この作品は私が以前、プチの方に投稿した
「X'mas in 守矢神社」と「早苗のバレンタイン」の流れを含んでいます。
あと、突っ込みどころは満載だと思われます。
ある晴れた日のこと
「さて……。」
それはそれはいつもと変わらない極普通の日でした。
「……は?」
その扉を開くまでは…
扉を開いたアリスの眼に飛び込んできたのは木々の生い茂る魔法の森ではなかった。
その澄んだ碧眼に映るのは一面真っ白の
バタンッ
扉が勢いよく閉じられた。
アリスは扉を閉じた手を自分の額に当て、大きくため息をつく。そして、再び確かめるように扉を開けようと手を伸ばすが、その手は空をきった。
先ほどまで触れていたはずの扉が雲か霞のように消えてしまったのだ。
その様子にアリスは再び額に手を当て、もううんざりだとでも言いたげにため息をついた。
「アリスさん!?」
そのときアリスの背後から突然声が上がった。その声にアリスがゆっくりと振り返ると、そこには早苗と他3名の姿があった。
その4人の姿を…いや、正確にはその中の2人の姿を見つけた途端に、アリスはガックリと肩を落とした。
「で、ここはどこなのかしら?楽園の巫女さんに普通の魔法使いさん?」
「さぁ?どこなのかしらね?」
「見たまま、真っ白でだだっ広い部屋じゃないのか?」
楽園の巫女 霊夢は事も無げに、普通の魔法使い 魔理沙は見当違いの回答を…
尋ねた本人はあまりにも予測どおりの回答にため息をつくことしかできなかった。
「あ、あのー…」
ため息をつくアリスに最初に声を変えた人物、早苗が戸惑いながらも声を発した。
そんな早苗にアリスは、ごめんごめんと軽く謝った。
「貴女も妙なことに巻き込まれたわね。」
「アリスさん…ここはどこなんですか…。霊夢と魔理沙は全然危機感が無いし、それに…」
「それに?」
「それにあの妖怪、ニコニコしてるけど怖いんです。すごく寒気がするんです。」
そういって早苗が涙目で指差した先には、この場に似つかわしくない笑顔を振りまく妖怪の姿が…。
アリスは「ぁぁー」と納得するように何度か頷いた。
「うん。貴女の勘は正しい。
アレとは関わらないほうが良いわ。」
「ぁぅー…、やっぱりそうなんですか?
実は私が最初にココに連れてこられたみたいなんですけど、そのあとにあの人(?)が来て、声をかけようとしたんですけど物凄い威圧感で…」
アリスの同意に勇気付けられたのか、早苗は捲くし立てるように今までの経過を話し始めた。
しかし、その背後からゆっくりと歩み寄る緑の影が…
「ねぇ?」
「ひゃわ!?す、すみ、すみません!!」
早苗の背後から声を変えた緑の影、それは笑顔のまま物凄い威圧感を放っていた。
だが、その威圧感は早苗に向けて放たれたものではなく、真っ直ぐにアリスのほうへと向かっていた。
「貴女には興味ないわ。私が声をかけているのは、そっちの人形遣いよ。」
「あら?私なんかに興味をお持ちで?」
「ぇぇ…、いつまでこの私を無視してくれるのか、とね。」
アリスは緑の影の放つ威圧感に押され気味になりながらも(早苗の手前、後に引けないということもあるが)
緑の影、風見幽香と正面から睨みあった。
「四季のフラワーマスターも意外と寂しがりなのかしら?」
「それはもう寂しがりよ。だって、人に無視されるのは一番嫌いだもの。
ついでに言うなら、私を無視した相手を徹底的に叩き潰すのは大好きよ。」
「はいはい、物騒な話はそこまで。
ココに連れてこられたお仲間同士、仲良くとは言わないけど弾幕ごっこはやめてよね。」
一発触発、その気配を察したのか、霊夢が2人の間に割って入った。
その行為に気分が削がれたのか、幽香はあっさりと引き下がった。
「……ふん。霊夢に感謝すると良いわ、人形遣い。」
「そうね、無駄な体力を使う必要も無くなったし、少しは感謝しても良いかもしれないわ。」
折角止めに入ったのに、それでも威嚇しあう2人に今度は霊夢がため息をつく番だった。
「あの!!」
アリス&幽香「「ぁ!?」」
そんな険悪ムードをどうにかしようと、いがみ合う2人に押されながらも、早苗が声を張り上げた。
が、2人に睨まれ一瞬固まってしまった。むしろ涙目を通り越して泣きたくなるぐらいに。
それでも、この状況を何とかしようと、早苗は精一杯気を張って言葉をつなげた。
「あの、私は神社で掃除をしていたら突然足元に穴が開いて、気づいたらココにいたんですけど…
皆さんはどういった経緯でココに?」
「私は自分の家から出ようと扉を開けたらココに繋がっていたわ。」
「道を歩いていたらいつの間にかココにいたわねぇ。」
「図書館に忍び込もうとしたらココに来てたぜ。」
「お茶を飲んでいたらいつの間にかココにいたわ。」
一瞬の間、そして全員が魔理沙のほうを見ていた。
当の魔理沙はその視線に気づくことなく普段どおりの表情をしていた。
「…若干一名の発言がおかしい気がするけど、この際どうでもいいわ」
そうアリスが漏らすと、突然この妙な空間が真っ暗になった。
何が起こったのかと警戒を強めていると、5人それぞれにスポットライトが当たった。
【ようこそ、わんだーらんどへ!
