Q、何が始まるんです?
A、第⑨次大戦だ。
*残念ながら、↑は本編に全く関係ありません。
後、オリキャラが出てくるので、ご了承くださいませ。
#6「妖怪の山お散歩ツアー」
ここは人里。相変わらず人や妖怪が行き交い、多くの店が軒を連ねている。
中央にある広場では、紫が企画した活動写真の上映会が、昨日この場所で行われていた。
撮影中、人里に被害を出すという大事件もあったが、結果的に撮影は無事終了。
上映会には多くの人妖が参加し、主演の霊夢らが舞台挨拶に参加。
今も夜になると、有志達による上映会が続いている。
その広場において、人だかりが出来ていた。皆、同じ内容の1枚紙を持っている。
紙には「実りの秋満喫!妖怪の山お散歩ツアー」と書かれ、
人里広場→妖怪の山入口→河童の工房→守矢神社→人里広場
と、このツアーの順路が描かれている。
「皆さん。今日はお忙しい中お集まり頂き、誠に有難う御座います!」
人だかりの先頭、元気な声で答えるのは鴉天狗の少女。長い茶色の髪を一本に縛り、
動きやすく改良された着物と袴を身に纏い、年期の入った下駄を履いている。
彼女は鞍馬小鳩(くらま こばと)。鞍馬と名乗っているが、鞍馬天狗とは何の関係もない。
文と同じく新聞で生計を立てているが、新聞の他にも広告や宣伝で収入を得ている。
「本日は、『実りの秋満喫!妖怪の山お散歩ツアー』と題し、
妖怪の山の散策、及び守矢神社で秋の味覚を堪能して頂きたいと思います!」
参加者から一斉に歓声が上がる。今回このツアーに参加したのは約30名。
人里で暮らす人妖などが中心だが、遠路はるばる冥界から来た幽霊もいる。
「では、妖怪の山に向けて出発しましょう!」
意気揚々と歩きだす小鳩とツアー参加者達。
その中に、あの博麗の巫女の姿があった。
* * * * *
それはツアー当日の数日前、相も変わらず平和な博麗神社での事。
霊夢は人里で行われる活動写真上映会の舞台挨拶のカンペを、ひたすら縁側で読み直していた。
「『私が主演を務めた博麗霊夢です。本日は上映会にご参加下さいまして、誠に有難う御座います』
・・・ベタだけど、これくらいが丁度いいのかしら」
ちなみにカンペは紫が考えたものである。カンペの大半のセリフは紫一人によるものだ。
・・・これを見ると、本当に監督としての仕事をしているんだなと思う。
「霊夢さーん!」
と、上空から声が聞こえる。またいつもの鴉天狗が新聞を撒きに来たのだろう。
その天狗は上空から風を切るように下降し・・・派手に墜落した。
「・・・・・・」
「痛たたたた・・・あ、霊夢さん。おはようございます!」
起き上がり、普通に挨拶をすます天狗。どんだけ丈夫なんだこの天狗は。
よく見ると、いつも神社に来ている文ではない。服も、髪の毛も、背中の翼の形状もまるで違う。
「貴女の名前は?」
「私ですか?私は鞍馬小鳩って言います!今日は広告を配りに来ました!」
そう言って、霊夢に手製の広告を手渡す小鳩。
広告には『実りの秋満喫!妖怪の山お散歩ツアー』と、可愛らしい文字で描かれている。
内容は人里の広場に集合し、その後妖怪の山を登り、守矢神社で秋の味覚を満喫。
再び山を降り、最初の集合場所である人里で解散・・・という流れだ。
「妖怪の山を登るのはいいけど、他の天狗とかはどうするのよ」
「大丈夫です!天魔様からは許可をもらいましたから、他の妖怪に攻撃される心配はありません!」
胸を叩いて自信満々に答える小鳩。後ろの羽がパタパタ動く。
確かに広告の下には『妖怪に襲われる危険性なし!』と書かれている。
断定していいのだろうか。妖怪の山では襲われなくとも、道中で襲われる危険があるというのに。
「もしよろしければ、お友達も誘って下さいね!当日のお昼までに人里の広場に来て下さればいいですから!
