Coolier - 新生・東方創想話

ルーミアと少年 4

2009/01/02 15:31:00
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 オリキャラ注意

 あれから約半年、ルーミアと戦い、あしらわれた後、僕は積極的に依頼を受け、弾幕の腕を磨いていた。
新設神社防衛、これは守矢神社の早苗さんが霊夢さんと喧嘩して弾幕勝負になった際、無理やり僕が助っ人として参加させてもらったものだ。なんとか二人で霊夢さんに競り勝つことができた。
その次は新設神社制圧、これは霊夢さんが仕返しのため弾幕使い達に出した依頼だった。やはり力試しのため僕が速攻で契約、霊夢さんは呆れていたが、一緒に殴りこみに出かけることになった。これも傭兵の常と言うやつだ。

『敵は神様よ、気を抜かないで』

と言ったが、神様たちはある程度手加減してくれたらしく、ある程度戦ったところで僕と霊夢さんの力を認め、早苗さんに霊夢さんに喧嘩の事を謝るように言った。霊夢さんもすっきりしたのか早苗さんと和解し、その場で宴会になった。僕も誘われたが、修業の身ですと言って辞退した。

文さんは僕の事をシリーズ記事として書き、新聞の売り上げが伸びているらしい。人間や妖怪の友人も何人か出来、今日もルーミアと戦ったという男性の鳥妖怪と屋台で知り合った。
背中に翼が生え、短く切った青い髪を持ち、風貌は僕より少し年上といったあたりだ。

「貴方は、ルーミアと戦ったんですか」
「そうだ、とても強かった。俺も弾幕には自信があったんだが」

鳥妖怪はそう言うと、いやな思い出を吹き飛ばすかのように、注がれた酒を一気に飲み干す。

「負けた後、ホギャーって泣いて私の所へ帰ってきたもんね」

ミスティアさんの言葉に、男の鳥妖怪は顔を真っ赤にして反論した。

「ちょっ、俺はそんな泣き方してないぞ」
「じゃあ泣いて帰ってきたことは確かなんですね?」
「おい、お前まで!」
「すいません」
「そうそう、この子はいつも小さい時から泣き虫でね、いじめられてホギャーほぎゃ―泣いていたのをいつも慰めてやったっけ」
「ミス姉さん、それは過去の話だろ」
「面白い方ですね、ホギャーさん」
「だれがホギャーだ、俺の名は大桐楼禅太(おおぎり ろうぜんた)という立派な名前があるんだ」
「では大桐さん、ルーミアとはどんな戦い方を」僕は今までの雰囲気を強引に変えた。
「ああ、俺も夢中になって戦っていてよく覚えていないんだが、回避と攻撃を同時に同じ集中力でできてしまうんだ、普通俺たちは弾幕ごっこのとき、攻撃側と回避側に分かれて行うだろ?」

僕が意味を理解するのを待って大桐さんは続けた。

「あいつは両方を同時に出来てしまうんだ、複雑な弾幕を避けつつ、相手以上に高エネルギーかつ複雑なパターンの弾幕を生成できる、攻撃中も俺たちが回避に専念している時と同じ集中力で避けられてしまう。あまり強くない印象があるが、本気を出した時のあいつは強い。情けないが俺はあいつが怖いよ」
「強い妖怪なのは承知です」
「たしか君は有也くんと言ったか」
「ええ、新聞ではそう呼ばれてます」 僕の本名ではないが、弾幕使いとしては一応そう名乗っている。
「復讐は止めた方がいい。好きだった女の子の仇を忘れろとは言わないが、復讐に生きることがお前の救いになるとは思わん。考え直した方がいい。それに、奴の肩を持つ気はないが、奴はその女の子を始めから殺すつもりではなかったんだ」
「それは、どういう事ですか」

 僕は思わず身を乗り出して大桐さんに迫った。

「詳しい事は教えられないが、俺はあの晩の戦いを見ていた。女の子が奴に押され、軽い打撃で気絶させられたんだ。そしてそいつは女の子にとどめは刺さず、地面に横たえて寝かせておいた。殺す気はなかったんだよ、奴は」
「本当ですか?」
「そう、その後橋を破壊するため、奴が強力な魔力弾をこさえて撃った時、なんとか起き上った女の子が、必死に空を飛んで魔力弾の前に立ちふさがり、なけなしの結界で防ごうとした。でも力は及ばなかった」
「あんた、なんで彼女を助けてくれなかったんですか」