ゆっくりと楽しんでいってねー!!】
突然響き渡る声、声の主の姿はどこにもない。
「わんだーらんど?御伽の国だっけ?」
魔理沙が疑問を漏らすと、またどこからともなく声が響き渡る
【そうよー。ここは私の創った御伽の世界。
皆さんはその世界にご招待されたのよー!】
謎の声は意気揚々と、とても楽しげに宣言するが、5人の反応は冷めたものだった。
「というか、スキマの仕業でしょ。」
「私もそう思うぜ。」
「紫ぐらいよね、こんなことするの。」
「あの年増、まだそんなことやってるのね。」
「あのー、紫さんって妖怪の賢者って言われt…」
「さっさと出しなさいよ。正体はばれてるんだから。」
【……。私は紫なんて名前じゃないわよぉ!!】
一瞬の間の後、謎の声は大声で反論した。それはもう鼓膜が破れるかと思うくらいに
【ちょ、ちょっと、○○さま落ち着いてください!】
【だって、あいつら酷いのよ!?】
全員「……。」
いじける謎の声、それをなだめるもうひとつの声、そして呆れる5人。
そんなグダグダな空気の中、面倒くさそうにアリスが口を開いた。
「まぁ、あのいじけてる声の人物が私たちをココに連れてきたってことは、
面倒だけどその人物しか私たちを元の場所に返せないってことよね?」
【そ、そうよ!貴女たちの命運は私が握ってるのよ!!
大人しくこのわんだーらんどで遊んでいきなさい!!】
アリスの言葉に謎の声は息を吹き返した。
「それよりも、いつもの異変みたいに退治しに行ったほうが早いんじゃない?」
【それだけはやめてぇぇぇえええええええ!!】
が、霊夢の一言で再び鼓膜が破れるかと思うほどの絶叫が響き渡った。
【あなたたちに挑戦してもらうアトラクションは、巨大人生双六!!】
一悶着二悶着のあと、謎の声がゲームの内容を高らかに宣言した。
「すごろく?」
「…ベタね。」
「人生双六って、なんだか人生ゲームみたいですね。」
「はぁ…退屈そう…」
「早く帰ってお茶が飲みたいわね。」
【二人一組で参加してね。】
参加者の自由っぷりに謎の声のほうも流すという行為を学んだようだった。
そして、あみだくじでチームを決めることに…
チーム発表
霊夢&幽香
アリス&早苗
魔理沙
【じゃぁ、始めるわよー】
「ちょっと待て!!私だけ一人なんだが!?」
参加者の自由っぷりに負けないくらいの自由さで謎の声はゲームを開始しようとした。
だが、魔理沙がストップかけた。魔理沙だけが一人だったのだから当たり前だ。
それに今気づいたと言う様に謎の声は思案気味に声を上げる。
【あら、そういえばそうね…。じゃぁ、この辺をこうして…ぇぃやぁ!!】
「……ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!??」
ぐちゃっ
「ナマモノが降ってきたぜ…。」
謎の声の妙な掛け声とともに空から降ってきたのは紅魔館の門番の美鈴。
美鈴は訳のわからぬまま魔理沙とペアを組んでゲームに参加することに…
本人曰く、早く帰らないと刺されるので、よくわからないけれど帰るために全力を尽くすそうだ。
【では、3組による巨大人生双六開始よー
それじゃあー、サイコロを振る順番はー】
思わせぶりに謎の声がしゃべりだすが、魔理沙が目の前に現れたサイコロに真っ先に飛びついた。
「私が最初だ!!」
【ぇ!?ちょっと!!】
魔理沙の行動に慌てふためく謎の声。
そんなことお構いなしにサイコロを振る魔理沙。
「とーぅ!!」
妙な掛け声とともに出た目は⑥
「これは幸先が良いぜ!!」
