~注意~
・この作品は日記形式で進んでいきます。
・この作品にはちょっとだけ百合的表現が含まれているかもしれません。
・設定的に自分設定(上海人形は独立型)などがちょっとだけ含まれて居ます。
・初投稿で、誤字脱字が多いかもしれません。もしあったらご報告下さいませ。
以上を踏まえた上で読んでくれると、作者が小躍りします。
○月×日 快晴 訪問者:永江衣玖
緋想の異変から数週間後。
神社が元通りになった次の日に珍しいお客さんが来た。
「こんにちわ霊夢さん。昨日は宴会でキチンと言えませんでしたけど、神社が元通りになって良かったですね。」
緋の衣をふわふわさせた衣玖から菓子折りを貰った。
相変わらず空気を呼んでいるのか、それとも賽銭箱の中身が無いのを知っているのか。
どちらにしろありがたく菓子折りを受け取っておく。
その後、縁側でまったりとお茶を飲みながら特に話もせずに共に過ごす。
けどそれは嫌な時間ではなく、落ち着きのある心地よい沈黙。
しばらくして、別の場所にも出かけるらしく衣玖がお暇することになった。
「今日は貴女の周りには種族を問わずに誰かがいる理由がわかった気がします。では、ごきげんよう」
そんな言葉を残しつつ、ふわふわと雲のように飛んでいく。
とりあえず、菓子折りである羊羹は美味だった。よきかなよきかな。
お菓子は美味しく頂きます。きっとこの日記を書いてるころには貴女も寝る頃かな?
おやすみ、衣玖。
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○月□日 曇り 訪問者:小野塚小町、四季・映姫・ヤマザナドゥ
今日は小町がやってきた。
あいつが一人っきりで神社にやってくるなんて珍しい。
「よう、博麗の元気そうだな。巫女の仕事はしてるかい?」
貴女よりはサボってないわ。と言ったら「耳が痛いねぇ!」などと豪快に笑っていた。
小町は気さくで話しやすい。こういうのを姉御肌というのだろうか。
こちらが話せばしっかりと耳を傾けてくれるし、話題が切れれば面白い話をしてくれる。
ただ、時々オヤジギャグを言うのは面白くもあり、困ったところでもあるかもしれない。
少しして閻魔がやってきた。散々小町をきゃんきゃん言わせた後に私に軽いお説教をしていった。
一々的確に痛いところを突いてくるので、私まで耳が痛くなる。
帰り際に小町がお賽銭を入れていってくれた。
「賽銭箱の役割を果たせますように、ってね!」
大きなお世話だ。それに口に出したら意味が無いでしょうに。
そんな悪態も笑いながら言い合える小町。話していてすっきりする。
そして二人仲良く帰っていた。
上司と部下とは言うが、あの二人はもっと強い関係で結ばれているような気がする。勘だけど。
けれど、何にしろいつも二人でいるのはちょっぴり羨ましくも感じた。
博麗神社には私一人だしね。
さて、今日はそろそろ寝る時間だ。閻魔に言わせれば、早寝早起きも善行だろう。
小町も閻魔さまもしっかりと睡眠を取っていますように。
おやすみ、小町に映姫。
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○月△日 雨 訪問者:洩矢諏訪子
朝から雨続きで掃除も洗濯も出来ないで暇を持て余していれば、縁側からは蛙の声。
少し気になって向かってみれば、どこぞの神様。諏訪子がいた。
「あーうー、雨で暇そうだったから遊びにきたぞ~」
私を見つけるとテトテト歩いてきて抱きついてくる。
相変わらず、可愛いことをしてくる。神様っていうか、そこらの里の子でもおかしくないわよね。
いつもの帽子は無く、ちょうどいいから頭を撫でてあげると、あーうーと気持ちいいのか笑っていた。
少しして、良いものを聞かせてやると言われ縁側に立たされる。
私の横に立って大きく腕を振り上げる諏訪子。すると茂みから蛙の合唱が雨に混じって響き渡ってきた。
大小様々蛙の歌声。雨の日ならではの心地よさだった。
夕方になり雨がやめば、そろそろ帰る時間らしい。
さよならを言おうとしたら、また抱きつかれて夕飯を誘われてしまった。
断る理由も無いので守矢神社でお呼ばれになった。
玄関で早苗と久しぶりに会ったら、真っ赤になりながら諏訪子を奥に引っ張っていった。
「呼ぶならちゃんと言ってくださいよー!!!」
何か良く解らないが、エプロン姿の早苗は新鮮で可愛かった。
4人でちゃぶ台を囲み、終始早苗の顔が真っ赤だった。風邪でも引いていたのだろうか?
