大広間には100人以上にも及ぶ使用人全員が集められ、着席していた。
咲夜を除いて一人の欠席者も見当たらない。
「既に、知っているかも知れない」
最上座のレミリアが立ち上がり、一言を発するなり辺りが静まりかえる。
レミリアは淀みなく前編の「咲夜転落→子供になったよ→不思議だね」の流れを説明した。みんなに優しく、分かりやすいあらすじ解説である。
本来ならば苦笑すべき展開であるが、誰も笑おうとはしない。
怖いのだ。
「事の詳細はこの通り。何とも不可解なことではあるが、一時的なものだと思われます。注意すべきことはまず、口裏を完璧に合わせること。まあ、これは咲夜、×××に話しかけなければ良いことなので特に問題はないでしょう。万が一、霧雨やら博霊に見つかることがあれば「新入りのメイドだ」と言ってとことんシラを切りなさい。もし、好奇心旺盛な彼らに咲夜が発見されればオモチャになってしまうこと請け合いです。非常にプライベートな問題であるから咲夜のためにも、私達のためにも大事にしないように」
レミリアはくわっと、犬歯を剥き出しにした。
「最後に、この件は一切他言無用。また、事態が進展した場合にはその都度、指示を与える。以上」
「朝ですよ」
部屋に帰ってきた小悪魔はさんざん咲夜の頬を触った後で揺さぶったが、中々起きる気配が無い。
「起きてください。朝ご飯です」
ようやく、咲夜は青い瞳を薄く開けて辺りを見回した。
「ここ、どこだっけ」
「昨日、言ったじゃないですか。紅魔館ですよ。朝ご飯に遅れますから、早く」
小悪魔は咲夜にブラウスを着せ、ボタンを掛けさせ、白いカチューシャを付けさせた。
しかし、手伝って貰ってやっとメイド服を着終えたところで咲夜はまた横になってしまった。
「ああ、もう。このお子様は」
「眠いよ」
このガキが咲夜でなければ、横面を蹴飛ばしてやりたいところだ。
一体どのような教育を受けてきたのだろうか。
「立ってくださいよ。ほら」
「やだ、おんぶ」
「もっと早く、早く。わあ、人が一杯」
咲夜を背負った小悪魔が荒い息を吐き、目を血走らせて一階大広間に入ってくる。
メイド達は、顔を引きつらせた。
様々なケースに応じて対処を考えていたが、あのメイド長がこのような姿になって小悪魔の背中ではしゃぎながら登場するのは予想外であったのだ。
「×××様、おはようございます」
「おはよう」
背中の咲夜が元気よく返事した。
広間のメイド全員の視線が、全て咲夜に集中している。
小悪魔が咲夜をいつもの席に座らせようとすると、レミリアが声をかけた。
「×××、こっちにいらっしゃい」
レミリアは自分とパチュリーの間に置かれた小さな椅子を指さした。
「その椅子じゃ、食べにくいでしょ」
「うん。小悪魔もこっちおいでよ」
「あ」
咲夜は小悪魔の手を引いて、席を移動した。
「どう? もう、みんなの顔を覚えられた?」
レミリアが柔らかな調子で話しかけると、咲夜は首を横に振った。
いつもは話し声がちらほらと聞こえる朝食時の広間であるが、今日に限ってレミリアの声だけが響く。言うまでもなく全員がこの上座の一角に耳を傾けているのだ。
厨房担当のメイドまでもが、柱の陰から様子を窺っていた。
「じゃあ大まかに教えるわね。うん。食べながらでいいから聞きなさい。私はレミリア、あっちが友達のパチュリー、時計を直してくれているわよ」
「はあい、よろしくね。×××」
明るい声でパチュリーが応えると、下座の方のメイドが数人スープを噴き出した。
「こっちが妹のフランドール」
「よろしくね」
フランドールは事件のことでばつが悪いのか、短く返事をしただけである。
「背中から、変なの出てる」
咲夜がフランドールの翼を指さすと、メイド達が一斉に青ざめた。
フランドールは憮然として答える。
「これは、翼よ。お嬢ちゃん」
「ふうん。変なのっ」
「あれが門番の美鈴、昨日も会ったわね。門のところに行くと遊んでくれるわ」
「よろしくお願いします。その、×××」
美鈴は咲夜を呼び捨てることにいささか抵抗感を隠せない。
ぎこちなく笑った。
小悪魔については、説明が必要ないと判断され省略された。
この6人は現在、およそ普段の紅魔館には似つかわしくない雰囲気を醸し出していた。
後に、とあるメイドが「まるで、居心地の悪い保育所のようであった」と述べていることからもこの時の異常さが伺える。
「ほら、×××。これ好きでしょう」
レミリアが、クロワッサンをかじっている咲夜の皿に薄切りトマトのモッツァレラチーズ載せを取ると、咲夜は首を傾げた。
「こんなの食べたことないよ?」
ぶわっ、と勢いよくレミリアの体から汗が噴き出す。
墓穴を掘ったのが広間の全員に伝わる緊張の一瞬だ。
レミリアは作り笑いをして咲夜の皿の上でくるくる指を回す。
「そ、そう。そうよね。病院にいたんだもんね? これは美味しいからお腹一杯食べなさい。そしたら遊びなさい。うん。それがいいわ。うふふふふ」
「歯を磨きましたね? ちゃんとブラウスを仕舞いましたね? じゃあ、遊びに行っていいですよ」
「うんっ」
「あ、待って。迷子になりますよ」
朝食を済ませて勢いよく部屋を飛び出した咲夜を追い掛けて、小悪魔も走る。
昨夜、大事件があった東側第一階段を一階まで駆け下り、長い廊下を左に突っ走り、3つ目の角を曲がって咲夜達は玄関ホールに到着した。
概して子供は外が大好きである。
外は実に良い快晴であった。
咲夜は一目散に門へと走った。
門の脇にはいつもの通り美鈴が佇み、その横で日傘片手のフランドールがオスカルのブラッシングをしていた。
「こんにちは」
「ああっ、犬だっ」
挨拶する美鈴を無視して、咲夜はオスカルに飛びついた。
のっそりと起き上がったオスカルは咲夜を見るなり驚いた顔をして、しきりに匂いを嗅いでいる。どうにも納得がいかぬ様子だ。
「ねえねえ。この犬、名前何て言うの? オス? メス?」
「オスカルちゃんです。オスですよ」
複雑な表情をするフランドールに代わって美鈴が答える。
オスカルもまた、複雑そうな表情をして首を傾げた。
「可愛いね」
小悪魔と美鈴は二歩半程離れた所に立ち、フランドールの怒りが爆発するのを恐れた。
咲夜はフランドールに聞いた。
「触っていい?」
「ここの門の外には出ないでくださいね」
小悪魔が釘を刺した。
「それと、あんまり外には長居出来ません。もう少ししたら図書館にでも行きましょう」
「どうして」
空を見上げると、今にも黒いのや赤いのが箒に乗って飛んで来るような気がするからだ。
どうにも落ち着かない。
「病院に帰りたくなかったら、言うことを聞いてください」
咲夜は納得したらしく、それ以上は口応えをしなかった。
「オスカル、お手」
オスカルは先の方が白い、太い前脚を咲夜の手に載せた。
今にもオスカルの大きな掌が咲夜の手の上からはみ出しそうである。