魔理沙は機嫌良く目の前に広がる巨大な双六の上を進んでいった。
しかし、魔理沙がたどり着いたマスにはこう書かれていた。
-⑥マス戻る-
「…。」
「ま、まぁ、こんなこともありますよ。」
ガックリとうなだれる魔理沙を励ます美鈴。
非常に珍しい、普段ではありえないであろう光景だった。
2番手はアリスと早苗。
その理由は霊夢の面倒だからの一言だった。
「アリスさん頑張りましょう!」
「はぁ……、それなりに頑張りましょうか。」
まず最初は早苗がサイコロを振った。
出た目は④
そして、マス目を進んで行く途中、アリスが不意に早苗に話しかけた。
「早苗…」
「はい?」
「さっきはごめんね。ちょっとあいつの顔見てたら頭に血が上っちゃって。」
「いえ、良いんですよ。そんなことより、折角ゲームに参加するんですから楽しみましょう。」
アリスは早苗の笑顔を見ると、ホッとしたように肩の力を抜いた。
そうしているうちに2人がたどり着いたマスには
-④マス進む-
と書かれていた。
「これは幸先良いですね。」
早苗の嬉しそうな笑顔にアリスの表情も自然と綻んでいた。
続いて、霊夢と幽香のペア
「霊夢、貴女が投げなさい。」
「なんで私が?アンタが投げなさいよ。」
開始前から険悪ムードの2人。
その様子に謎の声も戸惑いを覚えていた。
【あのー、お二人さん?早く投げてもらわないとゲームが進まないんだけどなぁ?】
霊夢&幽香「「あ!?」」
【ひぃ!??】
姿は見えないが、その悲鳴から頭を抱えて怯えている姿が想像できた。
【ぇー…ちょっと席を外しております○○さまに代わり、私がルールを捕捉させていただきます。】
先ほど謎の声をなだめていた別の声が登場したことで、先の想像は確信に変わっていた。
もちろんいがみ合っている2人はそんなことには気づかないが…。
【コホンッ。では、説明いたします。
今回のゲーム、優勝したチームには○○さまから賞品として好きなものが与えられます。】
「……好きなもの?」
【はい。○○さまが用意できるものであれば、何でも賞品としてお渡しします。】
その瞬間、霊夢と幽香の目の色が変わった。(あと魔理沙も)
「ふふふ…ちょうど、お茶の葉とか食料とか備蓄が切れ掛かってたのよねー…。」
「あら、そんな単純なことを望むの?
私なら、こんなつまらないゲームに参加させた犯人を叩きのめす権利がいいわねぇ。」
【……ぇー…、あともう一つありまして、最下位のチームには逆に罰ゲームが待っています。】
別の声がさらに補足を加えるが、目の色の変わった2人の耳に届くことは無かった。
「さぁ、いくわよ!」
「いきなさい!霊夢!」
妙に気合の入った霊夢がサイコロを投げる。
出た目は⑤だ。駆け抜けるかのように5マス進むとそのマスにはこんな表示が…
-ミニゲームチャレンジ!ver3-
「ミニゲーム?」
霊夢が首を傾げていると、どうやら復活したらしい謎の声が戻ってきた。
【ミニゲームver3はこちらよー!!】
そう謎の声が叫ぶと霊夢と幽香の周りに檻が現れ、2人を閉じ込めてしまった。
更にその中にトランプのカードを模した兵隊が4体、5体…合計で12体の兵士が現れた。
【檻の中の罪人よ、兵士の攻撃から生き残れー!!
ということで、一定時間兵士の攻撃を逃げ切るか、兵士をすべて倒せばクリアよ。」
そんなの簡単じゃない、と霊夢がお札を手に取るが謎の声の説明はまだ続いていた。
【但し!自分の肉体以外の使用は禁止。もちろん弾幕ごっことかスペルカードなんて以ての外よ!
