1月1日。
それは、新しい一年の始まり。
普段と変わらぬ、いつもと同じ一日が始まるだけなのに、なぜか、いつもと違う雰囲気を演出してくれる、それは暦の持った特別な魔力のせいなのかもしれない。
ここ、幻想郷でもそれは変わらず、あっちこっちに門松が飾られたり永遠亭のおもちが大売り出しされて財源が潤ったり、はたまた紅魔館などでは売れ残り(とは名ばかりの手作り)クリスマスケーキが特売されたり。
そんな風にして、あちこちでは『新年』を祝う雰囲気の中。
「魔理沙、あけましておめでとぉぉぉぉぉっ!」
「危ないわぁぁぁぁぁぁっ!」
巫女は、知り合いの魔女の眉間に針を突き刺そうとして、それをかわされた。
「新年一発目からそれかよ!? お前、私に初日の出を拝ませないつもりだな!?」
「何言ってるのよ! 事前に連絡したじゃない!
いつまでも寝てたら刺しますよ、って!」
「言われた覚えなどないっ!」
「言ったわよ! 心の中で!
「聞こえるかっ!」
「聞いてよ! 98時代からの付き合いじゃない!」
「何のことだ!?」
ひとしきり罵りあった後、どちらからともなく、一応は落ち着いたのか、居間へと移動していく。
なお、元日を目前にしなくとも大掃除の一つや二つが恒例となる時期ではあるが、霧雨邸は、相変わらず魔空空間だった。
「お茶」
「ない。あっても出さん」
「持ってきた」
「マジで?」
「出がらし」
「わかった。淹れる。美味しいお茶を淹れてやる。だから泣くな元旦から」
なお、1月1日のうちでも『元旦』と表現できるのは午前中だけなのだが、それはさておこう。
用意されたお茶を一口すすって、巫女の顔がのんびりとした、いつもの間抜け面――もとい、ぬるま湯顔に戻った頃。
「……魔理沙。実は、あなたを友人と思って聞いて欲しいことがあるの」
「何かすげーやな予感しかしないんだが……一応、聞いてやるよ。
で? 何だ、それ?」
彼女の言葉に、巫女――霊夢は、どこからともなく、大きな包みを取り出した。
大きさは、正方形。四辺は二十センチくらいか。
重量はそこそこあり、包みを開けば、そこには漆塗りの立派なお重の姿。
しかし、魔理沙は驚かない。あの神社になら、まぁ、倉庫の中にならばこういう値打ちものっぽいものが埋まっていても、何ら不思議ではないからだ。
「質屋に入れるなら、一~二ヶ月分の食費にはなると思うぜ」
「いや、そう言うことを聞きに来たんじゃないのよ」
「マジで?」
「おい」
「冗談だ、怒るな」
半分以上、本気で聞いていたのだが。
まぁ、それはともかく、霊夢はお重のふたを開けた。その中から現れるのは、ある意味では、それ以外の予想が出来ないおせち料理。
しかも、かなり気合いの入った代物で、三段重ねのお重全てに隙間なく食材が詰め込まれている。彩り鮮やか、匂いも抜群、ついでに、魔理沙はかまぼこをつまんでみたが、そんじょそこらでは決して味わえないであろう極上の味だった。
「これがどうしたんだ?」
「……異変よ」
「……………………は?」
さすがに、その展開は読めなかったのか、続いてくりきんとんに伸ばそうとしていた手が止まる。
霊夢は、何やら沈鬱な表情で、
「……私は昨日、文と一緒に飲みに行った」
「珍しいな」
「今年一年の、何か面白い出来事がありませんでしたかあるなら教えてくださいお酒とおつまみおごりますから。そう言われてついて行かないようであれば、巫女失格」
「いやな巫女だな」
「年末はお酒で盛り上がるのが通例の、我が博麗神社。その申し出に逆らう理由もない」
「まぁ、そうだろうな」
「色々と文におごらせて、まぁ、フィフティフィフティの取引が出来たと思っているわ。
そして、家に帰ってきて、酒瓶を抱えたまま眠りについた――」
「お前、寂しい人生送ってるな、相変わらず」
「そして、目が覚めた時――私が最初に見たのが、このお重だった」
彼女の視線は、そこでお重へと。
二人はしばし、その、豪華な漆塗りのお重を見つめていたが、
「ふたを開けてみて愕然としたわ。
おせち料理なんて、ここ最近、まともに見たことがなかった。ましてや、くりきんとんに、本物の栗が使われているおせち料理なんて、豪華絢爛すぎて神棚に祀ってしまうくらい……」
「祀んなよ」
「夢だと思った。
季節を間違えて出てきたリリーホワイトに弾幕ぶつけて撃墜してみたけれど、夢じゃなかった」
「どういう確認の仕方だよそれ」
「けれど、まだ信じられなかった。
私はおせちを食べてみた。そしたら……美味しかった」
「だろうな。マジでうまいし。これ」
「……異変なのよ」
その話の流れで、どうして最後にそれがつながるのか、全くもってさっぱりわからなかった。扇子持って踊り出したいくらいさっぱりだった。
しかし、魔理沙は何とかして、霊夢の話の意味を探るべく四苦八苦する。
つまるところ、彼女は、貧乏極まりない博麗神社に、こんな、麓の村で、霊夢の食費半年分くらいには匹敵するおせち料理が何の前触れもなく置かれていたら、なるほど、驚くしかないかもしれない。
こういう豪華な料理を元日から口に出来そうな知り合いも多数いるのだが、さりとて、その相手が、何の見返りを求めることなく霊夢にこれを提供する理由がわからない。ましてや、彼女が寝ている間に、ある意味、枕元にそっと、なんていう芸をかますような奴らではないのは重々承知の上。
……そう考えるなら。
「……まぁ、異変かもしれないな。死ぬほどちっちゃいけど」
「魔理沙。犯人を捜すわよ」
「おい」
「絶対におかしいわ。幻想郷に善人なんているはずがない。
……この異変を解決しなくちゃ、幻想郷は崩壊する」
「どういう幻想郷なんだよ、ここ」
っていうか、こいつ、そこまで他人を信じられないのか。ある意味、哀れだな。ああ、いや、わかる気もするけど。
霊夢の周りの人間関係というものを思い浮かべて、こういうことをやってくれそうなほど、『いい人』というものが思い浮かばず、魔理沙はかぶっていた帽子を目深にかぶり直した。
なお、もちろん、そこに自分の顔も入れてしまって、ちょっぴり切なくなったのは除いておこう。
「こんな超特大の異変……放置しておくわけにはいかない」
「責任感と使命感に燃えるのはいいけどさ。
お前、何て言うか……うん、今日、終わったら飲みに行こう。私が全部、おごるから」
もはや、その一言しか続けることは出来なかった。
さて、まず最初にやってきたのは紅の悪魔の館である。
相変わらずのテーマパークっぷりを突っ走る館の周りには、たくさんの『お客様』の姿。どうやら、元日には和菓子以外に洋菓子の人気も根強いらしい。
「あら、あなた達」
降り立った門の前に、見慣れた顔が佇んでいた。
十六夜咲夜。この館の苦労人の一人で、一応、メイド長の立場にある女性である。
「何だ、お前。その格好」
「お嬢様が言い出したのよ。『着物を着てみたい』って。
だけど、そんなものを持ってる子はここにいないでしょ? だから、作ったのよ」
私は忙しくて、その暇がなかったから、彼女に任せたの。
その『彼女』で示した先にいるのは、悪魔の館の門番を預かるにしては人のいい妖怪だった。
「……着物ってミニスカだったか?」
「動きやすいからいいわよ」
その彼女がデザインしたであろう『着物』は、一言で言うならチャイナドレスだった。ただし、スカートの丈が短い。曰く、『ちょっと変化をつけてみるのも良いかと思いまして』だそうだ。
なお、そのミニスカチャイナドレスだが、パチュリーにはやたらと好評だった。
彼女が言うには、『チャイナドレスはチラリズムがいい。スリットから覗くふとももが最高。けれど、あえて、そのチラリズムという制限から解き放たれたミニスカチャイナもまた絶品』。
「よくわからん」
「私もよ」
そこで、咲夜の視線は霊夢へと。
「あなた達もうちに用事があるなら、あそこの列に並んでちょうだい。入場には二時間くらいかかるけど」
「そうじゃないの。
……ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」
「何?」
「あなた、犯人?」
「………は?」
新年早々、いきなり犯人呼ばわりされるとは思わなかったらしく、咲夜が首をかしげる。当たり前だが。
魔理沙がかくかくしかじかと事情を説明すると、
「……霊夢。お金、いらないから。
美味しいもの、お腹一杯食べて行きなさい」
ハンカチ片手に目尻を押さえながら、彼女は霊夢の肩を叩いた。
実に、気持ちはわからんでもない。
「いや、だけど、しかし、霊夢の言うことにも一理があることはあるんだ」
「いやすぎるわよ、そんな人生」
「けど、気にならないか?