「可愛いでしょう」
釈然としない様子のフランドールがようやく口を開いた。
「うん。オスカル、お代わり」
オスカルは右前脚を引っ込め、逆の前脚を咲夜の手の上に載せた。
咲夜に頭を撫でられてオスカルは太い尻尾をばたばたと揺らし、土煙をまともに浴びたフランドールがむせる。
「バカ犬」
憮然とした表情のフランドールが呟くと、咲夜が首を傾げた。
「この犬はね、本当は近い内に捨てられるはずだったのよ」
フランドールが何の脈絡もなく咲夜に告げた。
美鈴と小悪魔は、はっと息を呑む。
「どうして? こんなに賢いのに」
「さあ。きっと私とオスカルが嫌いだから、追い出そうとしたのよ。でもね、もうその追い出そうとした人はいないの」
口を挟もうとした2人は、フランドールに睨まれて押し黙った。
「ふうん。良かったね、オスカル」
フランドールは苦虫を噛み潰したような表情になる。
そのまま小一時間が経ち、小悪魔はブラッシング中の咲夜へ館内に戻るよう促した。
「ええー、もっとオスカルと遊びたい」
「約束は約束です」
咲夜はオスカルを指さした。
「オスカルも中に入れちゃ駄目?」
咲夜を除いた全員の顔が曇る。
特にフランドールは眉間に皺を寄せた。
「綺麗に洗うから」
よくよく考えてみれば、オスカルの座敷犬化に反対していたのは咲夜だけであった。
今の紅魔館に反対意見を持つ者はいない。
「小悪魔さん、どうします」
美鈴が耳打ちした。
「いいんじゃないんですか。咲夜さんが、ああ言ってるんですよ」
綺麗に脚と肉球を洗われたオスカルが、小悪魔と咲夜に連れ立たれ紅魔館の中へと入って行く。
「フランドールも来なよ」
玄関ホールの方から声がかかったが、フランドールは無言で門番の脇に立ちつくし、門の前には2人が残された。
「行かないんですか?」
美鈴は恐る恐る尋ねる。
「釈然としない」
「あの犬、取られちゃうんじゃないですか? ひっ」
フランドールが地面を蹴り上げると、大きな穴が開いた。
「お手。お代わり。伏せ」
咲夜の私室に連れてこられたオスカルは伏せたまま、いかつい隈取り顔を床にべったりと付けた。
「よく出来ました」
咲夜に頭を撫でられてオスカルはまたもや尻尾を左右に揺らした。
オスカルはぺろり、と舌を出し真っ黒の目を細める。
「ねえ、何でオスカルは追い出されそうになったの?」
どうして、この子供は難しい質問ばかりするのだろうか。
脇にいた小悪魔は返答に困る。
「えっとですね、それは。何て言うかその人は犬嫌いだったんです」
「ふうん。オスカルの顔って恐そうだけど、よく見ると恐くないよね」
時計が11回、鐘を打った。
昼食が近い。
豪華な昼食を前にして咲夜は俯いていた。
「ごめんなさいね。オスカルは広間には流石に入れられないのよ、ほら、入り口のところでちゃんとお肉を食べているから」
いつもに増して隈の深いパチュリーが咲夜の頭を撫でた。
入り口のところに座ったオスカルは皿に入れられた大きな肉片を食べている。
「うん。私の時計、いつ直る?」
「今、本で調べながら直してるんだけどね。部品は全部揃っていたから、何とかなりそうよ」
レミリアが咲夜の皿にスパゲティを取り分けようとした時、後ろに控えていた金髪のメイドが「私がやりましょう」と進み出たが、振り返ったレミリアの表情を見るなりすぐに元の位置に下がった。
「バジルとセージのドレッシングどっちがいい?」
「うーん。よく分かんない」
どっ、とパチュリー、レミリア、小悪魔、美鈴が笑ったが、フランドールは笑わなかった。
以下、メイド達は非常にきまりが悪そうにナイフとフォークを動かしており、出来の悪いホームドラマを見せられているような一種の静けさに包まれている。
「×××は午前中、何して遊んだの?」
「今日はね、オスカルと美鈴の所に行って。それから、オスカルを中に連れてきてずっと小悪魔とオスカルと部屋で遊んでた」
「そう。それはよかったわねえ、後で私の部屋にいらっしゃい」
フランドールは、皮肉っぽく頬杖を付いて、ゆっくりと口を開いた。
「私は、可哀想なオスカルを心配しているの」
小悪魔はフランドールの気持ちが分からないでも無かった。
咲夜がオスカルを中に入れてから予想通り、誰もそれを反対しないのだ。
オスカルは肉を食べ終えて、以前フランドールが美鈴に買ってこさせた「歯磨きボーン」を両手で抱えて噛んでいる。
「ちょっと。そんなに強くやって大丈夫なの?」
懐中時計の外枠をペンチの様な物で曲げるパチュリーを見たレミリアが不安げに尋ねる。
「こうしないと直らないから」
机の上には懐中時計の仕組みを記された本が3冊と、ばらばらに分解された懐中時計の部品が並べられている。
レミリアは機械には疎い。大人しくパチュリーの向かいへと腰を下ろした。
「喋ったら、仕事の邪魔?」
「いえ」
「そう。仮に咲夜が戻ったとしてよ、彼女がこの事を覚えていなかった場合」
「ええ」
パチュリーは、猫背になって本の図面に食い入っている。
「教えてあげるべきだと思う?」
「私は何とも」
「もしかしたら、教えるべきじゃないのかも」
レミリアはパチュリーの頭を見つめたまま、話し続ける。
「私が言うのも何だけど、咲夜がこの事を知ったらショックを受けると思うから。「メイドが主人に迷惑をかけるなんて」とか考えて内心、落ち込むと思うの」
「じゃあ、そうすればいいじゃない。みんなに協力してもらって」
「協力してくれるかしら。今回の事件の原因の一端は私なのよ。私はフランの世話まで押しつけて、咲夜がそんなに疲れていたなんて知らなかったの」
レミリアは弱気な声を出した。
「だけど、自分だけ知らないまま隠された方が」
その時、図書館の扉が勢いよく開き、いくつかの足音が近づいて来た。
「待って、待って」
小悪魔の声も聞こえてくる。
2人は嫌な予感に駆られた。
特に先頭を走ってくるのが人間でないことを微妙な聴覚で聞き分けたレミリアは怪訝な顔をする。
四足歩行動物の足音がどんどん近づき、そして本棚の陰から咲夜を乗せたオスカルが現れた。
「わあっ」
慌てたパチュリーは机上の咲夜の遺品をぶちまけかける。
「はあ、はあ。やっと追いついた」
やや遅れて小悪魔も姿を見せた。
パチュリーは何を言うべきか考えをまとめきれぬまま、オスカルと咲夜に近づいて行きただ一言「立派な犬ね」と褒めた。
犬が立派なのももちろんだがフランドールやレミリアよりも2~3回り小さく、1メートルに達するかどうかさえ怪しい咲夜の小躯があってこその芸当である。
「すみません。止めようとしたんですが、どうにも追いつかなくて」
小悪魔がぺこぺこと頭を下げる。
少しやつれた様に見える彼女もまた疲れているのだろう。
「駄目よ、×××。図書館に犬は入れないの。今度からは入れちゃ駄目」
レミリアは子供に諭すような調子で、咲夜に注意した。
