Coolier - 新生・東方創想話

ミセス早苗に任せなさい! おっぱい編

2008/12/31 15:41:46
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おっぱいとは何か?

それは殺伐とした未来の無い世の中に突如現れた光、希望、エデンの園、砂漠のオアシス、生を受けた意味である!

適度な大きさ、引き締まった形、先っ歩にちょこんとついているこぼれんばかりのチェリー!! 
服越しに突起が見えれば尚最高である! 
それらの要素が全て重なりあい、丸い形をした禁断の果実はもはや芸術の域を越えているのである!!!

かの有名な学者はこう言った…『これこそが私の生涯を費やして追い求めていた結晶だ…』と! 
円周率が何故パイって呼ばれてるか? 
それは人間における真理、それこそがおっぱいであることをずっと昔から当然の常識とされていたからである!!!! ぬおお!!!
どうでもいいけどπ←これまじたれたおっぱいに見えるよね



私は声を大にしてこう伝えたい…!

おっぱいは大きいからおっぱいなのである!
小さいおっぱいなど、言語道断!!
ただの乳首でああああああああああある!!!!!!

さあ、今こそ我々萌えを求めるトレジャーハンター(別名真実の探求者)が立ち上がる時が来たのだ!!!
今こそ行動の時であああああああ!!!

「おい早苗お前ちょっと神社の裏こいまじお前私が蛙の神でロリキャラだからって馬鹿にしてんだろおい素直にこっちこいよコラてめぇカメラ止めろ」





ケース1 神奈子

「…ずびばべんでじだ」

「解ればよろしい。いくらなんでも、失礼だよ!」

「…二面性激しいですね」

「まだシゴキ足りねえようだな。良い機会だしもう一回やっかオラ」

「心の底からすみませんでした」

ボソリと言ったはずなのに、なんですか!
自分でもよく聞こえないくらいだったのに! んもう、地獄耳すぎますよ!

「おいおい、そのくらいにしておいてやりなよ諏訪子。早苗だってきっとわかっていてやっているのさ」

「だってー。神奈子は胸があるからそんな余裕の態度をとることが出来るんだよ! おかしい、これは不平等だ! その無駄についた贅肉を減らすことを要求するね!」

「うーん、まあ、確かに私は皆と比べれば胸があるほうだから何とも言えないんだけどさ。でも、昔みたいに幻想郷に馴染めないで寂しそうにしていた早苗を見るより、今の生き生きしてる早苗のほうがいいだろう?」

「そりゃあそうだけどさ…。なんか、悔しいなあ。

…おい早苗、お前何偉そうに『さすが神奈子解ってる』みたいな得意気な面してんだよ。後でたまりにたまった神社の境内の掃除やっておけよな。
あ、風呂掃除と洗濯と料理もお願い。確かに今日の当番は私だけどさ、なんていうの? 最近腰が痛くてさ、腰が。
やってくれるよね? 雑用が出来ない早苗なんて需要のない只の2Pカラー、空気、ストファイ2のエドモンド本田よ。
さあ、お払い箱に入りたく無ければ動く、動く!」

「しまいには泣きますよ」

今私に対して真心も思いやりもない言葉を吐いているこの毒舌ロリペタおこちゃま幼女は諏訪子様。
この神社の神様の一人で、普段は可愛くて手伝わなくてもいいと言っている家事を自ら進んで手伝ってくださる、本当によく出来た子なんです。
ただ、ご自分の気にしているコンプレックスを指摘されると外見からは想像出来ないような暴言を吐いて来ます。
暴言が止んでも、機嫌が直るまで陰湿ないたずらをしてきます。ああ、なんという腹黒さ! 涙が出てきました! よよよよ。
まあ、んなこと言ってもそれこそ2Pカラーと言われている私ぐらいの需要なんじゃないんですかね? 彼女。
ロリペタ幼女なんてそれこそ外の世界に行けばありふれたジャンルだし、私自身、胸が無いのは、ねえ? 
そりゃあ最初一緒に住みはじめた時は余りの可愛さに何度ハグしようと思ったことか! 実際にやってたけど! でも何ヵ月も一緒に住んでいる内に、そんなのは屁と一緒にどっか飛んじゃいました。
やっぱ大切なのは胸ですね、胸!

「お前外の世界に友達いんのか?」

なんだよ…、そういうこと言うなし!
友達くらいいるもん!!! 二人くらい。

「え、早苗友達いんの…? まじかよ、うっわ…」

拝啓、母上。幻想郷は辛い所です

「おい、おい。それはさすがに言い過ぎだよ諏訪子。早苗が可哀想だ。それに諏訪子、早苗が黙っているのに勝手に顔を綻ばせてはしかめつらをして、はたまた赤らめては気が付いたら般若の様な顔をして。
新手の顔芸か? そのあとに早苗に友達のことを聞く様ははたからみるとかなり怪しいぞ」

「う、うぅ…。神奈子のバカ! わからずや! ホルスタイン!」

「あいあい、私にゃわからん世界ですたい。地霊殿? のさとりさんとやらに心を読むコツを教えて貰ったからってあんまり使うんじゃないよ。早苗だって、知られたく無いこともあるだろうしね」

今、先程説明した諏訪子様をなだめているのは同じくこの神社の神様である神奈子様。神奈子様は幻想郷にはびこってる噂とは少し違い、良く出来た人物なんです。
噂では神奈子様は鉄パイプフェチだとかガンタンクと呟くと消されるだとか言われていますが、実際にはそうではありません。
非常におおらかで、頼もしい、肝っ玉母さんみたいな人です!
やるべきことはビシッとやる、自分の意見もちゃんと持ち、相手に対して思いやれる。
私も、神奈子様みたいな人物になりたいです。
諏訪子様みたいにコンプレックスを指摘されると豹変されるのではないか? 正直、今でもちょっとはそう思っています。…申し訳なく思いますけどね。
ここだけの話、実は私、神奈子様の前で鉄パイプ狂のガンタンクって呟いたことがあるんです。…今思い返すと、なんて恐いもの知らずでタフだったんだって思います! 私やっべ! 人間、やる気があればなんでも出来るもんですね! …閑話休題。
別に神奈子様に何かちょっかいをだされた訳ではありません。単純に噂が気になって、我が身を犠牲にして検証しようと試みたんです。
しかし、神奈子様は私のあまりに無礼な発言を気にも止めず、逆に
『なっはっは! 早苗も言うようになったねえ! そのガンタンクってのは魔理沙が考えたあだ名だわね? いいね、いいね早苗! こっちにも馴染んできたか!』
…なんて笑い飛ばされちゃいました。私は、なんて恥ずかしいことをしたのだろうとうつ向いてしまいました。
最も、今では悪いことをしたと反省しています。そのお陰で神奈子様の器の大きさを実感したのですが、まあ、結果オーライでしょうか。

しかし、時々神社裏の倉庫に足を運び鉄パイプに向かって『ぐへへへへ…』と呟きながら丁重に埃を拭いている様はたまたま見掛けたこっちが悲しくなるくらいかなり怪しいです。確かに鉄パイプ狂といわれるのは仕方ないかもしれません。
それでも、それを上塗りするくらいに、良い人です!
嗚呼、私の性癖とかとは別に、神奈子様のような彼氏がいたらなあ…。 やっべ、口からよだれ垂れてら。

口元を襟袖で拭くと共に、ふと諏訪子様の顔色を伺うと何やら下を向いて涙ぐんでいます。
嫉妬しているのでしょう。今にもじたんだを踏みそうな雰囲気をだしていますが、諏訪子様ですしね。
只でさえちっちゃいのに、構ってちゃんとは面倒臭い。放っておきましょう。さあ、掃除、掃除!

「…、…早苗の、ばかああああああ!!!」

そう諏訪子様が叫ぶと、私にどこから取り出したのか分かりませんが枕を投げてきて、渡り廊下から外へ走りさって行きました。
あらあら、外に出るときは靴をはかないと汚いですよ~。

「あっはっは。諏訪子も素直じゃないなあ。早苗も、諏訪子をからかうのは程々にするんだぞ? いくら可愛いからって、相手を深く傷付けては元も子も無いからね」

「はい、心得ています」

「ふふ、よろしい。お腹も空いたし、そろそろお昼御飯にしましょうか。今日は私が作るよ」

「ありがとうございます」

説明が遅れたけど、ここは守矢神社です。詳しい立地説明は省きますが(決して私が方向音痴だからいまだに場所を把握していないだとか、そんなことはありませんよ!)、私たちは先程までぐっすりと眠っていて、今さっきようやく起きた所だったんです。
私にはなんだか悶々と妄想を繰り広げる癖があるみたいで、それを諏訪子様が覗いてきて、今に至る、というわけです。
全く、月も恥じらう乙女の心を覗くなんてとんだハレンチな人です! 早苗プンプンですよ!

「…、早苗ともっとかかわりたいんだもん」

「え、あれ、諏訪子様帰っていらしたんですか」

「ふん! お腹が空いたからだもん! 神奈子のご飯を食べたらすぐに遊びに行くんだもん!」

あらあら、素直じゃないですね。なんて可愛らしいのでしょう。 
…気が付いたら諏訪子様が私に体をよりかけていたので、諏訪子様の頭を私のひざの上に乗せて、髪を撫でます。さらさらで、気持ちがいいです。
諏訪子様もあーうー言っていて、満更では無いようです。これでいて、胸があったなら…! くうう、悔やまれる!

「ふんっ!」

「ごっ!」

諏訪子様がいきなり起き上がって来たので諏訪子様のおでこが私の顎にクリーンヒット!
痛いです、下を噛んでしまいました!
血の味が口内に充満します。ああ、なんということでしょう! これは痛い!

「うるさい、自業自得だよ!」

酷い、酷いわ! 私は諏訪子様をこんな子に育てた覚えは無いです! ああ、なんて無慈悲な…。 よよよよ。

「あーあー二人ともまた何をしているんだい。騒がしくてどうも見に来てしまったよ。
…早苗、お前口から血を出しているじゃないか! こら、諏訪子! 何をやっているんだ! 謝りなさい!」

「いいや、私は悪くないね! 妻に誓ってもいいよ!」

「お前に妻いないだろ!」

インディジョーンズ面白かったなあ…。そう思いながら、口元を襟袖で拭きつつ言い合いをしている二人の姿を眺めます。袖がやや赤くなりました。
料理の途中ですから、神奈子様はエプロンをしています。問題はそこではありません。エプロンを着られたことによって、普段ごちゃごちゃしていて判りにくい神奈子様のその、胸のラインが、強調されてるというか、…でっけー!! これひょっとしたらDくらいあるんじゃねえの!?

「…」

「…ん、どうした諏訪子。いきなり無口になって早苗をジト目で見だしちゃって」

「…ふん! 早苗のエッチ、スケベ! もっと嫌いになったもん!」

「んー…? 何に嫉妬してるんだ、諏訪子?」

「嫉妬なんかしてないもん! 神奈子、早くご飯作ってよ!」

「ああ、そうだった。ちくわぶを煮付けてるところだったのを忘れていたよ。ちょっと待っててー。すぐに用意できるよ」

神奈子様がそう私たちに告げるとパタパタと台所へ戻っていきました。かと思うと、すぐにお鍋をもって居間に戻って来ました。
ちくわぶの美味しそうな匂いが漂ってきます。

「いやぁー、危なかったね! 後もう少しで下が焦げていたところだったよ! 早苗、食器を持ってきて貰えるかい? ご飯は炊けてあるよね?」

「いえ、今日は私たち全員が昼まで寝過ごしていたので炊いてないですね。その代わり、昨日の夕飯で炊いた残りのお冷やなら昨日どんぶりに移して保存したので、残っていると思います」

「あっちゃー…、お冷やご飯かあ。出来ればあったかいご飯が食べたかったなあ…。まあ、仕方ないか。持ってきて貰えるかい? お願い」

「わかりました」

そう神奈子様に告げ、台所へ向かいます。お冷やは食器棚のところにラップを敷いて保管していた筈です。
…目の前に置いてありました。
ともかく、すぐに見付かったので、食器棚からしゃもじとどんぶりを調理台に置いてあったお盆に乗せ茶碗も3つ置き、お盆を持って居間へ戻ります。

他のところはどうかわからないですが、少なくともこの神社には電気が通っていません。従って、電子レンジも冷蔵庫も無いため、安全性がありかつ温かいご飯を食べるためには炊くしかないのです。
本来なら私たちが食べられる分だけのご飯しか炊かないのですが、昨日の料理当番だった私が寝惚けてて三合多くお米を入れて炊いてしまったのです。
ああ、なんと愚かしい! 昨日ご飯炊いたやつは誰だ!! …ごめんなさい、反省します。
しかも、水は普段炊いている量しか入れなかったため、ご飯はカチカチのパサパサ。美味しくない上に量も多いので、余ってしまったというわけなんです。
すみません。もう一度反省します。

