白玉楼、客間。
私はそこで、我がご主人様、そして白玉楼の主と杯を酌み交わしている。
こういうとき、ご主人様たちの酒の肴、それはもっぱら従者弄りとヤな相場が決まって
いるらしい。
この場所の主、『西行寺 幽々子』さまの僕である『魂魄 妖夢』はちょうど今、燗を
つけに席を立っているのでつまるところ私が槍玉に挙げられるわけで。
私は『八雲 藍』。偉大なる、……たぶん偉大なる『八雲 紫』様の式である。
「らぁん?」
「……はい」
少々お酒の回った甘ったるい声で紫様が私の名を呼ぶ。往々にしてこれが従者弄りの
始まりだ。さて、この間のように裸踊りでもさせられるのは勘弁してもらいたいが。
「何か、面白い話をしなさい」
ふぅ、とんでもない辱めを受ける危機は回避できたらしい。らしいが、これはまた
難題を突きつけられたようだ。面白いなどという抽象的な言葉は、式である私には
結構な注文である。もしや助け舟があるかと思って幽々子さまに視線を向けると、
「期待していいかしら?」
と笑顔の魚雷を打ち込んできた。助け舟どころか敵艦隊二隻の戦艦の攻撃によって、
私、撃沈。諦観の暗い海へと沈降開始。
今思えばそんな気分だったからこそ、きわめてバカな言葉をつい出してしまったの
だろう。それが、あんな状況を生み出すなどと知らずに。
ちょっとオトナの幻想郷
「そうですねー……じゃ、夜も更けてきましたし、ここは一つ、猥談なんかやってみませんか?」
思わず口をついた言葉に幻想郷屈指の力を持つふたりの瞳が輝く。
「なーんて、冗談……」
「いいわね、藍。猥談、語りなさい」
「あらあら紫、あなたもなかなかえっちねぇ」
聞いちゃいねぇ。冗談だっつってるだろ。
「あのー……」
「でも、止めないのね幽々子」
「そんな必要ありませんもの」
だめだこいつら。聞く気すらない。
「……ぁー」
「さ、語りなさい。あなた自身の経験談を交えて」
「期待してるわ」
紙芝居屋に群がる子どもの様に綺羅綺羅した瞳で私を見るふたり。あぁちくしょう。
もうどうにでもなれ。水飴はないが代わりに酒をくれてやるさぁ!
「……はぁ、そう仰られるなら語るとしましょう。あれは私が紫様の式になる前、
更に言えば傾国の魔力に取り付かれることよりも少し前の話です……」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「……といった次第でありまして、真に僭越ながらこの話はここで御終いとさせて
いただきます。御清聴ありがとうございました」
赤裸々といえば余りに赤裸々な私の告白。一礼して阿呆な事を喋ったと深々と息を吐き、
次いで顔を上げる。上げてそこには、衝撃的な光景が存在していた。
八雲真赤。
いやなんのこっちゃ。ええとつまり、我が主は顔を耳まで赤く染めて視線を横にずらし
つつ、唇を噛み締め俯いている。ぎゅっと拳を握り締め背を丸めたその姿はとてもとても
幻想郷の管理者とは思えない。私としてはてっきり馬鹿にしたなり呆れ果てたなりの
言葉が無節操に飛んでくると思ったのだが、なんだこの今まで見た事もない初心い姿は。
「……あぁー、えぇと」
「八雲 藍」
ご主人様にどう声をかけようかと思った矢先に、私の名を呼ぶ真剣な声。思わずその
声のした方に顔を向ければ、そこにも今まで見た事もない姿があった。歌を詠むときでも、
舞を催すときでも、それどころか弾幕勝負をしているときにさえ見た事がない、幽々子さまの
真剣すぎる表情。惜しむらくはその鼻から一筋垂れた赤い血の跡か。わぁ、亡霊でも
鼻血出るんだ。
驚く私の手を取り、軽く握り締める掌のひんやりとした感触。それとは真逆の熱い瞳で
見据える幽々子さま。驚く間もあればこそ、何を納得されたのか知らないがうんうんと
頷いて、もう一度じっと見つめられた。
「ありがとう、ほんとうにありがとう」
「えぇー……」
なにがありがたいのかさっぱり分からないんですが!!
