Coolier - 新生・東方創想話

雨色いろいろ

2008/10/18 21:47:49
最終更新
サイズ
44.76KB
ページ数
1
閲覧数
1616
評価数
4/44
POINT
2130
Rate
9.58
「秋、ねぇ」
 秋深し。隣は何をする人ぞ。
 そんなフレーズが頭の中を、実に風流な音色でもって流れていく。
 秋。
 幻想郷にも四季の音色は鳴り響き、移ろいゆく日々の中、最も色鮮やかさの目立つ瞬間が、まさしく今である。
 野山に分け入れば博麗の巫女を五分とたたずに目撃することが可能なこの季節。世間一般ではいくつもの『秋』がある中、ここ、紅魔館に主にある秋は、以下の三つである。
「よい……しょ、よい……しょ……あぅあっ!?」
 どざばー、と床の上に、持っていた本をぶちまけ、大慌てでそれをかき集める赤い髪の、最近、『あなたのどの辺りが悪魔なんですか?』『ほら、しっぽと耳が悪魔っぽいじゃないですか?』と、ほんわか笑顔で語る司書が仕える相手が堪能する読書の秋。
「いらっしゃいませ~」
「せ、先日、予約した……あ、あの、えっと……」
「いらっしゃいませ、幽香さま」
「は、はぁ!? 幽香!?
 誰よ、それ! わ、私は別に、その、て、敵情視察に来たとかそんなんじゃないのよ! ほんとよ!? ほんとだからね!?」
「さあさあ、奥にどうぞ」
 わいわいわめく厄介な――主に、素直じゃない的な意味で――客を連れて、奥の扉の向こうに消えていくメイドが一人。
 ここ、紅魔館がしばらく前から手がけている謎のレストラン業(近頃、それが本業になりつつある)に代表される食欲の秋。
「ねぇねぇ、おなかすいたー、おなかすいたー。だれかおかしー、おやつー」
 ちょうど、それを代表するかのような小さなお嬢様が、虹色のきれいな羽をぱたぱたさせつつ、声を上げて、彼女の視界を通り過ぎていく。実に微笑ましいその光景に、「フランドール様におやつを」と、彼女。
 その彼女の背後――ちょうど、彼女の影がゆらりとゆらめき、影の持ち主が一歩も動いていないというのにどこぞへと去っていく不思議な光景がそこにあったのだが、気にしてはいけないのでそれはさておこう。
 そして、もう一つの秋が、これ。
「お姉様ー、私の愛を受け取ってー!」
「わかったわー! あなたの愛に挑んであげるわー!」
 ずぎゃぉぉぉぉぉぉん、というスペカ特有の展開音が響き渡る紅魔館の空で弾幕勝負にいそしむメイド達が堪能する、それすなわち恋の秋。
 ちなみに、あの光景が何かおかしいと思うなかれ。
 最近、ここ、幻想郷では愛の告白に対してスペカを編み出すというのが恒例となりつつあるのだ。どこぞの虹色怪光線魔女が、その得意スペカに『恋』などという名前を付けているのがそれに影響しているのではないかとの見解が、一般的な知識人の言葉である。
「きゃー!」
 ぴちゅーん、という音が響き渡る。どうやら、見事、『撃墜』されてしまったらしい。
「やった、やったわ! ついに愛するお姉さまを、私の愛の弾幕で撃墜したわっ!」
「だがまだ甘い! あなたの愛は、まだ私の心に届いていないわ!
