霊夢の神社がこわれた。
その跡からは、壊れた衝撃で袖が引きちぎれ、脇巫女ならぬ腕巫女へと変わり果てた姿となった霊夢が発見された。
「なんかねー、あんまり記憶がないんだけど、御飯食べようとして立ち上がった瞬間に屋根が落ちてきたのよ。気がついたら、がれきに埋もれてたわ。どうせ埋もれるなら札束の山に埋もれたいわね」
彼女は、被害に遭った割には結構余裕そうであった。これなら放っておいてもよかったかもしれない。
同じころ、竹林では永遠亭がこわれた。
その跡からはたくさんのウサギのまんじゅうに混じって、PCのマウスを握ったままの状態のニートが発見された。
「ああ……もう、せっかくハイスコア更新してたのに……いったい何なのよ」
彼女は死ぬ心配がないので、やりかけのゲームの方しか気になってないようだ。これも放っておいてもよかったかもしれない。
更に冥界では白玉楼がこわれた。
その跡からは、巨大な器に盛られたご飯に顔を突っ込んでる状態で亡霊が発見された。
「おやつを食べようとしたら、いきなり屋敷が揺れ始めたのよ。気がついたらご飯に埋もれて幸せだったわ」
彼女は屋敷がこわれたことより目の前のごはんの方が大切なようだ。同じく放っておいてもよかったかもしれない。
森では魔法使いの屋敷がこわれた。
その跡からは水がめに頭を突っ込んだ状態で、魔法使いが発見された。
「直前に幻覚キノコ食べたもんでさ、てっきり幻覚かと思って目の前にあったヘルメットを被ったのさ」
元からラリってるようだ。やっぱり放っておいてもよかったかもしれない。
森の外れでは道具屋がこわれた。
その跡からはたくさんのガラクタに包まれたふんどし一丁姿の店主が発見された。
「ふんどし健康法と言うものが存在するというのを聞いてね。どんなもんか試してみていた所だったんだ」
なんだ、ただの露出狂のようだ。放っておけばよかったかもしれない。
マヨヒガでは紫がこわれた。
彼女は口から煙を出しながら「ロボチガウ、ロボチガウ……」とつぶやき続けている。
式の狐曰く、いつもの事だよ。とのことなので、これは放っておいていいだろう。
それにしても
みんなどんどんこわれていく。
ひまわり畑もすずらん畑も、
見てるうちからこわれていく。
ついには妖怪の山もこわれてきた。
こわれた。こわれた。
幻想郷がこわれた。
「ちょっと!! みんな、私にお金をちょうだいよ! いいじゃない! 減るもんじゃないし! そうすれば命だけは助けてあげるわ!」
巫女がこわれた。
「私は見ての通り異常者だ! 文句あるか!? 文句あるやつは魔法でふっ飛ばすぜ!?」
魔法使いがこわれた。
「ふふふ……ひれ伏せ! 愚民ども! この蓬莱人の言う事が聞けない奴は……月に代わっておしおきよ!」
そしてニートがこわれた。
こわれゆく幻想郷に、幼き歌声が風に乗ってこだまする。
彼女が歌うたびに何かがこわれる。
彼女の歌が、幻想郷をこわしているのだ。
その歌声は幼稚で調子が外れていて、それでいて深みのあるような不思議な歌声。
でも、その歌声をじっと聞いていると、心が大草原の真ん中あたりに持っていかれそうだ。
体が宇宙の果てに吹っ飛んでしまいそうだ。
ああ、次にこわれるのは私かもしれない……。
私かもしれない……。
私なのか……?
……そーなのか……?
…………わはー……。
……なんだ、既にこわれていたのね。私ったら。
――ここは紅魔館。
この中も既に崩壊が始まっているが、咲夜の力で空間を広げなんとか食い止めている状態だ。
しかしそれも時間の問題。広げるそばからどんどんこわれていく。
ちなみに門番はすでにこわれ、湖の氷精とパンダごっこをしている。
メイドの妖精たちは組み体操をやったり、夕日に向かってダッシュしたり……。
咲夜とパチュリーは、壊れた小悪魔の妨害行為を巧みに避けながら対策を講じていた。
「……咲夜、困ったことになったわ」
「はい、すでに存じてます。パチュリー様」
「……そういや、レミリアは?」
「既に、絶対安全カプセルに避難済みです」
「そう、なら安全ね」
「はい」
「絶対安全ですから」
「ええ、そうね……」
パチュリーは本を読みながら対策を練ろうとするが、そのたびに分裂した小悪魔たちが、彼女に向って腐ったミカンを投げつけるので身が入らないのだ。
「まさか、こうなるとは思わなかったわ……」
「こんな形で幻想郷は終わってしまうのでしょうか……」
「そんな事させないわ! させてなるもんですか。まずは、根源を断たないといけないわね」
「根源……妹様ですね」
「ええ、フランを探して。彼女を黙らせましょう」
「まさか妹様の御歌が、こんな恐ろしいものだったとは……」
その頃、紅魔館の屋根の上では、フランドールが一人たたずんでいた。
孤独な彼女は一人、歪んだ月の上に浮かぶ白いボートのように、ゆらゆらとたたずんでいる。
彼女は歌う。覚えたての歌を。歌を歌えばさみしい気分は消えていく。歌うこと。それが彼女の心をいやしてくれるのだ。
わーったしはフランドール♪ わったしーは強いー♪ わったしーに勝ったらコインいっこー♪
しかし彼女のその歌声は、あらゆるものをこわす破壊の礫となる。
その礫は、人や物を限らず、存在するもの全てを中性子のように貫いていくのだ。
貫かれたものはこわれる。
そしてついに紅魔館もこわれた。
誰の視点で描かれたものなのかも分からないし、そもそもどうしてフランが歌ってるのかも理由が分からないし。
壊れるっていう描写もイマイチ分からないし。
もうちょっと煮詰めてから出せばよかったのでは?
ロボチガウはニヤリと笑うレベル。
一番びびったのは絶対安全カプセルだったり。発想というべきか組み合わせがほとんどありえないところから引っ張ってきている。
これはいい。
のだけれど。
ネタが散発すぎてカオスすぎるとどうもよくないらしい。
オチがよくわからず、不条理ギャグとしてもけっこう厳しい面がありますね。
不条理ギャグってむしろ逆に緻密な計算が必要だったりするのですよ。おそらく。
テンションが欲しいのかも? うまく言語化できない。
はっきり言って私は笑えませんでした。
あとオチがちょっと解らないです。
私の理解力が低すぎるだけなんだろうか。
カオスだ。妹様は無邪気なんだろうなあ、たぶん。
ゆるい下り坂のような文章がずっと続いているように感じました。転・結があると良かったです。
発想はとても素敵で面白かったです。
なんかおもしれぇやあははーって感じで読んでるからかもしれませんが。