Coolier - 新生・東方創想話

フランお母さまの悲喜交々 1

2009/01/12 22:26:20
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 ※ 小説に前置きは無粋、そう私は考えておりますが、今回、このように前書きを書くのは、私が良心の呵責に苦しむためです。

   次の要素に拒絶反応を起こされる方は申し訳ありませんが、ブラウザのバックでお戻りください。

   百合   オリキャラ   これはひどい

   以上です。
 
   なお、この小説でレミリアお嬢様がキャラクターについて言及しておりますが、これは作者の意思を全面的に表すものではありません。他の作者様のキャラクターや構成を非難するものではありませんので、くれぐれもご了承ください。全てのキャラクターは作者様のみではなく、読者様の心の中にも宿っていると信じております。この文章はそのキャラクターの尊厳を踏みにじるような意図は一切ありません。もしご不快に感じるのでしたら、謹んでお詫び申し上げます。

   以上のことをご了解していただけたら、どうぞ、この作品をお楽しみください。
   少しでも楽しんでいただければ幸いです。





















   



 ゴロゴロと雷が鳴る。
 春雷だった。
 幻想郷に冬の終わりを告げる雷が鳴っていた。
 情けないが、私は雷が嫌いだった。
 495年以上生きているが、怖いものは怖いのだ。
 おまけに空には暗雲が立ち込め、雨もザアザアと強く降っていた。
 不吉なことがありそうでとても不気味だった。
 そう、何かホラーだとかSF映画みたいなことがありそうで。
 悪魔らしくないわ、とお姉さまは言うが、そう言うお姉さまも雷が鳴るたびに、頭を抱えていた。
 外にも出られないこんな日には、居間で推理小説でも読みながらソファの上で寝転がっているのが一番なのだが、

 私はレーヴァテイン片手に廊下を全力疾走していた。

 目の前には白い布を被った悪魔が同じく、猛ダッシュしていた。

 「だ・か・ら!! 人のドロワーズ、勝手に被るなって言ってるでしょ! お姉さま!」

 私は前を走っている、ドロワーズ・デビルに向かって叫んだ。お姉さまは後ろを振り向かずに、全力で逃走しながら答えた。
「あら、フランは有名なことわざを知らないのかしら(ふかー)? 『ドロワの下にも三年』(ふかー)。意外と常識がないのね(ふかー)」
「常識がないのはお姉さまだ! 『石の上にも三年』でしょうが! だいたいドロワ被って何の修行する気だよ! それで、お姉さまはこれが何回目だと思ってるのさ!?」
「あら(ふかー)、あなたは今までに食べた(ふかー)パンの数を覚えているのかしら(ふかー)?」
「13枚。私は和食派ですわ……………………って違うよ! 思わず魔理沙の真似しちゃったじゃない! そもそもドロワーズを被った回数とパンを食べた枚数を一緒にするな! それと、ドロワーズの中で深呼吸しないでって言ってるでしょ!」
 全力で走りながら深呼吸をするって、お姉さまはどういう肺構造をしているんだ……?
「500年生きていれば(ふかー)いろいろなことが身につくものよ(ふかー)」
「うわー、何か説得力があって嫌だなぁ…………でも、無駄な能力じゃない?」
「もちろんドロワーズの中限定(ふかー)」
「うわ! 本当に無駄な能力だ!!」

 事のあらましは、説明しなくてもだいたいわかるだろう。地下室に本を取りに戻ったところ、地下に通じる階段から出てきた、ドロワーズを被ったお姉さまと鉢合わせしたのだ。そして、そこから紅魔館内すべてを使った鬼ごっこが始まった――――
 しかし、お姉さまはこういうときカリスマを気にしないんだろうか。けっこう、普段からうるさいのに。ああ、ほら、妖精メイドたちがくすくす笑ってるじゃない。本当に恥ずかしいったらないよ……………………
 レーヴァテインを握ってはいるものの、むやみやたらに振り回すわけにもいかない。避けられれば屋敷の中を壊してしまうだろう。最悪、メイドたちを巻き込んでしまうかもしれない。咲夜たちに迷惑をかけるのが目的ではないのだ。だから、確実にお姉さまだけに命中させられるところで使うしかなかった。しかし、この変態、それをわかっているらしく、壁やら天井やらを三角跳びしながら逃走していた。吸血鬼の身体能力を下着ドロに使うなよ……………
 いつもなら咲夜や美鈴がお姉さまを捕まえるのを手伝ってくれるのだが(パチュリーは呆れ果てたらしく、もう勝手にやって、と手伝ってくれない)、あいにく、咲夜は食料調達のために人里にお出かけ中(雨なのにご苦労様)で、美鈴は正門のところの詰め所にいる。お姉さまはあえてこの時がくるのを待ち構えていたのかもしれない。最近、大人しいからおかしいなとは思っていたのだ。すばしっこいお姉さまを捕まえるのは一人では大変だが、このまま放っておくわけにもいかない。お姉さまが私のドロワーズを使って何をするかと考え……………………いや、考えたくない。恐ろしくて私の頭が、いや、魂が拒絶している。とにかく捕まえないと大変なことになる、と私の無意識が語りかけていた。
 角を曲がり、一本道が続く。だが、この吸血鬼には関係ない。廊下、壁、天井と三次元的に逃げ続ける。いや、お姉さま、壁ならまだとにかく、天井を、三角跳びするんじゃなくて、そのまま走り続けるのはいくら何でもやりすぎでしょ? それにしても、この変態、ドロワーズ被ってるのに前がちゃんと見えてるんだろうか…………
 だが、幸いなことにこの廊下には誰もいなかった。ここならレーヴァテインを使っても、廊下は壊れてしまうかもしれないが、誰も傷つける心配はなかった。使うなら――今しかあるまい。咲夜からも、お姉さまが変なことしたらそれを優先して止めるように言われてるし。

