「無理です! できません!」
永遠亭の一室、暗い室内で二人は机を挟んで向かい合っていた。
激昂しているのが鈴仙。
対して、腕を組みながら押し黙っているのが永琳。
机の上には、1枚の企画書と、広告の原版が置かれていた。
『永遠亭秋の交流会~冷たい川で水泳レッスン、インストラクターのポロリもあるよ~』
鈴仙はそれを突きつけ、語気を荒くした。
「なんですかこれ! なんで私が水着きてるんですか! しかも紐外れてるし!」
「合成写真よ・・・・・・」
「そうじゃなくて!」
彼女の怒りももっともだと思う。
しかしこれは永遠亭の発展には必要不可欠なのだ。
永遠亭地位口上のために頭を悩ませていたときに受けた天啓。
きっかけはてゐからの進言だった。
永遠亭の認知度はベラボーに低い。
里の人間の永遠亭に対するイメージは、妖怪兎を連れたおっぱい薬師と、爺くさい趣味を持った女の人程度の認識しかないだろう。
このままでは、吸血幼女姉妹に拳法少女にメイドに病弱魔法使いに魔族とかいうどこかエロゲーと間違えているんじゃないかというぐらいタレント揃いの紅魔館どころか、新規参入の外国資本『2Pカラーズ』にも遅れをとってしまうだろう。いいやそれならまだいいのだ。シラタマローとかいうハラ@ペコ美少女に、半霊剣士DE幼女なんていうテリヤキマックバーガーみたいな発想の二千万パワーズや、金髪ロングヘアーのナイスバディに獣耳少女のダブルマシンガンを抱えたターミネーターもとい、キッチンでのスティーブンセガールな八雲家。短いスカートから覗くムチムチの太ももとそれを包むは黒いスパッツ射命丸文でございます、引き連れる部下は白髪犬耳ボクっ子(推定)剣士、さらには河童だなんていうベタなところも抑える伏兵も大量に持っている幻想郷の人材派遣会社、妖怪の山なんていうものもある。いやいや待てよ、元祖巫女さんに男口調の金髪魔女っ子、さらには私こそがクールの最高峰、ちょっと怪しげな雰囲気が魅力の人形遣いだって侮れない。どれもかれもが単機で米軍の1個中隊を撃破できるレベルのツワモノどもだ。
この女に厳しい幻想郷で生きていくならば、露骨なまでのお色気路線で攻めるしか策は残されていない。
だいたい芸能界だって、売れなくなったらヌード写真集を出すじゃない。
考えろ、お色気作戦でなおかつ、永遠亭になるべく損害が出ないようにする方法を。
そんなときだった。
てゐが、行き詰っていた研究室の扉を開け放った。
暗い部屋に、新たな風が吹き込んだ。
研究に、一筋の光が差した。 ───BGM〝地上の星〟
「鈴仙を脱がせてみたらどうだろう」
てゐの言葉に、アルティメットサディスティック蓬莱人は戸惑った。
「無理でしょ。さすがに優曇華が可哀想だわ」
永琳は思わず叫んだ。
「鈴仙が脱がずに誰が脱ぐんだ。私が脱いだら児ポで逮捕よ逮捕!!」
てゐの熱い思いに、永琳は心を打たれた。
アルティメットサディスティック蓬莱人としての血が騒いだ。
「やらせてください!」
それから、夜を徹してのイベント作りがはじまった。
もうこの際、ポロリがあればなんでもいいと、強引に予算をやりくりしてまわった。
しかし、本当に脱ぐという確証を客へ与えるだけのインパクトを作り出すことはできなかった。
永琳は、来る日も来る日もそのジレンマと戦った。
いっそ、自分が脱げば、どんなに楽だろうと思ったこともあった。
追い詰められていた。
そこへてゐが現れた。そしてこうつぶやいた。
「発想を変えるんだ。別にリアルなものに頼る必要なんてないんだ」
そうだ。
捏造だ。
捏造をすればいいんだ。
体つきが似ている写真を輝夜御用達のPCで弄くった。
以前、輝夜コラージュを大量に作ったときの技術が光った。
「これよ! これが私が求めていた集客の秘訣よ!」
ポロリもあるかも、と思わせる広告の完成であった。
永琳とてゐは、なぜか輝夜の部屋で朝まで飲み明かした。
永琳は充足感に包まれ、涙が止まらなかった。
「てゐ、この涙もお酒に混ぜていいかしら」
てゐは言った。
「ああ、いいさ。でも塩っ辛くならない程度にね」
てゐは自分のジョークに、肩を揺らして笑った。
輝夜は眠そうに目蓋をこすり、二人の奇行を眺めていた。
「どうでもいいけど、早く寝てよね・・・・・・」
永琳はまるで昨日のことの様に、熱き日々を思い出していた。 ───BGM〝ヘッドライト・テールライト〟
昨日のことだけど。
「優曇華、いえ鈴仙。これは永遠亭の明日を作る第一歩なのよ」
熱い涙を流しながら、切々と永琳は語った。
愛弟子ならきっと、師匠の気持ちを察してくれると信じていた。
「ねえししょう、自殺しましょう、全力で」
五七五で返された。