何で、わざわざ、そんな粋なプレゼントをする必要があるのか、とかさ。何の得にもならないだろ?」
「まぁ……それはそうだけど。
けれど、中にはいるかもよ。そういう人。見返りを求めずに、誰かに尽くしてあげたいと思うことは、誰にだってあるわ」
「それってメイド長のことかしら」
「きっとそうよ」
「相変わらず、恥ずかしがりよねー」
「そういうことを面と向かって言えるほど、まだ勇気がないのよ」
「きゃー、奥ゆかしいわ」
「かわいいわよねぇ、ほんと」
「うんうん」
「お黙りっ!」
後ろでぼそぼそ話しているメイド達めがけて、彼女は恥ずかしさ紛れにナイフを放った。しかし、普段なら百発百中のそれは、メイド達の横を駆け抜け、どこぞへと消えていく。
さすがに、鉄の女たる十六夜メイド長も、色恋沙汰の前には無力といったところか。
「と、ともかくっ!
私たちはよく知らない! それだけ!」
「顔、真っ赤だぞ、お前」
「うるさい! 寒いのよ!」
「寒くて顔が赤くなるってのもわからんことはないが、それ以外のところの色は普通だぞ」
「刺すわよ!?」
ちょっと調子に乗って咲夜をいじる魔理沙。
いい加減、反応がやばくなってきたところで、「まぁ、それは置いといて」と話を横にのける。
「とりあえず、お前達は今回の一件には関わってないってことか」
「……まぁ、そうね。
私なんて忙しかったんだから。料理に洗濯、お掃除、お年玉の用意などなど」
「お年玉って……」
「お嬢様達がどこかから情報を仕入れてきたらしいのよ。
今朝から『お年玉ちょうだい』ってうるさくて」
かわいいからいいんだけどね、と咲夜。
ちなみに、そんなお嬢様達のお年玉は、一人お札一枚であるとのことだった。
「と、なると……次は白玉楼か永遠亭ってところか」
「まぁ、どっちも、それなりの可能性がありそうなところね。少なくとも、うちよりは」
「だろうな」
「……なんか気になる発言ね」
ともあれ、咲夜は『まぁ、そういうことなのよ』と話を打ち切って踵を返す。
と、そんな彼女の方を、霊夢がつかんで引き留めた。
「何?」
「約束」
「十人前を用意するわ」
どうやら、忘れてなかったらしい。
続いてやってきたのは冥界である。
新年早々、辛気くさいところに足を運ぶもんだな、と魔理沙は思っているのだが、口には出さない。霊夢の顔は、今、使命感に燃えているからだ。
ものすげーいやな使命感もあったもんだが。
「おーい」
やってきた大きなお屋敷の前で、魔理沙は声を上げる。
迎えに出てくるのは、いつものちびっこ従者である。なお、本日は、刀の代わりに手に包丁を持っての登場である。
「ああ、魔理沙さんに霊夢さん。明けましておめでとうございます。
こんなところで場違いな挨拶ですけど」
「いや、いいんだ。
ところでだな、妖夢」
「はい?」
「あなた、異変の犯人?」
「…………え?」
反応は、咲夜と同じだった。
同じく、魔理沙が事情を説明すると、『……霊夢さん、おもち、食べていってください』と、またもや咲夜と同じような答えが返ってくる。
彼女に案内されるまま、屋敷の中へと上がった二人は、屋敷の主が、ただいま、お食事中の部屋の中へ。
「あらぁ、何か珍しいわねぇ。こんなおめでたい日にぃ」
「それは程度のいい皮肉として受け取っておくぜ」
屋敷の主、幽々子がもむもむとおもちを頬張っている。さすがの彼女も、油断すると喉に容赦なく詰まるおもちには勝てないのか、その食事スピードは至ってのんびりしたものである。
「それでぇ、何か用事ぃ?」
「いや、実はだな――」
先ほど、表で妖夢にしたのと同じ事情説明を魔理沙が行うと、幽々子は、「妖夢、霊夢さんにおもちを包んで持たせてあげて」と涙ながらに指示した。
色んな意味で、ほんと、切ない現実である。
「ともあれ、その事情を聞いて、私に言えること。それは、よくわからない、ということよ」
いくら私でも、何の理由もなく、おせち料理などと言う、一年に一度しか食べられないものを他人にはあげられない、とのことだった。相変わらずの食欲魔人であると共に、食への情熱を感じさせる一言である。
……ちなみに、魔理沙が気になったのは、そんな幽々子らしい理由ではなく、いつものとろくさい喋り方から、『覚醒』(魔理沙命名)した時の喋り方に、彼女が変わっていることなのだが。
「ふぅん……。幽々子でもないか。
いや、お前のことだから、『サプライズ』とか言って変なネタを仕込んでくるかもとは思ったんだが」
「そこまで暇ではないもの。
昨日は、妖夢と一緒に楽しくお酒を飲んでいたし」
「……私は酔い潰されましたけどね」
「ごろごろ甘えて、かわいかったわよ」
「……お茶、持ってきます」
顔を赤くした妖夢が退席していく。
魔理沙は、あんころもち(あんこは妖夢お手製)を食べながら、
「これで、可能性の二つ目が消えたか……」
「確かに、これは異変と考えていいのかもしれないわね。
……正直、霊夢におせち料理を、何の見返りもなく与えてくれそうな人に心当たりがないもの……」
「あ、やっぱり」
そこまで言って、ちらりと霊夢を見る。
普段の彼女なら『やかましい!』という言葉と同時に針が飛んでくるものなのだが、今の彼女は、やたら真面目な顔をして前を見つめているだけだった。
ただし、おもちを持った手が口許とお皿の上を往復する速度は落ちないままで。
「世の中は流転するもの。ひとところに留まらないもの。
しかして、万物には諸行無常の響きあり。
けれど、何の因果もなく、動いていくのは現実とは言わない。それはすべからく、泡沫の夢よ」
「何が言いたいのかいまいちよくわからんが。
けど、まぁ、何となくわかったような気もするよ」
幽々子の手が、霊夢が持っていたお重へと伸びた。
ふたを開け、その中身に目を見張り、恐らく、昨日から今朝にかけて舌鼓を打ったであろう、テーブルの上の、もう一つのお重へと視線を向ける。
「妖夢、精進なさい」
戻ってきた妖夢に、いきなりの一言。
何のことやらわからず、目をぱちくりさせる妖夢は、霊夢が持っていたお重の中身を見て得心したらしく、深々とうなずいた。相変わらず、みょんな主従関係である。
「さて、次は永遠亭か……」
「あそこの方が、正直、よほど可能性はあると思うわ。
あそこの主は、変な意味で八方美人でしょ? それに、霊夢達も、何度か関わりを持っているし」
新年のご挨拶にお伺いしました。
そう言って、博麗神社の戸を叩く、永遠亭の使いを想像して。
なるほど、その構図に違和感はなかった。
「けれど……業の深い話ね。善意を信じることの出来ない日々……。
それはすなわち、心の疲れ……。
……霊夢、いつでもいい。疲れた時はうちに来て、ゆっくり休みなさい……」
「何か私、今、すげーバカにされてない?」
「気づいたのか今更」
次にやってきた竹林の奥。
