Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷のとある一日・大晦日編2008

2008/12/31 14:05:45
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この作品は、作品集47「幻想郷のとある一日・大晦日編」と作品集60「メイド喫茶・紅魔館」と
若干ですが繋がりがあります。
宜しければそちらもご覧になってください。

















12月31日



午前10時・永遠亭

「ほらぁ!そっちがまだ綺麗になってないわよ!!」
幻想郷でも年の瀬のこの日。
竹林にある永遠亭も類に漏れず、大掃除を行っている。
「張り切ってるわね、うどんげ」
妖怪兎達に指示を飛ばす鈴仙に永琳が呼びかける。
「あ、師匠。ええ、そりゃもう。何せ目を離すと直ぐにサボる連中ですから」
溜め息交じりに鈴仙はそう返す。
「あら、ならサボらないようにすれば良いのよ」
事も無げに永琳はそう返す。
「そうは言いますが………」
「なんでもかんでも怒鳴りつければ良いと言う物ではないわ」
永琳はそう言うと
「皆。頑張ったら後でキャロットジュースを御馳走するわよ」
働いている兎達に向けてそう言った。
「本当ですか!?」
「よし!やるぞ!!」
「食欲を持て余す」
「ここら辺でお遊びは好い加減にしろって所を見せてやるぜ!!」
永琳の言葉に兎達はやる気を漲(みなぎ)らせ、機敏に動き始めた。
「げ、現金な………」
鈴仙が呆れたように呟く。
「アメと鞭。使い分けが大事よ?」
永琳はニッコリと笑って鈴仙にそう言った。
「勉強になります。所で、いつの間にキャロットジュースなんて作ったんですか?」
鈴仙は尋ねる。
「あら、私も朝から自分の掃除で忙しくて作ってる暇なんて無かったわよ?」
「へ?じゃあ、いったい誰が?」
鈴仙は首を傾げる。
その鈴仙を永琳は笑顔で見つめる。
「もしかして…………これから私が作るんですか?」
もしかしなくてもそうだろう、と鈴仙は既に悟っていた。
「ええ、勿論」
永琳はさらに素晴らしい笑顔になってそう言った。
「はぁ~」
深くため息を吐く鈴仙。
「あの子達が働いてくれるから貴女の負担も少しは減るでしょう?」
「そりゃそうかも知れませんけど…………」
鈴仙は一応反論をしようと考えた。
が、直ぐにそれは止めた。
目の前に居るのは天才、八意永琳だ。
舌戦で敵う相手ではない。
「まぁ、後で暴動とかされて折角の掃除をぶち壊されても困りますから、作ってきます」
「ええ、お願いね」
笑顔の永琳にそう言われ、鈴仙はトボトボと厨房へ向かう。
「最初から用意して、こうすれば良いのに。あの子もまだまだねぇ…………」
そんな鈴仙の後ろ姿を見送りながら永琳は呟く。
「……あら?」
そんな時、空から何かが降ってくるのが見えた。
「これは………」
「天狗の新聞かしら?」
不意に背後から声が掛かる。
「あら、姫」
背後に居たのは、この永遠亭に住まう月の姫君、蓬莱山輝夜だった。
「天狗の新聞でしょ?それ」
輝夜は再度永琳に尋ねる。
「ええ、あの鴉天狗の新聞の様です」
あの鴉天狗、とは、射命丸文の事だ。
「年の瀬に配るなんて変ね………余程の事かしら?」
幻想郷の新聞は外の世界の様に毎日配られているのではない。
新聞を編集する天狗達がネタが集まった時に不定期に出版する物だ。
故に、彼らにとっても大掃除となる年末や新年早々には新聞が配られる事が殆どない。
なのに、降って来た新聞。
購読して貰わずに降って配ったと言う事は号外と言う事になる。
この年の瀬の号外とは何なのか?
永琳も輝夜も興味を惹かれて新聞を読む。
「……………永琳」
「皆まで言わなくても解ります」
名前を呼ばれただけで永琳は輝夜の言わんとしている事を察した。
まぁ、永琳でなくとも察せられたであろう。
それほどまでに輝夜は感情を表に出している。
「今年はそこで年の瀬を迎えるわよ!」
「今年も、だと思いますがね」
既に興奮気味の輝夜に永琳は軽く突っ込む。
面白い物が見つかり、ルンルンな輝夜を見て永琳は
「………まぁ、偶には良いかしら?」
と言って、まだ残っている自分の掃除へと戻って行った。



午前11時・妖怪の山 守矢神社

「ふぅ………これでよし、と」
神社の巫女、東風谷早苗は縁側でグイッと額を拭いながら呟く。
どうやら大掃除が終わったようだ。
「ん~………良い天気。この様子だと初日の出は綺麗に見えそうね」
そして、外の天気を見ながらそう言った。
「早苗~こっちも終わったよ~」
神社の奥から声が聞こえてきた。
「お疲れ様です、諏訪子様」
早苗の声に出迎えられるように姿を現したのは、この神社に住まう二柱の神の一、漏矢諏訪子だ。
「そっちも終わったみたいだね」
「はい。これからお昼の用意をいたします」
「お願いね。お腹空いちゃったよ」
本来霊体化も出来る神が空腹など感じる筈はないのだが、気持ちの問題だろう。
「そういや神奈子は?」
「ゴミを出しに行って頂きました」
「あはははは!そりゃ良いや!!」
可笑しそうに諏訪子が笑う。
「言っておきますけど、私が頼んだんじゃないですよ?」
「なんだ。てっきり何かしでかして罰として行かされてるのかと思ったよ」
「まぁ、暇だから行って来る、と言ってましたが」
「働かないよりマシだね」
「本来は私が全てやるべきなんですが………」
正直、早苗一人では手に余る。
霊夢と違って常に神奈子、諏訪子の二人が居るので、置いてあるものから生活廃棄物まで結構あるのだ。
それを一人でやるのはかなり骨だ。
「無茶言うんじゃないよ。あたしらだってここに住んでるんだから、こう言う時は頼りなよ」
「ですが………」
「それとも何?私達はそんなに頼りない神に見える?」
「そんな事はありません!」
全力で否定する早苗。
「んじゃ、頼れる時は頼りなよ。小さな事でも、大きな事でも。巫女とか神とか関係なしにね」
「………はい!」
諏訪子の言葉に早苗は笑顔で返事を返す。
「そう言えば、初詣の準備はまだしてないの?」
諏訪子が辺りを見回しながら言った。
「ええ、お昼を食べてから用意しようかと。事前準備だけなら粗方済んでますし」
「なるほど」
「残念だけど、今年も新年早々から、とは行かないかもね」
二人の会話に割って入った声。
それはこの神社のもう一柱の神、八坂神奈子だった。
「神奈子、おかえり。で、どゆこと?」
「さっきゴミ捨てに行ったらあの鴉天狗の使いっ走りの犬にこいつを貰ってね」
あの鴉天狗、とは、やはり文の事で、その使いっ走りの犬とは白狼天狗の犬走椛の事だ。
「犬走だけに使いっ走りの犬………ねぇ…………」
「別に上手い事言ったつもりないわよ?」
諏訪子の呟きに神奈子が返す。
「それよりも、そのチラシは…………?」
早苗が神奈子の持って来たチラシを覗きこむ。
続いて諏訪子も覗きこむ。
「あちゃ~………こりゃ、今年も向こうだねぇ」
それを見た諏訪子がそう言う。
「うぅぅ…………何で向こうでばかりこう言う事やるんでしょう…………」
早苗も諏訪子と同じ考えに達したのか、そう愚痴た。
「ま、「人間」も集める事考えたらこっちじゃまず無理だしね」
神奈子の言うとおり、ここ、妖怪の山は非常に排他的なので関係者以外の侵入を拒む。
故に、そのチラシに書いてある事をやったとしても身内しか楽しめないのだ。
「しっかしまぁ、思い切った事をするね~」
諏訪子が呟く。
「でも、外でもこんな事してたよね」
「ああ、確かに」
神奈子の言葉に諏訪子が頷く。
「では、今年も初詣の準備だけしたら向こうに行きますか?」
「そりゃね。この様子じゃ皆向こうに流れるでしょ」
「だろうね」
早苗の言葉に諏訪子も神奈子も同意と取れる返答をする。
「また手伝わされなれば良いんだけどなぁ…………」
早苗はそう呟いて昼食の支度へと向かって行った。



