空の片隅から三日月が昇り始めた。黄昏の光も徐々に薄くなりつつある街道を歩きながら、妹紅は提灯代わり
に小さな妖火を一つ浮かべる。一歩歩くたび腰に差した聖剣・えくすかりばぁがぶらぶらと間抜けに揺れ、つい
ついため息をついてしまう。
(面倒なことになったな)
足取りは重い。重くもなろうというものだ。こんな下らないごっこ遊びに付き合わされているという状況の理
不尽さもさることながら、筋書きが良くない。
鬼に捕まった子供を助けに行く、などとは。
――化け物!
またあの声が蘇ってきて、胸の奥がずきずきと痛んだ。妹紅は束の間道の真ん中で足を止め、緩く、長く息を
整える。あれから何百年も経っているというのに、傷は未だに癒えてくれない。
(やめろ、忘れろ。こんなことでいちいち心を乱すんじゃない。大体、今回のはただのごっこ遊びじゃないの)
それならいっそ帰ってしまおうか、という考えが、一瞬脳裏を過ぎる。
そうしてしまったところで、特に問題はないはずなのだ。自分が遊びに付き合わなかったからと言って、萃香
が子供たちに乱暴するということはあるまいし。
(放っておいて帰る、か)
なかなか悪くない選択肢に思える。そもそも人と関わること自体、妹紅にとってはあまり好ましいことではない。
だが彼女の足が住み慣れた竹林の方向へ向くことはなかった。帰ってしまおうかと思うたび、同時に頭の中に
蘇る言葉があった。
――子供たちの心にトラウマを作るつもりなのでしょ?
「イヤなババァだ、まったく」
悪態をつく妹紅の脳裏に、先ほどとは違う風景が立ち現れた。
広い屋敷の片隅で、一人寂しそうな表情で毬をつく女の子の姿。
(……辛いんだよな。寂しくて心細いのに、誰も来てくれないのって)
結局のところ、自分はこのお伽噺に乗っかってやるしかないらしい。妹紅は嫌々ながらもそれを再確認した。
(確認したところで)
首を傾げながら、腰のえくすかりばぁを引き抜いてみる。妖火の光を照り返して鈍く輝くこの刀、しかし金属
らしき重量感は全くない。どうやら模造刀らしい。
試しに天に向かってかざしたり、軽く地に突き刺したりしてみたが、何も起こらない。どうやら先ほど紫が一
生懸命並べて立てていた設定は、本当にただの設定に過ぎないらしい。
(こんなもので、どうやって鬼退治しろっていうんだろ。いや、そもそもこれを使う必要、あるのかな)
萃香が昨日興奮しながら話していた通り、妹紅は確かに鬼を退治した経験がある。しかしそれはあくまでも長
く生きて様々な妖術を身につけた人外の者として、力押しで打ち倒したというだけの話である。正式な鬼退治の
方法など少しも知らないのだ。
(まあ、ごっこ遊びなんだから、本当の意味であの小鬼を退治しちゃったらマズイんだろうけど)
となると、何がしかの筋書きがあるはずである。このお伽噺の中だけで通用する、鬼の倒し方というのが。
こんなことなら焼き捨てたりせずに、簡単にでも台本に目を通しておくべきだったか。
(……ま、今は考えても仕方がないか)
幸か不幸かこの後何らかのイベントとやらが発生するらしいから、そのときに遭遇した役者に話を聞けばいい
だろう。
そう考えた妹紅の耳に、突如として女の悲鳴が飛び込んできた。
「あ~~~れ~~~~~」
「おのれ妖怪めわたしが成敗してくれる」
「ちんちーん!」
最初はノリノリすぎ、次は大根、最後は意味不明。
脱力感で倒れこみそうになりつつ、妹紅は嫌々ながらも声の方向へと足を進める。
果たして、少し道を行った先で展開されていた光景は。
「きゃー、たすけてー、食べられちゃうー!」
「とか言いつつミスティアの足にかぶりつくのはおやめください、幽々子様!」
「き、キシャー! た、食べちゃうぞーっていうか食べられるぅぅぅぅっ! ちんちーん!」
冥界のお嬢様が悲鳴を上げながら鳥の妖怪に飛びつき、半人半霊の庭師が刀片手にそれを止め、鳥の妖怪がち
んちんちんちん鳴きながら、というか泣きながら、襲うんだか逃げるんだか判別しかねる姿勢で大きく腕を振り
回している。
無言でそれを見つめる妹紅に、庭師がいち早く気づいて駆け寄ってきた。
「ああ死なない太郎様どうかお助け下さい」
棒読みでそう言われて、妹紅は無表情のまま答えた。
「パス」
「パスって……ちょ、ど、どこへ行かれるんですか!」
「いやだから、パス」
道の先へ歩いていこうとする妹紅の袖に、庭師が必死に縋りつく。
「た、助けてくださいよ、我が家のお嬢様を!」
そのお嬢様はというと、必死に逃げようとする鳥の妖怪を地に押し倒し、彼女のスカートに頭を突っ込んでい
る。どうやらむっちりとした肉付きのいい太ももを己の舌でご賞味なさっている最中らしい。
「助け要らないでしょ! むしろ妖怪側を助けるべき場面よこれは!」
「うう……わ、わたしもそう思うんだけど、いや、でもそうしないと劇の進行が……」
涙目で言い募る庭師を妹紅が振り払おうとしたとき、空の上から耳をつんざくような笛の音が降ってきた
「駄目ですよー、ちゃんとイベントをこなしていただかないとー!」
軽やかな羽ばたきと共に夜空から降りてきたのは、鴉天狗の射命丸文である。以前取材を受けたことがあるの
で、妹紅とも顔見知りだ。彼女は口にくわえたホイッスルを離しながら、ぷりぷり怒って妹紅を指さす。
「もう、なにやってるんですか死なない太郎さん、ここは鳥妖怪にやられて半死半生の護衛剣士に代わって、旅
の令嬢を助けてる場面ですよ! 台本読んでないんですか!?」
「燃やした」
「もやっ……な、なにやってるんですかあなたは!」
「なにやってんだろうねホント」
虚脱感に任せて投げやりに呟く妹紅の前で、文が右手で頭を押さえる。
「しっかりしてくださいよ。この劇がうまくいかないと、わたしが怒られるんですから」
「怒られる? 萃香に?」
「ええ。山の縦社会ってやつでね……今回の劇でも、山の天狗総出で死なない太郎と空中大決戦をやれ、とか無
茶言うんですもん」
「うわ、そりゃ疲れそうだね。ますます嫌になってきた」
妹紅が顔をしかめると、「あはは、大丈夫大丈夫」と文が気楽そうに手を揺らした。
「なにせみんな天狗ですからね。上手いこと言いくるめて、被害者を一人にまで抑え込むことに成功したのです
よ。空中大決戦は中止です」
「要するに下っ端に押しつけたってことね」
「いやですねえ、人聞きの悪い言い方しないでくださいよ。これも椛の修行のためなんですから」
「誰だか知らないけど気の毒だね、その椛ってのも」
二人がそんな風にのんきな会話を交わしている間にも、もちろん劇は進行中である。「おやめ下さい幽々子
様!」と必死に止める庭師の前では、お嬢様が優雅に味見の最中であった。衣服の乱れた哀れな鳥の妖怪は、体
中を涎でベトベトに汚され、息も絶え絶えという悲惨な状態だ。
「うふふー、もう我慢できなーい」
「イヤーッ、お嫁に行けなくなっちゃうーっ!」
「あやややや、これは大変です」
「うんまあ、ある意味大変な状況だとは思う」
「なにせあの鳥の妖怪の内臓にはすごい毒が含まれてますからね! 一口で象が死ぬぐらいの! このままでは
お嬢様がお腹を壊してお嬢様らしからぬことになってしまいます!」
「大変ってそっちかよ!」
「当たり前でしょう。これは『鳥の妖怪のせいで大変な目に遭いそうになっているお嬢様を助ける場面』なんで
すから」
「あくまでもそこにこだわるか」
ぎりりと歯を噛む妹紅の前で、文は幽々子とミスティアに向かって、張り切って腕を伸ばす。
「さあ、早く鳥の妖怪を退治してください、死なない太郎さん!」
「退治って……燃やせばいいの?」
「誰が焼き鳥を作れと言いましたか。あなたは最強の武器を持っているはずですよ!」
「最強の武器って……これ?」
今も手に持ったままのえくすかりばぁに目を落とすと、文が深く頷いてみせた。
「無論です。それは一撃でどんな妖怪でも……それこそ鬼すら退治できる天下の名刀ですからね!」
「要するにわたしが敵役を一発ぶっ叩けば勝ちっていうルールなわけね。把握した」
「あなたって人は」
何か言いたげな文を横目に、妹紅は幽々子とミスティアに歩み寄る。妖夢が顔を輝かせた。
「ああ妖怪を退治してくださるのですか死なない太郎様」
「うん。それはまあ、いいんだけど」
悲鳴を上げるミスティアの首筋に噛みつこうとしている幽々子の前で、妹紅は首を傾げた。
「この場合、どっちを退治すべきだと思う?」
「……鳥の方を」
数秒の間を置いて、妖夢が自信なさげに答えた。
毛布にくるまれて泣きじゃりながら震えているミスティアの前で、「緊急医療班」という腕章をつけた永琳が
「大丈夫、気は確か? わたしの言ってることが分かる?」と優しい声音で呼びかけている。
そんな心温まる光景の横で、妹紅は引きつった笑みを浮かべながら、救出したお嬢様と向き合っていた。
「助けてくださってありがとうございましたー……チッ」
「おい庭師、このお嬢様今舌打ちしやがったよ」
「き、気のせいじゃ、ないですか」
胃の辺りを押さえながら、妖夢が半泣きの表情で答える。哀れな奴め、とため息をつきながら、妹紅は呆れ半
分に幽々子を見つめる。
「じゃ、さっさと済ませてくれない? なんか筋書きがあるんでしょ、わたしは救出したあんたとどういう会話
を交わせばいいわけ?」
自分でもおざなりだと分かる口調でそう言うと、幽々子はどことなく冷やかな微笑みを返してきた。
「つまらないことを言うのね、あなた」
「なにが」
「経緯はどうあれ、この馬鹿らしくも愛おしいおとぎ話に乗ろうと決めたのでしょうに。それなら、もう少し英
雄らしく振舞ってもいいんじゃないかしら。そんな態度では何事も楽しめないわ」