僕は思わず身を乗り出し、大桐さんに詰め寄った。

「俺も100%の人間の味方ではない、依頼内容に人間の救護は含まれてなかったし、まさかあの魔力弾に気絶したはずの女の子が向かっていくとは思えなかったんだ。それに彼女も妖怪と相対する以上、こういうリスクは承知していたはずだ。こう言うと冷徹に思うだろうが」

そんな、ルーミアは彼女を最初から殺したかったわけではないと?
でも彼女の直接の死因はあいつだ。
僕は黙って席を立ち、すこしふらつく足取りで村へ戻った。

「有也くん、君はまだまだ強くなれそうだ。それに、あの女の子に代わる村の護り手なんだろう? なら強い敵に無理に挑み続けて命を粗末にしちゃあ……あれ、いねえ」
「ねえ、あの子のぶんの代金も払ってね」
「ホギャー」





散歩中に奇妙な人形に襲われた。何とか撃退したが、アリスの人形たちやスズラン畑の人形とも異質に思えた。
人形使いアリスの話によると、彼女が入手した人形が突如勝手に動いて暴走したらしい。
特に人や妖怪の嫉妬心を吸い取って際限なく強くなると言う。
私とアリスはその人形をパルスィライザーと名づけ、付近の人妖に警戒を促した。

さらにちょうど同じ時に、沙握村で遺跡が発掘され、魔理沙がその遺跡を弾幕で脅して乗っ取ったらしい。

「幻想郷に新秩序を打ち立てるぜ」

とか言って、24時間後、幻想郷に一斉蜂起を行うと各通信手段で宣言したのには呆れた。
人間が異変を起こしてどうする。

付き合ってやる前にひと眠りしようと思ってベッドに入り、起きて時計を見て愕然とした。
すでに24時間が過ぎていたのだ。
博麗神社に行くと、少し服がぼろぼろになった魔理沙が霊夢たちと仲良く宴会をしており、すでに丸く収まったようだ。
聞くと魔理沙の真意は幻想郷の支配ではなく、何かの危険を取り除くために強い者を探していたのだと言う。
そのため魔理沙の側に立ったフランドール、アリス、パチュリー、にとりといったカップリング相手(?)をも次々に切り捨てる一見不可解な行為を行い、宴会の途中で三人と魔理沙の間でちょっとした修羅場発生と相成った。

「魔理沙、あんたのおかげで人形の大半が壊れたじゃないの」
「500年分は運動させられたわ」
「私の光学迷彩、さっさと返してくださいよ」
「すまんすまん、だから謝ってるだろ。ホントに幻想郷がかつてない危機にさらされたんだぜ」
「……私、魔理沙がそう言うんならきっとそうだったと思う。騙されたなんて思ってないよ」
「フラン……」 その言葉で魔理沙が驚いた。見つめあう二人。

雨降ってフラグ立つ。
で、結局その強い者とはやはり霊夢であった。
結局いつものように彼女によってその危険は排除された。
あと、パルスィライザーもその危険と無関係ではなかったらしく、戦いを繰り返すたびに巫女型、魔女型、メイド型へと進化を繰り返し、その過程で、最強への願望と強い者への嫉妬を見透かされ、チルノがパルスィライザーに取り込まれてしまったとの事。

「まったく、あんたを開放するのは骨が折れたわ」
「てへへ、ごめん」

意地っ張りなチルノが珍しく自分の非を認めている、きっと24時間のいろいろな出来事で成長したのだろう、よい事だ。
そのほかにも彼女らの話す武勇伝は非常に熱く、力のある創想話作家の方が描けば10,000点越えもしたに違いない。
ああ、私も参加したかった、どんな陣営であれ。
でも後の祭り。

「あらルーミア、もう帰っちゃうの?」 霊夢が聞いてきた。
「関わってもいないのに、打ち上げにだけ参加してもつまんない。この気持ち分かる?」
「あはは、そうよね。ところで、あんたはもっとシリアスな問題があるんじゃ?」
「霊夢も知ってたの?」
「多少は」

