返す。
「なんだか良く解らないけど、つまり、私とやり合おうって事?」
「寒いんでしょ?動いたら温まるわよ?」
霊夢と天子が対峙する。
「へぇ………私もそう思ってた所よ。良いじゃない、やりましょう」
妖怪退治を邪魔されたからであろうか、霊夢は速攻戦闘態勢に移行した。
「来なさい。遊んであげるわ」
そう言いつつ天子は視線をレティに一瞬だけ向け
「今の内に逃げなさい」
とアイコンタクトを送る。
そして、天子と霊夢の戦闘が始まった。
一瞬戸惑ったレティだったが、その戦闘が自分の入りこめるレベルの物で無い事を察知し、大人しく身を隠す事にした。
「珍しいじゃない、あんたが他人の、ましてや妖怪の肩を持つなんて!!」
霊夢は弾幕を放ちながらも天子に向かって言う。
「言ったでしょ?あんな奴どうでもいいの。私が肩を持つのは他の子よ!!」
天子も言い返しつつ弾幕を放つ。
「ったく、相っ変わらず妙に強いわね。暇人のくせに」
「お互いさまでしょ」
憎まれ口を叩きながらも手を止めない二人。
戦いは均衡していた。
が、その均衡はあっさりと破られる事になる。
「やれやれ、神社に居ないと思ったらこんな所で何してるんだ?」
霊夢の親友、魔理沙がやって来た。
「く……五月蠅(うるさ)いやつが………」
天子が呟く。
「あら、魔理沙。どうしたの?」
そこで初めて二人とも手を止める。
「いや、アリスの奴が鍋でもやるから来ないかってお誘いがあってな」
「鍋!?」
霊夢の目が輝く。
「ああ。で、誘いに来たらまさか天人と喧嘩してるとはな」
「好きでやってるんじゃないわよ。向こうが私の仕事の邪魔した上に喧嘩吹っ掛けて来たのよ」
「また天人の悪い癖が出たか」
魔理沙の言う天子の悪い癖、とは、暇つぶしの事だ。
「今回は一応違うんだけど」
一応抗議する天子。
「さて、さっさと終わらせる為に手伝うか?」
「そうね。よろしく」
ここで天子に初めて焦りが出る。
確かに、霊夢も魔理沙も天子なら勝てる相手だ。
が、それは1対1ならの話。
かつて連戦で二人にも勝ちはしたが、それはあくまで1対1の連続だ。
1対1を2回と1対2とでは訳が違う。
更にその相手の二人の連携が完璧ともなれば尚更だ。
親友同士ゆえに手の内は知り尽くしている。
それ故に動きを相手に合わせやすい。
霊夢と魔理沙のコンビは幻想郷でも1,2を争う連携力であろう。
「ささっとやるわよ」
「了解だぜ」
霊夢の声に合わせて魔理沙が動く。
「リンガリングコールド!!!」
「なっ!?」
が、不意の弾幕が背後から魔理沙を襲った。
そこは流石と言うべきか、魔理沙は何とかそれを回避した。
「あんた!?」
天子が突如として現れたレティに驚く。
「ちょっとくらいなら持つから、その間に巫女何とかしなさい!!」
レティが魔理沙の前に立って言う。
「ったく、逃げてりゃ良いのに」
「あんたに借りを作りたくないだけよ!!」
呟く天子にレティはそう返した。
「逃げたんじゃなかったのか……」
霊夢が呟く。
「ちっ………霊夢、さっさと終わらせるから、その間持てよ!!」
「そうしてくれる?なんか、こいつ本気出して来たわ」
霊夢が冷汗交じりに言う。
霊夢の言うとおり、天子に力が漲っている。
「っとにもう………これで何かあったらまた大ちゃんやチルノに負担掛けるでしょうが………」
天子は呟く。
が、力の漲りは大妖精とチルノの為だけでは無い。
尤も、天子に自覚はないが。
「30、いえ、15秒持たせなさい!!その間に終わらせる!!!」
天子は叫ぶ。
「上等!!やってみなさいよ!!!」
そして、再度天子と霊夢が戦闘を開始する。
「直ぐ楽にしてやるからな。さっさとやられろよ!!!」
魔理沙が叫ぶ。
「冗談!!やられてたまるもんですか!!」
レティも叫ぶ。
「ミルキーウェイ!!」
魔理沙の星型の弾幕がレティを襲う。
「わわわわわっ!!!」
レティは必死になって弾幕を避ける。
「このっ!リンガリングコールド!!!」