「持ってきましたよ」

「えー、本当にまた昨日のご飯食べるのー? おいしくないー」

「まあまあ、そういうなよ。ほら、そんなことを言う人にはご飯よそってくれないよ、諏訪子!」

「あーうー」

諏訪子様も文句をいいつつしぶしぶ定位置に座られました。神奈子様は既に座られています。

私はお盆を居間の中心あたりにある大きなちゃぶ台に乗せ、ご飯をお椀に盛り付けます。
なんだかガチガチしていて昨日よりも美味しく無さそうです。お米の神様には申し訳ございませんが、只でさえあまり食べられたものではないお米が冷たくガチガチになっては、テンションも下がってしまいます。
…それはともかく!
お椀をお二人に、そして私が座る場所の前のちゃぶ台に配膳して、ちくわぶ用のお皿を配ろうとしたところもう既に置いてありました。神奈子様はちくわぶ用のお皿を持ってきてくれたみたいです。助かります、ありがとうございます。
こぞって諏訪子様が「わ、私は何をすればいい?」と聞いてきましたので、とりあえず静かにめしあがってくださいと伝えました。

…一応、お二人方と私の定位置について説明します。
まず、一番威厳のある神奈子様が上座に座られます。居間には『停滞は衰退の一方なり』と書かれた掛け軸があるのですが、それが上座のようです。
私たち二人は神奈子様から見てそれぞれ斜め45度の所に座ります。縁側の涼しい場所に諏訪子様、もう片方の場所に私です。

「じゃあもうそろそろ私もお腹の限界なのでね。頂きましょうか!」

「「いただきまーす!」」

私達は、声を揃えて遅い朝御飯を食べる挨拶を元気に言いました。






「…ねえ、神奈子」

「ん、なんだ?」

「今日のおかず、ちくわぶだけ?」

「わがまま言うんじゃあありません」

「用意するの、面倒臭かっただけでしょ」

「…気のせい」

「裏に、野菜がつけてある樽あったよね」

「…知らない。家に漬物なんてあったのか」

「昨日食べたのに?」

「…うん」

「…」


はあ。まーたお二人が言い争いを始めました。
こういった陰湿でネチネチした言い争いは良くあることなのであまり気にしてはいませんが、一緒に住みはじめてから二日に一回は必ずこういったくだらない争いをするんです。
一体何が二人をそこまでさせるのでしょう。きっと、ケンカするほどなんとやらってやつなんでしょうね。
あまりに同じことを繰り返しているものですから、もはやこういったケンカがないともの恋しいくらいです。
それに、別におかずが一品だけでもいいではありませんか! 確かに私も『あれ? これだけ?』 って思ったことは否めませんが、それでも作ってくださるだけありがたいです。
全く、諏訪子様ったらわがままですよ! これだからいつまで経ってもお胸がぺたぺたのツルツルなままなんです! 
反省しんさい!

「友達いないくせに」

そ、そういうこと言うなし!!! 何でそういうこと言うんだし!!!
いるし! 友達くらいちゃんといますよ!
思い出せるのは二人くらいでその内の一人は小学生のときの人だけど

「早苗…」

なんだよお…、哀れむような目で見ないでよお…
くすん

「まーた何早苗をいじめてるんだ諏訪子。ほどほどにしておけよ。全く、二人とも隙をついてはくだらないことでケンカして、本当にケンカするほど仲がいいってやつだねえ。羨ましいよ」

今の神奈子様のちょっと矛盾した発言をおかしく思い、諏訪子様と顔を見合わせて笑いました。
当の神奈子様はなんで笑っているのかわからないらしく、顔にハテナマークを浮かべていました。





「それにしても…」

「ん? どうした、早苗。ちくわぶをご飯の上に乗せて転がしながら呟く様ははたからみるととても怪しいぞ」

「あ、いや…」

今、神奈子様が作ってくれたちくわぶをおかずに食事をしているのですが、神奈子様は未だにエプロンをとらず、来たまま食事をしていらっしゃいます。
先程気付いた通り、神奈子様がエプロンを着られると普段大きさがよくわからない胸がしっかりと強調されて、その、なんというか目のやり場に困るっていうのは違うんですけど興味を持たざるを得ないというか察してください! もう、おばか!
相手への思いやりの気持ちは大切ですよ!

「…ハッハーン。諏訪子ほどではないが、私にも早苗の考えてることがわかるかも知れないな」

「…えっ?」

なに? え、まじ?
神奈子様にまで私の心覗かれるようになったって、へっ!?
いや、まあ、確かに!
不本意ではあるけど変に世間を知っちゃってひねくれちゃったいわゆるおマセちゃんに覗かれるのは仕方ないとして!
私のあこがれで純真な心をお持ちであろう神奈子様に覗かれるなんて、そんな…! 恥ずかしすぎて、溶けちゃいますよお~!!

あ、いたい、ふとももはいたい! 足の指で私のふともも挟まんといて!

「ズバリ! 私が何故エプロンを着ているのか気になっていたのだろう! さっきから早苗はずっとエプロンばっか見ていたからな! まあ、着ている理由は単純に後片付けや洗い物とかあるし、面倒だから脱いでないだけなんだけれどね。
…なんだ、二人とも? そんな確かに当たってるけど的は射てないですよ、でもそんなところがまた可愛いのよねっていったような目は?」

「可愛いもんは可愛いわよ」

「「ねー」」

こんな時だけは諏訪子様と意見が合うんです。流石に日々同じ屋根の下で暮らしているというべきですか。
それに、こういった所で意見があわないような人じゃあ幻想郷では生き辛い気もします。
「……、…それにしても、おっぱい、大きいなあ」
私にもあのくらい、せめて、半分でもあればコンプレックスに悩まされずに日々伸び伸び生活出来るのに!
羨ましい。実にけしからん乳房ですよ! 全く持って憎たらしい! 揉ませろって感じです! キーッ!
全く、これだから近頃の若もんは全く…、ん?
ふと、辺りを見回してみると諏訪子様の辺りの時が止まっているような気がします。背中からチラチラと変なおっさんらしき物が垣間見えるのは気のせいでしょうか。

諏訪子様の様子を詳しくうかがうと、左手にご飯を持ち、右手に持っていた箸をちくわぶの入っている鍋に思い切り刺したまま固まっています。ああ、鍋に小さな穴が! 
…わざとですよね! 何をどうしたらそんなシチュエーションになるんですか!
ああああ、新しく買いに行くお金も体力も(主に周りの視線を耐える体力)無いし、かといって奇跡起こして直すのも面倒なんだよなあ…。
んもー、今日はこの穴を修復するために夜鍋することになりそうです。鍋だけに。
ついでに表情をうかがってみると、恥ずかしさの余りに顔がトマト色になっているような、はたまた嫉妬に狂って真っ赤になっているような、青ざめているようなと清々しくなるくらいに表現が出来ない表情をしていらっしゃいます。
ひょっとしたら、顔芸選手権かなんかに出れるかも知れませんよ。
対する神奈子様はなんだかバツが悪そうに「…おいおい、早苗」と照れています。
そんな、私が自分の世界に浸っているうちに何かあったのでしょうか?

「どうされましたか、神奈子様?」

「どうされましたかって、早苗…。その、呟いたじゃないか。胸が…どうの…」

WHAT?

「…その。誰がでしょうか」

「おいおい、やめてくれよ…。私はこういった類のことが苦手なんだ。どうも恥ずかしくてな。…早苗が、呟いたんじゃないか」

…、…なるほど。すなわち、あれか。私がご飯の上にちくわぶを転がしながらボソリと胸がでかいと呟いたわけか! そりゃあ、時も固まるわな!
そんなご飯の時までこんなこと考えてて、あまつさえ考えが声に出ちゃうなんて変態以外何者でも無いもんなあ! 
あっはっはっはっはっはっはっは!!!……………

!!!!!!!!!??

「そそそそそそんなhavana(クラブhavanaは御用達です)まさか私はこんなつもりじゃまさか考えが口に出るなんて全然もう!!!」

「…早苗、さっきからそんなこと考えていたのか!」

ああああああああああああ墓穴掘っちまったああああああああああくっそおおおおおおおおおお

「も、も、も、も!! 申し訳ございません!! 本当、すみません!!」

「あ、いや、別に謝らなくても」

「本当に申し訳ございません!! これからは食事のときこういうこと考えないように善処します!!! 私、神奈子様に嫌われたら、…ううう~!!」

ああ、なんてことでしょう! ここで泣いたら逆効果に決まっているのに、目から、汗が…

「ああ、そんな、泣かないでおくれ早苗。別に私は嫌いになっても引いたりしてもいないよ。そりゃあ、驚いたのは否めないけどさ」

「お、驚き…! う、う、う~」

やっぱり神奈子様に嫌われちゃったんだぁ~!!! ううう、この、私の馬鹿! アホ! とんま!
うううううう…。


「…あー、こんなこと言うのも、まあ、なんだ。…少し嬉しかったよ。なんだかんだで、そういわれるのは気持いいからね。すごい恥ずかしいけどさ」

…えっ、?

「…あー、こっ恥ずかしい! だからこういった類の出来事は苦手なんだ! …ほら、涙拭いて。おいで。抱き締めてあげるから、ね?」


「か、神奈子様ぁ~」

神奈子様が私の前に正座で座り込み、手で涙を拭ってくれて、そのまま手を広げてくれたので、ぽふっと神奈子様の正面に倒れこみます。まだ起きてまもないからでしょうか、少し汗臭いですが、気持いいです。

「神奈子様、ふかふかです」

「ふかふかねえ。誉め言葉として受け取っておくよ」
「気持いいです~」

「そりゃあ、よかった。…あ、こら、鼻水がでてるぞ。ほら、ちりがみは私が持ってあげるから、チーンしな、チーン」

神奈子様がちゃぶだいの下に置いてあるティッシュを二、三枚取り私の鼻に当ててくれたので、素直に鼻をかむことにします。

「チーン」

「おいおい葬式の時の様なチーンじゃないぞ。鼻をかむほうのチーンだ」

「チーン」

「はい、よくできました。…あー、ゴミ箱居間になかったっけ? いや、でも今日の掃除当番諏訪子だし。まあいっか、適当に置いちゃえ。
…落ち着いた?」

「…まだです」

「ん、そっか。落ち着いたら言ってね」

本当はすでに気持ちが落ち着いているのですが、神奈子様と離れるのが恋しいので、わざとまだだって言っちゃいました。それでも、拒否しないで受け入れてくれる神奈子様にちょっぴり罪悪感を感じます。
でも、神奈子様がいけないんです。こんなにふかふかで気持ちよくて、…お母さんみたいな暖かさがあるから、離れたくても離れられないんです!
腕を神奈子様の背中に回し、ぎゅっと抱き締めます。同時に、神奈子様の左肩に乗せていた自分の顎を上げ、顔を神奈子様の胸に埋めます。…うーん、やはり胸がある人は谷間に寝汗がたまるのでしょうか。さっきよりもちょっぴり汗臭いです。
感触の方はエプロン越しなので正直よくわからないです。でも、顔をグリグリとするととても気持ちいいです。

「…落ち着いたみたいだね。もう、離しても大丈夫?」

「…嫌です」

背中に回した腕の力を強めます。

「でも、このままだと天狗にみられるかも知れないし、ずっとは出来ないよ」

「…せめて、もう少し、だけ」

「…わかった」

神奈子様はそう私の耳元でボソリと呟き、私の背中に腕を伸ばしてきました。私はそれを受け入れ、腰に回した腕に精一杯力を入れギュッとします。神奈子様も、私の体をギュッってしてくれます。
なんだか変な気分になってきました。…ふと、埋めていた顔をあげて神奈子様の表情をうかがうと、顔を真っ赤にされて心なしか目が潤んでいるように見えます。
…別に、こんなことしたいって思ってるわけではないんですが! 段々と顔が神奈子様の方へ近付いていって、いや、近付かれてるのかな? …ああ、両方なんだ。そんなこと考えている内に、唇が、





「ふ、ふ、…! 二人ともなにやってるのーー!!!」

突如横から声が聞こえたのでびっくりして振り向いてみると、そこには先程時が止まっていたはずの諏訪子様が復活していました。
なんだよ、もう! なんでこうわざわざこのタイミングで現れるかなあっ! んもー!

「す、す、す、諏訪子!!? お前さっきまで固まっていたじゃないか!」

軽く涙が溢れて反応する神奈子様にハートがキュンってなりましたが、諏訪子様からあまりにまがまがしい空気が出ていたので泣く泣く反応せずにスルーしました。恐い。

「たった今早苗のピンチを感じとって動かない体を起こしたんだい! …おほん、そんなことより! 二人とも! 私が目の前が真っ暗で何も見えないことをいいことに、なんていうハレンチな!
ずるいぞ、神奈子! 私だって、早苗と抱き締めあったりとかしたいのに…!! なんと卑怯な! 抜け駆けは許さんぞ!!」

「諏訪子、本音出てるよ」

「あっ…! …そ、そんなことはどうでもいい! 二人とも反省しなさーい!!!、…!!?」

一瞬びくついた諏訪子様が、先程までカンカンに怒っていて熟したトマト色だった表情がみるみる内に青くなり、やがて果てには白色になりました。
体も心なしかぷるぷるしています。一体、どうしたのでしょうか?