新年早々『急患受け付けます』の、あまりめでたくはない貼り紙の貼られた戸をくぐって中へと足を進めれば、出迎えに出てくるうさぎの従者。
ちなみに、こちらが身につけている着物は、紅魔館のようなアレンジものではなく、正当な代物だった。
「ああ、霊夢さんに魔理沙さん。新年、明けましておめでとうございます」
「悪いんだが、うどんげ。永琳に取り次いでくれ」
「はあ。まぁ、いいですけど」
新年の挨拶に来たのかな? そんなわけないよね、この人達に限って。
そんな視線を向けながらも、『どうぞ』と彼女は二人を奥へと通す。
うどんげ――鈴仙に案内されるまま、二人がやってきたのは、この永遠亭の表の主(というか実質的な主)の部屋だった。
「師匠、霊夢さんと魔理沙さんです」
どうぞ、との声。
引き開けられたふすまの向こうには、相変わらず、白衣の似合うお医者さんが座っていた。すでに片手には、彼女たちのカルテが用意されている。
「お風邪でも召されましたか?」
「いやいやそうじゃなくてだな」
「食べ過ぎ、飲み過ぎはお体に悪いですよ」
「それも違う」
「えーっと……」
「いや、ちょっと話を聞いてくれ。頼むから」
ここ、永遠亭は、過去、この目の前の女性――永琳女史の発案によって、病院も経営している。そして、霊夢と魔理沙の二人は、ここの、ある意味では常連でもあった。
永琳の作ってくれる二日酔いの薬に、これまで、何度助けられたことか。その時ばかりは、二人とも、『神様仏様永琳様』である。
それはともあれとして。
「実はだな――」
まず、霊夢に事情を語らせ、それを魔理沙が補完する。
そして、永琳は言った。
「……鈴仙。霊夢さんにお年玉差し上げて……」
「……はい、わかりました……。
霊夢さん……力強く生きてくださいね……」
今朝方、永琳が大急ぎで、うさぎの子供達に配ったポチ袋が霊夢にも渡される。誠、現実とは世知辛いものである。
さて、それはさておき。
「そういう事情が……。
……けど、あいにくだけど、私たちも知らないわ。昨日は、緊急手術の必要な患者さんが来て大変だったの」
おかげで、ほとんど徹夜よ、と永琳は微笑んだ。確かに、言われてみれば、その目元には隈が浮かんでいる。
しかしながら、その顔には疲れなどほとんど見られないことから、どういう結果になったのかは聞かずともわかることだった。
「おせち料理……か。
そう言えば、ずっと作ってなかったわね」
「お前のところは、正月料理って出てこないのか?」
「あら、出すわよ。たくさん。
けど、私が厨房に立って、ということはないの」
忙しいから、とまた苦笑。
ちらりと、傍らに立つ鈴仙に視線をやれば、『そう言う苦労をサポートするのが私たちの仕事です』と言わんばかりの顔だった。
紅魔館とも白玉楼とも違う主従関係に感心しながら、魔理沙は、差し出されていたお茶をすする。
「しかし……となると、一体、誰が犯人なんだ?」
「あの、魔理沙さん。本物の『善意』かもしれないんだから『犯人』呼ばわりはどうかと……」
「……だよね」
つぶやくのだが、やはり、世間一般と自分の感覚はずれているんだなと再認識出来てしまって、魔理沙は切なさから泣きそうになった。こらえたが。
永琳は、そんな二人を見つめながら、つぶやく。
「……全く別の可能性を考えてもいいかもしれない」
「は?」
「疑う必要のない善意がそこにある。そう考えるしかないかもしれない」
「……ほう」
「あなた達……ああ、いや、霊夢さんだけかもしれないけど……は、とりあえず、『誰がこれをやったのか』と言うことを疑いを持ってかかっているでしょう?
そうではなくて、『誰かがしてくれた』という視線で考えてみても良いと思うの。
そう考えるなら、私たち以外の第三者の可能性が思い浮かぶと思うわ」
言われてみれば、確かに。
霊夢達がこれまで訪れてきた場所は、幻想郷における『三大迷惑発生器』である。
そこには、すくなからずの悪意が、推測に影響を及ぼしていることは間違いない。しかし、逆に考えるのなら、霊夢が最初に言ったように『善人』が今回の事態を引き起こしたと見ることも出来る。
その『善人』がいるとしたら、霊夢達が次に当たるのは、これまで考えてもいなかった場所しかなくなる。だが、そこにこそ、事態の真実が潜んでいるのだとしたら。
「……そうか!」
「霊夢、どうした!?」
「……わかった。わかったわ。今回の犯人が!」
叫び、すっくと立ち上がる霊夢。
「ここ病院ですから。お静かに」
「ごめんなさい先生」
永琳に笑顔かつ強烈な眼差しを向けられて、あっさりと居住まいを正したりもするのだが。
「魔理沙。わかったわ。
永琳のくれたヒントの通りに考えるのなら、今回の犯人は、今までに回ってきたところにいるはずはないのよ」
「あの、霊夢さん。だから『犯人』呼ばわりはちょっと……」
「……行くわよ、魔理沙。この異変を解決するために」
「魔理沙さん、この人どうにかなりませんか」
「なってたら東方シリーズ続かないだろ」
「それもそうですね」
あっさりと納得してしまう理由であった。
とりあえず、霊夢は立ち上がると『ありがとうございました!』と頭を下げて駆け出していった。その後を、魔理沙が、やれやれと肩をすくめて追いかけていく。
そして、永琳は一人、「……今度、美味しいご飯を持っていってあげようかしら」と切なそうにつぶやくのみだった。
最後に、霊夢達がその場所へとやってきたのは、暮れなずんだ町の光と影の中で、去りゆく人に言葉が贈られるかもしれない時間帯だった。
しかし、それでも、そこには博麗神社にはない光景がある。
「早苗ーっ!」
「あら、霊夢さん。それから、魔理沙さんも。
ずいぶん遅くなってしまいましたが、ごきげんよう。明けましておめでとうございます」
にこやかな笑顔で佇むのは東風谷早苗。その彼女の前には、たくさんの参拝客の姿。
霊夢は彼女の前へと舞い降りると、早苗をびしっと指さした。
「犯人見つけたわ!」
「……へっ?」
唐突な犯人呼ばわりに、早苗の目が点になった。
これこれこういう事情なんだ、と魔理沙が霊夢に代わって事情を説明すると、早苗は目頭抑えつつ、『あのですね――』と何やら述べようとする。
しかし、それを霊夢が許さなかった。
「早苗……あなたはいい人よ!」
「えっと……はい、ありがとうございます……」
「笑顔は柔らかい、スタイルもいい、真面目で家事も万能、この前、麓の村で行われた『お嫁さんにしたい女性』ナンバー1!」
ちなみに、霊夢は欄外だった。
「あなたは私にも優しいわ! 差し入れとか持ってきてくれるし! お裾分け、なんていう私に知らない言葉を使って!」
「……知らないんですか……?」
「察してくれ」
「すなわち、あなたは『善人』よ!」
それはほめられているんだろうか。いや、ほめられてるんだろうな、きっと。
さすがの早苗も困惑する中、霊夢は続ける。
「だからこそ! あなたならこの行為は考えられる!
