霧雨魔理沙がいつものように神社を訪れた時、
呆れたことに博麗霊夢は鳥居にもたれ掛かってこっくりこっくりと舟をこいでいた。
今日は雪こそ降っていないものの、手足の先が上手く動かなくなる程の寒さだ。
そんな中でよく居眠りなんか出来るなあ、と半ば感心しながら石畳にとん、と右足を着いて帽子を脱いだ。
くるりと箒を回して背に担いで、少し大げさに足音を立てて近づくと、
ようやく霊夢は薄目を開けた。
熟睡しているかと思えば意外と来客には鋭い巫女である。
彼女はしばらく口を半開きにして小首を傾げたまま魔理沙を見ていたが、
やがて無造作に右手の甲を口元に持って行くと、じゅるり、と涎を啜って、そのままぐしぐしと目元を乱暴に拭った。
「なんだよ。またサボりか?」
どうしようもなくだらしがない霊夢の姿に思わず苦笑を零すが、彼女自身はまったく気にしていない様子であり、
脇に置いてあった急須を手にとって湯飲みに茶を注ぎ、
「サボって何が悪いのよ。いいじゃない、のんびりで」
立ち上る湯気を心地よさそうに見つめた後で、そっと口を付けた。
魔理沙はそのまま、ほう、などという婆臭い溜息を吐くのだろうとばかり思っていたのだが、
霊夢は思いきり顔をしかめて
「う……出涸らし」
と湯飲みを残念そうに元の位置に戻した。
余程長い間ここでまったりしていたに違いないな、と魔理沙は思わず苦笑を漏らした。
ともあれここで棒立ちになっているのもなんである、大人しく霊夢の横に行って腰を下ろすことにした。
彼女は何も言わずに茶を注いで魔理沙に手渡す。
「おい、これ出涸らしだろ?」
わざとだろうかと思ったのだが、どうやら本当に忘れていたらしく、ごめんごめんと霊夢は眠そうな声で謝った。
代わりに口元にせんべいを突きつけてきたのではむ、とそれを口で受け取る。
「今日はまた何でここに来たのよ」
迷惑そうに霊夢が言う。まったく、やれやれだぜ、と魔理沙は演技がかった仕草で溜息を吐いた。
「香霖堂でも紅魔館でもそういう質問ばっかりだ。
何でだろうな?」
さあねえ、と興味がない様子で霊夢は再び茶を口に含み、うっ、と呻いていた。
「あんたの態度が悪いんじゃない?」
そうかもな、と魔理沙は足をぶらつかせた。
ひゅうう、と風が強く吹いて霊夢の髪が魔理沙の顔にかかる。
それがうざったくて顔をやや上に向けると、霊夢の頭の上に何かが乗っているのが目に入った。
雀か何か、小鳥のようである。
霊夢があまりに無防備なので頭に乗っても大丈夫だと思ったのだろう。
試しに魔理沙がそっと手を伸ばすと慌てて羽をばたつかせて逃げていった。
霊夢はふふん、と笑った。
「あんたの日頃の行いが悪いから鳥も逃げていったわね」
そんな事はないぜ、と魔理沙は胸を張る。
「私は可愛い生き物には優しいんだ」
へえ、と意地が悪そうに霊夢は目を細めると、下から魔理沙をのぞき込むようにした。
その口元には小さく笑みが浮かんでいる。
「じゃあ、この前拾ってきたヘビはどうしたのかしら? 全然見ないけど」
魔理沙は、いやぁ、と曖昧な笑みを浮かべて頬を掻いた。
霊夢はますます笑みを深くしてつんつんと魔理沙の鼻をつつく。
「ほら、どーせ逃がしたり殺したりなんだりしたんでしょ?」
いや、ええとな、と魔理沙はうろたえた様子で言う。
「ありゃ、その、ええとだな……」
「何よ」
にやにやと嫌らしい笑みを浮かべて霊夢は首を傾げた。
わざわざ上目遣いにそんな質問をしてくるから腹立たしい。
小馬鹿にされている気がする。
なんとかこの状況を打破してやろうと必死で考えをめぐらせるが、
アイデアは何も浮かばない。
魔理沙は混乱した挙げ句、こうなったら自棄だと思い、口を開いて叫んだ。
「あ、あれは香霖が食った!」
てっきり霊夢は笑い出すかと思いきや、
ええと、と口元を引きつらせて、尋ね返してきた。
「く、食ったって……霖之助さんが?」
よく分からないが食い付いてきたらしい。
しめしめと思って魔理沙は口から出任せを言い放つ。
「そうなんだ、聞いてくれよ。
私が香霖堂にツチノコを連れていったらさ、
問答無用で頭たたき割ってそのまま丸飲みにしたんだよ。
さすがの私もあの時は驚いたぜ」
その言葉を聞いて、なんだ、と霊夢は肩を落としてしまった。
「要するに、あんたの口から出任せって事で良いのかしら?」
ばれたらしい。
何故だろうかと魔理沙は首を捻る。
彼女としてはなるべく霊夢が共感しやすいシチュエーションを作ったつもりだった。
「なんだよ。霊夢は香霖がツチノコを食べないって思ってるのか?」
そんな事はないけど、とせんべいに手を伸ばしながら答えが返ってくる。