正午・博麗神社

「霊夢~飯まだか~?」
黒と白の魔法使い、霧雨魔理沙が台所に居る霊夢に声を掛ける。
「今出来るわよ。もうちょっと待ってなさい」
台所から霊夢が返事をする。
「あんたって本当に我慢が出来ないのねぇ………」
そう呟いたのは七色の人形遣い、アリス・マーガトロイドだった。
「しょうがないだろう。腹が減ると言う生理現象は抑えられるものじゃないぜ」
「不便ねぇ、人間って」
既に捨食の魔法を会得しているアリスには本来食事は必要ない。
食事が必要ないのだから、空腹という生理現象も既にない。
「そうでもないぜ。腹が減るからこそ飯が美味く食えるってもんさ」
「ふむ………それは確かに言えてるかもしれないわね」
アリスも元は人間である。
故に、空腹と言う物がどう言う物かは身をもって知っている。
そして空腹時に食べる食事も。
「はいはい、出来たわよ」
話していると霊夢が昼食を持って居間に入って来た。
「お、待ってました!」
魔理沙が嬉しそうに反応する。
「それじゃあ冷めない内に頂きましょうか」
アリスもそう言う。
「そうして頂戴。まだ少し残ってるから」
「やれやれだぜ」
霊夢の言葉に魔理沙が首を横に振る。
残っている、とは、大掃除の事だ。
普段ここに居ないアリスが居るのもその掃除を手伝っているからだった。
何故手伝うのかと言うと、単に魔理沙に引きずって来られただけだったりする。
当の魔理沙は最近霊夢と弾幕勝負をした際の賭けに負けて手伝っているのだった。
つまり、アリスは思いっきり魔理沙に巻き込まれた形だった。
とは言え、アリスも口ではなんのかのと言うが、言ってるほど嫌がっている様子はない。
存外、魔理沙や霊夢と居るのが楽しいのかもしれない。
「ああ、そうだ。霊夢」
「何?」
「掃除終わったら温泉入らせてくれ」
温泉とは、以前の異変の時に出来た間欠泉の事だ。
「あ、良いわね、それ。」
アリスも賛同の意を見せる。
「そうね。汗も掻いてるし。私も入ろうかな」
「決まりだな」
「便利な物が出来たものねぇ………それで商売でも始めたら?」
アリスが霊夢に言う。
「そうしたい所だけど、目に見えない?」
霊夢が溜め息交じりに二人に尋ねる。
「ああ、なんとなく、な」
「…………それもそうね」
二人とも霊夢の言いたい事を察した。
つまり、例え温泉を使った商売を始めた所で人間が来れる筈がない。
博麗神社までの道のりは危険なのだから。
そして何より、恐らくは常連になるであろう者達が今までの異変の首謀者達だろう。
一般の人間からすれば目にするだけで恐ろしい存在だ。
なら、一般客の来客は望めない。
それでも妖怪だけなら来るであろう。
しかし、高い知能を持った妖怪で無い限り人の里で使える貨幣は所持して居ない。
イコール、商売にならない。
なので、霊夢もそれを利用した商売をする気が無いのだ。
そうこう話していると

ヒラッ……

この博麗神社にも文の文々。新聞の号外が舞い降りた。
「んあ?鴉天狗の新聞か?」
それを見た魔理沙が言う。
「まったく……もう掃除も終わるって言うのにゴミを落として行かないで欲しいわ」
霊夢はそう言うと、その号外を見もせずに大掃除の際に出たゴミ袋の中に丸めて放り込んだ。
「おいおい、中見も見ないのか?」
魔理沙が若干非難を込めて言う。
それが何であろうが見てみたかったのだろう。
「見る価値なし」
が、霊夢はバッサリと切って落とした。
「ま、否定はしないわ」
アリスもそう言った。
「やれやれ………面白みのない奴らだぜ」
「言っておくけど、ゴミ袋漁って見るような真似はしないでよ?」
「するか」
霊夢の言葉に即返す魔理沙。
「さて、ご飯も済んだし、もう少し休憩したらもう一頑張りしましょうか」
「そうね。お茶を淹れてくるわ」
「熱めで頼むぜ」
「解ったわ。煮えたぎらせてくるわね」
「酷い話だぜ」
などと冗談を交わしながら霊夢達は過ごしていた。



午後3時・紅魔館

「全く、年末だって言うのに騒々しいわね」
テラスで優雅に紅茶を飲みながらレミリアは呟く。
「しょうがないじゃない。12月は、昔は師が走る書いて「師走(しわす)」と言うくらいだもの。そう言う月なのよ」
同じ場所で読書をしているパチュリーが返す。
「それにしても年の瀬くらい落ち着けないのかしら?」
「大掃除に参加して居ないレミィが言う台詞じゃないわね」
咲夜を含めメイド達は広い紅魔館の大掃除で大忙しだ。
とは言え、流石にこの時間ともなると、そろそろ終わりが見えてきてはいるが。
「それを言うならパチェだって同じじゃないの」
「残念。私の所はとっくに終わってるわ」
私の所、とは言うまでもなく大図書館の事である。
「あれだけ広いのに?」
「あれだけ広いから、一月以上前から少しずつやっていたのよ」
「なるほどね」
大図書館、と言うだけありパチュリーの書斎こと大図書館はとてつもなく広い。
そしてその分、本も多い。
年末になってから対応したのでは到底間に合わないだろう。
「まぁ、パチュリー様もお譲様同様何もしてませんけどね」
おかわりの紅茶とお菓子を持って現れた小悪魔がそう言った。
「余計な事は言わなくて良いのよ、小悪魔」
「何よ。パチェだって人の事言えないじゃない」
「良いのよ。私達は年の瀬にバタバタしてないもの」
「主に私のお陰で♪」
誤魔化すパチュリーに空かさず追撃を掛ける小悪魔。
「貴女は黙ってなさい」
「はいはい~♪」
小悪魔はパチュリーに一杯食わせたことで上機嫌そうだった。
「ふぅ………」
そんな折、咲夜がテラスへ姿を現した。
「あら、咲夜。私の部屋の掃除は終わったの?」
「ええ、終わりましたわ」
最近昼間に起きて居る事が多いレミリアがここに居た本当の理由はそれだった。
自分の部屋も掃除する事になってしまった為、追い出されたのだ。
「館の掃除の進行状況は?」
パチュリーが咲夜に問い掛ける。
「そちらの方ももうじき、です」
「今日は夜から皆で出かけるから早めに色々終わらせて欲しいのだけれど」
パチュリーの言う色々、とは、晩御飯から日本伝統の年越し蕎麦の事だ。
「え?出かけるの?私知らないわよ?」
レミリアがパチュリーに驚いて問い掛ける。
「あら?レミィはこれ見てないの?」
パチュリーはそう言って、文の文々。新聞の号外を取り出して見せた。
「ん?何それ?」
パチュリーからそれを受取って眺めるレミリア。
「…………へぇ、面白い事考えるじゃない。あのスキマ」
ニヤリと笑いながらレミリアはそう言った。
「あら、今夜こんな事が催されるんですか」
それを覗きこんだ咲夜もそう言う。
「場所が場所だし、そのまま初詣も済ませられるわ」
「そうね」
パチュリーの言葉にレミリアも首肯する。
「しかし、そうなると掃除のスピードを少し上げませんと…………」
言い淀む咲夜。
理由は知れた事。
基本的にメイド妖精は妖精故に役に立たない事が多い。
下手に速度を上げようとすれば逆に失敗をして手間を増やすかもしれない。
「ああ、その事なら問題無いわ」
そこへパチュリーがそう言った。
「何か妙案でも?」
咲夜が尋ねる。
「小悪魔を使えばいいじゃない」
「はい!?」
パチュリーの言葉にその場で控えていた小悪魔が叫び声を上げる。
「今は特に用事与えてないから、扱(こ)き使って良いわよ」
「それは助かりますわ」
「ちょっ!?誰も手伝うなんて言ってませんよ!?それに私はこれから再びお譲様とパチュリー様に紅茶とお菓子のおかわりを用意してきませんと!!ええ、大変重要な任務ですので放棄する事など出来ませんとも!!そう言う訳ですので非常に遺憾ではありますが、咲夜さんのお掃除のお手伝いは辞退させて頂く次第で………」
マシンガントークで煙(けむ)に巻こうとする小悪魔。
「ああ、お茶とお菓子はもう十分足りてるから別に良いわよ?」
「私が許可するわ。咲夜の掃除を手伝って来なさい」
が、レミリアとパチュリーにあっさりと逃げ道を塞がれた。
「ぬぁ!?」
「さ、それじゃ一緒に頑張りましょうか」

ガシッ!!

いつの間にか背後に回り込んだ咲夜が小悪魔の両肩を掴む。
言外に「逃がさん」と言っている。
「ちょっ!?時を止めてまで捕まえなくても!!」
「さ、無駄口叩いている暇はないわ。早速行くわよ」
「ひ、引き摺らないで下さいよ!!うぅぅ…………パチュリー様の紫モヤシィィィィィィィ!!!」
最後に一吠えして小悪魔は拉致られてしまった。
「ったく、なんて捨て台詞よ」
「元気良いわね~」
「良すぎよ。少しくらい疲れてテンション下げてくればいいのよ」
「ふふ………そうね」
そう言って笑うレミリアの目はどこか優しげだった。