お正月でも神社の中でごろごろして、空っぽの賽銭箱に涙する私をおもんばかって、そっとおせち料理を差し入れてくれるなんていうことを!
そんないいことをしてくれる善人は、この幻想郷にあなただけよ! ありがとう!」
「……いえ……どういたしまして……。
ああ、いや、違う違う……。あの、私は……」
「けれど、幻想郷にそれはあってはならない!
幻想郷にあって正しいのは、弾幕すなわちトリガーハッピー!」
「……それ、精神的にすごくやばいような……」
「善人は食われるだけ! 誰かの踏み台という犠牲になるだけ!
私は、早苗! あなたがそんな風になるのを見てなんていられない!」
「……いや、あの……そろそろ論理が破綻して……」
「だからこそ!
あなたが、こんないいことを考えるような善人から、幻想郷における『真人間』に戻す必要があるの!」
「……すごく戻りたくないんですけど……。あの、でも、だけどですね、霊夢さん。私の話を……」
「私は悲しい……あなたが善人ではなくなってしまうことが……。
だけど、それがあなたのため……許して、早苗!」
「いやだからあの……」
「……あいつが人の話、聞くと思うか?」
過去、あらゆる事件において、とりあえず力ずくで相手を黙らせてから話を始めるという、どこぞの白い悪魔も真っ青なことばっかりしてきた奴だぞ。
「いずれ二代目が現れるだろうな……」
「……よくわかんない……」
「さあ、早苗! かかってきなさい!」
「あの、えっと……」
「かかってこないなら、こちらから行くわ! 覚悟しなさいっ!」
「ち、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
かくて、新年一発目の弾幕バトルは幕を開けたのだった。
「……ふぅ」
村の一角のお団子屋。
そこの一角に腰掛け、お茶をたしなむ女性の姿がある。
年齢は、三十の後半から四十の頭ほどだろうか。
優しい笑顔と柔和な空気の似合う、『優しいおばちゃん』の雰囲気を醸し出す彼女は、赤く染まった幻想郷の空を見上げながら、またお茶を一口。
「そうしているとおばさんくさいわよ」
後ろから、声。
建物の暗がりの陰からそっと一人、歩み出す影がある。
この幻想郷において、最もうさんくさい妖怪――八雲紫その人である。
「ああ、いえ……。
……こうしていると、何だか昔を思い出すなぁ、って」
「あなたも、いつも縁側でお茶を飲んでいたわね」
その頃と変わらないままにおばさんになって、と紫は笑った。
「けど、まだまだ美人よ。あなた」
「ありがとう。嬉しいわ」
「で? どうだったの?」
「……てへへ」
とても、その実年齢にはあわないお茶目な仕草で、彼女は舌を出した。
「やっぱり恥ずかしいわね」
「あきれた。声もかけずに出てきたの? 昨日、一日かけて作っていたじゃない、あのおせち」
「う~ん……。
でも、やっぱり、いいの。ママというか、母親としては、娘の成長を遠くの空の下で見守っている方が似合ってるもん」
「もん、って。
……ほんと、変わらないわね」
「そうかしら?」
これでも大人になったのよ、と笑う彼女の横顔に、紫は、とある少女の姿を思い出す。
ほんと、そっくりね。
苦笑した紫の手に、お酒が一つ。お茶をたしなむ彼女とは別に、お酒を飲み出す紫へと、彼女は「お団子とお酒ってあわないわよ」と笑った。
「あの子が好きなもの、一杯入れてきたのよ。美味しく食べてるかしら」
「いつになっても、母親の作ってくれた料理の味は忘れないものよ」
「そうね。
けど、久々に会えて嬉しかったなぁ。もう、ママの若かった頃そっくりの美人になって」
「それ、親のひいき目よ?」
「もう。紫のいぢわる」
ぷっ、と頬を膨らませる彼女の言葉に、紫は声を上げて笑った。
――日が暮れていく。
新しい一年の、最初の一日が終わりを告げていく。
伸びていく影法師は、いつまでも、楽しそうに互いを見つめ合っていた。太陽が山の端に沈み、濃い闇が幻想郷を閉ざすその時まで、向かい合う二人の姿は、誰の目にも鮮やかに映し出されていたのだった。
「早苗、私の愛を受け取って! 夢想封印ー!」
「あー、もう! だから人の話を聞いてくださいっていうか、もうわかりました、ええ、ええ、わかりましたよ!
霊夢さん、同じく神おわす社に仕えるものとして、私はあなたのぐーたらな態度を見かねていたんですっ! あなたには徹底的に、一度、教えてあげる必要がありますから!
こんな豆鉄砲で私をどうにか出来るなんて、片腹痛いですっ!」
「おおっ! 今のは一本足打法! かつて、伝説のキングが得意とした打法ですよ、解説の射命丸さん!」
「はい、そして今、早苗さんが放ったのは伝説のレーザービームですね。さすがの霊夢さんも、あれを前にしたら刺されるしかないでしょう」
「おっと、霊夢、見事にかわしました!
どう見ますか、この展開! 解説の射命丸さん!」
「さすが霊夢さん、伝説のドットよけは健在ですね。この勝負、わからなくなりそうです」
「ところでお前、いつからそこにいた?」
「異変あるところ即座に出現☆ ハートフル♪あやちゃん☆ ですから」
「言ってて恥ずかしくないか?」
「すっげー恥ずかしいです」
ぴちゅーん
「あ、同時撃墜」
「コインはまだあるから、まだまだ続きますよ」
「私、帰るわ」
「じゃ、私も」
それは、新しい一年の始まり。
普段と変わらぬ、いつもと同じ一日が始まるだけなのに、なぜか、いつもと違う雰囲気を演出してくれる、それは暦の持った特別な魔力のせいなのかもしれない。
ここ、幻想郷でもそれは変わらず、あっちこっちに門松が飾られたり永遠亭のおもちが大売り出しされて財源が潤ったり、はたまた紅魔館などでは売れ残り(とは名ばかりの手作り)クリスマスケーキが特売されたり。
そんな風にして、あちこちでは『新年』を祝う雰囲気の中。
「魔理沙、あけましておめでとぉぉぉぉぉっ!」
「危ないわぁぁぁぁぁぁっ!」
巫女は、知り合いの魔女の眉間に針を突き刺そうとして、それをかわされた。
「新年一発目からそれかよ!? お前、私に初日の出を拝ませないつもりだな!?」
「何言ってるのよ! 事前に連絡したじゃない!