「はい。あっ、私の時計」
咲夜はオスカルから降りて机に近寄った。
オスカルは礼儀をわきまえているのか、伏せのまま動こうとしない。
「そう。時計よ」
「部品、一杯。こうなってたんだ」
「散らかしちゃ駄目よ。後はほとんど組み立てるだけだから、出来たら呼ぶわ」
「うん」
咲夜がオスカルに乗って、再び図書館から出て行く。
溜息を吐いてその後に付いていく小悪魔にレミリアは呼びかけた。
「もう少しの辛抱だから、頑張って」
オスカルに乗って館内を歩き回る咲夜を見たメイド達は、揃って目を反らした。
夕食後、咲夜は再びオスカルに乗って自室まで戻ってきた。
この頃になるとオスカルも流石に疲れたか、走らずにとぼとぼと歩いている。
「どうします。お風呂一人で入れますか?」
「うん」
「じゃあ、私はここで待っているので何かあったら呼んでください」
10分程して、小悪魔が風呂から上がった咲夜の髪を拭いていると、咲夜は頻繁にあくびをした。
「眠くなりました?」
咲夜は素直に頷いた。
「今日は一人で大丈夫ですね」
咲夜のベッドにオスカルが潜り込むのを確認した小悪魔は部屋から出ようとして呼び止められた。
「何ですか?」
「オスカル、ずっと飼っていい?」
小悪魔は意味が分からず、首を傾げる。
「飼えばいいじゃないですか。誰も止めやしませんよ」
小悪魔は皮肉をいくつも思いついたが、口には出さない。
「いや、フランドール怒ってるかなって」
意外な答えに小悪魔は驚く。
「どうして」
「私が犬を連れて行こうとしたら、怒ってたみたいだから」
小悪魔のどす黒く汚れきった脳味噌は意味を理解しかねる。
が、反射的に口が動く。
「じゃ、じゃあ一緒に飼えばいいじゃないですか? 一緒にお世話すれば」
「大丈夫かなあ」
「大丈夫ですよ」
「うん。明日頼んでみようっと」
流石に、フランドールもこのくらいでは咲夜に危害を加えないだろう。
小悪魔は早々に部屋の電気を消すと、「お休みなさい」と言ったきり足早に部屋を出た。
しかし、皮肉なもので咲夜の提案がフランドールに届く前に懐中時計は出来上がってしまう。
「え。もう出来たんですか」
早朝、小悪魔に用件を伝えに来たパチュリーは頷いた。
「それじゃ、咲夜さんを呼んでこないと」
小悪魔が部屋に入ると咲夜はオスカルを抱きかかえたまま、寝ていた。
小悪魔は衝動に任せて咲夜の頬をつつき回す。
この知らせは、同時に美鈴にも伝えられた。
一昨晩の関係者であるためだ。
苦手な朝早くに起こされたフランドールは、昨日のこともあり機嫌が悪かった。
自分を起こした相手が親しい美鈴でなく他のメイドであったなら殺してしまったかもしれない。
「懐中時計が直った? オスカルは?」
シベリアンハスキーの子供、オスカルが咲夜に連れて行かれて早一日。
存外に早く懐中時計が直ったのは幸運だった。
「分かりません、多分咲夜さんに付いて行ったんじゃないですか?」
「私も行く」
図書館へと走ったフランドールは、入り口の柱の所でメイド達に押さえつけられて唸るオスカルを見て喚いた。
「何してるの」
メイド連中がその声を聞くなり手を離し、押さえつける力が弱まってオスカルは立ち上がる。フランドールと美鈴を見て大分落ち着いた様子だ。
「オスカルに何してるの」
メイドは平身低頭する。
「すみません。図書館の中には犬を入れられないんですが、あの、×××様が中に入りました途端、その、オスカル様も中に入ろうとするもので」
「もういいよ。私が面倒見るから」
フランドールは苛立つ。
美鈴はさっさと扉を開けて、図書館へと入っていこうとする。
「行かないんですか。きっと、もうとっくに始まってますよ」
フランドールは首を横に振った。
「行く訳ないじゃん。オスカルを連れ戻しに来ただけだもん」
美鈴はそうですか、と言ったきり中へ入り、メイドもどこぞへと行ってしまい、廊下にはフランドールとオスカルが残された。
「さ、帰ろう。オスカル」
満足気なフランドールがオスカルの首を引っ張ったが、オスカルはお座りの体勢のまま動こうとしない。
オスカルは引っ張られるたびに首を振っていやいやした。
フランドールをやり場のない怒りが襲う。
「待ってたって、帰って来ないよ」
フランドールが叫んだが、犬に言葉が通じる筈もなくオスカルはさらに意固地になってカーペットに爪を食い込ませる。
昨日、一日中遊んでもらったのが楽しかったのかオスカルはすっかり咲夜に洗脳されてしまった。
フランドールの脳裏に、八頭身に戻った咲夜がオスカルをつまみ出す光景がありありと浮かぶ。
「ここにいたら、また外に出されちゃうよ」
オスカルは怒られるのが悲しいのか、尻尾をカーペットの上でくるりと丸めた。
「もう知らない」
フランドールは踵を返して、自室へと戻った。
途中オスカルが付いてきていないか、と何度も振り返ったが、オスカルは付いてこなかった。
パチュリーとレミリアと小悪魔と美鈴が見守る中、咲夜はゆっくりと目を覚ました。
「良かった、咲夜」
「良かった」
「咲夜さん」
レミリアが咲夜の手を取る。
ベッドから上体を起こした咲夜は必死に記憶を辿るが、どうにもこうにも犬を掴もうとして足を滑らせ、階段を落ち、踊り場に叩きつけられたところでぷっつり記憶の糸が途切れている。
しかし、もはや背中や胸、胃に痛みは無かった。
「ここは」
言いかけて、自分の居場所に思い当たった。
ここは図書館の中で、小悪魔やパチュリーが仮眠するベッドだ。
「何があったか思い出せる?」
パチュリーが尋ねる。
「確か」
しばし沈黙。
「私は、パチュリー様から薬を貰ってその帰り道にフランドール様と小競り合って階段を落ちて、それからは分かりません」
そういえば懐中時計が壊れる音がした。
ふと思い出した咲夜が胸ポケットに手を突っ込むと、いつも通りの懐中時計が出てきた。
きっかり夜の8時を指している。
「壊れてたから、直しといたのよ」
レミリアはばつが悪そうに黙っていたので、代わってパチュリーがこれまでのことを話す。
咲夜が階段から落ち子供還りしたことに始まり、小悪魔が面倒を見ていたこと、咲夜がオスカルを連れてきたこと、メイドは皆それらを知っていること。
パチュリーの説明は見事で、咲夜はこの空白の一日間の出来事をほぼ把握した。
話しが終わると、咲夜は静かに頷く。
「×××ですか」
「そうよ」
ちらりと、咲夜がレミリアを見るとやはりばつが悪そうな顔をして黙っている。
実に不可解な現象であったが、咲夜はごく自然に受け止めた。
普段から時間操作に触れていることもあって頭が潤滑に処理してくれたのだ。
「もしかしたら、懐中時計が私を守ってくれたのかもしれません」
「咲夜さん、本当にすみませんでした」
美鈴が謝って来たが、それを制して咲夜は頭を下げた。
