太陽の畑にひっそりと、その墓はあった。
夏ならば陽気な向日葵が墓を守るようにして咲き誇っていただろう。しかし、寒風厳しい冬にあっては太陽の畑もうら寂しい。墓を守るようなものは、せいぜい阿求の身体ぐらいのものだ。
静かに、墓の前で佇む。墓といっても石で出来ているわけではなく、そこらの木々で作ったような粗末な木製の墓標が突き立っているだけ。ひとたび風が吹いたなら、あっという間に更地になりそうなほど脆い。
生前の彼女を思い浮かべれば、何とも違和感のある墓だ。いや、ある意味ではらしいのかもしれない。死後の事に拘るような妖怪とも思えなかった。ともすれば、この墓標ですら邪魔だと思っている可能性はある。
どうせ、何を供えたって喜びはしないだろうと手ぶらでやってきた。迂闊に花なんぞ持ってこようものなら、下手をすれば化けて出てきそうなもの。恐ろしい話だ。
「まったく……逝くときはせめて一声ぐらい掛けてくれれば良かったものを」
愚痴を零すが、いざ自分が同じ質問をされたら何と返すか。間違いなく、教えるわけないです、と答える。そして、教えたからと言って何かしてくれるんですか、と生意気な口を叩くのだろう。目に見えるようだ。
だから、彼女も何も言わなかった。自分だけじゃない、誰にも。
自惚れに聞こえるかもしれないが、阿求には看取ってくれる人がいる。短命な人生とはいえ、それなりの人間関係は構築してきた。いや、短命だからこそか。今では親しげに酒を酌み交わす相手だっている。
だが、彼女にはそんな相手がいたのだろうか。いなかっただろう。敢えてか自然にかは知らないが、他人を避けている節があった。阿求には何かとちょっかいをかけていたが、それも文句を言いにくる程度のこと。
彼女曰く、阿求の表記があったせいで他人が離れていったと語っていたが、どうだろう。元々そういう気質だったのではないかと思う。
結局、彼女の言い分を聞くことはなかった。最後の最後まで、阿求は自らの表記を変えることはなかったのだ。それが編纂者としての矜持であり、不可欠なことだと認識している。間違いなら直すが、間違っていないと思ったら脅迫されても変更しない。阿一の代から、それを貫いてきた。
ただ、ふと思う。彼女は一体、どういう風に変えて欲しかったのかと。
ついぞ、それを直接口から聞くことはできなかった。もっと強力にして欲しかったのか、それとも親しみが持てるようにして欲しかったのか。答えを知る者は土の中。永遠に教えてくれることはない。
墓標の前にしゃがみ込む。
「あなたは、どうして欲しかったんですかね……」
一陣の風が、阿求の言葉をかき消した。空しい。死人に言葉を投げかけたところで、ここは白玉楼ではないのだ。答える者がいるでもなし。無意味な行為でしかない。
阿求は立ち上がった。いつまでも、ここにいるわけにもいかない。
墓標に背を向ける。灰色の空の下で、十字架が寂しく揺れていた。
「また来ますね、幽香さん」
木ぎれに刻まれた名前を口にして、阿求は向日葵の畑から立ち去っていった。
とまぁ、ここで終わっていれば立派なシリアスだっただろう。
しかし、現実は非情で思い通りにはならない。落ちたトーストは必ず、バターを塗った面が下になるのだ。
立ち去ろうとした阿求の耳に、土を掘るような音が聞こえてくる。スコップのような金属を使った音ではない。手で、強引にかき分けるような音だ。想像はしたくないが、ゾンビが地中から出てくる時は似たような音を出すのだろう。
よもや。恐る恐る、阿求は振り返る。
変わらぬ光景。墓標は相変わらず寂しげで、他には向日葵の花が一輪咲いているだけ。
「……向日葵?」
