Coolier - 新生・東方創想話

幽香汁

2008/12/01 02:13:07
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登録タグ: コメディ 博麗霊夢 霧雨魔理沙 風見幽香 エロス 姉妹品:天子汁 幽香は作者の嫁 あたしゃここにいるよ 【編集】



「お茶うめぇな」
「お茶うまいわね」
「あーもう、飲んだらとっとと帰ってよね」

夕暮れ時、こたつを囲んでのんびりと寒さを堪能する乙女達、
霊夢と魔理沙、そして何故か幽香が三人目としてお茶をすすっていた。

「帰る家が無いのよ、どこかの巫女に部下ごと封印されたせいで」
「じゃああんたも纏めて封印してやろうか」
「あら、こわいこわい」

霊夢のじと目を受け流し、さらにお茶を一啜り。

「というわけで、今年の冬は神社にお世話になる事にするわ」
「お断りよ」
「日の光すら当たらぬ洋館で食事もままならないままこの寒さに凍え続けるくるみやエリー、
 それに夢月に幻月他様々な妖怪達……ああかわいそうに、彼女達をこんな目に合わせたのは」
「魔理沙、あんたの家に泊めてやんなさいよ」
「おいおい、ついうっかり子供の一人でも出来たらどうするんだ」
「いいじゃない、祝福してあげるわよ」
「しくしく、私を一人身にしたのはあなたなのに、その責任を取ってはくれないのね……」

などというくだらない会話を交わしながら、
神社には相変わらず茶をすする音だけが響く。

「ふぅ……ちょっと汗かいちゃったわ」
「お茶飲んで炬燵でぐーたらしてるからよ」
「そうだそうだ、というわけで炬燵内領域の譲渡を求める」
「だぁめ、炬燵の熱が無いと花が枯れてしまうわ」
「暖めてるのは私の八卦炉だぜ?」

こと領土の征服という行為に関しては幽香に勝る者は少ない、
それは炬燵内においても同様であり、今までに数多の妖怪達が奪い合ってきた
ここ博麗神社の炬燵であっても、風見幽香は常にその五割を制圧してきた。

「ならこうしましょう、私が発熱するから五割を認めなさい」
「発熱?」
「発熱よ」

勿論力技だけでは五割という領土を保ち続けるのは容易ではない、
そこで交渉である、幽香は五割を認める代わりにその対価として発熱を差し出した、
二人に見守られる中、ぽんっという軽快な音と共に幽香の脳天から一本の向日葵が咲く。

「じゃじゃーん、向日葵ヒーター」
「あんたも随分芸達者になってきたわね」
「さすが年末の隠し芸大会優勝候補なだけはあるな」
「それ、発熱~」

向日葵が発光を始めると、あわせて室温が少しずつ上昇し始める、
しかも向日葵には部屋の隅々まで万面なく暖める首振り機能までついていた。

「おー、ぬくいぬくい」
「ふふふ、これなら五割と引き換えでもいいでしょう」
「それを出し続けてくれるなら帰らなくてもいいわね」
「むしろ居座って欲しそうじゃない、しょうがない子ね、そうしてあげるわ」

ぬくーん、という音が聞こえてきそうなほど温まる部屋、
ちなみに外ではぎりぎり季節外れの大吹雪である、帰れといわれても帰れない。

「……ぬくいな」
「……ああ、ぬくい」
「……ふふ、ぬくいわね」

だがしかしこの状況を良く考えていただきたい、
お茶、炬燵、向日葵ヒーター、そして密閉された空間、
これら全てから導き出される答えといえば。

『暑い』

三人の頬をつたう水滴、冬には中々お目にかかれない希少な物である。

「第二十八回博麗会議を行います、お茶、炬燵、向日葵ヒーター、除外するならどれ?」
「八卦炉の使い道が無くなったら私がここに居られる理由がなくなるぜ」
「向日葵ヒーターもね、これで今冬一杯居座らせてもらう予定なんだから」
「あんた達の意見は分かった、でもお茶が無いと博麗の巫女は生きていけないのよ?」