「いくらなんでも躍り食いはないでしょ。
だって霖之助さんよ?」
するかもしれないぜ、と言う魔理沙に、絶対あり得ない、と霊夢は返す。
「霖之助さんがツチノコに勝てる訳無いわ。
あの人、鶏一匹捻れそうにないもの」
なるほどな、と魔理沙は大笑いする。
方々で弱い弱いと言われる森近霖之助だが、戦っている姿を見た者は誰も居ない。
情報が無いというのはある意味では最強の力を持っているに等しいんだよ、
と霖之助が自慢げに話していたのを魔理沙は思い出す。
だが魔理沙は先ず間違いなく霖之助は弱いだろうと信じていた。
根拠はない。長年の付き合いからそう思っているだけだ。
「鶏で思い出したけどさ、霊夢」
なによ、と霊夢が聞き返して、また茶を口に啜ってぶるりと体を震わせる。
飲めば飲むほど渋くなるこのスパイラルに次こそは飲むまいと誓っているのだろう、と魔理沙は思った。、
でもまた忘れてしまうんだろうなあ、とも。
魔理沙は呆れながら自分の欲求を口にする。
「今度兎鍋しようぜ。そこら辺の適当に捻ってさ」
兎は捻れないわよ、と霊夢は苦笑した。
「でもまあ、確かにそろそろ食べたいわねえ、兎」
うんうん、と魔理沙は頷く。
「アレ出すと香霖も喜ぶんだよなあ」
「霖之助さんはどうでもいいから」
魔理沙は一つの話題についてやたらと掘り下げて話すことがある。
魔法使いには良くあることらしいのだが、
会話は雰囲気を楽しむだけのものとしている霊夢にしてみれば迷惑極まりない話である。
面白くも何ともない香霖堂店主の話なら尚更だ。
「まあ、今度用意しておくわ」
楽しみだぜ、と魔理沙は笑う。
桜肉なんかも食いたいなあ、などと思うがそれ以上口にしたら霊夢が怒り出すだろうから止めておく。
宴会の楽しさが面倒くささを上回らないようにしなければ霊夢は動いてくれないのだ。
七面倒くさい巫女なのである。
見上げると、雲が物凄いスピードで流れていた。
千切れたりくっついたりしている様は見ていて飽きない。
「雲も何をせかせかしてるのかしらねえ」
呆れたように霊夢が言うが、
「ありゃ空の風が速いだけだぜ」
と魔理沙はにべもない。
その解答が不満だったのか、霊夢はぺしぺしと魔理沙の頭を軽く叩いた。
「そういう事は知ってるわよ」
そうか、と魔理沙はニヤニヤ笑う。
「地上でも地下でも空でもフワフワしてるから風なんか知らないのかと思ってたぜ」
「地上でも地下でも空でも風なんかには流されないだけよ」
そう言う分には格好良いけどな、と魔理沙が茶化す。
「要するに自分勝手って事じゃないか」
霊夢は空を指さしてぼんやりとした表情で言う。
「雲だって自分勝手だけど迷惑かけてないじゃない」
「だから、ありゃ流されてるだけだぜ」
「主体性が無いわねえ」
急須から茶をつぎ足して(当然苦い。更にぬるくなっている)、霊夢は尋ねる。
「そういう風にロマンスの欠片も無いと嫁のもらい手がないわよ?」
その点は心配ないぜ、と魔理沙はガッツポーズを作った。
「私は流れ星が大好きだからな」
「流れ星って……龍の鱗がパラパラ落ちてくだけじゃない」
「流れ星は流れ星だ!」
ぺしぺしと魔理沙は立てかけておいた箒の柄で霊夢の頭を器用に叩いた。
あんたも変わった物が好きよねえ、とそう言いかけて、霊夢はニヤリと口元を袖で隠して笑う。
「あー、そうか。願い事が叶うから好きなのか。即物的ね」
違う、と魔理沙はむっとした様子で返した。
「そりゃお前だろ。
私は心の底から流れ星が好きなんだよ」
「魔理沙、まんじゅうって怖いわねえ」
これから神社には絶対まんじゅうは持ってくるもんか、と魔理沙はむくれた。
雲はどんどん流れていく。
空は青いがどこかくすんだ色だ。
どこまでも突き抜けたあの綺麗な蒼穹を見せてくれるのはずっと先のことだろう。
魔理沙がぼんやりと空を見ていたので霊夢もつられて見上げ、そして肘で彼女をつついて笑う。
「ほら、ジェット気流は凄いわねえ」
「本当に人の気を殺ぐ天才だよなあ、霊夢は」
折角孤独感に浸ろうと思っていたのに、と魔理沙は霊夢をなじったが、彼女は平然とした表情だ。
「博麗神社で孤独に浸ろうなんて千年早いわ。
ここの孤独は私が独り占めするの」
それもずるい話だなあ、と魔理沙は辺りを見渡した。
閑散とした桜に、人通りのない石畳、ぽつんと立った赤い鳥居。
「ぼんやりと一人で眺めるなら最高なんだが、
毎日毎日邪魔者が居るからなあ」
「某黒くて白いのとかね」
「紅白まんじゅうも割と邪魔だぜ」
そう言って、二人してくつくつ笑う。
ひゅうう、と北風が吹いた。
北風かどうかは分からないが、とりあえず寒い風なので北風なのだと二人は思った。