いつまでも寝てたら刺しますよ、って!」
「言われた覚えなどないっ!」
「言ったわよ! 心の中で!
「聞こえるかっ!」
「聞いてよ! 98時代からの付き合いじゃない!」
「何のことだ!?」
ひとしきり罵りあった後、どちらからともなく、一応は落ち着いたのか、居間へと移動していく。
なお、元日を目前にしなくとも大掃除の一つや二つが恒例となる時期ではあるが、霧雨邸は、相変わらず魔空空間だった。
「お茶」
「ない。あっても出さん」
「持ってきた」
「マジで?」
「出がらし」
「わかった。淹れる。美味しいお茶を淹れてやる。だから泣くな元旦から」
なお、1月1日のうちでも『元旦』と表現できるのは午前中だけなのだが、それはさておこう。
用意されたお茶を一口すすって、巫女の顔がのんびりとした、いつもの間抜け面――もとい、ぬるま湯顔に戻った頃。
「……魔理沙。実は、あなたを友人と思って聞いて欲しいことがあるの」
「何かすげーやな予感しかしないんだが……一応、聞いてやるよ。
で? 何だ、それ?」
彼女の言葉に、巫女――霊夢は、どこからともなく、大きな包みを取り出した。
大きさは、正方形。四辺は二十センチくらいか。
重量はそこそこあり、包みを開けば、そこには漆塗りの立派なお重の姿。
しかし、魔理沙は驚かない。あの神社になら、まぁ、倉庫の中にならばこういう値打ちものっぽいものが埋まっていても、何ら不思議ではないからだ。
「質屋に入れるなら、一~二ヶ月分の食費にはなると思うぜ」
「いや、そう言うことを聞きに来たんじゃないのよ」
「マジで?」
「おい」
「冗談だ、怒るな」
半分以上、本気で聞いていたのだが。
まぁ、それはともかく、霊夢はお重のふたを開けた。その中から現れるのは、ある意味では、それ以外の予想が出来ないおせち料理。
しかも、かなり気合いの入った代物で、三段重ねのお重全てに隙間なく食材が詰め込まれている。彩り鮮やか、匂いも抜群、ついでに、魔理沙はかまぼこをつまんでみたが、そんじょそこらでは決して味わえないであろう極上の味だった。
「これがどうしたんだ?」
「……異変よ」
「……………………は?」
さすがに、その展開は読めなかったのか、続いてくりきんとんに伸ばそうとしていた手が止まる。
霊夢は、何やら沈鬱な表情で、
「……私は昨日、文と一緒に飲みに行った」
「珍しいな」
「今年一年の、何か面白い出来事がありませんでしたかあるなら教えてくださいお酒とおつまみおごりますから。そう言われてついて行かないようであれば、巫女失格」
「いやな巫女だな」
「年末はお酒で盛り上がるのが通例の、我が博麗神社。その申し出に逆らう理由もない」
「まぁ、そうだろうな」
「色々と文におごらせて、まぁ、フィフティフィフティの取引が出来たと思っているわ。
そして、家に帰ってきて、酒瓶を抱えたまま眠りについた――」
「お前、寂しい人生送ってるな、相変わらず」
「そして、目が覚めた時――私が最初に見たのが、このお重だった」
彼女の視線は、そこでお重へと。
二人はしばし、その、豪華な漆塗りのお重を見つめていたが、
「ふたを開けてみて愕然としたわ。
おせち料理なんて、ここ最近、まともに見たことがなかった。ましてや、くりきんとんに、本物の栗が使われているおせち料理なんて、豪華絢爛すぎて神棚に祀ってしまうくらい……」
「祀んなよ」
「夢だと思った。
季節を間違えて出てきたリリーホワイトに弾幕ぶつけて撃墜してみたけれど、夢じゃなかった」
「どういう確認の仕方だよそれ」
「けれど、まだ信じられなかった。
私はおせちを食べてみた。そしたら……美味しかった」
「だろうな。マジでうまいし。これ」
「……異変なのよ」
その話の流れで、どうして最後にそれがつながるのか、全くもってさっぱりわからなかった。扇子持って踊り出したいくらいさっぱりだった。
しかし、魔理沙は何とかして、霊夢の話の意味を探るべく四苦八苦する。
つまるところ、彼女は、貧乏極まりない博麗神社に、こんな、麓の村で、霊夢の食費半年分くらいには匹敵するおせち料理が何の前触れもなく置かれていたら、なるほど、驚くしかないかもしれない。
こういう豪華な料理を元日から口に出来そうな知り合いも多数いるのだが、さりとて、その相手が、何の見返りを求めることなく霊夢にこれを提供する理由がわからない。ましてや、彼女が寝ている間に、ある意味、枕元にそっと、なんていう芸をかますような奴らではないのは重々承知の上。
……そう考えるなら。
「……まぁ、異変かもしれないな。死ぬほどちっちゃいけど」
「魔理沙。犯人を捜すわよ」
「おい」
「絶対におかしいわ。幻想郷に善人なんているはずがない。
……この異変を解決しなくちゃ、幻想郷は崩壊する」
「どういう幻想郷なんだよ、ここ」
っていうか、こいつ、そこまで他人を信じられないのか。ある意味、哀れだな。ああ、いや、わかる気もするけど。
霊夢の周りの人間関係というものを思い浮かべて、こういうことをやってくれそうなほど、『いい人』というものが思い浮かばず、魔理沙はかぶっていた帽子を目深にかぶり直した。
なお、もちろん、そこに自分の顔も入れてしまって、ちょっぴり切なくなったのは除いておこう。
「こんな超特大の異変……放置しておくわけにはいかない」
「責任感と使命感に燃えるのはいいけどさ。
お前、何て言うか……うん、今日、終わったら飲みに行こう。私が全部、おごるから」
もはや、その一言しか続けることは出来なかった。
さて、まず最初にやってきたのは紅の悪魔の館である。
相変わらずのテーマパークっぷりを突っ走る館の周りには、たくさんの『お客様』の姿。どうやら、元日には和菓子以外に洋菓子の人気も根強いらしい。
「あら、あなた達」
降り立った門の前に、見慣れた顔が佇んでいた。
十六夜咲夜。この館の苦労人の一人で、一応、メイド長の立場にある女性である。
「何だ、お前。その格好」
「お嬢様が言い出したのよ。『着物を着てみたい』って。
だけど、そんなものを持ってる子はここにいないでしょ? だから、作ったのよ」
私は忙しくて、その暇がなかったから、彼女に任せたの。
その『彼女』で示した先にいるのは、悪魔の館の門番を預かるにしては人のいい妖怪だった。
「……着物ってミニスカだったか?」
「動きやすいからいいわよ」
その彼女がデザインしたであろう『着物』は、一言で言うならチャイナドレスだった。ただし、スカートの丈が短い。曰く、『ちょっと変化をつけてみるのも良いかと思いまして』だそうだ。
なお、そのミニスカチャイナドレスだが、パチュリーにはやたらと好評だった。
彼女が言うには、『チャイナドレスはチラリズムがいい。スリットから覗くふとももが最高。けれど、あえて、そのチラリズムという制限から解き放たれたミニスカチャイナもまた絶品』。
「よくわからん」
「私もよ」
そこで、咲夜の視線は霊夢へと。
「あなた達もうちに用事があるなら、あそこの列に並んでちょうだい。入場には二時間くらいかかるけど」
「そうじゃないの。
……ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」
「何?」
「あなた、犯人?」
「………は?」
新年早々、いきなり犯人呼ばわりされるとは思わなかったらしく、咲夜が首をかしげる。当たり前だが。
魔理沙がかくかくしかじかと事情を説明すると、
「……霊夢。お金、いらないから。
美味しいもの、お腹一杯食べて行きなさい」
ハンカチ片手に目尻を押さえながら、彼女は霊夢の肩を叩いた。
実に、気持ちはわからんでもない。
「いや、だけど、しかし、霊夢の言うことにも一理があることはあるんだ」
「いやすぎるわよ、そんな人生」
「けど、気にならないか?