 ――ごめん、皆。

 私は心の中で謝りながらレーヴァテインに魔力をこめ、振り上げた。





 しかし――――





 その瞬間、ものすごい速度で――後ろから何かが私を追い抜いていった。



 「え?」



 気配は読めなかった。気づいたら、その高速な物体が私の横を通り過ぎていったのだ。地下室から出られるようになってまだ数年しか経っていないとはいえ、私も吸血鬼だ。スピア・ザ・グングニルくらいの速度をもったものが近づいてくれば、察知できるはずである。しかし、私は横を通り過ぎるまで、その高速の物体の存在に気がつかなかった。
 
 そして、次の刹那、

 轟音が響き渡った。
 
 私は魔力を解放することなくレーヴァテインを下ろし、廊下の先を見た。
 

 廊下の壁にはお姉さまが二人張り付いていた。


 「…………………………………………!?」


 二人のお姉さまが、私の先、三十メートルくらい前の曲がり角の壁にめりこんでいた。お姉さまが私の前を走っていたのが十メートルだから、高速飛翔物体がお姉さまに当たって吹っ飛び、両者とも壁に衝突したのだろう。壁には当然ヒビが入っていた。修理するのが大変そうだ。今日、こんなに雨が降っているが、雨漏りしたりしないだろうか。
 私はゆっくりとお姉さま二人に近づいていった。
お姉さまが二人。
 私の前にお姉さまは一人しかいなかったから、後ろから高速で飛んできた物体は、もう一人のお姉さまだということになる。一人はドロワーズを被ったまま壁に張り付いていて、もう一人は何も被っておらず、蒼の混じった銀色の綺麗な髪をしていて、こちらも壁にめりこんでいた。この何も被っていないほうのお姉さまが、私の後ろから飛んできたお姉さまなのだろう。
 
――新しい、スペルカードか?
 
 私も四人に分身する、禁忌『フォーオブアカインド』というスペルカードをもっている。だから、お姉さまが分身のスペルカードをもっていても何も驚くことはなかった。なら、この新しいスペルは、敵の後ろから自分の分身を高速で飛翔させて命中させるものなのだろうか? 弾ではなくて、自分の分身を当てるのだとすれば、なかなか斬新なスペルだ。と、すると、お姉さまは自分のスペルカードで自滅したことになるのか? 
 私は後ろを見た。ひょっとすると、この分身だけではなく、他にもたくさんの分身が後ろから飛んでくるかもしれないからだ。しかし、真っ直ぐな廊下があるだけで、他には何もなかった。新手の分身が体当たりしてくる心配はないようだった。

 ――ん?

 二人にだいぶ近寄ったところで、ようやく私は気づいた。

 ――分身じゃない?

 ドロワーズを被っていないほうの女の子は、よく見ると、お姉さまと違う格好をしていた。お姉さまは肩より少し長いセミロングの髪だが、この女の子はそれよりも長く髪を伸ばして、ツインテールをしていた。
さらに翼も違う。黒なのは同じだが、クリスマスツリーの飾りのように、その形は、いくつも宝石をぶら下げた木の枝のように見えた。

 ――私と同じ翼?

 そう、その女の子の翼は、色は違うとはいえ、私のものと同じ形をしていたのだった。

「「痛たたた……………………」」
お姉さまと女の子は壁から身体を離した。二人して、顔を押さえて痛がっている。だが、無傷らしい。鼻血も出していなかった。まったく、吸血鬼の身体は頑丈だ。
「フランのドロワーズがなければ死んでたわ」
「もういい加減にしろ」
私はお姉さまの頭をはたき、ドロワーズを脱がそうとした。お姉さまは両手でドロワーズをつかみ、抵抗してきた。

 「うーん、失敗、失敗…………。まさか、こんなところに出てくるなんて。調子に乗って、バッドレディスクランブルごっこするんじゃなかったなあ……………………」

 女の子が涙目で鼻を押さえていた。
 女の子の顔つきはとてもお姉さまに似ていた。服もお姉さまと同じく、ピンクがかった白いドレスだ。細部の意匠が違うとはいえ、つくりはほとんど同じだった。見間違えるのも無理はなかった。歳も私たちと同じくらい(少なくとも外見的には)だったから尚更だ。私はお姉さまとドロワーズの奪い合いをしながら私は女の子の様子を観察していた。
 女の子は、「ここはどこだろう?」と言って、周りを見回す。すぐに、彼女の視線は私たちのほうに向けられた。

 私たちを見つけて瞬間、女の子の目が大きく開かれた。

 すると、女の子の顔がぱあっと明るくなった。
 
 そして、彼女は信じられない言葉を言った。







 「レミリアお母さま! フランお母さま!」







 は?





 レミリアお母さま?





 フランお母さま?





 驚きのあまり、私はドロワーズから手を離して、女の子の顔を凝視していた。お姉さまもドロワーズを引っ張る力が抜けてしまった。
 混乱する私たちを尻目に、彼女は私たちに抱きついてきた。わけもわからず、私は彼女に抱きつかれるままになっていた。
女の子はただにこにこと笑っていた。
 私は呆然としていたが、なんとか頭を働かせて、正気を取り戻した。そして、女の子に質問した。
「あ、あの、今、君、レミリアお母さま、フランお母さまって言った?」
「うん、そうだよ、お母さま!」
どうやら、聞き間違いではなかったらしい。この子は確かに私たちをお母さまと呼んだのだ。
「あの、さ。人違いじゃない? 誰かと間違ったりしてないかな?」
私は焦りながら、女の子に訊いた。私もお姉さまも子供を生んだことなんてあるはずがなかった。ていうか、こんな幼女(自分で言うのも虚しい話だが)が子供を生むわけがなかった。許されるわけがなかった。
 しかし、女の子は口を尖らせて言った。
「えー、そんなことないよ。どう見てもお母さまはお母さまだもん。娘の私が見間違えるはずがないもん」
 心外だなあ、と女の子は拗ねて頬を膨らませた。
 

 可愛い。
 

 ……………………違うだろ! 違うだろ、私! 落ち着け! 落ち着くんだ! 