「知らないね、そんなの。わたしはただ必要最低限のことをやるだけよ。こんなくだらないことは今夜限り。誰
がなんと言おうとね」
幽々子の表情に合わせた冷たい口調でそう言うと、亡霊のお嬢様は口元を隠して目を細めた。嫌な笑い方だ、
と妹紅は顔をしかめる。
「なにさ」
「だって、おかしいんですもの。わたしが亡霊であなたが人間なのに、今はまるで反対みたい」
「どういう意味さ」
「今のあなた、生きてるんだか死んでるんだか分からないわ。生気がないということことね。死に誘うまでもな
く死んでいるみたいだから、ちっとも怖くない」
口調は戯れにふざけているといった感じだが、幽々子の瞳はこちらの心の内まで見透かすかのごとく鋭い、よ
うに思える。
妹紅は居心地が悪くなり、その視線から逃れるように顔を背けた。
「……劇への参加態度であんたに批判される覚えはないね。あれだけ好き勝手やっておいて」
「あら、わたしは台本の筋書きから逸脱した行動は取っていないわよ? あのぐらいならアドリブ、つまり臨機
応変な対応の範疇だもの」
「そりゃ寛容なことで」
吐き捨てる妹紅の前で、幽々子は微笑みながら妖夢に目配せをする。庭師は一つ頷いて、中途半端に膨らんだ
袋を恭しく差し出してきた。
「これは?」
「きび団子です」
「……なんでお嬢様を助けたお礼がきび団子?」
「そういう台本ですから」
「ああそう」
微妙に納得がいかないまま袋を受け取りながら、妹紅は問う。
「つまり今後の展開で必要になるわけね? 犬猿雉でも出てくるの?」
幽々子が口元を袖で隠して悪戯っぽく笑った。
「教えてあげない」
「おい」
「それは筋書きの内に含まれていないもの。折角の台本をちゃんと読まない困ったちゃんは、何が起きるのかと
戸惑いながら暗い道を進むといいわ」
どことなく棘が感じられる口調である。妹紅は眉をひそめた。
「……あんた、ひょっとしてなんか怒ってる?」
「あなただったらどうかしら? 友達が一生懸命書いていた台本が誰かに燃やされたって聞いたら」
つまりこいつもババァか、と思いながら、妹紅は鼻を鳴らす。
「知らないね。友達なんてもの、この数百年来持ったこともない」
「あら、人里の教師とは仲良しだと聞いているけど?」
「慧音は」
一瞬、妹紅は言葉に詰まる。
「……知り合いだよ、ただの。それ以上でもそれ以下でもないね」
「あらそう。ところで」
また嫌味が来るか、と身構える妹紅の前で、幽々子はおもむろに腹を押さえた。
「お腹がすいたわ」
「は?」
「ほら、さっき食べ損ねちゃったから」
妹紅の視界の片隅で、ミスティアがびくりと肩を震わせる。だが幽々子の視線はそちらではなく、妹紅の手の
中にある袋に向いた。
「そのお団子、劇の小道具としては勿体ないぐらいの出来なのよねえ」
「はあ。そうなんだ」
「そうなのよ。だからね」
幽々子の目が妖しく光り、唇の端から涎が垂れ落ちる。
「お逃げください死なない太郎様!」
突然、今まで黙っていた庭師が妹紅と幽々子の間に割って入った。刀を抜き放ちながらやたらと悲壮な声で叫ぶ。
「ここはわたしが食い止めますから、お早く!」
「ちょ、ちょっと、一体どういう」
唐突な展開に目を白黒させる妹紅の前で、妖夢が肩越しに振り向いた。庭師の目尻に涙が光る。
「わたしが今まで、その袋の中身を守るためにどれだけ苦労したか……!」
「は」
「最初は3袋渡されていたきび団子も、今やそれだけ……! 最後の1袋すら失うわけにはいかない! さあ、
早く逃げてください!」
「妖夢、わたしを裏切るのね……!」
ゆらりと両腕を広げる幽々子の声には、割と本気っぽい呪詛が宿っている、ような気がする。
「さあ、早く!」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
庭師の悲壮な声に従って、妹紅は渋々と走り出す。
どこからどこまでが台本通りなのか、さっぱり判別がつかないままに。
なにがなんだか分からぬままきび団子を入手した妹紅は、刀と一緒に袋を腰にぶら下げて、薄暗い夜道を一人
で歩く。
と言っても、実際には一人ではない。どこかで文が見張っているはずである。
「今回のわたしは撮影係ですからね! 面倒なことは全部椛に押し付け……いや、栄えある女優は後輩に譲って
あげて、裏方に徹することにしたのですよ!」
先ほど去るとき、そんな風に言っていた。物は言い様だな、としみじみ思う妹紅である。
(さて、次の展開はどうなるか……)
歩きながら、妹紅は首を傾げる。
あれだけ桃太郎を絶賛していた萃香のことだから、てっきりあれがベースになったお伽噺かと思っていた。し
かし、先ほどの変な展開を見る限りでは、必ずしもそうとは限らないらしい。
それこそ鬼が出るか蛇が出るかといった状況である。
(普通に犬猿雉が出てくるのか……いや、その前に鬼の斥候かなにかと遭遇して、自分の力不足を実感して部下
集めに走る、とかそういう展開かも)
そんな風に自然と今後の展開を予想している自分に気づいて、妹紅は首を振った。
(どうでもいいでしょそんなことは。何が起ころうともただ適当に流してりゃ、それでいいんだから)
そう自分に言い聞かせるも、想像は次から次へと湧いてくる。敵はどんなのが来るか、罠なんかはあるのか、
犬猿雉の役は一体誰がやってるんだろう、とか。
「だーもう!」
妹紅は道の真ん中でぶんぶんと首を振る。気がつけば、この無茶苦茶なお伽噺にのめり込みかけている自分が
腹立たしい。
(……昔っからこうなんだよね、わたし。一人で盛り上がっちゃうっていうか)
広い屋敷の片隅にある一室で膝を抱え、一人空想の世界に想いを馳せる小さな女の子の姿が、自然と脳裏に浮
かぶ。その少女が成長し、かつての自分と同じぐらい小さな女の子に、いろいろと話を聞かせてやっている姿も。
妹紅の胸が、またずきりと痛んだ。
(……忘れろ、適当に流すんだ。それが一番いいんだ、深く関わったって、ロクなことになりゃしないんだから)
自分にそう言い聞かせながら、小さな木立の中の道へ足を踏み入れた瞬間、
「来たな死なない太郎!」
どことなく一生懸命さを感じる声が響き、頭上を覆い隠している木々の枝が大きく揺れた。咄嗟に飛びのくと
同時に、小柄な人影が落下してくる。剣を下に向けながら落ちてきたのは、犬のような耳と尻尾を持つ、白い天
狗の少女であった。少女は地面に突き立った剣を引き抜きながら、不敵な笑みを浮かべてみせる。
「フハハハハ、よくぞかわした死なない太郎! そうでなくては面白みがない! わたしは伊吹萃香様に仕える
四天王第一の刺客、その名も犬走椛」
「ああ、あんたが先輩から仕事全部押し付けられた可愛そうな下っ端天狗?」
別段馬鹿にするつもりもなく、むしろ同情を込めてそう言う。椛は耳と尻尾を委縮させ、困ったようにこちら
を見た。小声で話しかけてくる。
「あのぅ、そういう話はもう少し後で……わたしの演技が拙いのは申し訳ないのですが、どうか我慢してお付き
合いください。こういった筋書きと配役になっておりますもので」
「はあ、そう。なんか、大変だねあんたも」
「いえ、そんなことは……これも立派な天狗になるための修行の一つですから。わふ」
本気でそう考えているらしく、暗闇の中でぱたぱたと尻尾を振る椛の瞳はどこまでも真っ直ぐである。
(参ったな)
妹紅は頭を掻いた。どうも、こういう風に誠実な態度で来られると弱い。もう少し真面目に付き合ってやろう
か、という気になってしまう。
(仕方ない、か)
小さく息をつき、妹紅はえくすかりばぁを抜き放つ。そして、先ほどよりは幾分真面目に、見よう見まねで構
えてみた。
「来い、犬走椛! 死なない太郎が成敗してやろう!」
「わふ! あ、ありがとうござ……ああ、いや」
お礼を言いかけて途中でやめたあと、椛は一つ咳払いしてからおもむろに哄笑を上げた。
「フハハハハ、よくぞ言った死なない太郎! この犬走椛の刀の錆にしてくれようぞ!」
「それはこちらの台詞だ、悪行の報いを受けるがいい!」
椛の多少稚拙だが熱心な演技に影響されてか、ついそんな台詞が口から飛び出した。内心ちょっと恥ずかしが
りながら、妹紅は軽やかに地を蹴る。
台本を読んでいないからよく分からないが、これはそれほど難度の高い戦闘ではなかったらしい。妹紅自身は
刀などほとんど使ったことがなかったので多少不安だったのだが、椛は上手い具合に絵になるようにこちらの斬
撃を受け止め、また、こちらが受けられる程度の速さで得物を振るってくれた。
そうして数分ほど斬り合ったあと、椛が大げさに刀を振り上げた。明らかに、作られた隙である。
「隙あり!」
妹紅は大きく地を蹴り、椛の胴にえくすかりばぁを叩きこむ。交差したあとで振り返ると、斬られた部分を手
で押さえながら、椛が顔を歪めて振り返ったところだった。
「ぐぅ……み、見事だ死なない太郎。まさか四天王であるこのわたしが破れるとは……だ、だが覚えておけ、わ
たしの後に控えている三人は、わたしよりもずっと、強い、ぞ……!」
苦悶の声を絞り出し、椛ががっくりと膝を突く。えくすかりばぁを鞘に収めながら、妹紅は目を細めた。
「誰が来ようと関係ない。わたしは死なない太郎、子供たちを救い出すまで、決して倒れはしない」
静かな口調でそう言うと、椛は歪めた顔でにやりと笑った。
「ふふ……見上げた覚悟よ。最後にお主のような英雄と戦えたこと、誇りに思うぞ……萃香様、ばんざーい!」
吼えるような断末魔を上げながら、椛がばたりと地に倒れ伏す。
「哀れ。仕える主を間違えたな……」
哀愁漂う口調でそんなことを呟いてしまってから、妹紅ははっと我に返った。
(……なにやってるんだわたしは……!)
