Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷文明向上大作戦#5

2008/11/04 22:14:51
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*注意!*
これは後編です。前編は#4をご覧下さいまし。
また、とある海外ドラマに登場した物を模した物が出てきます。
あくまで模しただけのパチモンです。
それでもいいよ!むしろバッチコーイ!という方のみご覧下さい。




・・・時刻は草木も眠る丑三つ時。紅魔館の離れの物置で、レミリアはとある物の調整を行っていた。
物置の中はランプで照らされただけで薄暗く、傍には妖精メイドや山の河童の姿も見える。

「・・・これも外の世界の物かしら?」
「へぇ。先日山に流れ着いた物でござい」

河童が言うには、この物体は紫が活動写真を撮ろうと活動する前に、妖怪の山に突如現れたという。
第一発見者は山の哨戒に当たっていた白狼天狗の犬走椛。こちらも霊夢と同じく、新手の妖怪と思い込んでいたらしい。
その後危険性がないと判断され、興味を持った河童達により、その物体は引き取られたのだ。

「レミリア様、これを一体何に使うのですか?」
「決まってるじゃない。・・・紫に恥をかかせてやるのよ」

不敵な笑みを見せるレミリア。その原因こそ、紫が企画した活動写真であった。
霊夢が主役、紫がヒロイン役に対し、自分は悪役。しかもロクな迎撃すら出来ずにやられる咬ませ犬なのだ。
こんなのが人里で上映された日には、吸血鬼としてのプライドや地位等が崩れ落ちるに決まっている。


・・・ならば、活動写真を台無しにしてしまえばいい。
そして自分が主役となり、霊夢がヒロインとなり、悪役である紫を叩きのめしてやろうではないか。
レミリアはそれを実現させるために、目の前の物体の力を借りるのだ。全てはプライドの為、そして紫に恥をかかせる為。





(・・・紫。私に恥をかかせてくれたお礼は、百倍にして返してあげるわ・・・!)





#5「活動写真ロマネスク(後)」


夜が明けた。紅魔館の前には、活動写真の撮影に挑むスタッフや演者達が、台詞や演技の細かな調整を行っている。
最初のシーンは門の前。妖精メイド大隊を指揮する美鈴を霊夢が一人で叩き伏せる。という内容だ。
もちろん撮影なのでなるべく手加減はするが、見た目の派手さも必要なので、ある程度は覚悟してもらう。

「それではシーン31、準備はいいかしら?よーい、始め!」

紫の掛け声と共に、文の写真機が動き出す。同時に、霊夢の目の前を色鮮やかな弾幕が覆った。

霊夢「見た目は派手でも、避けられる場所が多ければ意味がないわよ!」

霊夢の霊撃でメイド妖精大隊の3割がピチューン。

美鈴「残っている妖精メイドは、弾幕を前方に集中させて下さい!」
メイド妖精「は、はい!」

中央に集中砲火。その中を強引に突破する霊夢。

霊夢「食らいなさい!博麗キック!!」
美鈴「 う わ ら ば 」

美鈴ピチューン。大隊が混乱している隙に、霊夢は門を突破する・・・。

「それまで!なかなか良かったわよ」

紫の声と共に、シーン31の撮影が終了。珍しく取り直しはなかった。これで幾分時間が短縮できる。
次のシーンに備える霊夢だが、ここである事に気づき、紫に話しかける。

「そういえば、シビックはどうなったの?
終盤で紅魔館から脱出する時に使うって書いてあるけど、湖の上は走れないわよ」
「大丈夫。河童が何とかしてくれるわ」

他人事のように答える紫。こんな調子で本当に大丈夫なのだろうか。
心配になりながらも、霊夢はシーン32の撮影場所へと移動を始めた。



* * * * *



撮影が順調に進む中、レミリアの部屋に響く音一つ。

デレレ、デテッテデテッテデテッテデン♪

「むー。なかなか無限増殖が出来ないよー」
「ボタンを押すタイミングが合ってないのよ。私の手本を見なさい」

活動写真の出番がないパチュリーとフランは、暇を持て余す為にファミコンで遊んでいた。
最近では香霖堂から手に入れたカセットも増え、充実したファミコンライフを過ごしている。
ちなみにパチュリーのお気に入りは『さんまの名探偵』、フランのお気に入りは『シティコネクション』だそうな。

