Coolier - 新生・東方創想話

「それは弾幕が○○だからだな」

2008/11/06 20:50:54
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 人間はちょっとしたことでその性質を変える生き物だと宴会の時に誰かがいっていた。それを誰がいっていたのかは覚えていないが。
 怠け者が恋に落ち色恋に勤しみ、情熱に溢れていた者が目標を見失い枯れる。
 霧雨魔理沙も人間であり、いつか自分にもそのような転機が訪れるのだろうとその話を聞いて思ったものである。
 しかしそれはまだまだ先の話で、きっと難しい問題にぶつかった時だと高をくくっていた。今はまだそんな時ではないと。
 だがその認識はどうやら間違っていたようで、魔理沙はまだ若いこの時に一つ、選択することを迫られる。
 彼の鬼の酔った一言。それが全ての原因だった。
「魔理沙なんて、スペルカードルールがなかったら一発なんだけどねぇ」


***


 パラパラと雨が屋根に当たる音を聞きながら魔理沙は考えている。
 片手には魔導書、机の上には大量のキノコと鍋。今日は新しく魔法の燃料を作る、筈だった。
 でも実際は椅子に座ってボーッと天井を眺めているだけ。ぐつぐつと煮えるはずだったキノコはザルの中で沈黙している。
 ガタガタと椅子を前後に揺らしながら考えるのは前回の宴会。宴会自体は特に何もない、いつも通りの面子がいつも通りに騒いだだけのもの。ならなぜ自分はあの宴会のことをずっと考えているのだろうか。
 暫くして魔理沙は気づく。一つ、一つだけ違うところがあったと。
『魔理沙なんて、スペルカードルールがなかったら一発なんだけどねぇ』
 萃香のあの一言。あの一言はいつもと違っていた。あんな言葉はいつもの宴会ではでてこない。
 あの酔った鬼の言葉が気にかかっているようだ。だから作業も一向に進んでいない。
「あの時、私はどうしたんだっけか」
 思い出す。あの時の自分は萃香に撤回を求めることもなく、弾幕で決着をつけることもなく、ただ笑ってその場をやり過ごした。それはないぜ萃香、と他のやつらと適当に笑ってやり過ごした。
 自分らしくない、と魔理沙は思う。いつもなら考える前に動いている。あんなことをいわれて黙っていられるはずがない。すぐにでも弾幕勝負を挑んでいたはずだ。
 どうしてあの時、否定しなかったのだろうか。できなかったのだろうか。
 答えは簡単。萃香のいってることが正しいから。それだけのこと。
 椅子に座ったまま窓の外を眺める。雨に濡れた森が見える、妖怪や妖精が生活する魔法の森。
 妖怪。そう、こっちは人間であっちは妖怪。地力が違う。寿命なんてものの前に、生き物としての格が違うといっていい。どうしようもないほどの正論だ。
 だから魔理沙は否定できなかったし、しなかった。それで何も間違っていない。
 それで終わり。魔理沙は改めて燃料作りに取り掛かろうとして、手が全く動いていないことに気がつく。それどころか、いつのまにか椅子に座ってまた天井を眺めている始末。
 このモヤモヤは何なんだろうか。説明しきれない気持ちを胸に抱えながら、魔理沙はただ天井を見上げ続ける。こんなもの、生まれてこのかた感じたことがない。
 自分だって魔法使いの端くれ、正論とそうでないものの違いは分かる。なのに何でだろうか。
 胸のモヤモヤが全く収まらない。今日はもうずっと天井を見ていよう、なんて仕方のないことを考えながら魔理沙は椅子に体を預ける。
 雨はまだしばらくやみそうにない。屋根を打つ音が、ただ魔理沙を包む。


 あれから数日、雨はまだ降り続いている。このモヤモヤも一向に晴れる気配がない。
 結局、キノコは腐らせてしまった。そうなれば燃料の調合に使えないと分かっていたのに、魔理沙はずっと手をつけずにいた。手をつけられないでいた。
 自分は一体どうなってしまったのだろうか。外に出る気も起こらず、ただ家の中でこのモヤモヤと戦う日々。正直にいえば、かなりしんどい。かといって外に出ようという気も起こらない。連日の雨からして、今なら新しいキノコでも見つけられそうだというのに。
 ただ椅子に座って天井を眺める。
 何がダメなんだろうか。魔理沙は考える。なぜモヤモヤとするのだろうか。魔理沙は考える。
 あの言葉のどこがいけないのだろうか。あの言葉は真理である。
 自分はスペルカードルールに守られている。スペルカードルールがなければ今のように戦うことが出来ない。
 紛れもない事実だ。何がおかしいというのだろう。
 スペルカードルールがなかったら、なんて考えられないくらいにルールに守られている自覚が魔理沙にはある。ルールに守られているからこそ、今のポジションにいられる。
 同じ人間の霊夢はどうか。恐らく、このルールがなくても生きていけるのではないか。幻想郷の結界云々によって妖怪に倒されない、なんてものを取っ払っても霊夢は戦っていける気がする。
 自分はどうだ。こんな考えをしている時点で分かりきっている、無理だ。
 いや、無理ではない。おそらく勝てる相手もいるだろう。でもその数はずっと減る。
 試しに指を折りながら魔理沙は考える。チルノやリグルたちには勝てる、だがその上はどうだろうか。門番を倒せるか、早苗を倒せるか、うどんげを倒せるか。明確な映像が頭に浮かんでこない。
 つまり、自分はその程度。ルールの外ではその程度でしかない。
 ルールの恩恵を一番受けている人間、霧雨魔理沙。正論だ、正論だ、全く持って正論だ。
 なのに何故か、涙が出る。
 自分に涙なんて似合わない。自分はこんな涙を流すキャラではない。魔理沙はその涙を否定するために必死で手を動かす。
 拭う。拭う。涙を拭う。それでも涙は溢れ出る。魔理沙の手はすっかり濡れてしまった。
 次々に流れ出る、涙。その存在を知らしめるためか、ゆっくりと流れ出る涙に魔理沙は一人呟く。
 どうした、一体どうしてしまった。この身体に、私に何が起こった。
 あの宴会の日から胸のうちで渦巻くこのモヤモヤは、私に何を訴えているんだ。
 あの言葉の何に反応しているんだ。
 霧雨魔理沙はスペルカードルールがないと何も出来ない。それの何処がおかしいというんだ、納得できないというんだ。
「いや、本当は分かってるんだよな、霧雨魔理沙。お前は、私は、悔しいんだよ」
 悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい。悔しくてしょうがない。
 あの言葉を否定できない私が悔しい。スペルカードルールに守られている私が悔しい。全て認めてしまった私が悔しい。
 涙が止まらない。次々溢れて止まらない。
 魔理沙はやっと理解した。なぜ自分が涙を流しているのか理解した。