では、私は紅魔館に行ってきます!お忙しい中有難う御座いました!」
早口で捲し立てた後、紅魔館の方角へ飛び立つ小鳩。
残ったのは数枚の広告と、広告と一緒に手渡された新聞。
『小鳩新聞』と書かれてはいるが、内容は文々。新聞と何ら変わりはなさそうだ。
「結局何だったのかしら・・・」
ただ小鳩と喋っただけなのに、どっと疲れが溜まった霊夢であった。
* * * * *
それから数日間。小鳩は広告を印刷してはあちこちに配布し、遠く離れた三途の河の死神にも手渡していた。
人里で行われた活動写真の上映会にも現れ、手当たり次第にツアー広告をばら撒く小鳩。
他の天狗は一人も行っていない。彼女だけが広告をばら撒いていた。孤独な作業である。
秋の味覚を満喫や参加費無料に誰もが食いつくと小鳩は思っていたが、
当日の正午になっても、思うように人は集まらなかった。一体何がいけなかったのだろうか。
が、よく見るとあまり乗り気ではなかった霊夢が来ているではないか!小鳩は心の中で小躍りした。
小鳩の心の中
(霊夢さん・・・私の為に来てくれたんですね!嬉しいです!)
霊夢の心の中
(暇だったから来てみたけど・・・帰ろうかしら)
「妖怪の山かぁ。一度行ってみたかったんだよなぁー」
「秋の味覚を味わえて、それで無料だなんて太っ腹ね!」
「登山を楽しんで、秋の味覚も味わえる。天狗も随分と面白い事を考えたもんだ」
参加者達からは、今回のツアーに関する期待で溢れていた。
普段は近寄らない妖怪の山に入り、山の景色を楽しみ、美味しい物を食べて、おまけに参加費無料。
小鳩だけでなく、今いる参加者も何故これで人妖が集まらないのが不思議だった。
「さて皆さん。いよいよ妖怪の山入口に差し掛かってまいりました!
一応許可は取っていますが、万が一攻撃されそうになった時の為に、こちらの通行手形を受け取って下さい!」
山の入口の前で、小鳩から『通行』と太字で書かれた木の板を手渡される参加者達。
一応白狼天狗には許可を取っているが、それでも迎撃する危険性だってある。
なので、この手形を持っている人には攻撃するなと小鳩は何度も伝えていた。
霊夢もその手形を受け取ると、参加者と共に山道を登り始める。
小鳩は山を登る参加者全員に、大げさな動作を交えながらこう言った。
「さぁ皆さん!神秘のベールに包まれた、妖怪の山にご招待!」
* * * * *
山の入口から大分離れた守矢神社からも、小鳩の元気な声が聞こえてくる。
「最近の天狗は、えらく元気ですね」
守矢神社の巫女、東風谷早苗。彼女は小鳩の元気さに呆れながらも、ツアー参加者が使う七輪を並べていく。
参加者が少ないので必要な七輪は少ないが、少女にはこれすら重労働だ。
「元気なのはいい事じゃないか」
木のテーブルを持ちながら話す八坂神奈子。背中に巨大な柱を装備し、これまた巨大な注連縄を背負っている。
こう見えても、彼女は別の世界でブイブイ言わしめた神様。身体からは、凄まじいオーラが溢れている。
彼女はこのツアーで神社を使う事を、渋い顔をせずに快く快諾してくれた。太っ腹な神様だ。
「そうだよ早苗。私達も負けないくらいの元気で迎えてあげようよ!」
夕食の食材を詰め合わせた籠を持ちながら話す洩矢諏訪子。見た目は幼く、頭は目玉の付いた異様な帽子を被っている。
彼女も神奈子と同じ世界で、人々から愛された神様。神奈子には負けたが、それでもかなりの実力の持ち主だ。
ちなみに、今日用意している料理の大半が諏訪子の手作りである。
「このツアーがきっかけで、守矢神社の名前を広める事が出来るチャンスになるかもしれないよ」
「ここは人間が参拝するには少しきつい場所だからねぇ。あの天狗には感謝だよ」
二人の神様の言う通り、この守矢神社は妖怪の山に存在する。
神社はお参りしてくれる人がいるから神社と呼べるのだが、今現在、参拝客は数える程度しか訪れていない。
信仰を増やす為にも、今回のツアーは守矢の名を世に広めるチャンスなのだ。
「・・・そうですね!信仰の為にも、まずは今日のツアーで名前を覚えてもらいましょう!」
「その調子その調子!」
全ては信仰の為。早苗は自分に気合を入れ、七輪を運ぶ作業を再開した。
* * * * *
「皆さん見えますか?こちらが河童の工房です!」
一方の小鳩&参加者達は、ツアーの見所の一つである、河童の工房に足を踏み入れていた。
外の世界から流れ着いたガラクタや、発明に使われる工具などが、工房内に散乱している。
奥では河童達が、見学用に様々な物を修理したり開発したりしている。
ちなみに河童は人間を見ると隠れるというが、ここの河童達は随分とオープンな性格なので問題はない。
「こちらでは、外の世界から流れてくる物を修理したり、河童や天狗が使える道具を開発したりしています!