話は平行性のまま、激しい議論だけが交わされ続ける、
そして数分にも及ぶ妥協線の探りあいの結果、三人は炬燵から出ることにした。

「寒くなったら入ればいいのよね」
「ああ、使う時は使う、使わない時は使わない」
「それこそが理性を持つ生物としての行動というものよ」

三人とも畳の上に寝転がり、溜め息をつきながら冷えゆく身体を堪能する。

「あふぅ、涼しい~」
「冬に涼しさを堪能する贅沢もないわよね~」
「だな……ん? なんだこの匂いは」
「匂い? ……ああ、なんかいい匂いがするわね」

部屋にほのかに香るいい匂い、それに気付いた霊夢と魔理沙は身を起こし、
くんくんとその匂いの元を探り始めた。

「……こっちの方ね」
「……こっちの方だな」

互いに匂いの元がある方向を察知し、そちらを見ると、
見事なまでに悩ましげなボディラインを披露しながら幽香が寝転がっていた。

「くんくん……花の匂いね」
「それも数種類、もっとか?」

二人は四つん這いになり、じわりじわりと幽香に近寄る。

「幽香からよね」
「幽香からだな」
「あら……どうしたの?」
「いい匂いがするのよ」
「いい匂い? どこから?」
『幽香から』
「……私?」

二人に言われて自らの匂いを確かめる幽香、
しかしどれだけ嗅いでみても顔をしかめるだけで終わる。

「別に匂いなんてしないけど?」
「何言ってるんだ、こんなトロピカーナな匂いを出しておいて」
「そうよ、アロマエキスにフローラルな香りかつラベンダー配合みたいな匂いの癖に」
「ええー?」

幽香は再度髪や腋を確かめたりするが、やはり何も匂わないようだ。

「そもそも私、汗臭くならない体質な――」
「にゃぁー!」
「ぎゃおー!」
「って、きゃぁ!」

直後、二人がまたたびにじゃれつく猫の如く幽香に飛びかかる、
霊夢が左から、魔理沙が右から飛び掛り、押し倒して上に乗りかかる。

「あふぅー、何これ、いい匂い、すっごい~」
「すっげ! なんだこれ! すっげまじすげうはぁ~」
「ちょっ、どこ嗅いでるのよ、やっ!」
「くんくんくんくん!」
「すーはーすーはー!」
「く、首筋は駄目ぇ! そこは弱いのぉ!」

匂いは幽香から発せられている為、肌が露出していればより匂いは強くなる、
そして露出している部分は顔と首周りのみ、ならばそこを嗅ぐのは必然といえよう。

「ふにぁ~」
「ゆぅか~」
「(は、払いのけたいのに……身体に力が入らない……)」

相手はたかが人間二人、幽香からすれば払いのけるのは容易いはず、
しかしそれができない、身体は脱力し、もはやなすがままに首筋を嗅がれ続ける。

「(それに何なのよこの感覚……私がこの状況に満足しているというの!?)」

すでに幽香の身体は二人を遠ざけようとすらしない、遅れて幽香の心を満たす謎の充実、
押しかかられて匂いを嗅がれながらも、幽香は幸福感に包まれていた。

「(も……駄目……抵抗……できない……)」

やがて幽香は完全に脱力し、二人に嗅がれるままとなる、
彼女の性格からすれば不可解とも思える行動は、実は植物の特性によるものだった、
一部の植物は自らの蜜と香りによって昆虫を引き寄せて花粉を媒介させる、
そして様々な植物の影響をその身に受ける幽香にとってこの状況はそれと同義、
ゆえに匂いを嗅がれ、触れ合うほどに彼女は満足感と達成感に満たされるのだ。