予想だにしていなかった返答に、防弾ガラスのハートは傷一つつこうとはしなかった。
大体全力で死ねとはどういうことか、なんで自殺に全力を尽くさなくてはいけないのだ。
これほど理不尽な台詞が吐ける奴を弟子にしたとは、この八意永琳の慧眼も曇ったか。
永琳の弱点、頭はよくても見る目はないのが露呈した瞬間であった。
その代表例が気紛れで魔性の女でちょっと爺くさい趣味の持ち主、蓬莱山輝夜だというのはこの際インド人を右に置いておこう。
そんな、ヒモを養うOL気質の永琳は、弟子の反乱にロハスな気持ちで接しようとした。
「大体なんで鈴仙のほうが人気あるのよ、胸は私のほうがあるのに」
まぁいいわ、また別の案を考えましょう。
「何言ってるんですか? 新参ホイホイと呼ばれたこの実力を見せてあげましょうか?」
心と口の逆球が、思わぬ満塁逆転ホームランを生んだ。
どんな状況でも自分の思うところに持っていけるからこそ天才なのだ。
「フフ、言ったわね優曇華。ならばインストラクターをして、どっちが多く客を引きつけたかで勝負よ」
「望むところです。年増の分際で勝てると思わないでくださいね」
「その言葉、忘れないことね。私の17歳の肌年齢で打ち倒してあげるから。
もちろん、負けたほうがセミヌード写真集を発売よ」
「望むところです」
勝っても負けてもどちらかが脱ぐ。
盗聴器を仕掛け、会話を聞いていたてゐは、おいしい状況にニタリと笑った。
急いで天狗との交渉に入らなくてはいけない。
『現役女子高生が脱ぐ! 親父向けの三種の神器』
『清楚な女医の淫らな生活、本当の私を見て』
いずれにせよ、莫大な利益が上がるのは間違いない。
涎が垂れるのを抑えながら、てゐは一人高笑いをした。
決戦は、1週間後に決まった。
◆
「鈴仙優曇華院! 鈴仙優曇華院イナバでございます! 今週末の水泳レッスンは是非私のもとへ!」
拡声器で叫びながら里を歩きまわる鈴仙。
普段は人間と積極的に関わろうとはせず、人間から不気味だと揶揄されてきたが、もっとわけのわからない状況になって里は混乱していた。
上白沢慧音が彼女へと、住民が怯えていると伝えにいくと、血走った瞳で睨まれて慧音まで怯えてしまった。
「ムチプリに死を! ハーイル美乳!」
鈴仙の後ろには、既婚の男衆が列を作って行進をしていた。
巨乳よりも美乳だろ、制服にウサミミは俺たちの夢というプラカードを掲げて行進する彼らに迷いはなかった。
妻に三行半を突きつけられ、子供からの視線から尊敬の念が消えうせようとも、彼らは三種の神器の魅力に逆らうことができなかった。
ある男は言った。
「太ももこそ至高だと」
またある男は言った。
「ロングヘアーにウサミミにブレザー・・・・・・。ロマンだと思わんかね?」
そしてまたある男は言った。
「天は彼女に三物を与えた。あとは胸さえもうちょっとあれば」
その後、男を見たものは誰もいなかった。
一方永琳は、鈴仙のように大々的に広告戦略を打つような真似はしなかった。
地道に広告を配って歩き、子供たちに混ざって一緒に遊ぶと言った草の根活動に従事している。
騒動を聞きつけた文が勝算はあるのかとインタビューをしても不敵に笑うばかり。
「時代はライトユーザーよ、いつまでもコアなユーザーに尻尾を振っていれば廃れるばかり」
この発言を文は1面で報道した。
圧倒的不利に置かれているはずがこの余裕。
月の頭脳とも呼ばれる天才にはまだ秘策が残っているというのだろうか。
本番でのサプライズに期待したいと新聞は締めくくられている。
霖之助はそう書かれた文々。新聞を読みながらコーヒーを啜った。
月の都万象展もそうだが、永遠亭はやはり得体が知れぬと思う。
一体何の意図があって、水泳のレクチャーをし、負けたインストラクターがセミヌード写真を出すのか。
もしかすると、彼女らは痴女の類ではないのか。
月の天才というのは真っ赤な嘘で、月の変態ではないのか。
けれど霖之助は思うのだ。
是非、見てみたいと。
どちらが勝っても男衆は漢泣きをしながらスタンディングオベーションを贈ることは間違いない。
どこが立ってるのかは想像にお任せするが、永遠亭の抱える美女二人ならば、どちらであっても、男たちのエクスカリバーは歓喜に打ち震えるだろう。
早く来い、決戦よ。
「ばーか、鼻のしたを伸ばすなよっと」
「うぐっ! ま、魔理沙いつのまに」
「せっかく魔理沙さんがきてやったっていうのに、新聞に夢中とはな、いい度胸してるぜ」
構ってもらえなかったという苛立ちを見せながら、魔理沙はずかずかと台所へと消えていく。
大方、自分用のコーヒーでも入れるんだろうと新聞を畳みながら思う。
しかし魔理沙は子供舌のため、砂糖をこれでもかというぐらいに入れて飲む。