「皆さんに迷惑をかけて本当に申し訳ありません。すぐに復帰します」
咲夜は深々と下げた頭を起こし立ち上がろうとしたが、レミリアに肩を掴まれた。
「大丈夫。今日は部屋で休みなさい」
「しかし」
パチュリーも頷いた。
「あなたが倒れてる間、レミィはもちろん。ずっとお世話していた小悪魔は心配しきりだったし、美鈴も妹様も心配していたのよ」
妹様と聞いて、咲夜の心臓が高鳴った。
「妹様も」
「そうよ」
一同、皆少しやつれたように見える。
咲夜は、特に疲れた表情をしている小悪魔に向き直った。
「小悪魔。本当にありがとう」
「あんまり無理しないでちょうだい。紅魔館はあなただけが支えているんじゃないの」
以前の咲夜からすれば見当違いも甚だしいパチュリーの意見であったが、咲夜の目は潤んだ。
「これから、妹様の身の周りのお世話は他のメイドが手伝ってくれるわ」
咲夜はひたすら頭を下げて立ち上がった。
そして、入り口に向かって歩いていると美鈴が追いかけてきた。
「どうしたの?」
「先日は本当に申し訳ありませんでした」
「もう、いいのよ」
美鈴はごにょごにょと口ごもった。
「実は、お願いがあるのですが」
「何?」
「あの、犬を一匹飼っていただけませんか。本当にいい犬なんです。彼もまた咲夜さんを心配していたんですよ。先ほど、パチュリー様が言っていたように昨日の咲夜さんは」
「私は何も覚えてない」
咲夜は美鈴を一喝し、入り口に向かって歩き続けた。
美鈴は並行して歩きながら何やら話し続けたが、その内諦めたようでパチュリー達の方へ戻って行ってしまった。
咲夜が図書館の外に出ると、ずっとそこに座っていたらしい大きなハスキー犬が咲夜の匂いを嗅ぐなり立ち上がって尻尾を振った。
何を期待しているのか、物言いたげな目でこちらを見つめるオスカルを無視して咲夜は自室へと早足に歩き続ける。
東側の階段まで長い廊下を歩き、階段を3階まで上り、角を曲がって自室までの道のり、オスカルは咲夜の少し後ろを保ってずっと付いてくる。
ふと立ち止まると、後ろの足音も止まった。
振り返ると、尻尾を垂らした犬がこちらを見ている。
そして、また歩き始めると付いてくる。
咲夜は自室に辿り着き、扉を開けた。
室内に入って扉を閉めようとするとやはり犬が廊下に座ったまま、閉じられていく扉の中を見つめている。
「何よ。犬」
咲夜が少し扉を開けてやると、オスカルは情けなく尻尾を丸めて入ってきた。そして、部屋の隅に行ったきり動かない。
咲夜はオスカルに構おうとせず疲れた頭を整理しようとベッドに横たわったが、すぐ傍にオスカルが寄って来た。
オスカルは何度も鼻を鳴らす。
咲夜が頭を掻いて起き上がると、オスカルの尻尾が揺れた。
「本当は」
咲夜は口を開いた。
オスカルの耳が動く。
「私は犬嫌いじゃない」
犬は意味が分かるのか、分からないのか首を傾げた。
「ごめん。もう怒ってない」
犬の喉がひいひいと音を立てる。
咲夜はオスカルの頭を撫でると、クローゼットからマフラーを取り出して首に巻き立ち上がった。
「来い。散歩に行こう。オスカル」
オスカルはハスキーボイスで鳴いて、咲夜に続き部屋を出た。
いつまで経っても、オスカルが帰ってこない。
やはり、外に出されてしまったんだろうか。
カーテンを開けて外を見ると、もう大分暗くなっていた。
フランドールは苛立ちのあまり、「ああ」と声を上げるとオスカルを捜しに行くべく、勢いよくベッドから立ち上がる。
その時、部屋の扉がノックされた。
「フランドール様」
驚いたことに咲夜の声である。
「何?」
フランドールは扉を開けようとせず、扉越しに会話する。
「この間のことは、申し訳ありませんでした。あの後、色々とパチュリー様から伺いました」
「今更、遅いよ」
「分かっています、私はもうフランドール様が犬を飼うことに一切反対しません」
フランドールの耳は扉を通して、咲夜の声に混じる大型動物の呼吸音を感じ取った。
「もしかして、オスカルそこにいる?」
「はい」
フランドールが扉を開けると、咲夜の足下に、申し訳なさそうな様子でオスカルが座っていた。
咲夜が頭を下げた。
「この後、散歩に連れて行く予定なのですが、よろしければ付き合っていただけませんか」
咲夜転落事件から、一週間後のことである。
咲夜が自室でオスカルのブラッシングをしていると、フランドールが駆け込んできた。
「咲夜っ」
咲夜はブラッシングの手を止め、オスカルが立ち上がって胴震いする。
「どうしました。フランドール様。まだブラッシングが終わりません」
「よく分からないけど。私達、門の所に急いで来いって」
咲夜はブラシを放り出してマフラーを取り、フランドールとオスカルを連れた門へと走っていく。
門の所には遠目からパチュリーとレミリアと小悪魔、美鈴が見えた。
他にも使用人が10人程集まり、何やら美鈴を中心にして小規模な人混みが出来上がっているようだ。
「どうしました」
「あ、咲夜」
レミリアが咲夜達に向かって手招きしたので、人混みをかき分けてその中心へと向かう。
「何ですか」
そこには美鈴がいた。
そして、その足下にはオスカルと同じような白黒模様の大型犬の子供が2匹座っていた。
これまたでかい。
「あっ」
「これ、どうしましょう」
いつの間にか、その脇にオスカルも座っている。
シベリアンハスキーが3匹並んで座っている姿は実に恐ろしい。
「可愛い。咲夜。これ飼いたい」
フランドールは薄汚れた犬の一匹に抱きついた。
犬は、嬉しそうに目を細めて尻尾を振る。
美鈴も恐る恐る、新参の一匹の頭を撫でる。
咲夜はオスカルの耳を片方、引っ張り上げた。
「これ、兄弟? そんなの聞いてないわよ。おい、こら」
オスカルは質問に答えず咲夜の顔を窺っていた。
レミリアやパチュリー、その他大勢のギャラリーも咲夜に注目している。
皆、一様に物言いたげである。
咲夜は、くっ、と何度も息を漏らしたがついに諦めた。
「ちゃんと、洗ってから中に入れなさい」
咲夜が背を向け館内へ戻って行くと、オスカルは口を大きく開き笑った。
咲夜を除いて一人の欠席者も見当たらない。
「既に、知っているかも知れない」
最上座のレミリアが立ち上がり、一言を発するなり辺りが静まりかえる。
レミリアは淀みなく前編の「咲夜転落→子供になったよ→不思議だね」の流れを説明した。みんなに優しく、分かりやすいあらすじ解説である。
本来ならば苦笑すべき展開であるが、誰も笑おうとはしない。
怖いのだ。
「事の詳細はこの通り。何とも不可解なことではあるが、一時的なものだと思われます。注意すべきことはまず、口裏を完璧に合わせること。まあ、これは咲夜、×××に話しかけなければ良いことなので特に問題はないでしょう。万が一、霧雨やら博霊に見つかることがあれば「新入りのメイドだ」と言ってとことんシラを切りなさい。もし、好奇心旺盛な彼らに咲夜が発見されればオモチャになってしまうこと請け合いです。非常にプライベートな問題であるから咲夜のためにも、私達のためにも大事にしないように」