「ティ、テ、ティッシュ…、じ、事後…? !!! そ、そんなあ~~!」

かと思うといきなり顔を赤くされ膨れ面にして涙目でこちらに振り向いて来ました。
今までの一連の動作が余りに怪しく、鳥インフルエンザでもかかったんじゃないかと心配になってきたので声をかけてみます。

「あの、どうされました?」

「私からも訪ねるよ。いきなりどうした、諏訪子?」

「どーしたもこーしたもないよ! こ、これは一体どういうこと!?」

「…、今指を指してるのはティッシュだね。どうかしたかい?」

「だ、だ、だって!」

両手を振り、目をぐるぐるさせて慌てふためきながら私たちに何かを伝えようとする諏訪子様はそれはもう自然の神様ありがとう太陽の恵みをありがとうと言わざるを得ないばかりの破壊力です。
正直、周りの目線を考えずがばっと思いきり抱き締めようと思いましたが右のふとももをつねりその痛みでなんとか持ち堪えました。ちぇっという舌打ちが聞こえたのは気のせいでしょう。
しかし、所詮はまだまだおこちゃま体型。私のハートを射抜くにはもうひと味足りません☆NE!

「ふんっ」

お…ご…、あ……
みぞ、みぞおちが…!
一体どこから私のみぞおちを…!?

「そ、それはともかく、なんなのさ神奈子! ハグだけならともかく、…その、あんなことまで!」

「…ん? どうした諏訪子、私が何かしたのか?」

「なんかしたも何も…、そ、そんなことまで私に言わせる気!? 神奈子、あなたなんて変態なの!」

「? うーん。悪い、諏訪子。本気でわからないから、きちんと言って貰えるかい?」

「な、何よこの確信犯! …やったんでしょ! 早苗が変な気分なのをいいことに、その、…お互いのナニをチョメチョメと! 女の子同士なのに!!!」

何をどう勘違いされたのやら諏訪子様がとち狂ったことを仰られます。私はみぞおちの痛みもあって半ば聞き流していましたが、神奈子様の様子をうかがうとそれはもう耳の奥まで真っ赤にされてカタカタと左右に小刻みに動いています。
まるで回路がショートした機械みたいで、顔からプスプスと煙を出しているかのごとくです! 実際出してる!
…あ、正気に戻ったみたいです。

「…!!!!!!?? ちょ、ちょっと待て諏訪子!!! けけけけけけ決して私と早苗はそんなやましい事は断じていやまあそりゃあ恐いけどちょっとは興味はあったし残念といえばそうなるけどやっていない! やっていないぞ!」

「本音出てるよ神奈子」

か、神奈子様…!

「おい早苗お前の母ちゃんに学校生活のこと言いつけるぞ」

しまいには泣きますよ

「そ、それとこれは関係ないさ! それに、諏訪子もいきなりなんだ! そんな、…身も蓋も無い言い掛かりをつけてきて!」

「身も蓋もあるよ! そこに転がっているティッシュが動かない証拠じゃない!! それに早苗も早苗よ!! こんな恋愛話だとかになると途端におっくうになって恥ずかしがるようなキング・オブ・初心者にすら手を出してくるなんて…!! そんなにおっぱいがいいのか早苗!
なんだよ、もう! 確かに私は胸がない! 大体の人はそりゃあ大きいおっぱいの方がいいだろうさ!
だけど、それは流石にあんまり、あんまりだよ早苗! そんなに神奈子の胸を揉みしだきたいというのか! 別にちっちゃくても揉めるじゃないか!
小さいから揉めないだとか対象外っていうのは全国の女性への冒篤だよ!? …ああ、そうなんだ! 早苗はご先祖なんかどうでもいいんだ! ふーんだ! 早苗なんか大っ嫌いだ!」

「おいおい、一気に話しはじめたと思ったら何を…。…。揉みしだきたい?」

「そうですよ、諏訪子様。そんな、諏訪子様がどうでもいいだなんてあるわけないじゃ無いで、…!!!!!!!!!?????」

ば、ばきゃな! 私が必死に隠し通そうとしていた第二の私(別名萌えを司るトレジャーハンター)がこんないとも簡単にさらけだされようとしているだと!!!!!!!!!???? 
い、いかん! いかんぞ私! それだけは阻止をしなければ!

「…、へ~ぇ。早苗。まだ、そういう所は知られてなかったんだ。へーぇ」

や、やばい! 諏訪子様に足元みられた! 
これは非常にまずい、由々しき事態だ! 真っ先に回避しなければならん!!

「ほ、ほ、ほんとお願いします! それだけは言わないでおくれはりません! 後生ですから! 後生ですからああああ!!」

「…ふーん。じゃあ、私の言うこと聞いてくれるっていうんだったら考えなくもないよ」

「それはちょっと足元みすぎですね!」

「あのさー神奈子、さっきから早苗がさー」

「うわあああああああ私がすみませんでした謝りますからー!!」

「実はさー」

うわあああああああもう駄目だあああああああ

「ご飯の上にちくわぶ乗っけて転がしてたときに神奈子の胸を揉みしだきたいって考えてたんだよ!!」

ああ、終わった…、これで何もかも終わった…
これまでの生活よく頑張ったよ早苗、これからは慰安旅行とでもしゃれこもうじゃないか…。もう疲れた、目の前が真っ白に…。

「…え、さ、早苗が?」

「うん。いっつもこんなこと考えてるよ」

「…、…そうなのか………」

もういやだもういやだうわああああああああああ時間が1時間くらい戻ればいいのに

「…早苗だったら、いいよ」

これからどうやって生活しよう…、ああ、最近は南国に移住するのがブームなんだよなあ。…私も、南国の人達と触れ合って陽気な人になろう! そして、またいつかこの場所へ

「「へっ?」」

今、神奈子様がなんと仰られたかよくわからないというか、いや、ちゃんと聞いていたけどどういう意味合いで言ったのかイマイチ理解出来ないというか、ま、まさかその、…へっ!?

「別にそんな、早苗が触りたいっていうんだったら別に触られてもいいし! 
、…さっきは途中で諏訪子が来ちゃったから中断したけど、続き。…ね?」

「なっ、…~~!!!!!!??? かっ、か、神奈子ぉ~~~~~!!!
いいいいいいいいきなり何を言い出すのさ!! そんな貞操概念を甘くみちゃあきまへん! それに仮にも今は食事中だよ!? 食事中にまでそんなこと持ち出しちゃいけません、だめ、だめ~~~!」

「そんなこといわれても」

「「ねー」」

「な、何よあんたたちこんな時にだけ団結して! それよりそんなことするにも、私がここに入るんだよ!? 人がみている所でそういうことをするのは思慮深くないと思うよ!? 駄目ったら駄目! さっさとご飯食べなさーい!」

諏訪子様をからかうのが面白くすっかり夢中になり忘れていましたが、そうでした…!
私たちの行為、勘違いされた上に今まさにそういうなんというか乙女同士の戯れというかこういったことに関して、第三者に、みられてる…!
は、は、は、は、恥ずかしいよぉ~~~!

「…おいおい。何を今更、頬を赤らめてるんだい早苗」

神奈子様がそう私の耳元でささやき、諏訪子様の目をにらめ付けるように凝視されました。
諏訪子様は先程のおどおどしていた神奈子様とのギャップで戸惑っているみたいです。かくいう私も、頼りになる雰囲気がする神奈子様に対して驚きを隠せません。
な、なんでしょう神奈子様! だだだ大根の味噌汁でしたら朝飯前にいただきますよ!?

「みせつけてやろうよ」

そう神奈子様が発言すると、ずいっと、私の顔が神奈子様の方へ寄せられ、…おでこに生温い、でも心地好い感触がし、しま、しししししいいいい!!!?

「キキキキキキキキキキス!?」

「そんな、驚かないでくれよ早苗。諏訪子が妙なタイミングでこなければ、さっきの時に既にしていたじゃないか。…今更嫌だとは言わせないよ。スイッチが、入っちゃった。…ほら、早苗。私の胸、揉みたいのだろう? 据え膳食わぬは恥とも言うしね。…おいで」

「~~~~~~!!!!!!!!?????………」

パタリ、と諏訪子様が畳の上に倒れこんでしまいました。顔の周りには目にみえるくらい湯気がたっています。
正直に言うと、私もあんな風に倒れることができたらどんなに楽なんだろうなあと少しだけ諏訪子様を羨ましく思います。
事実、本当あと少しでノックアウトされてしまうところでしたが、理性がそれを許さないのか気絶までにはいたりませんでした。
なんなんですか私の理性! 主人にこんな修羅場を任せるなんて、どんな神経してるんですか! あ、理性だから神経か。ちくしょう!
…あれですね。これが巷で噂の受けが攻めになるってやつですね! ただ、想定外でした。噂で聞いた威力以上に、破壊力がダンチです!

「どうした、早苗…? ほら、」

どうでもいいことを考え込んでいて動かない私にしびれを切らしたのか、神奈子様が私の右手を掴んできて、神奈子様自身の胸に引き寄せてきました。ポフリ、とエプロン越しに胸の感触がします。…どっと、恥ずかしさが喉元まで押し寄せてきました。
そりゃあ、さっきは顔をうずめてグリグリしていたけれど、そのときはここまでのことは考えてもなかったし! 仕方ないじゃあないですか! 戸惑うのも当然ってもんです!
しかし、それは置いといて! …他人の胸を意識して触るのって、初めてだなあと思います。
感慨ぶかいというか、なんだかいけないことをしてるようで恐くなってきました。いても立ってもいられなくなったので、私は神奈子様に抱きつきました。

「…いいよ、いつでも」

神奈子様は抱きついてきた私の背中に手を回し、微笑みつつ背中を擦ってくれながら私に声をかけて下さいました。
どストライクです。私の中の審判は二塁側の塁審までトリプルプレー成立のモーションをしています!
…今の神奈子様の言葉を聞いて、なんだか安心しました。心のどこかにもやもやとしてあった恐怖が、飛んでいったように思えます。
神奈子様、私も女です! …私は、置かれていた右手の他に膝についていた左手をそれぞれ神奈子様の胸の上におき、少しずつ指の力を加えて





「どぉーーーーーーーーもぉーーーーーーー!!!!!! 清く正しい射命丸でございます! いやあ、早苗さんと神奈子さんの抜け駆けということですっ飛んで来ましたよ!
それにしても、どうしてまたそんな、早苗さん! まさかウブで純真で奥手と噂の神奈子殿とそんな関係になるなんて、羨ましいくらいですよ! 私達は同士として永遠の契りを来んだ仲ではなかったのですか!? 報告もしてくれないでこの、この! 罰として是非とも取材させていただきますよ! あ、ちくわぶ貰いますね」

「射命丸くさい」

「くさくない」

私がいざ神奈子様の胸を揉まんとしたときに背後から勢いが強い風が舞い込んだと思いきや、ふと気が付くと目の前には両手にカメラを持ち全身のけぞったような妙なポーズをとっている射命丸さんが浮いていました。
自分の右の拳がミシミシと音を立てていることに気が付きます。私の心の底からとめどなく溢れるこの感情はなんですかね! 感激の感情なんですかね!
さらにあの射命丸さんが減速をせず全力で居間に入ってきたものですから、ちゃぶ台やら掛け軸やらが全部吹っ飛んじゃいやがりましたよ! 
なんなの、もう! 当の射命丸さんは気にもとめず平然と床に落ちてるちくわぶ食ってるし!
唯一の救いはちくわぶのお汁が畳にかからず縁側の渡り廊下にバシャリとかかったことですかね。畳に染み込むと掃除と臭い取りが困難になり洒落にならないですからね! 
…はああでも結局掃除することに変わりはないしまじめんどくさい、絶対掃除途中ちくわぶ臭くなりますよこれ…。

「クンカクンカ。なんかくせーぞ! ほら、早苗もくさいって言ってる」

「新手のいじめですかそれ」

ちなみに只今絶賛子供も黙る陰湿ないじめをされているのは諏訪子様です。いつからこんな子に育っちゃったのでしょう、早苗恐いです。
ちなみに、何故射命丸さんがくさいと言われるのかは謎です。いつの間にかくさいと言われるようになっていたらしいですし、見かけると必ずどっかしらからくさいと言われているのを見かけます。七不思議ですね!

「そ、そんな無視しないでください早苗さん! 軽蔑するような目でみないで! さきほども行ったとおり私達永遠の契りを交した仲じゃ無いですか、同士早苗! 忘れたとはいわせませんよ!」

「ふんだ! 人の恋路を邪魔する人なんて知り合いじゃあありません! …同士?」

「そうです! 同士です! 萌えを追求するトレジャーハンターです!」

「…うぬが本当に契りを交したと言うならこの謎掛けに答えられるはずだ」

「…! よかろう、どんな問掛けでも答えてみせてくれるわ!!」

「おっぱいと掛けて」

「父ととく」

「その心は?」

「大きくてあたたかい」

「うおおおおおおおおおお同士射命丸よおおおおおおおお!」

「やっと思い出したか早苗、早苗ええええええええええええ!」

私達はそう叫びあいながらお互いを抱き締めあいます。確かに射命丸さんからメンソくささというかスッとする臭いがします、消臭剤ですかね。
射命丸さん、気にしているんだ…。でも、逆にそれがくさいって言われる原因になったりして。余分なことを考えつつ、誓いを交しあった同士との再会の余韻にひたります。

「あの、暑苦しいんで他でやってもらえますか? あ、でも早苗は行っちゃダメ。私のそばに居て」

遠回しな告白本当にありがとうございました。でも私、心残りながらこれからその辺の部屋に寝転がってレム睡眠するという重大な任務があるものなんで非常に残念ですが一緒にいるというのは遠慮しておきますよはいすいまへん!