 私は必死に自分に言い聞かせる。胸が温かくなっている場合じゃない。とにかく彼女の誤解を解かないと。
 私が必死に頭を動かしていると、横の廊下から、誰かが駆けてくる足音が聞こえた。私はその方向に顔を向けた。
 
 咲夜だった。

 「お嬢様方! すごい音がしましたが、大丈夫でしたか!?」

 どうやら、咲夜は買い物から帰ってきていたらしい。先ほどの轟音を聞きつけてやってきたのだろう。だが、咲夜は私たちに近づいてくると、急に足を止めた。
「……………………レミリアお嬢様が二人? いえ、少し、違いますね……」
咲夜は眉をしかめて呟いた。女の子が咲夜を見つけて言う。



「あ、咲夜さまだ!」



 ……………………咲夜さま?



 私は混乱するばかりだった。咲夜も困惑するような顔をした。お姉さまはドロワーズを被っているのでわからないが、きっと私や咲夜と同じように困った顔をしているだろう。ていうか、早くドロワーズとってよ。
「ええっと、確かに、私は咲夜ですが…………『咲夜さま』と呼ばれたことはないですね……………………」
咲夜は首をひねりつつも、女の子に訊いた。
「申し訳ありませんが、お名前を聞かせていただけますか?」
すると、女の子は「ああ、そうか」とぽんと手を打った。そして、また信じられないことを言った。





「そうだった。私はこの時代じゃ、まだ生まれてないんだ」





 ………………………………………………………………。
 絶句する以外なかった。もう頭がついていけない。
 そんな私たちを無視するように、女の子は、お姉さまと私にそっくりな顔で、天真爛漫に笑い、口元に牙をのぞかせて言った。





「私は、マリア・スカーレット。レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットの第一子だよ」





 もう限界です。
 


 私と咲夜が何も言うことができず、自失する中、お姉さまは、私、咲夜、そして、マリアを見回して言った。

「……………………とりあえず、居間で話をしましょう」

 お姉さまの声は落ち着き払っていた。さすが、スカーレット家の第一公女。このような事態でもお姉さまは行うべきことを見失わなかった。



 だが――――



「それより先にドロワとれ」
私はドロワーズを被りっぱなしのお姉さまの頭を引っ叩いた。

















 居間にはたくさんの人間が集まっていた。お姉さま、私、咲夜、パチュリー、美鈴、パチュリーの司書である小悪魔もいた。そして、今回の事案の中心人物、マリアもそこにいた。マリアはさっきからずっと私の腕に張り付いていた。悪い気分はしないのだが、どうにも複雑な気持ちになる。
居間の空気は重たかった。パチュリーは唖然とした顔をしていた。普段、何事にも興味がなく、何物にも動じないという素振りをしているパチュリーにしてはとても珍しかった。小悪魔はもう目が点になっている。状況を理解しきれないらしい。その気持ちはよくわかる。美鈴も困ったように笑っていた。咲夜はお茶を入れたり、お菓子を用意したりと忙しそうにしていたが、落ち着かなくて仕方がないようだ。お姉さまはというと、じっとマリアのことを見ていた。その目は決して厳しいものではなかったが――どうやら、お姉さまはマリアについて深く考え込んでいるようだ。
 マリアは咲夜にもらったお菓子を美味しそうに食べていた。マリアは素直で明るい女の子だった。
「ありがとう、咲夜さま!」
マリアははじけるような笑顔で咲夜にお礼を言った。咲夜は微笑み、お礼を言っていただくほどのことでは、と答えていたが、少し困ったような顔をしていた。
「その、マリア様……? 私のことは咲夜とお呼び捨てください。私は一介のメイドにすぎないのですから」
咲夜はマリアにそう言って微笑んでみせた。だが、その微笑から咲夜がとても戸惑っていることが読み取れた。まあ、そうだろう。もしマリアが本当に私たちの娘なのだとしたら、主君の令嬢から「さま」と呼ばれていることになる。従者としては非常にきまりがわるい。だが、マリアは納得がいかないというように、首をひねる。
「私の時代でも、咲夜さまは、咲夜と呼べ、って言うんだよね」
「まあ、マリア様の時代に私が生きておりましたら、そう申し上げるでしょうね」
「うん。でも、神様なんだから、もっと堂々としていてもいいのに」
「は?」
咲夜は今度こそ度肝を抜かれたようだ。呆然とした顔で、「神様、ですか」とマリアに尋ねる。マリアはうなずいた。
「そうだよ。三闘神の一柱。博麗霊夢、霧雨魔理沙、十六夜咲夜で、三闘神。弾幕ごっこの神様だよ。ご利益は『家内安全』だったかな?」
「………………………………………………………………」
「私が生まれて二、三年で死んじゃったから、人間のときの咲夜はよく知らないけど、その後、祀られて、神様になったんだよね。英雄神ってやつ」
「………………………………………………………………」
咲夜は何も言えなくなってしまった。ぶっちゃけ私たちも何も言えなくなった。私たちはマリアの話にただ黙るだけだった。



 「とにかく、もっとよく話を訊いてみましょうか」



 口を開いたのはお姉さまだった。お姉さまはマリアに微笑みながら訊いた。
「あなたの時代は、第何季かしら?」
幻想郷では独特の暦が使われている。基本的には太陽暦と同じだが、博麗大結界成立を第零季とする。西暦で言うと、第零季は1885年になるらしい。今はもう新年を迎えて、第12X季である。マリアはすぐに答えた。
「19X季だよ」