レミリアはくわっと、犬歯を剥き出しにした。
「最後に、この件は一切他言無用。また、事態が進展した場合にはその都度、指示を与える。以上」
「朝ですよ」
部屋に帰ってきた小悪魔はさんざん咲夜の頬を触った後で揺さぶったが、中々起きる気配が無い。
「起きてください。朝ご飯です」
ようやく、咲夜は青い瞳を薄く開けて辺りを見回した。
「ここ、どこだっけ」
「昨日、言ったじゃないですか。紅魔館ですよ。朝ご飯に遅れますから、早く」
小悪魔は咲夜にブラウスを着せ、ボタンを掛けさせ、白いカチューシャを付けさせた。
しかし、手伝って貰ってやっとメイド服を着終えたところで咲夜はまた横になってしまった。
「ああ、もう。このお子様は」
「眠いよ」
このガキが咲夜でなければ、横面を蹴飛ばしてやりたいところだ。
一体どのような教育を受けてきたのだろうか。
「立ってくださいよ。ほら」
「やだ、おんぶ」
「もっと早く、早く。わあ、人が一杯」
咲夜を背負った小悪魔が荒い息を吐き、目を血走らせて一階大広間に入ってくる。
メイド達は、顔を引きつらせた。
様々なケースに応じて対処を考えていたが、あのメイド長がこのような姿になって小悪魔の背中ではしゃぎながら登場するのは予想外であったのだ。
「×××様、おはようございます」
「おはよう」
背中の咲夜が元気よく返事した。
広間のメイド全員の視線が、全て咲夜に集中している。
小悪魔が咲夜をいつもの席に座らせようとすると、レミリアが声をかけた。
「×××、こっちにいらっしゃい」
レミリアは自分とパチュリーの間に置かれた小さな椅子を指さした。
「その椅子じゃ、食べにくいでしょ」
「うん。小悪魔もこっちおいでよ」
「あ」
咲夜は小悪魔の手を引いて、席を移動した。
「どう? もう、みんなの顔を覚えられた?」
レミリアが柔らかな調子で話しかけると、咲夜は首を横に振った。
いつもは話し声がちらほらと聞こえる朝食時の広間であるが、今日に限ってレミリアの声だけが響く。言うまでもなく全員がこの上座の一角に耳を傾けているのだ。
厨房担当のメイドまでもが、柱の陰から様子を窺っていた。
「じゃあ大まかに教えるわね。うん。食べながらでいいから聞きなさい。私はレミリア、あっちが友達のパチュリー、時計を直してくれているわよ」
「はあい、よろしくね。×××」
明るい声でパチュリーが応えると、下座の方のメイドが数人スープを噴き出した。
「こっちが妹のフランドール」
「よろしくね」
フランドールは事件のことでばつが悪いのか、短く返事をしただけである。
「背中から、変なの出てる」
咲夜がフランドールの翼を指さすと、メイド達が一斉に青ざめた。
フランドールは憮然として答える。
「これは、翼よ。お嬢ちゃん」
「ふうん。変なのっ」
「あれが門番の美鈴、昨日も会ったわね。門のところに行くと遊んでくれるわ」
「よろしくお願いします。その、×××」
美鈴は咲夜を呼び捨てることにいささか抵抗感を隠せない。
ぎこちなく笑った。
小悪魔については、説明が必要ないと判断され省略された。
この6人は現在、およそ普段の紅魔館には似つかわしくない雰囲気を醸し出していた。
後に、とあるメイドが「まるで、居心地の悪い保育所のようであった」と述べていることからもこの時の異常さが伺える。
「ほら、×××。これ好きでしょう」
レミリアが、クロワッサンをかじっている咲夜の皿に薄切りトマトのモッツァレラチーズ載せを取ると、咲夜は首を傾げた。
「こんなの食べたことないよ?」
ぶわっ、と勢いよくレミリアの体から汗が噴き出す。
墓穴を掘ったのが広間の全員に伝わる緊張の一瞬だ。
レミリアは作り笑いをして咲夜の皿の上でくるくる指を回す。
「そ、そう。そうよね。病院にいたんだもんね? これは美味しいからお腹一杯食べなさい。そしたら遊びなさい。うん。それがいいわ。うふふふふ」
「歯を磨きましたね? ちゃんとブラウスを仕舞いましたね? じゃあ、遊びに行っていいですよ」
「うんっ」
「あ、待って。迷子になりますよ」
朝食を済ませて勢いよく部屋を飛び出した咲夜を追い掛けて、小悪魔も走る。
昨夜、大事件があった東側第一階段を一階まで駆け下り、長い廊下を左に突っ走り、3つ目の角を曲がって咲夜達は玄関ホールに到着した。
概して子供は外が大好きである。
外は実に良い快晴であった。
咲夜は一目散に門へと走った。
門の脇にはいつもの通り美鈴が佇み、その横で日傘片手のフランドールがオスカルのブラッシングをしていた。
「こんにちは」
「ああっ、犬だっ」
挨拶する美鈴を無視して、咲夜はオスカルに飛びついた。
のっそりと起き上がったオスカルは咲夜を見るなり驚いた顔をして、しきりに匂いを嗅いでいる。どうにも納得がいかぬ様子だ。
「ねえねえ。この犬、名前何て言うの? オス? メス?」
「オスカルちゃんです。オスですよ」
複雑な表情をするフランドールに代わって美鈴が答える。
オスカルもまた、複雑そうな表情をして首を傾げた。
「可愛いね」
小悪魔と美鈴は二歩半程離れた所に立ち、フランドールの怒りが爆発するのを恐れた。
咲夜はフランドールに聞いた。
「触っていい?」
「ここの門の外には出ないでくださいね」
小悪魔が釘を刺した。
「それと、あんまり外には長居出来ません。もう少ししたら図書館にでも行きましょう」
「どうして」
空を見上げると、今にも黒いのや赤いのが箒に乗って飛んで来るような気がするからだ。
どうにも落ち着かない。
「病院に帰りたくなかったら、言うことを聞いてください」
咲夜は納得したらしく、それ以上は口応えをしなかった。
「オスカル、お手」
オスカルは先の方が白い、太い前脚を咲夜の手に載せた。
今にもオスカルの大きな掌が咲夜の手の上からはみ出しそうである。
「可愛いでしょう」
釈然としない様子のフランドールがようやく口を開いた。
「うん。オスカル、お代わり」
オスカルは右前脚を引っ込め、逆の前脚を咲夜の手の上に載せた。
咲夜に頭を撫でられてオスカルは太い尻尾をばたばたと揺らし、土煙をまともに浴びたフランドールがむせる。
「バカ犬」
憮然とした表情のフランドールが呟くと、咲夜が首を傾げた。
「この犬はね、本当は近い内に捨てられるはずだったのよ」
フランドールが何の脈絡もなく咲夜に告げた。
美鈴と小悪魔は、はっと息を呑む。
「どうして? こんなに賢いのに」
「さあ。きっと私とオスカルが嫌いだから、追い出そうとしたのよ。でもね、もうその追い出そうとした人はいないの」
口を挟もうとした2人は、フランドールに睨まれて押し黙った。
「ふうん。良かったね、オスカル」