「諏訪子スペシャル!」

うわああああああ関節が! 逃げようとするたびに! 締まる!
ちっちゃい体のどこにそんな力があああああれれれ!?
…冷静に自分の体の関節を見回したら、単純に蛇で関節を締め付けられてるでした。
蛙の神なのになんで蛇を操れるんですか!

ちなみに蛇ということで神奈子様のことを思い出し、チラと様子をうかがってみました。案の定、目を点にさせたまま正座で座られています。しばらく動かないでしょうねえ。
かくいう私も、正直同士とか契りとかどうでもいいから布団を被って奥に引きこもりたいです。

「…ハッ、こ、こんなことはどうでもいいのです同士早苗! 早苗、私は嘆かわしい! 何故早苗は同士である私に相談をしてくれなかったのか! 私は、そんなに頼り無い存在なのか!?」

「おお、どうした同士射命丸! 私は、あなたを悲しませるようなことをしたのか?」

「ああ、そうさ! 私はとあるビッグニュースを伝えに全速力で神社の居間に飛んでいったが、これはどういうことだ! あのプロファイル特B級である神奈子殿の巨乳に迫っているなど、何故! 私に言ってくれなかった! 
一人で栄光を手にしようと考えてたのか!? そんな、無謀な! 勇気と蛮勇は違うのだぞ! 一歩でも道を踏み違えてたらどうしていたつもりなんだ!?
…少しくらい、私を頼って貰ってもいいじゃないか」

「くさいさんあなた何言ってるの」

「…! …すまなかった、同士よ。だがしかし、我々萌えを追求するトレジャーハンターには、一人で立ち向かわないといけない時もある…。私はあのときが行かなければならない時だったと思う。気遣いをありがとう、同士よ」

「えええええどうしちゃったの早苗!? なんでこんなブン屋のノリに乗ってるのさ! ちょっと、ねえ!」

「いや、私もどうかしてた。何せ特B級のタブーだからな。興奮してしまい、すまなかった。それに、これ以上は聞くまい。結果は、火を見るより明らかだからな」

「同士よ…!」

「ちょ、ちょっと待ってよ! 神奈子と早苗は付き合ってません! 私が断固認めません! だ、ダメったらダメ! 決める権利は早苗にあるの!」

「…ビッグニュースがある。しかし、私はそれをあなたに伝えたくない」

「…聞こう、どんな内容か」

「紅魔館に使えるメイド、わかるな」

「…! 咲夜嬢、か」

「ああ。…数日前、我等が同士もこ(もこたんともいいます)が紅魔館に潜入した。そして、咲夜嬢についてのレポートを私にくれたよ。正直、私はこのレポートに目を通したことを後悔した。当の同士もこ(もこたんともいいます)も発狂寸前で私にこれを託してくれた後、パタリと倒れこんでしまった。今は永遠亭で集中治療をしている」

「…それでも、聞こう」

「…咲夜嬢のPAD疑惑は嘘らしい。あの胸の張りは全部永久にそびえ立つ愛すべき双丘、だそうだ」

「…!!!!!!!!???? そ、嘘だ! そんなはずが、ばかな! そんなことが、実在してはならないはずだ!
咲夜嬢といえば胸にコンプレックスを抱いているいたいけな少女、それ故に詰め物を使っているというのはもはや常識、自然の一つのはずだ! おそらく、同士もこは勘違い、もしくは操られていたんだ! 本当にそんなことがあったのなら、幻想郷は…!」

「…落ち着くんだ、同士よ。私も、真っ先にそのことを考えた。しかし、レポートに印されてあったもこ(もこたんもいいます)の独特のサイン、筆圧、数字の8が潰れて6に見える文字。…何より、このレポートには熱意が感じられた。この熱意は、我々萌えを追求するトレジャーハンターにしかできない芸当だろうと自負している。操られていた可能性は、低い」

「…そんな、ことが!」

「これは、事実なんだ。受け入れよう、同士よ。…すぐにでも天変地異が起こるかも知れないがな」

「…確かめに行く。紅魔館へ、真実を掴みに」


「…! いいのか? 今の早苗には、守らなければならない居場所がある」

「なに、誰かが犠牲にならなくちゃならないだろう。ハンターになったときから、覚悟してるさ」

「…それでこそ、早苗だ。申し訳ないが、私はその覚悟は足りなかったよ。…もこ(もこたんともいいます)の見舞いにでも行ってくる。私の分まで、よろしく頼む」

「ああ、もちろん」

私は、寝巻きの巫女服(ややスウェット気味)から普段着の巫女服(コットン100%)に着替えるために別室へ向かいます。
途中で足元に転がっていたちくわぶを踏んで後ろに転んでしまい、更に背中全体でちくわぶを踏んでしまうというアクシデントがありましたがそんなことは咲夜さんの疑惑の前には屁でもありません。
泣いてなんか無いですよ、ただちくわぶを粗末にした罪悪感とぬちゃりとした感触から掃除がまた面倒になるなあと考えて汗かいてるだけです。本当です。

「早苗、これ夜まで放置してるから」

前がぼやけて見えなくなったのも気のせいです。きっと、雨が降ってきたんです。だから見えづらくなっているだけなんです。
ともかく、別室で着替え終わった私は真っ先に玄関へ向かい、外へでます。居間には寄りませんでした。…行くのが、辛くなるから。
もし、私がまたこの地を踏むことが叶うなら! 今度こそ、神奈子様に私の想いを…!






「…いっちゃっいましたね、早苗さん」

「いっちゃったね、早苗」

「…」

「…懺悔の言葉、ある?」

「いやいやいやそんな滅相も本当申し訳ございませんでしたいや正直何に謝っているのかよくわからないけどもう浮きながら土下座しますから! ほら、パンツ見え放題ですよ!?」

「くさい人のパンツなんてみたくない」

「くさくない! …おほん! 神奈子殿。落ち着きましたか」

「…し、しゃ、射命丸~~~~~~!!!!」

「おおおうわわわ、そんな急に正座の状態からこっちに飛んで寄ってこないでくださいよ、心臓に悪いです!」

「お前は! なんで! あんなに間の悪いときに! …くぅぅ~~~! は、恥ずかしい…!」

「まあまあ、たまたまタイミングがあわなかっただけですよ。…しかし、意外ですねぇ~。早苗さんと神奈子殿の関係は記者として気になるのでね。質問させて貰いますよ! もちろん、断ったら、ね。言いふらしますよ」

「…うう、弱みを握ったからっていい気になりやがって」

「あーあーなんでだろう今猛烈に幻想郷中を飛び回りたい気分だなーあーどうしよっかなあー」

「はい、答えさせていただきます…」

「なんで私こんなに空気なんだろう」

「んふふ、素直でよろしいです。では、始めに! 神奈子殿が早苗さんを気にするようになったのはいつ頃ですか?」

「…そんなことを言ったら、早苗が神社にやってきた時からさ。ただ、どちらかといえば親の様な心情だったかな。もちろん、こんな関係にもなってみたいとは片隅では思っていたけど」

「なるほど。今の心情とさほど変わらないということですね。…次の質問、よろしいですか?」

「まあ。そうなるね、…な、なんだ? いきなりかしこまって…。別にいいが、そんな不敵な笑みを浮かべないでくれ」

「いやいや、これは失敬。…先程のキス、口先が当たった感触はどうでしたか?」

「…な! なあ~~~!!!!!!?? な、なんてことを言い出すんだブン屋! お前が見掛けた場面は早苗が胸を触っている場面だろう!?」

「場面『は』?」

「…あっ、! ブ、ブン屋には関係無いの! ともかくキスはしてない! その質問には答えられない!」

「いやいや、流石皆のオンバシラ神奈子殿。いじりがいがありますねえ。…本当に、してないんですか?」

「な、何を言い掛かりを!」

「言い掛かりでは無いですよ。私、これでも記者の端くれなんでね。目だけはいいんですよ。
…早苗さんと神奈子殿の唇が触れる寸前、諏訪子殿が起き上がりましたよね。その時、お互いに驚いた衝動で口先がちょこっと触れませんでしたか? 残念ながら早苗さんは気が付いてなかった様ですけど。…神奈子殿がさっきまでぼおっとしていた理由、これですよね?」

「なっ、…ブ、ブン屋ぁ~~~~! お前、ずっと見ていたなあ~~~!」

「あっはっは! その反応は、したことに対して査定として受け取らせていただきますよ! じゃあ、時間がないもんでね、私は次の取材先に行かせてもらいます! インタビューにご協力いただきましてありがとうございました!」

「まぁてええええブン屋ああああああああ! 今日という今日は、とっちめて反省させてやるからなあ~~~~~!!!」









「…迷った」

これは迷った。まこうごとなき迷った。…非常に、迷った。
秋と冬が混じっている季節の風は、普段外に出ず引き篭っている私の体力を蝕むのに十分な寒さを持っていました。
目の前には湖が広がっていて、その先には恐らく紅魔館だと思われる建物がポツンとあるのですが、いかんせんその建物に辿りつけません。
色々なルートからたどり着こうと試みました! 湖沿いを歩いて向かったらいつのまにか最初にいた場所に戻っていて、湖をまたいで行こうとしたら風が寒いのとそこそこの距離の多さ、そして渡りきった先に見えるのも館ではなく一面に広がる草原。
涙が出そうになる気持ちを堪えて何回か往復しましたがまるでたどり着けなく断念し、ひょっとしたら逃げ続けることによってテレポートするのではないか! とまで考えましたが、そもそもこの幻想郷にモンスターなんていませんでした。ああ、無念! 
まじ紅魔館ってなんか特殊な結界でも貼られてるんじゃねえの!? ちくしょう! なんだよ!!
…様々な方法を試みましたが無駄で、正直泣きそうです。手がしもやけて、足が棒になってます。むしろ棒が足です。いや、棒が棒か?
そういえば昔現代の世界にいたころに凄い人気のあるロールプレイングゲームの7作目をプレイしたのですが、最初の謎ときに迷路のような物があって、いつまでもそれが攻略できずにもういいやって投げちゃって学校で話題に乗れなくてうわあああ誰だそんな私の記憶を掘り返すやつは!
…普段外でない分疲れやすいのもあるのでしょうが、疲れすぎてテンションがおかしくなっているのでしょう。
先程からハンバーガー店でポテトのみを100個頼んだらどうなるんだろうだとか、諏訪子様はどうやって子孫を残したのだろうかといったしごくどうでもいいことばかり考えています。やっぱ卵生むのかな? 諏訪子様。
そんなに疲れるくらい歩いてるなら一度家帰って休憩して、道のりを聞いてから向かえばいいじゃないか? 
フン、確かにそういった考えも持ちました。しかし、そんなのはおこちゃまの考えなのですよ! 
真のトレジャーハンターなるもの一度来た道は意図的に引き返してはならないのです!!!
け、決してそんな勢い余って出発したあげく来た道のりすら忘れちゃったなんてそーんな子供みたいなことはありませんよ! 本当です!
このビー玉の様に透き通った目を信じて!

「…虚しい」

頭の中ではやけにテンションの高い考えが飛び交っていますが、所詮頭の中。疲れきっている体にまでついて来ません。
分かる人いませんかね? こういった疲れきった時のテンション。
いわゆる夜のテンション? まあ、私に夜まで一緒に夜更かしなんて経験は数えるほども無いですけどね!
あははははは!!

「…ひもじい」

ああ、早く家に帰りたい。湖の近くだから風がモロに体に当たって寒い。何より目線が怖い。
私、家に帰ったらあったかい布団にくるまってお昼寝するんだ…。だんだんと空が雲って来てますけど。
あ、だから寒くなって来たのか! 早苗納得ちん!
で、また変な発想をした自分に自己嫌悪をしてしまう悪循環に陥ってしまうわけです。何が早苗納得ちんだ、アホか…。
先ほどから体の熱を逃さないためと体を楽にするため体育座りの体制をとっているのですが、一層寒く感じたので足に回している腕にギュッと力を入れました。ああ、ぬくぬく。このままなら12時間はゆうに眠れそうです。
昔からだと思います。私、なんでもかんでも物や人に対してギュッと抱き締めるのが大好きなんです。
小さいころに親に連れていってくれた大きなテーマパークのマスコット着ぐるみにもギュッっとしましたし、お土産として買ってくれたぬいぐるみにもそれはそれは首が解れてしまうまでギュッっと抱き締めていました。ぬいぐるみの首が完全に解れてしまいポロリと取れた時は泣き叫んじゃいましたけどね。
でも、お母さんが泣き叫ぶ私をあやしながらすぐに裁縫道具を持ってきて、ぬいぐるみを元通りに縫ってくれたのは今でも印象に残っています。
あの時はもう戻ると思っていなかったので本当に嬉しかったし、お母さんの指は何でも元に戻せるなんて勘違いもしてしまいました。
…お母さんへの尊敬も、この時くらいから生まれたんだと思います。
まあ、あまり今の状況には関係無いですけどね! なんで急にこんなこと考え出すんだろう…。
ああ、お家に帰りたい…。

「おねーちゃんさっきからなんでここにいるの?」

どこからか幼い声が聞こえます。とうとう幻聴が聞こえてしまうくらいに疲労困憊してしまったのですね…。
ごめんなさい、神奈子様、諏訪子様。このまま寒さに耐えきれず帰らぬ人になってしまうことをどうかお許しください…! ラーメン!