顔面が熱くなってくる。椛の演技がなかなか気合いの入ったものだったから、ついつい引きずり込まれしまっ
た。適当に流す、どころの話ではない。
恥ずかしさのあまり両手で顔を覆って立ち尽くす妹紅に、誰かが低い声で呼びかけてきた。
「死なない太郎さん、死なない太郎さん」
抑えられた声音に顔を上げると、倒れ伏したままの椛がさり気なく親指を立てているのが見えた。グッドジョブ。
(いい奴だなあ)
少しじーんとしながら、妹紅は椛に背を向けて歩き出す。と同時に、背後で何かが飛びあがるような音が聞こ
えた。怪訝に思って振り返ってみると、椛の姿が消えている。
(なんだろ)
首を傾げるが、まあ他にも何か雑用などがあるのだろう、と納得する。
(下っ端だって言ってたもんねえ、あいつ。早く出世できればいいけど)
でも要領よくなさそうだから苦労しそうだなあ、と、妹紅はつい笑ってしまう。そうしてから、慌てて首を
振った。
(ええい、変に親しみを覚えるなっていうのに。流すんだ、淡々と流すんだ……!)
この後の展開は予想がついている。四天王はあと三人、とか言っていたし、この後も知り合いの誰かが襲撃を
かけてくるのだろう。分かってさえいれば、対応は容易い。適当に斬り合って適当に片づければいいのだ。幸い、
こちらが勝つのは流れとして決まっているようだし。
(予想通りの展開が続くんなら、さっきみたいに乗せられることもない。大丈夫、冷淡に、無関心に振舞うんだ……!)
自分に言い聞かせながら、妹紅はゆっくりと足を進める。
果たして数十歩ほど進んだところで、「待てぇい!」という声が後ろから聞こえてきた。
(次の四天王か!)
ずいぶん早い気がするが、幻想郷自体があまり広くないからイベント同士の間隔も短くならざるを得ないのだ
ろう。そう考えながら振り返ると、予想通りそこには一人の妖怪が立っていて、
「って、オイ」
「ふ、ふふふ……のこのこと現れたな死なない太郎」
「いやさ」
「犬走椛を倒したようだが、奴は我々の中でも一番の下っ端……あんな出来そこないを倒したぐらいでいい気に
なってもらっては困る。貴様を冥府に送るのは、そう、このわたし……!」
親指で自分を指さし、
「猫走まみじ様だ!」
「いやいやいやいや! ちょっと待て、いいから待て!」
叫びながら、妹紅はその妖怪の両肩をつかむ。急いで衣装を替えてきたと思しき猫走まみじ……否、犬走椛が、
目を白黒させた。
「ちょ、ダメですよ死なない太郎さん、四天王第二の刺客に対してそんな親しげに振舞っちゃ」
「あんたはさっき出てきたでしょ! 第一の刺客としてわたしに斬り倒されたばっかりでしょうが!」
「わふ。あれは犬走椛です。今の私は四天王第二の刺客猫走まみじですから」
「つまり一人二役!? なに、そこまで人手不足なのこれ!?」
「はい。先輩方が皆さんご病気や不慮の事故で倒れられまして」
「いやそれ絶対仮病だから」
「ですがご安心ください!」
瞳にやる気の炎を滾らせながら、椛が頼もしげな声で言う。
「わたしも妖怪の山を取り仕切る天狗の端くれ、必ずやちゃんと演じ分けて見せますので!」
「いや、そんなところで気合いを入れられても」
げんなりしてきた妹紅の前で、椛が申し訳なさそうに耳を伏せる。
「とはいえ何分素人、拙い演技で死なない太郎さんのやる気を削いでしまうかもしれませんが、どうか平にご容
赦をいただければ、と」
「むしろあんたに詫びたい気持ちでいっぱいよわたしは……」
椛のあまりの下っ端ぶりにちょっと泣けてきた妹紅である。とにかくこんなことはさっさと終わらせなければ
ならぬ、と決意し、四天王第二の刺客から飛び退る。
「よし、じゃあかかってこい、ええと……猫走まみじ! 出来るだけ早く終わらせてあげるから!」
「ニャハハハハ、そう簡単に行くと思うなよ死なない太郎!」
微妙に笑い方を変えている辺り、椛の真面目さが窺えるというものである。彼女はむむむ、と唸りながら、胸
の前で両手を合わせ、印を組んでみせる。
「猫走妖術、ニャンニャン子猫大暴走の術! きえーっ!」
なんじゃそりゃ、と突っ込むよりも早く、木立の中からたくさんの猫たちの鳴き声が聞こえてきた。なんだ、
と思って見てみると、暗闇の向こうからたくさんの子猫たちがにゃーにゃーと可愛らしく鳴きながら猛然と走っ
てくる。
「な、なにこれ!?」
「ニャハハハハ、これぞニャンニャん子猫大暴走の術! どうだ、子猫ちゃんたちのあまりの愛くるしさに手も
足も出まい! 全身を甘噛みされて悶え死ぬがいいわ!」
「ええい、また微妙に対応に困る術を……!」
しかし、これは厄介である。こちらに向かって一生懸命駆けてくる子猫たちは、実際ずいぶん可愛らしい。い
かに模造品とは言え、あれを刀で追い払ってしまったら間違いなく悪者だ。淡々と流すといっても、やっていい
ことと悪いことがある。
(どうする、どうすれば……!)