今はパチュリーによる、お手軽無限増殖講座が行われていた。

ヘコッヘコッヘコッヘコッヘコッ
ピロリロリロ♪
ピロリロリロ♪
ピロリロリロ♪
ピロリロリロ♪
ピロリロリロ♪

途切れる事無く続くピロリロリロ♪。そして増え続ける残機とスコア。
パチュリーの見事なボタン捌きに、フランはただ興奮するばかりであった。

「すごーい!ねぇ、コツとかはあるのー?」
「私もよく分からないわ。とにかく挑戦あるのみね」

そのアドバイスを貰い、もう一度挑戦するフラン。ゴール付近の階段にいる亀を踏みつける。

ヘコッヘコッヘコッヘコッヘコッ
ピロリロリロ♪
ピロリロリロ♪
ピロリロリロ♪
ピロリロリロ♪
ヘコッ

「惜しかったわね。でも中々の出来よ。これを続けていれば短時間でマスター出来るわ」
「えへへー。褒められちゃった」

照れるフラン。悪魔の妹とは想像できない程の笑顔だった。
そしてまたコントローラーを手にする。そして聞こえる音が一つ。

デレレ、デテッテデテッテデテッテデン♪



* * * * *



活動写真の撮影も8割を終了し、いよいよ霊夢とレミリアの戦いに移る。
途中で追いすがる美鈴を蹴散らしたり、咲夜との激戦もあって霊夢は若干疲れていた。
しかも毎回のように紫の撮り直しの要求が入り、スケジュールもだいぶ押している。

「後はこの大広間でレミリアと対決するシーンと、倒して紫を救い出すシーン。
そしてシビックで脱出して、夕日の中で抱き合うシーンだけね」
「日没まであまり時間がないわ。霊夢、貴女の頑張りが試されるわよ」

撮影話を持ちかけて来た時と違い、真剣な表情で話す紫。それだけ活動写真にかける熱意があるという事だろう。
紫の真剣な様を確認し、霊夢も気合が入る。レミリアが立ち位置につき、準備は整った。

「シーン64、始め!」

レミリア「よく来たわね。とりあえず、ここまで来た事は褒めてあげるわ。
だけど貴女はここで死ぬのよ。私の強大な魔力の前に、塵すら残さず殺してあげる!」

赤いレーザー弾を発射するレミリア。それを難なく避ける霊夢。

霊夢「手加減のつもりかしら?生憎だけど、そんな情けは必要ないわ!」

追尾弾を発射する霊夢。かなりのホーミングを、右へ左へ回避するレミリア。

レミリア「この程度で私を倒す?そんな寝言は寝てから言いなさい!」

槍を構え、突撃するレミリア。

レミリア「さようなら。愚かな人間」

爆発と共に、周囲を紅い煙が包み込む。
爆発の中から現れる霊夢。レミリアの右腕を掴み、左手からは今まさに霊撃が発動せんとしている。

霊夢「悪いけど、さよならするのは貴女の方よ」

霊符「夢想封印」
爆発。大広間の端まで吹っ飛ばされるレミリア。

霊夢「さて、紫を助け出しに行きましょう」

霊夢、地下に続く階段を降りていく。


「それまで!最高の演技だわ!」

紫が拍手を送る。クライマックスシーンなので紫による撮り直しが相次ぐと思われていたが、
一発で終わった。時間が押してるという事もあったが、二人の気迫が最高のシーンを生み出したのだ。