そんなことじゃコーヒーの美味しさはわからない。
そう薀蓄を垂れ流したときに見せた微妙な表情と、聞き取れなかった呟き。
いまでも霖之助は、その意味を理解しかねていたし、気になってもいた。
「いいじゃんか、こーりんと同じ飲み物が飲みたかっただけだぜ」
魔理沙はコーヒーを淹れながら呟く。
もちろん、霖之助には届かないよう、小声で。
この二人の話は、また別のお話。
「咲夜ー、水泳したいしたいー」
「お嬢様・・・・・・。吸血鬼は流水を渡れないんじゃないんですか」
「うーうー! 水に入るぐらいだったらいいもん!」
「喉を鳴らしてもダメなものはダメです。大体昼間ですよ?」
「咲夜が日傘を差してくれればいいもん」
「だーめーです」
「咲夜、週末はこの水泳レクチャーを受けるわよ。淑女たるもの水泳の一つぐらいできなくては話にならないわ」
「カリスマモードになってもダメなものはダーメーでーす」
「ぎゃおー、たべちゃうぞー!」
「はいはいわかりましたから。モケーレ・ムベンベごっこなら美鈴としてきてください。私は仕事がたくさんあるので」
「うぐ、咲夜のばーか! 貧乳! 隠れ年増!」
「と、年増っ・・・・・・! あ、こら待ちなさいお嬢様! 咲夜が現実の厳しさを教えてあげますから!」
「あーん! 咲夜がデュクシ、オウフとか効果音つけながら殴ってくるー!」
夜のテラスで繰り広げられる漫才を見て、パチュリーはため息を吐いた。
「水泳ぐらいで盛り上がれるのなんてうちぐらいのもんよ・・・・・・。小悪魔も水着に載せてお茶を持ってくるし、お祭り好きっていうのも考えものね」
残念無念。
その場のノリと暇潰しに全力を掛ける幻想郷住人が、こんな美味しいイベントを見逃すはずがなかった。
「ねえ幽々子、どっちのほうを脱がしたい?」
「薬師のほうかしら」
白玉楼、縁側に腰掛けながらロクでもない話に華を咲かせる両名。
この世のものとは思えぬ美しさを誇る枯山水の庭園も、まさかそこで誰々を脱がせる脱がせないの話をされるとは思わないだろう。
しかも、表情は至って真面目だから余計に手が負えない。とにかく両名ともに、永琳に一杯食わせてやりたいと考えていたのだ。
まさかそのチャンスを自分からよこすだなんて、思っていた以上に薬師はパープリンだったらしい。
二人は真剣に、脱がしたあとに取らせるポージングを語り合った。
「幽々子さま、紫さま。梨が切れましたよ」
キシキシと廊下を鳴らし、妖夢が盆を持ってあらわれた。
皿に載せられた梨に、幽々子はヒョイと手を伸ばし、一切れをそのまま口に入れてしまった。
「モゴモゴ」
「食べてから喋りなさいよみっともない。まったく幽々子は、人が見ていないとだらしないんだから」
紫は呆れながらも、頬を膨らませてモシャモシャと食べている友人の頭を撫でた。
妖夢もまた呆れながらも、幸せそうに頬張っている主人には何も言えなかった。
きっと尻尾が生えていたら、嬉しそうにパタパタ振っているに違いない。
犬耳幽々子もありかもしれないと思った妖夢は、妄想を振り払うために頭を振った。
「ゆ、紫さまもどうですか?」
「いただくわ」
紫は幽々子のように一口で食べようとはせず、小気味良い音を立てて梨を齧った。
幽々子は「もうひとつー」といいながら梨をつまんでいる。
「まぁね、私は本人が幸せならね、何もいいませんよう」
「拗ねちゃダメよ、幽々子もこれはこれで考えてるかもしれないんだから。薬師を脱がす方法とか」
「結局ロクでもないじゃないですか!」
幻想郷でも貴重なツッコミ属性を持つ藍は、今回お留守番。
経験の浅い妖夢には、百戦錬磨の二名を相手するにはいささか厳しいものがあった。
白玉楼、八雲一家、参戦確定。
「これですこれ!」
早苗が何か熱弁を奮っているが、神奈子と諏訪子の両名は無視して出汁巻き卵をつまんでいた。
神奈子や諏訪子が料理を作れば台所限定大惨事世界大戦を引き起こすため、調理係はもっぱら早苗。
これだけ料理が上手ければ、お婿さんも選り取りみどりだよって笑いあってた日々が懐かしいね、諏訪子。
そうだね。妄想がエスカレートしていって、手放したくないって泣いた日もあったよね、神奈子。
テレパシーを交わしながら、シンクロした動きで白米を口に運ぶ二柱。シンクロナイズドご飯。
ずっと一緒に生活していれば、テレパシーの一つや二つできるようになる。作者はそう信じている。
「この交流会に水着で出れば、きっと信仰も集まります!」
大きくなったら八坂さまのお嫁さんになるーだなんて言ってたのが懐かしいね諏訪子。
神奈子、早苗の教育をどこで間違ったのかな? 私たちは。
「もちろん八坂さまたちも水着着用ですよ!」
八坂が脱げば信仰が集まるだなんて、風が吹けば桶屋が儲かるよりも現実的すぎて嫌過ぎる。