二人は自分の体を抱いて軽く震えた。
「寒いなあ」
「寒いわねえ」
辺りはすっかり冬である。
近頃は晴れが続いたので幻想郷の雪景色はびちょびちょした泥景色に様変わりしてしまっている。
それでもやはり山の方など少し小高い部分には白いところも残っていて、
博麗神社から眺めるそういった景色は綺麗なものだった。
方々で雪が溶けているのでかえって白色が強烈に目に飛び込んでくるのかも知れない。
「ったく……冬将軍のやつは気まぐれだからなあ。
私が来て欲しいって思った時だけ来れば良いんだ」
「気まぐれだからこんな景色が見れるんだって思えば随分違うわ」
「ああ、そういう見方もあるか」
魔理沙は少し感心したように霊夢を見やって、そして眼下に広がる白と緑の景色を眺めた。
なるほど、確かに気まぐれも悪くない。
霊夢はというと少しだけ目を細めて、どこか遠くを眺めていた。
魔理沙が神社に遊びに来た時に霊夢はたまにこういう表情をしていることがある。
それは箒を持ったままの姿勢だったり、縁側で湯飲みを持って足をぶらぶらさせながらだったり、
あるいは鳥居の上に腰掛けている時だったりするが、そういう時に何を考えているのか、魔理沙にはさっぱり分からなかった。
「霊夢、今何考えてるんだ?」
だから尋ねてみると、そうね、といつもの表情に戻って霊夢は答えた。
「別に何も考えてないけど。まったりしてただけよ。景色が綺麗ねえって思いながら」
紅白の衣がふわふわと揺れた。霊夢は寒いだろうに気持ちよさそうに目を閉じた。
「誰も居ない時はいつもそんな感じなのか?」
誰だってそうじゃない、と霊夢は苦笑する。
「暇な時は景色くらい眺めるわよ。それか、今日みたいに寝るわね」
魔理沙は納得して視線をまた空にやる。
「そういう風にして夜空を見上げたりはしないのか?」
別に、と霊夢は首を横に振った。
「夕方過ぎたら食事の準備を始めるからぼーっとしてられないのよ。
宴会の月見酒とかもどんちゃん騒ぎするだけだし」
なるほど、と魔理沙は腑に落ちた様子で頷いた。
「そこが私と霊夢の違いだったわけだ」
何? と聞き返す霊夢に魔理沙は人差し指をぴんと立てて答えた。
「だってそうじゃないか。
霊夢は昼にぼんやりとして夜は飯食って寝るだけだ。
だから昼の空とか昼の景色……あと夕方とか好きじゃないか。
でも私は昼はあちこち走り回ってるから、夜に空を見上げる事が多い。
これが私たちの違いだぜ!」
呆れた様子で霊夢は溜息を吐く。
「私だって夜空は好きだけどね」
それを聞いた魔理沙は、ふうん、と少し息を吐いた後で、霊夢の方を見た。
「じゃあ、今度星でも見に行くか?」
とんでもない、と霊夢は大げさに首を横に振った。
「わざわざそんな事のために動きたくないわよ。
しかも相手が魔理沙でしょ?」
「香霖連れてきてもいいぜ」
「……それ、何かプラスの効果があるの?」
「……いや、ないな」
そう言って、二人して小さく笑った。
霊夢はせんべいを一枚頬張ってから、
先程の魔理沙の案に対する妥協策を呈する。
「それなら今度あんたが夜に遊びに来ればいいじゃない。
お酒とおつまみを持ってきてくれるんならいくらでももてなすけど」
それを聞いて魔理沙はうんうんと頷いてから同じようにせんべいに手をのばした。
「そりゃいいな。なら場所だけ貸してくれよ。
ここの星空を一人で眺めてみたいって思ってたんだ」
「神社の孤独は私の物よ」
ずるいぜ、と魔理沙は舌打ちした。
「良いよなあ、こんな所に住んでてさ。
まあそれはそれとして、近いうちに遊びに来る」
宴会と被らないようにしなさいよ、と霊夢は念を押してきた。
「なんだ。また宴会の予定がてんこ盛りなのか?」
そうなのよ、と深々と溜息を吐いて霊夢が言う。
「勘弁して欲しいんだけどねえ。
ま、別に良いけどさ。
防寒具はちゃんと着とかないと寒いわよ?」
そう言ったっきり、霊夢はまた空を見上げて何も言わなくなった。
魔理沙も思いきり首を曲げて空を見る。
ぐぐっ、と体を反らすと鳥居も視界から消えて、薄い青の一色だけが視界の全てを埋め尽くした。
距離感なんてものは全く無い。
手を伸ばせばあの色を手に入れる事が出来るんじゃないかと思うくらい、身近に空を感じることが出来た。
だけれど、伸ばす手は当然そこに届くことはなかった。
霊夢はその様子を見て、小さく笑う。
そして、ずずず、と出涸らしを啜った。
魔理沙はこの時になってようやく分かった。
こいつはわざと出涸らしを啜っているのだ、と。
「美味いか、それ?」
尋ねると、霊夢は意味深に笑って、また湯飲みに口を付けただけだった。
