橙が自室に戻って数刻。大分静かになったが、もう寝たに違いない。
紫も立ち上がった。
「お休みになるのですか」
藍は聞く。
紫は頷いた。
「明日もここにいらっしゃるのですか」
「朝出かけるけど、夕方までには戻って来るわ。心配しなくてもいいのよ。ちゃんとプレゼントだって用意してるから」
翌日は橙の誕生日である。藍の顔が明るくなった。
「そうですか、よかった。帰ってくるまでにはケーキとご馳走を用意しておきますから」
「うん。よろしくね」
紫は扉を開けて寝所へ続く廊下に出たが、振り返った。
「びっくりするようなプレゼントよ」
去年橙がもらったグランドピアノは二、三度使われたきり放置されている。
藍は笑った。
それから藍もコタツの始末をして床に着き、朝が来た。
藍が起きた時には既に紫はいなかった。
プレゼントを買いにいったのかもしれない。きっとそうだな、と藍は思った。
「おはよう、橙」
藍は橙を揺り起こした。
橙は寝ぼけ眼をこすって上体を起こす。
「おはようございます」
「誕生日、おめでとう」
橙は眠そうに首を動かした。
「あ、はい。ありがとうございます」
ありきたりな反応に藍は幾分気落ちする。
「プレゼントがあるから、居間へ来い」
橙が頷いてのっそりと起き上がり着替え始めたのを見て、藍は居間へ戻る。
居間から続く台所には仕込みの終わった食品が所狭しと並べられている。
後は夕方頃に焼くだけだ。
普段着に着替えた橙が居間に入ってきた。寒いのか、すぐさま藍の向かいのコタツに入る。
藍は改めてお祝いの言葉を述べてから、橙に赤い包装紙に包まれた小さな箱を渡した。
「開けてみろ」
橙の尻尾が大きく揺れた。
藍も大きく尻尾を振る。
興奮するとこうなる。
橙が包装紙に手をかけたその時である。
「ぷおお」
庭から何者かの咆哮が聞こえた。
と、同時に、どん、と大きく家全体が揺れる。
橙の尻尾が止まり、手も止まり、藍の尻尾も畳の上で萎れた。
藍の顔が曇る。
「今、何か聞こえたか」
「ぱあお、って聞こえました」
「私もだ」
二人は顔を見合わせる。
「行ってみよう」
藍が立ち上がって、橙も立ち上がった。
髪飾りの入った箱は机の上に一時放置される。
「藍様」
「大丈夫だ。様子を」
藍は玄関の扉を開けた。
絶句した。
化け物がいた。
四本足に大きな耳、長い鼻、尻尾付き。身の丈が自分の5倍はあろうか。
アフリカゾウである。
藍は扉を閉めた。
「あ。何で閉めちゃうんですか」
腰を抜かした藍はぶるぶる、と首を振る。
「化け物」
橙はこっそり扉を開けてみるなり、叫んだ。
「私、あれ、知ってます」
そして外へ駆け出す。
「危ない」
制止も聞かず、一目散に象の足下へ走っていく。
藍も仕方なく外に出た。
「きっと、紫様が連れてきたんです。今年の誕生日プレゼントですよ」
そうだろう、そうだろう。
そうでなければ無理だろう。
そうか、これが今年の誕生日プレゼントか。
藍は頭を抱えた。
「これ、象って言うんですよ」
「橙、そんなことはどうでもいい。こっちへ来い」
藍は巨獣の足の間にいる橙に手招きする。
この獣、今は大人しいがいつ動き出して橙が踏みつぶされるか分かった物ではない。
「はい」
橙が藍の方へ駆けてくると、今まで横を向いていた象がゆっくりと足踏みして藍の方へ向き直った。
「う」
目が合ってしまった。
巨体に不似合いな小さい瞳を藍は威圧する。
このまま前進されると、藍の後ろには家があるからして大震災である。
「紫様は何を考えてるんだ、馬鹿じゃないのか。私には前もって一言伝えてくれたっていいじゃないか。サプライズだって」
言ったらサプライズじゃないか。藍は首を捻る。
「藍様、あれは象です」
再び橙が言う。
藍は橙を連れて象の背後にそろそろと移動しつつ質問する。
「どこで知ったんだ」
「テレビです」
紫がしばらく前に持ち込んだテレビ、藍が観る機会は少なかったが、橙はよく観ていた。
藍はいよいよ頭を抱える。
「これは一般家庭で飼うものなのか?」
橙は首を振った。