それに、神様に向かって脱げと真顔で提案する風祝いなんて私たちは嫌だ。
シンクロした二人は、無言で川魚の身をほぐし始めた。
「実はですね、水着は外から持ってきてるんですよ。きわどい奴」
守矢神社、参戦確定。
地下深く。
地霊殿にも水泳大会の噂は伝わっていた。
「さとりさま、なんでちょっと嬉しそうなんですか?」
「・・・・・・」
「あの? さとりさま?」
「こいしは?」
「その、いませんけど?」
「それじゃあ、ちょっと地上に行きましょう、地上」
やけにソワソワしたさとりに嫌な予感を覚えながらも、お燐はリヤカーを用意した。
仏恥義理号と名付けられたそれをお燐に引かせ、地獄を巡るのがさとりの楽しみの一つなのだが、今回はただのドライブではない。
さとり自らが、地上と交流を持ちたいと言っているのだ。
ペットごときが苦言を呈しても聞く耳を持ってはくれまい。
というよりも心を読んだうえで言っているのだから、是非もないだろう。
地霊殿、参戦確定。
天界。
見られたがり嬲られたり構ってちゃんキャラがすっかり定着してしまった天子は、若干塞ぎこみながら下界を眺めていた。
「・・・・・・楽しそうだなー」
桃を齧る。
お尻みたいなピンク色の実から、果汁が飛び散ってちょっぴり卑猥。
噂によると、帽子の桃を触ると直接触られるのと同じだとか。
「勝手に混ざっちゃおうかな・・・・・・。でも、何か言われたら・・・・・・」
そこは複雑な乙女心。
自らの肢体を晒したいという抗い難い欲求と、一人で参加する恥ずかしさの板ばさみ。
隙間妖怪辺りに「一人で参加とか? 友達いないの? 死ぬの?」なんて蔑んだ目線を向けられたら、正気を保つ自信がない。
どちらの意味かは言わないが。
「ああもう、どうすればいいのよ!」
「ここで永江衣玖の登場ですよ」
空気を読んだ。
天界組み、参戦確定。
博麗神社。
集めた落ち葉で芋を焼いている霊夢のところにも、当然新聞は届いているのだが。
「新聞紙ってよく燃えるわぁ」
興味なし。
◆
「ダメダメ、永遠亭の生活がかかってるんだから!」
妖怪の山。
壇上でてゐは声を張り上げた。相手にしているのは精強で名を馳せる烏天狗たち。それでも彼女は怯むことはなかった。
「正規ルート以外じゃ、写真集の発刊は認めないよ! さあいくら出す!?」
永琳、鈴仙、そのいずれかが脱いだ場合にヌード写真を撮り、編集する権利。
それをてゐは「勝手に」売りにだしていた。
間違いなく空前の大ヒットを記録するであろうそれに、当然烏天狗は群がった。主に男が。
「ふむ・・・・・・」
文は途方に暮れていた。
文々。新聞の人気はそう高くはない。というか勝手に送りつけているだけだったりするし。
元より買えるとは思ってはいなかったが、すでに、文の給料数か月分ではとても追いつかない額にまで跳ね上がっている。
そこまでして撮る権利が欲しいのか、はたまた白熱してタガが外れたか。
「困りましたねぇ、何かいい案は・・・・・・」
腕を組んで煙を出したところで思いつく案などたかが知れている。
既に買うことを諦めた大勢の烏天狗が取ろうとしている策――つまりは水着姿の盗撮である。
ヌード写真は確かに美味しい。しかし、多数の参加者が見込まれるこのイベントを撮り、それを売れば売り上げは上々だろう。
独占はできずとも、他を出し抜くアングルでハプニング写真を拾い上げることこそがジャーナリストの使命。
しかし、
「簡単に撮らせてもらえるとはどうにも思えないですね・・・・・・」
切れ者を多く抱えている永遠亭である。
文は多くの烏天狗のように、慢心してはいなかった。
元より負けるつもりはなかったが油断もできるはずもない。
あの妖怪兎のやり手ぶりは、閉鎖社会である天狗にも聞こえたものなのだ。
詳しくは知らないが、はしをわたるな! という看板に真ん中を通るほど豪胆で、鼻高天狗を騙して隠れ蓑を奪うほどの智将だという。
事実、このオークション会場には古参の天狗の姿は見えず、多くは若い男の天狗だった。
「やれやれ、きな臭くなってきましたよ」
妖怪兎の裏を取ったうえで、水着写真を盗撮する。
これほどブン屋魂を燃やす仕事がかつてあっただろうか? いいやない。
文はこみ上げてくる笑みが抑えきれず、隣の天狗に気味悪がられた。
決戦の日は近い。
◆
作者のやる気の都合上、退屈なシーンが続くと通称火の七日間はカット。
日を追うごとに鈴仙の露出が激しくなっていき、付き従う男たちの顔に痣が増えていったこと以外大きな事件もない。
相変わらず永琳も、およそ勝負とは関係ないであろうと思われる草の根運動に従事していて策が一向に見えない。
世はまさに、大停滞時代!