ならばと魔理沙も湯飲みをそっと手に持って、申し分程度に湯気を立てているそれにおそるおそる口づけた。
口の中に何とも言えない渋みが広がるのを感じる。
とてもじゃないが美味しいとは言えなかった。
「よ、よくこんなものが飲めるな」
言うと、霊夢は小さく肩を竦めた。
「物事には色々と楽しみ方があるのよ」
そしてそっとまた急須に手を伸ばす。
魔理沙は信じられない考え方をするやつだな、と呻いて、また景色に視線を戻した。
すると、口の中に渋みが加わっただけだというのに、今まで見ていた光景が変わって見えた。
色に鮮明感が増した気がするのだ。息を吸うと、どこか茶葉の匂いを感じる。
景色も寒さも冬だというのに、だ。
濃すぎる茶を飲んだせいで味と風味が残ってしまったのだろう。
しかし、そのおかげで見る事の出来る光景は、味のあるものだった。
恐れ入ったよ、そう苦笑して、魔理沙もそっと湯飲みに手をのばす。
今日は日が落ちるまで、空を見上げても飽きそうにないな、と魔理沙は思った。
それで、と僕は溜息を吐いた。
「はしゃいだ挙げ句に風邪をこじらせ、星を見る予定だった日にこうしてぐずぐず鼻を垂らしている、と」
「黙れバカ香霖」
ちーん、と勢いよく鼻をかんで魔理沙は呻く。
相当頭が痛いらしく、鼻をかんだだけで響くのだそうだ。
まったく、やれやれである。
「少しは自重してくれないか。数年前から冬に看病をすることが増えてきた気がしてならないんだが」
異変が多いからな、と魔理沙は笑う。反省の色は全くなかった。
「それはそうと、香霖」
体を半分起こして彼女は氷嚢を額からどけた。
「風邪には茶が良いらしいって聞いたことがあるんだが……」
はいはい、と布団に魔理沙を押し込んで、立ち上がった。
まんじゅうを食わせろだの本を読めだの氷枕をつくれだの。
挙げ句の果てには茶まで飲ませろという。
相変わらず破天荒振りである。
「なら、代金として、神社の星見には僕も参加させてもらおうかな」
そう言って小さく笑うと
「香霖は嫌だって霊夢が言ってたぜ」
魔理沙が平坦な口調でそう言ったので、僕は軽く衝撃を受けた。
こうやって少女は大人になるのだと知ってはいても、
なんというか、凹むものである。
そんな僕の様子を見て、魔理沙は小さく笑みを作った。
「嘘だって。連れていってやるから。な?」
騙されたらしい。
そう思うと何故か怒りより安堵がわいてくるのは何故だろう。
それはそれで妙に腹立たしいので僕は余裕を見せるために肩を竦めて見せたのだった。
このままでは済まさない。
何か一矢報いようと思い、僕は名案を思いついた。
きっと魔理沙はびっくりして文句を垂れるに違いない。
濃い緑色の茶葉を匙ですくい、ストーブの上に置かれたやかんを取りに行った。
魔理沙にはちゃんと茶を飲ませてやる。
だけれど、美味しい茶など与えてやるものか。
それでは僕の気がおさまらない。
かくなる上は、うんと渋い、うんと苦い出涸らしを飲ませてやるのだ。
彼女はどれほど驚くだろうか。
実に、楽しみだ。
呆れたことに博麗霊夢は鳥居にもたれ掛かってこっくりこっくりと舟をこいでいた。
今日は雪こそ降っていないものの、手足の先が上手く動かなくなる程の寒さだ。
そんな中でよく居眠りなんか出来るなあ、と半ば感心しながら石畳にとん、と右足を着いて帽子を脱いだ。
くるりと箒を回して背に担いで、少し大げさに足音を立てて近づくと、
ようやく霊夢は薄目を開けた。
熟睡しているかと思えば意外と来客には鋭い巫女である。
彼女はしばらく口を半開きにして小首を傾げたまま魔理沙を見ていたが、
やがて無造作に右手の甲を口元に持って行くと、じゅるり、と涎を啜って、そのままぐしぐしと目元を乱暴に拭った。
「なんだよ。またサボりか?」
どうしようもなくだらしがない霊夢の姿に思わず苦笑を零すが、彼女自身はまったく気にしていない様子であり、
脇に置いてあった急須を手にとって湯飲みに茶を注ぎ、
「サボって何が悪いのよ。いいじゃない、のんびりで」
立ち上る湯気を心地よさそうに見つめた後で、そっと口を付けた。
魔理沙はそのまま、ほう、などという婆臭い溜息を吐くのだろうとばかり思っていたのだが、
霊夢は思いきり顔をしかめて
「う……出涸らし」
と湯飲みを残念そうに元の位置に戻した。
余程長い間ここでまったりしていたに違いないな、と魔理沙は思わず苦笑を漏らした。
ともあれここで棒立ちになっているのもなんである、大人しく霊夢の横に行って腰を下ろすことにした。
彼女は何も言わずに茶を注いで魔理沙に手渡す。
「おい、これ出涸らしだろ?」
わざとだろうかと思ったのだが、どうやら本当に忘れていたらしく、ごめんごめんと霊夢は眠そうな声で謝った。