再びレティのリンガリングコールド。
「温(ぬる)いぜ!!」
が、百戦錬磨の魔理沙には少々物足りない。
あっさりと避けられる。
「チェックメイト!だぜ!!」
魔理沙の八卦炉に力が集約される。
「げげっ!?」
それがなんであるかを察知し、レティも焦る。
そう
「マスタースパーク!!!」
魔理沙お得意のスペルだ。
「敵前逃亡!!」
が、レティは一目散に逃げ出した。
「何!?」
予想外の行動に魔理沙も驚く。
「まぁ、手間は省けたが…………霊夢、そっちはどう………」
振り向いた先に霊夢は居なかった。
天子も。
「あれ?」
不思議に思ったが、ふと、視界の隅に何かが映った。
「ん?…………げぇ!?」
それは地上に落下していく霊夢だった。
「って事は…………」
魔理沙は嫌な気配を察知し、上を向く。
「ご名答。チェックメイトはあんたの方よ」
今、まさに弾幕をぶっ放さんとしている天子が魔理沙の頭上に居た。
レティが逃げたのは、既に天子が霊夢との決着を付けてこちらに向かって来ていたからだった。
「やれやれだぜ」
諦めてそう言う魔理沙に、天子は容赦なく弾幕をぶっ放した。
黒白と紅白が仲良く地上に落ちて行く。
「あんた、本当に強いのね」
逃げたレティが戻って来て天子に言う。
「伊達に天人やってないわよ」
天子はそう返す。
「それよりほら、行くわよ」
「行くって、何処へ?」
「何?あんた大ちゃん達の所に行かないの?私は行くけど」
「い、行くわよ!!」
そうして二人は特に話す事もなかったが、喧嘩する事もなくチルノと大妖精の下へと向かった。
「邪魔するわよ~」
お決まりの言葉で天子が二人の前に姿を現す。
「あ!天子さん!お久しぶり………レティちゃん!?」
久しぶりの天子に笑顔を見せた大妖精だったが、傷ついているレティを見て驚く。
「ああ、来る途中巫女にやられちゃってね」
レティがそう説明する。
「あたいを呼びなさいっていつも言ってるじゃないの!!」
チルノが叫ぶ。
無論、そんな事は出来る筈もない。
チルノとレティが組んだだけでは霊夢には遠く及ばないし、チルノに余計な怪我を負わせたくないからだ。
「ま、今回はそいつが割って入ってくれたから助かったけど」
レティが天子の事を指して言う。
「そうなんですか。ありがとうございます、天子さん」
「別に大ちゃんが礼を言う事じゃないでしょう。大ちゃんが」
大ちゃんが、の所を強く言ってレティを見る天子。
「ふん」
が、レティはそっぽを向いた。
「あうぅ………」
そんな二人に困惑する大妖精。
「あ、天子!桃!桃!!」
チルノがお約束の様に桃を催促する。
「はいはい」
そして天子は桃を渡す。
「あ、そうだ!今日はちょっと試してみたい事があるんですけど、良いですか?」
大妖精が思い出したように言う。
「試したい事?」
天子が聞き返す。
「まぁ、私は構わないけど」
レティはそう言う。
「あたいも良いわよ!!」
チルノもそう言った。
「じゃあ、ちょっと待ってて下さいね!」
そう言うと、大妖精は桃をいくつか持って行ってしまった。
「何かしら?」
「さぁ?」
天子の呟きにレティはそう言う。
待ってる間、2人はやはり無言だった。
一人、チルノだけが桃を頬張っていた。
「お待たせしました~!」
そして、少しして大妖精が戻って来る。
「ん?その匂いは」
天子が持って来た紅茶の匂いで何かに気づく。
「桃?」
レティも気づいてそう尋ねる。
「はい!前に何かの本で外の世界では果汁を紅茶に混ぜると言うのがあるのを見たので」
「へぇ……」
天子が感心したように呟く。
そして、大妖精がカップを配る。
「良い匂いだね~」
レティが言う。
「本当」
天子も同意する。
普段嗅ぎ慣れている匂いだが、こうして紅茶から感じるといつもと違う感じがするようだ。
「ん、美味しいわ」
天子が一口飲んで言う。
「うん!美味しいわ!!」
チルノもそう言う。
因みに紅茶は、チルノにはカップに氷を入れてアイスティーに。
他の3人はホットだ。
「本当ね」