霊夢は私に件の少年について話した。

「そうなのよ、でも私は正面から挑むつもり」
「退治されたくなければ、どこかに100年ぐらいこもってた方がいいんじゃない?」
「それじゃああの男の子が挑戦できなくなっちゃうじゃない」
「意外と律儀ね」
「こう見えてもね」





「成程、今度は僕が相手になろう」

僕はリグル=ナイトバグの弾幕を必死に避けていた。
発端は虫の王である、彼(彼女?)ですら制御しきれないムカデのお化けが現れたので、一緒に駆除を手伝ってほしい、と言う依頼だった。
だが何かがおかしかった。
森の中で、確かに人間の数倍はある巨大なムカデが暴れていた。
これが人里に現れたら大変な事になる。
だが弾幕使いの僕にとってそれほどの敵ではなかったのだ。
なぜリグルがこんな奴にてこずるのか不思議だった。
案の定、巨大ムカデを退治したあと、虫の王は僕にターゲットを変えた。

「これで分かっただろう、妖怪の力を舐めちゃいけない、妖怪への復讐なんてよせ」
「できない、僕は恋人をあいつに殺されたんだ」

名無しのスペルカードをリグルに向けて放つ。

「あれは不幸な事故だ、君の想い人だって万が一の覚悟はしていたはずだ」

リグルはその隙間を縫って新たなスペルカードを宣言する。
僕は反撃しながら叫ぶ。

「でも、あいつを倒さなければ僕の人生は始まらない。分かるか虫妖怪! 親しい人が突然いなくなる、死んだと知らされる。永遠に会えなくなる。その気持ちがお前に分かるか! それとも、愛する者を殺した相手と、殺しあいじゃない戦いをして、終わった後『おめえ強いな、また熱い試合をやろうぜ』と友情を築けるというのか? お前ら頭の緩い妖怪ならできるんだろうけどなぁ!」

リグルが自身の弾幕を消した。そして僕の目を見据えてこう言った。

「僕が何のためにこうして君を襲ったか分かるかい? 僕も、君と同じ気持ちだからだ!」
「なっ……?」

こいつは、ルーミアを愛している。
そう訴えたリグルの目を見て、僕は瞬時に悟ってしまった。
僕が彼女を愛していた、いや今でも思い続けているように。
さっきの攻撃的な姿勢とはうって変わって哀願するように言葉を続ける。

「君らには狂暴な妖怪かも知れないけれど、ルーミアは本当はすっごく優しいんだ。君がその女の子を失って悲しむように、僕にとっても彼女はそういう存在なんだ」
「だが、それでもあいつが多くの人間を喰ったと言う事に変わりはない。神の視点からどう見えようと、僕はルーミアを倒す、倒さなきゃいけないんだ」
「考えなおしてくれ、殺しあって何になる! 君がルーミアを殺したらきっと僕も、君と同じ感情を抱いてしまうよ」

リグルの気持ちは本物だろう、でも、でも……。

「……邪魔するなら、あんたでも容赦しない」
「そこまで言うのなら、ごめんね」

右腕に焼けるような痛みを感じた。その場所を左手でかばう。
人差し指ほどもあるスズメバチが仕事を終え飛び去っていく。

「ルーミアを赦せとは言わない、復讐を諦めてくれればそれでいい。もしルーミアを殺そうとしたら、もう一度蜂を召喚し君を襲わせる。そうなればアナフィラキシーショックで君は死ぬ」

リグルはマントを翻し、無数の羽虫となって森の奥に消えていく。

「僕はルーミアを守る。神の視点から見て間違っていたとしても」

僕はじんじんと痛む右腕を抑え、それを眺めていた。
あいつにも死ねば泣く者がいる。
これからが戦いづらくなる……。





リグルが要らん事をしたらしい。
だが私を思いやっての事。嬉しくないと言えば嘘になる。
私は闇から生まれた存在、闇に友人などいないはずだ。
現に身を闇で包み、誰とも深く関わらないで、適当に人や獣を食って生きてきた。
でも他種族の友人ができた。
私に復讐心を抱く件の少年も、私を深く意識していることには変わりない。
愛の正反対は憎しみではなく、無関心だと誰かが言っていた。
こんな事は今までの人生にはなかった。
これを充実した人生と言うのだろう。
私はろうそくを灯したテーブルに頬杖をつきながら、ぼんやりとそんな事を想った。