 さあ、次なる弾幕を見せなさい!」
 と思ったら食らいボムだったらしい。
 意中の人を手に入れるべく、恋する乙女は、『どうやっても絶対によけられない弾幕』を編み出すために努力し、結果として弾幕ごっこの実力も上がり、ここ、紅魔館の防衛は、この頃、鉄壁になりつつあった。
 なお、この恋の弾幕勝負で危険とされるのが、弾幕勝負の基本である『回避』である。グレイズやちょん避けなどまだいい方で、これをあっさりかわしてしまうと、場合によっては即座にその場でEXボスが降臨してしまうのである。また、残機を増やして挑戦すると、EXボスが二人三人と増えていくのも問題だ。
 まぁ、だからこそ、その『恋の弾幕』が熱く燃え上がるのかもしれないが。
「若いっていいわねぇ」
 もうすでに何百年生きている彼女は、空の上で展開されるラストワードの応酬に、ほぅ、と熱っぽいため息をつく。
 もう、あんな風に燃え上がる恋を経験することなくなってからどれくらいになるだろうか。だからこそ、若い子達の恋路を応援したくなってしまうのかもしれないが。
「失礼します」
 後ろから、声。
 振り向かず、彼女は歩みを進めていく。途中、中途半端に開いているドアを閉めながら、
「何か?」
「秋です」
「秋ね」
「先日、美味しい松茸が手に入りましたので、お嬢様達に、今夜の晩ご飯に松茸入りおでんなどを」
「あら、いいわね」
「そして、秋です」
「秋ね」
「秋なのにもの足りません」
「飽きてきてるのじゃないかしら」
「誰もうまいことを言えと言ってません」
「じゃあ、何?」
「……もうお気づきでしょう?」
 その、彼女の視線の先にあるのは、この紅の館でただ一人の人間。
「ほら! あなた達、お掃除はどうしたの!?」
「メ、メイド長っ!? さ、サボってませんよ!?」
「は、はい! サボって、そんな、昼間から燃え上がる愛を確認しあったりなんてことはっ!」
「廊下を汚さない!
 さっさと汚したところを掃除しなさいっ!」
『は、はいぃっ!』
 必要以上に、その視線のきつい彼女の言葉に、メイド二人は飛び上がると、手にしたモップで石の目が消えるくらい真剣に床磨きを再開する。
 そして、メイド達をしかりつけた彼女は、振り返りざま、恐らく、誰にも聞こえないように、わからないように注意したのかもしれないが、それでも小さなため息を一つつくと、わざと靴音を高くしてその場から立ち去っていく。
「この頃、ちょっぴりヒステリックになってきています」
「気持ちもわからないことはないけれど」
「しかしながら、なかなか難しいものです」
「そうねぇ……」
 ふぅ、とため息をついて。
 振り返った次の瞬間、彼女の瞳は、鋭さを増していた。
「メイド全員を集合させなさい。場所はいつものところ、時間はいつもの通り。
 メイド長への言い訳は私がしておきます」
「了解しました!」
 ざっ、という音を立てて、それまでそこに片膝ついていたメイドが消えた。文字通り、消しゴムでかき消したかのように跡形もなく。
 朗々と響き渡った宣言の声は、やがて残響の中に消えていく。
 そして――、
「……恋の秋。そして、恋とは、すなわち、人が生きていく原動力の一つ。
 胸に秘めたその想い、必ずや、実らせて差し上げます、メイド長!」
 再び、動き出す時が来た。
 あの、過去の栄光を築きまくった伝説の部隊――紅魔館メイド部隊が。
 一糸乱れぬ統率を体現する、メイド部隊リーダーはスカートの裾を大きく翻して、その場を後にしたのだった。

「霊夢殿」
「お、慧音じゃん。どうしたの?」
 さっさかさっさか、境内につもった落ち葉を掃除している巫女の元に、一人の知識人がやってきた。
 彼女は、いやな、と笑うと、
「ちょっと近くまで来たから、軽い参拝にね」
「あ、そう?