レティも二人に同意する。
「………そう言えば、お礼がまだだったわね」
レティが唐突に呟く。
「さっきは助かったわ。ありがとう、天人」
そして天子を見てそう言う。
「………堅っ苦しいから天子で良いわよ。レティ」
天子はそう返す。
「そう?じゃあそうさせて貰うわ、天子」
レティもそう言う。
「ま、私も魔理沙が来た時は助かったからお相子で良いわよ」
「ありがと」
天子の言葉にレティは短くそう返した。
そんな二人を見て大妖精は笑顔になって
「あ、私お菓子持ってきますね!!」
そう言って席を立った。
「ま、冬の間だけだけど、よろしくお願いするわ」
「そうね。でも、お互い永く生きる身。これから何度も会えるでしょ」
「それもそうね」
軽く笑ってそう言いあう二人。
「あれ?二人とも仲良くなったの?」
チルノが問いかける。
「さぁ?どうかしら?」
「ええ、どうかしらね?」
そんなチルノに二人はそう返す。
「あ~!!私を除け者にする気だな~!?」
チルノが暴れる。
そこへ大妖精がお菓子を持って現れる。
今日もこの小さなお茶会は楽しげな空気に包まれて居た。
オマケ
「これが食わずにいられるか~!!」
アリスの家で霊夢は叫びながら鍋を食っていた。
「落ち着きなさいよ」
アリスが言う。
「まぁ、霊夢の気持ちも解るがな」
言いながら魔理沙も箸を止めない。
「別に弾幕勝負で負けるなんて初めてじゃないでしょうに」
「10秒よ!?10秒で負けたのよ!?屈辱だわ!!!」
本気を出した天子の力はやはり凄まじく、寒くてあまり本調子では無い霊夢には大いに手の余る相手だった。
「私も一撃だったしな~」
「まぁ、悔しいのは解るけど、私の家で自棄(やけ)起こさなくても良いじゃない」
「女将!!もう一杯!!」
アリスに小皿を渡して言う霊夢
「誰が女将か」
言いながらもしっかりとよそうアリス。
「こっちも!」
「はいはい」
なんだが、本日一番の貧乏くじっぽいアリスだった。
宜しければ先にそちらをご覧になってください。
ある雪の日。
「ん~………晴れた日も良いけど、雪の日も悪くないわね」
天界の天人、比那名居天子は地上へと降りていた。
「まぁ、空を飛ぶにはちょっとアレだけど」
以前にチルノと大妖精と仲良くなって以来、天子はちょくちょく地上に降りるようになっていた。
そして、二人と他愛もない話などをしては去っていく。
刺激的な何かがある訳では無いが、不思議と天子は満たされていた。
「っにしても今日はいつにも増して冷え込んでるわね~」
しかし、常に地上よりも気温の低い天界に居る天子にとってこの程度はどうと言う事はない。
「チルノはまぁ問題ないとしても、大ちゃんがきつそうねぇ………」
そんな事を考えている時だった。
「冷えろ冷えろ~!!」
視界に騒いでいる妖怪が映った。
天子はその妖怪に近づく。
「ちょっとあんた」
「ん?」
天子に呼ばれて妖怪は振り向く。
「この寒気はあんたのせい?」
天子は妖怪に尋ねた。
「ご名答。で、それがどうかした?」
妖怪も天子に聞き返す。
「私の友達があまり寒さに強くないのよ。止めてくれない?」
「そんな事は知らないわよ。冬にしか力を発揮出来ないんだから、そのくらい見逃しなさいよ」
「こっちだってそっちの事情は知らないわ。止めないなら力尽くで止めるわよ?」
「へぇ、面白い。あんたが何者か知らないけど、シーズン中の冬の妖怪をナメない事ね!!」
「ふん。八雲紫クラスの妖怪ならいざ知らず、あんたみたいな下級妖怪など私の相手じゃないわよ」
「上等!!」
妖怪が襲いかかり、天子と妖怪の戦いが始まった。
が、10秒で終わった。
「うぐぁ……………ほ、本当に何者……?」
一瞬でボッコボコにされた妖怪が尋ねる。
「私は天人、比那名居天子。あんたみたいなのが喧嘩売って良い相手じゃないのよ」
「げぇっ!?天人!?」
妖怪が驚くのも無理はない。
妖怪にとって天人は天敵とは言わないが、はっきり言って相手にしても何の旨味もない相手である。