今日は特別に、河童の発明品をいくつか披露してもらいましょう!」
ノリノリで工房内を歩き回る小鳩。紹介を受け、河童達が次々と発明品をもってこちらにやって来る。
霊夢達は丸太を切っただけの粗末な椅子に座り、その発明品を眺めていた。
「まずはこちら!見ただけでは単なる火縄銃にしか見えませんが・・・」
「それかい?聞いて驚くな!何とこの火縄銃、鉛の弾が飛び出すんじゃないんだぜ!」
大げさな演技で参加者達を魅了する河童。彼が手に持つのは、実際に合戦で使われていた火縄銃。
その銃口をゆっくりと自分のこめかみに近づけ、勢いよく引き金を引いた!
ポンッ!
気の抜けるような音と共に、銃口からは造花が飛び出た。参加者達から拍手が飛び出る。
銃口から花を抜き取ると、目の前に座っていた人間の女性にその花をプレゼントした。
「さてさてお次は何だろな~♪」
「あいよ!こいつは俺達河童の自信作!題して『なんちゃってトランペット』だ!」
出てきたのは普通のトランペット。このまま吹けそうな感じがするが、河童はそれを持って演奏を始める。
~♪~♪~♪
演奏自体も普通だ。どこがなんちゃってトランペットだと思った瞬間、トランペットが河童の口元から離れた。
~♪~♪~♪
「信じられない!口から離れているのに、まだ音が聞こえるわ!」
「これが河童の技術なのか!?」
驚く人々(霊夢だけが無反応)をよそに、演奏を続けるトランペット。
演奏が終わると、人々から拍手が沸き起こる(霊夢だけしてない)。
「はい!河童の超技術に触れたところで、工房見学は以上で終了です!
そろそろ守矢神社でのお料理の準備も出来た頃でしょう!」
小鳩は参加者達と共に河童達に一礼し、再び守矢神社向けて歩き出す。
が、全員が工房を出た途端、小鳩は霊夢に駆け寄って、
(駄目ですよ霊夢さん!折角河童の発明品を見れるんですから、もうちょっとテンション上げて下さいよ!)
(・・・帰っていいかしら)
(だーめーでーす!今日は最後までお付き合いさせてもらいますからね!)
(はぁ・・・)
やる気のない霊夢に軽く怒る小鳩。滅多に入れない妖怪の山を案内しているのに、
途中で帰るとは何事か。もう少し歩けば豪華な夕飯にありつけるのだから、帰る事だけはやめてくれ。
「ほら、お客さんを待たせてますから、早く行きましょう!」
「はいはい。とりあえず神社まで行けばいいのね?」
小鳩に引っ張られるような形で、霊夢は渋々守矢神社に続く登山道を登って行った。
太陽は西に傾き始め、もう間もなく月が輝き始めるだろう。
* * * * *
その後も難所が続き、参加者達がゼイゼイハァハァ言い出した頃、ついに守矢神社に到着した。
「登山開始から3時間・・・。やって来ました守矢神社!このツアーのメインイベントです!