 お賽銭はそこね。入れてくれたら、美味しいお茶を出してあげるわ」
「……いや、いいよ」
「何その私を哀れむような目線」
 巫女の、秋風よりも冷たく切ない言葉に、色々とこらえきれないものを表情に出してしまってから、彼女は、懐から取り出した財布を開けた。そして、中に細かく折りたたんでおいたお札を賽銭箱に入れてから振り返る。
「どうだ? 人の入りは」
「うちは、一応、恋愛成就もやってるけど。
 だけど、やっぱり、あんまりねぇ」
 それなら、もっと御利益のある神社とかに行っちゃうんじゃないかな、と霊夢。あまり人の立ち寄らない、ある意味、妖怪の楽園のようなこの神社に足を運ぶ物好きはそんなにいないのだ、ということらしかった。
 彼女の、そんな自虐的な冗談にも慧音は笑顔を浮かべることが出来ず、内心、『やっぱそうだろうなぁ』と思ったのだが、もちろん、言葉には出さなかった。
「まぁ、別に、この時期はかき入れ時、ってもんでもないし。
 のんびり出来るくらいがちょうどいいんじゃない?」
 と、どこからともなく取り出したのは立派なさつまいも。
 それを、足下に集めた落ち葉に火をつけてその中へと放り込む。「気をつけないと炭になるぞ」との慧音の言葉に『わかってる』と答える霊夢の瞳は、真剣そのものだった。というか、多分、それをやらかしたのだろう。彼女は。炭になったさつまいもを抱えて天に向かって嘆く彼女の姿が、あまりにも容易に想像出来てしまって、慧音は思わず目頭を押さえた。
「しかし、もう秋か……」
「季節のすぎるのは早いわねぇ」
「そう言えば、この前、紅魔館のメイド達に逢ったよ」
「へぇ」
 あいつら、たまに人里に降りてくるわよね、と霊夢。
 じ~、っと火を見つめるその瞳は『この焼き芋食べたら……私……お昼寝するんだ……』と語っていた。どうでもいいが。
「秋だからか、カップルが誕生しまくって大変なことになってるらしい」
「別に何にも言わないわよ」
「そもそも、それの発端となった人物が、この秋でも行動を起こしていないから、逆にやきもきしている、と愚痴をこぼしていたな」
「約一名、全く進展させる雰囲気がないしね」
 させようと努力しているのだろうが、その努力が全て空回り、もしくはなかったことになっているのだから、それも仕方ないのだが。
 その辺りの事情に関しては、時たま、話を振られることのある巫女の方が詳しいようだった。『まぁ、そういうものさ』と語る慧音は空を見上げる。
「いい天気だ。こういういい天気の日には、何か幸せなことが起きるといいな」
「焼き芋焼けた」
「……まぁ、食欲の秋でもあるから別にいいが……」
 何だか、自分の一言が華麗にスルーされたのが寂しかったのか、青空を見上げたまま、慧音はため息をついたのだった。

「そも、恋愛とは。
 他者に自分を伝えるためのコミュニケーションツールの一つにすぎないと、私は考えているわ」
「それでもいいんじゃない?
 ツールであろうと何であろうと、それを役立たせるか、もしくは宝の持ち腐れにするかはその人次第なんだし」
「この館の、誰とは言わないけれど、とある人物は、宝の持ち腐れというよりは色んな意味で扱いきれてないのよね」
 まぁ、協力するのは面倒だからしないけど、と知識の魔女。
 他人に、色んな意味で干渉するのもされるのも好まない彼女は、手元に持った本一冊に向ける情熱が全てと言わんばかりだった。ちなみに、本のタイトルは『略奪愛』。
「そういう初々しいところが、またいいんじゃない」
 ねぇ? とその対面に座る人形遣いは、本の上にちょっぴり顔を出して、対面の相手へと笑いかける。ちなみに、本のタイトルは『ならば、愛などいらぬ』。
「そういう茶番に付き合わされる方の身にもなってほしいわ。