 雨の音が止んだ。屋根で奏でられる音が途切れた。
 代わりに心の雨が降り始めてしまったようだな、と魔理沙は泣きながら笑う。今までの長雨は、自分の心の代弁だったのかもしれない。
 なら、雨がやむ時、この心も晴れでいられるのだろうか。


 外は晴れ。涙も落ち着いた。どちらも雨のち晴れ。
 久々で、初めての悔し涙は魔理沙に一つの決意をさせる。
 弾幕勝負で一番になる。単純にして明快な決意。
 最初はルールなしの勝負で勝つことを考えた。でもその考えも間違っていることにすぐ気づく。
 悔しさを感じたのは誰だ。ルールに守られている自分だ。ならばルールの外に出て行って見返しても意味がない。
「やり返すのは、馬鹿にされた私だ。悔しがった私だ」
 だから、このルールの中で魔理沙は勝負をする。スペルカードルールの中で勝負をする。
 弾幕勝負で一番になって、もうあんな言葉は天地がひっくり返ってもいえないようにしてやる。それくらい強くなってやる。
 スペルカードルールの外でなら勝てるんだけどねぇ、と言い換えさせてやる。
 弾幕勝負で一番になる。
 そうと決まればやることは一つだけ。勝つために。勝ち続けるために努力をする。


***


「魔法を使う者に必要な物は覚悟である」
 パチュリーから死ぬまで貸りている魔導書を読みながら魔理沙は考える。
 この覚悟とは何を指すのか。常識から外れる覚悟か、迫害されても貫く覚悟か、探求し続ける覚悟か。
 今の魔理沙にはどれも違うような気がする。今までは探求し続ける覚悟が必要なのだろうか、とぼんやり考えていたが、今は違う。
 どの魔導書にも書かれている覚悟、それは捨てる覚悟だ。
 今までの魔理沙にはなかった覚悟、でも今の魔理沙にはある覚悟。

 弾幕勝負で一番になると決めた魔理沙なのだが、その為の努力の方向にまず戸惑うことになる。
 なぜなら、弾幕勝負は一人でやるものではなく相手がいる。ただ自分が正確無比な弾幕が展開できようと相手の弾に当たれば負けてしまうし、逆に避けることだけに集中しすぎて相手に弾が当たらなければ意味がない。魔理沙の弾幕勝負で一番になる、という目標は思った以上に険しい茨の道。
 地道な努力で他の者達に勝てるのだろうか、と魔理沙は考える。
 数年間絶えず修行をし続ければ、恐らく一番になることはできるだろう。今の者達には。
 しかしそれは相手が成長しないことが前提。自分が成長するように相手も日々成長することを無視した話である。
 そんな永遠に詰まらない差をひっくり返すにはどうすればいいか。
 幸いなことに、魔理沙は魔法使いだった。魔理沙には努力が二種類ある。
 地力をあげるために修行をする努力と、魔法を習得することにより一気に成長するという努力。
 魔法使いたる魔理沙が選んだのは、後者。

 自分に合った新しい魔法を習得する。目標を達成するための第一歩。
 そんな中、魔理沙が初めに思いついたのは、弾幕勝負に勝てる魔法。見たことも聞いたこともない魔法だが、もしそんなものが存在するならば今の自分にうってつけである。
 パチュリーの魔導書や自分で集めたアイテムから関係ありそうな物を適当に引っ張り出して、その内容をまず全部頭に叩き込む。もしそんな魔法があればそれを使えるようにすればいいし、ないのなら自分で作ればいい。
 魔理沙が最初に手をつけたのは、家の中の掃除。
「んぁ~。ここにこれ、あれがあそこ、あれ? なんだこれ?」
 家の中にぞんざいに積み上げられた魔導書の中からそれらしい物を見つけなければならない。
 気の遠くなる作業ではあったが、今の魔理沙には苦にならない。自分には絶対に達成すべき目標があるのだから。

 簡単にいうならば、やはりそんな魔法は存在しない。というか、まず弾幕ルール自体が制度として新しいのに、それに合った魔法がそうそう存在するはずもなかった。
 これには魔理沙もがっかりしたが、それならば作ってしまえばいいとポジティブに考え直す。
 椅子に座り、机に齧りつき、もう一度参考になるだろう魔導書たちを読み返す。
 肩こりに悩まされ、知恵熱が出そうになりながらも頭を働かせ、たまに無理のし過ぎで倒れながらも魔理沙は研究に研究を重ねる。
 いつのまにか朝が夜になっていようと、夜が朝になっていようと、朝が朝になっていようと。片時もメモを離さずに四六時中新たな魔法に挑戦し続けた。
 そして、魔理沙は弾幕勝負に勝てる魔法に至った。
 パチュリーの魔導書と自分の見解をごちゃ混ぜにしながらも理論だけは作り上げられた、夢の魔法。この魔法を使うことが出来ればどんなに劣勢だろうが相手だろうが関係なく勝つことが出来る。なぜならそういう魔法だから。
『魔法は新たな式を作り上げるもの。石を空に向かって投げれば落ちる、それは重力という式によって実現されるの。そこに、魔力を注ぐことによって石は浮遊する、と一文を付け加えるのが魔法。その式の割り込みによって現実を変える。重力によって落ちる石を、魔法という名の新たな式で浮かせるわけ』
 いつだったか、魔法について語っていたパチュリーの姿を魔理沙は思い出す。
 自分だけでも、あのパチュリーの様に魔法をつくることができた。しかもこれほどに凄い魔法を。
 あまりの嬉しさに一人家の中で小躍りしながら魔理沙は完成させるために作業を進める。
 その日、魔理沙は久々にベッドで寝ることを自分に許した。