これが人間などが相手であれば、倒した後に食料にしたり、その力を取り込んだりとメリットはある。
が、天人は妖怪にとって毒にしかならない。
しかも、天人は仙人が修業したり、死んだ人間が昇華した存在である為、当然総じて強い。
倒すのにも一苦労。
倒してもメリットなし。
妖怪にとってこれ程嫌な相手も居ないだろう。
まぁ、天子に至っては親のついでに天人になっただけなので昇華した存在でも何でもないが。
しかし、それでも実力は折り紙つきである。
なんせ、幻想郷において上位クラスの者達を数人連続で相手にして全部倒してしまってる程である。
少なくとも、眼前の冬の妖怪の手に負える相手では無い。
「ま、そう言う事だから大人しくしてなさい」
そう言って天子は去って行った。
紅魔館近くの森
「お、居た居た」
天子はチルノ達を見つけて近寄る。
「あ、天子!」
「あ、天子さん。いらっしゃい」
チルノと大妖精が天子を迎え入れる。
「邪魔するわね」
「はい、今お茶をお持ちしますね」
大妖精はそう言ってお茶を取りに行った。
「天子!桃!」
チルノは天子に天界の桃を催促する。
「はいはい。あんた、本当にこれ好きね」
天子は言ってチルノに渡す。
「うん!美味しいじゃない!!」
チルノは満面の笑みでそう返す。
「私は食べ飽きたわよ」
天界には殆ど食べ物が無いのだから仕方がないと言えば仕方がない。
「はい、お茶持ってきましたよ~」
そして大妖精がお茶を持って現れた。
「ありがと。しかし、大ちゃん、厚着ね~」
大妖精はいつもの様な薄手の服で無く、上に何枚か羽織っている。
「今日は雪の所為(せい)か、いつもより冷え込んでるので」
加えて近くに氷精たるチルノが居れば当然だ。
が、大妖精は勿論、天子もその事には触れない。
悪く言えば単純、良く言えば純粋なチルノにそう言えば、気にして会わなくなる事すらあり得るからだ。
「天子さんは寒くないんですか?」
お茶を置きながら大妖精は尋ねる。
「私の住んでる天界は山よりもっと上にあるからね」
基本的に高度が高くなればなるほど気温も下がる。
山のさらに上空にある天界ともなれば、その気温は如何ほどの物であろうか。
そこに常時住んでいる天子に取って天界の寒さなど大した事もないのだろう。
「でもまぁ、こう言った景色も見れないから面白みに欠けるけどね」
そう言って天子は辺りを見回す。
まだ積もってはいないが、ちらほらと辺りが白く染まっていく。
「天子の住んでる所って雪降らないの?」
チルノが尋ねる。
「天界は雲より上だから雪なんて降らないわ」
天子はそう返す。
「雲より上だと雪が降らないの?」
「雪って雲から降ってるのよ?」
「そうなの!?」
天子の返答にチルノが驚く。
「そうだよ、チルノちゃん。私も詳しくは知らないけど、空が物凄く冷えると雨が雪に変わるんだって」
大妖精がそう言う。
「ま、詳しく言うと少し違うけど、大体そんな感じよ」
天子もそう言った。
「あ、雪と言えば、レティ来るかな!?」
チルノが思い出したように叫ぶ。
「あ、来るんじゃないかな。今日寒かったし」
大妖精もそう言う。
「レティ?」
聞きなれない単語、と言うか人名に天子は聞き返す。
「そう、レティ!友達よ!!」
チルノがそう返す。
「雪って言ってたけど、雪の妖精か何か?」
天子は再度尋ねる。
「いえ、レティちゃんは妖精で無く……」
大妖精が言い掛けた時
「ったくもう………最悪だわ」
声が聞こえて来た。
「あ、レティだ!」
「でも、この声の調子は………」
声のした方を向いてチルノと大妖精が言う。
(…………この声………まさか)
天子は聞き覚えのある声に考えを巡らせる。
「お邪魔するわよ、チルノ、大ちゃん」
ボロボロの姿の先程の冬の妖怪が姿を現した。
「ど、どうしたの!?」
「レティぼろぼろ!!」
大妖精とチルノもその姿に驚く。
「いや~、それがさぁ」
レティが喋ろうとした時。
「やっぱりね……あんただったの」