「これでレミリアの出番は終わりね。お疲れ様」

霊夢が声をかけるが、レミリアは何も言わず大広間を後にした。

(相変わらず素直じゃないわね)

と思いながら、霊夢は次の撮影場所である地下牢へと足を運んで行った。



* * * * *



紅魔館の離れの物置。出番を終えたレミリアは、もう一つの物語の出番の為に待機していた。
主役は自分、悪役は紫。そしてラストシーンは霊夢と抱き合うハッピーエンド。

「完璧よ・・・完璧すぎる物語だわ・・・」

レミリアが河童達に用意させた外の世界の超兵器。それはシビックと同じ車なのだが、外観からして違う。
黒く平べったいボディに、様々なボタン。そして一番の特徴は内部武装。
これこそ外の世界の文明が生み出した超兵器『ナイト2001』なのだ。
残念ながら喋る事はない。そこまでは作りこまれていないのだろう。
これさえあればシビックなど敵ではない。使い方次第では霊夢にだって対抗できる。
運転席の中、レミリアは勝利を確信していた。

・・・時は満ちた。今こそ紫に思い知らせてやるのだ。
このまま咬ませ犬で終わらせやしない!レミリア・スカーレットの本気を見せてやる!

「レミリア・スカーレット。ナイト2001、行くわよ!」

思いっきりアクセルを踏み込むレミリア。物置の戸を破壊するナイト2001。
レミリア監督による、もう一つの活動写真の幕が上がった瞬間である。



* * * * *



次の撮影は紅魔館からの脱出だ。ここでいよいよ、にとりに改造されたシビックが登場する。
外見からは全く変化がない。一体何が違うのか、霊夢はシビックの調整に没頭するにとりに訊ねた。

「見た目は変わらないけど、何か変わった処はあるのかしら?」
「一応水の上を走れたりするようにはしたけど、残りは秘密」

できればその残りを話してほしかったのだが。
とりあえず水の上を走る方法が台本には書かれていたので、後はそれを実践するだけである。

「それでは撮影を始めます!」

藍の掛け声で、霊夢と紫がシビックに乗り込む。このシーンとラストシーンで終わり。
地獄のような一日だったが、その苦労ももう少しで終わる・・・。





「そこまでよ!」




その声の主は、既に出番が終わったはずのレミリアだった。

「悪いけど、私の出番はまだ終わってはいないわ!」

黒い車体から発射される鉄の塊。周囲にばら撒かれ、直後に爆発。何名かの妖怪がピチューンした。
混乱する現場。攻撃の止まないナイト2001。監督代理の藍は、すぐさま撮影の中止を伝えようとするが・・・

「これでは撮影どころではない!全員でレミリアを止めるんだ!」
「止めちゃうんですか?ここで大暴れしてくれれば、見どころが増えますよ!」
「正気か!?この状況で撮影を続けろと!?」

完全に撮影モードに入った文。確かに今の状況は活動写真の華になるかもしれない。
しかし、レミリアの暴走を止めなければ、こちらにだって被害が及ぶ事は避けられない。
とにかく撮影中止を告げる。そう決めた藍の頭に、何者かが念話で話しかけてきた。

(・・・続けなさい。霊夢ならこの状況を乗り越えられるわ)
(ゆ、紫様!?)

念話の相手は紫だった。それも彼女の言葉は、このまま撮影を続行せよとの事。

(少しくらい、吸血鬼の我儘を聞き入れたっていいじゃない。・・・分かったわね)
(は、はい・・・)

呆気に取られながらも、藍は撮影役の文と演奏役のリリカに告げる。

「・・・撮影を続けてくれ。それが紫様の望みだ」
「了解です!リリカさん、私の速さについてこれますか?」
「オッケー!私に任せなさいって!」

ナイトからの攻撃を避けながら、撮影を敢行する文と演奏を続けるリリカ。
二人にだって意地がある。この素晴らしき場面を、さらに素晴らしい物にする為に。
・・・文とリリカの友情。プライスレス。