午後4時・博麗神社

「っはあぁぁぁぁぁ…………!!生き返るわぁぁぁ…………」
温泉に浸(つ)かって霊夢はそう漏らす。
「ふぅ………日の出ている内からお風呂と言うのも悪くないわね。ま、沈みかけだけど」
「ああ、露天だと尚更だな」
アリスと魔理沙も同じように浸かって言う。
博麗神社の大掃除はつい先ほど終わり、三人は汚れを落とす意味も込めて温泉に浸かっていた。
「こう、露天風呂に入っていると一杯やりたくなるな」
「これから年を越すって言うのに何言ってるのよ」
魔理沙の言葉にアリスが呆れたように返す。
「そうね。どうせ年越したらまた宴会になるんだから、その時に飲みなさいよ」
霊夢もそう言った。
「む?今考えたんだが、露天風呂に入ったまま年を越すってのはどうだ?」
「ん~…………案外悪くないわね。偶にはそう言う年越しもあっても良いかもしれないわ」
魔理沙の発言にアリスが少し考えてからそう返した。
魔法使いは基本的に不老だ。
それ故に、事故死、あるいは第三者に殺されるなどしない限り死を迎える事はない。
それらの事もそうそう起きる話ではない。
つまり、アリスはこれからも永い時を生きる事になる。
なら、偶にはそんな年の瀬も良いと思ったのだろう。
「だろ?温泉に浸かりながら月見酒で年越しなんて洒落てるじゃないか」
魔理沙が嬉しそうに言う。
「悪くないけど、基本的に私無理じゃない」
霊夢がそう言った。
普段は人が来ない博麗神社も新年は違った。
妖怪は祭りを好む性質で、祭りを壊す事は望まない。
新年早々の初詣はそう言った祭りの部類に入る。
故、この時ばかりは人間も安全に神社に来れる。
人間を襲おうとする妖怪が居たとしても、先に述べた祭りを壊す事を望まない妖怪に依(よ)って防がれる。
とは言え、祭り限定とはいえ、そこまで妖怪が人間を守るようになったのはつい最近の事であるが。
やはり、スペルカードルールによる人間と妖怪の距離が縮まった事に起因しているのだろう。
話は逸れたが、上記の理由で新年の博麗神社は満員御礼。
つまり、巫女である霊夢は大童(おおわらわ)なのだ。
とても温泉に浸かってる暇などない。
「ま、そこら辺はしょうがないな」
魔理沙はまさに人事のように言う。
「って言うか、言っておくけど今年も手伝って貰うわよ?」
「何!?」
「嫌よ」
霊夢の突然の言葉に魔理沙は驚き、アリスは二つ返事で拒否して返した。
「何言ってるのよ。タダで温泉に浸かれると思ってるの?」
「それは掃除の報酬でしょう?」
霊夢の言葉にアリスが返す。
「いえ。そっちはお昼が報酬よ」
「せこいぞ霊夢」
魔理沙が非難する。
「それに、どうせこの後夕飯、年越し蕎麦って食べてく気でしょうに。特に魔理沙」
「うぐっ」
図星を突かれて口ごもる魔理沙。
「じゃ、私はお風呂入ったら帰るから手伝わなくて良いわね」
アリスはそう言った。
「あら?それじゃ貴女は一人で年越し蕎麦食べるの?へぇ、そう?」
「そうよ。それが何?」
キッとアリスは霊夢を睨む。
「別に悪いとは言わないわ。ただ、人形に囲まれて一人寂しくお蕎麦を啜る…………かぁ」
霊夢が遠くを見ながら言う。
「ぐっ…………」
アリス自身、人と接するようになってからそう言った虚しさの様な物は感じている。
「ウチで食べてけば3人で賑やかに食べれるのにねぇ」
追い打ちを掛けるように霊夢は言う。
「いいえ、4人よ」
そんな時、突如として3人以外の声が響いて来た。
「幽香!?あんた何時(いつ)の間に!?」
振り向いた霊夢が驚いて言う。
新たに現れた者は、フラワーマスターこと風見幽香だった。
「つい今しがたよ。折角この幽香様が出向いてあげたと言うのに誰も居ないから、せめて温泉でも入って行こうかと思ってね」
サラッと幽香は返す。
「ここ、一応私ンちなんだけど?」
「あらそう?まぁ良いじゃない。細かい事は」
「細かくない」
「今年も桜咲かせてあげるわよ?」
「なんならお蕎麦も食べてく?」
幽香の一言にあっさりと掌(てのひら)を返す霊夢。
「相変わらず現金だぜ………」
「本当」
魔理沙とアリスが呆れたように呟く。
因みに桜を咲かせるとは、幽香の花を操る能力を使ってこの時期には決して咲かない筈の桜の花を咲かせる事だ。
新年早々、桜並木を歩いての初詣は壮観の一言であると去年の参拝客は言っていた。
「そっちのも、どうせ後で宴会交るんでしょ?だったらその前に手伝うくらい良いじゃない」
幽香がアリスに向かって言う。
「ったく………解ったわよ。その代り、夕飯とお蕎麦は振るって頂戴よ?」
観念したようにアリスが言う。
「任せなさい」
自信たっぷりに霊夢は返す。
「それはそうと…………」
「ん?」
魔理沙の呟きに霊夢は何事かと振り返る。
「でかいな」
魔理沙はストレートだった。
何がでかい、とは言わずもがな。
幽香の胸である。
「そう?あまり気にした事はないわ」
幽香は興味無さ気に返す。
「本当に大きいわね…………妬ましい」
「おい、霊夢。どこかの神様みたいになってるぞ」
「って言うか、大きいと困るのよ?動くのに邪魔だし肩は凝るし」
「まぁ、確かにそう聞くわね」
幽香の言葉にアリスがそう返す。
「もう、本当。あげられる物なら誰かにあげちゃいたいくらい♪」
楽しそうな笑顔で霊夢に向かって言う幽香。
「憎しみで人が殺せたのなら…………!!!」
「おいおい。そこまでマジになるな、霊夢」
何やらドス黒い物を発して居る霊夢を魔理沙がなだめる。
「話は変わるけど、霊夢。貴女がペットを飼い始めたって聞いたけど、何処に居るの?」
幽香が尋ねる。
「ん?ああ、お空とお燐の事?あの二人なら今は飼い主の元に戻ってるわ。私のペットじゃないし」
「あ、そうなの?残念」
「会ってどうする気だったの?」
アリスが幽香に尋ねた。
「そりゃ勿論、たっぷりとイジ………もとい、可愛がってあげようかと思ってね」
「あの子達二人とも結構強いから、イジメるなら場所変えて頂戴。ここで暴れられると洒落にならないわ」
「あ~…………確かにな」
霊夢も魔理沙も実際に手を合わせて居る為、二人の力は良く知っている。
お燐の方は咲夜や妖夢達とほぼ同等、つまり、霊夢や魔理沙とも渡り合えるほどの力を有する。
お空に至ってはその能力もあり、最強クラスに位置する力を保持する。
「イジメないわよ。可愛がるだけ」
「どっちでも良いわ。兎も角、神社に迷惑掛からない場所にして頂戴」
幽香とその二人が衝突すれば周りに尋常じゃない被害が出る。
特にお空。
「はぁ~………それにしても、大晦日が快晴で良かったぜ」
「そうね。夕焼けを見る限り、明日も晴れそうだしね」
魔理沙の言葉にアリスも続ける。
「これなら参拝客もいっぱい望めそうね♪」
夕焼けを眺めながらそう言う霊夢だった。



午後5時・人の里

「流石にこの時期だとこの時間で既に暗いね~」
妹紅が慧音の家の中から空を眺めて言う。
「そうだな。そろそろ雨戸を閉めるか」
「あいよ~」
慧音の言葉に従って、妹紅は一緒に雨戸を閉める。
「所で慧音、コレ、どうすんの?」
お互いに雨戸を閉め終え、居間に戻って来てから妹紅が慧音に尋ねる。
「どうにも出来んだろう」
慧音はそう答えた。
因みにコレ、とは、文の配った号外である。
「しかし、あの妖怪も楽しい事考えるもんだね~」
「楽しい物か。まったく、物騒な…………」
「でも、間違いなく人妖を問わず、凄い見物人になるね」
「まぁな」
号外を机に置きながら二人は言葉を交わす。
「当然、慧音も見に行くっしょ?」
「そりゃまぁ、何かあったら堪った物ではないからな」
「ま、確かに」
「今年は少し早めに年越し蕎麦を済ませるか」
「案外この場所で蕎麦の出店開いてたりね」
「………十分に有り得そうだな」
「しかし、良くこいつが了承したもんだね」
「ふむ、それは確かに」
やはり号外を見ながら二人は言う。
「まぁ、妖怪は祭り好きだからな。理由はそんな所だろう」
「そりゃ言えてるね」
「さて、それでは私は少し早いが夕飯の準備をするとしよう。食べていくんだろう?」
「勿論。ついでに年越し蕎麦も」
「想定の範囲内だ。問題はない」
「流石慧音」
「そしてこれで更にツケが溜まると言う訳だ」
「マ~ジ~で~?」
「私がそんな嘘を吐(つ)く様に見えるか?」
素敵な笑顔で慧音が問いかける。
「残念ながら全っ然見えない」
「なら、そう言う事だ」
「慧音の鬼~」
「去年もそんな事言ってなかったか?」
「慧音の大鬼~」
「ほう、飯も蕎麦も要らんと?」
「あ、嘘嘘。嘘です。ちゃんとツケは返します」
「そうしろ。まぁ、あの従者喫茶で働けば直ぐだろう」
「あそこで働くの疲れるんだよねぇ………」
「そうか?大人気だそうじゃないか」
「だから疲れるんだよ。ひっきりなしに呼ばれるんだよ?」
「恐れられるよりは良くないか?」
「………まぁね」
「そのまま皆と仲良くなってくれれば良いんだがな」
「ま、考えておく」
「そうか」
そう言った慧音の顔は笑顔だった。
今まで人間とは最低限の接触しなかった妹紅が「考えておく」と言ったのだ。
それまでに比べれば格段の進歩と言えるだろう。
慧音からすれば、これが妹紅にツケを利用して従者喫茶に送り込んだ理由だ。
なんらかの共通の話題を作れば里の人間とも接点が出来るかも知れない。
その接点から妹紅に人間と仲良くして欲しいと思っての事だった。
(焦らなくても良い。ゆっくりで良いんだ)
慧音はそう思いながら夕飯の準備へと向かって行った。