「マジかよ……」
 夢のような魔法の理論を完成させた魔理沙だったが、数日後にこの魔法は本当に夢の魔法だったことを知り愕然とする。
 魔力を注げば箒が浮くように、魔力を注げばミニ八卦炉からマスタースパークが撃てるように、魔力を注げば弾幕勝負に勝てる魔法はその式通りに弾幕勝負での勝利を約束する。
 しかし、代償が大きかった。大きすぎた。
 魔法を使う者は捨てる覚悟をしなければならない。この場合の捨てるもの、代償は膨大な魔力。理論ばかりに目が入っていて、実際に必要だろう魔力量の計算を魔理沙は忘れていた。
 ざっと計算して、一瞬起動するだけでも魔理沙の魔力五年分。たった一瞬で五年分。
「うが~! こんなの実戦で使えるかよ!」
 弾幕勝負に勝てる魔法は、素晴らしいリターンを約束する分リスクも素晴らしい。というか素晴らしすぎる。
 理論が完成するまでは喜んだ魔理沙だが、必要魔力量を概算で出してからは落ち込むしかない。
 この魔法の研究だけでも一ヵ月半かかったというのに、時間を無駄にしたといってもいい。
 しかし、魔理沙はこの研究によりリスクとリターンのバランスを学んだ。自分が得たいリターンを許容できるだけのリスク。弾幕勝負に勝てる、というのはリターンが多すぎた。だからこれほどにリスクも高い。
 むしろよく理論まで完成させることが出来たな、と魔理沙はこの自分の生み出した魔法を蔵に入れた。

 魔理沙はすぐさま次の魔法を作る作業に取り掛かる。
 前の失敗から得るものもかなりあった、今度はそれを上手く使って作り上げればいい、失敗を噛み締めながら今日も魔理沙は机に向かう。
「もっと具体的に考えよう」
 鉛筆を口に咥えながら、魔理沙は考える。
 相手や条件によって変わる弾幕勝負に勝てるようにするには、どういう魔法が向いているのだろうか。研ぎに研がれたタイプか、またはどんな状況にも対応できる汎用性のあるタイプか。
 自分が求めるとするならば前者。尖ったナイフのような性質。一番を目指す今の自分には、どんな屈強な場面も切り抜けることのできる尖った性質が必要だと思う。
「特化するなら、私の長所を伸ばす形にしないとな。私の長所……」
 自分の長所、それは移動スピード。危ない場面も、持ち前のスピードで全てかわしてきた。ならば特化するならここ。このスピードを生かすことのできる魔法を考えるべきで、魔理沙は今まで自分が行ってきた弾幕勝負の結果・問題点をメモに書き出していく。
 ここ暫くは魔法の研究で弾幕勝負はあまり出来ていない。なら過去にあったものを思い出していけばいい。魔理沙の頭に浮かぶのは、ライバルや妖怪たちとの勝負。弾の間を抜けようとして失敗する自分、注意散漫で横からの弾幕に当たる自分、切り返しの時に進みすぎて弾に当たる自分。
「あら?」
 そこで見つかった問題点は意外や意外、そのスピード。あまりに早く移動してしまうために自分が今どこでどういう場所にいるのか把握できていない場合や、陰に隠れた弾幕に自分からぶつかっていることが多々ある。とするならば、ここで必要な強化点は何か、それは探知能力である。
 スピードは今でも十分なほどにある、と魔理沙は考える。ただそれを上手く操縦できるだけの探知能力、把握する能力が人間の自分にはないという話だ。
 ならばそこを強化する。探知能力を強化する。そうすれば今までのような事故的なやられかたをすることもないのではないか。更に相手の弾を完全に把握することが出来ればその分こちらも攻撃に集中することが出来る筈。
「これだ」
 コンセプトは決まった。後は作り上げるだけ。
 魔法使い霧雨魔理沙の努力はどんどんと積み重ねられていく。

 探知能力強化の魔法の作製に取り掛かって約一ヶ月。部屋の中が研究に使った紙で覆われそうになりながらも、魔理沙はついに完成させる。
 自分のためだけに作った、自分のためだけの魔法。リスク・リターンのバランスもある程度取れているし、この魔法自体は発動に多くの魔力を必要としない。というより、必要としないように試作段階で改良している。魔理沙会心の一作。
「できた、が」
 目の前にあるのは細かく字を彫られた包帯。これが魔理沙の作り上げた新たな魔法。
 この包帯を目を覆うようにつけることで魔理沙は立体的な視野を手に入れる。立体的な視野とは何か。簡単にいうならば自身を中心とした半径数メートルの物が全て理解できるようになる。つまり三百六十度の視野を手に入れたといっても過言ではない。流石に色などの判別はできないが、何かが近づけばその大きさ、形や動く速さなどをすぐさま感知できる。
 これは弾幕勝負にとってかなりのアドバンテージ。後ろや真横からの弾も知覚でき、重なっている弾幕も判断が出来る。そして拡散型の弾ならばその軌跡をそのまま読み取り隙間をつくことが可能。これならば魔理沙自身のスピードを生かした、今まで以上の高速移動ができるだろう。
 だがこれも魔法。かならず発動に代償が、捨てなければいけないものが存在する。
 それは五感の内の三感の喪失。具体的にいうのならば、視覚・嗅覚・味覚の喪失である。最初は立体視と視覚の交換でどうにかしようと思ったが不可能。続いて嗅覚を失わせることで出来る脳の空き容量をその立体視にあててみたが、それでも足りない。最後に味覚を失うことでやっと情報処理が追いつくといった形だ。立体視ができるようになろうと、処理するのは自分の脳である。情報収集は魔法による広感知でできようと、脳への処理は魔法ではどうにもならない。
 作っている間に、魔理沙はこの魔法がどんなものになるか分かっていた。どんなリスクを負うことになるのか分かっていた。途中でやめることも出来た。でもやめることなく研究を続けた。