私のその想いが伝わるわけもなく、幽々子さまはありがとうありがとうと呟きながら
何度も私の手を上下に揺する。どうしようかと思ったのもつかの間、
「あのー」
おずおずと口を開いたのは、先の話半ばに熱燗を持ってきた妖夢。正直この娘にはあんな
話を聞かせたくなかったのだが、紫様の手前、中断すれば想像を絶するお仕置きが待って
いると思って止められなかったのだが……。
「○O○○○、ってなんですか?」
ぼひゅうと私と紫様がシンクロして噴く。うら若き娘が口にすべきでない言葉を、
ホントに知らないまま質問してきやがった。わからなかったら人に聞く! だが聞くべき
ことは選ぶべきだろう。もし妖夢のような可愛らしい娘が、人里でおにいさんどもにこんな
質問しようものなら
『そうか、君は○O○○○をご存じないのか。僕でよければ教えてあげよう。さて、
この先の路地裏あたりが都合がいいのだが、よければついてきてくれるかな?』
などという展開が読めすぎるほどに読める。その先の描写はあえて省略したいが、その後の
幽々子さまの怒りたるや天を衝き人里に死を撒き散らし大異変となるだろう。そのきっかけが
私の猥談。ばかばかしすぎて死にそうだ。
どう答えたものか……と悩む間もなく、やおら幽々子さまは手を離して己が従者に向き直る。
「妖夢」
「は、はい」
いつもと違う主の雰囲気に慌てて居住まいを正す妖夢。いや、妖夢じゃなくともこれは
居住まい正したくなるなぁ。
「あなたがそういうことを聞くのはまだ早いわ……いいえ、あなただけじゃない。私ですら
早すぎる話なのよ」
「そう……なのですか? 幽々子さま?」
こくりと頷くどこまでも真っ直ぐな表情に、妖夢は気圧されている。あの、えーと。
こういうのをカリスマって言うのだろうけど、明らかに発揮しどころを間違ってる気が
するのは気のせいか。
「あなたが未熟だからと責めているわけではないのよ。妖夢、そこはわかって」
「はい。かしこまりました」
正座して恭しく礼をする妖夢。そしてふっと上げた顔がそのまま私の顔を向いているのに
気付く。
「あぁ、そうだなぁ。確かに幽々子さまの言うとおり、妖夢には少し早い話かもしれないな。
時が来たればこういう話で盛り上がりもできるんだろうが、えーとそのなんだ……○O○○○を
知らないようならまだ先の話になろうさ」
○O○○○と口にした瞬間、なんか我がご主人様のいる方から小さく「ぅきゅぅっ」とか
呻く様な声が聞こえたが放っておくことにする。
「だとして、だ。知らないからと言って無理に聞きに回ったりするのもよくない。きっと
いずれ、分かるようなことさ。例えて言うなら花を咲かせたいといって肥料を与えすぎれば
良いわけではない、といったところかな。今ここで話していることはそういう類のものである、
とそれだけ認識してくれればいい。さて、妖夢。まだまだ夜は長いし酒の量も減ってない。
よければつまみでも作ってきてもらえると嬉しいな。できれば手の込んだ奴を」
「……えぇ、わかった」
ほっ、何とか言いくるめることができたようだ。妖夢は一礼して部屋を出て行く。なんとか
一問題は片付いたようだ。だがここから私はもう一人妙なのの相手をしなければならない。
「で、紫様」
「ひゃうんっ!? ん~~~~~ッななななななななななななななななななななななななな
ななななななななななななななななななななななななななななななななにかしら、ら、らら、
らぁ、藍」
はいぃ!? 何だその声その所作その表情!? 名前を呼んだだけで飛び上がりそうなほど
驚いて、ついで狼狽もここまで来れば芸術的な”ななななスクラッチ”。一瞬視線をこちらに
向けたがすぐさま脇へとそれを逃がす。白魚のような人指し指は先程から畳をぐにぐにする
ばかりだ。顔は相変わらず真っ赤なまま。何だこの生物。