何で、わざわざ、そんな粋なプレゼントをする必要があるのか、とかさ。何の得にもならないだろ?」
「まぁ……それはそうだけど。
けれど、中にはいるかもよ。そういう人。見返りを求めずに、誰かに尽くしてあげたいと思うことは、誰にだってあるわ」
「それってメイド長のことかしら」
「きっとそうよ」
「相変わらず、恥ずかしがりよねー」
「そういうことを面と向かって言えるほど、まだ勇気がないのよ」
「きゃー、奥ゆかしいわ」
「かわいいわよねぇ、ほんと」
「うんうん」
「お黙りっ!」
後ろでぼそぼそ話しているメイド達めがけて、彼女は恥ずかしさ紛れにナイフを放った。しかし、普段なら百発百中のそれは、メイド達の横を駆け抜け、どこぞへと消えていく。
さすがに、鉄の女たる十六夜メイド長も、色恋沙汰の前には無力といったところか。
「と、ともかくっ!
私たちはよく知らない! それだけ!」
「顔、真っ赤だぞ、お前」
「うるさい! 寒いのよ!」
「寒くて顔が赤くなるってのもわからんことはないが、それ以外のところの色は普通だぞ」
「刺すわよ!?」
ちょっと調子に乗って咲夜をいじる魔理沙。
いい加減、反応がやばくなってきたところで、「まぁ、それは置いといて」と話を横にのける。
「とりあえず、お前達は今回の一件には関わってないってことか」
「……まぁ、そうね。
私なんて忙しかったんだから。料理に洗濯、お掃除、お年玉の用意などなど」
「お年玉って……」
「お嬢様達がどこかから情報を仕入れてきたらしいのよ。
今朝から『お年玉ちょうだい』ってうるさくて」
かわいいからいいんだけどね、と咲夜。
ちなみに、そんなお嬢様達のお年玉は、一人お札一枚であるとのことだった。
「と、なると……次は白玉楼か永遠亭ってところか」
「まぁ、どっちも、それなりの可能性がありそうなところね。少なくとも、うちよりは」
「だろうな」
「……なんか気になる発言ね」
ともあれ、咲夜は『まぁ、そういうことなのよ』と話を打ち切って踵を返す。
と、そんな彼女の方を、霊夢がつかんで引き留めた。
「何?」
「約束」
「十人前を用意するわ」
どうやら、忘れてなかったらしい。
続いてやってきたのは冥界である。
新年早々、辛気くさいところに足を運ぶもんだな、と魔理沙は思っているのだが、口には出さない。霊夢の顔は、今、使命感に燃えているからだ。
ものすげーいやな使命感もあったもんだが。
「おーい」
やってきた大きなお屋敷の前で、魔理沙は声を上げる。
迎えに出てくるのは、いつものちびっこ従者である。なお、本日は、刀の代わりに手に包丁を持っての登場である。
「ああ、魔理沙さんに霊夢さん。明けましておめでとうございます。
こんなところで場違いな挨拶ですけど」
「いや、いいんだ。
ところでだな、妖夢」
「はい?」
「あなた、異変の犯人?」
「…………え?」
反応は、咲夜と同じだった。
同じく、魔理沙が事情を説明すると、『……霊夢さん、おもち、食べていってください』と、またもや咲夜と同じような答えが返ってくる。
彼女に案内されるまま、屋敷の中へと上がった二人は、屋敷の主が、ただいま、お食事中の部屋の中へ。
「あらぁ、何か珍しいわねぇ。こんなおめでたい日にぃ」
「それは程度のいい皮肉として受け取っておくぜ」
屋敷の主、幽々子がもむもむとおもちを頬張っている。さすがの彼女も、油断すると喉に容赦なく詰まるおもちには勝てないのか、その食事スピードは至ってのんびりしたものである。
「それでぇ、何か用事ぃ?」
「いや、実はだな――」
先ほど、表で妖夢にしたのと同じ事情説明を魔理沙が行うと、幽々子は、「妖夢、霊夢さんにおもちを包んで持たせてあげて」と涙ながらに指示した。
色んな意味で、ほんと、切ない現実である。
「ともあれ、その事情を聞いて、私に言えること。それは、よくわからない、ということよ」
いくら私でも、何の理由もなく、おせち料理などと言う、一年に一度しか食べられないものを他人にはあげられない、とのことだった。相変わらずの食欲魔人であると共に、食への情熱を感じさせる一言である。
……ちなみに、魔理沙が気になったのは、そんな幽々子らしい理由ではなく、いつものとろくさい喋り方から、『覚醒』(魔理沙命名)した時の喋り方に、彼女が変わっていることなのだが。
「ふぅん……。幽々子でもないか。
いや、お前のことだから、『サプライズ』とか言って変なネタを仕込んでくるかもとは思ったんだが」
「そこまで暇ではないもの。
昨日は、妖夢と一緒に楽しくお酒を飲んでいたし」
「……私は酔い潰されましたけどね」
「ごろごろ甘えて、かわいかったわよ」
「……お茶、持ってきます」
顔を赤くした妖夢が退席していく。
魔理沙は、あんころもち(あんこは妖夢お手製)を食べながら、
「これで、可能性の二つ目が消えたか……」
「確かに、これは異変と考えていいのかもしれないわね。
……正直、霊夢におせち料理を、何の見返りもなく与えてくれそうな人に心当たりがないもの……」
「あ、やっぱり」
そこまで言って、ちらりと霊夢を見る。
普段の彼女なら『やかましい!』という言葉と同時に針が飛んでくるものなのだが、今の彼女は、やたら真面目な顔をして前を見つめているだけだった。
ただし、おもちを持った手が口許とお皿の上を往復する速度は落ちないままで。
「世の中は流転するもの。ひとところに留まらないもの。
しかして、万物には諸行無常の響きあり。
けれど、何の因果もなく、動いていくのは現実とは言わない。それはすべからく、泡沫の夢よ」
「何が言いたいのかいまいちよくわからんが。
けど、まぁ、何となくわかったような気もするよ」
幽々子の手が、霊夢が持っていたお重へと伸びた。
ふたを開け、その中身に目を見張り、恐らく、昨日から今朝にかけて舌鼓を打ったであろう、テーブルの上の、もう一つのお重へと視線を向ける。
「妖夢、精進なさい」
戻ってきた妖夢に、いきなりの一言。
何のことやらわからず、目をぱちくりさせる妖夢は、霊夢が持っていたお重の中身を見て得心したらしく、深々とうなずいた。相変わらず、みょんな主従関係である。
「さて、次は永遠亭か……」
「あそこの方が、正直、よほど可能性はあると思うわ。
あそこの主は、変な意味で八方美人でしょ? それに、霊夢達も、何度か関わりを持っているし」
新年のご挨拶にお伺いしました。
そう言って、博麗神社の戸を叩く、永遠亭の使いを想像して。
なるほど、その構図に違和感はなかった。
「けれど……業の深い話ね。善意を信じることの出来ない日々……。
それはすなわち、心の疲れ……。
……霊夢、いつでもいい。疲れた時はうちに来て、ゆっくり休みなさい……」
「何か私、今、すげーバカにされてない?」
「気づいたのか今更」
次にやってきた竹林の奥。