じゃぁ、頑張ってね!ゲーム開始!!】
一方的に話を打ち切りゲームの開始を告げる謎の声。
トランプの兵士たちは一斉に手に持った剣や槍、棍棒といった得物を構え2人に襲い掛かった。
「うわぁ…めんどくさい…」
攻撃手段のない霊夢はやる気の失せた表情で突っ立ていたが、トランプの兵士の攻撃を紙一重でヒラヒラと避けていく。
それは紅白の蝶が舞うような光景だった。但し、表情はだらけきっている。
一方、幽香はトランプの兵士の攻撃を避けようとはしなかった。
「つまらないわねぇ…こんな脆い兵士じゃ…。」
【!!????】
謎の声が息を飲む気配がする。
それもそのはず、一見すれば華奢にも見える幽香が腕を突き出したとたんに正面にいた兵士が粉々に砕け散ったのだ。
自称、幻想郷最強の妖怪 風見 幽香、彼女の最大の武器は花を操るという能力ではない。その純粋な力だ。
それを知っている霊夢にとっては別に驚くことでもないのだが、どうやら謎の声はその事実を知らないらしい。
「なんか引っかかるわねぇ…」
霊夢がそうつぶやいた頃には幽香によってすべての兵士が粉々に粉砕されていた。
そして、ミニゲームをクリアした特典としてサイコロをもう一度投げる霊夢。
出た目は⑥、霊夢と幽香のペアはアリス、早苗のペアを抜きトップに躍り出た。
一巡回って魔理沙、美鈴ペア
静かに闘志を燃やす魔理沙が出した目は②、そのマス目に書かれていたのは
-ミニゲームチャレンジ!ver1-
【ミニゲームver1ー!!人生の壁を乗り越えろ!!必殺氷柱割り!!】
相変わらずノリノリな謎の声、その声に合わせるかのように魔理沙の周りに4枚のカードが現れる。
そのカードには0~3の数字が書かれていた。
【まず氷柱割りをする人と生贄を選んでもらいますー。
そして、カードに書かれた数字はミニゲームが成功した場合に投げることのできるサイコロの数を表しているわ。
さぁ、どtt】
「私が割ってやる!もちろんカードは3を選ぶぜ!!」
「へ?ぇ?え?ぇぇぇええええええ!??」
魔理沙は説明が終わる前に宣言し、カードを手に取った。
すると、美鈴は背後に突然現れた十字架に貼り付けられ、魔理沙の目の前には巨大な氷柱が現れた。
その大きさ縦横5メートル、厚さも5メートルはある。
「……。」
【あら?氷の大きさに圧倒されてるのかしら?】
ジッと氷柱を見つめる魔理沙に謎の声がからかう様に声をかける。
しかし、魔理沙はそれを意にも介さず、ニヤリと笑った。
「ふっふっふっ、この私がこの程度の氷で止められるとでも…!」
そういって懐から取り出したのはミニ八卦炉。
「恋符」
【ぁぁ、一つ言い忘れたけれど、このミニゲームも弾幕ごっこh】
―――マスタースパーク!!―――
轟音とともに灼熱の光線が走る。
【は、き…んし……よ…ぉぉぉおおお!???】
謎の声が裏返る。
光線が走った跡には氷の欠片どころか双六のマス目も含めて地面が大きく抉れていた。
「どうだ!これでサイコロ3個だな!」
【いやいやいやいやいや!!だから、弾幕ごっことかスペルカードとかいうのは禁止だから!!】
大慌てで訴える謎の声に魔理沙は、早く言えよーと口を尖らせた。
その様子を十字架に貼り付けられたまま見ていた美鈴はホッと安堵のため息を吐いた。
氷が自分の前に無くてよかったと……だが、現実は甘くなかった。
【ということで、ルール違反でミニゲーム失敗!罰ゲームGO!!】
「へ?」
突如、美鈴の頭上に魔理沙が破壊したものと同じ大きさの氷柱が出現した。
そして、そのまま……
【次回からはちゃんとルール聞いてからやってよね!】
「考慮するー。」
謎の声の注意に不機嫌さも顕に魔理沙は答えた。
続いてアリス、早苗ペア
なのだが、アリスは先ほどから額に手を当てて考え事をしているようだった。
「アリスさん?順番回ってきましたよ?」
「ぇぇ、わかってる……。まさか……ね……。」
2人が出した目は⑤、進んだマスには
-③マス進む-
の文字が…
その文字をみた途端にアリスの表情が一気に曇った。
「……。」
「ぁ…アリスさーん?」
「…いえ、なんでもないわ……。」
明らかに何かあった表情だが、早苗はあえてそれ以上追求することなく進んでいった。
その後、霊夢と幽香のペアは霊夢の持ち前の幸運と幽香の桁外れの力で障害を吹き飛ばし順調に進んでいき、
魔理沙と美鈴のペアは空回る魔理沙のやる気で美鈴が被害を被っていた。(主に氷柱的な意味で)
一方、アリスと早苗のペアは障害らしい障害に遭遇することなく順調に進んでいった。
そして、いつの間にかゲームも終盤に
霊夢、幽香ペア ゴールまで6マス
アリス、早苗ペア ゴールまで9マス
魔理沙、美鈴ぺア ゴールまで20マス
順番は魔理沙、美鈴ペア
魔理沙がサイコロを振り、②が出る。
他の2組がゴール目前なのに対して、このペアのみ遅れている理由、それは…
たどり着いたマスには、もう見慣れたこの文字が
-ミニゲームチャレンジ!ver1-
「もう嫌ですよぉぉおおおおおおおおおおおお!!