それをみて神奈子はにやにやして、青春がどうのとか言っていた。何なんだろう。
あと、早苗の作ったご飯は凄くおいしかった。見たことも無い料理でカレーというらしい。
今度作り方を教えてもらおう。
どうせだから泊まっていけと大黒柱っぽい神奈子に言われ、一度断ったが無理に押し切られてしまった。
早苗と一緒にお風呂に入ったのだが、のぼせて早苗が鼻血をだしてしまった。長湯は苦手みたいだ。
その日は4人で一緒の部屋に寝た。普段は無い大人数での就寝。家族という温かみを久しぶりに感じた。
朝になり帰る支度をして守矢神社を離れる。見送りで早苗がまた来てください!と言ってくれた。
ありがとう、早苗、諏訪子、神奈子。
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○月☆日 曇り 訪問者:レミリア・スカーレット
最近あまり太陽を見ていない。
曇りか雨ばかりで洗濯物が溜まってきているというのに困ったものだ。
朝方に掃除も終えて、今日もまた暇を持て余す時間になるのかと思ったが、今日は珍しい客が来ていた。
鳥居の下で少し気だるげに周りの木々を見つめながら日傘をさしている影。
静かな佇まいで、神社ではまるでミスマッチな格好のはずなのに一枚の絵画にさえ・・・
「れみ、り、あーうー☆」
絵画は一瞬で壊れた。芸術とは脆く儚い物なのね。
「うん、これは流行ること間違いなしね!」
流行らないし人様、もとい神様の口癖をパクるなと言っておいた。
どうやらフランが暴れたらしくて、紅魔館は復旧作業中らしい。
それで今日一日泊めて欲しいとのことだ。咲夜のお手製おかしが引き換えらしい。
断る理由もないし、正直咲夜のおかしは美味しいので引き受けることになった。
ちなみに暴れた理由はレミリアがおやつのクランベリータルトを食べちゃったから、らしい。
姉としてどうなのかと聞けば、所詮この世は弱肉強食なのよ。などと言っていた。
咲夜の用意したおかしは洋風の抹茶モンブラン。あいつは本当に器用だ。
お茶にも合うし、レミリアと一緒に頂くことにした。美味なり。
夕方ごろになって、レミリアは色々なことを話し始めた。
やれ門番が役に立たないだの、パチュリーが妙な魔法実験ばっかりするだの、咲夜におすわりを仕込んだだの。
けど、門番はフランとよく遊んでくれるし、パチュリーは着痩せでばいんばいんだし、咲夜はペット長で可愛いし。
その話の大方は紅魔館のことで、話しをするときのレミリアは自分のことのように自慢げだった。
良いことも悪いことも含めて、きっと住んでいるやつらのことが大好きなのだろう。
夜になって就寝前に耳掃除をしてあげることにした。
話をしている時に咲夜は耳掻きが苦手と言っていたからだ。何だかしていると鼻血で倒れてしまうらしい。
膝枕をしてウェーブの掛かった綺麗な髪を流し、耳に触れる。
白い肌は綺麗で触っていても絹のように心地よかった。
耳の奥を掃除すると、くすぐったいのかパタパタと羽を動かして小さく震えていた。
耳掃除が終われば嬉しそうに微笑んで、ありがとう、と言ってくるレミリアは見た目相応の歳に見えて可愛かった。
日付を跨ぐ頃に布団を敷いて明かりを消す。
そして丁度気になっていたことをその時レミリアに聞いてみた。
フランはどうしているのか、と。
「あの子は暴れた罰として魔理沙の狭い家で1週間ほど反省するように言ってきたわ」
なるほど。レミリアは素直じゃない。
魔理沙のところに遊びに行ってきてもいいわよ。って言えばいいものを、こんな手の掛かることをするんだから。
その言葉を聴いて少し笑ってしまえば、レミリアも解っているのだろう恥ずかしそうに布団を頭まで被ってしまった。
咲夜もこんな素直じゃない主人をもって大変だ。後で遊びに来たら良いお茶の一杯はご馳走してあげますか。
しかし、素直じゃないと言えば私もそうかもしれない。
こんな日記にしかはっきりと自分の心を表せられないのだから。
さて、今日の日記は長くなってしまった。レミリアも寝たみたいだし、私も寝るとしよう。
おやすみ、レミリア、そして紅魔館の皆。
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○月@日 曇り 訪問者:西行寺幽々子
さて、今日は私らしくない一日を日記に書き示すとしよう。
思い出すと恥ずかしいが、それ以上に嬉しい気持ちが強い。今日という日を私は日記にしたためなくても忘れないだろう。
「あらあら、おはよう霊夢。今日も餓死して無いようで何よりだわ~」
目を覚ますと、そこには見知らぬ大きな天井が2つたゆんたゆん揺れていた。ちがくて!