「さて、どうする霧雨魔理沙」
 魔理沙は選択をしなければならない。自身で作り上げたこの魔法を使うか使わないか。
 使うのであれば、魔理沙は三感を失うことになる。その代わりに弾幕勝負での大きなアドバンテージを得ることにはなるが。
 使わないのであれば、次の魔法を作らなければならない。
 魔理沙は考える。この魔法を使うべきか否かを。
 この魔法を使えば強くなれる。弾幕勝負で一番になるという自分の目標にぐっと近づく。
 しかし使えば三感を失う。夕暮れを見て綺麗だと思うことはなくなり、森の木々のあの香りを嗅ぐことはなくなり、皆との宴会での料理や酒をおいしいと感じることもなくなる。
 これほどの代償を払えるか。心が揺れる。
 ならば全て諦めるのか。それだけは出来ない。
「この魔法に、それだけの価値があるのか?」
 弾幕勝負で一番になるという目標はそれだけの価値があるのか。
 思い出す。あの雨の日を思い出す。
 三ヶ月も前になる、泣いて泣いたあの日を思い出す。
 魔法を作る間は意図的に蓋をしていた、感情の壷を魔理沙は覗き込む。

 そこに残っていたのは、あの時と変わらぬ激情。
 あの時と変わらぬ悔しさに悲しさ。
 そしてまるで陰りの見えない自身の決意。

「なら、私は捨てるぜ。綺麗なものも、いい匂いのものも、美味いものも。全部捨ててやる」
 魔理沙は包帯を手に取る。まだ整理しきれていないのか、心臓がドクドクと自己主張をしてうるさい。
 あの日、あの時から捨てる覚悟はとっくに済ましてある。
 ならば、迷う必要など全くない。
 霧雨魔理沙は弾幕勝負に勝つために大切なものを捨てる。
 捨ててでも手に入れたいものを見つけてしまったから。



 失い、手に入れた『新たな視界』で魔理沙は森の間を通り抜けていく。
 包帯をつけたままで外に出て動き回るのはこれが初めてになるが、特に問題なく動き回れる。
 色のない世界。真っ黒な背景に、物体の輪郭を緑の線で現しただけの簡素な視界。だが範囲は広く、自分が大きな代償を払って得た視界。
「どんなもんだかな」
 探知できる範囲を広げたり狭めたりしながら魔理沙は森の中を行く。範囲を狭めればそれだけ細かく濃い情報を得られるが、自分から離れたものを全く感知できないというのが意外に大変。逆にすると大量に入ってくる情報に脳が悲鳴をあげてしまうのも注意すべき点だ。
 自分にあった探知範囲を色々と試しながら、魔理沙は目的の場所に辿り着く。
 同じ魔法の森に住む、アリスの家に。
「おーい、アリス。いるかー」
 帽子を自分の鼻先まで下げながらノックをする。まだこの魔法は誰にも知られていない。なら自分からばらす必要もないだろう。
 そんなことを考えている内に家の中からアリスが不機嫌そうな顔をして出てくる。
「一体何の用かしら、魔理沙」
「おうアリス、今日も不機嫌そうな顔だな」
「うるさいわね。ちょっと行き詰まってるだけよ」
「人生にか?」
「人形を作るのに、よ。なに、用がないなら帰ってくれないかしら」
 言葉の端々からイライラが伝わってくる。だがここで魔理沙も引くわけにいかない。
 ここまでわざわざやってきたのはきちんと作動するかの確認と、実践ではどう働くのかを確かめるため。
「よし。そのイライラ、魔理沙さんが買ってやるぜ。弾幕勝負だ」

 空の上、箒に跨り魔理沙は翔る。
 前後左右には大量の弾、しかしそのどれにも当たる気がしない。
 視界はオールグリーン。左右から自分に迫ってくる交差弾幕も少し前に進んでかわし、こちらもお返しに星型の弾をばら撒く。
「どうしたのかしら。魔理沙、あなた避けるのが上手くなってない?」
「さぁな。私は私、見ての通りだぜ?」
 軽口を叩きながら弾を打ち合う。ギアはトップに入っていない、どちらも。
 今はまだ単発や拡散の弾を飛ばす、牽制合戦。
 ここから弾幕勝負が始まる。どちらかが仕掛けた瞬間から、多彩な弾による多彩な形の多彩な弾幕が張られる。
 ここから弾幕勝負が始まる。魔理沙が一番になると誓った勝負が始まる。
 ここから弾幕勝負が始まる。ここからが新たな自分の第一歩。
「さっさと作業に戻りたいし、いかせて貰うわ」