――――今からちょうど70年後か。

 それならば、咲夜が死んで神様になっていても不思議ではない。いや、神様になるのは不思議だけど。
お姉さまは、70年後ねぇ、と感心したように呟き、マリアに次の質問をした。
「……………………それで、マリア。どうやって、19X季から70年前の、この12X季に来たのかしら?」
マリアはこれにも笑って答えた。

「紫おばさまに頼んで連れてきてもらったの」

 その瞬間、その場にいた全員が納得した。ああ、それなら仕方ないなぁ、と全員の顔に書いてあった。


 
 八雲紫。



 『境界を操る程度の能力』をもつ大妖怪である。
 物体や空間だけでなく、概念の境界まで歪めてしまう恐ろしい能力の持ち主だ。
 私も何度か会ったことがあるが、とらえどころのない性格をしていた。
 決して悪い人ではないのだが(皆否定するが、私はそう思っている)、考えていることがつかみにくい人だと、私は感じていた。
 
しかし、『紫おばさま』か。

 随分、親しげな呼称だ。
 
 お姉さまは一瞬、「紫」と聞いて、不機嫌そうな顔をしたが、すぐに取り繕い、笑顔に戻った。お姉さまがこんなに自分から進んで笑顔を保とうとするのは、見たことがなかった。
 お姉さまは、「さて一番重要なことなんだけど」と前置きし、真剣な眼差しでマリアを見た。

「疑うようで悪いんだけど…………あなたが私の、いえ、私『の』ではないわね――――私とフ、フフフフフフフフフフフラララララララララ……………………………………………………………………………………」
「お嬢様、しっかりしてください!」
咲夜が、煙を吹いてフリーズしてしまったお姉さまの肩をがくがくと揺らした。お姉さまは、はっとして、意識を取り戻した。
「いけない…………危ないところだった。悪魔としたことが、思わず天国に行ってしまうところだったわ…………」
お姉さまは頭を振って「しっかりしなきゃ」と気合を入れた。気合を入れるようなことでは――――いや、入れることか。
「ねえ、マリア。あなたが私とフランの子ど、どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド………………………………………………………………」
「お嬢様、お気を確かに! 台詞が漫画の効果音になってます!」
駄目だ。先に進まない。そう思ったのは私だけではなかったらしく、パチュリーがマリアに質問の先を続けた。
「マリア。あなたがレミィと妹様の子供だということを示す証拠はないかしら?」
その言葉を聞いた瞬間、お姉さまは鼻血を吹いた。作用・反作用の法則の通りに、反動で椅子から落ちて頭を打つ。これはひどい。
 マリアは、「あっ」と言い、スカートのポケットを探った。「紫おばさまがもっていけと言ってたのは、このためなのか」と呟きながら、マリアは何枚か写真を取り出した。
 テーブルに置かれた写真を皆で覗き込む。
 マリアを真ん中に、お姉さま、私、パチュリー、咲夜(今と同じ姿だった)、美鈴、小悪魔が、居間で皆笑って映っていた。
 もう一枚の写真は、今より少し小さいマリアの写真だ。私(いまの私より二、三歳くらい年上の容姿だった)がマリアを抱っこして二人で笑っていた。
 さらに別の一枚。マリアが赤ん坊の頃だろう。お姉さま(やはり今より数歳年上に見えた)が銀髪の赤ちゃんを抱いて、とても優しそうな顔で微笑んでいた。
 他にも写真があったが、これらのことから言えるのは……………………
 
「……………………どうやら、信じるしかないようね」
「……………………そうだね、お姉さま」

 私たちの完敗だった。本当にマリアは70年後の世界からやってきた、私とお姉さまの子供のようだった。




 私とお姉さまの子供? 




 子供?




 私とお姉さまの?




 私とお姉さまの子ど、どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド………………………………………………………………




「しっかりして、妹様! あなたまで煙吹いてちゃだめでしょ!」


 私の肩を揺する手があった。パチュリーだった。パチュリーは緊迫した表情で私の肩をつかんでいた。
「え、パチュリー、私、煙吹いてた?」
「ええ。レミィはともかく、あなたまで変になっちゃ駄目よ」
「あ、うん……………………ごめん」
私はぼんやりとしながらもパチュリーの言葉にうなずいた。お姉さまを見ると、お姉さまも煙を吹いていた。咲夜が肩をつかんで必死に正気に戻そうとしているが、少し時間がかかりそうだった。
「まあ、確かに…………」
パチュリーはマリアをまじまじと見ていた。
「レミィと妹様を足して半分に割ったような姿をしてるから、そう言われても何も不思議はないけど……………………」
「うん、私もお母さまたちに似てる、ってよく言われるよ!」
マリアは上機嫌に笑った。確かに髪の色やら、翼の形などを見ると、私とお姉さまの特徴を引き継いでいた。しかし……………………
「魔法で生まれたのかしら?」
パチュリーは顎に手をやりながら呟いた。すると、マリアは怒ったような顔をした。

「違うよ! ちゃんとお母さまのお腹の中から生まれたんだよ!」

 マリアの言葉に、その場にいた全員が黙り込んでしまった。写真をもって談笑していた美鈴と小悪魔も黙ってしまった。
「きっと…………人工授精した後に、子宮に戻したんでしょ……………………。魔法で人工授精できるなら、その後も子宮に戻すことないのに……………………レミィと妹様も人間みたいなことするわね……………………」
そう言ったパチュリーの顔は蒼白く引きつっていた。何かを否定しなければならない、という必死の感情が彼女を支配しているようだった。私たちもパチュリーと同じものを強く感じていた。これ以上、深入りしたら恐ろしいものに引っかかる、という気がしたのだ。いや、これは誤魔化しだ。私たちは気づいていた。私たちは口に出すのもためらわれるような恐怖が存在する可能性について気づいた上で、考えたくなかったのだ。私たちの間にはお互いに、これより先は踏み込まないようにしようという空気が出来上がっていた。しかし、私とお姉さまの子供はその空気を見事にぶち破ってしまった。

