このSSの設定は、一部に今作品集にある前作「美鈴の吸血鬼異変」の設定があります。
・美鈴は過去、紫の式だった。
・ぱちぇめー
以上の2点です。前作をお読みいただく必要はありません。
「しつっこいなぁ!」
「待ちゃあがれ!」
猿みたいな妖怪が3匹あたいをしつこく追いかけてくる。
妖精をいじめてた奴を、弾幕ごっこで負かしたのが気に入らないみたいだ。
次の日に仲間を連れて仕返しにきた。
「妖精ごときになめられてたまるかよ!」
あたい一人に勝てないからって弾幕ごっこ無視で仕返ししようなんて。
嫌な奴ら。
でも三対一じゃ敵いっこない。
昨日のヤツは三匹の中では一番弱いみたいだし。
必死に逃げながら周りに尖らせた氷柱を放つ。
「ぎゃあっ!」
「何やってんだ!距離を取れ!」
困った。
離れられると当たんない。
しばらく飛んでると怒鳴り声が消えた。
あれ?あいつら何故か飛ぶのを止めてる。
地面に降りて話し合ってるみたいだ。
何か困ってるみたい。
すると少し低いけどよく通る女の人の声がした。
「あら。弱い者いじめ?」
失礼な。
あたいは弱くない。
弱くないから妖怪が仲間連れてきたんだ。
声のした方を睨み付ける。
そしてあたいも止まった。
この人知ってる。
花が沢山咲いた時に会った凄く怖い人だ。
「弱い者いじめは私も好きよ」
え。
あたいこの人からやられるの?
そう思って慌てて頭の上に手を置く。
でも女の人はあたいを無視して妖怪たちの所へ歩いて行く。
全員で改めてあたいを追いかけるつもりなんだろうか。
早く逃げなきゃ。
背中を向けた途端悲鳴が聞こえた。
振り返ると女の人が妖怪たちを殴りつけていた。
殴られた妖怪は凄い勢いでぐるぐる回りながら高い所まで飛ばされた。
「あんたの縄張りに入ったのは謝る!その妖精を引き渡してくれれ…」
喋ってる途中で女の人が上げた腕を勢いよくもう一匹に振り下ろした。
上から叩きつけられて頭から地面に沈み込む。
「ひぃっ!」
昨日皆をいじめてた奴が慌てて逃げ出す。
逃がすつもりだろうか。
女の人はしばらくそれを眺めていた。
そして持ってる傘をゆっくり構えた。
傘の先から凄く太い光が飛び出す。
凄く眩しい。
後ろにいるあたいにも熱くて強い風が当たる。
目を開けたら黒くなった妖怪が落ちていくのが見えた。
女の人の周りで花びらが綺麗に舞う。
傘を流れるみたいな動きで仕舞う。
凄い。
強い。
カッコイイ!
怖い人かと思ってたけど良い人だ。
女の人がこっちに戻ってくる。
あたいを助けてくれたんだ。
お礼言わなきゃ。
「ありがとう!あたい、あいつらから」
「邪魔よ。妖精」
あれ。
何か怒ってる。
あたいを助けてくれたはずなのに。
「前に会ったでしょ?あたいはその時の」
「邪魔だと言ってるの」
やっぱり怒ってる。
「でも助けてくれた」
「私の縄張りに入ったから報いを受けさせただけ」
「じゃあ、あたいは?」
「妖精なんてどうでも良い。怪我しない内に帰りなさい」
そのまま歩き去る。
何回話しかけても返事をしてくれない。
そうか。
この人もあたいが妖精だから馬鹿にしてるんだ。
助かってホッとしてたのに、すぐに悔しくなった。
妖精だからって夜雀もあたいを馬鹿にしてた。
あたいと同じくらいの強さなのに。
「バカ!」