朝から刺激の強いものを見せられて、今も少し混乱してるみたいね。おちつけ私。
いつものように顔を洗って食事の用意をしようとしたら、既に朝食が出来ていた。
ちゃぶ台の前に優雅に座り、手招きをする朝から来客としてやってきた幽々子。
相変わらず何を考えているのかはさっぱりわからず、促されるままに2人で食事をした。
しかし、私よりも味付けが旨いのはちょっと悔しかったな。意外にも自炊は出来るようだ。
食事が終わり、私は境内の掃除をはじめる。縁側ではのんびりとお茶を楽しむ幽々子。
一体何をしに来たのか、と尋ねれば。
「この世は老いも若きも男も女も、心のさみしい人ばかり。そして今日の霊夢はその一人。私は貴女の心のスキマを埋めに来たのよ~」
だー!とか指をさされた。相変わらず意味が解らないし、スキマとか紫の真似事だろうか。
あらかた掃除が終われば昼食時。今に戻るとまた幽々子がご飯を作ってくれていた。
いつもの和服上に白いエプロンをしており、人魂と一緒に料理をしている後姿は見ていて綺麗と思えた。
昼食には御蕎麦。ウチにはこんな材料がなかったはずなので、どこからか取って来てくれたのだろうか?
山菜の天麩羅まであり、これもまたサクサクとした衣の中に山菜の香りが旨く生かされており美味だった。
お昼から数刻。二人で縁側に座りお茶を啜る。
思い切って今日はバカに優しくて、何か裏があるのか?と聞いてしまう。
帰ってきたのは扇で口元を隠し、うふふっと笑う幽々子の姿だった。
鳥が囀り、蟲が哭き。木々が指揮して、空に溶ける。
雲の流れと時間の流れが比例して、心まで流れにまどろみ自然と思考は消えていく。
「霊夢」
幽々子の声に引き戻されるころ、私はまた仰向けで寝ていた。
朝と少し違うのは、頭の下には枕よりも柔らかな温もりがあること。
刻は黄昏。ほんのりと頬を橙色に染める幽々子は同性の私から見ても綺麗で、つい見惚れてしまう。
額にそっと乗せられる掌は少し冷たくて心地よく、目を開けばまた幽々子が微笑んでいた。
「霊夢。最近寂しかったでしょ?」
トクンと胸が高鳴る。
「家族の温かみを知ってしまって、それを羨ましがっていた。」
私は今どんな顔をしているんだろう。
「けど博麗の巫女として、出来る限り無重力でいようとする貴女。」
見なくても解る。
「いいのよ霊夢。そんなに気を張らなくても、貴女にはもう掛け替えの無い友達がいるんだから。」
泣いて、いるわね。
「全てを受け入れて、その上で巫女として振舞えばいいのよ。貴女は巫女である前に、まだ一人の少女なんだから、ね?」
その後のことはあまり思い出したくない。わんわんと幽々子に抱きしめられるままに泣いてしまうし。
涙で酷い顔になっても、幽々子は優しく私の頭を撫でてくれて、それは少しだけお母さんを思い出させてくれた。
泣き終えて、連日の胸の中に溜まっていた何かが綺麗になくなっていた。
無重力であろうという心が、既に私を縛っていたなんて、何て笑い話だろうか。
しかもそれに気づかせてくれたのが、あのお気楽亡霊お嬢様だなんて。
日が沈んで幽々子がそろそろ帰ると言い出した。
そういえば、どうして私の心が解ったのか?と聞けば、予想通り帰ってきた答えは微笑だった。
そして少し目を腫らしながらも、しっかりと笑って私はさようならと言ってやった。
けど涙も止まって、そうしてやっと笑えたというのにあいつは・・・
「霊夢、寂しくなったらまた来てあげるわ。皆、霊夢のことが大好きなんだから、思いつめちゃダメよ、ね?」
地面を蹴って淡い人魂の光を引き連れ、夜空に舞う幽々子。
最後の最後でまた変なこと言うから、おかげでまた顔を洗う羽目になった。
この日記帳にまで染みを作っちゃったし、まったく幽々子には困ったものだ。
けど、ありがとう。こんな姿、あんた以外には多分見せられないよ。
だから、もう一度。
ありがとう、おやすみなさい、幽々子。