「仰られたとおりに猥談を披露させて頂きましたが、面白うございましたか?」
「えええええ、ええと、そそそ、その、まま、まぁ、うんまぁ、そ、そこそこにはね。
うん、そこそこ」
あたふたと視線を泳がせつつ、畳には相変わらずの複雑な幾何学模様を指で描くご主人様。
それでも本人はいつもの泰然とした大妖怪であろうとしているらしい、無駄だが。
しかしここまでおたつくか普通? 私が先に話したのは普通の男女の夜の営みに毛が生えた
ような程度の事だよ? 宵闇の妖怪だって「そーなのかー」と流しそうなレベルと思うのだが
それでこの有様か。
しかしよくよく思い返してみればこんな姿を曝す節に思い当たりもする。前に霊夢に
あまりにもべったりな紫様に向かって、冗談で
「霊夢と婚姻の証としてキスでもしますか?」
などと言った瞬間顔から湯気でも出そうなくらい真っ赤になった挙句、スキマに仕込んだ
卒塔婆で私を吹き飛ばしてくれやがった記憶がしっかり残っている。お仕置きの質は
ともかくとして、あの純情さが本物だとすれば、先に私に求めた猥談の質も知れようというもの。
おててつないで小路を行けば程度のレベルで済むとか思ってたのかご主人様は。
……なんだろう、普段なら畏れ多くて思いもしない感情が渦巻きだした。
いぢめたい。
「……そう、ですか。そこそこ程度でございましたか……」
「え、え、ええ。うん、そそそ、そう」
「不肖八雲 藍、無調法者とはいえご主人様の命、叶う事もなきは誠に持って不覚の至り」
「う、うんうん」
「なればやはり、ここは取って置きの話をせざるを得ませんね!!」
「……。と、とと、ととと。ととととととととととととととととととととととととっぽっき!?」
話の流れ的にここでやめると見せかけておいて安心したところを奈落の底へ叩き落とす!
普段の紫様なら目論見以前に看破してお仕置きフルコースだろうが、まぁなんというか、
今の紫様は紫様であって紫様じゃないっていうかなんだこの可愛い生物。すっかり罠にはまって
異常なまでにうろたえだした。そしてトッポッキって何だ。
「それは韓国のお餅料理ね、紫。私は覚悟はできてよ、藍。いいえ、師匠」
「シショウっ!?」
「えぇ、師匠」
トッポッキの正体はわかった! って、ちょちょ、ちょ、ちょっと待て。今度は私が
面食らう番だったのか。真剣な眼差しで姿勢を正し聞きにまわる姿は確かに弟子と見るなら
非の打ち所がないのだが……鼻血以外は。だがしかし師匠などと呼ばれるのはいかにもまずい。
そんな事をあの烏天狗にでも嗅ぎつけられたら一巻の終わりだ。
”幻想郷一のエロ師匠”
などと銘打たれた新聞など書かれた日には勢い余ってうっかり射命丸ごと幻想郷を破壊
しかねない。っていうかする。紫様が泣いてもする。
「ゆ、幽々子さま、とりあえず師匠は勘弁してください」
「そう……分かったわ。それはそうとして、いつでもどうぞ」
至極残念そうな表情を笑みに変えて、話を待つ幽々子さま。よかった、なんとかエロ師匠の
座は回避できたぞ。さて、ならば続きか。
「はぁ。では紫様もよろしいですか?」
そう言いつつご主人様を見てみれば、涙を溜めた目をかっと見開いて真っ赤な顔で
微振動していた。……いや、あれは小さく小さく頭を振っていやいやしているのか。なんだこの
可愛い生物。それはさておき、どうしようかと悩んでいると……
「ひにゃうっ!? にゃ、なに!? 何するの幽々子ぅっ!?」
「いいかげん覚悟を決めなさいな紫」
紫様の背後から忍び寄り羽交い絞めを決めた幽々子さま。ぢたばたと、しかし弱々しく
抵抗を続ける紫様をものともせずアイコンタクト。なるほど、よく出来た弟子……ち、違う違う、
流石は幽々子さまって思うところだろう私。ともかくその意気を無駄にするわけにはいかない。