「動物園ってところで飼います」
また聞き慣れぬワードが登場した。
橙は象の鼻に触れる。象は身をよじる。藍はもしもの事態を予測して、橙を凝視する。
「橙、離れろ。食われるぞ」
長い牙から目が離せない。あれは恐らく獲物の骨を砕き血を啜るものであろう。
「違いますよ。象は人なんて食べませんよ」
「お前が一体、この獣の何を知っている」
藍は声を荒げた。
橙は象の牙を撫でようと背伸びする。
「じゃあ、藍様は何を知っているんですか」
藍は言葉に詰まって「ぎぎぎ」と声を出す。
「この象はですね、動物園ってところで飼われていてジャガイモを食べています。人は襲いません。水浴びをします」
まず動物園が分からない。
「動物園って何だ」
「うーん」
橙は首を傾げる。彼女も実はよく分かっていない。
「牧場、みたいなものですか」
「なるほど」
藍は素直に感心した。
自分もこれからはテレビを観よう。
「で、最後は」
「最後は?」
「食べられてました」
意外。
「飼ってた人が泣きながら大勢で食べてました」
なるほど。合点がいった。
「なるほど。橙、聞け。紫様は馬鹿ではなかった。これが誕生日プレゼントのわけはないんだよ」
橙は口を開く。
「これは今晩のご馳走だ。私が無知で分からなかったのだ。いやはやまさしく外界の珍味」
「ええっ」
「泣くほど旨いとは知らなかった」
藍は何度も頷いた。
まったくプレゼントなどと勘違いした自分が恥ずかしい。何とも片腹痛い。
「食べちゃうんですか」
「ジャガイモで育ててから食うのだろう? よく見ろ。この皺加減、どう見ても成獣だ」
象は何か不穏なものを感じ取ったのか、しきりに尻尾を動かして小刻みに足踏みしている。
「はい、そうですが。でも、何か違うような。泣いてたってのは」
「食い方が分からん。橙、とりあえず包丁を持ってこい」
「ええっ」
橙は何か言いたそうに象と藍を交互に見ていたが、調理法を考えて頭を捻る藍には届かなかった。
程なくして、橙は柳刃包丁を持ってきた。
「違う、これじゃない。あの皮はこれでは切れまい。肉切り包丁だ」
藍は自分が幼獣であった頃を思い出す。
ここは一つ、橙に料理を仕込む良い機会らしい。
橙が今度は巨大な肉切り包丁を持ってきた。
久々に見える肉切り包丁の巨大さに藍も驚いた。
「橙、あれはどうやって食う」
もはや恥じらいもなく藍は聞いた。
橙は頭を捻る。
「ううん、たしか焼いてたような気がします。兵隊さんも食べてました」
ならばぶつ切りだろう。藍は象の太い足を目測する。
軍隊が食っているからにはさぞかし旨いに違いない。滋養強壮、体力壮健、万宝七珍。
と、間もなく橙が象に近づいて何やら差し出した。
「おい、橙」
橙の手の上にはジャガイモが乗っていた。
橙が手を差し出すと、象はあどけない顔で長い鼻を伸ばしジャガイモを絡め取り口に放り込んだ。
「藍様、これ可愛いですよ」
橙がまた家の中に駆け込んでいったかと思いきや、今度はリンゴを3つ持ってきた。
藍は象を一撃にて絶命させるべく心臓の位置を目測する。これだけでかければ血抜きにも一仕事だ。
象は藍と二人きりになると、何となく不安そうな表情をした。
リンゴはあっという間に象が平らげた。
でかい図体をしているだけあって、底なしである。
「藍様、これ飼っちゃ駄目ですか?」
ハプニングが起こった。
いつの間にか、情を移していたらしい橙が言った。
「駄目だろう。これからステーキにするんだよ」
藍は象に心を許せないため、一定の距離を置いている。
「こんなに可愛いのに」
象がちらりと横目で藍を見た。
子供はすぐに動物に感情移入するから困る。
「駄目なものは駄目だろう。紫様がせっかく食材を置いていってくれたのに」
「紫様に頼んでも駄目ですか」
「きっと駄目だって言うよ。橙。お前がこの獣を可愛いと思うのは分かるが、せっかく美味しいんだから食べようよ」
「頼んでも駄目ですか」
橙の声はくぐもっていた。
誕生日に泣かれるのは気分が良くない。