「この匂いだけでご飯が百杯はいけそう~」
「猫にマタタビ~、私に幽香~」
「鼻をこすり付けないで……くすぐったい、から……」
「うふふ、楽しそうねぇ、どんな匂いがするのかしら?」

三人が触れ合っている最中、にゅるりと隙間が開いて一人の妖怪が現れた、
胡散臭い笑みを浮かべているその妖怪も匂いに釣られたのだろう、
隙間越しに幽香の頭の方に移動すると、そっと自らの鼻を近づける。

「どれどれ……?」
「しゃぁっ!!」
「んぶっ!!」

それは殴ると言うにはあまりに完璧すぎた、速く、鋭く、重く、
そして直線的すぎた、それはまさに右ストレートだった。

「勝手に匂いを嗅ごうとするなんていい度胸じゃない」

すでに胡散臭い妖怪の姿は無く、ただ消えてゆく隙間があるのみ、
幽香は右手を労わるように振りながら、隙間へと別れの言葉を送った。

「幽香~、もうちょっと嗅がせて~」
「あーっ、駄目だ、止められねぇ~」
「やっ、もう……二人とも駄目だってばぁ……ひゃんっ」

花にだって相手を選ぶ権利ぐらいあるものだ。


 ―――――


「で、一刻もの間、私を拘束し続けたということがどういうことか分かってるの?」

正座する霊夢と魔理沙の前で、にこやかな笑みで威圧をかける幽香、
やられっぱなしでは悔しいのか、これから二人をサドるつもりのようだ。

「だって幽香がいい匂いを出すのが悪いんじゃない」
「そうだそうだ、それに本当に凄くいい匂いなんだぜ?」
「んうっ! いい匂いとかそんなのはどうでもいいのよ!」
「よくないわよ、あれだけいい匂いなんだから」
「ああ、今までに嗅いできた匂いの中でも最高だったぜ」
「ちょっと! 堂々と恥ずかしいこと言わないで!」

体臭を褒められると変な気分になるのは人も妖怪も大差無い。

「いい匂いー」
「フローラルハミングに百二十種のハーブを配合ー」
「あーもうわかったわよ! 一言謝れば許してあげるわよ!」
「ごめんなさいママ」
「ごめんだぜマミー」
「なっ! 誰がママ――」

言い返そうとしたところで幽香の動きがぴたりと止まる、
目の前にいる二人の目から発せられる何かを訴えるような視線、
まるで餌をねだるハムスターのようなその目は、幽香の心を鷲づかみにした。

「し、仕方ないわね……今回だけよ?」
「魔理沙、お風呂沸かしといてくれない?」
「おう、蜜柑用意してくれよな」
「……え、あれ? ちょっと……えぇー?」

その一言を聞き出せば用無しといった感じでスタスタとその場を離れる二人、
人間とは勝手な生き物である、今も昔も変わらずに。

「ぐすん……何よ……」
「蜜柑持ってきてあげたわよ」
「蜜柑なんかで……もぐもぐ……」

戻ってき霊夢と共に炬燵を囲み、小言を呟きながら蜜柑を貪る、
心なしか頭の上の向日葵ヒーターもやや下を向いて元気が無い。

「風呂沸いたぜー」

やがて魔理沙が戻ってきて、三人で蜜柑をもしゃもしゃ。

「……誰も入らないのか?」
「私は後でいいわ、幽香、一番に入っちゃっていいわよ」
「あら、いいの?」
「汗かかせちゃったでしょ」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうわね、ヒーターは好きに使ってちょうだい」
『(取り外せるのか……)』