 アリスがそういった途端、飛んでくる弾が一気に増え、更に軌道が嫌らしくなる。
 拡散弾に隠れるようにして飛んでくる追尾弾、大玉を大量に飛ばしてきながらも隙間にはしっかりと小さな弾。人形による死角からの弾には微塵も容赦がない。アリスは本気で魔理沙を倒しにきている。
 そんな弾を、弾幕を魔理沙は避ける。右に、左に、時には前に。
 自分の感知できる範囲に弾が入れば今の魔理沙にとって避けることは容易い。それが真横からだろうと後ろからだろうと関係なく。
 魔理沙は弾幕の波を駆け抜ける。今まで使いきれていなかったそのスピードをフルに使って。
 取り囲むような弾幕は隙間のあるうちに滑り込み、連続して出される追尾弾は左右に振りつつ回避。後ろから襲い掛かってくる人形を一瞥もせずに避けて頭を一撫で。
「魔理沙。あなた、何をしたの」
 アリスが弾をばら撒きながら自分に向かって質問を投げかける。
 少し調子に乗りすぎてしまった。人形の避け方があからさま過ぎたな、と魔理沙は反省する。
「何って、まぁ、見れば分かるさ」
 弾を避けながら帽子を取る。
 今、アリスには見えているはずだ。自分の決意の証が。
「貴方……」
「それじゃあ、やる事もやったし。終わりにしようか、アリス」
 魔理沙はこの弾幕勝負で確信した。自分の選択は間違っていなかったと。
 アリスが自分に向かって飛ばしてくる弾。その全てが、遅い。
 全て見切る。新たな魔法の前にはこの弾幕など隙間だらけ。
 全て避ける。どの弾だろうと魔理沙の速さに追いつけない。
 そして全ての弾を抜けきった魔理沙の前には、アリスが呆れた顔をして立っていた。

「ねぇ魔理沙。どうしてその魔法を選んだの? どうしてそんなに大きな代償を支払ったの? 人をやめれば、それほど大きな代償を支払わずに済んだかもしれないのに」
「得るために捨てるのは当然だろ。私にとって、それだけの価値があったのさ。それに、私が売られた喧嘩だ。人間じゃなくなった私が出張っても意味がない」
「そう……。貴方も捨てる覚悟を持ったってわけね」
「まぁな。他の何を捨てても、それでも譲れないものが見つかったって感じだが」
「おめでとう。貴方はもう魔法使いよ。初めまして、弾幕の魔法使いさん」
「はっはっはっ。いいな、その二つ名。頂いとくぜ」



 魔理沙の目の前には大量の弾幕、いや弾の滝といったほうが正しい。
 自分に向かってくる大小緩急様々な弾を魔理沙はギリギリでかわし続ける。
 アリスに勝ったあの日から暫く経っている。あれから多くのもの達と戦った。そして勝ってきた。あと少し、この目の前で優雅に笑っているスキマ妖怪とあと一人に勝利すれば魔理沙の目標は達成される。
 だから、負けられない。
「ほら、どうしたの? そのままじゃ落ちちゃうわよ?」
 八雲紫の本気の弾幕、それが今自分に襲い掛かってきている。
 今まで受けたことのない多彩にして力強く、そしてこちらを殺しに来る弾たち。一瞬たりとも油断できない。少しでも気を抜けば終わる。
 そんな弾幕を避け続ける。いや、避け続けるしかできない。攻撃に移る暇がない。こちらが少しでもその気を出した瞬間に、紫は弾幕を変化させて落としにかかる。手が出ない。
 手持ちのスペルカードは全て使い切ってしまった。移動スピードを重視した今の自分でこれなのだから、前の自分ならすぐに叩き落されていただろう。
 魔理沙は今はじめて、本気を出した紫と戦っている。
 そんな魔理沙の心に走るのは歓喜。今、自分は八雲紫と戦っている。以前の自分では辿り着けなかった境地といってもいい。そんな場所にまで踏み込めるようになった。ならば、あの選択は間違いじゃなかった。あの選択をしなければここまでこれなかった。
 だからって、ここで満足をするのか。そんなはずがない。
 自分は何を失った。何を捨てたか思い出せ。色を、香りを、味を捨てた。それで得たものが八雲紫の本気の弾幕、それで満足か。それで等価か。そんなはずがない。霧雨魔理沙の三感はこの程度ではおさまらない。つりあわない、こんな程度ではつりあわない。つりあうとすれば唯一つ、あの決意。あの決意の達成にしてやっとつりあいが取れる。
 ならば自分のするべきことは何か。決まっている。
「こんな弾幕程度じゃ、魔理沙さんは倒せないぜ!」
 怒涛と表現するしかない弾幕に魔理沙は自分から飛び込む。
 肩に掠る。腕に掠る。膝に掠る。でも当たってはいない。全てギリギリでかわす。
 いつの間にかトレードマークの帽子がなくなっていた。弾に当たってどこかに飛んでいったのだろう。
 満身創痍。だがまだいける。まだ当たっていない。まだ勝負を続けることができる。
「それが噂の包帯ね。無骨だわ」
「はっ。それにここまで追い詰められてるのは何処の誰かな?」
「それもそうね。魔理沙、貴方はよくやったわ。人の身でよくここまでやってきた。だからもうそろそろ終わりにしましょう。次で最後」
 紫の周りから溢れる妖力。この戦いの中で見せた内でも最大だろう高まり。
 空間が歪むほどに練り上げられるその力の前で、魔理沙は笑った。
「そうかそうか。これを凌げば私の勝ちって訳だな」
「抜ければ貴方の勝ち、抜けられなければ私の勝ち。でも、そこまでして勝ちたいものかしら。私には分からないわ」
 いい終わると共に放たれた弾幕。それは壁。壁としか形容できない弾の集合。
 隙間が、通り抜けれそうな隙間が見つからない。そしてあまりの弾の多さに脳が悲鳴をあげている。
 無理だ。この壁のどこに隙間があるというのか。全く見つからない。探知にも引っかからない。
 無茶だ。こんな壁を抜けられるやつがどこにいる。幻想郷のどこにいる。
「それでも!」
 抜ける。切り抜ける。この壁を切り抜けて、いってやらなければならない。今の言葉を撤回させなければならない。
 誰も抜けられない弾幕を避けきってこそ、一番に。
 これで最後だ、これで終わりなんだ、と悲鳴を上げる脳を押さえつける。
 壁に向かって翔る。霧雨魔理沙は空を翔る。
「人が頑張っているものを――――」
 跳ぶ、魔理沙は跳ぶ。箒を踏み台にして、人一人通れるかどうかも分からない隙間に向かって跳ぶ。
 頭の中はぐちゃぐちゃ。多すぎる弾に脳が沸騰しそうに熱い。
 それでも魔理沙は抜けなければならない。
 今度こそ、悔し涙を流さぬように。
「『なんて』や『そこまで』みたいな言葉で貶めるんじゃ、ねぇ!!」