「お姉ちゃんいきなり体育座りの格好から正座になって祈り始めたんだけどどうしよう」

「しっ! チルノちゃん、見ちゃいけません!」

「ええー、でも、なんだかお姉ちゃんのこと見てると胸の奥がキュッってして、何か助けてあげないといけないんじゃ無いかって」

「あああチルノちゃんあなたったら知らない間にそんな感情が芽生えるくらいに成長しちゃって! 私感激しちゃったわ! だから、ね! 帰ろう! お祝いにアップルパイを焼いてあげる! チルノちゃんは甘いものが大好きだから、特別にバターもいつもより多く入れて作ってあげるから! お願い、ねえ、ねえ!
…ちくしょう! 何だってんだよ、もう! 後少しで冬が来ちゃうから今のうちに私とチルノちゃんの親睦をそれはもう周りが羨むくらいにうふ、うふふ、むふふふふふふ…! …ハッ! と、とにかく深めようと躍起になっている所に、なんなんだよ! なんでこうチルノちゃんの興味を引くような人がピンポイントでいるんだよ! 頼む、ほんっとお願いだから邪魔をしないでくれ! 何? 『道端に捨てられた子犬が可哀想だから飼ってもいい?』 いらない! そんなシチュエーション、いらない!!
ああ、もう! 私は安定を求めているのよ! 安定こそ本当の爆発! 安定して何回も勝てるから、結果を残せるからこそそれが最終的に大記録となるの! 確かに一回のバクチに賭けてみるのもいいと思うわ、楽ですもの! だけどね、虫のいい話なんて世の中には存在しないのよ! 一回だけでも当たればいい? 大甘! あるわけがないでしょう!
それに、仮に一回! ギネス級の大記録を打ち出したとしても、それに何の意味があるの?
そんなのポッと出の記録じゃない! 誰でも打ち出せる記録! 例え今は凄くても、すぐに記録が塗り替えられるのがオチよ! だから、一発は所詮一発! 真の爆発は、安定にありいいいい!!」

「大ちゃんこわい」

「…あ、ハッ! わ、私いつの間にか何を言ってたんだろうね! ごめんね、チルノちゃん! だからもう行こう早くほらダッシュダッシュ!!」

「な、なんで大ちゃんそんなにあたいを急かすのさ! 別にいつもみたいにのんびりでいいじゃん! どうかしたの、もう!」

「…今の内に遊んでおかないと、冬の間はレティさんに占領されちゃうんです!」

「…? 何が?」

「ああ、もう! 何でも無いです! さあ、行きましょう! あーあー蛙の氷付けはたーのしーなーあっ!」

「蛙の氷付けだとおおおおおおおお!!!」

「なんでその単語で起きるのよおおおおおおうわああああああ私の馬鹿あああああああ」

「あ、お姉ちゃん起きた! 安心だね、大ちゃん!」

「う、うん」

「じゃあ私お姉ちゃんの所へ行ってくるね!」

「え、あ、え? ち、ちょっと待って」

「お姉ちゃん、おはよう! さっきまで何だか8秒くらい時間を止められそうな体制をしてたけど、どうしたの?」

瞬間、時が氷ついた。氷精だけに。あとなんかおっさんの力?
…いや、まて! 落ち着け! これは孔明の罠だ、早苗! 冷静になるんだ…!
そうさ、生憎私に話かけて来るような物好きな人は片手で数えても半分は余るしましてや女の子が私に話かけてくるなんてまたまたそんなあはははは☆ 早苗驚きを隠せないリン☆
そうさ! これは壮絶なる勘違いなんだ! きっと私が考えていた妄想と現実がごっちゃになって判別出来ないとか、そんなんです! 疲れきっているし尚更です!
そうじゃないと私全身からそれはもうサウナ我慢大会の人もびっくりするくらい性なる乙女の純潔なる真水を噴出する製造機に早変わりしちゃいますよ! いいんですか、もう!
後悔することになりますよ! 私が! 素直に汗って言えばよかったって今も後悔してますし!

「お姉ちゃん、何だか顔が険しいけど大丈夫? なんか食った?」

ああああばばばばばいやいやちょっと私そのおおお女の子と会話すると大分緊張するというか体全体に汗かいてどもっちゃっうし女の子と普通に話せるやつなんか都市伝説! あっちゃいけないんです、もう!

「お姉ちゃんだって女の子じゃないの?」

あっ、そっか! 私冷静に考えると女の子でしたね! 別に緊張する必要ないですね!
なっはっはっはっはっは!

「チルノちゃんが遠くにチルノちゃんが遠くにチルノちゃんが遠くにいや冷静に考えたらただ関わり持つだけだし何で私こんなにああそうか冬が近いから一分一秒が惜しいのかああチルノちゃんが遠くにチルノちゃんが遠くにムッキイイイイイイイイ!」

なんだか遠くから何かを引き起こす呪文にも聞こえなくもない怪しげな念仏が聞こえてきますが、面倒臭いのでスルーすることにします。
臭いものには蓋をする!

「あんたなんてノミと相撲してコエダメに落ちちゃえばいいのに」

あの緑色の髪の子まじ腹黒い

「全くあんたさえいなけりゃ今頃はチルノちゃんと一緒にベットの上であんなことやこんな、いや、らめえチルノちゃんこんなところで!
あ、でも、強引にされるのもいい、これって、ひょっとして恋…!?」

「あなたは一体何を言っているのですか」

「ロマン」

「そっか」

ロマンなら仕方がないですね!

「…オホン! ちょっと、あたいを除け者にして話を進めないでよね! ともかく、さっきお姉ちゃんは体全体に土が付くくらいに頭を抱えてたよね! どうしたの、お姉ちゃん? あたいたちで出来ることがあるなら、力になるよ!」

「あああいつの間にこんな立派に意思を持つようになっちゃってチルノちゃん私何だか目頭が熱いですそれが何ですかあの緑色のいかにも2Pキャラみたいな地味ーな雰囲気纏ってる人がチルノちゃんを独り占めしやがって本当にチルノちゃんを幸せに出来るのは私なんですー部外者は引っ込んでろって感じなんですーもう嫉妬ましいあああああム」

「お主は次に『ムキイイイイイイイイ!』と叫ぶ」

「ムキイイイイイイイイ! …ハッ!」

「漫才組みなよ二人で」

「…オホン! ありがとね、妖精さん。私に気遣ってくれて。でも、なんで私に気遣ってくれるの?」

「なんで? そんなの当たり前じゃん! 山田が『サイキョウとは相手を尊重し思いやれる人物』だっていってた! あたいはサイキョウだから、進んでやってるんだ!」

「山田…? ああ、閻魔様のことですね。…なるほど。妖精さんは、偉いんだね」

「…? 偉い? お姉ちゃんたちは、相手を尊重したりしないの?」

「ん、どういうことかな」

「だって、あたいがこの話で偉いって言われてるってことは、皆が出来ないから偉いって言ってるんだよね? あたいはこの行為について当たり前だって思ってるから、別にこの事に関しては偉いとは思わないけど。
まあ、あたいは生まれながらの天才だから、例えどんなことをしても偉いって言われて当然だけどね! えっへん!」

しごく当然だといった面持ちで私に意見を言ったかと思うと、すぐに顔を上に上げ胸を張る動作をしたので、私はそれをおかしく思いクスリと笑ってしまいました。妖精さんはそれを不満に思ったのか、少し膨れ面になりました。

「…ふふ。笑ってごめんね、妖精さん。そうね。妖精さんには、相手を思いやるのは当然のことかも知れないね。でも、これが出来ない人や妖怪も沢山いる。妖精の中じゃあ、こういった考えをしっかりと持てるのはあなたくらいじゃないかな」

「…あたい、あなたとか妖精さんって名前じゃないもん。ちゃんと、名前くらいあるもん」

「へえ。私に、教えて欲しいな」

「チルノ。サイキョウなあたいにぴったりの名前よ! お姉ちゃんは?」

「私は、早苗。東風谷早苗」

「…早苗。覚えた! 早苗! 今日から私の軍団に入れてあげてもいいわよ! 蛍のやつとか歌がうまいやつとかがいて、楽しいんだから!」

「…ごめんね。今日は、行くところがあるから」

「…そ、そっか。そういえばさっき、悩んでたもんね。だから、私は早苗に話しかけたんだった。そうだよね…」

「ああ、そんな、しょげないで! …また今度ここへ来るよ。その時に、軍団に入れて欲しいな」

「…! や、約束だよ! 嘘ついたらハリセンボン飲むんだよ! いいんだね!」

「ふふ、大丈夫よ。ちゃんと来るから」

「絶対だよ! …そうだった。なんで、早苗はさっきまで頭に土が付くくらい悩んでたの?」

「うーん、実はね、紅魔館ってところに任務、いや、行きたいんだけど…」

「紅魔館? そんなの直ぐ近くじゃない! ついてきて、早苗! 私が連れてってあげる!」





「じゃあ、行くよ早苗! 紅魔館なんてひとっ飛びでいけるんだから!」

そうチルノちゃんが言うと湖の上を飛んで行きました。…ああ、駄目ですよチルノちゃん! その方法は私が試しましたが、辿りつけませんでしたよ!
そう叫ぼうとしたものの、大妖精ちゃん(ずっとふてくされていたので、チルノちゃんに名前を教えて貰いました。今でも首を横にそらせて飛んでいます。昔の時代の反抗方法でしょうか)とチルノちゃんがグングン先に行き、『早く早く!』とはやしたてるものなので仕方なくついて行くことにしました。
ああ、飛ぶの面倒臭い。息をするのも面倒臭い! …このフレーズなんかの雑誌にあったなあ、そういったくだらないことで思考を巡らせるのも馬鹿馬鹿しいので、何も考えずついていくことにしました。
たどり着けないだろうなあ、と片隅に思いつつチルノちゃんたちの後をついていくとなんとものの5分で門前についてしまいました。
チルノちゃんはエッヘンと胸を張っています。
…ななななななななんで!!!?? 私さっき2時間くらいぶっとおしで飛んでいても辿りつけなかったのに! WHY!?

「え、ちょっと、私さっきずっと湖の上飛んでいたけど、辿りつけなかったよ!? なんで!?」

「えー、そんなことってあるの?」

「まあまあ、チルノちゃん。…えーと、先程周りを気にしてキョロキョロしながら湖の上を渡っていたのって、早苗さんですよね? …言いにくいのですが、いくら湖の上を横に渡っても、紅魔館にはたどり着けませんよ」

よ…、こ…?

「最初はまっすぐなんですが、直ぐに軌道が変なところにいって、妙なところに着いちゃってたじゃ無いですか。最後のほうなんかそのまんま横と横の往復でしたし。そりゃあ、2時間飛んでいてもたどり着けませんよ」

そ、そ、そ、そ、そんなあ~~~~~!
じゃあ何さ! 私は2時間ずっと丸々無駄にしてたってわけですか、なんなんですか!?

「ま、まあまあ! 早苗さん! そんな凄い形相で詰め寄られてこられても言葉にされないと分かんないですよ!」

「…う~~~~! あ、そ、そうだ! 私、さっき湖沿いを歩いてたんだけど、気が付いたらさっき大妖精ちゃんたちと会ったところに戻ってたんだ! これっておかしくない!? ねえ、ねえ! 結界とか貼られてるよね!?」

「…え~~~。あれも、早苗さんだったのですか」

「あれ、も?」

「…いや、妖精の間で『紅魔館に行くとぶつくさ言っている人が紅魔館の前を通りすぎて湖の周りを一周、辺りをキョロキョロみまわたして戻ってるー! と大声だして頭を抱え悶絶している怪しい人がいる』と、その。噂になっていて…」

「え、…? ま、まさかそんな」

「…はい。そのまさかです。…早苗さんは、一回紅魔館前まで来ています」

…ぐぬおおおおお! そんな、ばきゃなああああああああああああああああ!
ぐ、ぐわああああああああああああ!

「ど、どうしたんですか早苗さん! いきなり頭を抱えてブリッジの体制をとったかと思えばそのままうつ伏せの体制になって額を地面にグリグリして! はたからみると変質者と言われてもおかしくないくらい怪しいですよ!」

「大ちゃんなんだか今日はよく喋るね」

「あ、そ、そう? えへへ。なんだかいじりがいのある人を見付けてね」

ぬわああああああなんでこんなことにいいいいいいいいいひいいいいあれれれれ大妖精ちゃん機嫌直ってないですか?