天子がそう言う。
「ん?……………あんた!!さっきの!!!」
レティが天子を指さして叫ぶ。
「人に対して指を向けるなんて礼儀がなってないわね」
天子はお茶を飲みながらそう返す。
「うっさい!何であんたがここに居るのよ!!」
「何であんたに文句言われなきゃならないのよ」
叫ぶレティに天子も返す。
「て、天子さん?レティちゃん?」
行き成り言い合いを始めた二人に大妖精が驚く。
「どったの?二人とも」
チルノも不思議そうな顔してる。
「どうしたもこうしたも………こいつにやられたのよ!!」
レティは叫ぶ。
「あんたが鬱陶しい事してるからでしょう」
寒気を強めている事を言わなかったのはチルノの手前ゆえだ。
「冬の妖怪が冬の妖怪らしい事して何が悪いって言うのよ!!」
「寒い」
ズバッと天子は言う。
「んが…………」
あっさりと返されてレティも一瞬言葉を失う。
「ねぇ、大ちゃん。前に聞いてた新しい友達ってまさか………」
レティは大妖精に尋ねる。
「うん、天子さんの事」
「天人じゃん!!」
レティは叫ぶ。
「天人だったら何なのよ?」
天子が尋ねる。
「なんで天人が地上に居んのよ。普通天界で歌って踊ってるもんじゃないの?」
「そんなの私の勝手でしょう」
レティの言葉に天子はそう返す。
「ふ、二人とも落ち着いて…………」
大妖精がなだめようとする。
「…………ふん」
天子は視線を外してお茶を飲む。
「っく」
大妖精が割って入ったお陰で何とか一触即発の雰囲気は収まった。
が、依然重い空気が流れている。
「ほら、レティちゃん、治療しないと」
「あ、うん」
大妖精がレティの怪我の治療をする。
暫く無言の時が流れたが
「帰るわ」
気まずくなったのか、天子がそう言って席を立った。
「あ、天子さん!?」
「気が向いたらまた来るわ。じゃあね」
天子はそう言うと振り向きもせずに去って行った。
「天子さん…………」
大妖精が天子の背中を見送る。
「どうせ天人なんて私達の事なんか気にしてないっての」
そんな大妖精にレティが言う。
「違うよ!天子さんはそんな人じゃないよ!」
が、それに大妖精はそう返した。
「そうだよレティ!天子は悪い奴じゃないわよ!!」
チルノもそう叫ぶ。
「う……わ、悪かったわよ」
二人にそう叫ばれては、そう返すしかないレティだった。
それから暫くの間、天子は地上に降りなかった。
何度かチルノや大妖精に会おうと思ったが、レティと鉢合わせたらと思うとどうにも行けなかった。
別段、レティを力尽くで排除するなど天子には容易い。
が、そんな事をすれば大妖精やチルノに嫌われるのは火を見るより明らかだ。
とは言え、うっかり鉢合わせたりすれば、また気まずい空気になる。
「何を悶々としてるのか知れないけどさ~」
突如響いた声。
天界に居候している鬼の伊吹萃香だ。
「気晴らしに地上に行って来れば~?」
萃香はそう言う。
「それが出来ればとっくにそうしてるわよ」
「ふ~ん」
天子の返答に萃香は興味無さ気に返す。
「ったく…………」
そう呟きながら天子は地上を見下ろす。
「あ~………もう!なんでこうなるのよ!!」
レティは叫ぶ。
「あんたが無意味に寒気を撒き散らすからでしょ」
そう言ってレティの前に立ちはだかっているのは、博麗の巫女、博麗霊夢だった。
「冬が寒いのは当り前じゃないの!!」
「だからって余計に寒くする事無いでしょ!!」
「そんなに寒いなら家に閉じこもってりゃ良いでしょう!?」
「家に居たらあんたが見えたから退治しに来たのよ!!」
「放っておいてよ!!」
「だが断る!!」
レティは霊夢に抗議するが平行線を辿るばかりだ。
「あんたを倒せば少しはマシになるでしょうから…………」
「げっ!?」
霊夢に霊力が集中し、焦るレティ。
「大人しく退治されなさい!!夢想封印!!」
「っきゃああぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドゴォォォォォォンッ!!!