山登りの苦労も吹っ飛ぶ秋の味覚!思う存分お召し上がり下さいませ!」
守矢神社の境内には木で出来たテーブルが並べられ、その上には七輪と鍋が置いてあった。
テーブル上のお皿には、以下の料理が並べられている。
・神奈子特製卵粥
・栗の甘辛煮
・山菜3点盛り合わせ
・川魚の塩焼き
・辛味噌田楽
・松茸の土瓶蒸し
・諏訪子特製芋羊羹
・・・どれもこれも、妖怪の山で採れた野菜や魚を使用して作られた料理ばかり。
見た目よし、味もよし。小鳩の言う通り、今まで歩いてきた疲れも吹っ飛ぶ最高の夕食だ。
「どうですか霊夢さん!神様が作る料理ですから、美味しい以外の言葉はいりませんよね!」
「別に美味しい以外の言葉は言えるわよ。この川魚、味付けが塩辛いんだけど」
「・・・そう言ってる割に、霊夢さんも結構な量を召し上がってるじゃないですか。よっぽど美味しかったんですね!」
「う」
悔しいが、反論できなかった。別に少しだけ食べればいいやと思っていたが、
ついつい手を伸ばしている内に、かなりの量を食していた。・・・後で運動しよう。霊夢はそう思った。
・・・皆が絶品料理に満足している頃、小鳩は神奈子と共に杯を交わしていた。
天狗は全体的に酒に強く、小鳩もかなりの酒豪である。
一升瓶程度なら、1分で飲み干せる鉄の肝臓の持ち主でもあるのだ。
「どうだい?皆美味しいって言ってくれているだろう?」
「お陰様で!あの霊夢さんも沢山召し上がってくれてますよ!あ、もう一杯どうぞ」
「忍びないねぇ。・・・それで、お前さんはこのツアーを定期的にやるつもりかい?」
「勿論!そして行く行くは、妖怪の山に人間や妖怪が立ち入れるような制度を作ります!
そうすれば、守矢神社は多くの参拝客で潤いますよ!」
「それは嬉しいねぇ。ま、今はお心遣いだけで十分だよ」
そう言って、杯の酒を一気飲みする神奈子。隣で小鳩が「いよっ!いい飲みっぷり!」と上機嫌で叫んだ。
日が落ちてからも宴は続き、諏訪子が全員に芋羊羹を配り、大満足の中で宴会は終了した。
* * * * *
・・・参加者達が人里に戻ってきた時には、日付が変わっていた。それくらいまで宴会が続いていたのである。
閑散とした広場の中央で、小鳩は最後にこう締めくくった。
「皆様、今日はお疲れ様でした!今後もこの鞍馬小鳩、皆様に様々なツアーをご提供させて頂きます!
次回もまた、皆さんが来て下さる事を楽しみに待っています!それでは、解散!」
その声と共に、妖怪の山お散歩ツアーは終了した。皆満足した顔をしながら我が家へと戻っていく。
広場に残ったのは、小鳩と霊夢だけだった。
「霊夢さん。今日はお忙しい中、本当に有難う御座いました!」
「結局夜になっちゃったわね。でも・・・楽しかったわ」
楽しかった。ただそれだけでもいい。霊夢からその言葉を聞いただけで、小鳩は今日の努力が報われた気がした。
そして小鳩は、帰ろうとする霊夢にこう告げた。
「霊夢さーん!もしよろしかったら、今度は博麗神社で宴会ツアーでも開きませんかー!」
「ええ、考えてあげるわ」
霊夢の背中が遠ざかっていく。その姿が見えなくなるまで、小鳩は一生懸命手を振り続けた。
はたから見たら変な奴だと思われるだろう。それでも、小鳩は一生懸命手を振り続けたのだった・・・。
* * * * *
・・・数日後。夕暮れ時の人里の広場に出来た人だかり。人々は皆、手書きの広告を持っている。
手に持った広告には、可愛らしい巫女のイラスト画と共に、こう記されていた。
『朝まで飲み明かそう!博麗神社で大宴会ツアー』
ってあれ?パンフレットまで幻想入りしてたのか!?なるほど、いいセンスだ。
ただですね、山での宴会がですね、ちょっと非現実的過ぎないかと。
いくら幻想郷が平和になってきたとはいえ、夜ともなれは妖獣もでるでしょうし、
酒飲んで浮かれてる非力な団体様が暢気に歩き回れる場所じゃないと思うんですよ。
それに妖怪の山において、守矢神社から人里って行きの行程から見て
キツそうじゃないですか。
それを宴会し終わった団体様が通るのは無理がありませんか?
いや、自分の個人的な意見でしてね、そんな気にかけるほどのものでもないですけどね、
ただもうちょっと現実味が欲しかったなっていう感想を抱いただけなんですよハイ。
とてもお話はおもしろかったですよ。オリキャラ、鳩サブレとか言いましたっけ、彼女も
なかなかいい味だしてたじゃないですか。GJだと思いますよ。
長文失礼。