* * * * *



撮影続行。その言葉を聞いた時、霊夢は何かしらの冗談だろうと思っていた。
今レミリアが撮影を台無しにしようとしているのに、誰一人として止める気配がない。

「気休め程度だけど、霊夢になら出来るわ」
「煽てないで!というよりどうするのよこの状況!」

一応車のエンジンをいれ、すぐにでも発進できるようにはした。しかし紅魔館の外は湖。
にとりから水の上を走る操作は聞いたが、それ以外は何も聞かされていない。
そうこうしている内に、ナイト2001がこちらに向かってきた。何とかしなければ・・・

「・・・いた!」

霊夢はアクセルを踏み、シビックを急発進させる。ドアを開き、手を伸ばす。
ターゲットは、帰ろうとしていた河城にとり。服をむんずとつかんで、強引にシビックの中へと放り込んだ。

「ひゅい!?ちょ、ちょっと!いきなり何!?」
「残りの秘密、包み隠さず教えなさい」

にとりの方を一切向かず、低い声で問いかける霊夢。顔は見えないが、随分と殺気だった声だ。
素直に言わなければ本当に殺されるかもしれない。にとりは震えながら話す。

「そ、そのレバーを一番下に・・・でも趣味程度だから戦力にはならないと思う・・・」
「ありがと。・・・分かったから、そんなに恐がらなくても大丈夫よ」

流石に話し方が不味かったか。霊夢は慌ててにとりにフォローを入れる。
そして、先ほどの説明にもあったレバーを確認する。前を見ろ?紫がしてくれている。問題はない。
・・・P、R、N、D、2、1。その下に、陰陽玉のマークがあった。迷わずその部分までレバーを下ろす。

フロントガラスに文字が浮かび上がり、見慣れぬボタンが追加される。この間僅か0.1秒。
シビックが、『ちょっと人里までお出かけ』→『異変解決の相棒』に格上げされた瞬間である。

「画面に映ってる点が自分と相手。その下が積み込んである武器だよ!」
「これさえあればレミリアに対抗できるわね。・・・さぁ、かかって来なさい!」

シビックは紅魔館を飛び出し、湖へとテイクオフ。普通なら水に沈んでしまうだろう。
が、そこは河童の超技術。シビックは沈む事無く、悠々と水の上を走行している。
後ろのナイト2001も水面を走るように追走。その後ろに文とリリカが仲良く並走。

「8速フルオートマチックトランスミッションを装備したナイト2001からは逃げられないわよ!」

その言葉と同時に、グンと加速するナイト2001。あっという間にシビックの後ろに近付き、強烈な体当たりをお見舞いする。
シビックのバンパーがへこみ、車内には大きな揺れが起こる。一方のナイト2001には、一つの傷も付かなかった。

「うわぁ!このままじゃあやられちゃうよ!」
「簡単にやられるもんですか。にとり、武器を使わせてもらうわよ」

体当たりにも霊夢は冷静だった。湖を抜け、霊夢は改めてフロントガラスに映る武器詳細を確認する。
『地対空回転ミサイル-HINA』『対妖怪ハクタクランサー』『のびーるアーム』他多数。
・・・役に立ちそうとは思えないが、牽制程度なら十分使えそうだ。

「これでも食らいなさい!『対人地雷クレイモア』!」

霊夢がボタンを押すと、シビックの後方からボトリと、只←こんな箱が次々と落ちていく。
只<俺が来たからには、もう心配なんていらな

ドォーン!ドォーン!