藍は肉切り包丁の背で肩を叩きながら唸った。
「まあ、頼んでみるだけならいいんじゃないか」
橙は浮かない顔で象の背中に飛び乗った。
象は幾分嬉しそうに背中の橙に鼻を伸ばした。
早く紫が帰ってこないと困る。これ以上、情を移されては余計に食いにくくなる。
「ううん」と藍は唸った。
しかし、考えてみれば、これから生きていく過程においてこのようなことはいくらでもあるのだ。
誕生日とはいえ、橙のためにもここは一つ社会学習として食わせるべきではないだろうか。
味も気になる。
「きっと紫様も食べるっておっしゃるよ。あの方、食べるの好きだから」
藍は言ったが、最後の方は小声になったのもあって背中の橙には届かなかった。
「何ですか」
橙が聞き返して、藍は一拍置いてから答える。
「頼んで、もし、紫様がいいって言ったら飼ってもいいんじゃないか?」
何とも情けない答えであった。
が、橙は喜んだ。
「はい、頼んでみます」
大きな声が返ってきた。
紫様は意外と橙に味方するかもしれん。その場合は文句を言うまい。
藍は肉切り包丁を研ぎに家へ入った。
「早く、帰ってこないかな。紫様」
紫も立ち上がった。
「お休みになるのですか」
藍は聞く。
紫は頷いた。
「明日もここにいらっしゃるのですか」
「朝出かけるけど、夕方までには戻って来るわ。心配しなくてもいいのよ。ちゃんとプレゼントだって用意してるから」
翌日は橙の誕生日である。藍の顔が明るくなった。
「そうですか、よかった。帰ってくるまでにはケーキとご馳走を用意しておきますから」
「うん。よろしくね」
紫は扉を開けて寝所へ続く廊下に出たが、振り返った。
「びっくりするようなプレゼントよ」
去年橙がもらったグランドピアノは二、三度使われたきり放置されている。
藍は笑った。
それから藍もコタツの始末をして床に着き、朝が来た。
藍が起きた時には既に紫はいなかった。
プレゼントを買いにいったのかもしれない。きっとそうだな、と藍は思った。
「おはよう、橙」
藍は橙を揺り起こした。
橙は寝ぼけ眼をこすって上体を起こす。
「おはようございます」
「誕生日、おめでとう」
橙は眠そうに首を動かした。
「あ、はい。ありがとうございます」
ありきたりな反応に藍は幾分気落ちする。
「プレゼントがあるから、居間へ来い」
橙が頷いてのっそりと起き上がり着替え始めたのを見て、藍は居間へ戻る。
居間から続く台所には仕込みの終わった食品が所狭しと並べられている。
後は夕方頃に焼くだけだ。
普段着に着替えた橙が居間に入ってきた。寒いのか、すぐさま藍の向かいのコタツに入る。
藍は改めてお祝いの言葉を述べてから、橙に赤い包装紙に包まれた小さな箱を渡した。
「開けてみろ」
橙の尻尾が大きく揺れた。
藍も大きく尻尾を振る。
興奮するとこうなる。
橙が包装紙に手をかけたその時である。
「ぷおお」
庭から何者かの咆哮が聞こえた。
と、同時に、どん、と大きく家全体が揺れる。
橙の尻尾が止まり、手も止まり、藍の尻尾も畳の上で萎れた。
藍の顔が曇る。
「今、何か聞こえたか」
「ぱあお、って聞こえました」
「私もだ」
二人は顔を見合わせる。
「行ってみよう」
藍が立ち上がって、橙も立ち上がった。
髪飾りの入った箱は机の上に一時放置される。
「藍様」
「大丈夫だ。様子を」
藍は玄関の扉を開けた。
絶句した。
化け物がいた。
四本足に大きな耳、長い鼻、尻尾付き。身の丈が自分の5倍はあろうか。
アフリカゾウである。
藍は扉を閉めた。
「あ。何で閉めちゃうんですか」
腰を抜かした藍はぶるぶる、と首を振る。
「化け物」
橙はこっそり扉を開けてみるなり、叫んだ。
「私、あれ、知ってます」
そして外へ駆け出す。
「危ない」
制止も聞かず、一目散に象の足下へ走っていく。
藍も仕方なく外に出た。
「きっと、紫様が連れてきたんです。今年の誕生日プレゼントですよ」
そうだろう、そうだろう。
そうでなければ無理だろう。
そうか、これが今年の誕生日プレゼントか。
藍は頭を抱えた。