極彩色の霊玉がレティに命中した。
「う~………寒っ!どうせならもっと体動かしておくべきだったかしら?」
そう言って霊夢は神社の方へと振り返る。
「なら、少し私と遊んでく?」
が、不意に響いてきた声に再び振り向く。
「あ、あんた…………」
レティが驚いたような声を出す。
「天子?なんのつもり?」
夢想封印からレティを庇った天子を見て霊夢が訝(いぶか)しそうな顔で尋ねる。
「ちょっとした知り合いでね。弱っちぃから私が助けてやるべきだと思ったのよ」
天子はそう返す。
霊夢は頭に?を浮かべて居る。
「だ、誰が助けてって言ったのよ!!」
「勘違いしないでくれる?あんたなんてどうでも良いのよ。ただ、あんたが傷つくと大ちゃんとチルノが悲しむでしょ。それが嫌なだけよ」
天子はレティにそう返す。
「なんだか良く解らないけど、つまり、私とやり合おうって事?」
「寒いんでしょ?動いたら温まるわよ?」
霊夢と天子が対峙する。
「へぇ………私もそう思ってた所よ。良いじゃない、やりましょう」
妖怪退治を邪魔されたからであろうか、霊夢は速攻戦闘態勢に移行した。
「来なさい。遊んであげるわ」
そう言いつつ天子は視線をレティに一瞬だけ向け
「今の内に逃げなさい」
とアイコンタクトを送る。
そして、天子と霊夢の戦闘が始まった。
一瞬戸惑ったレティだったが、その戦闘が自分の入りこめるレベルの物で無い事を察知し、大人しく身を隠す事にした。
「珍しいじゃない、あんたが他人の、ましてや妖怪の肩を持つなんて!!」
霊夢は弾幕を放ちながらも天子に向かって言う。
「言ったでしょ?あんな奴どうでもいいの。私が肩を持つのは他の子よ!!」
天子も言い返しつつ弾幕を放つ。
「ったく、相っ変わらず妙に強いわね。暇人のくせに」
「お互いさまでしょ」
憎まれ口を叩きながらも手を止めない二人。
戦いは均衡していた。
が、その均衡はあっさりと破られる事になる。
「やれやれ、神社に居ないと思ったらこんな所で何してるんだ?」
霊夢の親友、魔理沙がやって来た。
「く……五月蠅(うるさ)いやつが………」
天子が呟く。
「あら、魔理沙。どうしたの?」
そこで初めて二人とも手を止める。
「いや、アリスの奴が鍋でもやるから来ないかってお誘いがあってな」
「鍋!?」
霊夢の目が輝く。
「ああ。で、誘いに来たらまさか天人と喧嘩してるとはな」
「好きでやってるんじゃないわよ。向こうが私の仕事の邪魔した上に喧嘩吹っ掛けて来たのよ」
「また天人の悪い癖が出たか」
魔理沙の言う天子の悪い癖、とは、暇つぶしの事だ。
「今回は一応違うんだけど」
一応抗議する天子。
「さて、さっさと終わらせる為に手伝うか?」
「そうね。よろしく」
ここで天子に初めて焦りが出る。
確かに、霊夢も魔理沙も天子なら勝てる相手だ。
が、それは1対1ならの話。
かつて連戦で二人にも勝ちはしたが、それはあくまで1対1の連続だ。
1対1を2回と1対2とでは訳が違う。
更にその相手の二人の連携が完璧ともなれば尚更だ。
親友同士ゆえに手の内は知り尽くしている。
それ故に動きを相手に合わせやすい。
霊夢と魔理沙のコンビは幻想郷でも1,2を争う連携力であろう。
「ささっとやるわよ」
「了解だぜ」
霊夢の声に合わせて魔理沙が動く。
「リンガリングコールド!!!」
「なっ!?」
が、不意の弾幕が背後から魔理沙を襲った。
そこは流石と言うべきか、魔理沙は何とかそれを回避した。
「あんた!?」
天子が突如として現れたレティに驚く。
「ちょっとくらいなら持つから、その間に巫女何とかしなさい!!」
レティが魔理沙の前に立って言う。