「ううん、人工授精じゃないよ。ていうか、そんな必要はなかったらしいし」

「………………………………………………………………」

 この子、何でこんなこと知っているんだろう。親の顔が見てみたい…………………………………………今、自分で言っててすごく虚しくなった。

 「そ、そういえば、マリアは何歳なの?」
私は話の流れを変えるつもりで、マリアに訊いた。
「私? 私は15歳だよ」
「じ、15歳かぁ。若いねー……………………」
どうやら、今からちょうど55年後にマリアは生まれたようだった。
「15歳なのに、こんなに大きいんですか?」
小悪魔がパチュリーに訊いた。小悪魔が不思議に思うのも無理はない。マリアは15歳にも関わらず、500年以上生きている私やお姉さまとほとんど同じくらいの容姿の女の子だったからだ。パチュリーはうなずいて答えた。
「ええ。吸血鬼は最初の十何年かは人間と同じ速度で成長するのよ。このときに外敵に攻撃されたら危ないからね。それでレミィや妹様なんか見てわかるけど、あの幼女の姿でとんでもない身体能力を持つようになるから、それ以上は早く成長する必要はない。ついでに言うと、妖怪は魂のカタチによっても姿を変えるから、精神年齢も容姿に影響するわ」
レミィは精神年齢が低いからあんな幼女姿なのよ、とパチュリーは締めた。なるほど、それはわかりやすい…………………………………………ちょっと待て。それだと私も心が子供だってことか?
いろいろと納得がいかない、と私は頭を抱え込んでいたが、そんなことは気にせず、マリアはパチュリーに話しかけた。
「ねえ、パチュリーおばさま、この時代もお薬作ってるの?」
「え、薬かしら?」
パチュリーはおばさまと呼ばれたが、あまり気にしてないようだった。むしろ、嬉しそうに見える。
「必要があれば作ることはあるけど。でもそんなに年中作っているわけじゃないわ」
「へえ、そうなんだ」
「あなたの時代の私はよく薬を作っているのかしら?」
「うん! 私が生まれるちょっと前に、図書館の横に地下室を新しく作ったんだって。そこに機械や魔法の器具を入れて、ベルトコンベア式に大量生産してるんだ」
 紅魔館の収入源の一つだよ、とマリアは言った。
 パチュリーが薬品工場の工場長になっているのか……………………
 何とも感慨深い話だった。
 しかし、次のマリアの言葉はとんでもない事実を私たちに突きつけた。

「お母さまたちの不妊治療薬を作ったのも、パチュリーおばさまだったんだよ!」

 マリア以外の全員の視線がパチュリーに殺到した。パチュリーは今までに見たことがないほど、慌てふためいていた。
 私はパチュリーの肩を握り、ぎりぎりと締め付ける。

「パ・チュ・リ~~~~~~~~~~~~~~~!?」

「ちょ!? 痛い! 妹様、やめて!? 私じゃないから! 少なくとも今の私じゃないから!」

マリアは私たちの気持ちも知らず、にこにこしていた。そして、言葉を続けた。
「八意薬局との共同開発だったらしいよ。大ヒット商品でそれはもう飛ぶように売れたんだって」
マリアの話を冷静に聞いてみると、幻想郷はこれから数十年後、深刻な人間、妖怪双方の少子化が訪れたらしい。それで結界の管理者、八雲紫は悩みに悩みぬいた挙句、苦渋の選択として、女の子同士でも子供ができる薬品の開発をパチュリーと八意永琳に頼んだのだという。結果、幻想郷は女性の割合が異常に増えることにはなったが、一応、人口の減少に歯止めを打つことができた。基本、女性の配偶子はX染色体しかないため(どうやら人間も妖怪も同じらしい)、女性同士の子供は女性にしかならないが、どうにかしてY染色体をもつ配偶子も作れるようになる薬を現在開発中らしい。この薬の開発が終了すれば、やがて幻想郷の男女比は元通りになるだろうと八雲紫は考えているという。
「でも、審査が厳しいらしいんだよね。たくさん、チェックがあって」
マリアは、その薬が生命の尊厳を冒涜しかねないからだ、と言った。というか、明らかに冒涜しているのだが、それでもその冒涜の程度を抑えようという考えがあるのだろう。X染色体、Y染色体両方を作り出すことができるような薬が完成すれば、前に販売していた、X染色体しか作れない薬は全部破棄してしまう予定なのだという。教育プログラムも計画中らしく、この薬がなるべく使われないような幻想郷を目指しているらしい。
 

 『少子化』。


 『女の子同士でも子供ができる』。

 
 私は55年後の幻想郷に不安を抱かざるを得なかった。人間ならともかく、私たち普通に生きてるから、どうでもいいなんて言えないし。
 

 「博麗神社の近くに小さな分社があって、そこにカップルでお参りに行って、『ゆかりんは17歳』と唱えると、チェックに通りやすくなるっていう伝説まで出来てるんだから」
油揚げを供えるっていうのも効果があるらしいね、とマリアはなぜか得意げに言った。しかし、あの大妖怪とその式は何が目的なんだろう。この親にしてこの子あり、と言うが、この管理者にしてこの幻想郷あり、とも言うのだろうか。
 私が頭の痛みに悩んでいると、今まであまり発言しなかった小悪魔が口を開いた。

 何だか嫌な予感がする。

 そして、自慢するわけじゃないが――本当に自慢するわけじゃないのだが、私の嫌な予感は大抵当たるのだ。
 小悪魔は何の邪念もはさまず、とても不思議そうに言った。

 「ところで、その不妊治療薬って、どうやって治療するんですか?」

 「………………………………………………………………」

 来たよ。

 来ちゃったよ。

 

 一番来ちゃいけない質問が来ちゃったよ。ていうか、小悪魔も空気読めてなかったの? そうなの?