フランドールは苦虫を噛み潰したような表情になる。
そのまま小一時間が経ち、小悪魔はブラッシング中の咲夜へ館内に戻るよう促した。
「ええー、もっとオスカルと遊びたい」
「約束は約束です」
咲夜はオスカルを指さした。
「オスカルも中に入れちゃ駄目?」
咲夜を除いた全員の顔が曇る。
特にフランドールは眉間に皺を寄せた。
「綺麗に洗うから」
よくよく考えてみれば、オスカルの座敷犬化に反対していたのは咲夜だけであった。
今の紅魔館に反対意見を持つ者はいない。
「小悪魔さん、どうします」
美鈴が耳打ちした。
「いいんじゃないんですか。咲夜さんが、ああ言ってるんですよ」
綺麗に脚と肉球を洗われたオスカルが、小悪魔と咲夜に連れ立たれ紅魔館の中へと入って行く。
「フランドールも来なよ」
玄関ホールの方から声がかかったが、フランドールは無言で門番の脇に立ちつくし、門の前には2人が残された。
「行かないんですか?」
美鈴は恐る恐る尋ねる。
「釈然としない」
「あの犬、取られちゃうんじゃないですか? ひっ」
フランドールが地面を蹴り上げると、大きな穴が開いた。
「お手。お代わり。伏せ」
咲夜の私室に連れてこられたオスカルは伏せたまま、いかつい隈取り顔を床にべったりと付けた。
「よく出来ました」
咲夜に頭を撫でられてオスカルはまたもや尻尾を左右に揺らした。
オスカルはぺろり、と舌を出し真っ黒の目を細める。
「ねえ、何でオスカルは追い出されそうになったの?」
どうして、この子供は難しい質問ばかりするのだろうか。
脇にいた小悪魔は返答に困る。
「えっとですね、それは。何て言うかその人は犬嫌いだったんです」
「ふうん。オスカルの顔って恐そうだけど、よく見ると恐くないよね」
時計が11回、鐘を打った。
昼食が近い。
豪華な昼食を前にして咲夜は俯いていた。
「ごめんなさいね。オスカルは広間には流石に入れられないのよ、ほら、入り口のところでちゃんとお肉を食べているから」
いつもに増して隈の深いパチュリーが咲夜の頭を撫でた。
入り口のところに座ったオスカルは皿に入れられた大きな肉片を食べている。
「うん。私の時計、いつ直る?」
「今、本で調べながら直してるんだけどね。部品は全部揃っていたから、何とかなりそうよ」
レミリアが咲夜の皿にスパゲティを取り分けようとした時、後ろに控えていた金髪のメイドが「私がやりましょう」と進み出たが、振り返ったレミリアの表情を見るなりすぐに元の位置に下がった。
「バジルとセージのドレッシングどっちがいい?」
「うーん。よく分かんない」
どっ、とパチュリー、レミリア、小悪魔、美鈴が笑ったが、フランドールは笑わなかった。
以下、メイド達は非常にきまりが悪そうにナイフとフォークを動かしており、出来の悪いホームドラマを見せられているような一種の静けさに包まれている。
「×××は午前中、何して遊んだの?」
「今日はね、オスカルと美鈴の所に行って。それから、オスカルを中に連れてきてずっと小悪魔とオスカルと部屋で遊んでた」
「そう。それはよかったわねえ、後で私の部屋にいらっしゃい」
フランドールは、皮肉っぽく頬杖を付いて、ゆっくりと口を開いた。
「私は、可哀想なオスカルを心配しているの」
小悪魔はフランドールの気持ちが分からないでも無かった。
咲夜がオスカルを中に入れてから予想通り、誰もそれを反対しないのだ。
オスカルは肉を食べ終えて、以前フランドールが美鈴に買ってこさせた「歯磨きボーン」を両手で抱えて噛んでいる。
「ちょっと。そんなに強くやって大丈夫なの?」
懐中時計の外枠をペンチの様な物で曲げるパチュリーを見たレミリアが不安げに尋ねる。
「こうしないと直らないから」
机の上には懐中時計の仕組みを記された本が3冊と、ばらばらに分解された懐中時計の部品が並べられている。
レミリアは機械には疎い。大人しくパチュリーの向かいへと腰を下ろした。
「喋ったら、仕事の邪魔?」
「いえ」
「そう。仮に咲夜が戻ったとしてよ、彼女がこの事を覚えていなかった場合」
「ええ」
パチュリーは、猫背になって本の図面に食い入っている。
「教えてあげるべきだと思う?」
「私は何とも」
「もしかしたら、教えるべきじゃないのかも」
レミリアはパチュリーの頭を見つめたまま、話し続ける。
「私が言うのも何だけど、咲夜がこの事を知ったらショックを受けると思うから。「メイドが主人に迷惑をかけるなんて」とか考えて内心、落ち込むと思うの」
「じゃあ、そうすればいいじゃない。みんなに協力してもらって」
「協力してくれるかしら。今回の事件の原因の一端は私なのよ。私はフランの世話まで押しつけて、咲夜がそんなに疲れていたなんて知らなかったの」
レミリアは弱気な声を出した。
「だけど、自分だけ知らないまま隠された方が」
その時、図書館の扉が勢いよく開き、いくつかの足音が近づいて来た。
「待って、待って」
小悪魔の声も聞こえてくる。
2人は嫌な予感に駆られた。
特に先頭を走ってくるのが人間でないことを微妙な聴覚で聞き分けたレミリアは怪訝な顔をする。
四足歩行動物の足音がどんどん近づき、そして本棚の陰から咲夜を乗せたオスカルが現れた。
「わあっ」
慌てたパチュリーは机上の咲夜の遺品をぶちまけかける。
「はあ、はあ。やっと追いついた」
やや遅れて小悪魔も姿を見せた。
パチュリーは何を言うべきか考えをまとめきれぬまま、オスカルと咲夜に近づいて行きただ一言「立派な犬ね」と褒めた。
犬が立派なのももちろんだがフランドールやレミリアよりも2~3回り小さく、1メートルに達するかどうかさえ怪しい咲夜の小躯があってこその芸当である。
「すみません。止めようとしたんですが、どうにも追いつかなくて」
小悪魔がぺこぺこと頭を下げる。
少しやつれた様に見える彼女もまた疲れているのだろう。
「駄目よ、×××。図書館に犬は入れないの。今度からは入れちゃ駄目」
レミリアは子供に諭すような調子で、咲夜に注意した。
「はい。あっ、私の時計」
咲夜はオスカルから降りて机に近寄った。
オスカルは礼儀をわきまえているのか、伏せのまま動こうとしない。
「そう。時計よ」
「部品、一杯。こうなってたんだ」
「散らかしちゃ駄目よ。後はほとんど組み立てるだけだから、出来たら呼ぶわ」
「うん」
咲夜がオスカルに乗って、再び図書館から出て行く。
溜息を吐いてその後に付いていく小悪魔にレミリアは呼びかけた。
「もう少しの辛抱だから、頑張って」
オスカルに乗って館内を歩き回る咲夜を見たメイド達は、揃って目を反らした。
夕食後、咲夜は再びオスカルに乗って自室まで戻ってきた。
この頃になるとオスカルも流石に疲れたか、走らずにとぼとぼと歩いている。
「どうします。お風呂一人で入れますか?」
「うん」
「じゃあ、私はここで待っているので何かあったら呼んでください」