輝夜も里には姿を見せておらず、妹紅と慧音の両名は、永遠亭の面々の奇行を生暖かく見守っているぐらいの暇なものだった。
「妹紅。たしか八意は」
「天才、らしいけど?」
「あの妖怪兎は?」
「暗いけど真面目だった」
「どう考えても変態じゃないか」
「どう考えても変態だな」
「八意はともかく、兎のほうは露出がだんだん酷くなってきてる。下乳が見えてるぞ、はしたない」
「スカートもだんだん短くなってる」
残念ながら幻想郷には不思議力学が適用されているため、万が一にもスカートがめくれて下着が見えるなんていうことはない。
たとえ膝上30センチという狂気の優曇華院モードであろうと、大風が吹いてもギリギリを死守してしまう。
そのせいで、わりとマジに履いていないように見える。
わざわざ早苗へと陳情しにきた勇者もいたのだが、奇跡の力も下着を守るために働く謎の力の前には無残に敗れさった。
「もういい! だったらあんたのパンツを見せてくれ!」
男の熱意に危うく押し切られそうになった早苗は、危ういところで二柱に助けられた。
「早苗、場の空気に流されたら絶対後悔するんだからね!」
神奈子の言葉に、諏訪子がほんのり頬を染めたのは見なかったことにしよう。
早苗はそう、心に誓った。
そんな些細なハプニングと不安を抱えながらも、ついに当日がやってくる。
◆
幻想郷中の男たちが今日、仕事を休んだ。
彼らの言い訳は多種多様で、「今日は安息日だから働けない」だとか、「急にボールがきたので」だとか、色々と危ない理由が飛び出した。
ここにそれを列記しても良いのだが、男の言い訳なんて見て楽しい人はいないと思うので割愛させてもらおう。
少なくとも、俺は水着が書きたい。
はじめに姿をあらわしたのは、鈴仙だった。
雪のように繊細。それでいてモチモチと柔らかそうな柔肌を全く隠すそぶりも見せず、むしろ見せ付けるかのように姿を表した鈴仙は、男たちにニッコリと営業スマイルをしてみせた。
鈴仙の白いビキニは、その白い肌を過剰なまでに引き立てている。無駄な肉の一切ついていない太股が、まだのぼりきっていない太陽を浴びて、健康的に輝いている。
まるで、積もった雪が光を乱反射するかのように。
男たちは、余りのまぶしさに直視を避けた。
「高度に洗練されたエロスは、魔法と変わらない」
初老の男が、ポツリと呟いた。
続いて現われた、対抗の八意永琳。
健康的なエロさを追求した鈴仙とは異なり、永琳は機能性を選択した。
腰にバレオの付いたワンピース型の水着。柄は当然の如く、普段着からの流用だった。
しかし、男性への媚びを排除してもなお、溢れ出す大人の魅力。鈴仙の健康的なエロスとは対極に、媚びないエロスを見事に表現していた。
「おおおっぱいよ、嫁が私を浮気者だという」
平手打ちの痕を作った、若い男の言葉である。
彼女らは目配せを交わすと、高らかに宣言した。
「それでは、振り分けをするので前に並んでください」
ここで、悲劇は起こった。
なんと、鈴仙に並ぶものが、圧倒的に少なかったのだ。
「な、なぜーっ!?」
戦力に差はない。むしろ有利だったはずなのに、並ぶ人数は永琳側の約半分。うろたえている鈴仙をよそに、永琳は涼しい顔で人数を数えていた。
「鈍いね、うどんげ」
愕然としている鈴仙へと、てゐが腹黒い笑顔を浮かべて近づいた。水着はフリルがふんだんについており、いかにも幼児向けである。
「ルール勘違いしてない? 人数を集めれなかったほうが脱ぐんだよ?」
「だから私は宣伝を・・・・・・。あっ!!」
「そう、人気が高いほうが脱ぐことになるの。この戦いは」
浮動票である男たちは、積極的に魅力をアピールした鈴仙を脱がすために動いた。
だからこそ永琳はアピールをせずに、女の武器を使わずに信を問える子供へのアピールに終始したのだ。
「ば、ばかな・・・・・・」
その場に膝を折り、崩れ落ちる鈴仙。これでは、始まる前から消化試合ではないか。
「戦略面での失敗は戦術で取り返すことはできないのよ、まだまだね、うどんげ」
崩れ落ちた鈴仙へと、永琳が淡々と語りかけた。そしてなにやら耳打ちをしてそのまま去っていく。
「んじゃ、勝負はついちゃったみたいだし、私はいくね! バイバーイ」
上機嫌に鼻歌を歌い、スキップをしているてゐを、鈴仙は不敵な笑みで見送った。
「かかったな、アホめ!」
◆
天狗たちは、そのプライドを痛く傷つけられた。
女性の水着を盗撮するという大義名分に導かれた勇者たちは、永琳の張った結界の前に脆くも敗れ去った。
正当な手段を踏めばカメラの持ち込みは禁止されているために眼福眼福と喜ぶのが精一杯。
烏天狗たちはプライドを捨てて水着を見に行くか、そもそも水着大会なんてなかったと泣き寝入りするかの二択を迫られた。
ただ一名の烏天狗を除いて。
「へへへ、幻想郷最強の結界破り。博麗霊夢を使えばこの程度の結界」
「自分じゃ破れないくせに偉そうなこと言って・・・・・・。まぁたいした手間じゃないけどね」
そういうと霊夢は、川と常世を隔離する結界に手を触れた。
自らを最強と信じて疑わない天狗たちの挑戦を軽々退けた結界は、霊夢の前にあっさりと篭絡してしまった。
「不思議よね、結界が破れちゃうって」
「まぁそれのおかげで、私は大儲けできるわけです。裏は取れてるんですよ。この水着大会は永遠亭の人気向上が目的なんかじゃありません。水着写真を独占し、大金を稼ぎ出すことを目的にした自作自演なんです!」