「それでは、始めさせていただきます!」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「……拠って件の如し! 誠に以って御清聴、感謝の極みッ! 以上、語り手は八雲 藍で
ございましたっ!」
かつて私が三国にて暴虐を振るった、その中でも特に悪名高かった中国での話。悪徳と
淫蕩に塗れたその頃の、若かりし私よはっちゃけ過ぎもいいところだろうってな事を
喋り終えて深い一礼。下げた頭をくっともたげると、そこには筆舌にし難い光景が顕在して
いた。
血の海に沈む華の亡霊と、眼をぎゅっと閉じ縮こまる真っ赤な隙間繰りの大妖怪。
”これはひどい”、訳もなくそんな単語が脳裏をよぎった。だがしかし、これは実際に
酷い有様だ。異変と思われても仕方なく、そんなことになれば霊夢が
「異変だヒャッホウ! さぁ、殴られたい奴から前に出ろ」
とかいいながら飛んできそうでこれは大変によろしくない。そうなる前に事態の打開を
図らねばなるまい。もう一度おふたりを見る。
幽々子さまは話の佳境に入る直前、
「……紫、私はここまでみたい。あとは、頼ん……だ……わ……!」
とか何とかやたらかっこいい台詞を吐きつつ自らの鼻血の海に静かに沈まれていった。
もちろん後を任されたその相手は脅える子猫より頼りなかったのだが。今改めて幽々子さまの
お姿を見やると、芸が細かいというか、きっちり鼻血でダイイング……もう亡くなられて
久しいからなんと表せばいいのか、ともあれメッセージを残していらっしゃる。
\すげえ/
あぁ、おいたわしや。薄学たる私は亡霊という存在が鼻血と一緒に知性を垂れ流しになるもの
とは存じ上げませんでした! これからはあの四人組に幽々子さまを加えた五人組の話が
増えるのだろうか。はて、話ってなんだろう。
いかんいかん、思考にノイズが入りだしたようだ。ひとまず考えるに、大悟された表情で
安寧の紅き闇に包まれた幽々子さまを私程度で最早どうすることはできそうにないと結論
できる。とすると、あぁ、やはり自分の主の始末は私でちゃんとつけなければいけないわけか。
視線をずらした先には、膝を抱え、赤く、いや紅く紅く顔を染め閉じた目に零れ落ちそうな
大粒の涙を浮かべ、固く結んだ口はしかし小さくわななく、まるで始めて大嵐にあった少女の
ように脅えるなんか可愛い生物がそこにいた。唯一耳だけを塞いでいないのを推測すれば、
話を聞くといった以上それを放棄しないことは大妖怪、八雲 紫としての狂おしいまでの
矜持からであろう。なんといじらしい。ま、それはさておきどうすんべコレ。
「あの……」
「きゅーっ!?」
鳴いた!? なんか鳴いたし!?
「紫さ……」
「みゅーっ!?」
なんか鳴き出した可愛い生物は小さく小さくいやいやしながら縮こまれるだけ縮こまった。
……霊夢と口づけといっただけで真っ赤になる紫様に、今先程私がした話は想像の域を
遥かに超越するほどのものだったよう。そのくせ耳年増……いや、耳と知識だけはきちんと
年齢通りなもんで意味だけはしっかりと解っていらっしゃるから困りものである。問題はハートだ。
冗談抜きで永遠の17歳っていうか、17歳以下かもしれない。PG12でも過激って思うかもだ。
トラウマにならなきゃいいけどなー、などと思う私の思考を
「おつまみもってきました」
「こんばんはー、おじゃましてますよー」
ふつりと中断する声。ひとりは紛れもなく妖夢。そしてもうひとつ、聞き忘れなど絶対に
することがない、しかし何故、今ここでその声があるのか絶大な疑問が湧き上がる声。
「じゃじゃーん。おうちに居なかったんで、ここかなぁ、と思って来ちゃいましたよ、紫様、
藍しゃま~」
あぁ、そういうことね、私の愛しい『橙』っ! でもこのタイミングで来てほしくは
なかったなぁ!!