阿求の記憶が正しいならば、先ほどは向日葵の花など咲いていなかった。これが通常の人間ならば、ひょっとしたら記憶違いということもあるけれど、阿求に限ってそれはない。紫が能力を弄りでもしない限り、阿求が一度見た光景を忘れるなんてことがあるはずもないのだ。
だとしたら、この向日葵は阿求が帰ろうとした僅かな時間で咲いたことになる。しかも季節は冬。どう考えても、向日葵が咲いていい時期ではない。何とも、気味の悪い話だ。寒さではない震えを感じた。
ただ、向日葵もさすがに自重しているのか。その大きさは阿求が思い浮かべる普通の向日葵よりも少しだけ小さいものであった。だから違和感が無いというわけではないのだが、身の丈より少し低いぐらいの向日葵ならば、咲いていてもいいかもしれないという気にやっぱりならない。
おっかなびっくり、謎の向日葵に近づく。匂いもやはり向日葵だ。それに、どこか異常な部分があるわけでもない。この下に眠っている妖怪が妖怪だけに、近づいたら喰われるのではないかとも思っていたのだが。
まさか、幽香の能力の残滓がこの向日葵を咲かせただけなのか。彼女の能力は花を咲かせる程度の能力。季節外れの向日葵を咲かせたところで、何の不思議もない。
「本当に、幽香さんの能力なんでしょうか?」
死して尚、この世に花を咲かせるか。哀憐のような感情と共に、目の前の向日葵が愛おしくなる。せっかくだから、この向日葵を育ててはどうだろうか。形見というわけではないけれど、せめて枯れるまでは世話ぐらいしたい。
ならば、ここで咲かせておくわけにもいかなかった。今は幽香の能力があるおかげで、この寒空の中で花を咲かせているけれど幽香はもういないのだ。能力が尽きれば、すぐに枯れて果てるだろう。
紅魔館の中には、季節外れの花を育てられる施設があると聞く。確かビニールハウスという名前で、そこでメイドは茶葉やら何やらを育てていたはずだ。事情を話せば、向日葵の一本くらい植えさせてくれるはず。
心苦しくはあったが、仕方ない。このままにしておくわけにはいかないのだ。心中で幽香に謝りながら、阿求は向日葵を引っこ抜いた。
「!」
植物に詳しいわけではない。それでも、一応は一般常識程度の知識なら持ち合わせている。いやだが、考えてみて欲しい。ここは幻想郷なのだ。あり得ない事が起こったとしても、不思議の三文字で片づけられる幻想達の理想郷。だから目の前の幻想とて実は、ただ不思議なだけであり、あり得ないことではないはず。ひょっとしたら、常識かもしれない。よく言うではないか、赤ちゃんはコウノトリ畑で採れるもの。……違うか。
阿求が現実から逃避している間も、それは向日葵の下でぷらぷらと楽しそうに揺れていた。
誰が教えて欲しい。植物の下にあるのは、根っこや球根や作物ではなかったのかと。
いや、確かに向日葵に根っこはある。あるのだが問題は、その根っこにぶら下がっている物体だ。
拳ほどの大きさで、服ような皮は赤と橙のチェック柄。髪は葉っぱのように緑色でウェーブがかり、瞳は彼岸花のように赤い。人間の形をした球根という考え方もあるが、それにしてはあまりにも形がそれっぽいし、そもそも球根は呼吸をするように胸を上下したりしない。
ぶら下がっていたそれの表情が、段々と必死なものへと変わっていく。どうやら、重力に負けかけているらしい。呆然としながらも、阿求の倫理観は失われていなかった。無意識のうちに向日葵を下げ、それを地上に降ろす。
「……」
ようやく安定した大地に足が付いて落ち着いたのか、それは小さな溜息をついた。いや、小さいのは阿求の視点で見たから小さいのであって、当人からしてみれば九死に一生を得たレベルの溜息かもしれない。