爆発音が複数回聞こえたが、ナイト2001には全く異常がない。駄目だ。クレイモアでは有効なダメージを与えられない。

「異常なし。でも、やられっぱなしも癪に触るわ。
食らいなさい!スーパーウルトラハイパースペシャルミラクルビューティフルミサイル!!」

レミリアの素敵なネーミングセンスは目を瞑ろう。ナイト2001の後方から、何十発もの
ミサイルが発射され、シビック目がけて降り注ぐ。直撃弾は無かったが、爆発で周りは穴だらけだ。

「レミリアも子供ね。ムキになりすぎてるわ」
「貴女はまず現状をもう少し悲観するべきよ」
「お願い降ろして!私まだ死にたくない!!」
夜○月「駄目だこいつら・・・早く何とかしないと・・・」



* * * * *



「暇だ・・・」

人里の北物見櫓の上で、退屈そうに監視を行う藤原妹紅。
今日は人里で大規模なバザーが行われる為、怪しい人間や妖怪がいないか監視する仕事に当たっている。

何故妹紅がいるのか。このバザーの警備依頼は、他でもない上白沢慧音からの頼みであった。
「人手が足りないから手伝ってくれ」と言われ、軽く引き受けたのだが・・・。

「やる事がない」

この一言が全てを表していた。特に揉め事は起こらず、不審者も現れない。
平和でなによりだが、やる事がなければ退屈だ。
時折櫓を降りて暇つぶしをするが、見回りの仕事もあるので短時間で戻らないといけない。
こんなに退屈な仕事を引き受けなきゃよかった。今更後悔しても仕方ないのだが。

「・・・ん?」

そう思って遠くの景色を眺めていると、霧の湖方面から物凄いスピードで近づいてくる物体が二つ。
どうやら、前の白い物体が後ろの黒い物体に追われているようだ。
その黒い物体の後ろには、烏天狗と騒霊の姿が見えるが・・・何をしているんだ?

「不審だな。少し警告しに行くか・・・」

どう見ても怪しいと判断し、あの物体を止める為に妹紅は物見櫓を降りようとした。

ドォォォォン!
「うわーっ!!?」

いきなり物見櫓が爆発した。原因は黒い物体から発射された熱源が、櫓に直撃したからだ。
妹紅は爆風により吹っ飛ばされ、大体3メートル先にある古本屋の屋根を突き破りながら墜落した。

「な、何だぁ!?」
「父ちゃん!空から人が降ってきたよ!」

屋根を突き破る凄まじい衝撃だったが、幸いその家の住人と妹紅に怪我はなかった。
その後、慧音がこの事件をなかった事にしようとしたのだが、それはまた別の話である。



* * * * *



霊夢が運転するシビックは、もう間もなく、人里の入口に差し掛かろうとしていた。
レミリアが運転するナイト2001からの体当たりを何度も食らいながらも、まだ致命的なダメージは受けていない。
先程ナイト2001から放たれたミサイルが物見櫓に命中していたが、特に気にしない。

「霊夢。このまま人里へ進みなさい」
「・・・人里へ行けなくなるわよ」
「撮影には、多少の犠牲は付きまとうって言うじゃない」
「多少で済むのかしら」

ちなみに、にとりは泡を吐いて気絶している。さっきまで「降ろして!」と叫んでいたのが嘘のようだ。
とにかく今は、紫の言う事を信じるしかない。霊夢はアクセルを踏み、人里へと突入した。

「妖怪だー!妖怪が攻めてきたぞー!」
「女子供は家の中に避難させろ!迎撃準備はまだか!」
「見張りは何をやってたんだ!?」

バザー会場は、突如乱入した2台の車でパニックとなった。屋台が次々と破壊され、品物が砕け散る。
迎撃部隊による火矢や火縄銃も全く通用しない。歩兵槍による近接戦闘部隊に至っては、怖気づいて逃げ出す始末。

霊夢は出来るだけ怪我人を出さぬよう、クラクションを鳴らしながら目の前の道を確保していく。
一方のレミリアは、全く攻撃の手を緩めていない。火炎放射、機銃、体当たり。周囲の被害も拡大していった。