妹紅が苦悩している間も、子猫の群れはどんどん迫ってくる。そしてついに先頭の一匹が妹紅のもんぺに飛びつき、
「にゃー」
と、すりすり頬を擦りつけはじめた。
「……はい?」
唖然とする妹紅に、他の子猫たちもどんどん飛びついてくる。最初の猫同様頬を擦りつけるもの、もんぺの中
に潜り込むもの、足下で丸まって眠り始めるもの、一生懸命頭に向かって上ってくるもの。行動は様々であるが、
皆一様に敵意らしきものは感じない。
「ええと」
「こ、こら、あんたたち!」
不意に、木立の中から小柄な影が転がり出てきた。猫のような耳を生やした、妖獣の女の子である。妹紅の前
に駆け寄ってくると、すり寄っている子猫たちを必死で引き剥がし始めた。
「懐いちゃ駄目でしょ、懐いちゃ! ちゃんと襲いなさいって、いたっ!」
少女の腕の中で暴れていた一匹の子猫が、まだ未発達な爪で彼女の手を引っ掻いた。他の子猫たちも、子猫な
りに獰猛な唸り声を上げて、一斉に敵意を露わにする。
少女は目の前の光景が信じられないように呆然と立ち尽くしていたが、やがてその瞳に涙がせり上がってきて、
「み、みんな、ひどいよぉぉぉぉぉぉぉっ! らんさまああああぁぁぁぁぁっ!」
と、泣きながらどこかへ走り去ってしまった。
子猫たちが勝利の雄叫びのように可愛らしい鳴き声を上げる横で、妹紅と椛は気まずげに立ち尽くす。
「……なんていうか、ごめんね」
「わふ……さすがにこれは予想外でした……」
「なんか、昔から動物とかに好かれやすくてさ、わたし」
「ううむ、分かるような気もしますが……ああ、橙さんには悪いことをしてしまいました。後で謝らないと」
「むしろ今の子に第二の刺客をやらせた方が良かったんじゃ」
「いえいえ、これはわたしの仕事ですので」
椛は懐から手の平サイズの瓶を取り出した。蓋を開けて、中身を次々と木立の方へ放り投げる。子猫たちが一
斉にそちらの方へ駆けて行った。
「こんなときのためににぼしを用意しておいて良かったです」
「準備がいいというかなんというか」
呆れつつも、妹紅は椛に歩み寄る。そしてすっかり諦めた様子の彼女を、べしっとえくすかりばぁで引っ叩いた。
「ぐああああああ、まさか、このわたしがやられるとはぁ! 萃香様、お許しくださぁぁぁいっ!」
またも気合いの入った断末魔を上げながら、椛がばたりと地に倒れる。
妹紅は嫌な予感をひしひしと感じながら椛に背を向ける。案の定背後で何かが飛びあがる音がして、振りかえ
ると天狗の姿が消えていた。無言で十数歩歩くと、木立の中から誰かが飛び出してくる。
「ぜぇ、ぜぇ……! が、がはははは、とうとうここまでたどり着いたか死なない太郎!」
「もういい、もういいから!」
相当急いで着替えてきたらしい椛の肩を、妹紅はがっしりとつかんだ。
「ちょ、ダメですよ死なない太郎さん、四天王第三の刺客に対してそんな親しげに」
「だからもういいって! いいから休め、な!?」
「わふー、ダメですよぅ、これがわたしの仕事なんですから」
「……念のために聞いておきたいんだけど、あんたの仕事はこれで終わり?」
「わふ。いえ、この後四天王最後の刺客として死なない太郎さんの前に現れて」
「それから?」
「それから、四天王の上司である五人衆の一人目として」
「なにそれ!? まさかそれも全部あんたがやるの!?」
「は、はい。それで、その後はさらに上の七武衆、そのまた上の八魔人、十二神将と続いて、最後は伊吹萃香様
の配下の中でも最上位に位置する妖怪の山72柱として」
「多すぎだって! っていうかなんで上に行くほど人数が増えるわけ!?」
「ええと、なんでも外の世界で流行中の逆ピラミッドトップダウン型の組織体系を採用しているとかで」
「採用するなそんなもん! ええい、もういい!」
妹紅は半ばヤケクソ気味にえくすかりばぁを引き抜き、
「無敵の死なない太郎さんは、今後も続々と現れる鬼の部下を、ここで全員斬り倒しまし、たっ!」
叫びながら、椛の肩を一発打ち据える。白い天狗が目を見開いた。
「えぇっ、そ、そんな、困りますよぅ」
「いいから、ここで全員分わたしにまとめて倒されとけ、な!?」
お前このままじゃ間違いなく過労死するぞ、という警告を込めて、鼻がくっつくぐらいの距離から椛を見つめ
る。白い天狗は何やら顔を赤くして、「や、そんなに見つめられると」と悩ましげな吐息を漏らす。
「そもそもあんた、一人でそんな何役もこなしていちいち倒されてたんじゃ、何日かかったって終わらないで
しょ。それならちょっと端折ってここでまとめて倒されておきなって。あんたの上司には後でわたしから言って
おいてあげるから」
「わふ。でも、そこまでしていただいては」
「いいから。わたしを助けると思って、ね?」
そう言っても椛はまだ渋っていたが、やがて観念した様子で耳を伏せながら頷いた。
「分かりました。では死なない太郎さんの仰る通りにいたします」
「うんうん、そうしとけそうしとけ」
「では最後に」
椛は妹紅から少し体を離すと、片手で胸を押さえ、もう片方の腕を天に突き出しながら断末魔を上げた。
「おのぉれ死なない太郎! だが我々72柱が倒れようとも、この先には萃香様の盟友スカーレット卿が!」
「まだいるのかよ」
「貴様が来るのを地獄で待っているぞ、死なない太郎ぉぉぉぉぉぉっ!」
絶叫した椛の体が、ばたりと地に倒れ伏す。
(やれやれ)
さすがにこれで終わりだろう。妹紅は椛に背を向けたが、また背後で何かが飛びあがるような音が聞こえて、
慌てて振り返った。先ほどと同じく、白い天狗の姿はどこにもない。
「……文!」
「はいはいなんですか」
撮影係の天狗は、妹紅が呼ばわるとすぐに飛び降りてきた。やはり近くで見ていたらしい。
「あの椛って子、この後もまだ仕事あるの?」
「そりゃあもちろん。演出の手伝いに連絡係に子供たちの世話係に、ええとそれから」
「休ませてやれよ!」
指折り数える文を怒鳴りつけると、鴉天狗は目を瞬いた。
「え、なんでですか」
「な、なんでって」
絶句する妹紅に、文はへらへらと笑いかける。
「この程度は天狗社会なら当たり前ですよー。わたしも新人の頃はそりゃもうこき使われたもんです」
「いや、だからってあれは」
「でもそうですね、あなたが望むのならいい解決策がありますよ。椛を早く解放してあげたいとおっしゃるので
したら、もう少しやる気を出して役を演じられることです。鬼を早く退治すれば退治するほど、仕事の終わりも
早くなるわけですから」
にたり、と実にいやらしい笑みを浮かべて文が言う。妹紅は侮蔑の視線を投げた。
「最低だねあんたは」
「あやややや、これは人聞きの悪い。わたしはただ出来る限りいい画を撮りたいと思っているだけです。それに
かつての山の支配者である鬼の御大のやること、わたしごときには止められるはずもありませんからねえ」
「ああそうかい」
妹紅は舌打ちして、足早に歩き出す。さっさと終わらせなければいけない理由がまた一つ増えた。
同時に、ひょっとして上手く乗せられたのではないか、という懸念が頭の隅に湧き上がったが、今はとりあえ
ず無視しておくことにした。
木立を抜けた妹紅は、早足に妖怪の山への道を急ぐ。しかしどれだけ歩を速めようとも、所詮は人の足である。
出せる速度には限界があった。
(ええい、飛べばすぐに着けるってのに)
妹紅は苛立ったが、一応ルールには従うつもりだった。萃香にへそを曲げられてはいろいろと困ったことにな
るし、何よりあそこまで真面目にやっている椛の姿を見てしまっては、この劇をぶち壊しにする気にはとてもな
れない。
(それにしてもこんなに流されやすかったのか、わたしは?)
妹紅は内心首を傾げるが、答えは出なかった。なにせ最後に愛しい人と別れて以来、極力人と関わるのを避け
てきたのだ。幻想郷に入ってからもそれは変わらない。以前の自分がどんな態度で他人と接していたのかなど、
もう思い出せもしないのだ、
(……流されやすいんだろうな、きっと。だから今こんなことになってるんだし、あのときだっていつか別れる
ときが来るって分かりながら、あの人の手を払いのけることができなかったんだ)
妹紅は小さな丘陵を上りつつあった。丈の短い草の生い茂るこの丘を越えれば、妖怪の山が眼前に見えてくる
はずである。実際には大したことのない距離のはずだが、何か物凄く長い道のりを踏破してきたような気がした。
そのとき、丘の頂上に四つの人影が見えた。闇の中なので、それが誰かはよく分からない。じっと目を凝らし
ながら歩いていくと、その内の少なくとも一人は見覚えのある人物であることが分かった。
「こんばんは。ようやくいらっしゃったのね、死なない太郎さん」
そう声をかけてきたのは、魔法の森に住む人形遣いだった。確か、名前はアリス・マーガトロイドとか言った
か。柔らかそうな金髪の少女である。白い肌と冷たいほどに落ち着き払った青い瞳は、まるで彼女自身も人形で
あるかのような錯覚すら抱かせてくれる。
「こんばんは。なにやってるの、こんなところで」
とりあえず挨拶を返しながら問いかけると、アリスは不思議そうに首をかしげた。
「台本、読んでないの?」
「ってことは、あんたたちも役者さんなわけね」
やっぱりな、と妹紅は思う。先ほどアリスを見たときから、奇妙に思っていたのだ。今の彼女は仏教徒の法衣
のような服に身を包んでおり、以前見たときとはずいぶん趣が違う。アリスは顔立ちが完全に西洋人のそれのた
め、さすがに少々ミスマッチだった。
「似合わないねえ」
「仕方ないわよ、そういう役柄なんだもの。それに、こいつよりはマシね」
「こいつって?」
アリスが手を差し伸べた先で、誰かがふてくされたように膝を抱えて座っていた。誰だ、と目を細めて、妹紅
は思わず吹き出した。
「魔理沙、あんたなによその格好」
「うるさいな」
口調からして黒白の魔法使いは完全に拗ねているようだったが、まあ無理もないことだろうと妹紅は思う。
なにせこの魔法使い、獣の耳型カチューシャと尻尾型のアクセサリーを身につけているのだ。それも、猫や犬
のものではない。猿のそれである。
「マリサル、だって」
「マリサルッ……!」
妹紅は口を押さえたが、笑いの衝動がどうしても抑えられなかった。真っ赤な顔でぎりぎりと歯ぎしりをして
いる魔理沙の代わりに、アリスに向かって問いかける。
「え、なに、こいつなんでこんな格好してるの?」
「紫と弾幕ごっこやって負けたんだって。言葉巧みにこの役やるのを報酬にされて」
「なるほど。しかし、猿ねえ」
ということは、やはり犬猿雉か。そう思って残りの二人の方を向いて、妹紅は目を丸くする。
「やあ盟友、胡瓜食べるかい」
「何よ、なんか文句あんの?」
そこにいたのは、河童と豚であった。なんとも珍妙な組み合わせである。
(坊さん、猿、豚、河童……)
少し首を捻って考えると、妹紅の脳裏にある単語が浮かんできた。
「……西遊記?」
「あら、よくご存じね。ちなみにわたしは『マガトロ法師』だって」
「三蔵法師のつもり? 語感からなにから全然違うじゃん」
「古今東西あらゆるお伽話を取り入れた『ハイブリットお伽噺』だとかって、紫が胸張ってたけど」
「ハイブリットって……むしろいろんな要素突っ込んで失敗しましたっていう典型じゃないか、これ」
いちいち脱力させてくれるお伽話である。
(……それにしても……)
アリスと何気ない会話を続けながらも、妹紅はごくりと唾を呑む。
先ほど存在に気づいた二人、河童と豚。河童の方はまだいい。別段奇抜な格好もしていないし、マイペースに
のんびり胡瓜をかじっているだけだから。
問題は豚の方である。この青くて長い髪の綺麗なお嬢さん、やけに気合いの入った格好をしていらっしゃるの
だ。肌色っぽい服を着て、魔理沙同様豚耳型のカチューシャと尻尾を身につけているのはもちろんのこと、なん
と豚の鼻を象ったリアルなつけ鼻まで装着している。おまけに蹄を象っていると思しき黒い手袋とブーツを履い
ており、正直な話それはなんの罰ゲームですかと尋ねたくなるような惨状だ。
そんなお嬢さんが何か言いたげな目つきでじっとこちらを見つめているものだから、もうたまらない。
(か、関わりたくない……! 今までとは違った理由で、あの人には関わりたくない……!)