代わりに口元にせんべいを突きつけてきたのではむ、とそれを口で受け取る。
「今日はまた何でここに来たのよ」
迷惑そうに霊夢が言う。まったく、やれやれだぜ、と魔理沙は演技がかった仕草で溜息を吐いた。
「香霖堂でも紅魔館でもそういう質問ばっかりだ。
何でだろうな?」
さあねえ、と興味がない様子で霊夢は再び茶を口に含み、うっ、と呻いていた。
「あんたの態度が悪いんじゃない?」
そうかもな、と魔理沙は足をぶらつかせた。
ひゅうう、と風が強く吹いて霊夢の髪が魔理沙の顔にかかる。
それがうざったくて顔をやや上に向けると、霊夢の頭の上に何かが乗っているのが目に入った。
雀か何か、小鳥のようである。
霊夢があまりに無防備なので頭に乗っても大丈夫だと思ったのだろう。
試しに魔理沙がそっと手を伸ばすと慌てて羽をばたつかせて逃げていった。
霊夢はふふん、と笑った。
「あんたの日頃の行いが悪いから鳥も逃げていったわね」
そんな事はないぜ、と魔理沙は胸を張る。
「私は可愛い生き物には優しいんだ」
へえ、と意地が悪そうに霊夢は目を細めると、下から魔理沙をのぞき込むようにした。
その口元には小さく笑みが浮かんでいる。
「じゃあ、この前拾ってきたヘビはどうしたのかしら? 全然見ないけど」
魔理沙は、いやぁ、と曖昧な笑みを浮かべて頬を掻いた。
霊夢はますます笑みを深くしてつんつんと魔理沙の鼻をつつく。
「ほら、どーせ逃がしたり殺したりなんだりしたんでしょ?」
いや、ええとな、と魔理沙はうろたえた様子で言う。
「ありゃ、その、ええとだな……」
「何よ」
にやにやと嫌らしい笑みを浮かべて霊夢は首を傾げた。
わざわざ上目遣いにそんな質問をしてくるから腹立たしい。
小馬鹿にされている気がする。
なんとかこの状況を打破してやろうと必死で考えをめぐらせるが、
アイデアは何も浮かばない。
魔理沙は混乱した挙げ句、こうなったら自棄だと思い、口を開いて叫んだ。
「あ、あれは香霖が食った!」
てっきり霊夢は笑い出すかと思いきや、
ええと、と口元を引きつらせて、尋ね返してきた。
「く、食ったって……霖之助さんが?」
よく分からないが食い付いてきたらしい。
しめしめと思って魔理沙は口から出任せを言い放つ。
「そうなんだ、聞いてくれよ。
私が香霖堂にツチノコを連れていったらさ、
問答無用で頭たたき割ってそのまま丸飲みにしたんだよ。
さすがの私もあの時は驚いたぜ」
その言葉を聞いて、なんだ、と霊夢は肩を落としてしまった。
「要するに、あんたの口から出任せって事で良いのかしら?」
ばれたらしい。
何故だろうかと魔理沙は首を捻る。
彼女としてはなるべく霊夢が共感しやすいシチュエーションを作ったつもりだった。
「なんだよ。霊夢は香霖がツチノコを食べないって思ってるのか?」
そんな事はないけど、とせんべいに手を伸ばしながら答えが返ってくる。
「いくらなんでも躍り食いはないでしょ。
だって霖之助さんよ?」
するかもしれないぜ、と言う魔理沙に、絶対あり得ない、と霊夢は返す。
「霖之助さんがツチノコに勝てる訳無いわ。
あの人、鶏一匹捻れそうにないもの」
なるほどな、と魔理沙は大笑いする。
方々で弱い弱いと言われる森近霖之助だが、戦っている姿を見た者は誰も居ない。
情報が無いというのはある意味では最強の力を持っているに等しいんだよ、
と霖之助が自慢げに話していたのを魔理沙は思い出す。
だが魔理沙は先ず間違いなく霖之助は弱いだろうと信じていた。
根拠はない。長年の付き合いからそう思っているだけだ。
「鶏で思い出したけどさ、霊夢」
なによ、と霊夢が聞き返して、また茶を口に啜ってぶるりと体を震わせる。
飲めば飲むほど渋くなるこのスパイラルに次こそは飲むまいと誓っているのだろう、と魔理沙は思った。、
でもまた忘れてしまうんだろうなあ、とも。
魔理沙は呆れながら自分の欲求を口にする。
「今度兎鍋しようぜ。そこら辺の適当に捻ってさ」
兎は捻れないわよ、と霊夢は苦笑した。
「でもまあ、確かにそろそろ食べたいわねえ、兎」
うんうん、と魔理沙は頷く。
「アレ出すと香霖も喜ぶんだよなあ」
「霖之助さんはどうでもいいから」
魔理沙は一つの話題についてやたらと掘り下げて話すことがある。
魔法使いには良くあることらしいのだが、
会話は雰囲気を楽しむだけのものとしている霊夢にしてみれば迷惑極まりない話である。
面白くも何ともない香霖堂店主の話なら尚更だ。
「まあ、今度用意しておくわ」
楽しみだぜ、と魔理沙は笑う。
桜肉なんかも食いたいなあ、などと思うがそれ以上口にしたら霊夢が怒り出すだろうから止めておく。