 抜けた。弾が掠らないところなどない程の壁を、抜けた。
 落ちゆく勝者を優しく抱きとめたのは敗者。
「へへ……。抜けたぜ、私の勝ち、だ」
「そうね。貴方の勝ちよ、魔理沙。おめでとう」
「勝った。私は、勝ったんだ」
「えぇ、傷だらけの貴方と無傷の私。でも今の勝負は誰がどう見ても貴方の勝ちよ」



 痛む身体を叱咤しながら魔理沙は神社の境内に降りる。
 目の前には、自分のライバル。
「紫から聞いているわ。私と弾幕勝負するんでしょう?」
「あぁ、本気で頼むぜ」
 最後の最後。自分が追い続けていた存在が目の前にいる。
 同じ人間でありながら詰まることのない差を感じていた相手が目の前にいる。
 見返してやりたかった内の一人が目の前にいる。
 それだけで十分だった。疲弊していた身体は活力を取り戻し、尽き掛けていた魔力は一気に湧き出る。あれほど悲鳴を上げていた脳も息を吹き返す。体調は最悪だが最高。
「あぁ、先にいっておくわ。私は一人では戦わないから」
「ん? それはどういうことだ?」
「私は今から身内読みをする。魔理沙、貴方の癖を意識して戦う。だから貴方の敵は一人じゃないわ」
 霊夢がいった。お前の敵はお前だ、と。
 今から魔理沙が戦う相手は、霊夢と魔理沙。
 幻想郷において、最強のタッグで戦うと、戦ってくれると霊夢はいった。
 魔理沙は笑う。笑うしか出来ない。
 どうしてこうも、我がライバルは最高なんだと笑うしかない。
「ははっ、そいつはいい。そいつは最高だぜ霊夢。ありがとうよ、霊夢のお陰で私は私とも勝負が出来る」
「私たちに勝てれば、貴方は名実ともに一番になれるわ。頑張りなさい」
「ここまでお膳立てしてもらったら、勝たないわけにはいかないぜ!」
 逸る気持ちを抑えられずに魔理沙は空に躍り出る。

 魔理沙の最後の相手は、やはり最高のパートナー。




「まいったね。これじゃあ帰れないぜ……」
 人里の茶屋で魔理沙は一息つく。外は雨。
 朝は天気がよかったというのに昼ごろから怪しくなり、夕方の今はどしゃ降り。
 今日中にやっておきたかった用事は済ませられたからよかったものの、こんな雨の中では魔理沙は動けない。
 探知能力の意外な弊害がしばらくして見つかった。それは雨である。
 極少の雨粒が大量に探知に引っかかるものだから処理が追いつかずに倒れてしまう。それが今の魔理沙の弱点の一つである。無理すれば動けないこともないが、それだと探知範囲を狭めることになって結局物にぶつかったりしてしまうし、何より酔う。
 なので今の魔理沙は雨の日や雨が降りそうな時は極力外に出ないようにはしている。時にはこういう不意をつかれて困ることもあるのだが。
「ま、そのうち止むだろ」
 そういいながら二個目の団子に手を出す。逃げ込んだ先が茶屋で、しかも美味い団子があるという所でラッキーだったと魔理沙は思う。団子をモグモグと噛む。美味いと噂の店だ、この団子も恐らく美味しいのだろう。
 そんな風に考えていると、誰かが魔理沙に近づいてきた。
「あ、あの!」
「ん? どうした、私に何か用か?」
 身体の大きさと声の高さから近づいてきたのは少女、だが声や髪型などからは自分の知り合いではないことが分かる。この見知らぬ少女は自分に何の用だろうか。
「あの、霧雨魔理沙さんですよね!」
「あぁ、私は霧雨魔理沙だが、何か?」
「私、魔理沙さんのファンで、いつか魔理沙さんみたいになりたくて、それで、それで」
「一先ず落ち着け。なに、私は逃げやしないから」
 魔理沙の言葉にその少女はゆっくり深呼吸を繰り返す。
 一回、二回、三回、四回、五回。
 そして少女は目をキラキラさせながら聞いてきた。
「どうして魔理沙さんはあんなにも弾幕勝負が強いんですかっ!」
 どうやら少女の聞きたいことは自分の強さの秘訣らしい。
 自然と笑みが零れる。自分が笑っているのがよく分かる。
 だから、その笑みのまま魔理沙は答えた。
「それは弾幕が――――」



END
 初めましての方は初めまして。他の作品を読んでいただいている方はありがとうございます。
 6回目の投稿になります。音無です。

 久々に東方っぽい作品を書こうとネタ探ししていたら、最初に投稿していた霊夢の話に「次は魔理沙編だ」とコメントがあったのでそれじゃあと書き上げたこの作品、如何だったでしょうか。
 魔理沙も色々と鬱憤溜まってそうなので私のイメージに沿った活躍をさせてみたりのですが、やっぱり個人的なイメージが先行しすぎた感が否めません。まぁご容赦を。
 あとENDと書いているようにこの作品は続きもありませんし他とも繋がりのない単発式となっております。うん、霊夢のやつで魔理沙に人間やめるって言わせちゃったんで繋がらないだけなんですがね。