「へぇ。な、なんだってー!!」
「興味あるんですかないんですか、どっちですか」
「ない、帰る。食料は今度置いといて」
「ジャーナリストとしてこれは寂しいものがありますが・・・・・・。まぁ裏づけを取るためにも写真を撮りまくりますよ!」
んで売ります。
烏なので光り物、とくにヤマブキ色のお菓子が大好きだと公言している文は、ジャーナリスト魂を金に変える錬金術に成功しているようだった。
そして、
「結界という短いトンネルを抜けると雪国であった。朝のはずなのに、暗かった。射命丸文の足は止まった」
結界を破られることを予測していた永琳は、抜けた先に、偽の月ならぬ偽雪国を用意していた。
「えーと、ここじゃあ名前が一文字じゃないとダメとかそういうルールってありますかね。はは、私は文なので大丈夫そうですね」
あまりにもスケールのでかい無駄な行動に、文は永遠亭の底力を感じた。
つーか、寒い。
「くちゅん」
振り向くと、通ってきた結界の穴は既に消えている。
大方、イベントが終わるまで閉じ込めておくつもりなのだろう。
「永遠亭の卑劣な罠にかかった美天狗は、生きるための戦いを再開する・・・・・・、と」
別にお気に入りの芸者がいるわけでもなく、当然両親が豚になったり温泉宿で働くこともない。
というわけで、この場面も割愛。
ここからは本編と関係なく、ただ水着の描写が続きます。
紅魔館からはレミリア・スカーレット、紅美鈴、パチュリー・ノーレッジが参加。
十六夜咲夜は肌を見せるが嫌だというもっともな理由をつけて回避。
レミリアは胸に大きく「れみりゃ」と書いた、いわゆるスクール水着(旧式)を着用。
これはパチュリーが蔵書から得た知識であり、レミリアのような体型の少女に似合う最良のものだと判断するに至った。
紅美鈴は色気の欠片もないワンピース水着。胸の締め付けが激しく、表情は若干苦しそうだった。
美鈴ごときが視線を集めるなという紅魔館の総意がその水着を選ぶ原動力となったのだが。
「おいおい、胸が潰れてるぞ・・・・・・」
たわわな南国フルーツが形を崩す、一見台無しになてしまう危うさが男たちの妄想を掻きたてる。
水着になりたいと願う男たちが、自らの出自を呪ったのは言うまでもない。
そして、紅魔館が誇る着痩せの女王。パチュリー・ノーレッジ。
運動不足の彼女は、筋肉が全くついていないマシュマロのような肌であり、贅肉という無駄なパーツを削ぎ落とした一つの究極を体現していた。
残念ながら水着はワンピースタイプ。しかし白という色の選択と、胸元に飾られたピンクのリボンが彼女の攻撃力を加速させた。
さすがは七耀の魔法使いである。まさに彼女の肢体は、錬金術の至宝、賢者の石の如き気高さを誇る。これを四文字で纏めると、エロい。
「なんでこっちばっかり見てるのよ・・・・・・」
視線が不愉快だと言いたげに、パチュリーは表情を曇らせた。
その憂いを帯びた表情が、病弱な美少女をヒロインへと引き上げる。
それは委員長に眼鏡、金髪つり目ツインテールにツンデレという世界の理。
こうしてパチュリーは、川辺に舞い降りたマーメイドとなった。
「どこも物凄いことになって・・・・・・」
藍はため息をつくと、胸を張って並んでいる紫と幽々子、そしてお付きの妖夢へと目をやった。
尻尾や耳を隠すのが手間だ、水に触れさせるのは橙への虐待だと抵抗することで水着を着ることは回避できた。
しかし、その代償は大きかった。まだ歳若い妖夢は、主人に逆らうことができずに着せ替え人形にさせられた。まさにスケープゴート。
「女の子らしくて可愛いわぁ」
「普段からそういう服を選べばいいのに」
ポップな水玉模様の散りばめられたフリル付きの水着。
羞恥に顔を伏せ、黙りこくる妖夢の周りで、二人はキャッキャウフフ子供のように喜んでいる。
藍はそっと目元をハンカチで拭ってから、傍らにいた橙を抱きしめた。
「く、苦しいです。どうしたんですか藍さま」
「橙、お前の水着姿は私だけのものだ。ささ、更衣室に行こうか」
カメラもあるんだよ――
橙は仕えてはじめて、母であり主人でもある藍に恐怖を感じた。
「へぇーこりゃ・・・・・・。レベルが高いこって」
「そうだねー、帰ろうか神奈子」
「何を言っているんですか二人とも! まだまだこれからですよ」
八坂神奈子と洩矢諏訪子の両名は、他に目線がいっているのをいいことに、川辺へと座り込んでいた。
神奈子の水着はホルター。たわわに実ったミラクルフルーツは夏の西瓜のように吊り下げられ、背中が大きく開かれている。
大人の艶やかさを演出する濃い紅色が、アダルティな魅力を引き立てているのだが・・・・・・。
「だっるぅー」
本人のやる気が皆無なので、場末のバーのママ程度だ。
「だねー。というかちょっと季節外れで寒いし」
タオルを被り、あくびをしている諏訪子。
お世辞にも豊かとはいえない彼女の肢体を包むのは、オリーブ色の地味な水着。
落ち着いた色合いが、幼い顔立ちに似合わぬ諏訪子の雰囲気にマッチするはずだったが。
「今日のご飯はなーにー?」
やはりやる気のない諏訪子は、街のプールに遊びに来ている、白人の少女程度の注目度だった。
「もう二人とも! シャッキリしてくださいよ!」
博麗の巫女は今回のイベントには参加していない。だからこそ彼女へ差をつけるチャンスのはずだった。