「あやややや・・・。レミリアさん、一切手加減してませんね」
「これ、誰が弁償するのかな?」

呑気に話す二人だが、攻撃がこっちにも飛んでくるので一生懸命回避している。
と、リリカがある事に気がついた。

「・・・ていうか、このまま直進したら阿求さんの家に突っ込んじゃうよ!」
「大丈夫ですよ。この先の十字路を曲がれば、ぶつからずに済みますし」
「だから、その十字路を曲がってないんだって!」
「曲がってないのですか・・・って、ええええええ!!?」

・・・この道を真っ直ぐ進んだ先に、人里一の豪邸を誇る稗田家がある。
もしも霊夢がこのまま速度を落とさないと、稗田家の外壁に激突してしまう。
そのため、文はその手前にある十字路で左か右に曲がるだろうと思い込んでいた。
万が一その角を曲がらなくても、この十字路の先には壁と並行して走る道がある。
だが、今の速度だと、確実に曲がる前に壁にぶつかってしまうのだ。

「このままだと衝突しちゃうよ!」
「あの速度で突っ込んだら・・・間違いなく三途の河行きですよ・・・!!」

もう駄目だ。このまま外壁に突っ込めば、霊夢や紫でも助からない。
幻想郷の中心人物を、まさかこんな形で失うなんて!
思わず文とリリカは、互いの役割を忘れて目を瞑った。そして・・・

「と、飛んだー!妖怪が空を飛んだぞー!!」

文とリリカの視界には、稗田家上空を鮮やかに飛ぶ、真っ白なシビックの姿があった。



* * * * *



シビックが空を飛ぶ寸前、霊夢は稗田家の外壁を見てもまだ、アクセルを踏み込んでいた。
十字路を曲がる手段もあったが、ブレーキを踏めばナイト2001の体当たりを食らってしまう。

「もしこのまま外壁にぶつかったら、私は霊夢と一緒に地獄行きかしら?」
「大丈夫よ。私はこの子を信じているわ」

絶体絶命の状態でも、霊夢はシビックを信頼していた。
・・・外壁まであと300メートル。霊夢はハンドルに力を込める。
呼吸を整え、霊夢はアクセルをこれでもかと踏み込んだ。

「・・・私の力と貴方の力を合わせれば、どんな困難にも耐えられる・・・!
お願い、飛んで!シビック!!」

その声に反応するかのように、車体が浮いた。稗田家の外壁を飛び越え、屋敷を飛び越えるシビック。
屋敷を完全に飛び越し、地面にゆっくりと落ちていく。乗っていた霊夢、紫、にとりに怪我はなかった。

・・・寸前で惨劇を回避したシビック。彼が回避した惨劇を、ナイト2001が味わう事となる。
シビックジャンプに気を取られたレミリアだが、即座に外壁を見て、ブレーキを力強く踏む。
だが、加速状態にあったナイト2001が止まるには、壁との距離があまりにも短すぎた。

「止まりなさい!何で止まらないのよ!止まってぇー!!」

レミリアの叫びも虚しく、ナイト2001は外壁に勢いよく衝突した。
外壁がブレーキになったが、それでも止まらず、さらに稗田家に突っ込んだ。
凄まじい音と共に和室を破壊し、台所を破壊し、居間の中間でようやく停止。
横転したナイト2001。その中で目を回すレミリア。
・・・レミリアが企んだもう一つの活動写真は、今ここで幕を下ろしたのである。



* * * * *



日が暮れ、空には一番星が輝いている。日が落ちて一段と寒くなり、まるで冬だと人妖が嘆く。
霊夢と紫は、大部分が損壊した稗田家へと足を運んでいた。
破壊された外壁には野次馬が集まり、先程まで活動写真の撮影に当っていた文も、今は文々。新聞の取材を行っている。