叫んでそのまま逃げ出すように飛び去る。
悔しくて涙が出てきた。
あんな凄く強い人から無視された。
でも見返したい。
馬鹿にされないように強くなりたい。
その日は帰ってからも泣いた。
次の日近くにある赤い家に向かった。
ここの門番さんはあたいの事を馬鹿にせず話を聞いてくれる。
「美鈴お姉ちゃん!あたい強くなりたい!」
「どうしたの。チルノちゃん」
「強くなりたいの!何か教えて!」
「何かあったのね。話して」
お姉ちゃんが座ってあたいと目の位置を合わせる。
あたいの話をキチンと聞いてくれるからお姉ちゃんは好きだ。
あたいはお姉ちゃんに昨日の事を話す。
あんな凄く強くてカッコイイ人から無視されたことも。
「その女の人って風見幽香じゃない!」
お姉ちゃんが驚く。
幽香って名前なんだ。
覚えた。
やっぱり有名な妖怪なのかな。
「自称だけど最強の妖怪だよ。単純な火力では妹様に劣るけど、身体能力は妖怪の中でも特に化け物じみてる」
「最強なんだ。カッコイイ」
やっぱり凄い妖怪なんだ。
あんな強いパンチと光線出せるんだもん。
あたいが憧れる「最強」って言葉がよく似合う。
「あとね、チルノちゃん。その人は妖精だからって馬鹿にしてたんじゃ無いよ。
幽香は強い人にしか興味無いの。強い妖怪とか変わった能力を持った人間とか。でも念の為近づかないほうが良いよ。一回休みになるとか嫌でしょ?強くなるとか忘れよ?ね?」
そうなんだ。
あたいが妖精なのは問題じゃないんだ。
強ければ人間でも良いんだ。
嬉しくなった。
強くなればあたいを見てくれる。
「強くなりたい!」
「え?」
「強くなれば幽香は興味持ってくれるんでしょ?やっぱり強くなりたい!」
お姉ちゃんが困った顔をしている。
どうすればあたいを強く出来るか考えてるのかな。
何か呟いてる。
「うーん。やっぱ色々教えたほうが良いのかな。護身術みたいな感じで逃げる隙を作る技を教えたほうが、今後便利だろうし。幽香の件は忘れさせよう」
「教えて教えて」
お姉ちゃんが顔を上げ立ち上がる。
「よし。じゃあこんな技はどうかな」
手を合わせて目を閉じて集中しだした。
周りが一気に涼しくなる。
お姉ちゃんが目を開ける。
「寒『気』を操ってみたの。辺りが凍り付くのをイメージして。私はこれが限界だけど、チルノちゃんは氷精だしもっと強力に出来ると思うけど」
レティみたいな感じでやれば良いのかな。
これでどう強くなるのか分かんないけど。
凍り付くイメージを考えながら能力を使う。
パキパキ氷の音が聞こえる。
「チルノちゃん!ストップ!ストップ!」
お姉ちゃんの慌てた声がする。
「…凄いね。本当に一気に凍り付かせるなんて。媒体も使わず精霊に直接干渉出来るのね」
何が凄いんだろう。
レティはあたいと少し能力が違うからもっと凄いけど。
本気を出せば幻想郷を凍り付かせる事だって出来るはずだ。
「美鈴お姉ちゃん。これで強くなれるの?」
「チルノちゃんは氷精だから実感が無いのね。生物、人間も妖怪も凄く寒いのは苦手なの。筋肉が収縮して動きが鈍くなるからね。だからこの技を練習すれば相手の隙を見つけ出せるよ。その隙に逃げれば大丈夫」
そうなんだ。
あたいは熱いのが苦手だけど。
でも逃げるなんてカッコ悪い。
昨日のあたいは凄くカッコ悪かったと思う。
あれ?