「ってきゃーっ!? ゆゆゆゆゆこ様が血塗れで、紫様はなんか怖がってるしどどど、
どうしたんですかーっ!?」
うん、全部私の猥談のせいだよ。とか言えたら苦労しないよ橙ぇぇぇぇんっ!!
「幽々子さま、早かったのですね……」
事情をある程度理解している妖夢はやたらシリアスな口調でそう呟き、鼻血付きの良い
笑顔で転がってる主人に向かって合掌しやがった。罰当たりもいいところだが、事情を
知らない橙まで真似して南無南無やりだしたので大目にみておこう。……まかり間違って
成仏されても知らないフリしておこうっと。と、
「あのー、藍さま?」
橙が穢れの無い澄んだ瞳で私を見てくる。うぅ、可愛いよぅ可愛いのはいいんだが、
なんだろう。今の私にはその清らかさが心に痛い。ともあれ、言葉は返さないとな。
「なんだい、橙」
「先ほど何かお話してらっしゃいましたけど、○○○○O○○、ってなんですか?」
頭が真っ白になる。
あぁ、そうか。わからなかったら人に聞く……って答えられるかぁぁぁっ!! と
叫びそうになった刹那。
ぼむんっ!!
明らかに何か爆ぜた音がした。まともな三人がその方向に振り向く。これ以上赤くなっては
いけないってくらい真っ赤な紫様が、本当に頭から湯気を出してゆっくりと、
「きゅ~~~~~っ」
倒れた。
「「「紫様ぁぁぁっっっ!?」」」
結局。
ぶっ倒れたおふたりを必死で介抱し、おバカな夜はお開きとなった。
幽々子さまは最後まで真剣な表情でお見送りしてくれた。少し後に解ったことなのだが、
何故あんなに興味を持たれたかというのは悲しくも深い訳があったという。
生前より濃厚な死の影と共にあり、死してその影と混じってしまったかのような幽々子さまに
とって、生殖活動、つまり生をうみだす話というのは余りに縁が遠く、そして有難い話で
あったと。側に仕えながらも妖夢は幼く、先代の妖忌は異性ゆえに話題に上がることは
なかったとも。そう考えればあの真剣さも納得といったところだ。
さて一方、問題はウチだ。
今、私と紫様は白玉楼の長い階段を酔い覚ましがてら歩いて降りている。橙はいつの間にか
疲れ果て眠ってしまい、今は私がおんぶしているところ。これなら妙な話をしても問題は
なかろうが、紫様は始終俯いてだんまりである。その沈黙が、余りに苦しい。
「あの、紫様……」
思い切って声をかけてみた。しかし返事がない。
「……紫さ……」
「なぁに、藍」
二度目にしてようやく、いつもとは違う弱々しい返事。私の心はどうしようもないほど
打ちのめされる。しばらくぶりの加虐心を抑えきれず、あろう事か自らの主に向かって
それを発揮させた結果がこれか。あぁ、くそっ、死して詫びたい。だがしかし、なによりまず。
「……申し訳ありませんでした。明らかに私は調子に乗りすぎておりました。この愚かな式は、
いかなる罰をも受けますゆえ、そのお心を……どうか、どうか……」
「やぁね。いいのよ藍。そんな事でどうこう思っているわけじゃないわ」
過ちを認める私に、優しすぎるお言葉。けれど、その顔に浮かぶ陰の正体は何だというの
ですか紫様。目と目があい、はじめて紫様は少しばかり悲しげではあるけれど、笑みを
浮かべて下さった。その笑みを免罪符として受け取る卑怯な私は、卑怯なまま問う。
「では何をお悩みになっていらっしゃるのでしょうか。愚かしい私には紫様のお心が昏くて
解らないのです」
一段、一段、ゆっくりと石段を降りながら。紫様は少し考えて、
「……貴女だから言うわね。……たったあんな程度の……ま、に、二回目は行き過ぎだと