 何かと言ったら、誰も彼も私を頼ってきて。人のことを頼りになるご意見番扱いしてくれるのは嬉しいけれど、それにも程度があるのよ」
 実に迷惑だ、と言わんばかりの口調だった。
 それにしては、どうやらしっかりと、その手の相談にも対応しているらしいことを知っている人形遣いは、『素直じゃないわねぇ』と内心でつぶやき、『ま、それは私も同じか』と、即座に思い直す。
「今年はどう?」
「背中を押しても前に進まない。まるで足下が接着剤でくっつけられたか、ゴムひもでもつけているかのよう」
 なるほど、なかなか厄介な状況のようである。
 思わず苦笑してしまってから、「けれど、それなら、メイドさん達が元気になりそうね」と一言。
「そうなの。 
 さっき、小悪魔が『メイドの方々が本気になりつつあります』って報告してきたから、またいつぞやのような騒動が起きるでしょうね」
「あれはあれで楽しかったわね」
「長い人生のスパイスだわ」
 おや、これは意外。
 本さえあれば他に何もいらないと公言する本の虫も、たまにはそういう刺激を求めているらしい。
「まぁ、周りにある、使えるものを利用しようとするその精神は素晴らしいわね。
 ある意味、なりふり構わなくなっているのと同時に計算高さの表れでもあるし」
「そうね。
 今年は、どんなことをするの?」
「楽しみなの? あなた」
「恋の季節だもの」
 季節事には、必ず乗り遅れないのだ、と人形遣い。
 要するに、彼女も、変化のない日常にスパイスを求めている口なのである。しかも、そのスパイスは、日常という名の料理に加えるのには、いささかきついもののようだ。
「まぁ、物好きはいいけれど。
 私を巻き込まないで欲しいわね」
「けれど、無理じゃない? トラブルというのは、来て欲しくないと願っている人間のところにこそ、喜んで飛び込んでくるものよ」
「そうなのよね。
 それなら、トラブルに、来てくださいと三つ指ついてお待ち申し上げている人のところには行かないものなのかしら」
「素直じゃないのね、トラブルって」
「ええ、そうね。まるで流行りの……何だったかしら? ツンデレ? それのようね」
 そこで、ようやく、本の虫にも笑顔が生まれた。どうやら、自分で言った言葉ながら、なかなか的を射ているのが気に入ったらしい。
「あなたも、歓迎してみたら? トラブルさん、やってきてくれたら秘蔵の魔法書を差し上げます、ってね」
「それを聞いて即座に参上……!」
「ロイヤルフレア」
「ふぎゃー!」
 どこからともなく現れたトラブルの権化たる黒白へと、白い部分がなくなるまで弾幕を叩き込んでから、彼女は手にしていた本をぱたんと閉じた。
「読み飽きたわ」
「じゃあ、ちょっと見に行ってみましょうか」
「参加はしないわ」
「見学も楽しいわよ」
「あなた、根っからのトラブル好きね」
「そう? じゃ、今度から笑顔で、真っ白なエプロンとアップルパイでお出迎えしないとね」
 ばたん、と閉じられる扉。
 床の上に倒れて焦げているトラブルの源へと、司書の娘が歩み寄ってきて、片手に取り出したほうきでそれを外へと掃き出したのは、それから数分もしないうちのことだった。

「何か障害があれば恋は燃え上がる。それと同時に、何気ないイベントも、それの引き金……というか、きっかけになるって、誰もが言うのよね」
「そういうものさ」
 あの後、慧音は霊夢によって母家の中へと招かれていた。
 実は、慧音はさっさと帰ろうとしたのだが、『お札を入れてくれた人に何も報いずに帰したとあっては博麗の巫女の名折れ』とわけのわからない理屈をこねる霊夢を説き伏せることが出来ず、招かれるままに招き入れられたのである。
 ちなみに、霊夢のその信念は彼女の母親から受け継いだものと言うことで、さすがにその一言を聞いた時には、慧音は流れる熱い血潮をこらえることが出来なかった。