「そういえば大妖精ちゃん、私に普通に接してるけど機嫌直ったの?」

「あ、いや、はい。先程はすみませんでした。湖の上を飛んでいる途中に、チルノちゃんから『大ちゃん早苗に対してなんだかツンケンしてるけど、そんなのメッだよ! 大ちゃんだって早苗にそんなことされたら嫌でしょ!』って言われちゃって。反省します。
早苗さんの名前も、その時に教えて貰いました。」

チルノちゃん…、あんたなんて出来た子なんや!
阿求さんの書いている見聞録には氷精は妖精の中でもトップクラスのお馬鹿と書かれていて私も半ばそれを信用していましたが、今回チルノちゃんと関わって大幅に考えが変わりました。
山に帰ったら阿求さんに一言申してみよう。

「それに、今の季節に紅魔館に行くなんて。…メイド長、ね」

「…!!!? 何故それを、」

「ふふ。目を見ればわかるわ、早苗。懐かしい。昔は私も、あなたみたいに目を輝かせて幻想郷中を駆け回っていたっけ」

「昔は…、ハッ! あ、あなたはまさか、既に引退して陰でひっそりと萌えライフを過ごしているというあの!」

「ストップ。もう、昔のことよ」

「あなたほどのお方が、何故このような所に!」

「…いいこと、早苗。萌えには何百種類もの形があるの。うさ耳萌えや、それこそ腋萌えなんて人もいるわ。そういった価値観を、他人に押し付けることはとても良くないこと。私は幼女を選んで、あなたは胸を選んだ。ただ、それだけのことよ。
…幸運を祈る!」

そう私に告げると颯爽と背中を向け、チルノちゃんと共に湖の上を渡っていきました。
途中、大妖精ちゃんがチルノちゃんの胸に顔を埋めグリグリして怒ったチルノちゃんに湖に突き落とされた様に見えましたが気のせいでしょう。
ありがとう、妖精さん! あなたたちのことは、忘れない!





家を飛び出て早数時間。何がともあれ、ようやく紅魔館につきました。
正直来るまでの道のりで満身創痍です。もうターゲットだとか胸とかどうでもいいんで家帰って風呂入って糞して寝たいです。無理。
…いや、違う! 何をいっているんだ早苗! だからこそではないか!
満身創痍の今こそ! 咲夜嬢の真実を知るチャンスなのではないか…!
そうと決まったらいざ出陣! 私は巫女服の腋に忍ばせておいた変装セットに手を伸ばし、展開します!
体全体につけた葉っぱ、両手と頭につけた木の枝、首から掲げる『私は木です』という標識!
…完璧です!!! これでまず見付かりません!
試しに門前に侵入してみたところ、全然気付かれず、むしろナチュラルに潜入することが出来ました! 
門に寄りかかり昼寝をしていたらしい門番さんも『うおお、今侵入者の気配を感じとったっスが見当たらねえっス! まーた咲夜さんに怒られちまうっス! これは忍びのプロっスね!』と目を瞑りながら大声で叫んでいることだしそれだけこの武装の完成度が高いのでしょう! 我ながら惚れ惚れしちゃいます、早苗! 凄いぞ!
ともかく、館の中まで潜入に成功しました! これまでの成果をこの腋に忍ばせておいたトランシーバーを使って同士たちに報告をします。いやあ、これ、使ってみたかったんですよね!
ちなみに私の腋はちまたから『魔法の腋』やら『四次元腋』と呼ばれていて、好きなときに色んなものを取り出せる優れ物なんです!
まあ、小学校のときにこれをやったらドン引きされましたけどね!
…はあ。なんでだろ。鼻がムズムズして、心がカラカラする。

あー、あー。…おほん。こちら早苗。同士よ、聞こえてるか?
只今紅魔館の潜入に成功した! とうとう念願である咲夜嬢まであと少しでアクションを試みることができる! おお、同士よ! どうか私が生き急ぐことを許してくれ!
我が同士なら分かるはずだ、この胸の高鳴り、満足感! この任務が終わり次第私は土へ還ることになるのだろう…!!
しかし、構わない! 一瞬でも人類最大のシコウを味わえるのなら私は何もかもを犠牲にしようではないか!!!

「あの、玄関前で何やっているんですか?」

!!!!!!!!!!!?????
ま、まさか、この声は、そんなばきゃな!?
ありえない、この私が周りに気付かないくらい妄想に浸るなどという初歩中の初歩的ミスを犯すなんて!
いやしかし私のブソウ、そして周りに溶けこむ変装、擬態技術は完璧だった筈だ! 先程の対門番の人とでも完全勝利だった! 
どこからどうみても完璧、言わば空気のはずなのに、何故!?
い、いや、落ち着け。落ち着くんだ早苗! ひょっとしたら勘違いということも考えられる。
別に私に話しかけられたわけでも無いかも知れないし、逆に話しかけられたのが咲夜嬢だという確証もない。
ここはクールに! 冷静に、相手の呼び掛けに答えるべきだ…!

「さ、さ、さ、さく、さ、咲夜嬢!!!??」

Oh、緊張の余りドストレートに尋ねちまった☆ZE!

「はい、いかにも私の名前は咲夜です。でも、嬢と呼ばれるのはいただけないですね。流石に、はずかしいです」

終わった

「ままままままままままことにすみません本当いやもうすみません私の脱ぎたてのパンツでも何でもあげますから命だけは! 命だけはああああ!!」

「…? どうかされました? まあ、確かにいきなり後ろから話しかけられたら驚きますもんね。…どうでしょう、親睦を深める意味合いも兼ねて、落ち着くまでお茶でもしませんか?」





「殺風景な部屋でごめんなさい。紅茶、滝れてきました。ダージリンのミルクティです、よろしければクッキーもどうぞ」

「あ、はい、どうも…」

先程まで半ば気が気でなかった私は咲夜さんに押されるがままに咲夜さんの部屋に招待されて、何故かこうして午後のアンニュイな時間を共に過ごすことになりました。正直、いつ本性をあらわして皮を剥がれるか、考えただけで汗が止まりません。背中がぐじゅぐじゅして不快に感じるくらい汗をかいています。

咲夜さんの部屋の情景ですが、ぱっと見の感想を言うとすれば『清潔』って感じですかね? いやまあ、女の子だから当然っちゃあ当然なんですけども。
まず目の辺りにするのはドアの真正面にある日当たりのよさそうなカーテンの開かれた大きな窓です。紅魔館は吸血鬼の館ですから、渡り廊下などには窓がめっきりありませんでした。人間には日光が必要だから、咲夜さんの部屋にはでっかい窓があるんだなあと一人納得しました。…咲夜さんって、人間だよね?
真正面にある大きな窓の手前には小さな白い丸テーブルとシックな椅子が二つほど対直線になるように並んでいました。部屋の右奥隅には予備の椅子と思われる椅子が2つほどならんでいます。
部屋の左奥から手前にかけてそれぞれにはクローゼット、チェスト、ベットがあり、チェストの上にはぬいぐるみがたくさん並べられており、ベット間際のところにはうさぎの目覚まし時計がありました。
壁紙は紅魔館にはめずらしい白で彩られたもので、なんだかちょっとしたお嬢様のお部屋のような印象も受けました。
…昔、私が小さかったころにこんな部屋に住みたかったなあなんて幻想を抱いていたことを思い出します。一回、家族で引越しをしたことがあるのですが、その家も前の家も和風造りで嫌々言っていたなんてこともありました。
今? もっちろん部屋には畳とお線香の匂いが充満していて机はちゃぶ台みかん付属といった完全なる和風部屋に住んでますよ!
それに嫌気がさすなんてとんでもない! 日本人の心ですよ、我が部屋は!

ちなみに変装セットは室内の掃除が大変ということで門番さんに預かってもらいました、ありがとうございます。
でも胸ありすぎるから駄目。許さない。
あんな乳見せびらかして何がいいのか! 全く、けしからん! …ともかく!
ああ、拝啓、お母様。早苗は親不孝な娘でした。目の前の幸福を求めすぎたためにこんなことに、よよよよ…!

「…あー、先ほどから顔色が悪いですよ。駄目です、そんな顔をしていたら幸せも逃げちゃいますよ! はい、私が肩もんであげますからリラックス、リラックス!」

「あ、ひゃあ! いきなりくすぐったいですよ!」

「…ふふ、それは失敬。でも、固い顔からほつれたみたいですよ」

「あ、いや、ど、どーも…」

「ほら! まーた固い顔して! 駄目ですよ、折角のお茶会なのにそんな顔をされちゃあ私も悲しくなっちゃいます。…そんな、脅えなくても大丈夫ですよ」

「あ、はい、善処します! …意外、ですね」

「意外、とは?」

「いや、その、噂でよく聞く咲夜さんと言えば完全で瀟洒、調和を乱すものは許さない、歩く殺戮マシーンといったイメージですので、その。声をかけられた瞬間、正直死んだと思いました」

「調和を乱すものは許さないというのはともかく、歩く殺戮マシーンってなんですか! 流石に怒りますよ、もう! …それにしても、もうそんなに私に関する噂はひとり歩きしているんですね。最初のころは、精々侵入者には容赦しないくらいだったのに」

「いややややまさかあの咲夜さんが殺戮マッスィーンなんて私はこれっぽっちも思ってはいないですよそりゃあもう!! …最初は?」

「ええ。私が、妖精メイドちゃん達に協力してもらって、噂を流したの。紅魔館の為にね。私に関する物騒な噂が流れれば、侵入してくるお馬鹿者も減るんじゃあないかって」

「…そんな、辛くないですか? 確かに館のためにはなるかも知れませんが、皆、咲夜さんに対して勘違いしちゃってますよ。私も、現にさっきまでそうでしたし」

「もちろん、辛いです。会う人会う人に脅えられるのは未だに慣れないですね。でも、他の人の名前を使うのもどうかと思うし、だったら私のでって。早苗ちゃんにはわからないかも知れないけど、少しでもお嬢様にとって役に立つことが、私の一番の喜びなの。それに、辛いことばかりでもないわ。確かに噂では大分恐い人物だけど、本当の私を知ってくれている人はきちんといるからね。…早苗ちゃんみたいに」

咲夜さん、あんたなんていい人なんや…! さっきからすすってる紅茶が何だかしょっぱく感じます。
いや、でもまてよ、ひょっとしたらこれも全部咲夜さんサイドの陰謀かも知れない…!
咲夜さんの胸事情を知られまいと今の内にとことん油断させておいて、最後にバーンと証拠隠滅をするに違いない!
うおお、騙されん! 騙されんぞ咲夜嬢!

「…どうしました? 急に昭和時代の球児みたいに目の奥に炎を宿されて、何か燃え上がることでもあるんですか? できれば、話して欲しいです」

「あ、すみません。勝手に妄想してただけです、気遣いありがとうございます」

咲夜○―●早苗 4秒TKO

カンカンカーンと終了を告げるゴングが私の脳内に響きわたります。完敗です。がくり。

「…うふふ。妄想ですか。私も、よくするんですよ」

「…え。今、なんて、いや、確かにきちんと聞こえたんですけども」

「妄想です」

な、な、何ィ! なんだって!?
あの完全で瀟洒で泣く子も体育座りから一気に気を付けのポーズをとるほど恐ろしい咲夜さんが、も、妄想!!?

「あ、今失礼なこと考えましたね。あんまりそういうこと考えていると、私すねちゃいますよ。ふんだ」

ああん、ジト目で睨まないでください、心がキュンと…!!
いや、でも、早苗! お前には神奈子様という待ち人がいるじゃないか! あのときの気持ちは一時的なものだったのか、こんな所で誘惑されてどうする! ぐももも…!

「何をそんな梅干しを一気に3つくらい食べたような表情をしてるんですか。…おほん。お洗濯や洗い物が終わって手が空いた時や、ベッドに横になって寝る時なんかに、よく妄想してます。私がお嬢様と主従の関係ではなく、友達だったり、…あ、こ、恋人の関係とか、…あー! こんな恥ずかしいこと何言わせるんですか早苗ちゃん! 理不尽ですよ! 次は早苗ちゃんが普段どんな妄想してるか言ってくださいよ!」

「なんでこんなに可愛い人が報われないんだろう」

「あ、すみません。ボソボソとしか聞こえませんでした。もう一度言ってもらえますか?」

「あ、いや、そんな対それたことじゃないんで遠慮しておきます。…おほん。私も、大分酷い妄想癖をもってるんですよ。その、私、とある神社で巫女やってまして。そこで奉られてる親のような存在の神様に対して、やっぱり恋人だったらいいなとか、…罪悪感もありますけどね」

「うーん、お互い似たような悩みを持っているんですね。…私が言えた義理じゃないですが、きっと大丈夫ですよ! この幻想郷では、自分が想っている相手も、大抵自分のことを想っているもんなんですよ!」

「そんなものなんですかね」

「そんなものですよ! 今までにいろんなカップルを見て嫉妬してきた私ですからわかります。自信ありますよ!」

そんな胸を張るところでも無いのに腰を前に出して得意気になっている咲夜さんの仕草に、思わずクスリと笑ってしまいました。
それを見て咲夜さんも機嫌をよくしたのか、お互いクスクスと笑いあいます。
…それにしても、まさかミッションのターゲットとして認識している相手と恋の話をするなんて、思いもよりませんでした。今度、機会があればターゲットとしてではなく普通の友人としてまた話してみたいです。
しかし運命とは悲しきかな、今の私は萌えを追求するトレジャーハンター早苗。例えどんなに気持ちが揺らいでも私情を挟むことは許されないのです!
ああ、どうかこんな私を許してください咲夜さん! 私はあと雀の涙ほどでも一度味わったら忘れられぬ禁断の果実の誘惑に身を縛られているのです…! もう、止まるわけには行きません!