お姉ちゃんは普通に動いてる。
「お姉ちゃんは平気みたいだけど」
妖怪も苦手とか言ってるけど全然寒がってる様子も無い。
「私は弱点が無いから。熱いのも冷たいのも効かないの」
幽香にも効かなかったらどうしよう。
強いって思ってもらえない。
お姉ちゃんが言葉を続ける。
「私は妖怪になった経緯が特殊だから弱点が無いんだけどね」
じゃあ幽香には効くのかな。
動きが鈍くなればあたいの弾幕も当たるはず。
「でも幽香に近づいたりしちゃ駄目だよ」
「うん。分かった」
この技だけで興味持ってもらえるとは思えないし。
「ありがとう!お姉ちゃん!すぐに練習するね」
「危ない事はしちゃ駄目だよ」
「分かった」
すぐにこの日から練習を始めた。
毎日何回も何回も練習した。
ある日、黒白が本を奪ってお姉ちゃんが追っかけまわしてるのを見て少しやり方を変えた。
凍り付くイメージから「奪い去る」イメージに変えたのだ。
「二度と暖かさが戻らない」ようにイメージすると前よりも効果が上がった。
そんなある日、神社の近くを通りかかったら幽香が歩いてるのが見えた。
神社からの帰り道らしい。
まだあたいは幽香よりずっと弱いから会うわけにはいかない。
でも何で神社に用があったんだろう。
不思議に思って神社に入った。
「今度は氷精か。今日はお客さん多いわね」
紅白が居た。
皆は好きみたいだけど、あたいはコイツ嫌いだ。
何かある度にあたいを負かしていく。
でも幽香の事を聞かなきゃ。
「さっき幽香が居たでしょ?何で?」
「さぁ?でもあいつよく来るわよ。大した用事も無いのに。てか何であんた幽香に興味あんの?」
やっぱりコイツが強いから興味あるんだろうか。
凄く嫌な気持ちがする。
人間なんて妖精以下の能力しか持たないくせに。
「チルノ?聞いてる?気分でも悪いの?」
「人間なんて妖精以下の能力しか持たないくせに」
思わず考えてる事が口に出てしまった。
こら、と紅白があたいの頭を小突く。
「何があったか知らないけどそんな事言っちゃ駄目でしょ。あんただって妖精だからって馬鹿にされるの嫌でしょ?」
「でも幽香が人間のあんたに興味持つなんて嫌だもん!」
紅白が頭をまた小突く。
やっぱコイツ嫌いだ。
「そういう人を見下す態度が駄目なの。私は別に妖怪だろうが、人間だろうが、妖精だろうがどうでも良い事としか思えないけど」
「幽香が…」
「まぁ幽香が私に興味持ってるのは私が人間なのもあるだろうけどね」
「どういう事よ」
「妖怪からすれば凄く弱っちい種族である人間の私が、妖怪と渡り合えてるんで普通より興味を惹いてるっていうか」
?
よく分かんない。
幽香は単にコイツが強いから興味有るんじゃないの?
でもね、と紅白があたいの目をしっかり見て話し続ける。
「自分が妖精に生まれた事に誇りを持つのは良いけど、他の種族を馬鹿にしちゃ駄目よ。繰り返しになるけど、あんたが一番生まれで馬鹿にされるのは嫌な事だって分かってるでしょ。人間だからって馬鹿にしてたら、あんたを妖精だからって馬鹿にしてた連中と同じよ」
幽香と会った時を思い出す。
あの猿の妖怪みたいなのと同じになるのは嫌だ。
「ごめんなさい…」
「別に良いわよ。今回のあんたの場合は嫉妬もかなり混じってたみたいだし」
紅白が急にニヤニヤしだす。
嫉妬って何の事だろう。
「で?何で幽香に興味あんの?何があったの?」
やっぱコイツ嫌い。
「教えないよ!バーカ!」
「あ。コラ!」
そのまま飛び上がり逃げ出す。
紅白は追っかけて来ない。
そういや、何であたいは幽香に興味持って貰いたいんだっけ?