なんでこのゲームしか出ないんですかぁぁぁあああああああ!???」
美鈴が絶叫する。
それも仕方の無いことだ。なぜなら、ここまで全てのこのミニゲームしか出ておらず、
尚且つ、毎回魔理沙の独断と偏見で十字架に縛り付けられ巨大な氷柱を一身に受けてきたのだから…
そんな美鈴の肩にポンッと手が置かれる。
「今回も頼んだぜ☆」
魔理沙が良い顔で笑っていた。
そして、声も高らかに叫ぶ。
「ここで一番でかい氷を砕けばサイコロが3個!
全部6を出せば18!!一気に逆転だ!!」
【はいはい~。では、一番大きい氷の登場ですー】
魔理沙の宣言に対して気のない声で返す謎の声。
そして、空から巨大な氷が出現する。
美鈴の目の前に
「ぇ?」
「なにぃいいい!??」
次の瞬間、魔理沙の背後に十字架が出現し魔理沙を捕らえる。
魔理沙がジタバタともがくがそんなことでは十字架の戒めは破れない。
そんな魔理沙をあざ笑うかのように謎の声が響く。
【いやぁー、ずっと貴女ばかり挑戦するのも不公平かなーって気をきかせてみましたー】
「ちょっとまてぇぇええええええええ!!??」
魔理沙が抗議の声を上げるが謎の声は全く持って相手をしない。
そんな時、美鈴の不適な笑い声が静かに響き渡った。
「ふ…ふふふふ……。」
「な……め、美鈴?突然笑い出してどうしたんだ…?」
魔理沙が恐る恐る声をかけると今まで俯いていた美鈴がゆっくりと顔を上げた。
その顔は何ともいえないほど幸福そうな笑顔だった。
「始めはお嬢さまが紅霧を出したとき、それからというもの毎日のように紅魔館に来るようになり、
其のたびに私はこの身にマスタースパークを受け続けた……。」
幸福そうな笑顔なのだが、それと同時に涙を流していた。
「…魔理沙……アンタやりすぎよ…。」
「…アレは1回受ければもう2度と受けたくないです…。」
離れた場所で美鈴の告白を聞いていたアリスと早苗がボソリ漏らした。
美鈴は涙を振り払うとゆっくりと氷の方へと向き直った。
「今回も訳のわからぬまま双六に参加させられ、何もしてないのに氷に潰され続けた…。
でも、やっと、ようやく、ここに来て!復讐する機会が与えられたようです。」
魔理沙は美鈴の言葉に血の気を失った。
「まぁ、自業自得よね。」
「あの子もたまには痛い目にあわないとねぇ。」
真っ青な顔をしている魔理沙を眺めながら霊夢と幽香が呟いた。
美鈴はゆっくりと突きを放つ体制を整える。
「では…紅魔館の門番、紅美鈴!いきます!!」
「やめろぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!??」
美鈴の拳がゆっくりと氷の表面に達する。
魔理沙は訪れるであろう衝撃に備えギュッと目を瞑った。
しかし、いつまで経っても氷は落ちてこない。
何があったのかと恐る恐る目を開くと、そこには轟音を立てて崩れ落ちる巨大な氷柱の姿があった。
「…復讐も良いかと思いましたけど、どうせ復讐するなら堂々と正面から自分の力でやりたいですね。」
「…め…美鈴!!」
「それに、この状況から逆転する。そっちの方が面白いじゃないですか!」
美鈴の活き活きとした笑顔に魔理沙は頼もしさを感じた。
【ちょっとぉおおおおおおおおおおおおおお!???◇◇ちゃん!!