宴会の楽しさが面倒くささを上回らないようにしなければ霊夢は動いてくれないのだ。
七面倒くさい巫女なのである。
見上げると、雲が物凄いスピードで流れていた。
千切れたりくっついたりしている様は見ていて飽きない。
「雲も何をせかせかしてるのかしらねえ」
呆れたように霊夢が言うが、
「ありゃ空の風が速いだけだぜ」
と魔理沙はにべもない。
その解答が不満だったのか、霊夢はぺしぺしと魔理沙の頭を軽く叩いた。
「そういう事は知ってるわよ」
そうか、と魔理沙はニヤニヤ笑う。
「地上でも地下でも空でもフワフワしてるから風なんか知らないのかと思ってたぜ」
「地上でも地下でも空でも風なんかには流されないだけよ」
そう言う分には格好良いけどな、と魔理沙が茶化す。
「要するに自分勝手って事じゃないか」
霊夢は空を指さしてぼんやりとした表情で言う。
「雲だって自分勝手だけど迷惑かけてないじゃない」
「だから、ありゃ流されてるだけだぜ」
「主体性が無いわねえ」
急須から茶をつぎ足して(当然苦い。更にぬるくなっている)、霊夢は尋ねる。
「そういう風にロマンスの欠片も無いと嫁のもらい手がないわよ?」
その点は心配ないぜ、と魔理沙はガッツポーズを作った。
「私は流れ星が大好きだからな」
「流れ星って……龍の鱗がパラパラ落ちてくだけじゃない」
「流れ星は流れ星だ!」
ぺしぺしと魔理沙は立てかけておいた箒の柄で霊夢の頭を器用に叩いた。
あんたも変わった物が好きよねえ、とそう言いかけて、霊夢はニヤリと口元を袖で隠して笑う。
「あー、そうか。願い事が叶うから好きなのか。即物的ね」
違う、と魔理沙はむっとした様子で返した。
「そりゃお前だろ。
私は心の底から流れ星が好きなんだよ」
「魔理沙、まんじゅうって怖いわねえ」
これから神社には絶対まんじゅうは持ってくるもんか、と魔理沙はむくれた。
雲はどんどん流れていく。
空は青いがどこかくすんだ色だ。
どこまでも突き抜けたあの綺麗な蒼穹を見せてくれるのはずっと先のことだろう。
魔理沙がぼんやりと空を見ていたので霊夢もつられて見上げ、そして肘で彼女をつついて笑う。
「ほら、ジェット気流は凄いわねえ」
「本当に人の気を殺ぐ天才だよなあ、霊夢は」
折角孤独感に浸ろうと思っていたのに、と魔理沙は霊夢をなじったが、彼女は平然とした表情だ。
「博麗神社で孤独に浸ろうなんて千年早いわ。
ここの孤独は私が独り占めするの」
それもずるい話だなあ、と魔理沙は辺りを見渡した。
閑散とした桜に、人通りのない石畳、ぽつんと立った赤い鳥居。
「ぼんやりと一人で眺めるなら最高なんだが、
毎日毎日邪魔者が居るからなあ」
「某黒くて白いのとかね」
「紅白まんじゅうも割と邪魔だぜ」
そう言って、二人してくつくつ笑う。
ひゅうう、と北風が吹いた。
北風かどうかは分からないが、とりあえず寒い風なので北風なのだと二人は思った。
二人は自分の体を抱いて軽く震えた。
「寒いなあ」
「寒いわねえ」
辺りはすっかり冬である。
近頃は晴れが続いたので幻想郷の雪景色はびちょびちょした泥景色に様変わりしてしまっている。
それでもやはり山の方など少し小高い部分には白いところも残っていて、
博麗神社から眺めるそういった景色は綺麗なものだった。
方々で雪が溶けているのでかえって白色が強烈に目に飛び込んでくるのかも知れない。
「ったく……冬将軍のやつは気まぐれだからなあ。
私が来て欲しいって思った時だけ来れば良いんだ」
「気まぐれだからこんな景色が見れるんだって思えば随分違うわ」
「ああ、そういう見方もあるか」
魔理沙は少し感心したように霊夢を見やって、そして眼下に広がる白と緑の景色を眺めた。
なるほど、確かに気まぐれも悪くない。
霊夢はというと少しだけ目を細めて、どこか遠くを眺めていた。
魔理沙が神社に遊びに来た時に霊夢はたまにこういう表情をしていることがある。
それは箒を持ったままの姿勢だったり、縁側で湯飲みを持って足をぶらぶらさせながらだったり、
あるいは鳥居の上に腰掛けている時だったりするが、そういう時に何を考えているのか、魔理沙にはさっぱり分からなかった。
「霊夢、今何考えてるんだ?」
だから尋ねてみると、そうね、といつもの表情に戻って霊夢は答えた。
「別に何も考えてないけど。まったりしてただけよ。景色が綺麗ねえって思いながら」
紅白の衣がふわふわと揺れた。霊夢は寒いだろうに気持ちよさそうに目を閉じた。
「誰も居ない時はいつもそんな感じなのか?」
誰だってそうじゃない、と霊夢は苦笑する。