午後6時・マヨヒガ

「お邪魔するわよ~」
冥界のお姫様、西行寺幽々子がマヨヒガの紫の家へとやって来た。
無論、お伴の妖夢も連れて。
「いらっしゃい、幽々子」
「2年連続で悪いわね、紫」
「気にしない気にしない♪」
「今年は閻魔様と小町さんは来られないのですか?」
妖夢が紫に問い掛ける。
因みに、藍は奥で晩御飯の支度中だ。
「まだ勤務時間内だもの。終わったら一緒に来ると思うわ」
「あ、なるほど」
閻魔様の勤務時間は半日ごとのシフト制だ。
そして、現在映姫は勤務時間だった。
「っと、私は藍さんを手伝ってきます」
そう言って妖夢は台所へと向かった。
「あらあら。お客なんだから待ってればいいのに」
幽々子がそう言う。
「ま、そこが妖夢の良い所じゃない?」
「そうね~。悪い所、でもあるけど」
「そうね」
幽々子と紫はお茶を飲みながらそんな風に話をしていた。
「お邪魔します、藍さん。手伝いますよ」
「やぁ、妖夢。いらっしゃい。だが、客人は居間で待っていて貰えるかな?」
台所にやって来た妖夢に藍はそう返す。
「2年連続でお世話になるんですからそうも行きませんよ」
「やれやれ。相変わらず固いな」
「私も居るから大丈夫ですよ!」
藍の隣に居る橙もそう言う。
「でも、今夜は早めに済ませなければいけないのでしょう?」
「ふむ……確かにな」
二人が言って居る事は例の号外の事だ。
大々的に広告して居る事に紫が絡んでいると来れば、当然、藍が知らない訳はない。
そして、文が白玉楼にだけ号外を配らないと言う事もない。
二人がその事を知っているのは必然だった。
「そう言う訳で、お手伝いさせて頂きますよ」
「…解った。頼もう」
藍も少し考えたのち、そう言った。
「橙はそっちの醤油を取ってくれ」
「はい!」
橙は主に料理に参加すると言うよりは藍に言われて物や道具を調達する役目だった。
「しかし、紫様も何故あのような事を?」
「さてな。まぁ、紫様の事だから何かお考えがあるのだろう」
料理をしながら妖夢と藍は会話を続ける。
二人とも料理は手慣れて居るので、その程度の事は余裕なのだ。
「しかし、あの妖怪が良くOKしたものですね」
「ああ。それは私も不思議なんだ」
「藍さんも経緯は知らないんですか?」
「実を言うと、私も鴉天狗の号外で初めて今回の事を知ったんでな」
「そうなんですか?」
「ああ。で、紫様に問い掛けてみたが、まぁ、まともな返答が返ってくる筈もなく、な」
「なるほど………」
妖夢とて幽々子や藍程で無いにしろ紫の事は知っている。
なので、まともな返答が返ってこない、と言う事に疑問は持たない。
「まぁ、紫様の事だから周りの被害については既に対策済みでしょうが」
「その辺りの心配はあるまい。場所が場所だしな」
「ですね」
喋りながらも二人は高速で料理を仕上げていく。
雑談をしながら一流の料理を作り上げていく。
常人が居れば間違いなく目を奪われる光景だ。
「橙。食卓に皿や箸を並べて来てくれ」
「はい!」
藍に言われて橙が指示に従う。
「橙ちゃんに料理は教えないんですか?」
「もう少ししたら教えようかとは思っているよ」
「まだ早い、と?」
「そうだな。まだ式としては日が浅いからな。まぁ、それもそう遠くはない話さ」
「う~ん………そうすると、いずれ藍さんみたいになるんですかね?」
「橙は私の式だからな。式を貼る私がもっと高度な式を扱えるようになり、それを橙が使いこなせるようになれば、可能性はあるな」
「私もうかうかしてられませんね」
「ははは、確かに。呆けて居ると橙に抜かれるやもな」
「お師匠様に追い付きたいと言うのも有りますが、藍さんに追い付きたいと言うのも有るんですよね」
「ほう?それは妖忌と私が同等だとでも?」
「…………実際どうだったんですか?」
妖夢のこの質問は純粋に興味本位だった。
「ふふふ………どうだったんだろうな?」
が、藍は答えなかった。
「う~………」
流されてしまった事に妖夢は唸った。
「妖夢が私や妖忌に近づけばきっと解るさ。さ、私の方は出来たぞ」
「あ、私も出来ました」
「では、持って行くとしようか」
「はい」
会話を切り上げ、二人は居間へと料理を持って行き、食事が始まった。



午後9時

「はい、出来たわよ」
霊夢が年越し蕎麦を笊(ざる)に載せて持って来た。
「よ、待ってました!」
魔理沙が手を叩いてそれを歓迎する。
「やっぱ年越しはこれよね」
幽香も心なし嬉しそうにしている。
「あら、結構良いお蕎麦なんじゃない?これ」
アリスが蕎麦を見て言う。
「最近じゃ従者喫茶の手伝いのお陰で収入が結構安定してるしね」
「巫女の収入源がバイトって言うのもなぁ………」
「しょうがないじゃない。お賽銭が相変わらずなんだから」
「それにしても奮発してるじゃない」
幽香が言う。
「ま、一応この後手伝って貰うんだから、これくらいはしないとね」
「あら、そう言う気遣いも出来るのね」
アリスがそう言う。
「失礼ね」
「ま、普段が普段だからな」
霊夢の言葉に魔理沙がそう返す。
「ま、それは兎も角。食べない?」
「そうね。それじゃ頂きましょう」
幽香に促されて霊夢がそう言い、そして4人は食べ始めた。


「ふぅ……食った食った」
蕎麦を食べ終えて魔理沙がそう言った。
「美味しかったわ」
「ええ」
幽香の感想にアリスも同意する。
「それは良かったわ」
霊夢も色んな意味で満足気だ。
「ん?」
ふと、幽香が何かを感じ取った。
「どうした?」
魔理沙が尋ねる。
「おかしいわね………人間、いえ、妖怪も含めて何故か神社の麓に集まってるわ」
「え?今の時間から?」
アリスの言うとおり、まだ時間は午後9時半少し前だ。
初詣に来るにしても早すぎる。
出店の準備ならいざ知らず。
「何かあったのかしら?」
霊夢が呟く。
「何かあったんじゃなくて、今からあるんじゃないですか!」
突如として現れた声。
「貴女……鴉天狗の」
「どうも!清く正しい射命丸です!」
アリスの言葉に続いて文々。新聞の発行者、鴉天狗の射命丸文が自己紹介をした。
「で、どう言う事?今からあるって言うのは?」
「何を言ってるんですか。今回の企画の参加者が」
幽香の質問に対して呆れたように文がそう言った。
「幽香?」
「知らないわよ」
霊夢の問い掛けに幽香はそう返した。
「そんな筈はありませんよ。号外はご覧になったでしょう?」
「ああ、あれ?ゴミ撒き散らされたかと思って読まずに丸めて捨てたわ」
「酷っ!!ちゃんと読んでくださいよ!!」
「天狗の新聞って適当な事ばっかりじゃないの。年末にそんな与太話に付き合う気はないわよ」
「与太話じゃありませんよ。じゃあ、これ読んでみてください」
文は霊夢とのやり取りを終えてから件(くだん)の号外を出して渡す。
「何々………」
霊夢は今度はちゃんと目を通す。
「本日午後10時、博麗神社の麓にて妖怪同士の1対1の真剣勝負を開催!第一回となる今回は八雲紫対風見幽香!!共に最強の称号を持つ者同士、ついにその実力が公開される!?」
霊夢は書いてあった事をそのまま読み上げた。
「何これ?」
霊夢は幽香に尋ねた。
「だから、知らないわよ」
「でも、お前が出る事になってるぜ?」
魔理沙も尋ねる。
「大方、あの隙間妖怪が勝手に話進めたんでしょ」
アリスがまさにズバリ真実を当てる。
「私は八雲紫さんにこの事を大々的に伝えろとだけ頼まれましてね」
文がそう言う。
「なるほど。やられたわね、幽香」
「時間になっても現れなければ逃げたって言われるって訳ね………あの隙間め」
幽香が笑みを浮かべて言う。
「何で笑ってるんだ?」
魔理沙が尋ねる。
「ふふ………良いじゃない。最近弾幕ごっこばかりで本気の殺し合いなんて忘れてたもの…………相手にとって不足はないわ」
その笑みを見て文以外の3人は戦慄を覚える。
無理もない。
幽香クラスが弾幕ごっこで無く、ルール無用の殺し合いをすれば人間及び準備の出来て無い魔法使いなど相手になる訳がない。
「良いわ。時間になったら出向いてあげようじゃないの。先方にそう伝えなさい、天狗」
「解りました。伝えておきましょう。では、会場の方でお待ちしてますよ」
そう言うと、文はあっという間に博麗神社から消えて行った。
「って、幽香。あんたと紫が暴れたらウチの方に洒落にならない被害が出そうなんだけど?」
「紫が出るって事は、これは紫の思い付きだろう?あいつがそんな事に気を回さないとは思えんがな」
「確かにね」
魔理沙の意見をアリスが首肯する。
「それは私も同感ね。心配する必要はないわ、霊夢」
「そう?まぁ、ウチの方に被害出たら洒落にならない被害請求出してやるけどね」
「それは怖いわ」
と言いつつも幽香は笑顔だ。
「それじゃ、私も後片づけ済んだら観戦に行こうかしら」
「なら、私達は先に行って席を取って置くぜ」
「今からじゃ既に遅い気もするけどね」
アリスの言う事も尤もだろう。
既に麓には相当数の人と妖怪が居るのだから。
「まぁ、先に行ってるぜ」
そう言って魔理沙とアリスが神社を出て行き、霊夢も食器洗いへと向かった。
一人残された幽香は部屋の中で薄く笑っていた。



