~紫~
「紫!聞いてるの!?」
「えぇ霊夢、勿論聞いてるわ」
全く。人間というのは本当に面倒な生き物だ。
ついこの間、幻想郷と魔界を巻き込んだ大恋愛、博麗の巫女を辞める辞めないにまでエスカレートした騒動を巻き起こしてこれだ。
一年も経たない内にアリスと喧嘩して、神社に遊びに来た私に不満をぶつける。
大人しく聞いて霊夢の頭が冷えるのを待つしかない。
…どうやら私に八つ当たりして落ち着いたようだ。今なら私の言葉も耳に入るだろうか。
「霊夢。アリスに謝った方が良いわ」
「何でよ?あっちが研究にかまけて私を無視したのが悪いんじゃない」
「貴女、その不満をアリスに一言でも伝えた?ただでさえ研究に没頭すると周りが見えないアリスよ。言われなきゃ絶対に気付かない。ここは貴女が折れた方が良いわ」
「そりゃそうかも知れないけど…」
互いに性根が悪い子では無いのだから上手く行くと良いのだけれど。
「分かったわよ。今回は紫の言うとおりにする」
霊夢が不満げに呟く。
私の役目は終りだ。スキマを開いて帰る事にする。
スキマに入る直前、霊夢の声が聞こえた。
「紫って何か助言が胡散臭いのよね。誰かを本当に好きになった事あるの?」
「紫様、お帰りなさいませ」
「ただいま、藍」
家に着くと藍がいつものように出迎えてくれた。
居間で藍が淹れてくれたお茶を飲みながら今日、神社であった事をかいつまんで説明する。
「人間というのは本当に面倒ですね」
「アリスも妖怪とは言えど数十年も生きていないからね。しかも元々人間だし。価値観も人間の頃から殆ど変化していないのよ」
霊夢は私に人を好きになった事があるか聞いた。
勿論ある。私は今も藍を誰より大切に想っている。
でもそれは人間の様に激しい感情ではない。
人間の短い一生は一瞬で消える花火のように激しく燃える。
人間の恋愛もまた同じ。激しく一瞬燃えてすぐに消える。
だけど私たちのような生粋の妖怪は違う。
寿命が極端に長く、感情も激しくは無い。
私たちの恋心は決して激しく燃え上がる事はない。
でも人間と違って簡単に消える事もない。
人を炎とするなら私たちは熾火だ。霊夢からすればまるで理解できないだろう。
「藍…」
呟いてそっと頭を藍の肩に乗せる。
「貴女は自分が妖怪で良かったと思う?」
藍も私に優しく近付き囁く。
「勿論ですよ紫様。貴女とこうしているだけで満たされるのですから」
「うん…」
言葉なんて要らない。私たちはただ寄り添うだけで良い。
~霊夢~
紫の言うとおりだ。確かに不満を募らせてるだけで何も言わなかった私も悪い。
あの七色研究バカには私が折れてあげよう。
そんな事を考えているとアリスが境内に入ってきた。
よし、私から謝ろう。
「霊夢、昨日はゴメンなさい。ずっと研究に没頭してて全然貴女の事見てなかった。…許してくれるかしら?私には貴女が必要なの」
私が謝ろうと思ってたらアリスの方が謝ってきた。
そんなアリスを見ていると怒りなんて完全に何処かに消えてしまった。
「わ、私も悪かったわ。今度から溜め込まないようにするから。アリスも不満があったら言ってよね。すぐに直すから」
どちらとも無く走り出し抱き合う。
好きな人に大事って言われただけで簡単に燃え上がる感情。すぐに消えかけるけど完全に消える事はない。ちょっとした切っ掛けさえあれば良い。
「霊夢。悪い所も言った方が良いかもしれないけど、それより楽しい事を沢山話しましょうよ」
そうだ。沢山の言葉を交わそう。私たちは完全に分かり合えないけど近付く事は出来るのだから。
もっと長いのが読んでみたいですね。
続きを期待してしまう。
喧嘩の理由も仲直りの仕方も甘すぎるぜ。
やっぱり出会いや好きになった訳を書かないとあっさり目になりますねー
>>16様
なかなか糖分高めの文を思いつかないので、そう言って下さると嬉しいです
>>まるきゅー@読んだ人様
個人的には女の子同士がイチャイチャしてるなら何でも良いです
長編は世界めーさく劇場が煮詰まっているので勇パルに挑戦中です
>>24様
店内で小学高学年くらいの子が奇声をあげながら走り回っているのを見ると不安を感じます
言葉が通じない印象を受けるので…
>>31様
仲直りの仕方のモデルはアメリカのドラマ「マルコム・イン・ザ・ミドル」です
喧嘩したらお互いの好きな所を言い合うという仲直りの仕方に感心したので
というか相手の実家に兵器をぶっぱなしながら愛を叫んだんですね、幻想郷の腋巫女はww
是非前半のおさらいを詳しく書いたものを…っ!!