幽香は炬燵の上に向日葵を置いて風呂場へ向かう、
それを見届けた後、魔理沙は熱の放出をやめたヒーターを掴み、興味心身に頭につけた。

「霊夢、どうだ?」
「そこそこ似合ってるわよ」
「よし、発熱するぜ!!」

魔理沙がヒーターに魔力を送り始めると、徐々に向日葵が発熱し始める。

「あっ、なんだこりゃ!」
「どうしたの? 全然光ってないわよ」
「相当疲れる! ってか私の魔力の残量がもう……」
「疲れるってどのぐらいよ」
「ブレイジングスターで飛び続けるぐらい……ぐふっ」
「魔理沙!? 魔理沙ーっ!!」

魔理沙の発言を考慮すれば非常に熱転換効率が悪いといわざるをえない、
そしてこれを平然とした顔で使い続けた幽香の魔力たるや恐ろしき。

「うう……干からびるかと思った……」
「仕方ないわね、陰陽玉にでも刺しておきましょ」
「意味あるのかそれ」
「華道みたいなものよ、えいっ」

霊夢はヒーターを魔理沙の頭からもぎ取ると、
ぷすりと陰陽玉の黒点にヒーターを突き立てた。

「……ん? おい霊夢、なんか発熱し始めてないか?」
「気のせいで……じゃないわね」
「なんか幽香がつけてたときよりもまぶしくないか!?」
「外した方がいいわね……熱っ! 何よこれ! 触れないわ!」
「お、おい、なんかどんどん眩しくなってき――」

神社の人工太陽。


 ―――――


花柄のバスローブを身に纏った幽香が部屋に戻ると、
なぜか衣服をところどころを焦がした二人の姿があった。

「えーと、何があったの?」
「陰陽玉にヒーターを刺しただけよ」
「そう……深くは聞かないでおくわ」

二人にそれ以上問わぬまま、幽香は炬燵にもぐりこむ。

「よし、行くわよ」
「ああ、ついにこの時が来たんだな」
「……どっか出かけるの?」

幽香が炬燵にもぐりこんだと同時に二人は立ち上がった、
その目は希望に満ち、その身体は喜びに震えながら。

「お風呂よお風呂、ああ楽しみ!」
「幽香汁のたっぷり染み出た風呂が私達を待ってるぜ!」
「幽香汁!?」
「幽香をお湯につけて四半刻ほど放置すれば!」
「染み出た幽香汁によってなんでもない風呂が極上の一品に!」

乙女なら誰もが夢見る、湯船一面に色とりどりの花を浮かべたお風呂、
それを擬似的に味わえるとなれば、二人が喜び勇んで風呂場に突撃するのも無理はない。

「幽香風呂! 幽香風呂!」
「幽香汁! 幽香汁!」
「幽香汁はやめて! せめて幽香エキスって言って!!」

エキスというと聞こえがいいのに、汁というとどこか卑猥なのは、
きっとそう感じる人の心が汚れているからです。

「二番風呂は私が貰うわ!」
「いいや! 私が貰うぜ!」

二人は廊下を競いながら駆け抜け、がらりと脱衣場の戸を開く。

「はぁはぁ……幽香さんの汁が染み出たお風呂……」
『ほぎゃぁぁぁぁぁ!!』

そして乙女二人の悲鳴が神社中に木霊した。

「何? 一体どうしたの?」
「く、くく、黒くてでっかいものが……」
「虫がっ! ゴキがぁー!」
「ゴキ?」

悲鳴に釣られて幽香も脱衣場に向かえば、
二人が腰を抜かしながら、さらに奥の風呂場を指差していた。

「冬なのにまだ出てくるのね、結構しぶとい……」
「幽香さんの汁おいしいよぉー!」
「って、ちょっと待ちなさい」

どこかで聞き覚えのある声、黒い塊と誤認できそうなマント、そして頭に生えた触角、
湯船に上半身を突っ込んでお湯をすすっているそれは、間違いなくあの妖怪であった。

「リグルッ! あなた! ねえ! 何! 許可! 無く! 勝手に! 私の! 汁を!」
「ああぅ! もっと! 強く! 踏んで! やんっ! あうんっ! あーっ!」
「踏んで! ください! でしょう! この! 虫が! クズが! 詫びて! お死に!!」