♪~~♪~~

その時、携帯端末から『妖魔夜行』の音楽が鳴った。
新たな依頼、それも危険度の高い、荒事が舞い込んだ時に鳴るようにセッティングしてある。
ひとつ欠伸をしてから、端末を覗く。


妖怪砦襲撃

依頼主 柘榴村村長
報酬 50000紅夢

先日、交通の便を良くするための橋の建設を妖怪に妨害され、相当の被害が出た。
万難を排して橋の建設を続行するため、妖怪砦の制圧作戦を実行する。
当村が他の里と行き来するには、妖怪の山を通らなければならないのだが、橋の破壊事件以来、彼らは通行料を増やすと通達してきた。このままでは我々の生活が成り立たない。
砦の奥にあると言われるメイン八卦炉を破壊して欲しい。それを彼らとの交渉材料にする。今回は複数の弾幕使いを雇っての作戦となるが、砦の中は何があるのか分からないので万全の準備をするべきだろう。それではよろしく頼む。


柘榴村の橋、私が壊したやつだ。そして、あの少年のガールフレンドはそこで死んだ。
結果的に、私が殺した。
これも何かの因果か。
即座にその依頼を受諾する。


決行日の夜、かがり火の焚かれた村長の屋敷に依頼を受けた者たちが集まった。
私が屋敷に入ると、当然どよめきが起こった。
ある者は畏怖し、ある者は驚き、またある者は憎しみの目で私を凝視する。
その中に件の少年、倉砂屋有也もいた。

「お前、どの面下げてここに来た?」
「依頼を受けたからだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「お前……」
「よさんか    、今回は味方だ」 村長らしき男が彼を本名で呼んで諌めた。
「今は倉砂屋有也です」
「そうか、すまん。今回はこらえてくれ、村の一大事なのだ」

説明が始まった。
橋を建設すれば、村人たちは妖怪から通行料を払って険しい山道を行かなくても、他の人里と交易ができる。妖怪たちはそれが気に入らないのだ。それで私は連中の依頼を受けて橋の建設を妨害したが、直後にだまし討ちを喰らった、その礼をするのも悪くない。

門番を蹴散らし、複数に分かれてメイン八卦炉を目指す。

事前に渡された通信機で、他の弾幕使いの動向もある程度は知ることができた。

「こちら魔理沙、ここも行き止まりだ」
「こちら霊夢、こっちも行き止まりね」

あるドアをくぐる、なにか熱いものを感じ、咄嗟に体を右へ動かす。
自分のいたところに上からレーザーが照射された。
よく見ると縦横にレーザーの発射器が据え付けられており、時間差をおいてレーザーが照射される。

「こちら有也、今階段を下りた」

その階段とは私が今さっき降りたところだろうか、彼がこんなトラップで死ぬかどうか分からないが、とりあえず壊しておいてやる。
その部屋を抜けると、細い回廊が見える。壁に人間一人が入れそうな溝が無数に空いている。
足を進めると、不意に前方から巨大な魔力の塊が飛んでくる。
溝に退避しようとしたが、これこそが罠ではないかと思い、全力で受け止めた。
かなりの衝撃が全身に走る。これはあの少年にはきついかもしれない。
溝から声が聞こえてきた。

「ちょっと、なんで三人一緒に同じ溝に入るのよ」
「だってここしかなかったじゃない」
「二人とも、喧嘩止める、苦しい」
「ルナ姉はこんな時も冷静なのね、呆れた」
「ちょっとそこの宵闇、助けなさいよ」

ちょうど一人分がやっとの溝に、なぜかプリズムリバー三姉妹が三人詰まっていた。
どうやら溝の中には罠はなさそうだ。あの少年もやり過ごせるだろう。
私は三人を無視して前進した。

魔力の投射機を壊し、その先に強力な魔力を感じた。
メイン八卦炉だ。そしてそこを守る弾幕使いもいた。

「げっ、ル、ルーミア」 柘榴村で私をだまし討ちしようとした鳥妖怪だった。

明らかに私を恐れている。

「安心しろ、私の依頼はメイン八卦炉の破壊だ、お前の退治じゃない」
「ほっ、良かった」
「じゃあ壊すからね」
「うん、ってオイィィィィィィィ」

そいつが勇気を振り絞って弾幕を始める前に八卦炉は吹っ飛んだ。
その際にそいつもいくばくかの手傷を負った。
良かったな、これで依頼主にも言い訳ができる。
さっさと帰ろうとすると、細い回廊で件の少年と二度目の対面を迎えた。