新年早々『急患受け付けます』の、あまりめでたくはない貼り紙の貼られた戸をくぐって中へと足を進めれば、出迎えに出てくるうさぎの従者。
ちなみに、こちらが身につけている着物は、紅魔館のようなアレンジものではなく、正当な代物だった。
「ああ、霊夢さんに魔理沙さん。新年、明けましておめでとうございます」
「悪いんだが、うどんげ。永琳に取り次いでくれ」
「はあ。まぁ、いいですけど」
新年の挨拶に来たのかな? そんなわけないよね、この人達に限って。
そんな視線を向けながらも、『どうぞ』と彼女は二人を奥へと通す。
うどんげ――鈴仙に案内されるまま、二人がやってきたのは、この永遠亭の表の主(というか実質的な主)の部屋だった。
「師匠、霊夢さんと魔理沙さんです」
どうぞ、との声。
引き開けられたふすまの向こうには、相変わらず、白衣の似合うお医者さんが座っていた。すでに片手には、彼女たちのカルテが用意されている。
「お風邪でも召されましたか?」
「いやいやそうじゃなくてだな」
「食べ過ぎ、飲み過ぎはお体に悪いですよ」
「それも違う」
「えーっと……」
「いや、ちょっと話を聞いてくれ。頼むから」
ここ、永遠亭は、過去、この目の前の女性――永琳女史の発案によって、病院も経営している。そして、霊夢と魔理沙の二人は、ここの、ある意味では常連でもあった。
永琳の作ってくれる二日酔いの薬に、これまで、何度助けられたことか。その時ばかりは、二人とも、『神様仏様永琳様』である。
それはともあれとして。
「実はだな――」
まず、霊夢に事情を語らせ、それを魔理沙が補完する。
そして、永琳は言った。
「……鈴仙。霊夢さんにお年玉差し上げて……」
「……はい、わかりました……。
霊夢さん……力強く生きてくださいね……」
今朝方、永琳が大急ぎで、うさぎの子供達に配ったポチ袋が霊夢にも渡される。誠、現実とは世知辛いものである。
さて、それはさておき。
「そういう事情が……。
……けど、あいにくだけど、私たちも知らないわ。昨日は、緊急手術の必要な患者さんが来て大変だったの」
おかげで、ほとんど徹夜よ、と永琳は微笑んだ。確かに、言われてみれば、その目元には隈が浮かんでいる。
しかしながら、その顔には疲れなどほとんど見られないことから、どういう結果になったのかは聞かずともわかることだった。
「おせち料理……か。
そう言えば、ずっと作ってなかったわね」
「お前のところは、正月料理って出てこないのか?」
「あら、出すわよ。たくさん。
けど、私が厨房に立って、ということはないの」
忙しいから、とまた苦笑。
ちらりと、傍らに立つ鈴仙に視線をやれば、『そう言う苦労をサポートするのが私たちの仕事です』と言わんばかりの顔だった。
紅魔館とも白玉楼とも違う主従関係に感心しながら、魔理沙は、差し出されていたお茶をすする。
「しかし……となると、一体、誰が犯人なんだ?」
「あの、魔理沙さん。本物の『善意』かもしれないんだから『犯人』呼ばわりはどうかと……」
「……だよね」
つぶやくのだが、やはり、世間一般と自分の感覚はずれているんだなと再認識出来てしまって、魔理沙は切なさから泣きそうになった。こらえたが。
永琳は、そんな二人を見つめながら、つぶやく。
「……全く別の可能性を考えてもいいかもしれない」
「は?」
「疑う必要のない善意がそこにある。そう考えるしかないかもしれない」
「……ほう」
「あなた達……ああ、いや、霊夢さんだけかもしれないけど……は、とりあえず、『誰がこれをやったのか』と言うことを疑いを持ってかかっているでしょう?
そうではなくて、『誰かがしてくれた』という視線で考えてみても良いと思うの。
そう考えるなら、私たち以外の第三者の可能性が思い浮かぶと思うわ」
言われてみれば、確かに。
霊夢達がこれまで訪れてきた場所は、幻想郷における『三大迷惑発生器』である。
そこには、すくなからずの悪意が、推測に影響を及ぼしていることは間違いない。しかし、逆に考えるのなら、霊夢が最初に言ったように『善人』が今回の事態を引き起こしたと見ることも出来る。
その『善人』がいるとしたら、霊夢達が次に当たるのは、これまで考えてもいなかった場所しかなくなる。だが、そこにこそ、事態の真実が潜んでいるのだとしたら。
「……そうか!」
「霊夢、どうした!?」
「……わかった。わかったわ。今回の犯人が!」
叫び、すっくと立ち上がる霊夢。
「ここ病院ですから。お静かに」
「ごめんなさい先生」
永琳に笑顔かつ強烈な眼差しを向けられて、あっさりと居住まいを正したりもするのだが。
「魔理沙。わかったわ。
永琳のくれたヒントの通りに考えるのなら、今回の犯人は、今までに回ってきたところにいるはずはないのよ」
「あの、霊夢さん。だから『犯人』呼ばわりはちょっと……」
「……行くわよ、魔理沙。この異変を解決するために」
「魔理沙さん、この人どうにかなりませんか」
「なってたら東方シリーズ続かないだろ」
「それもそうですね」
あっさりと納得してしまう理由であった。
とりあえず、霊夢は立ち上がると『ありがとうございました!』と頭を下げて駆け出していった。その後を、魔理沙が、やれやれと肩をすくめて追いかけていく。
そして、永琳は一人、「……今度、美味しいご飯を持っていってあげようかしら」と切なそうにつぶやくのみだった。
最後に、霊夢達がその場所へとやってきたのは、暮れなずんだ町の光と影の中で、去りゆく人に言葉が贈られるかもしれない時間帯だった。
しかし、それでも、そこには博麗神社にはない光景がある。
「早苗ーっ!」
「あら、霊夢さん。それから、魔理沙さんも。
ずいぶん遅くなってしまいましたが、ごきげんよう。明けましておめでとうございます」
にこやかな笑顔で佇むのは東風谷早苗。その彼女の前には、たくさんの参拝客の姿。
霊夢は彼女の前へと舞い降りると、早苗をびしっと指さした。
「犯人見つけたわ!」
「……へっ?」
唐突な犯人呼ばわりに、早苗の目が点になった。
これこれこういう事情なんだ、と魔理沙が霊夢に代わって事情を説明すると、早苗は目頭抑えつつ、『あのですね――』と何やら述べようとする。
しかし、それを霊夢が許さなかった。
「早苗……あなたはいい人よ!」
「えっと……はい、ありがとうございます……」
「笑顔は柔らかい、スタイルもいい、真面目で家事も万能、この前、麓の村で行われた『お嫁さんにしたい女性』ナンバー1!」
ちなみに、霊夢は欄外だった。
「あなたは私にも優しいわ! 差し入れとか持ってきてくれるし! お裾分け、なんていう私に知らない言葉を使って!」
「……知らないんですか……?」
「察してくれ」
「すなわち、あなたは『善人』よ!」
それはほめられているんだろうか。いや、ほめられてるんだろうな、きっと。
さすがの早苗も困惑する中、霊夢は続ける。
「だからこそ! あなたならこの行為は考えられる!