それはサドとマゾの避けられぬ運命、
時折聞こえる骨の軋む音が非常によろしくない。

「良かった、お湯は減ってないぜ」
「でもゴキブリが舐めた風呂よ?」
「僕はホタルですってば!」
「虫けらはお黙り! あんたなんかゴキブリで十分よ!!」
「すみません幽香しゃまぁ! 僕はゴキブリでしゅぅぅぅ!」
「幽香の汁で相殺されてるだろ」
「それもそうね」

冬場は暖かい場所にゴキブリが潜んでいる可能性があります、
冷蔵庫の裏、洗濯機の中などは特に気をつけましょう。


 ―――――


「では本日のメインイベントのお時間です、進行は鍋奉行こと、霧雨魔理沙がお送りします」

炬燵の東西南北に鎮座する霊夢、魔理沙、幽香、リグルの四名、
その中央では、土鍋がぐつぐつと蒸気をあげていた。

「鍋も沸いたところで具の投入タイムです、本日の最初の投入者は……博麗霊夢!」
「けひひ、いつもはケチる私だけど……今日は気分がいいから特別よ!」
「こ、これは……野菜だ! それも白菜! 葱! 大根の三種の神器だぁぁぁ!!」
「妖怪退治のお礼にいただいた一級品よ! さあ崇めなさい!」

白と緑のコントラストが艶やかに映る白菜、只管に長くて硬い葱、
そしてそそり立つような太さの大根が、その場で切られて鍋に投下される。

「やるじゃないか霊夢、今日は本気だな?」
「そろそろ汚名を返上しないとね」
「さて次は私の具だが」
「どうせキノコでしょ?」
「どうせキノコよね」
「くくく、甘いな……私だってたまには空気を読むことがあるんだぜ!」
『……こ、これはっ!!』

その赤を超えた紅色の身、銀色で室内を照らす鱗、
煮てよし、焼いてよし、生はちょっと危険なその魚とは。

「鮭だっ!」
「がはぁっ!!」
「霊夢!?」

鮭の切り身を帽子から取り出した途端、霊夢が仰向けに倒霊夢。

「所詮野菜は引き立て役、具の運命に負けたんだ」
「しっかりするのよ霊夢!」
「うう……所詮私は引き立て役なのね、アイコンを奪い返す事なんて出来ないのね……」
「霊夢、あなたが何を言ってるのかさっぱりわからないわ」

謎の基準によって霊夢が魔理沙に敗北し、残すは幽香とリグルのみ、
鍋には鮭が投下され、魔理沙が不適な笑みで幽香を見つめていた。

「オリエンタルフラワーマスターよ、この鮭にお前はどう抗う?」
「ふふ、抗うね……それは違うわ」
「何だと?」

幽香は傘の中から袋包みを一つ取り出すと、それを炬燵の上に置いた、
どすりと重みのありそうなその物体は、何やら高級そうな包み紙にくるまれている。

「抗うなんて私の辞書にはない……あるのは前進、制圧、そして蹂躙よ!」

そして包み紙の封印が解かれると同時に魔理沙の笑みが消えた。

「馬鹿な……」
「そ、その物体は、まさかっ!」

それは鍋の具の中でも、蟹に次ぐ位置にランクされる物。

『豚肉っ!?』
「うふふふ、ちょっと奮発してみたの」
「ママー!」
「マミー!」
「あらあら、甘えんぼさんね」

そして二人が幽香に抱きついた時、鍋勝負の勝者が決定した、
豚肉、それは鍋の為に生まれてきたと言っても過言ではない肉、
それがキロ単位で存在するのだから、そもそも勝てるはずがなかったのだ。

「はーい、豚肉入れるわよ~」
「今日は豚肉が食べれるから、幽香記念日ね」
「野菜に鮭に豚肉、こんな豪華な鍋が神社で食える日が来るなんて……」
「あ、じゃあ僕のもいれるね」