忘れちゃった。
ま、良いか。
強くなれば興味を持ってもらえるのは確かだって分かったし。
次の日新しい技を教えてもらうために美鈴お姉ちゃんの所へ向かった。
「お姉ちゃん!新しい技教えて!」
「お早う。チルノちゃん。あれから幽香には会ってないよね?」
「うん。会ってない」
嘘は付いてない。
「良かった。じゃあ今日は弾幕ごっこのやり方で新しい方法教えるね」
「うんうん」
「チルノちゃんは弾を止める事が出来るでしょ?あの数を増やすの。相手を囲むように少しづつ止まった弾を増やして一気に全部動かすの」
「こんな感じ?」
「焦って早く動かしちゃ駄目だよ。チルノちゃんは弾幕が少し大雑把だから気をつけて。あと相手狙いの弾は動いてるように見せかけて突然止まらせたり動かしたり、ランダムな要素も取り入れたほうが良いかも」
「はーい」
お姉ちゃんは、私も弾幕ごっこ苦手だから良いアドバイスか分かんないけど、と苦笑いしてた。
「なるべく囲んだ後は逃げるようにしてね。この前の技と合わせれば大抵逃げられるはずだから」
相手から逃げたら強いって認めてもらえないのに。
新しい技の練習が終わった後、お姉ちゃんが聞いてきた。
「ところでチルノちゃん。この間の技はどう?」
「練習してるよ。前より強くなったから見せたげるね」
早速暖かさを奪い去るイメージで辺りの温度を下げる。
「え。ちょ、嘘」
お姉ちゃんも驚いてるみたいだ。
もっと強くする。
「チルノちゃん!止めて!」
お姉ちゃんがガタガタ震えていた。
やった。
寒さに強いはずのお姉ちゃんにも効くようになったんだ。
お姉ちゃんがびっくりした顔で見ている。
「その技は何?私が教えたのと何か違うみたいだけど」
「暖かいのを奪うんだよ。お姉ちゃんから教えてもらった技を改良したの」
「熱を奪い去る?それって氷精の出来る範囲内なの?パチュリーの超々高等魔術に匹敵するんじゃ?そもそも『氷』なんて四大元素にも五行にも無い属性じゃない。この子一体…」
お姉ちゃんが呟きながら動揺してる。
練習頑張ったから驚いてるんだ。
「ね?凄いでしょ?」
「え?あぁ。うん」
「お姉ちゃんのおかげだよ」
「チルノちゃん。あと三日後にまた来てくれる?」
「良いよ?」
何だろ。
三日後に新しい技の成果を見せるのかな。
頑張らなくちゃ。
三日後再びお姉ちゃんの所に行くと、お姉ちゃんのほかにもう一人居た。
金髪でお姉ちゃんと同じ位背が高い。
扇子で半分くらい顔を隠してるけど美人だって事は分かる。
「紫様、この子です。お願いします」
お姉ちゃんが敬語使ってる。
この館の人じゃ無いみたいだけど誰なんだろう。
「なるほどね。妖怪と妖精の境界が揺らいで完全に不安定になってる。どちらかに安定させたほうが良いわね」
「チルノちゃん。今より強くなりたい?」
「うん!」
「じゃあ私と同じような妖怪になるのはどうかな。今より強くなれるよ」
「ホント!?」
妖怪になろう!
そう思った時に紅白の言葉を思い出した。
『自分が妖精に生まれた事に誇りを持つのは良いけど』
そうだった。
あたいは妖精なんだ。
妖精である自分が好き。
強くなりたいからって妖怪になるのは何か違う気がする。
何が違うのかはよく分かんないけど。
それに妖怪でも妖精でも強くなれば幽香も興味持ってくれるし。
「ごめんなさい。やっぱり妖精のままで良い」
うん。
妖怪になるのってずるいかも。
妖精のままじゃ強くなれないって自分で認めるみたい。
それって何かカッコ悪い。
大体あたいは絶対もっと強くなれるはずだし。
二人とも黙ってこちらを見ている。
何だろ?