午後9時50分・博麗神社の麓

「さて、現在の時刻は午後9時50分!試合開始の10分前です!!」
実況席の文がマイクを使って叫ぶ。
因みにマイクは河童提供だ。
「実況は私、清く正しい射命丸こと射命丸文と!」
「解説は八雲紫の式、八雲藍でお送りする」
高レベルの妖怪同士の戦いとなると解説にも高レベルな者が求められる。
加えて、今回の参加者の片方はあの八雲紫だ。
余程の物で無い限りその能力、行動を解説は出来ない。
そう言う事で、紫を最もよく知る二人の一人、藍が選ばれた。
因みにもう一人は言わずもがな、幽々子だ。
「さて、開始10分前ですが、まだ両選手ともに現れませんね」
「風見幽香はともかく、紫様は時間ギリギリに境界を開いて現れるよ」
「なるほど。流石紫選手の式。良く行動を理解してらっしゃる」
「残念だが、この程度では理解しているとはほど遠いな。まぁ、その話は長くなるからここではしないが」
因みに試合場と思しき場所には大きく円が描かれて居る。
円の直径はざっと見積もって100メートルくらいだ。
恐らく、その中が試合場なのだろう。
「ん?どうやら現れたようだな」
「え?」
文は藍の方を向く。
すると、藍は神社の方を見上げて居た。
「神社ですか?確かに先ほどまで神社に居ましたが………って、あぁ!?」
文が喋りながら驚いた。
が、驚いたのは文だけでなく、その場に居た全員だろう。
何故なら、神社の上の方から桜が少しずつ咲いて来ているのだから。
「季節外れの桜………ま、まさか!?」
「凝った演出だな」
それは幽香が歩くと同時に自分の居る場所の桜を能力を使って咲かせていたからだ。
桜の開花と共に優雅に現れる幽香。
それはとても様になっていた。
そして、トレードマークの日傘を差しながら幽香が試合場に姿を現した。
「風見幽香選手!フラワーマスターの名に恥じぬ優雅な姿で入場です!!」
文の言葉に会場も沸き立つ。
「派手な演出ねぇ」
「風見幽香にしか出来ない演出ですね」
見物に来ているレミリアと咲夜がそう言う。
「お前ならどう言う演出をするんだ?」
魔理沙がレミリアに問い掛ける。
霊夢、魔理沙、アリスはレミリアの側に居た。
顔見知り故、予め良い位置に陣取っていたレミリアの側に行く事が出来たのだ。
「私ならそうね………月をバックに空中から現れるわ」
「それは素敵ですわ、お嬢様」
「確かに、吸血鬼らしいわね」
アリスが咲夜の意見に同意した。
「さえ、紫はどう対抗するのかしら?」
霊夢がそう呟いた。
その時



バチッ………



「ん?」
試合場に円形に電気が走った。
そして



ガシャアァァァァァンッ!!!



「ら、落雷!?」
「晴れてるのにか!?」
文も藍も驚く。
そして
「って、あぁ!?八雲紫選手!落雷と共に入場!!」
落雷のあった場所にいつの間にか紫が姿を現していた。
「衣玖、ね」
やはり観戦に来ていた天子が呟く。
「いく?」
一緒に居た大妖精が尋ねる。
「口煩(うるさ)い竜宮の使いよ。雷を操る力を持ってるわ」
天子がそう説明する。
「その竜宮の使いがなんだって境界の妖怪の手伝いを?」
やはり一緒に居たレティが尋ねる。
「さぁ?生真面目なあいつにしては珍しいわね、こんな事に力を貸すなんて」
「そんな事より、サイキョー同士なら何であたいが選手じゃないのよ!!」
チルノが騒ぐ。
「あんたじゃサイキョー過ぎて相手にならないからじゃない?」
天子がそう言う。
「そ、そうよね!?やっぱりあたいったらサイキョーね!!」
その答えにチルノは満足言ったようだった。
「チルノの扱い、解ってるわね」
「そりゃ何度も顔合わせてりゃね」
小声でボソボソと会話するレティと天子だった。
「派手な登場ね。八雲紫」
「貴女ほどじゃないわ。風見幽香」
二人とも優雅に笑顔でそう交わす。
パッと見ならとても絵になるのだが、二人を包む気配は尋常じゃない。
「さて、選手が二人とも姿を現した所でルールの説明です」
文がそう言う。
「勝敗の付け方は、まず相手を戦闘不能にする。相手が降参する。試合場から出るリングアウトの3つです」
「因みに、戦闘不能には死亡も含める」
藍の追加説明に場内もざわめく。
一種のお祭りみたいな物だろうと思っていた者が大半だからだ。
「試合場とはそこに大きく書かれて居る円の内側で、上空から地下まで縦方向に制限はありません」
「尚、上空では場外の識別が難しい為、白黒はっきりつける程度の能力をお持ちの閻魔様に判定して頂きます」
「まったく、こんな事に私の能力を使わせないで欲しいのですが」
藍の解説によって紹介された閻魔こと、四季・映姫・ヤマザナドゥがそうぼやく。
「今回はスペルカードルールによる弾幕ごっこではない為、肉弾戦も当然有りです!」
「まぁ、早い話が妖怪同士の純粋な戦いが見れると言う訳だな」
文と藍が説明を続ける。
「最後に、60分の制限時間を設け、60分間決着がつかない時は、これまた閻魔様の判定により勝負を決します!」
「さて、それではそろそろ時間も迫って来たようだ」
もうじき10時になる。
「それでは……………勝負を開始してください!!!」
文の言葉と共に歓声が巻き起こり、そして試合が開始された。
「貴女とは一度思いっきりやりあってみたいと思ってたのよ」
幽香が紫に言う。
「そう?まぁ、でも私も偶には思いっきり運動してみたくなるのよね」
紫はそう返す。
「それじゃあ、存分に暴れましょう。久々に手加減なしで遊べそうだわ」


ゴッ!!!


幽香の周囲に凄まじい妖気が巻き起こる。
観客がどよめく。
幽香の本気などそうそうお目に掛かれる物ではないからだ。
「うわ!ただの自称かと思っていましたが、最強を名乗る実力は伊達ではありません!!」
「これほどの力を有していたか………」
実況の文と解説の藍も驚く。
「行くわよ」
幽香はそう言うと同時に姿を消した。
対する紫は傘をさしたまま、微動だにしない。
そして


ドドドドドドッ!!!


紫の背後から6発の弾が現れた。
因みに、一発一発が並みの妖怪なら即死クラスの威力だ。
対する紫は振り向いて少し腕を動かしただけだ。

「た、弾がずれた!?」
「違う。紫様が最小限の動きで弾を逸(そ)らしたんだ」
弾幕は全て紫を逸れて行った。
そして、その内の一発が


パァンッ!!


空中で爆(は)ぜ、そして幽香が姿を現した。
「嫌な奴ね」
「お褒めに預かり恐悦至極」
姿を現した幽香に紫がそう返す。
「じゃ、今度はこちらから行きますわ」
紫はそう言うと、傘を畳んだ。
「傘を、畳んだ?」
「まさか!?」
藍が何かに気づいたように叫ぶ。
そして、紫は左手を前に、傘を持った右腕を引き、突きの体勢を取る。
「避けられて?」
そう言うと



ドンッ!!!



凄まじい勢いで幽香に向けて突進した。
「ちぃっ!!」
間一髪で避ける幽香。
「あ、あれは!?」
「牙○!!突進から放つ凄まじい威力をもった突きだ!!」
藍が紫のはなった技を解説する。
「中々の攻撃だったけど、隙だらけよ!!」
避けた幽香が突進して隙だらけの紫に弾幕を放つ。


ズガンッ!!!


「がっ……!?」
しかし、その前に何かが幽香の脇腹に直撃した。
「い、今の光は!?」
「紫様の攻撃の一つ。高速飛行物体だ」
境界を開き、そこから高速の飛行物体を飛来させる攻撃。
名前のとおり、高速で飛来する為、気付くのが少しでも遅れると避けるのは難しい。
不意を打たれたのなら直撃して当然だ。
「避けられる事を計算に入れて居た、と?」
「当たったら当たったで追撃にも使う予定だっただろうがな」
文と藍が実況と解説をする。
「今度は貴女が隙だらけね」
いつの間にか紫が幽香の眼前に現われて言う。
幽香に向かってかざした手には妖力が集められている。
至近距離からの高密度の弾幕。
食らえば幽香と言えども無傷では済まない。



ドンッ!!



「っ!!」
だが、今度は紫が吹っ飛ぶ番だった。
「足元注意よ。ちょっと言うのが遅かったみたいだけど」
突然、紫の足もとから弾が飛来し、紫の顎を打ち抜いた。
「ええ!?い、今のは何ですか!?」
「地面………花か!!」
「は、花!?」
「風見幽香は自在に花を咲かせ、更にはその花からも弾幕を撃たせられると聞いた事がある」
「じゃあ、今のは」
「恐らく、地面に花を咲かせて地上から攻撃したのだろう」
「何と言う攻防………」
感心して居るのは文だけでなく、見ている者の殆どがそうだった。
「ふふ………やってくれるじゃない」
「お互いさまよ」
二人とも距離を保ったまま視線を交わす。
「じゃあ、今度は少し強めにいくわよ」
そう言うと、後退して距離を開きつつ紫は上昇した。
対して幽香は地面に降り立った。
「ふ、二人とも大きく距離を……と言うか、紫選手が上空に上がり、幽香選手が地面に降り立ちました」
「どうやら、お互いに大技を放つのでしょう」
藍の言葉に場内が大きくざわめく。
大技と言う事と、自分達に被害は来ないかと言う事だ。
「ご来場の皆様、御心配なく。八雲紫選手により既に境界が引かれ、両選手の流れ弾の類は試合場から出る事は御座いません」
ざわめく場内に文がそう説明する。
「そうでもしないと流石に洒落にならんからな」
藍がそう続けた。
「じゃあ、行くわよ」
「こっちも、行くわよ」
お互いに攻撃準備に入る。
紫はいくつもの境界を開く。
幽香は自分の周りの数多(あまた)の植物を生やさせる。
「受けなさい」
そして、互いに攻撃準備が整い、紫が先に動く。