そんなわけで妹紅は必死にそちらを見ないようにしているのだが、お嬢さんの方はとうとうそれに耐えられな
くなったらしい。あの愉快な格好で顔を赤くしながら、ずかずかとこちらに近づいてきて、
「ちょっと、あんた!」
「ヒィッ!? す、すんません、すんません!」
「なんで謝るのよ!? 言いたいことがあるならはっきり言えばいいじゃない! 天人のくせにそんな格好しや
がって恥ずかしくないのかこの雌豚! とかなんとか言って、わたしを罵ればいいじゃない!」
何やら興奮してハァハァと息を荒げながら、そんなことを仰られる。
(うわぁ、予想通りこの人超絡みづれぇーっ!)
おそらく年頃と思われる可愛らしいお嬢さんが大真面目に豚鼻をつけている光景に耐えられず、妹紅は何度も
謝りながら必死に目をそらし続ける。
「ほら天子、その辺りにしておきなさいって」
苦笑交じりの声で妹紅を救ってくれたのは、言うまでもなくアリスであった。天子という名前らしい豚鼻のお
嬢さんをなだめるように、彼女の肩にそっと手を置く。天子は不満げにぶーぶーと文句を垂れた。いや、鳴き真
似をしたわけではなく。
「だってアリス、こいつ絶対わたしのこと馬鹿にしてるって」
「いや、むしろ哀れまれてるんだと……まあともかく、こんなところで時間を取らせるわけにはいかないし、早
く劇の進行に戻りましょう、ね?」
アリスが小さく首を炊げてみせると、天子はまだ不満そうに唇を尖らせていたものの、妹紅を一瞥だけくれて
渋々といった様子で引き下がった。
「悪い、助かったよ」
ほっと息をつきながら言うと、アリスは苦笑した。
「まあその、ちょっと構ってもらいたい願望が強いだけで、根っから悪い子じゃないから」
「……あんまり説得力を感じないんだけど」
「ともかく」
強引に話を打ち切り、アリスは授業中の慧音のような口調で語り始めた。
「あなたが台本を読んでないってことは分かったわ。だから、筋書きを簡単に説明するわね。あなたがここにい
るってことは、萃香の配下を全部倒してきたってことだと思うんだけど」
「うん、まあそうだね。嘘ではないよ、一応」
「……なんか引っかかる物言いだけど、まあいいわ。それで、いよいよこの丘を越えて悪鬼伊吹萃香のところへ
乗り込むぞってところになって、旅の法師一行に遭遇するわけよ」
「そうだね、遭遇したね」
「この法師様一行、あまり旅慣れてなかったみたいで、手持ちの食料が全部尽きてしまったところだったの。そ
こで優しい死なない太郎は」
「最初に手に入れたきび団子をくれてやるっていうわけだ」
「ご名答。じゃ、頂けるかしら」
にっこり笑って、アリスが手を差し出す。特に断る理由もなかったので、妹紅は腰の袋を外して人形遣いに手
渡した。
「はい、ありがとう。みんなー、きび団子もらったわよー」
他の三人が「おー」「やったー」「ありがとう死なない太郎ー」と、若干やる気なさげに歓声をあげる。乗っ
てるんだか乗ってないんだかはっきりしろよ、と思いながら、妹紅はとりあえず事の成り行きを見守ることにした。
「おーし、じゃ、早速食べるとしようか」
「こら魔理沙、行儀悪いわよ」
「いただきまーす」
「ほら見なさい、天子だってちゃんと挨拶できるのにあんたったら」
「う、うるさいな。いただきます。これでいいんだろ」
「はいよくできました」
「ねーアリス、この団子さー、胡瓜味はないもんかね」
「……さすがにそれはないと思うけど」
「うわ、なんかもそもそしてるなこれ。期待はずれだぜ」
「天界の桃に比べたら数段マシよ」
「ヘッヘッヘ、案ずるな盟友。こんなときのためにいいもの持ってきてるんよ」
「おお、酒じゃないか。でかしたぞにとり」
「月見酒、か。悪くないわね」
「じゃ、乾杯しよ、乾杯」
「よっし、それでは無事任務を遂行できたことを祝して……かんぱーい!」
「かんぱーい!」
「いい加減にしろお前らっ!」
とうとう堪え切れなくなって、妹紅は叫び声を上げた。地面に座り込んで今にも杯を合わせようとしていた四
人が、目を丸くしてこちらを振り返る。
「え、なに」
「どうしたの、死なない太郎?」
「どうしたの、じゃないでしょ!」
苛々して腕を組みながら、妹紅は四人の顔をねめつける。
「あのさ。悪いけど、そういうのはこのお伽噺が終わったあとにしてくれない?」
「……なんのこと?」
「いや、だからさ。まだ鬼を退治してないし」
「そうね」
「それがどうかしたん?」
四人が困惑した様子で顔を見合わせている。妹紅は何かおかしいぞ、とようやく思い始めた。
「……あのさ、一応確認したいんだけど」
「うん」
「あんたら、今死なない太郎からきび団子もらったんだよね?」
「そうね、もらったわよね」
「だったら、鬼退治のお供としてついてきてくれるんじゃ……」
「え、なんで?」
「なんでって!?」
唖然とする妹紅の前で、魔理沙が「あー」と額を叩いた。
「そういやこいつ、筋書き知らないんだもんな」
「そりゃいかんよ盟友、台本読まないからそういうことになるんよ」
「仕方ない、説明してあげるわね」
こほん、と咳払いをしながら、アリスが夜空に向かって手を伸ばす。そして、情感たっぷりに語り始めた。
「子供たちを救うために鬼退治へと出発した死なない太郎。しかしその道のりは容易いものではありませんでし
た。襲いかかる数々の妖怪、立ちふさがる悪鬼の部下たち、手助けしてくれるかと思っていた仲間たちの卑劣な
裏切り、傷ついていく心……」
まるで話を盛り上げるかのように、晴れた夜空に稲妻が走った。固唾をのんで見守る魔理沙たちを横目に、妹
紅は首を傾げる。
「……いや、後半のエピソードには全然覚えがないんだけど。裏切りとかなんとか」
「その部分は人手不足のために省略されたわ」
「いいのかそれで」
「……こうして心身ともに疲れ果てた死なない太郎ですが、彼にはまだきび団子が残されていました。鳥の妖怪
から救い出した心優しく可憐で繊細なお嬢様が、せめてものお礼にと手渡してくれた、心づくしの品」
「お嬢様に関していろいろと言いたいことがあるんだけど、まあいいや」
「この小さな団子を口にするたび、死なない太郎は人の優しさを思い出すことができるのです。人の優しさを忘
れない限り、死なない太郎は立ち上がることができるのです。しかし、そのきび団子もまた、彼の手を離れてい
きます。旅の途上、空腹で倒れてしまった法師一行に、死なない太郎は躊躇いなくきび団子を差し出してしまう
のです」
「うんまあ、確かに差し出したけど」
「そして、せめてものお礼にと協力を申し出る法師の言葉を、死なない太郎は笑って断るのでした」
「なんで!?」
「『鬼退治は私の務め。他にも大切なお役目のある法師様たちを巻き込むわけには参りません。どうかお気にな
さらず、あなたの務めを果たして下さい』と。そう、あれだけ多くの辛い目にあっても、死なない太郎には人を
気遣う優しさが残されていたのでした! 目に涙を浮かべながら見送る法師一行の視線を背に受け、死なない太
郎は一人歩き出します。手助けなどそもそも必要なかったのです。人の優しさを、温もりを覚えている限り、彼
は何度でも何度でも立ち上がる。そう、彼こそ真の英雄、死なない太郎なのですから……」
締めくくると同時に、またも晴れた夜空に数条の稲妻が走る。誰がやっているのか分からぬ過剰な演出を尻目
に、アリスは大きく息をついた。魔理沙たちが涙を流しながら立ち上がって惜しみのない拍手を浴びせかける。
「ブラヴォー! いい最終回だったぜ!」
「やばっ、わたし筋書き知ってるのにちょっと泣いちゃったかも」
「いやいや分かるよ、アリスの語りは実にうまいからねえ」
「そこまで褒められるとちょっと照れるわね。まあ人形劇の応用みたいなものだし」
「あ、それそれ。ねえねえアリス、今度天界でもやってよその人形劇っての」
「ん、まあ、許可が取れるんだったらいいけど」
「やたっ、じゃあわたし特等席ね、特等席!」
「へっ、天子は相変わらずガキっぽいぜ」
「なによ、文句あんの!?」
「やるか!?」
「あんたたちも相変わらずよねえ」
なんだか内輪で盛り上がっている四人を尻目に、妹紅はがっくりと肩を落とす。
「……要するに、ここは単なる通過ポイントだったってことね」
「あら、そうでもないわよ」
答えたのはアリスだった。
「なんで?」
「さっきも言ったでしょう。ここは死なない太郎の人格を描写する上では欠かせないポイントなのよ。何度人に
裏切られても立ち上がる、心優しい不死身の英雄の人格を、ね」
「そんな作劇上の都合を並べられてもね」
ぼやきながら、妹紅は目を細める。
(何度人に裏切られても立ち上がる、か)
萃香の得意げな笑顔が頭に浮かぶ。妹紅は眉根を寄せた。
「当てつけのつもりかね」
「なに?」
「いや」
咳払いをして、「あー、しかし」と妹紅は苦笑する。
「あんたらも大変だね、あの小鬼の我がままに付き合わされてさ」
「ん? そうでもないわよ。わたしはこれでも楽しんでるもの」
「こんな無茶苦茶なお伽話を?」
妹紅が呆れて言うと、アリスは照れたように微笑んだ。
「こういう雰囲気って、なんだか懐かしくってね。昔お母さんが見せてくれた人形劇みたいで」
「へえ。いいお母さんだね。羨ましいな」
つい本音が出てしまったが、笑われるとは微塵も思わなかった。実際、アリスは瞳に優しさを滲ませてじっと
こちらを見つめてくる。
「あなたも、割と楽しんでるように見えるけど?」
「え、わたしが? いや、わたしは別に……こんなの、関わりたくもないし」
どうも歯切れが悪くなる。実際、自分で聞いていて全く説得力がないな、と思ってしまうのだ。
(だからって、クソッ……仲良くなったってロクなことになりゃしないんだから)
胸を押さえながら、妹紅はくるりと四人に背を向ける。これ以上楽しそうな笑い声を聞いていると、また嫌な
ことを思い出しそうだった。
「じゃ、わたしは行くよ。もうすぐあの小鬼のところに着くみたいだし」
「ええ。気をつけてね。萃香と対決する前に、もう一つ山場があるはずだから」
「まだあるの」
一つため息をついて、妹紅は歩き出す。丘のてっぺんを越えて緩い傾斜を下り始めると、背後から足音が追い
かけてきた。
「ちょっと、待ちなさいっ」
この声はあの豚の人か、とげんなりしながら振り返ると、案の定そこには豚の人がいた。もう出番を終えたた
めか、豚耳や豚の鼻などはすべて外していたが。
「なにか用?」
「いや、あのね」
「うん」
「あの……」
「……なに?」
「べ、別に」
天子はなにやら口の中で呟いているようだったが、くぐもっていてよく聞こえなかった。薄らと頬が赤くなっ
ている気がするのは、気のせいではないだろう。
(……なにが言いたいんだろ?)