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○月◇日 天気雨 訪問者?:八雲一家
最近は私の家に不法侵入するのが流行っているのか、朝起きるとカオスだった。
どれほどカオスかといえば、家族で川ではなく、河の字で寝ているぐらいにカオス。
丸まって寝ていた私を中心に、右から紫がくっついてきて、左には藍、何故か枕元に橙が寝ていた。
「んふふふふぅ~、霊夢のここ、柔らかひでぶ!」
とりあえず、寝ぼけながらでも妙なことをしてくる紫に容赦なく博麗エルボーで顔面を貫く。
しかし、それで起きても「愛とは耐えるもの!」とかほざいていたので、もう2発ほど加えてやった。
哀しいスキマよ。誰よりも愛深き故に!だから朝から顔面が凹むのだ。
するとそのまま二度寝を始めたので一安心。意識を失ったとも言う。
さてこの状況を打破すべく、私は目の前の藍を揺さぶって起こしてやる。
白い和服の寝巻きを目の前でこれでもかと肌蹴させられてると、目の保養・・・もとい、精神衛生上良くない。
寝ぼけ眼を擦りながら藍が起きれば、意識が微妙なまま台所へと向かっていった。
数分後には包丁の音がし始めたので、私も朝日を浴びながら着替えを済ませてしまう。
その後に台所を覗いてみると衣服が肌蹴たまま料理を続けていた。
後で聞いてみたが、どうやら無意識だったようだ。習慣とは恐ろしい。
ちなみに、このまま放っておくとスッパのまま続けそうだったので、衣服だけはしっかりと直してやっておいた。
朝ごはんができる頃には橙も起きて着替えを済ませ、それに遅れつつ紫も居間へとやってきた。こっちは寝巻きのまま。
いつのまにか藍の方も着替えを終えて4人で食卓を囲む。
食事の合間になぜ神社で寝ていたのか?と聞けば、
「昨日4人で宴会をして、そのまま酔いつぶれてしまったからだろう?」
っと、藍が説明してくれた。それを聞いてやっと思い出したかのように昨日の記憶がよみがえる。
「けど、れーむが私たちのお布団に入ってきたのは紫様もびっくりしてたよね~」
そして、記憶に無いその行為を聞かされたくは無かったわ橙。
とりあえず、私を見てニヤニヤしていた紫には博麗式陰陽弾を喰らわせておいた。
「うお!眩し!」とか言っていたが、まったく眩しくは無い。
しかし、お酒が入っていたとはいえ無意識にそんな行為をしてしまうとは…
先日の幽々子の台詞を思い出して、改めて自分のことを恥じる。
朝方に掃除をしようとしたが、2匹の式神が掃除を先に始めてしまう。
どうやら場所を借りたお礼らしい。主人と違って真面目なのは良い事だ。
とりあえず、私より先に縁側で休むどころか寝息を立てていた主人には博麗式4の字固めを喰らわせておく。
「痛い痛いー!あぁ、けど霊夢の柔らかい太股が私の腕に、しかもドロワーズも見えってやっぱり痛い痛い痛い~!」
また妙なことを言っていたので、折れる限界まで極めておいた。
しかし涙目で蹲ってたくせに、そのまま寝息をまた立て始めたので、もう諦めて私も一息つくことにした。
やることもなくなれば、境内を箒で掃いている藍に話しを振る。
いつも思っていた。何でこんなののために貴女は頑張るのか?と。
「式神にとって主からの命令は絶対だからだ、というのは建前か。」
一度だらしなく寝ている紫に視線をやる藍。苦笑が浮かぶが、それでも呆れているという風ではない。
「紫様がいわゆる私の母親だからだ。母の役に立ちたいと思うのは、子供にとって極々当たり前のこと。」
「橙も藍様に楽をしてもらいたいから手伝ってます!」
二人の娘は本当に至極自然にそんなことを言った。
八雲一家。その呼称は伊達ではない、主従という関係の中に一家としての意味も持つ。それが八雲一家。
またあの気持ちが胸の中に舞い降りる。
『羨ましい』
いつから自分はこんなことを思うようになったのかと、溜息をつこうとする。
「博麗霊夢、お前もそうだろう?」
が、途中で止まってしまった。何を言っているのかと顔を上げれば、先程よりも近く藍たちが私の前にいて・・・