 最後に、題名の○○の部分には適当な言葉を皆さんで当てはめておいてくださいな。人によって色々と変わってくると思いますしね。
 それでは、長文失礼しました。

追記:味覚・味覚と続いていたところを嗅覚・味覚に修正しました。報告ありがとうございます。そして根本的なミスをして申し訳ありませんでした。
音無
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コメント



0.2190簡易評価
10.100リペヤー削除
おお、これぞ努力家! かっこいいぞ魔理沙!
魔理沙の言う通り、それがどんなものであろうと人の努力を貶めてはいけませんね。
自分もそんな努力が出来たらなあと思います。

>続いて味覚を失わせることで出来る脳の空き容量をその立体視にあててみたが、それでも足りない。最後に味覚を失うことでやっと情報処理が追いつくといった形だ。
味覚が二つになってますのでどちらかが嗅覚でしょうか?
13.80煉獄削除
魔理沙にとって弾幕は何よりも優先されるべきものだったのでしょうか。
弾幕が好きだから?
それだけで五感のうち三つを失ってまで望む魔理沙は
確かに何かを得たのでしょうけど、それがかえって私には良い決断だったとは思いませんでしたね。
それも良かったといえば良かったですが。
15.100名前が無い程度の能力削除
最高です。
ただのコソ泥や居直り強盗みたいな魔理沙が多い中、すごく気持ちのいい魔理沙だったと思います。
物語の数だけ違う霊夢と魔理沙がいるんじゃないかと思います。音無氏の魔理沙は、類稀な努力家の魔法使いだったんですね。
18.80名前が無い程度の能力削除
お見事!
魔理沙というと、嘘吐きで泥棒で調子のいい性格に描かれることが多いキャラですが
(公式設定がそうなっているので仕方ないですけど)、これは実にまっすぐで清々しい
魔法使いでした。
力を得たのも単に努力の成果というだけでなく、“己の三感”という重いものを代償に
しているので説得力があります。
ただひとつ残念だったのは、対霊夢戦の描写を省略していること。
「魔理沙が幻想郷で一番の弾幕使いになれたかどうかは、貴方(読者)の想像に
お任せします」ということでしょうけど、きちんと書ききってほしかったです。
22.100名前が無い程度の能力削除
私にはこの魔理沙の選択が正しいものだとは到底思えませんが、それも私が弾幕を○○ではないからなのでしょうね。
そもそも、普通の人間である私には弾幕なんてものを体験する機会などあるわけもなく…
でも、三感失ってまでも勝利を得たいと思うほど弾幕を○○になれるというのは魔理沙がそういう人間なのか、弾幕がそういうものなのか…
いちど弾幕勝負を体験したいなぁと思わせられるいい小説でした。 

P.S. あ、あえて○○を使ったのは作者さんの意思に準拠しただけで、中には私なりの言葉が入っています。あえて作者さんが形を定めなかったものに私が形を与えるのは無粋かなぁ、と個人的にそう思えたので。
24.100名前が無い程度の能力削除
これはかっこいい魔理沙ですね
25.80名前が無い程度の能力削除
二つ下の智弘さんのSSの後書きにあった言葉が頭に浮かび、とても身に染みました。
個人的に、魔理沙には手に入る限りのものを貪欲に余さず求め続けていてほしい、と思っていますが、
こうやって譲れないものが出来た時、他の全てを投げ打ってでも守りきってみせる、という魔理沙もすごく彼女らしかったです。

最高に格好良い魔法使いをありがとうございました。
31.10名前が無い程度の能力削除
「魔理沙なんて、スペルカードルールがなかったら一発なんだけどねぇ」
この言葉がきっかけとなり魔理沙が思考錯誤を始める。ここまではとても魅力的なんですが、
なぜそこから、弾幕勝負で一番になるって結論が出たのか最後まで納得できませんでした。
スペルカードルールに守られてると言われて悔しかったのなら、ルール外で勝とうとするのではと
の思いが振り払えませんでした。

弾幕が○○だからっていうのが理由なら、弾幕勝負を貶されたからって理由ならわかるんですよね。
でも違うっぽいし。
35.無評価名前が無い程度の能力削除
この魔理沙はこのまま行くと、もう誰にも相手にされなくなる気がしますね。
感覚を代償にしてまで勝ちにこだわる姿勢は、相手を引かせてしまうのではないかと思います。
料理やお酒の味も匂いも分からないのでは、宴会にも誘われなくなるでしょうし……。

気になった点を少し。
感覚をも犠牲にしてまで求めた強さが、萃香を見返すためのスペルカード以外の強さではなく、スペルカードで一番になることと言うのは、どうにもちぐはぐな印象が拭えません。
これではスペルカード戦で一番になっても、又、萃香に同じ台詞を言われれば同じことになってしまうのではないでしょうか。
萃香の台詞から始まったのなら、萃香に認めさせる過程や描写なりが必要なのではないかと思います。

それと魔理沙の得た感覚なのですが、周囲の全てを感知できるけれど、取捨選択が出来ない感覚では、よけいに避けにくくなるような気がします。
まして今まで持っていなかった感覚を使いこなすには相当な修練が必要な筈ですが、そのあたりの説明や描写が少しでもあればよかったと思います。
38.無評価音無削除
 このような場に出張ってきて申し訳ありません。それでもまぁ補足のようなものを入れたいなと思い書かせて頂きます。

 なぜスペルカードルールに拘ったのか、私としてはその中で見返してこそ意味があると考えたからです。
 ある人がフットサルを楽しみ頑張っていたところにサッカープレイヤーがやってきて「君はフットサルでは上手いけどサッカーではそれほどでもない」と言ったとします。
 それを悔しがったその人が、サッカーに転向してその人達を見返して何になるのでしょう?
 その人が楽しんで努力していたのはあくまでフットサルです。だからこそ、そのフットサルでグゥの音もでないくらいに自分を磨くのが最高の意趣返しになるだろうと、私は思うのです。 
 この魔理沙の求めた物は強さではなく、つまらない言葉で傷つけられたプライド。自分が好きで頑張っていたこと自体を「そんなもの」扱いされ、それを見返すために頑張る。それを描いたつもりだったのですが、伝わらなかったのでしたら申し訳ないです。