「美鈴お姉ちゃん。今日のお話ってもう終りなの?」
「う、うん。そうだね。これで終り」
「じゃあ、あたい帰るね。もっと練習して強くなりたいし」
美鈴お姉ちゃんが隣りの人に話しかける。
「何もせずによろしいのですか?」
「えぇ。この子自身自分の意思で妖精でありたいと、はっきり強く自覚したから境界が安定したわ。何もする必要なくなっちゃったわね」
「じゃあ、チルノちゃんはもうこれ以上強くは…」
「いいえ。人が人である事を選択しながら、人を超える事はよく聞く話よ。いわゆる超人ってヤツ。ここの咲夜もそれと似たような人間だし。この子は妖精だけど同じね。何よりこの子が自分は強くなれるって信じてる事が大きいわ」
「耳の痛い話です」
何か分かんないけどあたいはもっと強くなるって事かな。
当然。
あたいは幽香みたいな最強目指してんだから。
「じゃあね。また来るから」
二人に手を振る。
そうだ。
今日は幽香の所に行ってみよう。
あたいはまだ弱いけど、幽香の事思い出したら会いたくなった。
一回ぐらい良いよね。
しばらく飛んで太陽の畑にたどり着く。
居た。
幽香が一人立っていた。
「幽香!」
「あぁ。いつぞやの妖精。…名前教えたかしら」
何だか元気が無い。
寂しそうだ。
「どうしたの?元気ないけど?」
「貴女に話しても仕方ないけど、この間みたいに何回も聞かれるとうっとうしいから教えてあげる。もうすぐ冬になるからよ」
「冬になると大変なの?」
「貴女にとっては良い季節だろうけど花や草木にとってはつらい季節よ。
今年の冬は厳しいみたいだし、私の能力にも限界がある」
「…幽香ってなんでそんなに花が好きなの?」
「聞きたがりね」
幽香の事色々知りたいんだもん。
「頑張って生きてるからよ。人が来ないような山奥でも、荒地でも一生懸命生きてる。誰かに褒めてもらおうとか認めてもらおうとか花には無い。
ただ懸命に生きる、それは妖怪で長寿な私には真似の出来ない生き方。
自分に無いものを持ってるから好きなのよ」
幽香は頑張ってるのが好きなのかな。
あたいも頑張ってるんだけど。
でも自分から言うのも変だしな。
「冬の間にも向日葵みたいに咲き誇る花があれば良いと思うわ」
「あたいは花の代わりになれないかな?」
何それ、プロポーズ?と幽香が笑う。
良い考えだと思ったけど。
あたいが花の代わりになれれば、幽香もこんな寂しい顔をしなくなるはずなのに。
「氷精の貴女じゃ花を育てる事なんて出来ないでしょ。枯らすだろうし。それじゃ私にとって大事な花の代わりには成りえないわよ。って我ながら妖精相手に一体なに話してるんだか」
そうなのか。
強くなるだけじゃ駄目なんだ。
難しい。
あたいが枯らさない花なんてあるのかな。
幽香も知らないみたいだし。
ふと見回すと、いつの間にか幽香が居なくなってた。
これからは体から出る冷気を抑える練習も追加して、枯れない花探しもやろう。
あんな顔の幽香見るの嫌だし。
そして一ヶ月後、雪が降り始めた。
結局枯れない花は見付からない。
あたいの体から出る冷気は大分抑えることが出来るようになったけど、草木が枯れてるんで花を育てられるかどうかは分かんない。
困った時は美鈴お姉ちゃんに聞いてみよう。
お姉ちゃんと仲の良い人が色々な事知ってるって聞いた事あるし。
「美鈴お姉ちゃん!聞きたいことがあるんだけど」
「こんにちは。チルノちゃん」
「あら。久しぶりね」
あれ。
お姉ちゃんが後ろから抱きしめてる感じでもう一人女の人が居る。
館の人で花壇にミステリーサークル作ってた人だ。
作る間、この人にお姉ちゃんの足止めを任された。
足止めのお礼にお菓子沢山貰ったから良く覚えてる。
今日は厚着して手に黒い布を持っているけど何だろう。
「何してるの?」
「雪の結晶を集めてるのよ。妹様が実物を見たがってるんだけど、妹様が来たら溶けちゃうから。だからここで集めてパチュリー様が雪を溶けないようにコーティングするの」
何か大変だな。
考えてるとお菓子の人が私に話しかけてきた。
「ねぇ、貴女。雪の結晶を大きくする事出来る?出来るんだったらお願いしたいんだけど良いかしら?」
「出来るよ。その布の上に作れば良い?」
すぐに大きい結晶が布の上に出来始める。
…新しい結晶が増えるに連れ、お菓子の人が沢山の花を持っているように見えてきた。
あれ?