「暇な時は景色くらい眺めるわよ。それか、今日みたいに寝るわね」
魔理沙は納得して視線をまた空にやる。
「そういう風にして夜空を見上げたりはしないのか?」
別に、と霊夢は首を横に振った。
「夕方過ぎたら食事の準備を始めるからぼーっとしてられないのよ。
宴会の月見酒とかもどんちゃん騒ぎするだけだし」
なるほど、と魔理沙は腑に落ちた様子で頷いた。
「そこが私と霊夢の違いだったわけだ」
何? と聞き返す霊夢に魔理沙は人差し指をぴんと立てて答えた。
「だってそうじゃないか。
霊夢は昼にぼんやりとして夜は飯食って寝るだけだ。
だから昼の空とか昼の景色……あと夕方とか好きじゃないか。
でも私は昼はあちこち走り回ってるから、夜に空を見上げる事が多い。
これが私たちの違いだぜ!」
呆れた様子で霊夢は溜息を吐く。
「私だって夜空は好きだけどね」
それを聞いた魔理沙は、ふうん、と少し息を吐いた後で、霊夢の方を見た。
「じゃあ、今度星でも見に行くか?」
とんでもない、と霊夢は大げさに首を横に振った。
「わざわざそんな事のために動きたくないわよ。
しかも相手が魔理沙でしょ?」
「香霖連れてきてもいいぜ」
「……それ、何かプラスの効果があるの?」
「……いや、ないな」
そう言って、二人して小さく笑った。
霊夢はせんべいを一枚頬張ってから、
先程の魔理沙の案に対する妥協策を呈する。
「それなら今度あんたが夜に遊びに来ればいいじゃない。
お酒とおつまみを持ってきてくれるんならいくらでももてなすけど」
それを聞いて魔理沙はうんうんと頷いてから同じようにせんべいに手をのばした。
「そりゃいいな。なら場所だけ貸してくれよ。
ここの星空を一人で眺めてみたいって思ってたんだ」
「神社の孤独は私の物よ」
ずるいぜ、と魔理沙は舌打ちした。
「良いよなあ、こんな所に住んでてさ。
まあそれはそれとして、近いうちに遊びに来る」
宴会と被らないようにしなさいよ、と霊夢は念を押してきた。
「なんだ。また宴会の予定がてんこ盛りなのか?」
そうなのよ、と深々と溜息を吐いて霊夢が言う。
「勘弁して欲しいんだけどねえ。
ま、別に良いけどさ。
防寒具はちゃんと着とかないと寒いわよ?」
そう言ったっきり、霊夢はまた空を見上げて何も言わなくなった。
魔理沙も思いきり首を曲げて空を見る。
ぐぐっ、と体を反らすと鳥居も視界から消えて、薄い青の一色だけが視界の全てを埋め尽くした。
距離感なんてものは全く無い。
手を伸ばせばあの色を手に入れる事が出来るんじゃないかと思うくらい、身近に空を感じることが出来た。
だけれど、伸ばす手は当然そこに届くことはなかった。
霊夢はその様子を見て、小さく笑う。
そして、ずずず、と出涸らしを啜った。
魔理沙はこの時になってようやく分かった。
こいつはわざと出涸らしを啜っているのだ、と。
「美味いか、それ?」
尋ねると、霊夢は意味深に笑って、また湯飲みに口を付けただけだった。
ならばと魔理沙も湯飲みをそっと手に持って、申し分程度に湯気を立てているそれにおそるおそる口づけた。
口の中に何とも言えない渋みが広がるのを感じる。
とてもじゃないが美味しいとは言えなかった。
「よ、よくこんなものが飲めるな」
言うと、霊夢は小さく肩を竦めた。
「物事には色々と楽しみ方があるのよ」
そしてそっとまた急須に手を伸ばす。
魔理沙は信じられない考え方をするやつだな、と呻いて、また景色に視線を戻した。
すると、口の中に渋みが加わっただけだというのに、今まで見ていた光景が変わって見えた。
色に鮮明感が増した気がするのだ。息を吸うと、どこか茶葉の匂いを感じる。
景色も寒さも冬だというのに、だ。
濃すぎる茶を飲んだせいで味と風味が残ってしまったのだろう。
しかし、そのおかげで見る事の出来る光景は、味のあるものだった。
恐れ入ったよ、そう苦笑して、魔理沙もそっと湯飲みに手をのばす。
今日は日が落ちるまで、空を見上げても飽きそうにないな、と魔理沙は思った。
それで、と僕は溜息を吐いた。
「はしゃいだ挙げ句に風邪をこじらせ、星を見る予定だった日にこうしてぐずぐず鼻を垂らしている、と」
「黙れバカ香霖」
ちーん、と勢いよく鼻をかんで魔理沙は呻く。
相当頭が痛いらしく、鼻をかんだだけで響くのだそうだ。
まったく、やれやれである。
「少しは自重してくれないか。数年前から冬に看病をすることが増えてきた気がしてならないんだが」
異変が多いからな、と魔理沙は笑う。反省の色は全くなかった。
「それはそうと、香霖」
体を半分起こして彼女は氷嚢を額からどけた。
「風邪には茶が良いらしいって聞いたことがあるんだが……」