 そして宴会に誘われない云々については、私の思う幻想郷の住人と読者の方の思う幻想郷の住人が違うので仕方がないものだと。
 私の中では、弾幕ごっこができるレベルの妖怪や神からすれば、むしろそこまでして自分たちに近づこうと頑張る魔理沙の姿に好感を持つのではないか思うのですが、どうでしょう。
 あと宴会や飲み会については味なんて二の次、雰囲気を楽しむものだと勝手に思っていたので誘われないという発想自体がありませんでした。これからはそういう可能性も考えていきたいと思います。

 そしてあの魔法について正直に言えば、ただの努力だけで魔理沙に勝って欲しくなかった、あくまでも魔法使いであってほしかった、という一念で加えたものでして。ある程度の取得選択ができる“探知”魔法として出したのですが、それがうまく伝わっていなかったようで申し訳ないです。

 これで少しでも納得をしていただければ幸いなんですが、もし納得していただけたとしてもそれを文中で表現できなかった、表現不足故のすれ違いですので結局私が未熟ということですね。次はこういうことをしなくてもいいようにがんばりたいと思います。
 あと、私の考えでは、○○というところに好きという言葉は入りません。
 それでは。馬鹿みたいに長いコメント、失礼しました。
39.30名前が無い程度の能力削除
補足を読んで作者さんが何を書きたかったのが分かりましたけど、
だとしたら作中の魔理沙の思考がくどすぎるというか、一部よくわからない感じです。
なんか無理に悩ませようとしてませんか?
40.70名前が無い程度の能力削除
決断をする人はぐるぐる深いところまで考えますよね。他の人にはわからないくらい。
そしてこの魔理沙の決断がよかったのかわるかったのかも他人には測れないのでしょう。決断の価値は魔理沙にだけ与えられたもので他の人が介入すべきものではないから。
それまで積み重ねてきたもの、自分が生涯をかけたものがある人は
持つすべての財産を投げ出しても守りたいものがあるのではないでしょうか。
また、理想を追う人と現実を大事にする人との間でも、理解の可不可、判断の良し悪しを感じる差はありそうですね。
現実の得を選ばずに内面のプライドや精神の向う先を選んだ魔理沙は理想を追う人だったのかなと思います。
43.無評価名前が無い程度の能力削除
ううむ・・・。どういえばいいのかわからないけど少し無理やり感が否めなかったかなあと思います。
弾幕を研究するのは確かに魔理沙らしい。そこの表現はすばらしかった。
しかし難しい言葉や思考を詰め込んでも、面白くなるかどうかは分かりません。
逆に、難しすぎると読み手にとっては何を伝えたいのかわからなくなってしまう。
今回の話は、少し思考的にはくどいようにも感じられました。もう少し、さっぱりとしてもよかったと思います。
最強になることは確かに悪いことではありませんが、かといってその強さにつけこんでしまうのでは・・・とか思ったりしてしまいます。それに誰からも相手にされなさそうで怖い。
45.90名前が無い程度の能力削除
なんかところどころに納得いかない点があったように思える読了で
自分ではうまく説明できないんですが、たぶんそれは他の方の感想に現れてるものなのかなぁと
とはいえ魔理沙編リクしたのが自分なもので、本当に書いてもらえた感謝を含めた点を入れさせて下さい
51.40名前が無い程度の能力削除
がんばる魔理沙はかっこいいけど、スペカルールがそもそも人間と妖怪達が対等に出来る「お遊び」なのにそこまでになるかな?という感じがしました。
あとどうせなら元凶である鬼を退治して欲しかったですね
52.90名前が無い程度の能力削除
とても面白かったです。下世話に言えば、これは魔理沙がプロゲーマーになる話でしょう。
野球でもサッカーでもサーフィンでもローラーブレードでも将棋でもアーケードゲームでも、
プロと呼ばれる人達は冷静に横から見たらバカな事に人生を捧げているけれど、
その分野に己の全てを傾けていればきっとファンになる人が現れるものですよね。
-10は霊夢との一戦が見たかったという事で。
53.無評価名前が無い程度の能力削除
とにかくこの話の魔理沙がピエロに見えてしょうがない。
スポーツ競技として上はプロからオリンピックまで社会的に地位を築いているサッカー等と違って、弾幕勝負は「少女のお遊び」なのである。
カードゲームや玩具遊戯に秀でる為に自らの肉体を犠牲にしようなどという人間が、周囲の目線からしてどう映るかは自明の理ではないだろうか。
ちゅーか、一つの遊びが得意だからといって押し込み強盗を働いたり傲慢な台詞を吐き散らしたりと、傍若無人な振る舞いが目立つから鬼にあんな事を言われたんじゃないのか。
58.80名前が無い程度の能力削除
読後感が何とも言えず、考えさせられます。

作中を通して魔理沙が研ぎに研がれたものを貫き通す描写が素敵でした。
リスク、というのがその点を巧く強調し覚悟のほどをよく表していると思います。
魔理沙が信じて得たものはある意味では間違いでは無かったのでしょう。

良くも悪くも一貫しすぎているので、多くのものを捨てた魔理沙を否定したくなかったようにも感じますが読み物としてはなにかしら「転」が欲しかったですね。
59.100名前が無い程度の能力削除
音無さんの作品って厳しいですね。

深刻な事態に取り返しのつかない事に東方のキャラクターが巻き込まれる。

人によっては求める物が違いすぎて、嫌になるかもしれないね。