「永夜事件の時、お前は誰よりも紫様のために頑張ってくれた。目的が同じということもあったが、紫様がやられそうになった時、お前は身を挺して護ってくれた。そして少し悔しくもあるのだが、紫様はあの夜。何よりもお前を護ろうと必死だった。」
いつものように袖に腕を通し佇む藍。そして私に向けられるのは微笑み。紫を見ていたときのように優しい笑みを浮かべ。
「お前は博麗であり八雲ではない。それに人と妖怪でも在る。しかし、親子という関係以上に紫様とお前は親子であると私は思っているよ。」
無論、私と橙もそれに負けない強い絆を持っているがな。などと最後に惚気られた。ご馳走様。
しかし、そんなことを言われると嫌でも意識してしまう。
憎たらしかったこいつの寝顔がやけに可愛く見えるのも、藍のせいだと私は思う。
とりあえず、良いことを言っている従者の前でいびきをかく主人のお尻に博麗式サマーソルトをお見舞いしておく。
スパーン!っと良い音が鳴った。寝顔から起きて涙目になったので、自業自得。とだけ言っておいた。
この後、萃香が加わってまた宴会を起こしてしまう。
萃香の瓢箪の酒は強いというのに、一気飲み対決なんかするからすぐに紫が潰れてしまい、藍も餌食になってしまった。
とは言っても、萃香にも限界が来て夜風に当たってくると言って出て行ってしまい静かな夜が戻ってくる。
そして橙は藍を、私は紫を床まで運び今日は解散となった。
筆をおいて紫の寝顔を覗く。すぅすぅ、と昼間とは打って変わって静かな寝息。
「霊夢~・・・うふふ、大好きよ~・・・」
「夢の中でなにやってるんだか、このスキマは」
酔って真っ赤な鼻の頭を押してやると、眉をしかめて首を振る紫。
指を離すとまた安らかな寝息と共に微笑を浮かべる。
よっぽど楽しい夢を見てるのだろう。
「紫、あんたはこの前の幽々子のことを知って遊びに来てくれたの?」
返事が無いただの酔っ払いのようだ。
「ま、どうでもいっか。今日だけは日記に記さないでここで気持ちを出させてもらうわ」
布団の上で横になっている紫にくっついて私も横になる。
「あんたの思惑なんか解らないけど、今日も楽しかったわ」
「ありがとう、お母さん」
赤い頬に唇を軽く押し付ければ、軽く紫に抱きついて目を閉じる。
日記には書かれない秘密の出来事。スキマも鬼も文屋も運命も歴史も誰も知らない。
静かな夜にそっと漏れた私の本音は月に見守られ、雲も無いのに振る雨に消えていった。
次の朝、私は紫に跨がれている状態で目を覚ました。
「何をしているのかしら?」
「ちょ、ちょっと霊夢を味見しようかな~と思って」
「それはもちろん性的な意味で?」
「YES!YES!YES!」
その朝、私は夢想転生を1時間近く無条件で発動することが出来た。
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○月☆日 台風 訪問者:霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイド
ザァザァと文字通りの音を立てて降り続ける豪雨。
神社の中からでも鳥居が霞んでしまうほどの強さだ。
少し前からいきなり降り出したのだが、止む気配は一向に無い。むしろ強くなってるように感じる。
こんな日に参拝客も遊びに来る馬鹿もいないだろう、今日は雨音を感じながらお茶でも飲もう。
そう思っていたのに、唐突に来客はやってきた。無論、参拝客ではない。
馬鹿の方だった。一応言っておくけど、⑨でもチルノでもない。
「おーっす霊夢!ちょっと雨宿りついでに今夜泊めてくれ!」
「あー、もう、びしょびしょ・・・霊夢、ちょっとタオル貸してくれる?ついでに泊めてくれないかしら?」
「帰れバカップル」
戸を閉めて叩き出してやったが、いつのまにか入ってきていた上海が私の袖を引っ張って哀願してきた。
人形なのに困ってるように眉をよせてフルフル首を振らない、ぐいぐい引っ張らない!