10分程して、小悪魔が風呂から上がった咲夜の髪を拭いていると、咲夜は頻繁にあくびをした。
「眠くなりました?」
咲夜は素直に頷いた。
「今日は一人で大丈夫ですね」
咲夜のベッドにオスカルが潜り込むのを確認した小悪魔は部屋から出ようとして呼び止められた。
「何ですか?」
「オスカル、ずっと飼っていい?」
小悪魔は意味が分からず、首を傾げる。
「飼えばいいじゃないですか。誰も止めやしませんよ」
小悪魔は皮肉をいくつも思いついたが、口には出さない。
「いや、フランドール怒ってるかなって」
意外な答えに小悪魔は驚く。
「どうして」
「私が犬を連れて行こうとしたら、怒ってたみたいだから」
小悪魔のどす黒く汚れきった脳味噌は意味を理解しかねる。
が、反射的に口が動く。
「じゃ、じゃあ一緒に飼えばいいじゃないですか? 一緒にお世話すれば」
「大丈夫かなあ」
「大丈夫ですよ」
「うん。明日頼んでみようっと」
流石に、フランドールもこのくらいでは咲夜に危害を加えないだろう。
小悪魔は早々に部屋の電気を消すと、「お休みなさい」と言ったきり足早に部屋を出た。
しかし、皮肉なもので咲夜の提案がフランドールに届く前に懐中時計は出来上がってしまう。
「え。もう出来たんですか」
早朝、小悪魔に用件を伝えに来たパチュリーは頷いた。
「それじゃ、咲夜さんを呼んでこないと」
小悪魔が部屋に入ると咲夜はオスカルを抱きかかえたまま、寝ていた。
小悪魔は衝動に任せて咲夜の頬をつつき回す。
この知らせは、同時に美鈴にも伝えられた。
一昨晩の関係者であるためだ。
苦手な朝早くに起こされたフランドールは、昨日のこともあり機嫌が悪かった。
自分を起こした相手が親しい美鈴でなく他のメイドであったなら殺してしまったかもしれない。
「懐中時計が直った? オスカルは?」
シベリアンハスキーの子供、オスカルが咲夜に連れて行かれて早一日。
存外に早く懐中時計が直ったのは幸運だった。
「分かりません、多分咲夜さんに付いて行ったんじゃないですか?」
「私も行く」
図書館へと走ったフランドールは、入り口の柱の所でメイド達に押さえつけられて唸るオスカルを見て喚いた。
「何してるの」
メイド連中がその声を聞くなり手を離し、押さえつける力が弱まってオスカルは立ち上がる。フランドールと美鈴を見て大分落ち着いた様子だ。
「オスカルに何してるの」
メイドは平身低頭する。
「すみません。図書館の中には犬を入れられないんですが、あの、×××様が中に入りました途端、その、オスカル様も中に入ろうとするもので」
「もういいよ。私が面倒見るから」
フランドールは苛立つ。
美鈴はさっさと扉を開けて、図書館へと入っていこうとする。
「行かないんですか。きっと、もうとっくに始まってますよ」
フランドールは首を横に振った。
「行く訳ないじゃん。オスカルを連れ戻しに来ただけだもん」
美鈴はそうですか、と言ったきり中へ入り、メイドもどこぞへと行ってしまい、廊下にはフランドールとオスカルが残された。
「さ、帰ろう。オスカル」
満足気なフランドールがオスカルの首を引っ張ったが、オスカルはお座りの体勢のまま動こうとしない。
オスカルは引っ張られるたびに首を振っていやいやした。
フランドールをやり場のない怒りが襲う。
「待ってたって、帰って来ないよ」
フランドールが叫んだが、犬に言葉が通じる筈もなくオスカルはさらに意固地になってカーペットに爪を食い込ませる。
昨日、一日中遊んでもらったのが楽しかったのかオスカルはすっかり咲夜に洗脳されてしまった。
フランドールの脳裏に、八頭身に戻った咲夜がオスカルをつまみ出す光景がありありと浮かぶ。
「ここにいたら、また外に出されちゃうよ」
オスカルは怒られるのが悲しいのか、尻尾をカーペットの上でくるりと丸めた。
「もう知らない」
フランドールは踵を返して、自室へと戻った。
途中オスカルが付いてきていないか、と何度も振り返ったが、オスカルは付いてこなかった。
パチュリーとレミリアと小悪魔と美鈴が見守る中、咲夜はゆっくりと目を覚ました。
「良かった、咲夜」
「良かった」
「咲夜さん」
レミリアが咲夜の手を取る。
ベッドから上体を起こした咲夜は必死に記憶を辿るが、どうにもこうにも犬を掴もうとして足を滑らせ、階段を落ち、踊り場に叩きつけられたところでぷっつり記憶の糸が途切れている。
しかし、もはや背中や胸、胃に痛みは無かった。
「ここは」
言いかけて、自分の居場所に思い当たった。
ここは図書館の中で、小悪魔やパチュリーが仮眠するベッドだ。
「何があったか思い出せる?」
パチュリーが尋ねる。
「確か」
しばし沈黙。
「私は、パチュリー様から薬を貰ってその帰り道にフランドール様と小競り合って階段を落ちて、それからは分かりません」
そういえば懐中時計が壊れる音がした。
ふと思い出した咲夜が胸ポケットに手を突っ込むと、いつも通りの懐中時計が出てきた。
きっかり夜の8時を指している。
「壊れてたから、直しといたのよ」
レミリアはばつが悪そうに黙っていたので、代わってパチュリーがこれまでのことを話す。
咲夜が階段から落ち子供還りしたことに始まり、小悪魔が面倒を見ていたこと、咲夜がオスカルを連れてきたこと、メイドは皆それらを知っていること。
パチュリーの説明は見事で、咲夜はこの空白の一日間の出来事をほぼ把握した。
話しが終わると、咲夜は静かに頷く。
「×××ですか」
「そうよ」
ちらりと、咲夜がレミリアを見るとやはりばつが悪そうな顔をして黙っている。
実に不可解な現象であったが、咲夜はごく自然に受け止めた。
普段から時間操作に触れていることもあって頭が潤滑に処理してくれたのだ。
「もしかしたら、懐中時計が私を守ってくれたのかもしれません」
「咲夜さん、本当にすみませんでした」
美鈴が謝って来たが、それを制して咲夜は頭を下げた。
「皆さんに迷惑をかけて本当に申し訳ありません。すぐに復帰します」
咲夜は深々と下げた頭を起こし立ち上がろうとしたが、レミリアに肩を掴まれた。
「大丈夫。今日は部屋で休みなさい」
「しかし」
パチュリーも頷いた。
「あなたが倒れてる間、レミィはもちろん。ずっとお世話していた小悪魔は心配しきりだったし、美鈴も妹様も心配していたのよ」
妹様と聞いて、咲夜の心臓が高鳴った。
「妹様も」
「そうよ」
一同、皆少しやつれたように見える。
咲夜は、特に疲れた表情をしている小悪魔に向き直った。
「小悪魔。本当にありがとう」
「あんまり無理しないでちょうだい。紅魔館はあなただけが支えているんじゃないの」
以前の咲夜からすれば見当違いも甚だしいパチュリーの意見であったが、咲夜の目は潤んだ。
「これから、妹様の身の周りのお世話は他のメイドが手伝ってくれるわ」