落ち着いたそれは次に、何故か微笑みながら阿求を見上げた。何だろう、この笑顔。どこぞの自称最強の妖怪を彷彿とさせる。
阿求の卓越した記憶力は当然、その妖怪の名前も姿も覚えている。だが、理性がそれを認めたがらない。「花の妖怪→死亡→その墓から小さな花の妖怪とかどう思います?」「安易すぎる。印刷物なら壁に叩きつけた」「捻りが足りませんよね。せめて本当にゾンビが出てくるなら面白かったかもしれません」などと理性の会議は全力で認識を拒絶していた。
だが時として、理性を上回る存在がある。それこそ、本能。
阿求の本能はついうっかり、ある妖怪の名前を口に出してしまう。
「風見、幽香さん?」
それは笑顔を絶やさず、肯定するように頷くのであった。
認めざるをえまい。
阿求の引きつった顔を、ちび幽香は愉しそうに見上げていた。
連れて帰ったわけだが。
阿求の肩から、ちゃぶ台へ飛び降りるちび幽香。身体能力はさすがのもので、ある程度の高さはあったのに猫みたいに華麗な着地を決めた。どうだ、と言わんばかりに得意げな表情でこちらを見ることも忘れない。それだけの能力があるのなら、どうしてあんなにも必死で向日葵にしがみついていたのか。不明だ。
阿求は腰を降ろし、同じ目線でちび幽香を眺める。しかしこうして見れば見るほど、幽香にそっくりだ。当人なのだから、当然と言えば当然なのだが。そうと分かっていても、思わず感心したくなるほどのミニチュアだった。
試しに突いてみようと指を指しだしてみれば、笑顔のまま弾かれた。見た目だけでなく、性格も変わらないようだ。この分だと記憶もありそうなものだが、何か喋る様子はない。普段の幽香なら黙り続けるわけもないし。おそらく、喋ることができないのだろう。
「でしたら、筆でもあげてみますか」
硯と筆を持ち出して、ちび幽香に与えてみる。自分よりも身の丈が大きな筆を抱え、よたよたとした足取りで硯につけた。当然の如く、擦っていないので墨はない。不思議そうな顔をして覗き込んだかと思えば、首を傾げ阿求を見遣る。
仕方なく、阿求が硯を擦って墨を作ってあげた。それでいいのよ、と満足そうにちび幽香は筆を墨で塗らす。ネズミぐらいの大きさしかないのに、顎で使っている感がひしひしと感じられた。
用意した半紙に乗り、思ったより軽快に筆を滑らせる。その様は外の世界の競技だが、スケートというものに酷似していた。
「!」
それできたわよ、とちび幽香が筆を止める。
「どれどれ」
てっきりミミズが腹痛を起こして暴れ回ったような字だと思ったのに。半紙に書かれた文字は平素の幽香が書いたものと大差なかった。
『風見幽香』
しかし、どうして今更自己紹介をする必要があるのだろう。ついさっき、名前を呼んだばかりだというのに。記憶力も大きさに合わせてしまったのか。ちゃぶ台に肘をつきながら、半紙を凝視をする。
すると何を思ったのか、ちび幽香は再び筆を走らせ始めた。
『名前』
書かれた二文字に頭を捻る。主語も無ければ述語も無い。何をどうすればいいのか、実行するには推測が必要だった。しばし考えこみ、まさかと思い尋ねる。
「私の名前が知りたいんですか?」
ちび幽香は頷いた。
さて。
自己紹介というのは、通常初対面同士がするもの。旧知の仲なのに自己紹介をするなんて、皮肉でしかあり得ない。まさかここで皮肉を言ってるわけでもないだろうし、とすると本当に記憶が消去されてしまったのか。
まだ阿求を騙している可能性はある。なにしろ幽香だ。戦いにおいてはだまし討ちなどしないが、日常では平気な顔して阿求を騙す。油断は禁物だ。
しかし尋ねられたのだから、一応は答える必要がある。
「稗田阿求です」