あー、もう可愛いなこんちくしょう!
あの可愛さは外でギャーギャー騒いでる黒白馬鹿と七色馬鹿とは比べ物にならなかったわね。
その後、上海の可愛さに負けて仕方なく厄介なバカップルを招き入れてやった。
タオルを貸してと言われたが、あそこまで濡れてるなら風呂にでもはいった方が良いだろう。
ちょうどお湯も沸いたところだったので、渋々ながら風呂場へ案内する。
あ、もちろんバカップルは外から回って貰った。床を水浸しにされたくないしね。
だけど、上海だけは私が抱っこ。困惑する上海も可愛いわねぇ。
「おっ、アリス透けてるぜ。今日もフリフリのレースか、さすが都会派は違うもんだな。どれ中身はどうだ~」
「こら、何見てんのよ!って、ちょ!やめ、自分で脱ぐっていうのに!!指ひっかけない!食い込ませない!」
「さっさと脱げバカップル」
放っておくといつまでもイチャイチャしてそうなので、引ん剥いた後に陰陽鬼神玉で風呂場までガリガリ運んでやった。
回避結界?台風だからガード無効に決まってるじゃないの。
自慢じゃないけど、神社のお風呂場は大きい。
三人どころか五人ぐらいだったら全員で湯船に入れるほどの大きさだ。
上海の髪を洗いながら、二人に湯加減を聞けばどうやら上々のようだ。良かった良かった。
ぎゅぅ、と目を瞑りながらくすぐったそうに震える上海はやっぱり可愛かった。
私も湯船に浸かれば、自分で言うのもなんだが良い湯加減だった。
湯船は広いのに、魔理沙もアリスも上海も私も皆で肩を並べて呟く言葉は、極楽極楽。
上海は喋れないとかいうな。
「それにしても、アリスってばまた大きくなってない?」
「うっ、まぁ、ちょっとだけね。霊夢の方はスタイルがよくなったんじゃない?」
「あぁ、最近どこぞの子鬼とかと遊んでばっかりで無駄に体を動かしてるからね」
「ふーん、やっぱり大きさより形よね」
「なに魔理沙みたいなこと言ってるのよ」
「シャンハーイ!」
「あぁ、そういえば上海の髪も前よりサラサラになったわよね」
「解る?実は森の薬草で洗髪してあげてるの。そしたら指で整えられるぐらいになちゃってね。ちょっと羨ましいわ」
「アリスとか魔理沙は曲毛だもんね」
「霊夢の黒髪も時々羨ましいのよ?」
「シャンハ~イ」
「も、もう、上海もアリスもからかわないでよ」
「「で、魔理沙」」
「ん、なんなのぜ?」
「「無言で揉むな!」」
「シャンハーイ…」
お風呂を出て髪を乾かす頃になれば、次第に雨も弱くなってきていた。
女三人寄れば姦しいというが、まさか豪雨の音を気にしなくなるとは思わなかった。
昔の人は良くこんな上手いことを思いつくものだ。
ただ料理をするだけでも会話が途切れることはなく、羽目を外しながら思い思いのことを話していく。
新しいスペルカードのこと。実はアリスもフランと最近仲良くなったということ。慧音の変わりに里の寺子屋で授業をしたこと。
それはどれも他愛無い話。けど、目を輝かせて話すアリスは楽しげで、聞いてる私も続きが気になる。
上海に出来た料理を運んでもらい、今日はいつも以上に騒がしく楽しい夕ご飯を過ごすこととなるだろう。
私とアリスと上海の3人で作った料理はどれも美味しいに決まっているのだから。
そして晩御飯の準備が整った頃に鉄拳×2を喰らって湯船に浮かんでる魔理沙を回収しに行ったのだった。
気絶から立ち直って、しばらくはぼやいていた魔理沙だが食事を始めれば機嫌が元に戻るのだから現金なものだ。
乙女や少女というより、魔理沙は言うなれば大きな子供というのが正しいと私は思っている。
もちろん悪い意味じゃない、飲み込みも早く、人の良い所を見つけるのが上手くて、無邪気。