 それはともあれとして。
「何気ないイベント、というのもそう多くないから『イベント』なのかもしれないのだがな」
「たとえば、どんなのがあるかしら」
「さぁな。私は、その手のことにはとんと疎いからな」
 知識として知ってはいても、それが智恵となってなければ何の意味もないのだ、ということらしい。
 慧音の含蓄深い一言に、うんうんとうなずきながら、霊夢は熱々ほくほくのさつまいもをかじった。ちなみに、そのさつまいも、先日、妖怪退治をした際に、麓の村のおじいちゃんにわけてもらったとのことだ。
「霊夢殿はどうだ?」
「私? 相手はいないし、第一、まだそんな年でもないしね~」
「もうそろそろ、霊夢殿にも、いい相手の一人や二人、出来ていてもおかしくないとは思っているのだがな」
「ま、今の自分に飽きてきているわけじゃないし。
 まだ当分、このままでいいかな、なんてね」
 そうか、とうなずく慧音。
 差し出されている美味しいお茶(霊夢曰く、出がらしじゃない、ちゃんとしたお茶)を一口してから、
「しかし、子を育てる楽しみというのは、親となったものにしかわからないことだという」
「慧音も?」
「私も子育ては手伝ったことはあっても、自分がその身となって体験したことはないからな」
 してみると、自分も、そう言う楽しみを知るべきなのかもしれない、と彼女は言った。
 しかし、これまた、彼女にもその手の噂はさっぱりだ。お互い、苦労しそうだな、と彼女は笑ってから、
「だが、霊夢殿は、近いうちにそう言う楽しみを知ることがあるかもしれないな」
「あ~、あるかもね~。
 うちって、ほら、神社だし。こう……なんて言うの? 『この子をお願いします』とか何とか、あり得そうで困るわね~」
「神の慈悲が助けてくれる、とな」
「ま、そんなことになろうもんなら、その親に向かって夢想封印ぶちこむけどねー」
 ――さてさて。
 そんな会話もありながら、まったりと、時間は過ぎていく。
 先ほどまで中点高く上っていた太陽は徐々に傾きを増して、辺りを茜色が染めていく頃。
「……さて。すっかりと長居してしまったな。
 お邪魔したな、霊夢殿」
「ん~、まぁ、いいわよ。慧音みたいに、礼儀正しくて、話が楽しくて、しかもお賽銭入れてくれる人なら、うちはいつでも大歓迎よ」
 それは主に、三番目に該当する相手を歓迎しているのではないかと、慧音は思ったが、やっぱり口には出さなかった。
 衣擦れの音を立てて立ち上がると、「それじゃ、私はおいとまさせてもらうよ」と笑う。
「今夜は、どんな食事を用意するのか、教えてもらっても構わないか?」
「いのしし鍋にしようかなぁ、って。
 タケノコ採取してたら偶然、でっかいのを仕留めてさ」
「ほほう、それは見事だな」
「でしょ? この時期は、ほんと、食べ物美味しいからね~」
 私も、この時期だけは太っちゃうのよね、と霊夢。
 要するに、それ以外の時期だと、太るに太れぬ赤貧具合を、彼女自身が認識していると言うことなのだが、まぁ、とやかく言う必要はないだろう。言ったが最後、三途の川から『あんなものを送ってこられても困る!』と死神がのしつけて返してくることは確実だからだ。
「ま、ともあれ、秋はいい季節よね。
 色んな秋は数あれど、私にとっては食欲の秋。冬に向けて食いだめする時期なのよ」
「……ああ、そうか……」
 瞳を輝かせる巫女に対して、切ないものを思い浮かべた慧音は、『今度、何かうまいものでも作って持ってきてやるかな』とマジになって考えたという。
 ――と、ちょうどその時だ。
 あ~ん、とほくほくに焼き上がった焼き芋に、霊夢がかぶりつこうとした瞬間、とんとん、と外から扉をノックする音が響いたのである。
「誰よっ!?」
 刹那、鬼が降臨した。