思うけどぉ……え、えっちな話でこんなになっちゃう私は、ふ、ふ……普通の恋や愛なんて、
できるのかなぁ、って、ね」
苦笑交じりに、なんとも本当に、本当に純情溢れる言葉。あぁ、あぁ! 本当に紫様は
可愛らしい方だった!! その言葉に答える権利は今の私にあろうか。いや、そんな権利など
犬に食わせちまえ! 心を開いてくださったご主人様に応えないで何が式か! 私が答えられる
真の答えを導き出すためにしばし考える。ちらりちらりと私の顔を覗き込む紫様。十段ほど
石段を降り、私は何気なく顔を上げる。
そこに、答えはあった。
「恋も愛も、してるじゃないですか、紫様。それもとびきり素敵なやつを」
「……え?」
きょとんとした表情を向けたので微笑みで返す。そう、この方は凄い恋をして、凄い愛を
注いでいるじゃないか。
「貴女の恋人は、貴女の夫は、ここですよ。ここ、幻想郷」
「え」
「幻想郷を貴女の良人とするならば、これほど一途な恋も愛も有り得ません。違いますか?」
私の言葉で固まったように動かない紫様。だが、私はその深い愛情が本物であることを
確信している。
「……そう、か。私は幻想郷の恋人で、お嫁さん、か。……ふふ、そうかもね」
「えぇ、無償の愛を紫様は注いでいます。幻想郷はそれに……時折そっけない時もありますが、
紫様に素敵な様々な何かで応えています。最高のカップルじゃないですか」
眼前には満天の星空、静かな森、遠くには眠る人里、聳え立つ山々。紫様の愛がなければ、
消えてしまうそれら。紫様の視線も、私と同じ方向へと。
もしかすると幻想郷の持つ魅力を超えた男性が、いつか紫様の前に現れるかもしれない。
だとしても、この時に気紛れ過ぎて、時に残酷なほど冷たくて、それでもとことん優しい、
幻想郷という厄介な”恋人”と付き合ってきた紫様ならきっと大丈夫だろう。どちらからとも
なく私と紫様はもう一度視線を合わせ、どちらからともなく笑みを浮かべた。
「……さ、早く帰りましょ、藍。そうやって橙を負ぶい続けているのもきついでしょ?」
「いえいえ。可愛い式ですからそんなことは。けれど、早めに帰って早めに休むのは
同意します」
ふふ、と二人して笑って橙の幸せそうな寝顔を覗く。私の場合は肩越しだが。
「……すぅ、すぅ。……むにゃむにゃらんしゃま」
愉快な夢でも見ているのだろう。時折寝言のような声。
「……むにゃ○○○○O○○」
ぶっふぅ!?
うおーい、橙ぇぇぇぇぇんっ!?
「らららららららららららら、藍ッ!? ちちち、橙のメモリ、どどど、どうにかして
おきなさいっっっ!」
「は、はい。橙には悪いですが、こんな言葉を覚えられてはいかん、っていうかもう
覚えられてるしーっ!?」
「うぁーもうちょっとかんべんしてよぅ。ゆかりんなくぞこのやろー」
「すいませんすいませんっていうかほんとすいませんっていうかドサマギでゆかりんとか
言わないでください」
「それと、なんかいい話で終わろうとしてたけど、後で起きたらちゃぁぁぁんと今日の分の
お仕置きはするから。もう、超絶凄いお仕置きするから」
「それならこの世の置き土産、もう一度猥談でもしてさし上げますね!」
「も、もう猥談はこりごりよぉっ!!」
そんなこんなで、ちょっとオトナな幻想郷は今日も平和である。
どっとはらい。
なんとも可愛らしい八雲紫様でした。
爆笑しつつ、ラストの二人の会話にほろりと‥。
唯一欠点があるとすれば、藍の話が省略されt(どこからともなく夢想封印!)