我侭で自分勝手だけど、相手が本当に嫌がることはしない。真っ直ぐでいつも全力疾走な魔理沙。
何だかんだ言って、私はこの元気な魔女が嫌いでは無いらしい。
その横にはアリス。絵に描いたような少女趣味で、ひらひらのレースや可愛すぎる服を好むこれこそ乙女!な少女。
けど実際のところは面倒見が良くて、いつも一歩後ろで魔理沙を見守るお姉さんとか保母さん的な存在。
里の子供やフラン、魔理沙に好かれているようだし、とにかく器用で大体のことをこなしてみせる。
一家に一人いると落ち着くし、一緒に居て疲れない幻想郷では珍しい部類の性格だろう。
「ん?どうしたんだ、霊夢?私たちの顔見てにやにやしやがって?」
「何か不味いものでもあったかしら?言ってくれれば、作り直すけど」
「あぁ、うん、そうじゃなくてね」
「「?」」
「二人とも仲良いなって」
「何言ってんだよ、なぁ?」
「えぇ、そうね。全く持って何を言ってるのかしら」
「え?」
「霊夢も一緒だろ?」
「霊夢も一緒でしょ?」
「シャンハーイ♪」
私の膝の上で両手をあげる上海。
にこにこと楽しげで、小さい体をいっぱいに使って気持ちを表現してくれている。
魔理沙もアリスも笑っていて、ついつい私も笑ってしまう。
だけど、嬉しいなんて言ってやったら二人とも調子に乗るから絶対に言ってやらない。
「バカップルに私まで入れないでほしいわね。仲が良いのは上海だけで十分よ。」
「うわ、酷い言い様だぜ。嬉しいくせに」
「酷い言い様ね。嬉しいくせに」
「「ツンデ霊夢」」
「黙って食いなさい、夢想封印で巫っ女巫女にするわよ?」
この時点で黙らなかった魔理沙は食事の後に布団で簀巻きにしておいてやった。
「こ、こいつ!デレないぞ!?」とか驚かれても困るのもイラつくのも私の方だ。
寝る時間までアリスに人形の作り方というものを教わった。
最近は時間を持て余すことも多いし、たまに誰かに教わるのものというのは面白かった。
日付が変わって半刻。上海をモデルにしてやっと一つ作ることが出来た。
アリスの人形と比べて糸の切り方や、全体のバランス、可愛らしさなどが劣るとぼやいたら・・・
「こっちはこれが本業よ?それに、初めてにしては上手すぎよ。まず完成する人も少ないって言うのに」
その人形を枕元に置けば、流石にアリスの口から欠伸の一つも出てくるようになってしまった。
魔理沙は簀巻きにされながら、既に就寝中だった。恐るべき肝の太さだ。
3人で並んで布団に入れば、明かりを消す。
アリスも疲れていたのだろう、すぐに寝息が聞こえ始めてきた。
しかし、それもあの大雨の中を飛んできたというなら納得だろう。
だけど私は眠れる気配が無かった。
なぜか、目が冴えて目を瞑っても睡魔が襲ってこない。
こういう日もあるだろうが暇なものは暇で、眠れないものは眠れない。
二人を起こさないように布団から出て、縁側へ。
雨上がりの香りを胸いっぱいに吸い込んで、夜に漂う涼しげな風に目を閉じる。
空を見上げれば、曇りに霞む朧月。
見え隠れする姿は私と似ている。
普段は私も隠れている。本音を見せるのは苦手だから。
ときには私も姿を出す。しかしそれは日記の中でだけ。
幽々子が来たあの時から、そこまで大きな変化も起こってないし、起こそうともしてない。
「けど、そう簡単に今までの自分を捨てられないって…」
「・・・シャ~ン、ハ~イ?」
「あれ、上海。ごめんね、起こしちゃったかしら?」
襖の隙間。目を擦りながら空を飛んでやってくる上海を膝の上に乗せれば、優しく髪を撫でてみる。
やっぱり触り心地は良かった。上海も心成しか気持ち良さそうだ。