しかし、頼りにしていた神様はあっち向いてホイに興じている。
このままでは、せっかく小遣いを貯めて買ったビキニが目立たない。
外の世界では恥ずかしくて着られなかった代物だったが、幻想郷では常識に捕われてはいけない。
ちょっとぐらい弾けた格好をしても許されてしかるべきなのだ。
妖怪や神様はいつまで経っても若いままだろう。だが自分の一番輝いている瞬間は、刻一刻と過ぎていくのだ。
やれ信仰だ。神社のためだなんていうのは全て、言い訳。
「私が目立たないじゃないですか!!」
早苗は目立ちたかった。
二番煎じで終わらされてしまうかもしれない自分ノ立ち位置に常に恐怖していた。
腰のリボンは固く結んでいたが、胸は解けることすら覚悟していた。
それほどまでに、早苗は燃えていたのだ。
「・・・・・・」
唇を噛み締め、早苗はキッと前を向いた。
「いいです、一人で行きますから」
「おー、行っといで行っといで」
「いっぱい悩殺してくるんだよー」
神奈子と諏訪子は、死を覚悟した兵士のように思いつめた早苗を見送った。
きっと、帰ってきたときには一回り大きくなっていると信じて。
「これでやっと、早苗も親離れできるさ」
「そうだね・・・・・・」
愛娘の頼もしい姿を見て、思わず目頭の熱くなったニ柱であった。
「うおおおおお!!」
ひときわ大きく、歓声の巻き起こる人の輪があった。
その輪の中心にいるのは、古明地さとり。
人の心を読む妖怪の少女である。
伏目がちでどこか影のある少女はなぜか、全裸に限りなく近い、マイクロビキニを着用していた。
そして、男たちの欲望に応えて、様々なポージングを取るのだ。
猫耳の少女、お燐は今にも泣き出しそうな顔をしながら、さとりと絡みを見せたりする。
「さとりさま、いつまでこんなことを・・・・・・」
ネコとタチのように悩ましげに絡み合いながら、お燐はさとりの耳元で囁いた。
さとりは少し困ったような表情を見せて、お燐へと囁き返す。
「欲望が全部、私たちに向けられているのよ? 心の奥から燃え滾ってくるみたいで・・・・・・。堪らないわ」
そういって、頬を紅潮させるさとり。
心を読む能力を悪用して、男たちの淫猥な欲望を楽しむ。
そんな姉に嫌気が差して、妹は心を閉ざしたとか閉ざさなかったとか。
出不精の主人が出かけると思ったらこれだよ! お燐は心の中で舌打ちをして、また違うポージングを取った。
でもまぁ、普段笑わない主人が楽しんでいるのだから、付き合ってあげるのも悪くはないかな。
「もっと激しく絡んで!」
「あーい」
だんだんと毒されていく、お燐であった。
「どうしよう、みんな凄い」
天子は自らの揺れない震源地を見てため息を吐いた。
周りは育ちすぎたメロンや西瓜みたいな連中や、どこか狙いすぎたようなロリ幼女ども。
ペタンコすぎてビキニは着れない自分には、時折チラ見されるぐらい。
一体何の空気を読んだのか、一緒に着いてきた竜宮の使いはゴージャスにラメ入りの黒ビキニなんかを着てきた。
そして、よく回る口先と、どこか懐かしいポージングで男たちを悩殺。どう考えても、主役は自分ではなかった。
「女は胸だけじゃないですよ。でも胸は女の魅力の一つなのです」
ああ憎たらしい。そして頷くな男ども。
こっちを見て一瞬哀れみの目線を向けるんじゃない。
ここで欲望を緋想の剣で集めたらそれはそれで面白いんじゃないかと思ったけれど、なんだか虚しくなってきたのでそれもやめた。
「放置プレイでもいいじゃない」
◆
インストラクターのポロリがなかった以外は、男たちにも不満もなく、水泳レッスンは閉会式まで来ていた。
序盤の劣勢を覆すことはできず、結果は八意永琳の圧勝。
各々楽しんだ幻想郷の少女たちも満足し、男たちも口々に眼福だと言い合っていた。
「それでは、お疲れ様でした」
盛大な拍手を送り、家路につく男たち。彼らを待ち受けているものは地獄かもしれないが、それもきっと乗り切れるはずだ。
それだけの勇気を、彼らはこの川辺で受け取ったはずだから――FIN
「っとと、全然まだ終わってないってば。さあさあ鈴仙! 脱いでもらおうかしら!」
腕を組んで、てゐが鈴仙の前へと立ち塞がった。
しかし、鈴仙と永琳はわだかまりなど全くなかったかのように、打ち合わせをしていた。
「結構撮れましたね、これだけの枚数があれば全然食べていけますね」
「ええ、天狗を締め出した甲斐があったわ」
「え、あ?」
ただ一人、てゐだけが状況を掴めてはいなかった。
敗者の撮影権の代金は、既に受け取っている。
まさかまさか、この二人が結託して「なかったこと」にされていない限り、勝利は揺るがないはずだった。
「てゐを泳がせれば、確実に天狗と内通する。師匠の言ったとおりでしたね」
「ええ、わざわざ永遠亭の評判を落とすようなマネをするわけがないでしょうに」
「くっ、あ・・・・・・!」
「どうしたのてゐ、そんなに顔を青くして。具合でも悪いの?」
「ええ困ったわね、うどんげ。まさか、身内を売ろうとしていただなんてことはないわよね?」
二人の目は、笑ってはいなかった。
「騙したなああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「「騙されるほうが、悪い!」」
事の顛末はこうだった。鈴仙と永琳の口約束は公式のものではなく、てゐの早とちりから行われた天狗側へのリークとされた。