幽香が丁寧に豚肉を投下し、二人が感動している最中、
リグルによってとぽとぽと鍋に何かが注がれる。

「……待てリグル、念の為に聞くがその瓶の中の液体は何だ?」
「これ? お風呂場で取った幽香汁の一番絞りだよ、やっぱり一番絞りだと最高に風味が良――」

リグルがそこまで喋ったところで、何者かによって頭が鷲づかみにされる、
もはや誰が掴んだかは言うまでもない。

「死を、くれてやる」

そしてリグルを掴んだ妖怪は、静かに親指で自らの喉を横にきった。

「死ぬかっ! 消えるかぁ!! 土下座してでも生き延びるのかぁぁぁ!!」
「あひん! あひゃん!! おげふぅぅ!!」
「あー、どうすんのよこれ……」
「さすがに風呂のお湯じゃな……」
「今死ね! すぐ死ね! 骨まで砕けろぉ!!」
「折れてます! 砕けてます! でももっとぉ!!」
「あれ、なんかいい匂いが」
「……本当だな、もしかしてダシにもなるのか?」
「望みどおり……天んんんから落ちよぉぉぉ!!」
「あ゙ーーーーーっ!!」
「あ、これ美味しい」
「おお、いけるな」

やがてリグルはこげ炭と化した、しかし彼にとってそれは幸せな事だったに違いない、
幽香は一筋の汗を拭き取ると、鍋のほうを向きなおす。

「とりあえず、落とし前は付けさせ……」
「うまっ! これまじうまっ!」
「なんだこの銀河のような深い味は! 美味すぎる!!」
「ちょっ! なんでそんなおいしそうに食べてるのよ!!」
「や、止められない、止まらないー!!」
「幽香汁が素材の味を完全に引き出して舌の上でしゃっきりぽんだぜ!!」
「私の汁をおいしいとかいうのはやめてー!!」

もはや幽香の制止など二人の耳には届かない、彼女達の食事は鍋の汁が無くなるまで続き、
それが終わった後、そこには幽香汁の余韻に包まれ、幸せそうな顔で眠る二人の姿があったとか。















「うわぁぁぁん! 魅魔様ー!! 何とかしてくれよー!!」
「いや、何とかしてくれと言われたってねぇ……」

魅魔は困惑していた、朝早く博麗神社に着てみれば、
戸を開けると同時に魔理沙の格好をした幽香が泣きついてきたのだから。

「ふぅ……お茶が美味しいわ……」

奥を見れば巫女の格好をした幽香がまるで霊夢のようにお茶をすすっている。

「聞いてヒマワリーナ、ちょっと言い難いんだけど~」

そして部屋の片隅に目を凝らせば、ようやく風見幽香の格好をした風見幽香が見つかる、
しかし彼女は自分の頭に生えている向日葵を鏡越しに見つめ、
呆けた表情をしながらぶつぶつと何かを呟いているだけだった。

「……ふっ」

魅魔は状況を全て頭に叩き込んだ後、それを理解するのに必要な処理能力が
自らの脳には無いことを悟り、全ての思考回路を遮断する事に決めた。

「……のっぴょっぴょーん!!」

そして彼女は自我を放棄した。
          // ヽ,
        ,.└''"´ ̄ ̄   `ヽ、        やあ、ようこそ後書きへ、このきめぇ丸はサービスだから
      ,. '´     、、   ヽ  ヽ       じっくりと眺めて落ち着いて欲しい。
     ノ   ,  lヽ  j /、lヽ ト、_,,.',
   r'´ r'"イ .ノ\| .レ r=;ァ'レ'  {  }      うん、「タグもどき」なんだ、すまない。
   {  !、 l rr=-       /  `'''l.>‐ .、     さとれいむもって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
   レヽ.,ト'     ー=‐'   /    l 、,,_,,ノ
     ,}' ',          /ヘ,  /レ' ,/ >‐、 でもこのタグを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
   7'´レ1 ヽ            人ル'レ'   'i、__ノ 「ときめき」みたいなものを感じてもらえたと思う。
    ,-‐'、  レ~i`  /|__,、 ,-,ニ"、_       殺伐とした創想話で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
    !、_ノ   __ハフ  .| `ハ′/  ヽ      そう思って、このタグもどきを作ったんだ。
.,-ー、/     l      フ〈∧〉〈、  ノ>、