花の事考えすぎたからかな。
「ありがとう。これだけあれば十分。後でお礼にお菓子持って来るわね」
「うん…」
「?甘いの苦手?」
「何か雪が花みたいに見える」
幽香の好きな花とは全然違うのに。
「そうね。この国では雪の事を六花とも呼ぶわね」
「りっか?」
「そう。六の花と書いて六花。形が六角形だから」
「花…」
見付けた。
これがあたいが枯らす事のない花だ。
あたいが育てられる花だ。
急いで飛び上がる。
「ありがとう!お姉ちゃん達!」
「チルノちゃん。聞きたいことは良いの?」
「うん!見付かったから!」
「お菓子は?」
「要らない!」
お菓子を食べてる暇なんて無い。
すぐに花束を作って幽香に会いに行こう。
森で綺麗な形の小枝を沢山集めて長さを揃える。
枝の先に結晶を作る。
あたいの能力を目一杯使って溶けにくい結晶にする。
壊れないように何回も補強しなおした。
何回も失敗したけど綺麗な形の結晶で揃える事が出来た。
向日葵の花みたいに大きな結晶だ。
飾りつけはあたいのリボンを使おう。
枝の下の部分にリボンを巻きつける。
崩れないようにしっかり結ぶ。
花束が完成した。
すぐに幽香の所へ向かう。
居た。
幽香は岩に座って何かの種を調べてる。
「幽香ー!」
「あら貴女…」
「これあげる!」
出来上がったばかりの花束を渡す。
幽香がびっくりした顔をしてる。
「この雪の花束どうしたの?」
「見付けたの!あたいが枯らさない花!出来たから幽香にあげる!」
「この飾り、貴女のリボンじゃない。何でこんな事…」
「あたいがやりたいから!」
花束は渡せた。
幽香も本物じゃないからって、嫌がってないみたいだし良かった。
あとは練習して強くなるだけだ。
大妖精にも手伝ってもらおう。
そのまま飛び上がる。
「何処行くの」
「ウチに帰って練習するの」
「何よ、それ。変な事聞くけど、私と会ってからずっと強くなるための練習してた、とかじゃ無いわよね?」
「そうだよ」
「最近、修行みたいな真似してる変な妖精が居るって聞いたけど貴女だったの…」
幽香の側に居たいから。
あ、自分で頑張ってるって言っちゃった。
花束渡せたのが嬉しくてつい喋ってしまった。
カッコ悪いからすぐ帰ろう。
「じゃあね!」
「待って。貴女、名前は?」
「チルノだよ!」
答えてからそのまま飛ぶ。
後ろから幽香の声が聞こえてきたけどよく聞き取れなかった。
もっと強くなったらまた会いに行こう。
いつか幽香と一緒にご飯食べたり遊んだりしたい。
だからあたいは最強になりたい。
しかし・・・やはり幽香と戦ってみてほしかった
可愛いよチーちゃん可愛いよ。
幽香さんは花束貰ったのでこれからバシバシフラグが立つんですね。分かります。
でもちょっと闘って欲しかったけれどこの展開も素敵であぁジレンマ。
パッチュさんはどれだけミステリーサークルで愛を伝えたいのさ。
不覚にも萌えましたよ。
ここからチルノvs幽香の戦闘のちほのぼのアハハウフフな展開になる!
…な続編が出ると勝手に信じてお待ちしていますw
ゆうかりんとチルノの関係・・・GJといわざるを得ない!
これからバンバンとフラグがたちキャッキャウフフな関係になることを望みます!
まさに理想的なチルノで大変よかったです。
素敵なお話しですね!
チル幽香とはめずらしいですが、違和感なく楽しめました。
これからこの2人の関係がどう発展していくのか、とても気になります。
ちょっと話の分量的に物足りなく感じたので、続きへの期待を込めてこの点数で。
ご馳走様でした。
続編期待してます!