「なんだったんだろうあの騒霊……あっ、お前」
「やあ、また会ったね」
「ルーミア、今度こそ……」

そう言う少年は無数の傷を負っていた。肩で息をしている。
ここにたどり着くのが精いっぱいだったようだ。
もっとも、この後化ける可能性も大いにあり得る。

「無理しなくてもいいぞ。君はもっと強くなるだろう。その時に勝負してやるよ。早く私の所まで上がって来い」
「まて、僕はお前を殺そうとしてるんだぞ」
「妖怪の私は人間を喰う、人間の君は妖怪を退治する、それでバランスがとれてるんだ」

そう言って彼の横を通り過ぎ、さっさと帰ることにする。

「お取り込み中悪いんだけど、何とかしてくれないかしら」

横目で見ると、騒霊三姉妹がまだ詰まっている。
なぜかレティも別の溝に一人ではまっていた。
この溝は妖怪を呼び寄せる呪いでもかけられているのか。
見ないふりをした。





僕は今、八意医院で傷の手当てを受けている。
あの任務で死者は出なかったが、騒霊三姉妹と冬の妖怪が行動不能になったので僕が救助し、今は隣のベッドで治療を受けている。

 その後、村側と妖怪たちの協議の結果、妖怪は橋の建設を邪魔しない代わりに、村は毎年一人を妖怪たちへ里子に出すと言う事に決まった。
 里子とは要するに生贄の事ではないのか? 確かに、妖怪たちと全面戦争をすれば人間に勝ち目はない。今回の任務でそれを実感した。それに豊かな生活をするには何らかの代償がいるだろう。加えてお互いこれ以上の争いは望んでいないそうだし、僕だってそうだ。
でも、でも……、橋の建設を巡って彼女、    は死んだ。忘れることなどできない。
ルーミアが憎い。確かにあいつは故意に彼女を殺したわけじゃない。かといって赦すこともできない。でもあいつにもその身を案じる者がいる。
妖怪たちに妥協する村が憎くないと言えば嘘になる、でも自分の復讐のために村人に戦いを強要したくない。
 思考が堂々巡りする。

遊びに来ていた霊夢さんが僕を見つけて声をかけた。

「ねえ、あなたはあの子、    の名誉を守るために闘っているのよね」
「そうですが」
「あの子の名誉を汚したくないのね」
「当然です」
「なら、ルーミアに対しては、復讐鬼としてではなく、あくまで妖怪退治師として戦いなさい」
「それはどういう事ですか? また復讐をやめろと言うんですか?」
「違う、あの子は正々堂々と妖怪と戦い、そして死んだわ。卑怯なやり方で殺されたわけじゃない、なのに不当なやり方で殺された、だから復讐する、そんなスタンスじゃかえってあの子の名誉を傷つけることに他ならないわ」
「復讐鬼ではなく、妖怪退治師として?」 僕は繰り返した。
 「そう、ルーミアと戦うのを止めはしない、でも、復讐に我を忘れた鬼としてではなく、あくまで誇り高き巫女、    の遺志を継ぐ者として妖怪と対峙しなさい。私が言いたいのはそう言う事。これをどう解釈するかはあなた次第だけれどね」

 言い終わると霊夢さんは診療室を後にした。
 何かが見えたかも知れない。
 他の創想話作家さんたちがあまりにも実力者ぞろいなので恐縮しています。
 点数を見て、改めて力量差を痛感します。

 少年の心情は、ただの「ぶっ殺してやる」から『H×H』のビノールトが感じたような
 「弾幕使いとして、手合わせ願いたい」に近い感情をもつようになる。
 そんな落とし所を考えました。
 めげずに完結させる所存です。
とらねこ
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コメント



0.230簡易評価
1.70煉獄削除
応援してますので頑張れ~。
私はこの作品好きですよ。
少年が最終的にどんな選択をするのかも気になるところです。
6.無評価名前が無い程度の能力削除
リグルの一人称が……
11.80絶望を司る程度の能力削除
今気づいた。依頼の内容がAC3っぽい。