咲夜はひたすら頭を下げて立ち上がった。
そして、入り口に向かって歩いていると美鈴が追いかけてきた。
「どうしたの?」
「先日は本当に申し訳ありませんでした」
「もう、いいのよ」
美鈴はごにょごにょと口ごもった。
「実は、お願いがあるのですが」
「何?」
「あの、犬を一匹飼っていただけませんか。本当にいい犬なんです。彼もまた咲夜さんを心配していたんですよ。先ほど、パチュリー様が言っていたように昨日の咲夜さんは」
「私は何も覚えてない」
咲夜は美鈴を一喝し、入り口に向かって歩き続けた。
美鈴は並行して歩きながら何やら話し続けたが、その内諦めたようでパチュリー達の方へ戻って行ってしまった。
咲夜が図書館の外に出ると、ずっとそこに座っていたらしい大きなハスキー犬が咲夜の匂いを嗅ぐなり立ち上がって尻尾を振った。
何を期待しているのか、物言いたげな目でこちらを見つめるオスカルを無視して咲夜は自室へと早足に歩き続ける。
東側の階段まで長い廊下を歩き、階段を3階まで上り、角を曲がって自室までの道のり、オスカルは咲夜の少し後ろを保ってずっと付いてくる。
ふと立ち止まると、後ろの足音も止まった。
振り返ると、尻尾を垂らした犬がこちらを見ている。
そして、また歩き始めると付いてくる。
咲夜は自室に辿り着き、扉を開けた。
室内に入って扉を閉めようとするとやはり犬が廊下に座ったまま、閉じられていく扉の中を見つめている。
「何よ。犬」
咲夜が少し扉を開けてやると、オスカルは情けなく尻尾を丸めて入ってきた。そして、部屋の隅に行ったきり動かない。
咲夜はオスカルに構おうとせず疲れた頭を整理しようとベッドに横たわったが、すぐ傍にオスカルが寄って来た。
オスカルは何度も鼻を鳴らす。
咲夜が頭を掻いて起き上がると、オスカルの尻尾が揺れた。
「本当は」
咲夜は口を開いた。
オスカルの耳が動く。
「私は犬嫌いじゃない」
犬は意味が分かるのか、分からないのか首を傾げた。
「ごめん。もう怒ってない」
犬の喉がひいひいと音を立てる。
咲夜はオスカルの頭を撫でると、クローゼットからマフラーを取り出して首に巻き立ち上がった。
「来い。散歩に行こう。オスカル」
オスカルはハスキーボイスで鳴いて、咲夜に続き部屋を出た。
いつまで経っても、オスカルが帰ってこない。
やはり、外に出されてしまったんだろうか。
カーテンを開けて外を見ると、もう大分暗くなっていた。
フランドールは苛立ちのあまり、「ああ」と声を上げるとオスカルを捜しに行くべく、勢いよくベッドから立ち上がる。
その時、部屋の扉がノックされた。
「フランドール様」
驚いたことに咲夜の声である。
「何?」
フランドールは扉を開けようとせず、扉越しに会話する。
「この間のことは、申し訳ありませんでした。あの後、色々とパチュリー様から伺いました」
「今更、遅いよ」
「分かっています、私はもうフランドール様が犬を飼うことに一切反対しません」
フランドールの耳は扉を通して、咲夜の声に混じる大型動物の呼吸音を感じ取った。
「もしかして、オスカルそこにいる?」
「はい」
フランドールが扉を開けると、咲夜の足下に、申し訳なさそうな様子でオスカルが座っていた。
咲夜が頭を下げた。
「この後、散歩に連れて行く予定なのですが、よろしければ付き合っていただけませんか」
咲夜転落事件から、一週間後のことである。
咲夜が自室でオスカルのブラッシングをしていると、フランドールが駆け込んできた。
「咲夜っ」
咲夜はブラッシングの手を止め、オスカルが立ち上がって胴震いする。
「どうしました。フランドール様。まだブラッシングが終わりません」
「よく分からないけど。私達、門の所に急いで来いって」
咲夜はブラシを放り出してマフラーを取り、フランドールとオスカルを連れた門へと走っていく。
門の所には遠目からパチュリーとレミリアと小悪魔、美鈴が見えた。
他にも使用人が10人程集まり、何やら美鈴を中心にして小規模な人混みが出来上がっているようだ。
「どうしました」
「あ、咲夜」
レミリアが咲夜達に向かって手招きしたので、人混みをかき分けてその中心へと向かう。
「何ですか」
そこには美鈴がいた。
そして、その足下にはオスカルと同じような白黒模様の大型犬の子供が2匹座っていた。
これまたでかい。
「あっ」
「これ、どうしましょう」
いつの間にか、その脇にオスカルも座っている。
シベリアンハスキーが3匹並んで座っている姿は実に恐ろしい。
「可愛い。咲夜。これ飼いたい」
フランドールは薄汚れた犬の一匹に抱きついた。
犬は、嬉しそうに目を細めて尻尾を振る。
美鈴も恐る恐る、新参の一匹の頭を撫でる。
咲夜はオスカルの耳を片方、引っ張り上げた。
「これ、兄弟? そんなの聞いてないわよ。おい、こら」
オスカルは質問に答えず咲夜の顔を窺っていた。
レミリアやパチュリー、その他大勢のギャラリーも咲夜に注目している。
皆、一様に物言いたげである。
咲夜は、くっ、と何度も息を漏らしたがついに諦めた。
「ちゃんと、洗ってから中に入れなさい」
咲夜が背を向け館内へ戻って行くと、オスカルは口を大きく開き笑った。
やはりようじょはいいものだ
なんにもつながりなく終わったもので拍子抜けしたかんじでした
良いテンポで話が進んでいたと思ったのですが、見たまんまの子供じゃないにせよ、妹様はもっと怒っててもいい気がする。
けど、途中もっとボリュームがあっても良かったような…
やや盛り上がりとに欠けるいうか>>12様と同じく、
それぞれのパーツが上手く噛み合っていないような印象を受けました。
たぶん事件が短い時間で終わってしまったせいで、
ここからってところでぶつ切りにされた気分になったんだと思います。
つまりもっと幼な咲夜さんの可愛さを堪能させ(ry
途中の出来損ないホームドラマ的気まずい雰囲気とか、
その辺がとても気に入ったのでこの点で。
近親憎悪とか昔いつも一緒に居た犬が・・・みたいな
でも全体的に好きでした。拗ねた妹様いいね。
1つ2つぐらいだったら、演出ですんだんですけど、気になる所が多すぎます。
でもいいなこれ
もうちょい山場とかが欲しかったです。
オスカルがかわいかったw
なんというかみんな幻想郷のほんわかしたムードを感じさせてくれませんでした
みんな心が未熟というか黒いというか
文章自体の構成だのなんだのはちゃんとしてたと思うし、考えさせられる点もありました。
芸風や方針は人それぞれです。
したがってこれもエゴではあります。
ですが、結構多くの人にとっては嫌だと感じる書き方だなぁ、と感じました。
正直自分もくそ犬という単語が出てきたときに見るのをやめる気にもなってしまいました。
長駄文失礼しました。
キャラの性格の根拠なんかもいらないよ
見えないからこそ想像力は膨らむんだよ