あのどっかの民族風の妖怪があんなに強いなんて聞いてないわよぉ!??】
【いえ、あのですね…、あの妖怪を連れてきたのは○○さまであって…
私があの妖怪の力量を知ってるわけ無いじゃないですか…】
一方、謎の声のほうは予想外の出来事に混乱しているようだった。
その謎の声に向けて十字架から開放された魔理沙が叫ぶ。
「おい!こっちは美鈴が氷を壊したんだ。
はやくサイコロ3個よこしな!」
【くっ!?わかってるわよ!あげるわよ!!】
自信に満ちた魔理沙の声に押されるように謎の声は魔理沙たちの元にサイコロを3個出現させた。
「さぁ、奇跡の逆転劇…はじめるぜ!」
「えぇ!やってやりましょう!!」
魔理沙と美鈴、2人は3個のサイコロを空高く放り投げた。
そして落下する3個のサイコロ…
1個目が止まる。その目は⑥
2個目が止まる。その目も⑥
「よし!!いけぇええええええええええええ!!」
「奇跡を!!」
3個目が止まる。その数字は……
「…⑤だと…!?」
「ガックリ…。やっぱり世の中そんなに上手くいきませんねぇ…。」
落ち込みながらも17マス進む魔理沙と美鈴。
「でも、もう一度私たちに順番が回ってくれば確実にゴールできますね。」
美鈴は少しでも気分を持ち直そうとするが、魔理沙のほうが現状を理解していた。
「いや…、もう私たちに次は無いな…。霊夢たちはあと6マスでゴールだ…。」
「6マスなら可能性も……ハッ!!」
美鈴も魔理沙の表情から気付いたようだ。2人の視線が自然に霊夢へと向かう。
楽園の巫女はとても良い笑顔だ。
「あのチート級の幸運紅白巫女がいる限り私たちに次は無い・・・。」
「わかってるじゃない。魔理沙。」
巫女はとても楽しそうだった。
そうなのだ。この時点でほぼ確実に(いや100%といっても過言ではないだろう)霊夢、幽香ペアに順番が回ればゴールしてしまう。
自然と残り9マスのアリス、早苗ペアはこの回にゴールしなければ最下位が決定してしまうのだ。
「なんだか酷い逆転劇ねぇ…」
「アリスさん!そんな冷静に言ってる場合じゃないですよ!!
最下位になったら罰ゲームが待ってるんですよ!?」
落ち着いて状況分析をするアリスに対して早苗のほうは大慌てだ。
そんな早苗の髪をアリスはそっと撫ぜた。
「貴女は奇跡を起こす人間でしょ?だったら必ずゴールできるわ。」
「アリスさん…!」
アリスに勇気付けられた早苗は勢い良くサイコロを投げる。
その背後でアリスはボソリと呟いていた。
「まぁ、私が最下位になる分には何も起こらないだろうけどね。」
空高く舞ったサイコロが出した目は④、そして2人が辿り着いたマスには
-ミニゲームチャレンジ!ver2-
そう書かれていた。
【はいはいー!!ボーナスゲームのミニゲームver2ですよー!!】
ミニゲームver2は今回はじめて出たため、謎の声が元気良く響き渡る。
【では、早速説明に移るわよー。
ミニゲームver2は単純に射的ゲーム!!】
謎の声の発言とともに2人の周りに6つのこぶし大のボールとシンボルが出現する。
【6つのシンボルと6つのボール。
シンボルに当てた数だけ先に進めるわよー♪】
普段から弾幕ごっこをやっている彼女たちにとってはボールをシンボルに当てることなど簡単だ。
【但し、能力の使用は今までどおり禁止ね。】
このルールさえなければ。
「……結構難しい気がします。」
「そうね、普段は自分で投げるなんてことしないものね。私は人形なら投げるけど。」
それならと、早苗はアリスにボールを渡そうとするがアリスはそれを断った。
「悪いけど、早苗…貴女が全部投げて頂戴。」
「ぇぇー!??」
「今は言えないけど…何というか……ちょっと私じゃいけない理由があるのよ。」
アリスの申し訳なさそうな表情に早苗は最初こそ困惑していたが、すぐに笑顔で答えた。
「わかりました。では私、東風谷早苗が奇跡を起こしてみせます!」
気合を入れた早苗の第一投目
「ぁ……。」
「………。」
ボールは見当違いの方向にポーンと飛んでいった。
これで残るボールは5個。
ゴールまでの距離は5マス。
いきなり後が無くなった。
「ど…どどどど、どうしましょう!???」
「いいから!!早苗!!頑張りなさい!!」