ちび幽香はまたも頷いた。納得するようなところがあったのだろうか。謎だ。
それにしても、どうしたものか。改めて阿求は考え込んだ。ちび幽香が幽香から生まれたという事は疑いようもない。稗田とは違った手段ではあるが、おそらくこれも転生のようなものなのだろう。種から花が咲き、その花から種が生まれの繰り返し。だとしたら、ちび幽香はいずれ幽香になってしまうはず。
さすがにこれを紅魔館に預け、育てて貰うわけにはいかない。そもそも、もうビニールハウスは必要ないのだ。
だからといって、このまま野に放していいものか。見た目よりも遙かに強いけれど、所詮はちび幽香。それなりの妖怪に見つかればタダでは済むまい。もっとも、保護されるのを甘んじて受け入れるような妖怪でもないが。
そこで、はたと阿求は気がついた。そうである。幽香は保護されるのを良しとする妖怪ではない。だったら、放っておけばいずれ出て行くのではないか。それまでは、阿求が世話をしてもいい。
無責任な発言ではあるが、ペットじゃないのだ。最後まで面倒みる必要なんてない。それに、幽香もそれを望まないだろう。
「いつ出て行くのかは知りませんが、まぁそれまでの縁と思いましょうか」
呟く阿求をよそに、ちび幽香は半紙を布団にして、すやすやと気持ちよさそうに寝始めていた。
暢気なものである。阿求は苦笑した。
日が暮れて、夜になり、朝がきた。
ここでまた新しい問題が浮上してくる。食事だ。一体、ちび幽香は何を食べるのだろう。
昨晩は何も要求してくることはなかったので、いらないものだとばかり思っていた。だが、妖怪とて何か食べないと死んでしまう。幽香がいくら強いからといって、絶食に耐えられるとは限らないのだ。ましてや、今は多分育ち盛り。成長にも関わる大事な事だ。
現に幽香も、今朝になって半紙に『食事』の二文字を書き上げていた。飢えて殺すわけにもいかない。阿求は食事を用意しようと思ったのだが、そこではたと手が止まる。
さて、何を与えたものか。
普通の妖怪ならば肉でもあげた。人間の子供ならば乳をあげればいい。出ないけど。
だが、ちび幽香には何をあげればよいのやら。全く見当も付かなかった。普通の妖怪と同じく、肉をあげればよいのか。試しに昨日の残りの豚肉をあげたところ、大層不満そうな顔で無視された。せっかく程よく焼けたというのに、まさか焼き加減が気に入らないというわけでもあるまいて。
となると、考えられるのは一つ。植物の妖怪なのだから、植物と同じような食事をあげればいい。生憎と植物に関する知識は乏しかったので、慧音から事情を言わずに関連書籍を借りてきた。水だけならば楽なのだろうけど、そういうわけにもいかない。
だが調べてみたところ、案外水だけでも何とかなるそうだ。勿論、空気や日光も必要なうちの一つだが、それは放っておいてもどうにかなる。
「水、水と……」
瓶から水を汲んできて、コップに移した。ちび幽香は物珍しそうに、コップを叩いている。エコーが掛かったような金属音がした。
「何してるんでしょう?」
飲まないのかと訝しがったが、よくよく考えてみれば飲めるわけもない。コップも小さいとはいえ、ちび幽香にしてみれば少し大きい。このまま飲もうとすれば、頭からコップに突っ込んでしまう。
「お猪口にすれば良かったですね」
立ち上がる阿求をよそに、ちび幽香はコップを割らんが勢いで抱きかかえる。そのまま平然とコップを持ち上げると、中の水が一気にちび幽香の方へあふれ出してきた。彼女は彼女なりのやり方で飲もうとしたらしい。失敗したが。
水流に負けたちび幽香は、どんぐりのように転がって、水浸しのままちゃぶ台から落っこちていった。阿求は咄嗟に助けたが、無視していても案外平気な顔で着地していたかもしれない。