「これ、象って言うんですよ」
「橙、そんなことはどうでもいい。こっちへ来い」
藍は巨獣の足の間にいる橙に手招きする。
この獣、今は大人しいがいつ動き出して橙が踏みつぶされるか分かった物ではない。
「はい」
橙が藍の方へ駆けてくると、今まで横を向いていた象がゆっくりと足踏みして藍の方へ向き直った。
「う」
目が合ってしまった。
巨体に不似合いな小さい瞳を藍は威圧する。
このまま前進されると、藍の後ろには家があるからして大震災である。
「紫様は何を考えてるんだ、馬鹿じゃないのか。私には前もって一言伝えてくれたっていいじゃないか。サプライズだって」
言ったらサプライズじゃないか。藍は首を捻る。
「藍様、あれは象です」
再び橙が言う。
藍は橙を連れて象の背後にそろそろと移動しつつ質問する。
「どこで知ったんだ」
「テレビです」
紫がしばらく前に持ち込んだテレビ、藍が観る機会は少なかったが、橙はよく観ていた。
藍はいよいよ頭を抱える。
「これは一般家庭で飼うものなのか?」
橙は首を振った。
「動物園ってところで飼います」
また聞き慣れぬワードが登場した。
橙は象の鼻に触れる。象は身をよじる。藍はもしもの事態を予測して、橙を凝視する。
「橙、離れろ。食われるぞ」
長い牙から目が離せない。あれは恐らく獲物の骨を砕き血を啜るものであろう。
「違いますよ。象は人なんて食べませんよ」
「お前が一体、この獣の何を知っている」
藍は声を荒げた。
橙は象の牙を撫でようと背伸びする。
「じゃあ、藍様は何を知っているんですか」
藍は言葉に詰まって「ぎぎぎ」と声を出す。
「この象はですね、動物園ってところで飼われていてジャガイモを食べています。人は襲いません。水浴びをします」
まず動物園が分からない。
「動物園って何だ」
「うーん」
橙は首を傾げる。彼女も実はよく分かっていない。
「牧場、みたいなものですか」
「なるほど」
藍は素直に感心した。
自分もこれからはテレビを観よう。
「で、最後は」
「最後は?」
「食べられてました」
意外。
「飼ってた人が泣きながら大勢で食べてました」
なるほど。合点がいった。
「なるほど。橙、聞け。紫様は馬鹿ではなかった。これが誕生日プレゼントのわけはないんだよ」
橙は口を開く。
「これは今晩のご馳走だ。私が無知で分からなかったのだ。いやはやまさしく外界の珍味」
「ええっ」
「泣くほど旨いとは知らなかった」
藍は何度も頷いた。
まったくプレゼントなどと勘違いした自分が恥ずかしい。何とも片腹痛い。
「食べちゃうんですか」
「ジャガイモで育ててから食うのだろう? よく見ろ。この皺加減、どう見ても成獣だ」
象は何か不穏なものを感じ取ったのか、しきりに尻尾を動かして小刻みに足踏みしている。
「はい、そうですが。でも、何か違うような。泣いてたってのは」
「食い方が分からん。橙、とりあえず包丁を持ってこい」
「ええっ」
橙は何か言いたそうに象と藍を交互に見ていたが、調理法を考えて頭を捻る藍には届かなかった。
程なくして、橙は柳刃包丁を持ってきた。
「違う、これじゃない。あの皮はこれでは切れまい。肉切り包丁だ」
藍は自分が幼獣であった頃を思い出す。
ここは一つ、橙に料理を仕込む良い機会らしい。
橙が今度は巨大な肉切り包丁を持ってきた。
久々に見える肉切り包丁の巨大さに藍も驚いた。
「橙、あれはどうやって食う」
もはや恥じらいもなく藍は聞いた。
橙は頭を捻る。
「ううん、たしか焼いてたような気がします。兵隊さんも食べてました」
ならばぶつ切りだろう。藍は象の太い足を目測する。
軍隊が食っているからにはさぞかし旨いに違いない。滋養強壮、体力壮健、万宝七珍。
と、間もなく橙が象に近づいて何やら差し出した。
「おい、橙」
橙の手の上にはジャガイモが乗っていた。
橙が手を差し出すと、象はあどけない顔で長い鼻を伸ばしジャガイモを絡め取り口に放り込んだ。
「藍様、これ可愛いですよ」
橙がまた家の中に駆け込んでいったかと思いきや、今度はリンゴを3つ持ってきた。