「でもでも、これで外したら最下位決定ですよ!??」
さっきの勢いはどこへやら、混乱しきった早苗はアリスにすがり付いていた。
アリスは早苗を必死になだめる事しかできなかった。
そんな時、謎の声が口を挟んだ。
【はいはいー!じゃぁ、主催者権限でそっちの魔法使いさんの方が投げてくださいー。】
「そそ、そそそ、そうですよぉ!!アリスさんお願いしますよ!!」
早苗は謎の声の意見を全面的に受け入れるようにアリスに迫った。
そして、アリスは困ったようにボールを1個手に取った。
「はぁ…私じゃだめなんだけどねぇ……。」
アリスはそう呟いてボールを真上に投げた。
真上に投げたはずだった。
しかし、ボールは方向を変えシンボルへと吸い込まれていった。
「へ?」
早苗は呆然とボールの軌道を追っていた。
アリスは冷めた目でボールの軌道を追うと、残った4個のボールも同様に真上に放り投げた。
結果は最初のボールと同じ、途中で軌道を変え全てシンボルへと吸い込まれていった。
「アリス!お前!!」
魔理沙がアリスに食って掛かろうとするが、アリスはそれを冷めた表情で受け流した。
「言っとくけど私は何もしてないわよ。私はただボールを投げただけ。」
「じゃあ、なんで?」
「簡単なことよ。私たちをココに連れてきた人物が…」
アリスが重大は発言をしようとしたとき、6人がいる空間が大きく揺れた。
「な?なんだ!?」
「じ、地震?」
揺れ自体はすぐに収まったが、今度は色々な雑音が空間全体に響き渡った。
【ちょ!?◇◇ちゃん??なにごと!??】
【ぁ、いえ…?って、侵入者です!!】
【ぇぇぇぇええええええええええ!???】
【さぁーなぁーえぇぇええええええええええええええええええええ!!】
【早苗ー、助けに来たよー。いたら返事してー。】
「あれ?神奈子さまと諏訪子さまの声?」
【美鈴!!どこで遊んでるの!?】
「さ、咲夜さん!?」
【あら?繋ぐとこ間違えたかしら?】
「ぁぁ、紫の声ね。」
【お前が早苗をさらった犯人か!?】
【ちょっと!待って!!その巨大な柱は何!??】
【○○さま!!離れてください!!】
【逃がすかぁぁぁああああああああああ!!】
【ぎゃぁぁあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ……】
謎の声の悲鳴とともに雑音がプツリと途切れた。
そんな中、アリスは額に手を当てため息をついていた。
しばらくすると、霊夢の前に紫がヒョコッと顔を出した。
「あら、霊夢。こっちにいたのね。心配したわよー」
「全然心配そうに聞こえないわね。」
「霊夢ったら冷たいのねぇ。折角助けに来たのに。」
紫と霊夢は軽口を叩き合っているが、その霊夢の背後では幽香が鬼の形相で紫を見つめていた。
それに気付いた霊夢が慌てる…訳も無くマイペースに説明をはじめた。
「幽香、最初に言っとくけど紫は犯人じゃないわよ。
今回の件とは全くの無関係。」
「はぁ!?この年増妖怪以外にこんなことができる奴がいるっての?」
幽香は霊夢の言うことを全く信じようとしなかった。
「魔界の創造神、神綺さま。名前くらいは覚えてるでしょ?」
いつの間にか険悪ムードの3人の元に残りの4人が集まってきており、
その中のアリスが幽香の問いに答えた。
「魔界……神綺…、あぁ、アンタの馬鹿親ね。」
「正確には親じゃなくて創造主だけどね。」
「そうそう今回のはその魔界神さんの仕業なのよ。全くはた迷惑な行為よねぇ。」
「アンタがいっても説得力がないわ…紫……。」
うんうんと、うなずく紫に霊夢がマイペースに突っ込みを入れた。
――――――
「美鈴、さっさと帰るわよ!」
「は、はい!!わかりました!!」
頭に無数のナイフを刺したまま、美鈴は咲夜とともに紅魔館へ帰っていった。
2人が去ったところで、この場にいるのは最初に連れてこられた早苗、幽香、魔理沙、霊夢、アリス、
彼女たちを助けに来た紫、神奈子、諏訪子、
そして、鉄の輪で御柱に貼り付けられている神綺とその横で申し訳なさそうに立っている夢子だ。
「ぅぅ…ごめんなさい。」
「申し訳ありません…私が神綺さまを止められなかったばかりに…。」
神綺が説明するには今回の事件を起こした顛末はこうだ。