「!?」
状況が把握できていないらしく、ちび幽香は目をぱちくりしながら大人しく手のひらに座っている。だが、ようやく事態を飲み込めたのか、何故か恨みがましい目で阿求を見上げてきた。
確かにコップを出した阿求も悪いが、いきなりひっくり返したちび幽香も悪い。そう思ったが、ムキになって反論するのも馬鹿らしかった。
「わかりました、ちゃんとあなたが飲めるようなものを持ってきますから。それまで、大人しく待っていてください」
ちび幽香をちゃぶ台に戻す。また何かされてはたまらないと、阿求はお猪口に水を入れ、布巾を片手に居間へと戻ってくる。ちび幽香は裾を絞りながら、半紙で顔や髪を拭いていた。半紙も大概万能になったものである。
一通り拭き終わったちび幽香は、懲りていないのかお猪口もそのまま飲もうと持ち上げていた。止めるべきかとも思ったが、土が水を吸うようにあっさりと飲んでいくのを見て、挙がった手を引っ込める。
空になったお猪口を回収すると、裾をちび幽香が引っ張った。何だろう。阿求が首を傾げると、優雅な仕草でお猪口を指さす。
「……もう一杯ですか?」
ちび幽香は満面の笑みを浮かべた。食欲と言っていいのかどうかは知らないが、旺盛な妖怪である。
その後、ちび幽香は水を三杯もおかわりした。どこにそれだけ入ったのか、疑問は尽きない。
ちび幽香を見るたびに、何か言いようのない違和感に襲われる。勿論、幽香がこんなに小さいのはおかしいとか、そういった類のものではない。
それが何かわからなかったのだが、記憶を引っ張り出してようやく気付いた。傘だ。傘を持っていないのだ。
半ばトレードマークと化していた、あの日傘。あれを持っていないせいで、妙な違和感を覚えていたのだ。もやもやとした暗雲がかき消え、気分もよくなる。だからというわけではないのだが、阿求は思った。
傘を作ってあげられないだろうか。
元より、あって困るものでもなし。あげたところで、気に入らないならどうせ捨てる。
最初は阿求が作ろうとしたが、素人にいきなり小型の傘など敷居が高すぎた。出来上がったのは、なんだかよくわからない骨の鳥。夜中に飛んでいたら、確実に驚いて頭を柱にぶつける。
やはり餅は餅屋か。とはいえ、ちび幽香がもてるような傘を作っている職人などいるわけもない。いるとすれば、それぐらいの大きさの人形を作っている魔法使いぐらいのもの。 阿求は魔法の森へと足を向けた。
「この大きさの傘ね……まぁ、別に作れないことはないけど。一体、何に使うのかしら?」
当然の質問に、阿求はあらかじめ用意していた答えを返す。
「観賞用です」
「観賞用ね……いいけど」
アリスは不審そうな顔をしていたけれど、了承はしてくれた。代わりに幾つかの資料を要求されたが、それぐらいなら許容範囲内である。
「また明日にでも来てちょうだい。これぐらいの物なら、一日で作れるし」
「ありがとうございます」
お礼を言って、アリスの家を後にした。たった一日で作れるとは思ってみなかったが、早いに超したことはない。
それが昨日の出来事だった。
阿求は再びアリスの家を訪れ、注文の傘を受け取った。
「一応は指定された通りに作ったけど、これで良かったの?」
手渡された箱の中には、白い花弁のように開いた傘が一つ収まっていた。骨の鳥を作った阿求とは、比較にならないほどの出来だ。さすがは人形遣い。手先が器用な仕事なら、存分に能力を発揮してくれる。
阿求は箱ごと受け取り、問題ないですと伝えた。
「でも、これって風見幽香の傘よね?」
「……………………」
アリスとて知っているはず。幽香が死んでしまったということは。