 
 小悪魔とマリア以外の全員が暗い表情で押し黙るなか、マリアは言った。



「うーん、それは良く知らないんだ。お母さまたちに聞いても、まだ早いわ、って教えてくれないし」



 その言葉に、小悪魔をのぞく、私たち一同がほっと胸をなでおろす。


 
 だが、マリアは残酷にも次の言葉を続けた――――















「でも、他の人に聞いたところだと、なんでかはわからないけど、男の子のを生や「うわぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 

 









 私は絶叫した。絶叫するしかなかった。私は耐え難い絶望の中で絶叫した。
「だから、私は創想話本家でやるのは反対だったんだ!!」
「妹様、落ち着いて!!」
狂乱する私をパチュリーが抱きしめて押さえつけた。パチュリーの表情も悲痛という言葉そのものだった。だが、私は叫び続ける。魂を引き裂かれた苦痛に悲鳴を上げ続ける。
「せめて、プチなら! プチならまだ! どうして、このSSは本家向けに書かれてるのさ!! 理不尽だよ! 理不尽以外のなんでもないよ!!」
「それは…………………………………………」
パチュリーももはや何も言うことができないようだった。七曜の魔女は己の無力さに唇を噛み締めていた。
 美鈴は呆然としていた。いつも優しげに笑っている美鈴がこんな表情をするのを見たのは、これが初めてだった。咲夜は世界が今にも終わってしまうかのような顔をしていた。瀟洒なメイド長は、「私は無力だったのかしら…………」と絶望に潰れた声を出した。小悪魔は自分の発言が起こしてしまった災厄に、おろおろと涙目だった。



 ただ――



 お姉さまだけが冷静だった。



 みっともなくわめき続ける私の前に、お姉さま穏やかな表情で歩いてきた。

「フラン――――」

 その落ち着いた声は、一瞬で私の泣き叫ぶ心を静めてしまった。パチュリーが私を放す。お姉さまは、よろけてしまった私の身体をしっかりと抱きとめてくれた。お姉さまは夜空の浮かぶ満月のように優しげに笑った。その微笑に私の心は軽やかになっていった。お姉さまは子供に言い聞かすように、静かに私に語りかけた。

「フラン、まだマリアには訊かなきゃならないことがあるわ」
「お姉さま――――?」
「私たちはまだ肝心なことを訊いてないわ」

 そう言って、お姉さまは振り向き、マリアを見た。

「マリア、もう一つ、訊いていいかしら?」

「何、お母さま?」

 お姉さまがマリアに微笑みかける。その光景はどうしようもなく母娘の語らいそのものだった。お姉さまは優しい笑顔でマリアに尋ねた。


 
「どちらのお母さまのお腹の中に、あなたがいたのかしら?」







 は?







 唖然とする私、そして、パチュリー、咲夜、美鈴を無視し、お姉さまはもう一度訊く。

「あなたを産んだほうのお母さまは、私かしら? フランかしら?」

 マリアは不思議そうな顔をしたが――――答えた。

「……フランお母さまだけど「よっしゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」



 お姉さまは拳を握り締めて、ガッツポーズをしていた。目尻には涙が浮かんでいる。よほど嬉しいのだろう。妹としても喜ばしい限りだ。

 …………………………………………いや、何かおかしいだろ。

 「ねえ、お姉さま、」
私は呆然としながら、お姉さまに尋ねた。
「何が、そんなに、よっしゃあ、なの?」
「あら、フラン。わからないかしら? あなたもまだまだね」
ちっちっち、と、お姉さまは指を振った。無性に腹が立ったが、まあ、聞いておこう。
「マリアの言葉からわかることは、ね、」

お姉さまは勝利宣言でもするかのように吼えた。






「『フラレミ』じゃなくて、『レミフラ』、だということよ!!」





 ………………………………………………………………。
 何を言ってるんだろう、この人は。

 私、咲夜、パチュリー、美鈴の思考が一致した。小悪魔はもはや話についていけなくなっていた。うん、でも、たぶん、そのほうが幸せなんだろうね。

 呆然とする私たちに、お姉さまはフェルマーの大定理を証明したかのように、話し始めた。

「いいかしら? 『レミフラ』と『フラレミ』は同じようでいても、全く違うものなの。よく聞いてちょうだい。
 『レミフラ』の対立概念になる『フラレミ』だけど、これはフランが私に対してリードしているというわけね。フランに幽閉生活を強いている私が、フランに対して負い目を感じているから、フランに対して素っ気ないし、強く出られない。だけど、フランの側としてはお姉さまラブなわけだから、フランのほうから熱烈なアプローチがあって、私は押し切られてしまうというわけね。普段は強気で無愛想にしている姉が、無邪気で一途な妹に押し倒されてしまうという構図になる。『フォーオブアカインド』が使われる場合もあるわね。フランの性格に残酷属性がついていれば、破壊の能力で私が四肢を破壊されてそのまま――――ていうシチュエーションも考えられるわ、大抵バッドエンドだけど」