昔、霊夢たちに魔界を侵略された復讐をしようと、ふと思いつき、
さらに、どうせならアリスに花を持たせようと今回のイカサマ双六を実行したとのこと。
「ホント迷惑な話しよねぇ。」
「だから、紫が言っても説得力無いって。」
「あら?私は霊夢ではなくアリスに言ってるのだけど?」
紫に話題を振られ、アリスは大きくため息をついた。
「はぁ…、今回の件は私からも謝るわ…。」
「そんな!アリスちゃんは悪くないのよ!!悪いのはぜーんぶ私なんだから!!」
「もう、そういうレベルの話じゃないんですよ、神綺さま…。」
「ゆ、夢子ちゃんまで!!」
アリスと夢子はため息をついた。
そんな中、納得のいっていない人物が3人ほど…
「まぁ、そちらさんの事情はわかりました。
しかし、話を聞いていれば納得のいかない点が…。」
そう声を上げたのは神奈子だ。
それに続くように諏訪子も口を開く。
「そうね、そっちの3人がさらわれた理由はわかったけど、
なんでうちの早苗がさらわれなきゃいけなかったかしら?」
その疑問はもっともだ。
霊夢、魔理沙、幽香は過去に魔界に殴りこんだ事実があるが、
早苗はそれ以前に幻想郷においては新参者なのだ。
神綺や夢子どころか、魔界の存在さえ知るはずが無い。
「ぁぁ、それは…」
――――――
魔法の森 アリス宅
神綺の作り出した空間から出た翌日、早苗はアリスの家に来ていた。
「それにしても今回は災難だったわね。早苗。」
「ぁぅー…ホントそうですよ…。まさか神社にいて巫女服を着ていたっていう理由だけで人違いにあうなんて…」
そうなのだ。神綺が早苗をさらった理由とはただの人違い。
どこをどう間違えば紅白巫女と青い風祝を間違えるのかわからないが、とにかく人違いで連れ去られたのだった。
「でも、それをいったら美鈴さんも災難ですよね。」
「ぁぁ、そういえば彼女もいたわね…。まぁ、彼女はタフだし大丈夫なんじゃないかしら。」
「そういうものなんですかね。」
「そういうものよ。
そんなことより、貴女の神社大丈夫?」
「え?何がですか?」
「いえ、k…神綺さまが改めて謝りに行くって言ってたから。」
「ぁぁ、そのことですか…。」
アリスの指摘に早苗はぐでーと机に突っ伏した。
「なんだか、うちの神様たちと神綺さんが意気投合しちゃって…」
「へ?」
「それで宴会に巻き込まれる前に逃げてきたんです。」
「意気投合?
………あははははははははっ」
「もうー、笑い事じゃないですよー。」
「ごめんなさい。でも、心配して損したわ。」
「おかげで私は家から逃げ出しましたけどね。」
「ふふっ、別に貴女さえ良ければココに住んでも良いのよ?」
「そういうわけにはいきませんよ。私は守矢神社の風祝、神奈子さまと諏訪子さまに仕えているんですから。」
「あら、残念。」
「残念がられても困ります。
ぁ、そういえば…」
「どうしたの?」
「昨日の双六の話なんですけど、確か神綺さんは『巨大人生双六』っていってましたよね?」
「確かそんなネーミングだったわね。」
「ふと思ったんですけど、あの双六、どこが『人生』だったんですかね?」
「…そういえば、どこが『人生』なのかしらね……。」
2人が考え込んでいると、玄関の開く音が聞こえた。
このあと、酔っ払った3人の神様と2人の娘が大騒ぎするのはまた別のお話。
途中から従者をちゃん付けで呼んだりしている辺りから濡れ衣のような気はしていたんですけどね。
ゆかりんの他にこんな事が出来る能力を持った人物…もしや…とは思いましたがw
神綺様の親バカっぷりに守矢の二柱様達は共感したんでしょう。
神樣方の宴会風景も見てみたいですね。きっと微笑ましい光景に違いないw
流石は三面ボスってとこですかね
しかし、かっこいいままで終わらない辺りも、流石は紅 美鈴w
「謎の声の主は紫ではない」という伏線でしょうけど、ラスト近くで触れられている通り、
幽香も過去に魔界に殴り込んでいますから。
旧作とWin版ではキャラが違うのだという解釈でしたら、フォローが欲しかったです。
魔理沙は自重するべきw
でも、彼女への恨みを晴らすよりも前進することを選ぶ美鈴のかっこよさに痺れました。
アリスと早苗は良いコンビですね。何というか、安心して見ていられます。
次回作もこのコンビでの登場を希望。