「・・・上海、私ね。上海みたいになりたいわ」
「シャンハーイ?」
「だって、上海は魔理沙以上に素直で良い子なんだもの」
「シャンハーイ・・・」
「違うわ。私はたぶん、一番素直じゃないから」
「・・・・・・シャン、ハーイ」
「ん、慰めてくれるの?ありがとう、それにごめんね。妙な話をしちゃって」
「シャンハーイ」
「えぇ、そうね。そろそろ寝よっか。風邪引いちゃうかもしれないしね」
上海を腕に抱いて、私は床に着く。
やっぱり眠気は来ないけれど、瞼を閉じて無理に自分を寝かそうとする。
腕には上海がぎゅぅ、と抱きついていて身動きは取れないし、困ったものだ。
とりあえず、心配してくれてありがとう上海。
物音で目を覚ませば、まだ日が出始めるぐらいの頃だった。
既に布団を畳んでいて、いつもの格好の二人。上海もいつのまにかアリスの隣だ。
どうやら魔理沙とアリスはこれからそれぞれ別の用事があるらしい。慌しいやつらだわ。
朝御飯の方を聞けば、遠慮していくと言われてしまった。作らせる予定だったのにとは言えなかった。
寝巻きのまま、鳥居ぐらいまでは見送ってやることにする。
「せいぜい他人に迷惑かけるんじゃないわよ?」
「失礼だな。私は親友にしか迷惑をかけないぜ?」
「まずは迷惑を掛けない様にしてくれると私も助かるんだけどね」
二人が宙に浮けば、アリスの隣で上海が物悲しげにこちらを見ている。
まだ、昨日のことを気にしているのか、人形だというのに優しい子ね。
そして魔理沙が飛び出せば、アリスも続くように日光の中に飛ぼうとするが動きが止まった。
「シャンハーイ」
上海人形がアリスの袖を掴んで、待ってくれとでも言うように首を振って、私の方へ飛んできた。
「何か、忘れ物?」
「シャンハーイ」
「え、おまじない?」
「シャンハーイ♪」
ふわっ、と柔らかな布が口に押し当てられた。
いや、正確には上海の唇が私の唇にキスをした。
―――好きな人に素直に想いを伝えられるおまじないだよ♪―――
飛んでいく上海とアリスの背中を見送りながら、軽く手を振ってやった。
最後に上海が呟いた言葉。
やはり素直で純粋な子ほど怖いものは無い。
怒れず、叱れず、悪気も無いから始末が悪い。
あれをキスと呼んでいいのかは迷うけれど、私は唇にされたのは初めてだったのに。
あぁ、怖い怖い。
思えば、私ですら上海と二人の時はずっと素直だったのかもしれない。
これが無意識のうちというのだから、やはり純粋というのは怖いものだ。
日が昇りはじめた。そろそろ筆を置くとしよう。
今日のお昼御飯は軽めに、夜には中華料理でも紅魔館でご馳走になるとしよう。
一日の始め。心地よい朝日を受けて、私はそっと自分の唇をなぞってみた。
日記は物語のそれよりも日々の出来事をありありと表現できますから、作者がキャラクターに対してどのような考えを持っているのか分かりやすいので、そういった意味では読んでいて気持ちいいです。
それにしても幽々子が霊夢を……とはまた珍しいですね。
文句があるとすればどの日の素材も一級品なんでどうしても最後と比べちゃう、もったいない感が。
贅沢すぎる文句でごめんね、アンタの作品は十分素敵だ。
>パチェリーは着痩せでばいんばいんだし
あの服の下はばいんばいんか!と期待してしまいましたw
あと、パチェは愛称ですね。
台風鬼神玉は鬼だと思いますw
みんな霊夢が大好きなんだもの
いいよ…なんかいいよ
ゆゆ様のカリスマ溢れすぎ。
もう何だか、ほんわかしました。さすがほんわか長w
次回作も期待してます~。
ゆかりn……らんしゃまぁぁぁぁああああ(オワレ