はい、作者です、ごめんなさい、本当に申し訳ございません。

このタグもどきですが、タグが中々つかないのにやきもきして苦労して付けました、
実際の所、注意書きが目に付いて嫌な方などがおられるそうなので前々から
どのように注意書きを書くかを考えてはいたのですが、やっぱり受け入れやすさから言うと
タグに勝る物はなさそうです、読む気をそぐこともあまり無いですし、
今回のはちょっと遊び心を加えてはおりますが、
単純に注意書きの形を変えたものとでも考えていただければ……駄目ですか、そうですか。

じゃあ、皆様のもっとも大好きなスペルカードをもらおうか(´・ω・`)
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.6950簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
先生…「姉妹品:天子汁」のタグのリンク先がないです…なかとです!許せんとです!!

それにしても…裸とか直接的な描写は無いのにとってもエロチカ。ごちそうさまでした
2.80名前が無い程度の能力削除
これは酷すぎるwww
4.無評価名前が無い程度の能力削除
>「所詮野菜は引き立て役、具の運命に負けたんだ」
>「しっかりするのよ霊夢!」
>「うう……所詮私は引き立て役なのね、アイコンを奪い返す事なんて出来ないのね……」
こーいうのウザイ
6.90名前が無い程度の能力削除
滅多に見られないタグを使った工夫はポイント高いです

受けなゆうかりんでもこの切り口は面白い
小ネタも中々w
9.100謳魚削除
サドも受けも出来て母性すら醸し出す幽香さんは正に作者様の嫁。
11.90名前が無い程度の能力削除
つ『疵符「ブロークンアミュレット」』
14.90名前が無い程度の能力削除
いや~笑った笑ったwww
28.70無名削除
変態しかいねえw
29.100名前が無い程度の能力削除
タグの「エロス」に
(これを押せば他のエロスなSSも検索一発なのか!?)
と、どれだけときめいたと思ってるんだ!
31.100名前が無い程度の能力削除
幽香汁のきいた鍋くいてえええええ
36.90名前が無い程度の能力削除
うはぁあああ僕も幽香汁飲みたうわなにをry
40.80名前が無い程度の能力削除
タグに本気で驚きました。幻想と空想の混ぜ人め、いたずらばかりしおって!
それはともあれ、ゆうかりんエキスは素敵すぎます。肌にも優しそうですし、私の家にもガロン単位で欲しいところ。
41.100名前が無い程度の能力削除
これはいいゆうかりんですね
42.100名前が無い程度の能力削除
さりげなくリグルの1人称が僕、3人称が彼なんですがw
姉妹品のは・・・鍋には入れたくないな。うん。ミスティア汁なら別ですが。

一番好きなスペカは・・・符の参「八雲藍」かな。画面内に八雲一家総出演!
45.90名前が無い程度の能力削除
穣子汁ください
46.90名前が無い程度の能力削除
新機能実装か!?と焦ったぜw