「ゲート・オブ・ユカリン(紫の隙間空間)!!」




紫のその叫びと共に境界から無数の武器が顔をのぞかせ、そして幽香に向けて射出される。
「それならこちらも」
続いて幽香も動く。




「アンリミテッド・フラワーワークス(無限の咲花)!!」




生えて居た植物たちが一斉に花を咲かせ、そしてその花から弾幕が撃ち出される。
「ななななな!?何ですかこれ!?」
「紫様は隙間から武器を投擲(とうてき)し、風見幽香は絶え間なく花を咲かせて、その花から弾幕を放っているんだ!!」
花から打ち出される弾幕は一対一では紫の投擲している武器に打ち負ける。
が、数に物を言わせて何発も撃ち込んで撃ち落としている。
「むぅ!?あれらは!!」
「香霖!?いつの間に!?」
何時の間にやら横に居た霖之介に魔理沙が驚く。
「そんな事はどうでも良い。それよりもあれらは………!!」
「知っているのか!?香霖!!」
「魔剣グラム!ティルフィング!ミストルティン!ブリュンヒルド!聖剣ファーウェル!エクスカリバー!ゲイボルグ!無限刃!正宗!虎徹!村正!メサイヤンソード!ラグナロク!アルテマウェポン!ブリューナク!ミョッルニル!ロンギヌス!火竜鏢!太陽針!竜槍スマウグ!!」
「何か、一本駄剣が混じってたのは気のせいか?」
魔理沙が突っ込みを入れた。
「なんか、凄まじい武器を放ってませんか?紫選手」
文が呟く。
「まぁ、そうだが、ただ放ってるだけだからな。しっかりとした使い手が使っているのとは威力が段違いだ。無論、悪い意味でな」
それ故に、幽香の弾幕に相殺されているのだが。
仮にそれぞれの正当な使い手が力を以(も)って投擲してたのなら、一つ落とすのにさえ一苦労だ。
まぁ、そんな事になったらその時点で多対一となる訳だから、全てを幽香に防げないのは無理のない話だが。
「じゃ、オマケでこんなのどうかしら?」
紫は隙間から出てきた武器の一本を掴む。
「さ、行きますわよ」
「Stand By Ready」
「つ、杖が喋った!?」
紫の手にした杖が紫の言葉に呼応するように喋った。
「な、なんだあれは!?」
どうやら藍も知らないようだ。
そして、その杖に付いてる宝石のような部分に力が集約される。
「小癪」
対して、幽香も傘に力を込める。
「耐えられて?」
笑みと共に紫はそう言い



「シュートッ!!!」



まるでマスタースパークの様な光線をぶっ放す。



「マスタースパーク!!!」



幽香も負けじとマスタースパークを放つ。



バチィィィィッ!!!



互いの砲撃はまったくの互角で、押し合いを繰り広げる。
「やるじゃないの、八雲紫!!」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
二人とも力を全く緩めない。
「こ、これは凄い!!二人ともまったくの互角の撃ち合いです!!」
「完全に均衡して居るな」
砲撃に集中している為か、お互いに境界からの投擲も花からの射撃も止まっている。
「吹き飛びなさい!!」
「貴女がね!!」
しばし二人の撃ち合いは続き、そして



バチンッ!!!



互いの砲撃は弾けて相打ちとなった。
「ちぃっ!!」
幽香が舌打ちをして二撃目の準備に入る。
が、見上げた先に紫の姿はなかった。
「何処(どこ)を見て居るのかしら?」
紫は砲撃が相打ちになると同時に一気に急降下し、そして幽香の背後に回り込んだ。
そして、至近距離で先程の突きの体勢に入っていた。
「貴女こそ、何処を見て居るのかしら?」


グッ………


気づくと、紫の足は植物に絡め取られて居た。
「残念だったわね。ここが私のテリトリーだって言う事を忘れたのかしら?」
確かに、こうして植物を生やしている部分は完全に幽香の領域だ。
足を絡め取られた紫に幽香の攻撃を逃れるすべはない。
そして、幽香は二発目のマスタースパークの射撃準備に入る。
が、紫は
「ふふふ………残念だったのは貴女の方よ。生憎と、私の狙いはここからですわ」
不敵にそう笑い、そして、上半身を反らした。
幽香は何かと思ったが、次の瞬間、本能で危機を察知してマスタースパークの準備を解除して防御態勢に入った。
もし、幽香のこの行動に少しでも遅ればあればその時点で勝敗は決していただろう。
何故なら



「牙○零式!!」



「がっ!!?」
紫が放った技はそれほど洒落にならない威力を持っていたからだ。
「なぁ!?幽香選手大きく吹っ飛ばされたぁ!!!」
「零式!?完成して居たのか!!」
「何ですか!?零式って!!」
「先ほどの牙○の派生の一つだ。ゼロ距離から上半身のバネだけで武器ごと放つ。並大抵の修練と筋力では放てんが………」
「流石最強と称される妖怪。その力も半端じゃないと言う訳ですね」
「人間でも直撃させれば食らった場所を吹っ飛ばすくらいの威力だからな」
「うあ………っと、幽香選手、場外ギリギリの所で踏ん張った!!」
「あれを場外にならずに耐えるか…………」
幽香は開いていた傘を閉じ、そしてそれを盾として攻撃を防いだ。
「あら?場外になると思ったのに」
技と共に放った傘を境界を開いて回収しつつ、紫は言う。
「中々やるじゃないの。今のはちょっとヤバかったわ」
幽香はそう返す。
「今ので場外になっていれば楽に終われたのにねぇ」
「お生憎様。楽には終わらせてあげないわよ」
「あら、まだまだ楽しませて貰えそうね」
「勿論よ」
幽香は言いつつ、マスタースパークを放つ。
「魔理沙さんと違ってポンポンとマスタースパークを撃ちますね~」
「向こうが元祖、と言う事もあるだろうが、何より向こうは自分の力を撃ち出しているだけだからな。八卦炉と言う媒介を介さなければ使えない魔理沙とは運用方法がまるで違う」
「なるほど」
「まぁ、魔理沙にとっては勉強になるかもな」
「だ、そうよ?」
霊夢が隣に居る魔理沙に問い掛ける。
「言われるまでもなく技術を盗み見てる最中だぜ」
「勤勉ねぇ」
「魔法使いなんてそんなものよ」
呆れがちに言う霊夢に魔女の友人が居るレミリアが言う。
「パチュリー様もさっきからずっと戦いに見入ってますしねぇ」
少し離れた場所で戦いを凝視して居るパチュリーを見ながら咲夜もそう言った。

ドンッ!!

ズドドンッ!!

ズガガガガガッ!!!

上空で、地上で、弾幕やら肉弾戦やらが繰り広げられる。
勝利条件の戦闘不能に死亡が含まれていることから血生臭くなる事を予想している者も多かった。
が、蓋を開けてみれば、高レベルな者同士の美しい戦いが繰り広げられていた。
いつの間にか、皆、戦いに魅入られて居た。
「さて、そろそろ決着をつけましょうか」
「やってみなさい」
紫の言葉に幽香が受けて立たんと言わんばかりに返す。
「それじゃ、お言葉に甘えて♪」
紫が傘に力を込める。
そして



「マスタースパーク!!バージョンゆかりん♪」



紫色のマスタースパークをぶっ放した。
「なんと!?紫選手までマスタースパークを!?」
「既に何度か見てるからな。技の概要さえ掴めば扱う事くらい紫様にとっては難しくはない。まぁ、流石に固有の能力が干渉してくると無理だろうが」
「ったく。魔理沙と良い、人の技を盗まないで欲しいわね」
そうは言うが、幽香はマスタースパークを避けようとはしなかった。
「盗んだ技術は認めるけど、まさか、その程度でどうにかなると思われてたのかしらね?」
幽香はマスタースパークの方に傘を向けた。
そして



バシュゥンッ!!!



「はい!?紫選手のマスタースパークが霧散しました!!」
「ま、当然かもしれん。自分の技の長所短所を知らん奴はそうそう居らんだろう」
「つまり、自分の技故に短所を解っていたと?」
「と言うより、自分の技だからこそ、その技の分解方法の様な物を知っているのだろうな。今の紫様が撃ったのは魔理沙と違って全くアレンジを加えられてなかったしな」
「って、紫選手は何処に!?」
マスタースパークを放った紫は既にその場から消えて居た。
「勿論、あの程度でどうこうなるとは思ってないわよ?」
自分の技を見せれば幽香の性格からいって逃げずに打ち消す方を選ぶ。
そう予測して居た紫はマスタースパークを囮に幽香の背後に回り込んでいた。
そして、再び牙○の構えを取る。
「それじゃもう一つ。私が傘からしかマスタースパークを使えないと思われてたのかしらね?」
笑顔で振り向き、紫の方に手を向けながら幽香が言う。
その手には既に力が込められていた。



「マスタースパーク!!」



ドウッ!!!


「ああっと!!なんと、幽香選手、傘からでなく手からマスタースパークを射出!!!」
予想外だったのか、紫はマスタースパークを直撃して落下していった。
「妖怪の私が撃つのに触媒なんか必要ないわ。先入観は良くないわね」
落ち行く紫に向かって言う幽香。
「貴女に贈る言葉はそうね…………」
傘を差しながら幽香は言う。




「相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北している。かしら?」




「!?」
背後から聞こえて来た紫の声に驚いて振り向く幽香。
「あ、あれ!?あの落下していく姿は藍さん!?って、あぁ!?解説席にいつの間にか藍さんが居ません!!」
落下していく紫、もとい藍を見て文が叫ぶ。
「八雲家奥義・変わり身の術よ♪」
先ほどのマスタースパークを直撃する瞬間、境界を開いて藍を引きずり出し、そして自身の身代わりにした。
なんとも酷い話である。
「じゃあ、覚悟は良いかしら?」
紫の手には既にマスタースパーク級の力が集約されていた。
「くっ!!」
幽香が避けようとしてか、上半身を反らす。
「無駄よ………?」
が、その様子に紫は違和感を覚えた。
瞬間、ハッとなって急いで砲撃を撃ちだそうとする。
「遅い!技を盗めるのが自分だけだと思わない事ね!!」
幽香のその言葉と同時に、両者が攻撃を放つ。



ドウッ!!!



ドガッ!!!