お正月でも神社の中でごろごろして、空っぽの賽銭箱に涙する私をおもんばかって、そっとおせち料理を差し入れてくれるなんていうことを!
そんないいことをしてくれる善人は、この幻想郷にあなただけよ! ありがとう!」
「……いえ……どういたしまして……。
ああ、いや、違う違う……。あの、私は……」
「けれど、幻想郷にそれはあってはならない!
幻想郷にあって正しいのは、弾幕すなわちトリガーハッピー!」
「……それ、精神的にすごくやばいような……」
「善人は食われるだけ! 誰かの踏み台という犠牲になるだけ!
私は、早苗! あなたがそんな風になるのを見てなんていられない!」
「……いや、あの……そろそろ論理が破綻して……」
「だからこそ!
あなたが、こんないいことを考えるような善人から、幻想郷における『真人間』に戻す必要があるの!」
「……すごく戻りたくないんですけど……。あの、でも、だけどですね、霊夢さん。私の話を……」
「私は悲しい……あなたが善人ではなくなってしまうことが……。
だけど、それがあなたのため……許して、早苗!」
「いやだからあの……」
「……あいつが人の話、聞くと思うか?」
過去、あらゆる事件において、とりあえず力ずくで相手を黙らせてから話を始めるという、どこぞの白い悪魔も真っ青なことばっかりしてきた奴だぞ。
「いずれ二代目が現れるだろうな……」
「……よくわかんない……」
「さあ、早苗! かかってきなさい!」
「あの、えっと……」
「かかってこないなら、こちらから行くわ! 覚悟しなさいっ!」
「ち、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
かくて、新年一発目の弾幕バトルは幕を開けたのだった。
「……ふぅ」
村の一角のお団子屋。
そこの一角に腰掛け、お茶をたしなむ女性の姿がある。
年齢は、三十の後半から四十の頭ほどだろうか。
優しい笑顔と柔和な空気の似合う、『優しいおばちゃん』の雰囲気を醸し出す彼女は、赤く染まった幻想郷の空を見上げながら、またお茶を一口。
「そうしているとおばさんくさいわよ」
後ろから、声。
建物の暗がりの陰からそっと一人、歩み出す影がある。
この幻想郷において、最もうさんくさい妖怪――八雲紫その人である。
「ああ、いえ……。
……こうしていると、何だか昔を思い出すなぁ、って」
「あなたも、いつも縁側でお茶を飲んでいたわね」
その頃と変わらないままにおばさんになって、と紫は笑った。
「けど、まだまだ美人よ。あなた」
「ありがとう。嬉しいわ」
「で? どうだったの?」
「……てへへ」
とても、その実年齢にはあわないお茶目な仕草で、彼女は舌を出した。
「やっぱり恥ずかしいわね」
「あきれた。声もかけずに出てきたの? 昨日、一日かけて作っていたじゃない、あのおせち」
「う~ん……。
でも、やっぱり、いいの。ママというか、母親としては、娘の成長を遠くの空の下で見守っている方が似合ってるもん」
「もん、って。
……ほんと、変わらないわね」
「そうかしら?」
これでも大人になったのよ、と笑う彼女の横顔に、紫は、とある少女の姿を思い出す。
ほんと、そっくりね。
苦笑した紫の手に、お酒が一つ。お茶をたしなむ彼女とは別に、お酒を飲み出す紫へと、彼女は「お団子とお酒ってあわないわよ」と笑った。
「あの子が好きなもの、一杯入れてきたのよ。美味しく食べてるかしら」
「いつになっても、母親の作ってくれた料理の味は忘れないものよ」
「そうね。
けど、久々に会えて嬉しかったなぁ。もう、ママの若かった頃そっくりの美人になって」
「それ、親のひいき目よ?」
「もう。紫のいぢわる」
ぷっ、と頬を膨らませる彼女の言葉に、紫は声を上げて笑った。
――日が暮れていく。
新しい一年の、最初の一日が終わりを告げていく。
伸びていく影法師は、いつまでも、楽しそうに互いを見つめ合っていた。太陽が山の端に沈み、濃い闇が幻想郷を閉ざすその時まで、向かい合う二人の姿は、誰の目にも鮮やかに映し出されていたのだった。
「早苗、私の愛を受け取って! 夢想封印ー!」
「あー、もう! だから人の話を聞いてくださいっていうか、もうわかりました、ええ、ええ、わかりましたよ!
霊夢さん、同じく神おわす社に仕えるものとして、私はあなたのぐーたらな態度を見かねていたんですっ! あなたには徹底的に、一度、教えてあげる必要がありますから!
こんな豆鉄砲で私をどうにか出来るなんて、片腹痛いですっ!」
「おおっ! 今のは一本足打法! かつて、伝説のキングが得意とした打法ですよ、解説の射命丸さん!」
「はい、そして今、早苗さんが放ったのは伝説のレーザービームですね。さすがの霊夢さんも、あれを前にしたら刺されるしかないでしょう」
「おっと、霊夢、見事にかわしました!
どう見ますか、この展開! 解説の射命丸さん!」
「さすが霊夢さん、伝説のドットよけは健在ですね。この勝負、わからなくなりそうです」
「ところでお前、いつからそこにいた?」
「異変あるところ即座に出現☆ ハートフル♪あやちゃん☆ ですから」
「言ってて恥ずかしくないか?」
「すっげー恥ずかしいです」
ぴちゅーん
「あ、同時撃墜」
「コインはまだあるから、まだまだ続きますよ」
「私、帰るわ」
「じゃ、私も」
あけましておめでとう。
霊夢可愛すぎワロタ。
行く先行く先で同情される霊夢に泣きワロタ。
幻想郷中を周り終えた頃にはひと財産できてそうだw
霊夢ママかよ それはちょっと反則だぜ
とりあえず、霊夢につ⑩
早苗とのドンパチで神社が半壊、貰った物資の殆どが守矢神社に流れてしまうんですね。
分かります。
あってもそれはそれで異変になってしまうのだろうかww