「ごめんなさい。撮影の為とはいえ、人里や貴女の家に被害を与えてしまって」
「いいえ。私は怒っていませんよ。怪我人が出てたら話は別ですが」

稗田家の主である稗田阿求は、こんな大損害を被ったにも関わらず怒っていなかった。
ただ、家を破壊したレミリアは正座させられていた。半ベソ状態でこちらを見ている。
ナイト2001は横転こそしていたが、恐ろしい事にまだ走れる状態であった。
彼の方は大丈夫だろう。ただ、後の引き取り手が誰になるかが問題だが。

「・・・さて」

阿求はレミリアの方を向く。彼女は深く反省しているようだった。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
ただ、その声だけが聞こえるだけだった。
と、阿求はレミリアの帽子を取り、頭をなでる。

「・・・確かに私の家はだいぶ壊れてしまいました。ですが、これも活動写真の為。
幻想郷の人々の記憶に残る作品の為なら、これくらいの被害は痛くありませんよ」

とてつもなく寛大な処分だった。稗田家には、幻想郷の歴史を代々記してきた求聞史記や
彼女が好んで聴く幺樂団の曲だってある。一歩間違えたら歴史に関わる大事件だが、
一つも損害がなかった事は、本当に奇跡としか言えないだろう。

「修復費は私が立て替えておきますわ」
「ええ。そうしてくれると有り難いです」

自分にも責任がある紫は、稗田家の修復金を全額負担すると約束した。
それ以外にも、人里での損害への補てんも行うらしい。相当な出費になる事は間違いないだろう。

「・・・色々あったけど、これで全ての撮影は終わりかしら?」
「まだラストシーンが残っているけど、もう日が落ちたから無理ね。
あ、夜空でもいいなら続けるけど」
「遠慮しておくわ」

稗田家を離れる霊夢。最後に大騒動があったものの、無事に活動写真の撮影は終了した。
後は文が撮影した内容を編集し、一つのテープにまとめれば全てが終わる。
テープが出来上がるのは1週間後だという。それまではまた平穏な日々だ。

「あ、そうだ」

神社に帰ろうとした霊夢は、何かを思い出して紫に話しかける。

「聞けなかったけど、結局もう一つの秘策って何だったのよ」
「ああ、あれはね・・・」

紫が語っていたもう一つの秘策。それは・・・



「・・・使わなかったから、忘れちゃったわ」
満面の笑みで、紫はそう言い切った。
・・・幻想郷に訪れる黒い闇。囚われた少女、八雲紫。

彼女を救い出す為、博麗霊夢は相棒の霧雨魔理沙と共に紅魔館へと向かう。

立ち塞がる強敵、非情なる罠。そして迎え撃つは、大魔王レミリア・スカーレット。

霊夢はレミリアを倒し、紫を救い出し、幻想郷を守る事は出来るのだろうか・・・?

幻想郷初の活動写真『博麗の奇跡』、人里にて上映決定!続報を待て!
同時上映『幻想郷の中心で\射命丸/を叫ぶ』もよろしく!



はい。活動写真編終了です。
レミリアが乗っていた車の元ネタは・・・言わんでも分かりますね。

・・・後だれか忘れてるような気が・・・。
誰だっけ・・・前編のオープニングで誰かがいたような・・・まあいいや。

*追記*
無限増殖の方法に誤りがあった為、挑戦あるのみにしておきました。
もう・・・ニートしてもいいよね・・・?
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コメント



0.320簡易評価
2.10名前が無い程度の能力削除
無限増殖でテンポよくボタンを押す?根本から間違ってます。知ったかぶりは無知の証ですよ。
10.50名前が無い程度の能力削除
>2
本編と全然関係ない所でそこまでムキになることも無いんじゃない?

ここから感想。
全体的に纏まってたと思う。
ただ、弾幕戦とは違った戦闘描写をもう少し細かく書いて欲しかったかな。
続編に期待。
11.90名前が無い程度の能力削除
ラ○ト君!貴方も幻想入りしてたのですか!?
つーか阿求優しいなwww