元より天狗の新聞に信憑性を求めてはいない者たちは、単純に水着が見れるとホイホイやってきた。
そう、写真集の真偽を気にしていたのは、天狗とてゐだけだったのだ。
永遠亭の真の目的は、参加者の男性のリストアップを行い、彼らの弱みを握ること。
幻想郷の少女たちの写真をマニアへと横流しをし、利益を得る――そして。
「てゐはまだ見つかってないの?」
「ええ、因幡たちに山狩りをさせているんですが、一体どこへ消えたのやら」
てゐが溜め込んでいるへそくりの回収。
汚い商売に手を染めていると評判だったてゐの隠し資金はT資金と呼ばれ、総額は五百億とも千億とも言われていた。
てゐの部屋からは、続々と帳簿などが押収されていったが、肝心の金は、いまだに見つかっていない。
「まぁいずれ、あの娘がおなかを空かせて帰ってきたら聞くことにしましょうか」
「そんなんでいいんですか?」
「いいのよ。あの子だって、永遠亭の大事な家族なんだから」
「永琳ー、おなかすいたー」
「はいはい、今から何か用意するので待っていてくださいね、姫」
幻想郷は、今日も平和だった。
◆
妖怪の山のほど近く、人気もなく寂しい森に、二人は立っていた。
目印は一際高い杉の木。
烏天狗と妖怪兎。幾度となく、彼女らはここで密通を重ねた。
「これ、お願い」
妖怪兎が、雑に書きなぐられた手紙を差し出した。
「読んでも、いいですか?」
何も言わずに、頷く。
『うどんげへ
この手紙をもって私の詐欺師としての最後の仕事とする。
まず、永遠亭の不人気を解明するために、漫画ぼうげっしょーをどうにかしてほしい。
以下に、人気向上についての愚見を述べる。
人気向上を考える際、第一選択はあくまで脱ぐべきであるという考えは今も変わらない。
しかしながら、現実には今回の場合がそうであるように、
紅魔館や八雲一家などの他勢力が参戦するということがしばしば見受けられる。
その場合には、川に流されて衣玖超展開が必要となるが、
残念ながら未だ満足のいく成果には至っていない。
これからの永遠亭の飛躍は、うどんげが脱ぐことにかかっている。
私は、君がその一翼を担える数少ないキャラクターであると信じている。
能力を持った者には、それを正しく行使する責務がある。
君には、永遠亭の発展に挑んでもらいたい。
遠くない未来に、永遠亭が人気上位を独占することを信じている。
ひいては、私の死を無駄にはせず、脱ぐときのポージングを考えて欲しい。
屍は生ける師なり。
なお、自ら永遠亭人気向上の第一線にいたものがそれを見届けることができず、八意永琳の追跡で死すことを心より恥じる。 』
「これを、永遠亭へ届ければいいんですね?」
烏天狗が、疲れた顔をした、妖怪兎へと言った。
妖怪兎はコクリと頷き、身を翻して走り去っていった。
もう生きて、彼女と会うことはないだろう。どこか、そんな確信めいたものがあった。
烏天狗の少女――射命丸文は、胸の奥に小さな風穴が開いたのを感じた。
今夜は、兎でも煮て食べよう。そう決め、文は永遠亭の方向――てゐの去っていった方向と真逆の方向へと飛び去った。
風が、静かに凪いでいた。
無理せず今度はシリアスでお願いします。
まあ、消すのはみっともないかもね。どういう理由にせよ。
その心意気やよし。
ていうか、さとりのキャラがひどいw
笑えるならキャラをある程度崩してもいいかなって思うんですがねー。
気軽に読めるほのエロ話も必要です。少なくとも私にとっては。
面白いんだけどね?
里の男たちはいつも生殺し状態なんだろうなぁ・・・。
最後ちょっと盛り上がりに欠けたけど面白かったです
でも欲望に正直で良い微えち作品でした。
ラストの鈴仙と永琳はイイ感じ。
そして衣玖さんとか美鈴とかパッチュさんとかさとりんとかお燐ちゃんとかGJ。
あとはかにゃこたまが本気を出せば負けは無い筈だ。
そのあとからキャラ貶め過ぎだと思う。
売れないだの、ヌード写真集だの、気分悪いよ。
永遠亭以外は無くても良かったかも知れない
でもグダグダなりに楽しめました
始まりから終わりまでニヨニヨしっぱなしに楽しめましたwww
まぁ上の方でなにか様々なご意見も出ているようですが、あんまり気にし過ぎちゃあダメですぜ旦那。
しかし、敢えて不満を申さば、たった一つ。
何故だ……何故アリスを出さなかった!?w
なんだろう、とりあえず笑えそうなネタをごっちゃ煮にしてみた結果、
すんごいまずいものになった感じです
あと、「作者の都合で~」とかそういったのも蛇足に感じました
ところどころ光るネタがあって、惜しいと感じたのも事実ですが
マイナス面が多いのでこの点数で。
いつもあなたの作品は楽しく読ませてもらってるので次回の作品に期待させていただきます
さとりの今後について致命的な何かが起こった気がするが気にしない。
霖之助と魔理沙に期待
特にさとり
さとりんが赤面するくらいの妄想を読ませてあげたい
> 是非、見てみたいと。
この一言で爆笑させて頂きました。
あんた漢だよ!!>霖之助
>合成写真よ・・・・・・
とかコラージュとか心と口の逆球とか17歳の肌年齢とか……永琳がいろいろダメだw
誰か批判的な事書くと、つられて批判的になる馬鹿ばかり
そして、幽香をなぜ出さなかったと小一時間(ry
地上の星ナレーションの声で脳内再生させたら吹いた
「鈴仙を脱がせればいいじゃないか」てゐは言った……
ぶはっ!!!!
んでもって、さとりwww