だからこそ、訝しがっているのだろう。どうして、死人の傘を、しかもミニチュアサイズのものを注文してきたのか。
「詮索はしないけどね。まあ、何かあったらまた連絡して。出来る限りの修理ならするから」
つくづく、頼んだのがアリスで良かったと思う。別にちび幽香の存在を隠しているわけでもないが、あまり世間に公表して良いものでもない。出来ることなら、極秘にしておきたかった。
交換条件の資料を渡し、阿求は家路につく。
戻ってみれば、縁側でちび幽香が日向ぼっこに夢中だった。いや、この場合は光合成か。
縁側に腰掛け、何をするでもなく空を見つめている。この頃は寒い日が続いたけれど、太陽が出ればまだ温かい。阿求は囲炉裏の火でも充分に温まるけれど、ちび幽香はそういうわけもいかないのだろう。
邪魔をしては悪いと踵を返したが、目ざとくちび幽香が反応する。目が合った。仕方ない。渡すか。
「これ、あげます」
箱の中から小さな傘を取りだし、ちび幽香に渡す。不思議そうな顔で傘を見ていたちび幽香は、まるで身体が覚えているかのような流ちょうな仕草で傘を肩にかけ、くるりと回した。まさしく風見幽香である。
太陽にかざしたり、閉じたり、まるで確かめるようにちび幽香は傘を弄っていた。気に入ってはくれたようだ。捨てても良い等と言ってはいたが、実際にされると落ち込む。とりあえず、阿求は胸を撫で下ろした。
「壊さないように、大切に扱ってくださいね」
ちび幽香はちらりとこちらを見たかと思えば、すぐに傘で視線を遮った。早速使用してくれたのは嬉しいけれど、それが拒絶にも似た反応の為なのは傷つく。一人部屋を与えてしまったが為に、息子が引きこもってしまった親の心境だ。
眉間に皺を寄せながら、阿求は居間へと戻っていく。
だから気付かなかった。よく見ればちび幽香の口が、ありがとう、と動いていたことに。
ちび幽香は傘を愉しげに回しながら、日光を存分に浴びていた。
今日も満足げだ。
まあチビ幽香りん可愛いからいいか
ほのぼので、どこかシュールで、ほのぼので、幽香りんがかわいくてwww最高でした。
ちび幽香可愛かったです。
骨の鳥を何処にしまったのかな
続きます……よね?
それにしても、気になるのは幽香の死因。まさか老s……おや、こんな時間に誰だろう
続きが気になりますね
最初のシリアス展開に完璧に騙された分ニヤニヤがとまらねぇww
あと骨の鳥の実物を是非拝見したい。
>「捻りが足りませんよね。せめて本当にゾンビが出てくるなら面白かったかもしれなません」
誤字脱字。
心に一輪の向日葵が咲いた。
ちくしょう。チビ萃香書いてくる。
ウェーブがかかり?
> 全く検討も付かなかった。
見当も
> 一通り吹き終わったちび幽香は、
拭き終わった
八重結界さんの作品だから、どうせ幽香の死因は明かされないだろうな、と思ったら予想通りw
内容が阿求による「ちび幽香観察記録」でしかなく、可愛くはあるんだけど物足りない。
今後に期待ということで、この点数を。
これは求聞史紀の記述を書き換えさせようとした
ゆうかりんの壮大な罠だ
……でも本当に可愛く思って書き直す分には阿求的にも問題はないか。
続きはまぁボチボチと製作したりする予定です。
上海人形とちび幽香はセットになりませんか?
ちび幽香りんにはどこで会えますか?
あっきゅんと幽香の組み合わせ自体はしばしば見かけますが、
いきなり幽香の死から始まるのは初めて見ました。
が、これはこれでなかなか新鮮。
続きにも是非期待しています。
続きがすごく楽しみです。
ちょっくら向日葵畑行ってくる
ナチュラルにああなったら面白いな。
ひたすら愛でたい。