妹紅は困惑したが、あえてこちらから尋ねることはしなかった。
天子は何かを言いかけてはやめ、止めてはまた言いかける、ということを数度繰り返した後に、
「あのねっ、あの、鬼のことなんだけど」
と、意を決したように話しだした。
「あいつって、強引で自分勝手な奴だけど、嫌がらずに、その、付き合ってやってもいいんじゃないかなって」
「……はあ。そりゃまあ、今否応なしに付き合わされてるわけだけど」
「さ、最後まで帰らないで、ちゃんと倒してやりなさいよっ! そ、それだけだから!」
天子は叩きつけるように言うと、逃げるように踵を返して走り出す。数歩ほど行ったところで振り返り、
「あ、そ、それと、わたしがこういうこと言ったってのは内緒だからね! 誰かにばらしたら緋想の剣で串刺し
にしてやるんだからね!」
と、少々物騒な脅し文句を残して丘を登って行った。
結局なんなんだろう、と、一人残された妹紅は首を傾げる。すると、背後から何やら小さな啜り泣きのような
ものが聞こえてきた。振り返ると、そこには薄桃色の羽衣を身に纏い、ハンカチで目を拭っている女が一人。腕
には「演出係」と書かれた腕章をつけている。
「ああ、あの自己中心的で傍若無人で他者のことなんか虫けら以下だと思っていらっしゃった総領娘様が、あの
ような優しさを……! 私感動で涙がちょちょ切れそうです」
またなんか関わりたくない人種がいる、と妹紅は思う。しかし、いかにも話しかけてほしそうな空気を放出し
ているその女の横を素通りするわけにもいかず、
「あんた」
「は、はい?」
「さっきの子の知り合いみたいだけど」
「ああ、はい。私龍宮の使いをやらせてもらっております永江衣玖と申します。よろしくお願いいたします」
と、お辞儀する代わりにビシッと天を指さしてみせる。やっぱり関わりたくないなあ、と思いながらも、妹紅
は空気を読んで質問した。
「あの子、なんであんなこと言ってたの? 理由知ってるんでしょ?」
「はい、もちろんです。実は、ですね」
と、衣玖は天子の過去を語り始める。不良天人と蔑まれて、天界でずっと一人ぼっちだった女の子。その女の
子が引き起こした傍迷惑な異変。それがきっかけで、地上人の友達が数人出来たこと。
「……あの異変の終盤、今回の騒ぎの元凶である鬼の方が、天子様が地上の友人を天界に招くきっかけを作って
くださったそうで」
「なるほど。つまりさっきのは恩返しみたいなものだったわけね」
「そういうことになりますね」
つまりさっきのあの気合いの入った格好も、そういう意図があってやっていたことだったのだろうか。
(張り切りすぎでしょ、いくらなんでも)
内心苦笑しながら、妹紅はふと隣を見た。
衣玖は目を細めて、天子が去っていった方角を見つめている。
「嬉しそうだね、あんた」
「ええ。あの総領娘様が……本当に、変われば変わるものです。やはり、他者と接することは心によい影響をも
たらしますね。素晴らしいことです。あなたもそうは思いませんか?」
衣玖は小首を傾げて訪ねてくる。
そういうことばかりじゃないだろう、逆に傷つけられて落ち込むこともある。などと反射的に答えそうになっ
て、妹紅は口を噤んだ。内心では今もそう考えているが、目の前で嬉しそうに笑っている女を見ると、馬鹿正直
に冷淡な答えを返すのは無粋だと思えたのだ。
だから空気を読んで、ただ笑い返した。
「そうだね。人と触れ合うって、とてもいいことだと思うよ」
そう言った途端、胸の内にじわりと温かいものが滲み出した。妹紅は驚いて、胸に手を当てる。
(ああ、なんか)
知っている感覚だ、と思う。数百年来も忘れていた、何事にも代えがたい温かさ。
こんなものが、まだ自分の中に残っていたとは。
「どうなさいました?」
不思議そうな声音で呼びかけられて、妹紅ははっと我に返る。慌てて首を振り、
「ああいや、なんでもないよ。じゃあ、先を急ぐから」
と、一方的に言い置いて走り出した。
妖怪の山まで、あともう少しだ。
あれこれと迷いを覚えつつも、妹紅はひたすら無心であれと己に念じて歩を進める。ともかくも、妖怪の山
の麓にあるという洞穴へ赴いて萃香を打ち倒せば、それで今夜の遊戯は終わりなのである。
ちなみに目的地が妖怪の山山頂とかでないのは、山の中を人間が歩いて通る許可が下りなかったかららしい。
「最近何かと侵入されまくりとは言っても、我々天狗の本拠であり聖地でもあるわけですからね。こういう遊戯
のたびに好き勝手に使われては、さすがに面子が保てない……と、上層部が判断を下したようです。鬼の御大も
『洞穴に子供らを引きずりこむってのも鬼っぽいかもね』と納得されたとのことで」
妹紅にしても、歩いて山登りをさせられるよりはそちらの方がずっと気楽である。ほぼ一本道のため、迷うと
いうこともありそうにないし。
そして妹紅はいよいよ妖怪の山の麓に辿り着いた。事前に渡された地図によると、外周に沿って山の裏側に回
りこまねばならないらしい。
(そう言えば、さっきアリスがもう一つ山場があるとかなんとか言ってたけど)
そんなことを思い出してちょっと不安になった瞬間、どこからか女の悲鳴が聞こえてきた。素早くそちらの方
向に視線を向けると、その先には鬱蒼と生い茂る深い森が。
(……こんなところに森なんかあったっけ?)