藍は象を一撃にて絶命させるべく心臓の位置を目測する。これだけでかければ血抜きにも一仕事だ。
象は藍と二人きりになると、何となく不安そうな表情をした。
リンゴはあっという間に象が平らげた。
でかい図体をしているだけあって、底なしである。
「藍様、これ飼っちゃ駄目ですか?」
ハプニングが起こった。
いつの間にか、情を移していたらしい橙が言った。
「駄目だろう。これからステーキにするんだよ」
藍は象に心を許せないため、一定の距離を置いている。
「こんなに可愛いのに」
象がちらりと横目で藍を見た。
子供はすぐに動物に感情移入するから困る。
「駄目なものは駄目だろう。紫様がせっかく食材を置いていってくれたのに」
「紫様に頼んでも駄目ですか」
「きっと駄目だって言うよ。橙。お前がこの獣を可愛いと思うのは分かるが、せっかく美味しいんだから食べようよ」
「頼んでも駄目ですか」
橙の声はくぐもっていた。
誕生日に泣かれるのは気分が良くない。
藍は肉切り包丁の背で肩を叩きながら唸った。
「まあ、頼んでみるだけならいいんじゃないか」
橙は浮かない顔で象の背中に飛び乗った。
象は幾分嬉しそうに背中の橙に鼻を伸ばした。
早く紫が帰ってこないと困る。これ以上、情を移されては余計に食いにくくなる。
「ううん」と藍は唸った。
しかし、考えてみれば、これから生きていく過程においてこのようなことはいくらでもあるのだ。
誕生日とはいえ、橙のためにもここは一つ社会学習として食わせるべきではないだろうか。
味も気になる。
「きっと紫様も食べるっておっしゃるよ。あの方、食べるの好きだから」
藍は言ったが、最後の方は小声になったのもあって背中の橙には届かなかった。
「何ですか」
橙が聞き返して、藍は一拍置いてから答える。
「頼んで、もし、紫様がいいって言ったら飼ってもいいんじゃないか?」
何とも情けない答えであった。
が、橙は喜んだ。
「はい、頼んでみます」
大きな声が返ってきた。
紫様は意外と橙に味方するかもしれん。その場合は文句を言うまい。
藍は肉切り包丁を研ぎに家へ入った。
「早く、帰ってこないかな。紫様」
博識で、しかもかなり長生きしている藍のことですから、
象を知らないっていうのは違和感があるのですが。
悲しいけどこれ、戦争なのよね。
象は普賢菩薩や釈迦如来の神使でもある
空想の部分が混ざってはいるでしょうが多分知ってるでしょうね
橙が言ってるのは、戦時中の動物園をテーマにした映画でしょうか。
三国の妖獣である藍は象のことを知っていそうですが、長年の間に記憶から抜け落ちたのではないかと。
ああ、それにしても紫の奇抜な行動と橙の純粋さに振り回される藍さまの構図は黄金比だなあ。
歴史が古い分守矢一家より安定感がありますね(笑)
藍様が知らないとは思えないんですよね。
藍様が「あの」九尾の狐だったらインドに行ったことあるはずだし、
そうじゃない九尾の狐でも、象は日本に来たこともある動物ですしねー。
そこだけが残念で、しかし大き過ぎる欠点かと。
面白かったですー。
でも吹いてしまったので私の負けです。ほのぼのしていいお話でした。
過去にAOEにハマッていた人間としては、象というと敵か食料だというイメージが。
幻想郷が外の世界の事について疎いと言っても、それは百数十年前に「博霊大結界」が設立され、外界との遮断が強固になってからの事で、それ以前の「虚実の結界」(500年前に設立)だけだった頃は結構簡単に行き来出来たという設定の筈ですから・・・
紫様・・・どうせプレゼントするなら気性の激しいアフリカゾウじゃなくておとなしいインドゾウにすれば良かったと思うのですが・・・ハッ!? まさかマジで喰うつもりだった??
とあとがきで大声出して笑ったw くそう、なんという不意打ちw
シュールというかほのぼのというか……w
しかし、飼うのは難しいぞ。一日に150㎏もの餌をあげなきゃいけないからな……
ゆゆ様よりも食うぞ、多分。