はいはい、と布団に魔理沙を押し込んで、立ち上がった。
まんじゅうを食わせろだの本を読めだの氷枕をつくれだの。
挙げ句の果てには茶まで飲ませろという。
相変わらず破天荒振りである。
「なら、代金として、神社の星見には僕も参加させてもらおうかな」
そう言って小さく笑うと
「香霖は嫌だって霊夢が言ってたぜ」
魔理沙が平坦な口調でそう言ったので、僕は軽く衝撃を受けた。
こうやって少女は大人になるのだと知ってはいても、
なんというか、凹むものである。
そんな僕の様子を見て、魔理沙は小さく笑みを作った。
「嘘だって。連れていってやるから。な?」
騙されたらしい。
そう思うと何故か怒りより安堵がわいてくるのは何故だろう。
それはそれで妙に腹立たしいので僕は余裕を見せるために肩を竦めて見せたのだった。
このままでは済まさない。
何か一矢報いようと思い、僕は名案を思いついた。
きっと魔理沙はびっくりして文句を垂れるに違いない。
濃い緑色の茶葉を匙ですくい、ストーブの上に置かれたやかんを取りに行った。
魔理沙にはちゃんと茶を飲ませてやる。
だけれど、美味しい茶など与えてやるものか。
それでは僕の気がおさまらない。
かくなる上は、うんと渋い、うんと苦い出涸らしを飲ませてやるのだ。
彼女はどれほど驚くだろうか。
実に、楽しみだ。
ほのぼのとした日常良いですなぁ。自分もこんな風に暮らしたい…。
物語に起伏はないものの、だらだらとした会話の中に心情の小さな変化が過不足なく書かれている様に感じられ、非常に面白かったです。
キャラ・会話に違和感が感じられませんし。
>「物事には色々と楽しみ方があるのよ」
この部分がツボりました。
また次の作品もお待ちしています。
魔理沙と霊夢はいい関係だな、どこか達観してるような霊夢が素敵だ
霊夢に嫌って言われたと聞いてショックを受ける霖之助に和んだw
なんていうか、霖之助は二人の親とか兄のような視点なんだろうな
ひとつ気になったのが「出涸らし」って濃いお茶を意味する言葉でしたっけ?
もうお茶としての抽出が出来なくなってるくらい涸れてる(茶を出しつくした)茶葉、
ないしはそんな状態になってるお茶自体を指す言葉だと思っていたのですが…。
一回の抽出で新品の茶葉が出涸らしになるくらい濃く出したお茶、って意味合いは
わかりましたので、読む上で不都合はなかったですけれど。私の覚え間違いかなぁ。
白湯と大して変わらないその残りの部分。
薄い薄い、などと油断して急須の底に残っているのをずずず、と。
半端ではないです。
非常に苦いです。
……などという見苦しい合理化はここまでにさせて頂きまして。
53番さん、また読んで下さった皆様、申し訳ありません。完全に私の無知の所産です。
皆さんが私の勘違いを酌んで下さり、
「仕方ないなあ、このばかちんは全く」
と苦笑しながら読んでいらっしゃったのだと思うと恥ずかしくて仕方がありません。
出涸らしは薄い部分は捨てていましたもので苦い物だという記憶が脳にびっちりと……。
「いやいやお前さん、第一出涸らしは底の部分を飲んでも味があんまり無いくらいに薄いもんだぜ。
随分濃い出涸らし飲んでんなあ、ハハハ」
との友人の呆れた調子での言葉を聞き、「出涸らし」という状態そのものに関する認識が甘かったのだと猛省しました。
本当に申し訳ありません。そして本当に有難うございます。
まだまだ長い人生を、誤った知識と共に生きていくところでした。
このような失態を演じぬよう尽力していく所存ですが、
また何か大間違いがありましたらびしばし叩いて頂けると有り難いです(SS書きとしても、一人間としても)。
ああ、恥ずかしい。道理で今まで妙に友人達と話が噛み合わなかったわけです。
これに学んで私は良い作品を作ってみせます。
顔から火を噴いただけでは終わりませんよ。
七転び八起きです。
七転八倒にならねばいいのですが……むむぅ。
すこし変では?
霊夢可愛すぎる。
自作もとっても期待してます。
氏の何もかもが自然な描写には常々脱帽するばかりです。もっとも寒くても普段から帽子など被らない自分ですが
こういう雰囲気も、幻想郷の魅力の一つですなぁ。
ただラストの霖之助はちょっと蛇足だった気もします。
登場人物を霊夢と魔理沙の二人に絞ったほうが、個人的にはすっきり読めるかなーとか。
出涸らしとか渋茶って何か変な魅力(?)がありますよね・・・
出涸らしは薄くなったお茶、程度しか
認識していなかった自分は痴れ者です・・・orz
見せ場は無けれど、その奥には様々な意図や概念を含んでいる
風景然り、庭園然り、料理然り
「和」とは素晴らしいものです