「ったく、逃げてりゃ良いのに」
「あんたに借りを作りたくないだけよ!!」
呟く天子にレティはそう返した。
「逃げたんじゃなかったのか……」
霊夢が呟く。
「ちっ………霊夢、さっさと終わらせるから、その間持てよ!!」
「そうしてくれる?なんか、こいつ本気出して来たわ」
霊夢が冷汗交じりに言う。
霊夢の言うとおり、天子に力が漲っている。
「っとにもう………これで何かあったらまた大ちゃんやチルノに負担掛けるでしょうが………」
天子は呟く。
が、力の漲りは大妖精とチルノの為だけでは無い。
尤も、天子に自覚はないが。
「30、いえ、15秒持たせなさい!!その間に終わらせる!!!」
天子は叫ぶ。
「上等!!やってみなさいよ!!!」
そして、再度天子と霊夢が戦闘を開始する。
「直ぐ楽にしてやるからな。さっさとやられろよ!!!」
魔理沙が叫ぶ。
「冗談!!やられてたまるもんですか!!」
レティも叫ぶ。
「ミルキーウェイ!!」
魔理沙の星型の弾幕がレティを襲う。
「わわわわわっ!!!」
レティは必死になって弾幕を避ける。
「このっ!リンガリングコールド!!!」
再びレティのリンガリングコールド。
「温(ぬる)いぜ!!」
が、百戦錬磨の魔理沙には少々物足りない。
あっさりと避けられる。
「チェックメイト!だぜ!!」
魔理沙の八卦炉に力が集約される。
「げげっ!?」
それがなんであるかを察知し、レティも焦る。
そう
「マスタースパーク!!!」
魔理沙お得意のスペルだ。
「敵前逃亡!!」
が、レティは一目散に逃げ出した。
「何!?」
予想外の行動に魔理沙も驚く。
「まぁ、手間は省けたが…………霊夢、そっちはどう………」
振り向いた先に霊夢は居なかった。
天子も。
「あれ?」
不思議に思ったが、ふと、視界の隅に何かが映った。
「ん?…………げぇ!?」
それは地上に落下していく霊夢だった。
「って事は…………」
魔理沙は嫌な気配を察知し、上を向く。
「ご名答。チェックメイトはあんたの方よ」
今、まさに弾幕をぶっ放さんとしている天子が魔理沙の頭上に居た。
レティが逃げたのは、既に天子が霊夢との決着を付けてこちらに向かって来ていたからだった。
「やれやれだぜ」
諦めてそう言う魔理沙に、天子は容赦なく弾幕をぶっ放した。
黒白と紅白が仲良く地上に落ちて行く。
「あんた、本当に強いのね」
逃げたレティが戻って来て天子に言う。
「伊達に天人やってないわよ」
天子はそう返す。
「それよりほら、行くわよ」
「行くって、何処へ?」
「何?あんた大ちゃん達の所に行かないの?私は行くけど」
「い、行くわよ!!」
そうして二人は特に話す事もなかったが、喧嘩する事もなくチルノと大妖精の下へと向かった。
「邪魔するわよ~」
お決まりの言葉で天子が二人の前に姿を現す。
「あ!天子さん!お久しぶり………レティちゃん!?」
久しぶりの天子に笑顔を見せた大妖精だったが、傷ついているレティを見て驚く。
「ああ、来る途中巫女にやられちゃってね」
レティがそう説明する。
「あたいを呼びなさいっていつも言ってるじゃないの!!」
チルノが叫ぶ。
無論、そんな事は出来る筈もない。
チルノとレティが組んだだけでは霊夢には遠く及ばないし、チルノに余計な怪我を負わせたくないからだ。
「ま、今回はそいつが割って入ってくれたから助かったけど」
レティが天子の事を指して言う。
「そうなんですか。ありがとうございます、天子さん」
「別に大ちゃんが礼を言う事じゃないでしょう。大ちゃんが」
大ちゃんが、の所を強く言ってレティを見る天子。
「ふん」
が、レティはそっぽを向いた。