「あ、あのっ! さ、咲夜さん!」

「はい、どうしました?」

「一緒にお風呂に入りませんかっ!?」

「お風呂ねえ…。もうそろそろ入りたい時間帯ですしね。いいですよ。入りましょうか」

…へ?

「あ、その、是非ご一緒したいんですが、仕事は…? それに、翌々考えると私は侵入者であって、あまりよろしくない存在なんじゃ…」

「まあ、確かにそんなことを言えばあまりよろしくはないお客さんね。でも、主が寝ているときにそんなガチガチになっても、逆に敵を増やすだけなんじゃあ無いかなって考えるの。息抜きは必要ですよ?
それに、まあ。申し訳無いけど妖精メイドちゃんがまともに働いているとは思えないし、仕事はたまりに溜まるでしょうね。でも、後で一片に終わらせるから大丈夫! …ここだけの秘密。実はね、私は時を止めることが出来るんだ。
もちろん凄く疲れるわ。でも、自分の楽をとる代わりに友達をないがしろにするってのも、何だか悲しいじゃない? 滅多にこないしね、それに早苗ちゃんとは今日友達になったばかりだし。私は気にしてないわ」

と、友達…!!?
今までの生涯に指で数えても過半数は余るほどしかいなかった友達が、今、ここで…!?

「う、う、う~~~」

「あら、どうしたの早苗ちゃん! そんないきなり泣いちゃって! ほら、涙ふいて」

そう咲夜さんが言いつつメイド服のポシェットからハンカチをとりだして私の目に当ててくれたので、素直にそれを受け入れます。
それにしても、何ていい人なんだ! 流石にここまでいい人だとむしろ恐く感じます! ぶっちゃけ紅魔館に変な侵入者が余りこないのは一度きた侵入者が咲夜さんの余りのいい人っぷりにもう無理に侵入するまいと心に堅く誓うからじゃないんですか!?
それにもう幻想郷のほとんどの人に知れ渡っている咲夜さんの時を止める能力を女の子だけの秘密みたいに語り出すなんて、とんだも、萌え!! 萌え~~~!!


「あっ、いきなり、どうされましたか! 芸人さんもびっくりするくらい両足を器用に自分の首回りに乗せたかと思えばそのまま手を自分の体を持ち上げて部屋中を歩き回って!
私動揺して美鈴、あ、門番の子の名前なんですけどね。あの子のおやつにだす紅茶を出しすぎちゃってとびきり苦いやつになっちゃったじゃないですか!! 30分くらい前ですけど」

「確信犯ですよねそれ」

流石は咲夜嬢、この我輩の奇行をものともしないとは…!
やりおる!

「…ううん! おほん! ともかく、浴場へ向かいましょうか。お嬢様達は滅多にお風呂に入らないので、本来ならお嬢様達しか使えない大浴場も一般解放されているんです。まあ、昼間限定ですけどね。
よく休憩時間になったメイドちゃん達もよく利用してるから下手に気を遣わなくても大丈夫ですよ」

「そ、そうですよね。私何をやっているんだろう、あはは」

「とりあえず今なお続けてあるヨガのポーズを解くことを推奨します」





咲夜さんに先導されながら歩き続けることはや数分。浴場につきました。
しかし、噂には聞いていましたが無駄に広いですね、紅魔館。廊下のみを数分ずっと歩くなんて想像だにしていませんでした! ああ、貴重な体験をありがとう! もう味わいたくない!

廊下の壁にはチラホラと額縁に飾られた絵やら台の上に置かれた皿があり、興味を持って触ろうとした所咲夜さんから『あー…。触らないほうがいいと思います。私達には身近なたかが骨董品だけど、早苗ちゃんには少しばかりたじろぐお値段になりますから。…いくらか? そうですね。正確な値段は言えないけれど、ざっと象三頭分くらいでしょうか、そのお皿』

慌てて手を引っ込めました。ついでに後ろに下がったら自分の足につまずいてしまい尻餅をついてしまいました。このあと咲夜さんにクスクスと笑われてしまい恥ずかしかったのは別の話なんですが、…なんだよ! だったらわざわざそんな高いもの飾らなくてもいいじゃん! なんでこんな渡り廊下に置くのさ! なんなの、もう!

「そんなジト目で睨まなくても…」

「ふんだ」

もう私許さない。咲夜さんのおっぱいみるまで許さないもんねーだ。

「まあまあ。あまり行儀は良くないけど、バスタオルと着替え持ってくるついでに飴持ってきましたから、機嫌直してください」

「…まあ、許してあげないことも無いですよ」

「ふふ、ありがとう」

相手のほうが何枚も上手でした。
ちくしょう

「…まだまだねー、早苗ちゃん。早苗ちゃんは素直すぎるから、周りから可愛がられるんですよ」

「…余計なお世話です」

「あら、そうですか? まあ、一緒に背中流しあいながら話そうじゃないですか。お互いに恋の一つや二つ暴露しようじゃないですか」

「そんな、暴露だなんて!」

「あら、早苗ちゃんはソノ手の話苦手なんですか? 全く、ウブですね」

「いや、べ、別にそういうわけでも無いですけど」

「じゃあ話そうじゃ無いですか。私は、コノ手の話好きなものでしてね。…ずっと浴場前にいるのもどうかと思いますし、脱衣室に向かいましょうか」

「そ、そうですね」

私は咲夜さんに誘導されるがままに浴場ののれんをくぐり(のれんの浴場という文字が欲情になっていたのは気のせいでしょう)、脱衣室に向かいました。脱衣室は紅色を全面的に前に出している紅魔館にしては珍しく、部屋全体が白く、人間の目に優しい設計です。
ロッカーは無いものの、代わりに部屋の入り口から見て右側に小さい一人用ほどの籠が5、6個ほど置いてあり、既に二つの籠に衣類が入っていました。その内の一つの衣類がもごもご動いているのは気のせいでしょう。右上の隅には体重計とマッサージチェア、何故か薬局などでよく置いてあるでっかい人形がありました。
目の前には石造りで出来た風呂の一部分が見え、囲いが竹で出来ています。なるほど、これは確かに大浴場です。旅館でも経営したらどうですかね?
左側は奥行きがあり見えなかったので、中に入り覗いてみると台の上に鏡とドライヤーが2つづつ置いてありました。
サイズが小さいのは恐らく吸血鬼のお嬢さんが使うことを想定して造られたからでしょう、それを考えるとなんだか微笑ましい気分になります。

「なーにぼおっとしてるんですか。早く脱がないと、私が脱がせちゃいますよー?」

「ひゃっ、あっ、うわわ! いきなり手を首筋に当てるのはやめてください!」

「だって、早苗ちゃんがぼーっとしてるのが悪いんだもん。私悪くないもん」

やっべかわいい

「もうっ! 咲夜さんがそんなことするならお返ししますよ…、よ、よ…」

「? どうしましたか、早苗ちゃん?」

今、私は何を見ている…? 私の目の前に広がる光景、いや、現実…?
これが、真実、真の姿だというのか!!?

「いっ、あああああ!」

「ど、どうしたの早苗ちゃん!?」

嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ!!
こんなこと、あって、本当にいいのか!
楽園への切符はどこへ行った! 神は、私達にこんなにも無慈悲な試練を与えたというのか!
私達は、これからどこへ向かえばいいのか!
うわああああああああああああああ!!!

「咲夜さん、ブ、ブラ!? しかもしっかり当てはまってる!」

目の前には、荒野だと思われた平野に二つ、恵みの産物がそびえ立っていました。

「…? はい、そうですけど」

「あ、え、えっ、う、嘘!?」

「まーた何を言ってるんですか早苗ちゃん。見ての通りですよ。…あ、早苗ちゃんって。まさか私の胸に関する噂を信じてるんじゃあ無いでしょうね」

「え、いや、あの、その」

うわあああああまずいまずいぞ早苗これは早急になんとかしないと! どげんしんとあかん! 幻想郷を滅ぼしかねい一大危機です!!!
どうする、どうする早苗!? そもそもまずは何をする!? 私が何かやって何か意味はあるのか!?
とりあえず面倒臭くなったから思考停止してあとくやしいから私もさりげなく家ではブラをしていることアピールしようと試みましたがサイズがあっていないことがどっかからバレたら恥ずかしいから断念することにしました。残念。

「全く。私自身、初めてその噂を聞いたときは思わず苦笑いしちゃいましたよ。PAD疑惑なんて、何をどうしたら広まるものなのか不思議で仕方がありません。まあ、面白いとも思ったことは事実なのでそのまま弁解しないでスルーしてましたけど」

「え、いや、でもまさかそんな」

正直今一番考えていることは咲夜さんの胸疑惑確かめるためにお風呂に誘ったことを悟られませんようにってことですかね!

「…早苗ちゃん、まさか私とお風呂入りたいって言ったの、私のその噂を確認するため?」

「ギックーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

終わった

「…ぷっ、あっはっはっは!」

「…あれ。怒ったり、しないんですか?」

「いや、まあ、ねえ。そりゃあムッとはしたけれど、まさかあそこまで分かりやすい反応をされるとは思わなかったから。いいですよ、許してあげる。その代わり、条件があります!」

「…ど、どんな条件ですか!」

「あはは、そんなに気を張らなくてもいいですよ。…敬語禁止。私も使わないから。ね?」

「…うーん、私、年上だとか、何だか上の立場かなあと思った人にはどうしても勝手に敬語になっちゃうんです。正直、何回も敬語禁止とか言われたことあるんですけど、敬語使わない方が気を遣って疲れるんです。出来れば、今のままがいいですね」

「…そう。敬語使わない方が気軽に話せるかなと思って、提案してみたんだけど。それなら、仕方が無いですね。
でも、いつかは敬語無しで話せるようになりたいな。気軽に、里に買い物行ったりとか。…急がなくてもいいから、あなたと友達になりたい。
…あー、私、何言ってるんだろ! 恥ずかしい! ごめんね、早苗ちゃん。嫌だったら聞き逃して貰っていいよ」

「…嬉しい、ですね。純粋に、こっちに来てから『仲間』はいても『友達』はいなかった気がしますから、とても嬉しいです。ただ、やっぱりすぐに敬語を外すのは難しいです。少しずつ、無くしていきたいです」

「うーん、別に無理にじゃなくてもいいですよ。単純に、敬語じゃない方が楽かなと思ったから言っただけだし、早苗ちゃんが喋りやすいようにしてくれれば、その」

「私自身が、敬語を無くしたいと思ったからです。べ、別に、咲夜さんともっと仲良くしたいとか、そういうのじゃないですよ! 本当です! そんな胸がある人なんか嫌いです! つーんだ!」

「そんな、ジリジリと私に近寄りながらジト目で胸をみなくても」

「ふんだ! 咲夜さんは、私に逆らってはいけない義務があるんです!」

私が歩みを止め、数秒辺り、部屋がシンと音を無くします。そして、咲夜さんの『プフッ』と吹き出す音を皮切りに、私達二人は脱衣室で大声で笑い合いました。
なんで笑いあったのかは自分でもわかりませんが、凄く安心したのは覚えています。
あと、嬉しかったですかね。この世界に来て、初めての対等な『友達』が出来たからです。

「あー変なの。早苗ちゃんも、噂を確認しによくここまで来たわね。本当、最初に噂を流したのは誰なんだろ。判明したらとっちめてやる! プンプン! …私は敬語抜かしても、いいかな?」

「どうぞ、話しやすい言葉で構わないですよ。別に、私達が会うきっかけになったからいいじゃ無いですか。それに、そこは萌えを司るトレジャーハンターたるもの確認しないわけには行きません!」

「萌え、ねえ。最近鼠、あ、いや、魔理沙が『レイムのうなじがたまんねえぜ!』とかいいながらパチュリー様、あ、図書館にいるごぼうなんだけどね。そのごぼうがまーた働かないのよ! 美鈴さながら一日中本ばっか読んで! 少しは溢した紅茶拭く身にもなって欲しいです!
…話ずれたね。まあ、魔理沙が図書館に向かってパチュリー様と何時間もそんな話をしていて、所々に萌えって単語が出ていたことを思い出したんだ。実際はどういったことに使うのかな?」

「うーん、ごぼうか…。そのごぼうさんには興味を持ったけど、それはともかく。単純ですよ。咲夜さんが吸血鬼のお嬢様のことについて妄想して、なんだかキュンってしますよね? それが、萌えです」

「…なるほど。萌えって、いいものね」

「あはは。でも、咲夜さんも萌えについて理解しちゃったから、これからどんどん浸っていって魔理沙さん達のような話に花を咲かせるようになると思いますよ?」

「うへえー、それはちょっと抵抗があるわ。うなじはともかく、足の匂いほどマニアックなものまで対象内には無いからなあー」

「それは二人は変態なだけだと思いますよ」

「だよねえ。特にあの二人は、図書館の司書やメイドちゃんたちのお尻を触ったり臭いをかいだりしてくるからほとほと困ってるんですよ! 本当、なんとかなんないかなあ。
…へくちっ」

咲夜さんがくしゃみをして思い出しましたが、私達は浴場に入る途中だったんでした。そして、咲夜さんはさっきからずっとメイド服を脱ぎ、し、した、下着のまま…!!
さ、咲夜さん! 何をそんなハレンチな! 隠すところは隠してください!