いつもの胡散臭さが微塵も現れる事無く、恥らい続ける紫さまにドキドキでした。
でも確かに九尾の狐である藍の方が、
荒事主体で生きてきた紫や生前ほぼ独りだった幽々子より、
ソッチ方面では一日の長‥つーか、天地ほどの経験差があるはずですよね。
でも、その藍が(本人は否定するかもしれませんが)嬉々として傅いているのですから、
やっぱり紫さんがそれだけ魅力的なのですよ!
> イカロ行け!
‥えっと、ここにいて下さい(ぽっ)
それはそれとして藍さま…
\すげえ/
\ぱねえ/
お尻の方は3分くらい考えてた…
\エロ師匠/\エロ師匠/\エロい人/
生まれ変わったら幻想郷になりたい。
くそっ!こんな……こんなゆかりん……!!!
可愛いじゃないか!!!!!
しかしあれですね、さすが九尾。その手の話に事欠かないだろうなぁ。
\すげえ/\すげえ/\すげえ/\すげえ/
なぜいい話にしたし。
あんたとはいい酒が飲めそうだ。
さあ伏せ字を公開する作業に戻ろうじゃないか
まずはキャラクターのリアクションが笑える。というか、ちょろっとしか出てなかったが霊夢のキャラ像が秀逸。
>「異変だヒャッホウ! さぁ、殴られたい奴から前に出ろ」
なんという鬼巫女。あとこのSSを読んで男性未経験反応シリーズを連想した私は決して悪くはないと思う。
ゆかりんが可愛すぎて…
\やべぇ/
でも許す。
そして紫様のなんと初心なこと…
紫様から少女臭が…そしてかすかに幼女臭が…
だーらず~
>男性未経験反応シリーズ
いいもの見ました。感謝
\エロイ/
>この先の路地裏あたりが都合がいいのだが、よければついてきてくれるかな?』
すいませんこの辺詳しく書いた完全ばn(スキマ
【参考資料/おさんぽ大王第80回】
Oの位置だけで理解出来てしまった辺り、自分はもう大人なんだと思いました。
それも随分汚れた。
ていうか、橙になんて事しやがりますか貴方はwww
\バーカ/⑨\バーカ/
ああもう!!かわいいなあゆかりん!!
\すげえ/
ゆかりんかわいいいよゆかりん
下(両方の意味で)はすぐに分かってしまったwwwww
作者も藍様も\すげえ/\やべぇ/
\ぱねぇ/
ゆかりんは永遠の少女、これ真理。
でF.A(ファィナルアンサー)。
ゆかりんかわいいよゆかりん。
いや、エロというか下ネタですが。しかし素敵です。
猥談というネタがいいですよね。酒の席で、女性なのにとんでもない猥談をして周囲を驚かせるってことって、ときおりありますよね。
まあそんなことより、清純派ゆかりんが最高すぎます。あふれでる少女臭! まさかこれほどまで良い物だったとは。
ちょいとeratoho弄くってきます。
仲間にも言われるが・・・
早苗さんも言ってるけど二つ目は普通しねーよw
その上「なんだ普通じゃん」とか思った俺は汚れているwwwゆかりんマジ純情w
笑いどころ満載で最高だZE!!!!
霊夢とかゆかりんなくぞこのやろーとか気に入った所は数有れど、
この作品を一言で表す言葉はやっぱり
\すげえ/
素敵な壊れっぷりでした。
(何故か私の中で幽々子様と紫様の株が急上昇)
結論
よし、我ら藍師匠に付いて参ろう!!!
本当にエッチな方は自覚症状が無いということ。
とりあえずエッチな話というのは理解しました
評価って言ったらこれしか思いうかばねぇw
\すげえ/
とりあえず 師匠!!
それにしても藍しゃま、とんだ好色。
ああちくしょう、このゆかりんなら「ゆかりん」の呼称にまったく違和感がない!
とりあえず何故いい話にしたし
\ぱねぇ/