「がっ!!」
「ぐぅ!!!」
両者ともに弾けるように吹き飛ぶ。
「な、何が起きたのでしょうか!?」
「説明しましょうか?」
そう言って解説席に来たのは幽々子だった。
「あ、これは幽々子さん。お願いできますか?」
「ええ、良いわよ~」
幽々子はそう言うと席に着いた。
本当の所を言えば、文ほどの実力者が二人の戦いを見えていない訳がない。
が、文はあくまで実況役であり、解説者では無い。
その役に徹している為に、解説を行わないのだ。
幽々子もその辺りを汲んでの助け船だったりする。
「紫の攻撃は説明は必要ないわね?」
「まぁ、マスタースパークみたいな強力な妖力を込めた砲撃ですね」
「ええ、そうよ。そしてあの風見幽香が放ったのは、さっき紫がやった何とか零式と言う奴ね」
「先ほどの!?では、幽香選手も相手の技を盗んでいたと!?」
「まぁ、あの二人くらいになると余程特異な技じゃない限り少し見れば盗めちゃうでしょうしね~」
「なるほど。っと、二人とも空中で何とか留まりました!!」
文の言うとおり、二人とも空中で踏ん張った。



「場外!!」



が、突如として映姫がそう叫んだ。
「え?あ、ああ!!た、確かに場外です!!」
良く見れば、二人とも円の外で止まっている。
「あ、でもどっちの方が先に出たんでしょう?」
「勝者は………」
映姫がそう言い、皆が固唾を飲んで結果を待つ。





「風見幽香!!!」





ドッと歓声が上がる。
「僅か、ではありましたが八雲紫の方が場外に出るのが早かったです」
「なるほど!お聞きの通り、第一回、妖怪同士の真剣勝負は風見幽香選手の勝利となりました!!!」
文の言葉に再び会場が沸き立つ。
「あ~あ、負けちゃったわ」
紫が地面に降り立ちながらそう言う。
「ま、勝ちは勝ちと言う事にしておこうかしら」
幽香も地上に降りて言う。
「霊夢~汚れちゃったから温泉使わせて~」
紫が霊夢の所に来て言う。
「私も入るわ。色々汚れたから」
幽香も来てそう言った。
「まぁ、良いけど。あんたら本気出すと凄いのね」
霊夢がそう言った。
「本気?」
「今のが?」
二人とも意外そうに言った。
「まさか、あれで本気じゃなかったのか?」
魔理沙が驚いて尋ねる。
「当然じゃない」
「なんで好き好んで大衆の面前で本気見せなきゃならないのよ」
二人してそう返す。
「あ、あれで本気じゃないですって?」
アリスが顔を引きつらせながら聞き返す。
アリスにしてみれば十分にハイレベルな戦いだったのだから。
「貴女だって余程じゃないと全力見せないでしょう?手の内をさらす事がどれほど危険か知ってるんだから」
「だったら、あんな余興で全力見せる訳無いでしょう?」
周りでこの言葉を聞いていた者達が改めてこの二人の末恐ろしさを思い知った。
無論、レミリアは除くが。
「そう言えば、あんたあんまり境界の能力使ってなかったわね」
「逃げ回ってるの見てたってお客様が楽しくないでしょう?こう言うのはやっぱり打ち合わないと♪」
霊夢の言葉に紫はそう返す。
「だが、お前はさっき神社で偶には本気の殺し合いがしたいとか言ってなかったか?」
再び魔理沙が幽香に尋ねる。
「相手が本気出してくれてればね。ま、案の定本気出してこなかったけど」
「本当の意味で本気出したら観客なんて呼べないわよ」
幽香の言葉に紫がそう言う。
その言葉にそれもそうだと一同納得する。
「それでも久々に体動かせたからそれなりに満足してるけどね~」
「そうね。偶には運動しないとね」
「運動……ねぇ………」
あの戦いを運動で済ませてしまう二人に劣等感の様な物を感じているアリスだった。
「まぁ、そんな事より温泉温泉♪あ、傘返すわね」
そう言いながら幽香が零式で放った傘を返す紫。
「ありがと。それじゃ、勝手に入ってるわよ、霊夢」
呆け気味の霊夢を無視して二人とも温泉へと向かって行った。
「ついでだから私達も入らせて貰うわね、霊夢」
レミリアがそう言った。
「え?あ、ああ、好きにして良いわ」
まだ呆け気味ではあるが、霊夢はそう返した。
「あの程度で驚いてるの?スペルカードルールに縛られなければ私達だってあの程度楽に出来るわよ?」
レミリアもそう言う。
「やれやれ………ちょいとした屈辱だな、こいつは」
魔理沙はそう言った。
「そうね」
アリスも同意した。
「はぁ……ちょっと私も温泉入ろう。少し頭切り替えたいわ」
「それが良さそうね」
咲夜が霊夢にそう言った。
そして、霊夢達は温泉へと向かって言った。



午後11時・博麗神社・温泉

「ん~…………良いお湯♪」
紫が湯船に浸かりながら言う。
「ふぅ………二回目だけど、やはり良いわね」
幽香もそう言う。
「それにしても、あまり嬉しくなさそうだな、幽香」
魔理沙が幽香に尋ねる。
「僅差の場外なんて引き分けと変わんないわよ。相手を打ちのめしても居ないのに勝った気になんてなれないわ」
「それでも勝ちは勝ち。負けは負けよ」
幽香の言葉に紫がそう言う。
「と言うか、何でお前までマスタースパークが撃てるんだ?」
「あら、あの技は属性やら術式やら複雑な物を含んでいませんもの。真似るのは容易いわよ?」
「まぁ、そうよね」
紫の言葉を幽香が同意する。
「あれは妖力の砲撃の様な物。一定以上の妖力を持ってる者なら労せず撃てるわよ」
幽香が更に続けた。
「そんな物が貴女の切り札で良いの?」
アリスが問いかける。
「さて、実際はどうなんでしょうね?」
幽香はその質問の回答をはぐらかした。
「馬鹿ね。使うだけなら簡単よ。問題はそれを使いこなす事。そうでしょう?風見幽香」
霊夢達の背後から咲夜を伴ってレミリアが現れてそう言った。
「そうね。ただ弾を撃ちだすだけなら皆出来るわ。でも、皆それに工夫をしている。私のあれもそう言う物よ」
幽香はレミリアの言葉にそう答えた。
「ったく、本当に空恐ろしい事」
霊夢がそう呟く。
「だったらもう少し私達の事を畏れたら?」
「嫌よ。面倒くさい」
幽香の言葉に霊夢はそう返した。
「面倒って………まぁ、霊夢らしいけど」
幽香は呆れ気味にそう言う。
「何かにつけて面倒面倒は良くないわね、博麗の巫女」
そう言って現れたのは永琳だった。
「面倒な物は面倒なのよ」
が、霊夢は特に改める事はしなかった。
「そんなんだから信仰が溜まらないんじゃないの?」
続いて鈴仙も現れ、湯船に浸かりながらそう言う。
「まぁ、それが霊夢の良い所よね。悪い所でもあるけど」
更に妖夢を連れて幽々子も現れた。
気が付けば温泉内には色々な妖怪が集まっていた。
「露天風呂に浸かりながら花見に月見か。風流だな」
魔理沙が空を見上げて言う。
「これで酒でもあれば言う事なしだね」
その言葉に呼応するように神奈子が言う。
「せめて年が明けるまで控えて下さい」
「じゃ、年明けしたらオッケーって事だね?」
早苗が釘を刺し、その上げ足を取る諏訪子。
「あ~………このまま年越しってのも悪くないねぇ」
小町は湯船に浸かったまま空を見上げながら言う。
「悪くないね~」
妹紅がそれに同意した。
「って、霊夢。こいつらから代金は徴収しないのか?」
魔理沙が霊夢に尋ねる。
「ん~………一部からは貰ってるわ。それ以外は、まぁ、サービスって事にしておいてあげる」
「タダより高い物はないわね」
「失礼な」
アリスの言葉に霊夢はそう返す。
「代金?いつの間に払ったんですか?」
早苗が諏訪子と神奈子を見ながら尋ねた。
「入る前にだよ、勿論。正確には払う約束だけどね」
諏訪子はそう言った。
「そんな。お二方に払わせる訳には参りません。私が払います」
「ああ、そのつもりだから問題無いよ」
早苗の言葉に神奈子はそう返した。
「ええ、お任せ下さい」
「ああ、任せるよ」
神奈子は早苗にそうとだけ返した。
「師匠。私達も払ったんですか?」
「ええ、姫が支払いを済ませてるから問題無いわ」
「そう言う事よ。だからゆっくり浸かりなさい、イナバ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「幽々子様、私達も?」
「勿論よ~。でも、もう支払いは済んでるから心配しなくて良いわよ~」
「そんな、私が払います」
「ええ、そのつもりよ」
「……………え?」
妖夢は幽々子の返答に違和感を覚えた。
「支払いは済んでるんですよね?」
「ええ」
「なのに、私が払うのに「そのつもり」とは?」
「言葉通りよ」
「仰る意味が…………」
「簡単な事よ。妖夢に初詣の仕事の手伝いをさせるって事よ」
「はい!?何でですか!?」
「何でって、温泉入りたいじゃない」
「いやいやいやいや!その為に私を売ったんですか!?」
「うん♪」
素敵な笑顔で返事をする幽々子。
「幽々子様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
妖夢の絶叫が木霊(こだま)す。
「ま………さ………か………………」
ギギギィッと音がしそうなモーションで鈴仙が輝夜の方を振り向く。
「何も問題はないわ。そう言ったでしょう?うどんげ」
永琳がそう言い
「ええ。支払いは貴女の体で。ならば何も問題はないわ」
そして輝夜が鈴仙の予想通りの回答をした。
「もうお風呂入っちゃってるから取り消し効かないね、鈴仙♪」
てゐも楽しそうに言う。
「な、何故毎回私がこんな目に…………」
湯船の中で頭だけがっくりと項垂(うなだ)れる鈴仙。
「……………まさかとは思いますが?」
早苗が鈴仙と同じようにゆっくりと首を神奈子達の方へ向ける。
「だから言ったじゃないか。任せるって」
「そうそう」
「な、なんだって分社があるとは言え、敵対神社の手伝いをしなきゃならないんですか!!」
「決まってるじゃないか」
「私達が温泉に入りたいから」
「うあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
身勝手な神に振り回されて居る巫女だった。
「やれやれ、騒々しいわね」
「本当ですね~」
離れた場所で湯船に浸かりながらその様子を見て居たパチュリーと小悪魔が言う。
「どけどけ~!!」
と、パチュリー達の背後から元気な声が聞こえて来たかと思うと。
「いっけー!!」



バッシャーーンッ!!!