「なーに別に大丈夫よー。誰か来てもメイドちゃんだろうし、恥ずかしくはないわよ」

「それはそうだけど、もう…!」

「…なーに、早苗ちゃん? もしかして、私の姿が他の人にみられることに嫉妬してるの? それとも、私に欲情?」

「! ま、そんなわけ無いじゃないですか! まさかそんな私がみみっちい女だと思っているんですか!?」

「違うの?」

「…後ろが当たりです。目のやりどころが無いんです。察してください」

「まあまあ、そうむくれないで」

「プンプン」

「…仕方ないなあ。そんなエッチな早苗ちゃんの機嫌直すために特別ですよ。はい」

「エッチじゃ無いです!! …!?」

咲夜さんが私と向き合って私の手を掴みながら方にずいっと近付いてきて、む、胸に私の手を!!!??
あれ! さっきこんなことがあった気が

「さ、さ、しゃ、さ、咲夜さん!!!?!?」

「なあに? 興味無いの? こういうこと」

「いや、もちろん興味ありますけど、~~~~!」

もはや後半声にならない声になってしまいました。ここまできて、こんな、恥ずかしいことが…!

「うふふ、顔が真っ赤よ、早苗ちゃん。私も、こういうこと興味あるよ。…触りっこ、したいな。いいよね?」

咲夜さんが私にそう喋ると、咲夜さんの右手を私の肩に、左手を胸に近付け、う、わああ!

「あっ、大丈夫!? …ごめんね、怖がらせちゃったね。一人よがりに、本当、ごめん」

気が付いたら私は咲夜さんからのけぞるよるな格好になっていました。確かに恐かったですが、それほど嫌だって思ってもいなかったのに、なんだか残念な気持ちと申し訳無い気持ちになりました。

「…あー、もう! 私、どうなっても知らないですからね!」

私は咲夜さんにそう告げて、思いきり咲夜さんに抱きつきました。咲夜の表情はわかりませんが、私の予想では想定外の出来事にきっと顔を赤くしてることだと思います。
そのまま、抱きついた状態からまた少し距離をとって、咲夜さんと向き合います。案の定、咲夜さんは下にうつ向いていて、恥ずかしそうに目を細めていて、顔が真っ赤っかでした。
表情と顔色を隠すためにうつ向いているのでしょうが、バレバレであまり意味が無いですよ。

「もうっ! 何をどうすれば、大きくなるんですかね!? こぶりの大きさでいいんです! なんですか、食生活の違いですかね!?」

「あ、いや、さ、早苗ちゃん、ちょっと」

「もう、今更止まれませんよ! …いきますよ」

咲夜さんは、下にうつ向いたままコクリと頷きました。
私は一旦咲夜さんを振り返らせ、私に背を向けた状態で私に持たれかかせました。咲夜さんは恥ずかしそうにもじもじしながら『さ、早苗ちゃん、胸が当たってるよ…』と顔だけ私に振り向きつつ私に持たれかかります。私は、咲夜さんの耳元に大丈夫だよ、と一言残し、咲夜さんがつけているブラジャーのホックを


「エクステンデット・オンバシラあああああああああああらあああああああ!!!!!!!!!!」

ずかああああんと、私の背後にすざましい、具体的に言うと建物が一部崩壊したな、という物音が聞こえました。
咲夜さんの顔色も背後からなのでそこまで確認出来ませんでしたが赤い顔がみるみるうちに青くなっていき、またずんずんと赤くなっていきました。ただ、この場合の顔色は怒りから来ているものだと思います。
意を決して振り替えってみると、そこには脱衣室の三分の一を鉄パイプで破壊した神奈子様がいました。わかってました! オンバシラって聞こえた時点でわかってましたけども!
わざわざどっかで待機してたのかなとみるも無惨の室内を見渡すと、先程確認した妖精メイドちゃんの衣類が入った籠の中に衣類がなく、辺りに散らばっていました。もう一回神奈子様の姿を確認してみると、神奈子様の肩に妖精メイドちゃんの物と思われる靴下が一つ乗っかっていました。
さっきむずむず動いてるなとは思いましたが、神奈子様か! どんだけ待機してるんですか!

「早苗を奪おうとしているふとどき者め! 一緒にお風呂に入る所までは許せたが、女の子同士で胸を触りあうなど、ご、言語道断!! 早苗をソノ気にさせるように誘導しやがって! いいか!」




「早苗に胸を触らせていいのはこの私だけなんだ!」





































「あーあ、今日もいい天気ですね」

師走の朝、外一面が銀世界の頃。
朝食と洗濯を済ませ、縁側で座布団に座りながらお茶を飲みつつみかんを食べ、まったりしています。ああ、お茶の渋みが心地好い。
…今思うと、前は色々あったなあと思います。

あの神奈子様が爆弾発言をしたあと、神奈子様にみられていて気まずかった空気が激化し、とうとう神奈子様と咲夜さんが下着のまま弾幕勝負をしだしてしまいました。
まだ服を脱いでいなかった私はそのまま脱衣室を後にし、紅魔館を後にしました。
後日、風の噂で『あの時の咲夜さんは今までに類を見ないほど本気だった』と耳にした時はああやっぱり見られたことが相当恥ずかしかったんだろうなと思いました。
あの時の咲夜さんは下着だったので、恐らく時を止めるための銀時計はメイド服の中で持っていなかったと思うんですが、それを指し置いてでもここまで噂になるなんと相当だったのでしょう。そりゃあそんな思春期まっ盛りの乙女の行動を目の辺りにさせられたのですから、無理もありません。
かくいう私もそれはもう恥ずかしさで一杯で、気力のみで逃げたようなもんなんですけども。
途中門前に来たときに門番さんから『早苗ちゃん、ドンマイっス! 恋に障害はつきもんっスが、これは流石に酷すぎるっスよ! まあ、ともかく! 我々紅魔館はいつでも早苗ちゃんを歓迎してるっスから、いつでも気軽に遊びに来て欲しいっス!』と告げられ、なんか勘違いされてるなと複雑に思いながら帰って行ったことを覚えています。
…べ、別にその後帰り道がわかんないからもう一度門番さんの所に尋ねて一緒に付き添って貰ったなんてそんなことは無いですよ!
本当です! 一人で帰れたモン!
…そういえば、送って貰った後門番さんの帰り際を見送っている時、門番さんに無数のナイフが飛んできたのはなんででしょうか。
まあ、門番さん曰く『私なんでかわかんねっスけど、とことん運が無いんスよ~。前世でなんかやらかしたっスかねえ』なんてことも言っていたし、きっと弾幕勝負で飛ばされた弾幕がたまたま飛んできただけでしょうかね、やっぱり。
…考えすぎですね。


時が流れるのは早く、あれから季節は完全に冬になってしまいました。大浴場はあの事件でボロボロに壊れてしまったため、現在修理中なんだとか。
紅魔館の評判もガラリと変わり、なんと今まで紅魔館を恐れていたはずの人里から『下着のメイドを一目見に来ました』の合言葉のもと観光客がチラホラ現れたしたのだとか。
門番さん曰く『ようやく紅魔館も財産難から脱出出来そうっスからね! 今が張り切り時っスよ!』なんて息を巻いていたっけ。ただ、同時に『脱衣室どうするんスかこれ…』なんて愚痴も溢していたけれど。
道案内をしてくれたチルノちゃんと大妖精ちゃんは、最近めっきり会わなくなりました。いや、正式には大妖精ちゃんは一人泉のほとりでたたずんでいるのですが。
つい最近まではちょくちゃく遊んだりしていたのですが、幻想郷に淡い粉雪が降り注いだ時から『ごめん、早苗! 私、レティを探しに行かなきゃ!』と私に一言残し、それからどこかへ飛び立ったきり会っていません。
そういえば大妖精ちゃんが『レティが来ちゃうと独占されるのよ!』 と言っていたことを思い出します。…こういうことだったんですね。
毎日泉でチルノちゃんを待っている大妖精ちゃんの背中はどこか寂しげで、私は冬の間だけでも一緒に暮らさないかと提案したのですが、『チルノちゃんがいつ帰ってくるかわからないから』と遠慮されてしまいました。
全く、チルノちゃんもまだまだですね! 女の子の気持ちも読みとめられないようじゃあおてんば恋娘の二つ名も廃れちゃいますよ!
…そして、騒動があってから変わったのは何も紅魔館だけじゃありません。変わったのは、ここ守矢神社も。ほら、噂をすればどたどたとけたましい足音がどんどん近づいてきて…

「早苗ちゃんっ! おせんべい買って来たから一緒に食べよう! み、みかんのほうがよかったかな!? あ、お茶が無いね、入れてくるよ! ちょっと待っててね!」

「いやいや、咲夜の嬢ちゃん。元々よそ者のあんたにそこまでさせるのは流石に悪いと思うからねえ、どうだ。それは私が引き受けようじゃないか。ついでに早苗の隣も受けとる」

「まあまあ、お気遣いなく。元々守矢の人でないからこそ、私を泊めてくれる感謝の気持ちを含んで雑務をしたいんですよ。それに、私元々メイドでもありますしね。何かしら動いていないと落ち着かないんですよ。
それでもお茶お茶組みを引き受けてくれるというならお願いします。しかし、早苗ちゃんの隣は私が座りますけど」

「おやおや。紅魔館の人間というのは、礼儀と言うものを知らないのか。雑用を私にやらせておいて、それでいて自分はやりたいことをやるとはなんて利己的な」

「そう仰るなら素直に私にお茶を組ませる行為を頼めばいいと思うんですがね。何故自分からお茶を組むと言ってそれを理由に私の行動を束縛するのか、わけがわかりません。
ああ、姑といった存在はなんてこう頭が固く回りくどいネチネチとしたイジメばかりしてくるのでしょう、これだからジジババは嫌なんです。理解に苦しみますわ」

「あ゛?」

「はい゛?」

「うーん二人ともうるさい~」

「「諏訪っ子は黙ってらっしゃい!」」

「びええええ、早苗~!」

「ちょっと、二人ともうるさいですよ! せっかく諏訪子様が眠ってらしたのに、起きちゃったじゃないですか」

「「はい、すみません」」

…現在、咲夜さんが守矢神社に遊びに、いや、もうほとんど住み込み同然でしょうか。ともかく、咲夜さんがこの守矢神社にやってきたいった変化がありました。
最初はお二人とも、特に神奈子様が反対していたのですが、それをものともせずに咲夜さんが遊びに来て以来、どんどんとヒートアップしていって終には今のように有休を使い泊まりにくるようになりました。
…最も、神奈子様との仲は依然良くありませんが。

「くっそあの諏訪子早苗に膝枕して貰いやがって羨ましい嫉妬ましいムキーーーーーー!」

「ちくしょうあの蛙の子私達がお互いにマークしながら争っているところに『ねーねー早苗私おねむになってきたー膝枕してー』なんて早苗に言って来やがって優しい早苗ちゃんは膝枕してあげるに決まってるじゃないかああ私もして貰いたい嫉妬ましいムキーーーーーー!」

「「ムッキーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」」

こういった対象が共通の時には物凄いコンビネーションを発揮するので、本当に仲が悪いのかはどうなんでしょうね。ケンカするほどなんとやらというやつです。
先程から諏訪子様が『外の景色をみながら眠りたい』とのことで、ずっとこうして縁側で膝枕していたわけです。座布団と諏訪子様がいるのでそんなに寒くなく、苦ではないです。
…あ、諏訪子様にかけた毛布から足がはみ出てる。寝相悪いなあ、もう! そう愚痴りつつ諏訪子様の毛布を直します。
余りに諏訪子様が気持ちよさそうに寝ているので、さらさらの髪の毛を撫でてみたら諏訪子様がこれまた気持ちよさそうに目を細めて『ん…うぅ』と声をあげます。
その動作が余りに可愛かったので、思わず額にキスをしてしまいました。諏訪子様の表情も緩くなったので、満更でも無いみたいです。…後ろから『あーっ!!!!!』という声が上がった気がしますが、気のせいでしょう。
全く、普段からこれくらい静かなら可愛いのに、普段が普段だからなあ…。可愛さ余って憎さ百倍! なんたる悲劇、おお! なんという!

「ふんっ!」

「ごっ! あ、べっ…!」
すみませんでした
ばらしー
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コメント



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1.100名前が無い程度の能力削除
眼球に変態なキャラだけを見えなくするフィルターを貼ったら
良い子なチルノちゃんと可愛い咲夜さんしか見えませんでした。
2.100名前が無い程度の能力削除
これはけしからん、もっと、もっとだ!
 …すみません自重します。

誤字?
>性なる乙女の純潔なる真水を噴出する製造機
  ↓ 
 聖なる
ではないのかえ?
じゃないとあんなことやこんなこと想像しt(ピチューン
3.70名前が無い程度の能力削除
不味くはないんですが俺はちょっと合わなかったなぁ……。
悪くはないし面白かったんですけどね。
9.50名前が無い程度の能力削除
ごめんなさい、ずっと似たようなノリで進むためか、途中でダレちゃいました。
ネタ自体はありだと思うので、もう少し短めにまとめるか、勢いで読ませるパワーが欲しかった
10.100名前が無い程度の能力削除
嗚呼おっぱい
21.100名前が無い程度の能力削除
バロスwwwwwwwwww

美鈴ナイスw