淡々と説明するお姉さまに、目の前が真っ暗になった。だが、お姉さまは自論の演説をやめてくれない。

「それで、『レミフラ』だけど、これは慈愛溢れる姉の私が、引きこもりがちな妹に積極的に働きかけるということになるの。中にはフランを独占せんがために幽閉しているというヤンデレ展開もあるけど、少なくとも、この私はそんなことはないわ。もう純愛の甘々よ! フランは自分の破壊の能力があるから、姉の私を心配して遠ざかったりもするけど、私はそんなこと気にしないから何の問題もないわ! 姉を心配して自分の愛情を押し殺す妹…………この世にこれほど愛おしい存在があるかしら? スカーレットのSはドSのSなのよ。フランより私のほうがスカーレット分は残念ながら高いわ。そんなドSの私が、どうしてカップリングになったとたん、受けに回らなくちゃいけないのかしら? 引っ込み思案で純粋無垢な甘えん坊の妹を優しく責めるのがこの私には合ってなくて? だいたい、妹に対して冷たいという要素についてだけど――――他の世界ならともかく、この世界の私が、このフランみたいな、神のつくった最高芸術作品のごとき女の子に対して素っ気なく振舞えると思う? ありえないわ! その髪の輝きは月の光の黄金の恩恵よりも貴くて、その顔は朝露に濡れる薔薇の花よりも可憐で、その瞳は天国の敷石に使われるルビーよりも美しくて、その赤い頬はアダムとイブが食べた知恵の実よりも清らかに赤くて、その世界で一番美しい声を紡ぎ出す唇は桜の花びらよりも儚げで…………………………………………………」

「ねえ…………パチュリー、とめてよ……………………」
「無理よ。一回、あのスイッチが入ったら、本人の気が済むまで止まらないの」
「……………………気が済むってどのくらい?」
「そうね……、いつもなら、妹様について百八箇所くらい褒めたら終わるかしら。まあ、今日は特に暴走の程度が激しいから、桁が一つくらい上がるかもね」
私は何で自分がこの世界に生きているんだろうと、足元がおぼつかなくなるくらい恥ずかしかった。自分でも顔が真っ赤になっているのがわかる。とてもじゃないが、皆の顔なんか見ていられない。

「…………まあ、いろいろと容姿について褒めてきたけど、フランの本当の魅力は、その心――心の美しさよ! 神が万物に与える慈愛の心をはるかに凌駕する優しさ、ダイヤモンドよりも硬く地平線よりも真っ直ぐな意志の強さ、タルタロスに送られるべき罪人にさえ涙を流すその慈悲深さ、雪の結晶よりも美しく清らかな繊細さ………………………………………………………………」

ああ、なんでこんな恥ずかしい人が私のお姉さまなのだろう。お姉さまは、それはもう嬉しそうに語っていた。毎日の楽しみである月光浴をするときよりも、活き活きしていた。対する私は、赤くなって床を見ていることくらいしかできなかった。

「…………ああ、もう! 表現するにもこの世の言葉では、とても足りないわ! とにかく、フランは素晴らしいのよ。『フラレミ』も悪くないけど、私は『レミフラ』ね。フラン最高!! それ以外、言えることはないわ!」

 やっとお姉さまの演説が終わった。お姉さまとマリア以外は、皆気まずそうな様子だった。お姉さまはとても満足したような顔をしていた。マリアはぽかんとした顔でお姉さまと私を交互に見ていた。
 ようやく喋れるようになった私は、お姉さまに言った。
「ねえ、お姉さま……………………マリアもいるんだし、そういう話を皆の前でするのはやめない?」
「あら、そんなことないわよ」
お姉さまは胸を張って、快活に笑った。

「娘に自分の伴侶の素晴らしさを言って聞かせるのは、大切なことだわ」

お姉さまはとても誇らしげだった。私はお姉さまのすっきりとした笑顔に何も言えなくなってしまった。

私がため息をつくと、




 「あはははは」




 マリアが笑った。マリアはとても嬉しそうに笑った。
 私とお姉さま、他の皆もマリアのきらきらとした笑顔を見ていた。

 「やっぱり、お母さまたちはお母さまたちだ」

 マリアはにっこりとして、目を丸くした私とお姉さまに言った。

 「やっぱり、私はお母さまたちの娘なんだ」
 
マリアは私たちと瓜二つの顔で目を細めていた。


















――全てはここから始まった。

 2. 灰華 ■2008/12/28 04:01:53
 最初の十数行で怪しいと思ったらコレだよ!w

 >私の子を、マリアを連れて行くのだけはやめてください!
 つまりレミマリですね、分かります(超拡大解釈)

拙作『500年の秘宝』(プチ最新作品集(作品集37))のコメント欄より



投稿5作目、第1話です。
稚拙な文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。

『友達のつくりかたとQED』を書き切った結果がこれだよ!

前回がガチシリアスだったので、その反動です。本当にこれはひどい。でも結局はシリアスにおちてくんですけどね。

読者の皆様にお詫びしなければならないことがあります。
『友達のつくりかたとQED』の総集編ですが、これを掲載したのは功を急ぎすぎたためです。傲慢にも自分の作品に対する評価に納得がいかず(この作品に自分でも自信があるのは確かです)、分割した所為か、と愚考し、とりあえずまとめてみた、という愚作を発表してしまいました。分割するより一続きの作品として読んだほうがよい、という気持ちは確かにあるのですが、連載で読んでいただいた読者様を裏切る結果になってしまいました。心からお詫び申し上げます。天罰を下したのは自分のキャラクターたちでした。私は自分の心の中のキャラクターを自分の評価のために誤用してしまいました。フランは泣き顔で逃げ出し、お嬢様は下らないものでも見るような目をしていました。咲夜さんはすごい形相で睨んでいました(本当に心の中でこのような光景が浮かんでいました)。この作品を書き始める直前まで、自分はキャラクターたちに許してもらえませんでした。今、自分は二度とこんなことをしまいと心に決めております。

情けない姿をお見せしましたが、もし、私の作品に期待していただけるのなら、これ以上の幸福はありません。よろしければ、この愚か者を生温かい目で見守ってくださいますようお願いいたします。

>煉獄様 総集編でのコメント・誤字指摘ありがとうございました。私の返信コメントには嘘はないつもりです。ですが、このような思いがあり、削除させていただきました。重ね重ねお詫び申し上げます。

この作品ですが、まだ続きます。本来は一話完結を目指したかったのですが、また長くなるようです。期待していただければ幸いです。だんだんシリアスになっていきます。

灰華様への感謝の念を抱きながら、以上の駄文をもって、一度、筆をおかせていただきます。
無在
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コメント