とりあえず幽香汁ジョッキでください。
つ 秘術 「天文密葬法」
48.100名前が無い程度の能削除
てんこ汁入れたら、やっぱり絶壁になるのかなぁ。

>幽香は作者の嫁
悪いことは言わない、悪戯して消し炭になりたくなかったら寄越しなさい。
49.90回転魔削除
幽香=ゲーティアすぎるwww
54.100名前が無い程度の能力削除
> 天子汁
俺のときめきを返してください・・・
56.90名前が無い程度の能力削除
え・・・・・えーと・・・・・・
どこから突っ込んでほしいのかなwwwww
58.90名前が無い程度の能力削除
幽香鍋くいてー
60.90名前が無い程度の能力削除
タグ見てwktk余裕でした
しかし天子汁はひどいじゃないか。本気で探しまわってしまったじゃないか
62.100名前が無い程度の能力削除
風見幽香(cv若本)ですね、解ります。
63.100名前が無い程度の能力削除
美味しくいただかせてもらいましたっ☆ ですね、分かります。
69.100名前ガの兎削除
タグ見て後書き一発ネタwwwwwwwwと思ったら中身も一級品のネタだった件について。
貴方の幽香を嫁にください。
70.100名前が書けない程度の脳力削除
不覚にも・・・ときめいてしまった。もはやこの点数以外にはないw
71.100名前が無い程度の能力削除
ベガ(庵)、イグニス、バルバトス
なんという超豪華若本メドレーwww
73.100名前が無い程度の能力削除
アイコン吹いたwwwwww

つ魔砲「ファイナルスパーク」
76.100名前が無い程度の能力削除
畜生、wktkしながらタグをクリックしたのに・・・!
弄んだな!僕の純粋な気持ちを弄んだなあッ!!
80.70牧場主削除
天子汁よこせええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ

つ蓬莱「凱風快晴 - フジヤマヴォルケイノ - 」
82.100名前が無い程度の能力削除
最後の最後に魅魔様なにしてんのw
オチがよすぎるだろw
83.100名前を表示しない程度の能力削除
タグすげぇ!と思ってリンク先をブラウザ左下で確認したら全部同じwww編集ボタンまでwww
しかも本編ぶっ飛ばしすぎだろwwwwwwww

そして若本な幽香を拝めたので捏造スペカ置いときますね。
っ「ワールドデストロイヤー」
84.80名前が無い程度の能力削除
面白かったけど最後の
>魔理沙の格好をした幽香
>巫女の格好をした幽香
>風見幽香の格好をした風見幽香
誰が誰か分からないが????

それと巫女のアイコンはこれから先もないでしょうねw
87.無評価名前が無い程度の能力削除
えろす! えろすっ!!
100.90名前が無い程度の能力削除
これは酷いww いやー、面白かったです。
107.100名前が無い程度の能力削除
これはいい
すごくいい
タグも面白いです
109.100名前が無い程度の能力削除
グッドエロス!!
110.100有風削除
>きっとそう感じる人の心が汚れているからです。
はい、汚れていますwww 汚れているともさっ!!
112.100名前が無い程度の能力削除
タwwwグwwww
ナイスエロス
114.無評価名前が無い程度の能力削除
作者GS好きだなwwww
128.100名前が無い程度の能力削除
幽香のおつゆおいしい
129.100名前が無い程度の能力削除
ナイスエロス!
130.90名前が無い程度の能力削除
ちょw
134.100Romanov削除
幽香汁で幽香化したっ!?
135.100名前が無い程度の能力削除
ナイスエロス!
ナロス!
136.90名前が無い程度の能力削除
チートファイナーも使えそうな幽香だ
139.100名前が無い程度の能力削除
全てが幽香になる……!
何という(俺にとっての)理想郷!
147.100 削除
のっぴょっぴょーんwwwwwwwwwwww
149.100名前が無い程度の能力削除
なんかすげぇwwww
153.100名前が無い程度の能力削除
幽香汁で自分も緑髪の似合う素敵な少女になれました。あと、腕力も上がりました。
160.100名前が無い程度の能力削除
幽香汁!幽香汁!
179.100業が深い削除
幽香の脇汁を希望
188.100名前が無い程度の能力削除
ぱんぴれぽにょーん!