何者かが勢いよく湯船に飛び込んだ。
「ぶっ!?」
「ふぬぁっ!?」
そして、その水飛沫は派手にパチュリーと小悪魔にかかった。
「こら!お空!!飛び込んじゃダメって言ってるでしょう!!!」
霊夢がその飛び込んだ者、お空に対してそう怒鳴る。
「え~?そうだっけ?」
「こんの鳥頭が………」
惚(とぼ)けて居るのでなく、本当に忘れて居るお空に霊夢が唸る。
「誰?あれ」
レミリアが霊夢に問い掛ける。
「ん?ああ、前に地下に潜った時に知り合った奴のペットよ」
「相変わらず色んなのに懐かれるのね、貴女」
咲夜が呆れ混じれに言う。
「知らないわよ、そんな事。お燐!お空を見張っておきなさい!!」
霊夢は咲夜に返すと同時に、お空の後から来ていたお燐にそう命じる。
「はいは~い」
お燐の方は素直に言う事を聞いた。
「所で八雲紫。何故今回みたいな催しを?」
唐突にアリスが紫に問い掛ける。
「外の世界じゃ年の瀬に最強を決めるみたいな格闘技の大会が毎年開かれているからそれに倣(なら)ってみたのよ」
紫はそう答えた。
「最近、人間が妖怪を恐れないようになって来ていますからね」
が、その紫の真意を代弁するように映姫が語り始めた。
「あまりにその度が過ぎると均衡が崩れかねません。一度、妖怪の恐ろしさと言う物を人間に再認識させる必要があった。そんな所じゃないですか?」
「なるほど。確かに人間は前より妖怪を恐れなくなっている感じがするからな」
「スペルカードのお陰で気軽に戦えるようになったものね」
映姫の言葉に魔理沙とアリスも納得する。
「まぁ、恐れが消えたからと言って実力差が埋まるとも思えないけどね」
「実際はその通りですがね。昔からの流れを唐突に断ち切るのはあまり良いとは言えないのですよ」
レミリアの言葉に映姫が答える。
「結構好評だったみたいだから、折を見て適当にやろうかと思ってるわ♪」
紫が楽しげにそう言う。
「ま、確かに高レベルの妖怪同士の戦いは壮観ではあったけどね」
霊夢がそう答える。
「でしょでしょ?と言う訳で、次は鬼対鬼ね」
「鬼対鬼?それって萃香とあの勇儀って奴の事?」
霊夢が紫に問い掛ける。
「萃香の方は正解。山の四天王同士って言うのも良いけど、それよりも前から今の幻想郷に知られて居る鬼が居るでしょう?」
ここでの「今の」とは「つい最近の」と言う意味合いだ。
「萃香や勇儀より前に今の幻想郷に知られて居る鬼?」
魔理沙が首をひねる。
「なるほど。血を吸う鬼の事ですか」
映姫が答えを言う。
「血を吸う………あっ」
流石にそれで魔理沙も気づく。
「それは私って事よね?」
血を吸う鬼、吸血鬼のレミリアが不敵に笑いながら尋ねる。
「ええ。どうかしら?」
紫もまた薄く笑みを浮かべながら尋ねる。
「私は構わないわ。相手の鬼が逃げなければ、だけどね」
レミリアはそう返した。
「逃げる?鬼の私が逃げるとでも思っているの?」
唐突に聞こえてくる声。
神出鬼没と言えば、現状では紫以外ではもう一人しかいない。
「私達鬼は挑まれた勝負からは決して逃げないよ」
何かが萃(あつ)まったかと思うと、そこに鬼の伊吹萃香が姿を現した。
「決まりね。何時になるかは解らないけど、次のカードはこれで行きましょう♪」
楽しげに紫が言う。
「何か、今度は弾幕なしのガチンコの肉弾戦バトルになりそうだな」
「同感」
魔理沙の言葉にアリスが同意する。
が、周りの者も似たような感想を浮かべて居た。
「さて、私はそろそろ準備しに行かないと」
そう言って霊夢は一足先に風呂から上がる。
「あ、紫。今年も藍借りるわよ」
「ええ、どうぞ」
あっさりと許可を出す紫。
因みに藍は温泉には入らず橙と一緒に神社でくつろいでいる。
まぁ、先程の身代わりのダメージの回復に努めているという理由もあるのだが。
「なら、私達も上がった方が良いか」
「そうね」
魔理沙とアリスも釣られて風呂からあがる。
「妖夢も行った方が良いじゃないの?」
「うぅぅ………解りました」
反抗する事は始めから諦めている妖夢は、素直に幽々子の言う通りに従った。
「うどんげ、貴女も行ったら?」
「はぁぁ………解りました」
こちらも反抗する気など更々無く、大人しく言う通りにした。
「ああ、もう。どうせ取り消しなんて今さら効かないんでしょうね」
ある程度は霊夢の性格を知っている早苗が風呂から上がりつつそう言う。
「がんばっといで~」
「後で何か奢ったげるからさ」
「結構です」
神奈子の言葉にバッサリと切って捨てて早苗は上がって行った。
「さて、それじゃあ私達はこのまま年でも越しましょうか」
「はい、お嬢様」
他の者もレミリアと同じ考えのようだ。
因みに、レミリア達は高級なワインを霊夢に贈ってそれを代金として入浴している。

「さて、いよいよ今年も終わりね~」
紫が誰にともなく言う。
「はてさて、来年はどんな一年になるのやら」
それに応えるように神奈子が続く。
「きっと騒々しくなるわよ。ここん所ずっとそうだし」
幽香が更に続ける。
「なら、退屈しない年になりそうね~♪」
そして幽々子がそう閉めた。
それから暫くして



ゴ~ン…………



一年を終える鐘が響き渡った。
そして、同時に新しい一年が幕を開ける。

それでは、皆様も良いお年を。
お久しぶりです、華月です。

最近仕事やら精神状態やらでちょいと執筆が止まっておりました。
が、連休に入り、少し落ち着いたので再び書きなぐってみました。
とりあえず、恒例かもしれませんが、突っ込まれる前に解説のような物を。
幽香の花からの攻撃ですが、幾人かの作品を見ててこの用に能力を使ってるところを何度か見たので、パク………自分も使ってみました。
旧作ではこういう風に使ってたんですかね?
やってないので解りません(´・ω・`)
後、高レベルの妖怪達の本気の戦闘はあんなもんじゃ済まないと思います。
萃香なんて簡単に天を割ってますし。
実際どれほどになるかなんて自分の要領の少ない頭じゃ想像できません(´・ω・`)
紫のマスパの模倣については、媒介有りとはいえ人間の魔理沙が使えるのだから、紫なら簡単に模倣できるのでは?と言う考えです。
それから、幽香の手からマスパですが、特に傘を使わなければ使えないと言う情報を見かけなかったのでやってみました。
後はまぁ、またまたネタが多くてすみません。
もっと戦闘描写上手くなりたい………○| ̄|_

さて、お次は正月編を書こうと思います。
出来れば元日に、遅くても3日までには上げたいな~と思ってます。

それでは、好評不評問わず、待ってます。
華月
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コメント



0.860簡易評価
2.80煉獄削除
最強対決!しかも本気を出してない……。
実際本気を出したらどれほどの被害がでるんでしょうね?
ちょっとドタバタとしながらも何事?もなく歳を越す幻想郷の人達。
そしてお約束のように神社の手伝いに貸し出されるという。
面白かったです。

あ、ちょっと気になったのですが。
牙○は右手ではなくて左手による突きの筈でしたが……。
紫様がちょっと改良でもしましたか?
そしてメサイヤンソードは……ラ○グリッサー。
5.80名前が無い程度の能力削除
わーナイスネタw
丸パクリはよくないけど、これみたいにワンポイントで入れると引き立つなー
10.90てるる削除
いろいろとナイスでしたwww
正月編も待ってますね~。
11.90イスピン削除
おや、お久しぶりです。
ところどころに入ってるネタが作品を引き立てますね。
15.90名前が無い程度の能力削除
ゆかりんが呼び出したのは何期のレイハさんですか?
24.無評価華月削除
>ALL
総じて高めの評価有難うございます^^

>牙○は右手ではなくて左手による突きの筈でしたが……。
まぁ、その辺りは深く突っ込まないでいただけるとありがたいです^^;

>パクリはよくないけど、これみたいにワンポイントで入れると引き立つなー
>ところどころに入ってるネタが作品を引き立てますね。
そう言って頂けるとありがたいです^^

>いろいろとナイスでしたwww
ありがとうございます^^

>ゆかりんが呼び出したのは何期のレイハさんですか?
実は余り詳しくなかったり・・・・・・・・・^^;
25.100名前が無い程度の能力削除
幻想郷でフィィッシュ!!vs金ピカの代理戦争が行われるとはw