若干戸惑いつつも、多分これが萃香と決戦する前の最後の山場なのだろうと判断し、妹紅は森に向かって走り出す。
木々の中に足を踏み入れてみると、外から見るよりもよほど深い森だということが分かった。縦横無尽に伸び
る枝が、頭上を完全に閉ざしている。元々頼りない月や星の明かりは、この森の中ではほぼ無力だった。
妹紅は自ら浮かべた小さな妖火を頼りに、生い茂った草や張り出した枝を払いのけて進む、と。
「こっち、こっちよ」
「急いで、大丈夫だから」
緊迫感あふれる声とともに、数人の足音が聞こえてきた。その中には子供の泣き声も混じっている。演技など
ではなく、心の底から怖がっている泣き声だ。そう気づいたとき、妹紅の中から迷いや躊躇いは一欠けらも残さ
ず消えていた。
「そこの人たち、無事!?」
叫びながら全力で駆ける。果たして数秒も経たないうちに、闇の向こうから白い巫女装束を着た少女が駆け出
してきた。
「ああ、あなたが死なない太郎様ですね! どうかお助け下さいまし!」
英雄の胸に縋りつき、潤んだ瞳で彼女を見上げながら哀願するその女性に、しかし妹紅は目眩を覚えた。
(……今日はいろんな場面で明らかにミスキャストだろうと思う配役ばっかり見てきたけど)
これは極めつけだなと思いながら、妹紅はゆっくりとその巫女に語りかける。
「あのさ」
「はい、なんでございましょうか死なない太郎様」
「その口調止めてくれないかな。吐き気がするんだ……霊夢」
「えー」
あっという間に素に戻ったその女性……いつも束ねている艶やかな黒髪を、今は真っ直ぐに垂らしている博麗
霊夢その人は、不満そうに頬を膨らませてみせた。
「なによー、人がせっかくちょっと気合入れて演技してるっていうのにー」
「気合入れれば入れるほど違和感が凄くなるんだよあんたの場合。一応聞くけどどういう役なのそれ」
「鬼に捕われた子供たちの内、二人だけをなんとか救出して逃げてきた、か弱く健気な巫女さんの役だけど」
「なるほど、面白いぐらいに正反対だ。普段のあんたじゃ絶対にあり得ないね」
一体誰の趣味なんださっきの気持ち悪い演技は、と思いながら、妹紅は喉に手を当てる。何か、奥の方に酸っ
ぱいものがこみ上げてきていた気がする。
(危ないな、もう少しで戻すところだった)
安堵の息をつく妹紅に、「あのー」と、声をかけてくる者が一人。見ると、そこにも巫女装束を着た少女が
立っていた。ちなみに霊夢もそうだが、この少女もきちんとした正式な白衣を身に纏っている。幻想郷では一般
的なものとなりつつある、腋の開いた奇抜な白衣ではない。
だが、妹紅はその少女のことをほとんど見ていなかった。視線は、自然と彼女の陰に引き寄せられる。
そこに、二人の子供が立っていた。見かけからすると五つか六つぐらいの、男の子と女の子。おそらく兄であ
ろう男の子は唇を真一文字に引き結んで、子供ながら厳しく張りつめた表情を浮かべている。一方、おそらく妹
なのであろう女の子は、恐怖に顔を歪めて泣きじゃくりながら兄の体にしがみついていた。
「その子たちが、救出してきたっていう子供たち?」
「あ、はい、そうです」
見知らぬ巫女少女が答える。こちらは霊夢と違って、普段から礼儀正しい性格のようだ。なんというか、所作
や声音に無理がない。
「あんたは?」
「わたしは東風谷早苗といいま」
「のんびり話してる暇はなさそうよ」
霊夢が冷静な声で言いながら、頭上の一隅を指さす。妹紅はそちらに顔を向けたが、そこはやはり無秩序に伸
びた枝に覆われていて、夜空すら見えない。
「え、なに?」
「来るわ」
霊夢が呟いた瞬間、突然枝の覆いが強引に押し分けられた。ぎょっとして立ち尽くす妹紅の頭上に、巨大な何
かが現れる。ぎょろりと蠢く目玉、乾いた光沢を持つ白い鱗、ちろちろと口の隙間から覗く、先が二股に割れた
長い舌。
空を覆い尽くすほどに巨大な、蛇の怪物である。
(馬鹿な、いくら幻想郷でもこんなアホみたいにデカい蛇の話なんて聞いたことないぞ……!?)
大蛇は呆然とする妹紅たちを見つけると、実に嬉しそうに笑った。蛇のくせに、やけに人間くさい表情だった。
「見ぃつぅけぇたぁぞぉぉぉぉっ! 悪い子は、いねぇぇぇがぁぁぁぁぁっ!」
またなんか混じってる、と突っ込みを入れる暇もない。蛇が口から吐き出した無数の光弾を、妹紅たちは間一
髪で避ける。
「こっちへ!」
緊張した声で叫ぶ早苗の誘導に従って、暗い森の奥へと走り出す。蛇が木々をなぎ倒しながら這い進む轟音が、
後ろから追いかけてきた。その音があまりにも大きいので、女の子が泣き叫ぶ声がかき消されてしまったほどである。
「あの木の洞の中へ……!」
五人は少し先にあった巨大な木の洞の中に逃げ込んだ。早苗と霊夢が即座に符を取り出し、洞の入口に結界を
張る。突きだされた槍のような勢いで首を伸ばしてきた蛇の頭が、その結界に大きく弾き飛ばされた。
「おぉぉぉのれぇぇぇ、小癪な真似をぉぉぉぉっ!」
嵐のような重低音で呪詛の言葉を吐き出しながら、蛇が何度も何度も結界に体当たりする。そのたびに大木全
体がぐらぐらと揺れた。
「まずいわね」
結界を維持するためにか、両手で複雑な印を組みながら、霊夢が舌打ちを漏らす。
「このままじゃ、結界の方はともかく木の方がへし折られるかもしれないわ」
「……それだとわたしたちは下手すりゃ生き埋めになるんじゃないの」
「ま、普通に考えればそうでしょうね」
霊夢の声は余裕を保っていたが、印を組んで突き出された両腕や、硬い表情を浮かべた顔には脂汗が滲んでい
た。早苗の方も同様である。どうやら本当に辛い状況のようだ。
(ごっこ遊びにずいぶんと一生懸命な……まあ、それは相手も同じか)
今もなお間断なく体当たりを繰り返している蛇の正体は分からないが、誰かが操っているにしろ変化している
にしろ、それが持つ圧倒的な質量や威圧感は紛れもなく本物である。
だからこそ、だろうか。
「にいぃぃぃぢゃああああん」
「泣くなバカ、だいじょうぶ、だいじょうぶだったら!」
泣き喚いている女の子と、それを必死になだめようとしている男の子。二人とも、これがただのごっこ遊びで
あるという説明は萃香から受けているであろうに、心の底から怖がっている様子だった。あの蛇の迫力を眼前で
見せつけられては無理もないことだろうが。
(気合入れすぎなのよ、まったく)
心の中でため息をつきながら、妹紅は静かに幼い兄妹の背後に回り込み、そっと二人の体を抱きしめてやった。
妹紅の腕の中で、妹はなおも泣き叫び続け、兄はそんな妹を必死になだめ続ける。だが、妹紅の手には止まらぬ
震えが伝わってきていた。一人ではなく、二人分の震えが。
(無理しちゃって、この子は)
男の子は妹を抱きしめながら、きつくきつく歯を食いしばっている。兄と言ったって、外見からして歳はせい
ぜい一つや二つしか違わないはずだ。そんな小さな男の子が、妹を怖がらせないために泣くのを必死にこらえて
いる。自分だって、本当なら今すぐ泣き喚いて巫女の体にしがみつきたいぐらいに怖いだろうに。
(健気なもんだ。強い子だね)
怖がって逃げてばかりの誰かさんとは大違いだ、と心の中で自嘲の笑みを浮かべながら、妹紅はそっと囁いた。
「安心していいよ」
男の子がびくりと体を震わせて、こちらを見上げてくる。どうか自分の表情が自信にあふれたものとなってい
ますように、と祈りながら、妹紅は笑って男の子の頭を撫でてやった。
「あんたたちにはね、あんな蛇なんかものともしない、強い強い英雄がついてるんだ」
「え、英雄?」
「そう。そいつはね、あんたたちを守るためなら、どれだけ傷つこうと何度でも立ち上がる。その名も」
妹紅はゆっくりと立ち上がって少し歩き、兄妹に背中を見せながら、静かに刀を引き抜いた。肩越しに振り返
りながら、穏やかな声で名乗りを上げる。
「不死身の英雄、死なない太郎さん、さ」
男の子が、ぽかんと口を開けてまじまじとこちらを見つめ始めた。その腕の中では、彼の妹が今も去らぬ恐怖
におびえて、ひっきりなしに泣き喚いている。
「さて坊主、死なない太郎さんと約束しようか」
「や、約束?」
「そう。わたしは今からあの蛇や、あの蛇を操ってる奴を一人残らずやっつけてくる」
「む、無理だよそんなの!」
「無理じゃないさ、必ずやっつけてやる。でもね、その間、ここに残ってる男はあんた一人だけだ。あんたの妹
を守ってやれる奴は、あんたしかいない」
男の子がはっとした表情で妹を見た。ぎゅっと唇を引き結んでその小さな体を抱きしめながら、また強い瞳で
妹紅を見返してくる。その視線を受け止めて、不死身の英雄は一つ、大きく頷いた。
「わたしが戻ってくるまで、泣かずにその子を守ってやるんだよ。死なない太郎さんとの、約束だ」
「うん!」
「よし、いい返事だ」
にっと笑って、妹紅は歩き出した。必死に結界を維持している二人の巫女の横に立つ。
「そういうわけで、お二人さん。わたしが出る瞬間を見計らって、一瞬だけ結界を解除してくれる?」
「分かりました」
「いいけど」
霊夢がおかしそうに笑う。
「なんだ、あんたの方がずっとノリノリじゃないの。どういう風の吹きまわし?」
「別に、大したことじゃないよ。ただね、子供が怖がってるのは良くないと思う。うん、凄く良くない」
「お優しいことで」
霊夢がからかうように笑う。その横で一瞬笑った早苗が、緊張した面持ちで言った。
「では、次にあの蛇が頭を引っ込めたタイミングで、結界を解除します。霊夢さん、よろしいですか?」