0.2820簡易評価
1.70煉獄削除
あ~……う~ん……。
私は、あり……かなぁ?
まあレミフラとかフラレミとかはともかくとして
ちと気になる話ではありますね。
面白いと思いますよ。
とりあえず続きがどのようになるか非常に気になるところですね。
4.40DDD削除
あ~、ざっと読ませてもらいましたが賛否両論ありそうな作品ですね。
5.70名前が無い程度の能力削除
ひとまず、続きを期待して待ちます。
6.90名前が無い程度の能力削除
文章のリズムとテンポも心地よく、キャラクターの行動と性格付けもしっかりしていて、小ネタのギャグも楽しく、何より未来の幻想郷の設定が素晴らしすぎます(爆笑)
「生やす」のは個人的に好きじゃないので、それは減点。(すみません。この作品的には必要なのだとは思うのですが)でも、霊夢、魔理沙、咲夜が神格を与えられて三闘神となっているという設定に感動/納得してしまいましたので、この点数で。
続きを期待しています。過度にシリアスにならない事を祈りつつ。
8.50名前が無い程度の能力削除
いやもういい。
やっちまえw
このまま最後まで突っ切っちまえw
素敵な電波に乾杯w

とはいえまだ途中、点数のほうは今後に期待の50点でいかせてもらいますぜー。
9.90名前が無い程度の能力削除
まぁ確かに読む人を選ぶ表現がところどころにありましたね。
私の場合はお嬢様の演説の勢いに押されて気にはなりませんでしたよ。
というか文章全体に「有無を言わさずに読ませる力」があるんだと思います。

しかし友達QEDの反動がこれですか・・・。反動って怖いですね(笑)
ともかく無事にあなたの紅魔館メンバーにも許しをもらえたようで良かったです。

出来がよければ作品全体の長さなんて関係ないと思います。
次話のUPを心待ちにしています。
12.80名前が無い程度の能力削除
さっきQEDを読みおわって感動したばかりだというのに、何してくれやがるんですかw
しょっぱなドロワーマンって、あの素敵なレミリア様はいったいどこに…
ともあれ楽しめたし先も気になるので、続きを期待しています。
下ネタは行き過ぎないように、とだけ。
18.無評価名前が無い程度の能力削除
最初にクドいくらいの注意書きだと思っていましたが納得です。
QEDのときは作者のフランを中心とした幸せになって欲しいという愛を感じましたが、
今回は紅魔館への愛が溢れすぎててだだ漏れ状態でした。このお漏らしさんめ!!

とりあえず続きモノなのでフリーレスで、楽しみにお待ちしています。
19.無評価三日月削除
QEDも面白かったし私はこっちの紅魔館も面白いと思いました。
レミフラは素敵ですよね。期待してます。
続き物なのでとりあえずフリーにさせていただきます。
20.80名前が無い程度の能力削除
この先が気になる
21.100名前が無い程度の能力削除
なんというセンスすごいなぁ
女の子同士でも子供ができる世界か…
お嬢様が程好く壊れていて好みです
22.80名前が無い程度の能力削除
夜伽にないかな~、続き。マリア誕生前夜みたいな。
27.90名前が無い程度の能力削除
いやいや、生えてるからといってリードしてるとは限らない
騎乗位で搾り取r(ry
29.90名前が無い程度の能力削除
メメタァ!なのは頂けないかな。でもいいや。

「愛があれば、女の子同士でも子どもはできます。」
幻想郷だから、不思議で済んだのに・・・済ませれたのにっ!
引き返せないなら突き進めばいいと思う。
31.無評価名前が無い程度の能力削除
三闘神
『鬼』巫女
『魔』砲使い
なので、とりあえず咲夜さんが女神であるってことは判った
34.100名前が無い程度の能力削除
とりあえず

個人的にOKです
36.100名前が無い程度の能力削除
咲夜さんが神化・・・だと・・・?
なるほどこれなら永遠におぜうさまたちと咲夜さんが一緒にいられる

それにしても『家内安全』とは・・・確かに紅魔館のメイドだったけどもw
魔理沙はきっと『交通安全』か『学業成就』、霊夢は『開運厄除』か『賽銭寄越』といったところかな?

早苗さんも神になったんだろうか・・・現人神といえど人間だしなぁ
45.100名前が無い程度の能力削除
いいぞもっとやれ2828wwwwww
50.100名前が無い程度の能力削除
取り合えず吹きましたwww
QEDの感動が・・・w
54.80名前が無い程度の能力削除
色々ぶっ飛びすぎだろwwwwww
レミフラもフラレミもどっちもジャスティス!!
じっくり読ませていただきますw
59.100名前が無い程度の能力削除
引き続き、続編を読んできます。
60.100名前が無い程度の能力削除
新作からここへ飛んできました
なるほど、こういう経緯で、この物語がスタートしたんですね
62.100名前が無い程度の能力削除
今までレミフラものは受け付けなかったのに、
このシリーズを読んでアリだと思ってしまった。

また一つジャスティスが増えてしまった!どうしてくれる!
63.80名前が無い程度の能力削除
レミリアの語りが素晴らしいっス。
話は面白いけど…『生やす』のは…
作者様の姉妹にはなんとなくそういうのは似合わない感じがする。
他のあなたのSSを読んだからこそ、将来的に『生やす』ならショックだなぁ…
77.100名前が無い程度の能力削除
ベネ
84.100星ネズミ削除
…ん?読んだ感想?…そうね、未来のパチェリーさんにgjとだけ伝えてくださいww
幻想郷が女の子の楽園になるのか。もう男なんていらないね。
「あっちのss置き場」で子作りの場面をくわsうわ妹様レヴァ剣は勘b(ピチューン