「あうぅ………」
そんな二人に困惑する大妖精。
「あ、天子!桃!桃!!」
チルノがお約束の様に桃を催促する。
「はいはい」
そして天子は桃を渡す。
「あ、そうだ!今日はちょっと試してみたい事があるんですけど、良いですか?」
大妖精が思い出したように言う。
「試したい事?」
天子が聞き返す。
「まぁ、私は構わないけど」
レティはそう言う。
「あたいも良いわよ!!」
チルノもそう言った。
「じゃあ、ちょっと待ってて下さいね!」
そう言うと、大妖精は桃をいくつか持って行ってしまった。
「何かしら?」
「さぁ?」
天子の呟きにレティはそう言う。
待ってる間、2人はやはり無言だった。
一人、チルノだけが桃を頬張っていた。
「お待たせしました~!」
そして、少しして大妖精が戻って来る。
「ん?その匂いは」
天子が持って来た紅茶の匂いで何かに気づく。
「桃?」
レティも気づいてそう尋ねる。
「はい!前に何かの本で外の世界では果汁を紅茶に混ぜると言うのがあるのを見たので」
「へぇ……」
天子が感心したように呟く。
そして、大妖精がカップを配る。
「良い匂いだね~」
レティが言う。
「本当」
天子も同意する。
普段嗅ぎ慣れている匂いだが、こうして紅茶から感じるといつもと違う感じがするようだ。
「ん、美味しいわ」
天子が一口飲んで言う。
「うん!美味しいわ!!」
チルノもそう言う。
因みに紅茶は、チルノにはカップに氷を入れてアイスティーに。
他の3人はホットだ。
「本当ね」
レティも二人に同意する。
「………そう言えば、お礼がまだだったわね」
レティが唐突に呟く。
「さっきは助かったわ。ありがとう、天人」
そして天子を見てそう言う。
「………堅っ苦しいから天子で良いわよ。レティ」
天子はそう返す。
「そう?じゃあそうさせて貰うわ、天子」
レティもそう言う。
「ま、私も魔理沙が来た時は助かったからお相子で良いわよ」
「ありがと」
天子の言葉にレティは短くそう返した。
そんな二人を見て大妖精は笑顔になって
「あ、私お菓子持ってきますね!!」
そう言って席を立った。
「ま、冬の間だけだけど、よろしくお願いするわ」
「そうね。でも、お互い永く生きる身。これから何度も会えるでしょ」
「それもそうね」
軽く笑ってそう言いあう二人。
「あれ?二人とも仲良くなったの?」
チルノが問いかける。
「さぁ?どうかしら?」
「ええ、どうかしらね?」
そんなチルノに二人はそう返す。
「あ~!!私を除け者にする気だな~!?」
チルノが暴れる。
そこへ大妖精がお菓子を持って現れる。
今日もこの小さなお茶会は楽しげな空気に包まれて居た。
オマケ
「これが食わずにいられるか~!!」
アリスの家で霊夢は叫びながら鍋を食っていた。
「落ち着きなさいよ」
アリスが言う。
「まぁ、霊夢の気持ちも解るがな」
言いながら魔理沙も箸を止めない。
「別に弾幕勝負で負けるなんて初めてじゃないでしょうに」
「10秒よ!?10秒で負けたのよ!?屈辱だわ!!!」
本気を出した天子の力はやはり凄まじく、寒くてあまり本調子では無い霊夢には大いに手の余る相手だった。
「私も一撃だったしな~」
「まぁ、悔しいのは解るけど、私の家で自棄(やけ)起こさなくても良いじゃない」
「女将!!もう一杯!!」
アリスに小皿を渡して言う霊夢
「誰が女将か」
言いながらもしっかりとよそうアリス。
「こっちも!」
「はいはい」
なんだが、本日一番の貧乏くじっぽいアリスだった。
次回作も期待してますw
来た!!
アバンドンの熱核兵器来た!!
これで勝つる!!!
しかし天子のツンデレは神ですねww