「いつでもどうぞ」
「それでは……今です、死なない太郎さん!」
何十度目かの体当たりを敢行した蛇の体が、またも大きく弾かれる。その隙を突いて、二人の巫女が木の洞を
覆っていた結界を解除した。機を誤らず、妹紅は強く地を蹴った。森の中の道なき道を駆け抜け、再度体当たり
をしようとしている蛇の眼前に躍り出る。
「待て、大蛇よ!」
「ううん? なんだ、お前は」
瞳に怒りを敵意を漲らせる蛇に向って、妹紅は高々とえくすかりばぁを掲げ上げた。
「わたしは不死身の死なない太郎! さあ、いざ尋常に勝負しろ、鬼の眷族め!」
蛇はしゅるしゅると舌を蠢かせながら、野太い笑い声を夜空に響かせる。
「グハハハハ、笑わせてくれるわチビ助め、わたしの目の前に出てきたことを後悔しながら、潰れて死ぬがいい!」
蛇が巨大な鎌首をもたげ、鞭のように振り下ろす。妹紅は即座に飛びのいて、破壊の槌の如き一撃を避けた。
森の木々がへし折られ、周囲に濛々と土煙が立ち込める。その中を駆け抜けて、妹紅は蛇の体に飛び乗った。鱗
が不気味に光る蛇の背を駆け上がり、一直線に頭を目指す。
「ど、どこへ行った!?」
「ここだ、愚図め!」
叫びながら飛びあがった妹紅は、蛇の頭部に向けてえくすかりばぁを思い切り振り下ろした。このお伽噺の中
では間違いなく最強の名に値する聖なる刃が、邪悪な蛇の頭を強く打ち据える。暴風のような恐ろしい悲鳴を上
げて、巨大な蛇は大量の木々をなぎ倒しながら地に倒れた。
「どうだ、見たか」
軽やかに地に降り立ちながら勝ち誇る死なない太郎に向って、甲高い哄笑が降り注いだ。
「その程度でいい気になってもらっては困るな、死なない太郎!」
「誰だ!?」
振り返った先、暗い森の奥から、小さな女の子が歩み出てくる。禍々しい光を放つ赤い瞳と、小柄な体には不
釣り合いに大きい蝙蝠のような翼が印象的な吸血鬼。妹紅にとっても、見覚えのある相手だ。
「確か、レミリア・スカーレットだったか」
「ふふ、英雄殿に名を知られているとは、ずいぶんと光栄なことじゃあないか」
レミリアは不敵に笑ってみせる。彼女もまた、以前とはずいぶん趣が違う格好をしている。全身のラインを浮
き上がらせるような、ぴっちりとした黒い服に身を包んでいるのだ。果たしてそれを服と呼んでいいものなのか、
妹紅にはよく分からない。やけに光沢のある、見慣れない素材で作られているのである。幼いレミリアが着てい
ても、なんとなく淫靡な感じのする妙な服だ。
「ククク……ちなみにこの衣装は香霖堂から仕入れた特注品だ。なんでも外の世界での悪の組織の正式衣装で、
ボンテージスーツとかいうらしいぞ」
「はあ。それはなんというか、ご丁寧に解説ありがとう」
状況に似合わぬ間抜けな会話を終えたあとで、二人は改めて体に緊張を漲らせながら向き合った。
「では、始めようか不死身の英雄殿」
「受けて立とう、悪しき吸血鬼よ」
妹紅は刀の切っ先を吸血に向ける。にやりと笑ったレミリアが、あいさつ代わりとばかりに数発の光弾を飛ば
してきた。妹紅はひらりと身をかわし、レミリアと向き合ったまま夜の森を駆け始める。
(……この状況でも、やっぱり飛ぶのはダメなんだろうな)
はたして自分本来の力をどれだけ使っていいものか、妹紅は判断に迷った。そして、そんなことを考えている
自分に苦笑する。
(いつの間にやら、すっかり引きずり込まれちゃってまあ)
やはり自分は流されやすい性格のようだ、と改めて自覚する。同時に、自分がこの状況を心底楽しんでいるこ
ともまた。
「どうした死なない太郎、逃げ回ってばかりではわたしを倒すことはできんぞ!」
後ろから迫るレミリアが、哄笑を上げながら弾をばら撒く。彼女もまた飛んではいない。やはりそういうルー
ルなのだろう。案外律儀なもんだなあ、と妹紅は少し感心する。
同時に、レミリアが放つ弾幕は、色合いこそ派手だが以前見たものよりもずっと隙間が広いことに気がついた。
これなら空を飛べなかろうが術を使うまいが、避けることはそれほど難しくない。
(なるほど。物語の主人公に花を持たせてくれるってわけだ)
案外空気の読める奴だな、と思いながら、接近の機会を窺う。だがレミリアは絶えず弾を撃ってくるので、避
けるならともかく近づくのは難しかった。
そうして逃げ回っている内に、二人はいつの間にか森を一周してあの大木の前に戻ってきていた。大蛇という
脅威がいなくなったためか、霊夢たちも木の外へ出てきている。あの兄妹もいた。妹の方も今は泣き止んで、兄
と共に固唾を飲んで状況を見守っている。
「ふふふ……どうやらここまでのようだな、死なない太郎」
レミリアが自信たっぷりにそう宣言した。ここまで、と言われても、妹紅は別段傷ついてなどいない。おそら
く、さっきの科白は台本通りなのだろう。
(つまりここで決着がつくってわけだ)
つけなければいけない、とも言う。闇の向こうで光るレミリアの赤い瞳が、彼女の意思を伝えてきた。
台本ではお前が勝つことになっているが、わたしは間抜けに勝ちを譲ってやるつもりはないぞ、と。
「さあ、これで終わりだ、死なない太郎!」
レミリアが両手を振り上げる。その手の平から光が迸り始めた。血のように紅い、禍々しい光。弾幕を展開す
る予備動作なのだろう。
(わたしの考え通りなら……)
妹紅は先ほどまでの攻防を思い出しながら地を蹴る。どういう形の弾幕が来るのかは、ある程度予測がついて
いた。今夜レミリアが展開していた弾幕は、いくつかのパターンの繰り返しだったのだ。要するに、直前の弾幕
がどれだったかを覚えておきさえすれば、次に来る弾幕の形がどれかも予測できるというわけである。
果たして、次の瞬間レミリアが振り下ろした手から放たれた弾幕は、妹紅が予測した通りの形をしていた。大
玉小玉にレーザーに楔形、弾の数こそ膨大だが隙間が多い弾幕である。どこを潜り抜ければレミリアの下に辿り
つけるのかは、先ほどの攻防の中ですでに見抜いていた。
(……逆に言えば、わたしに弾幕の形を覚えさせるために、わざわざ森を一周させたってわけだ)
弾幕を潜り抜けながら、妹紅は笑う。
(こうしてあの大木の前まで戻って来たのも、多分この吸血鬼の計算通り、かな)
、
いちいち粋で面倒なことをする奴らだ、と心の中で呆れながら、妹紅は目の前の大玉を避けて高々と跳躍する。
その向こう側にいたレミリア・スカーレットが、こちらを見上げてにやりと笑ったのが見えた。
あの兄妹の目に、悪を打ち倒す英雄の姿が少しでも強く色鮮やかに焼きつくようにと願いつつ、妹紅は大き
く刀を振り上げる。
こうして、悪鬼伊吹萃香の盟友レミリア・スカーレットは、死なない太郎の正義の刃の下に打ち倒されたので
あった。
<続く>
内容は面白かったですけど。
ああいやいや、ちょっとした冗談ってやつですハイ。
引っかかってくれた人がいて純粋に嬉しかったのですよ。
とは言え不快にさせてしまったようで申し訳ありません。
ちょっと表現を変えておきますのでご容赦をば。
前編が出てから続きが待ち遠しくて前編を優に30回近くは読んだ
もうあんま待ちたくない
豚wwwwwwwwwwwこれはひどすぎるwwwwwwwww
あとこーりんGJ
ピロウズいいよね。曲名忘れちゃったけど…
天子可愛いよ天子。
どんどんMっ気が進んでいて楽しみです。
幻想郷でマトモな常識を持っているヤツは少ないって事にきずきました・・・
でも博霊大結界って外の非常識を中の常識に、外の常識を中の非常識にする効果だったから・・・幻想郷って実際こんな所かも!?
もー空気読みすぎなメンツばっかりでどこから突っ込めばいいやら。
とにかく今回も気持ちよく笑えました。
さて、もう後編が待ちどうしいのですがどうしたらいいでしょう?
完結してから評価したいのでフリーレスで。
あとハァハァしてる天子はちょっと危ない・・・
ゆかゆゆの友情を感じさせる台詞が個人的にはお気に入り箇所
体内の忠誠心が煮え立つぜ・・・
さあ、ここは空気を読んで役者を増やす作業に戻ってください
にとり嬢の用意の良さに嬉しくなりました。
霊夢はノリ良過ぎ。
アリっさんがほんわかしてないと魔理沙姉ちゃんとてっちんが収集つかなくて、衣玖さんは兎にも角にもフィーバーなんですね、分かります。
完結後の回想編、天子編、みすちーのリハビリ編まで楽しみにしてます。
妹紅もちょっとずつノってきて、いい感じになってきてますし、最後どんな感じにまとめるのかとても楽しみです。
あと、ゆゆ様がみすちーをアレしてたり、天子が変な方向に進化してたり、色々と突っ込みどころも満載でした。
いいぞ、もっとやれw
しかもボンデージって、ノリノリ過ぎだwwww
>泣きじゃりながら
泣きじゃくりながら
いっその事「前・中・外伝・読みきり・後編・最終章」ってなぐらい続けていただいてもw
僕には次、何編が来るか分かりませんが
続編期待します
これで次に素直に後編が来てしまったら……フフフ
本編は相変わらず、コメディとシリアスの混ぜ具合が絶妙です。
幽々子様がいやらしすぎたり、頑張る椛に涙したり、髪を下ろした霊夢にときめいたり。
ぐいぐい引き込まれあっという間に読み終わってしまったような気持ちになりました。
続きにも期待しております。
続きが気になってしょうがない作品は、ワクワクするね
これからも頑張ってください
しっかり戻しそうになっているのがもう駄目だ
さて、続きを読むとするか。
おっと、鼻から忠誠心が・・・っ!