 どこぞのちび鬼などが『私も鬼だけど、あんな鬼は見たことがない』と後の歴史で語るほどの鬼は、片手に針、片手に札、そして後ろ手に何やら危ないものという臨戦態勢で戸口へと向かって歩いていく。止めた方がいいだろうな、主に物理的手段で、と床の間に飾ってあった花瓶(重さ、かなりのもの)を手に、慧音が霊夢の背後へと忍びより、霊夢の手が扉を開いた、その瞬間。
「さあ、いらっしゃい」
 ころっ、と彼女は笑顔となった。

「ふぅん、なるほど。恋の秋、ねぇ」
「はい」
 訪ねてきたのは紅魔館のメイドだった。
 いつぞやも、この神社の鳥居をくぐったことのある彼女が持参してきたのは、『紅魔館スペシャル』なる美味しいお料理一式と、前回と同じように、霊夢が生きている間に、果たして何回お目にかかることが出来るであろうという札束である。その二つを見た瞬間、鬼はどこぞへとしっぽを巻いて逃げ出し、代わりにやってきたのは慈愛と慈悲に満ちた『巫女』なのだから、誠、人間の二面性とは恐ろしいものである。
「で? 今回は何するの?」
 もぐもぐぱくぱく、という擬音が見えるくらいに一生懸命、メイドの持ってきた料理を食べながら、霊夢。
 はい、とうなずく彼女は、懐から、何かを取り出した。
「本……だな」
「はい。本です。パチュリー様からお借りしてきました」
 というだけあって、かなり年期の入った書である。
 表紙などはぼろぼろ、文字も、何やらかすれている。しかし、魔法か何かでコーティングしてあるのか、触れるだけで朽ちてしまいそうなそれが伝えてくる、明確な『本の手触り』に、ふむ、と慧音は感心する。
「それによると、恋するあの子達を急接近させるにはトラブルが必要であると書かれていました」
「まぁ、そうだろうな」
 日常の中に、ほんの少しだけ、非日常というスパイスを入れ込めば、なるほど、印象の強い『想い出』は出来上がることだろう。そのスパイスを上手に使えば、『恋愛』という難しい料理も美味しく仕上げられる――それは間違いのないことだった。
 慧音は、ぱらぱらと本をめくりながら、『大昔にも、恋の指南書というものはあったんだな』と、まだ見ぬ知識の集積に大層感心する。
「そこで、今回、霊夢さん達にはトラブルを演出してもらいたいんです」
「トラブル……ねぇ。
 前回の魔理沙達みたいに邪魔とかすればいいの?」
「いいえ、そういうわけではなく」
 そう言う物理的な『トラブル』を演出するのではなく、もっと環境的な、かつ、精神的なトラブルを演出して欲しいとのことだった。
 ここで、普段の霊夢なら『やだ、めんどい』の一言で、これまでの話をなかったことにするだろうが、今の霊夢は義理と人情に満ちあふれた霊夢である。主に、義理が『美味しいご飯』で人情が『たくさんのお賽銭』であるのだが、それはさておこう。
「何すればいいのよ?」
「秋の日はつるべ落とし。そして、乙女心と秋の空」
「なるほど」
 それで即座に彼女の言いたいことを理解したのか、霊夢は立ち上がった。見れば、『四人分のパーティー用』としてメイドが持ってきた料理が、すでに影も形もない。
「じゃあ、頑張らせてもらうわね。
 あ、でも、私だけじゃ不安だから、保険はかけておいた方がいいと思うわよ」
「はい。もちろん、そのつもりです」
「信頼されているのか、はたまた、しっかりしているのか。
 あんた、どっち?」
「どちらも、ですよ」
 うふふ、と笑う彼女の雅な笑顔に霊夢は『やるわね、こいつ』と笑い、すたすたと、どこぞへと去っていく。
 残された室内で、メイドがぱちんと指を鳴らすと、一瞬後、部屋の中から、彼女と同じような格好をしたメイド数人が湧き上がり、空っぽのお皿やら何やらを片づけて、そしてどこへともなく消えていく。
「さて、それでは、私はおいとまさせてもらいますね」
「……まぁ、今、私が見た不思議なものについては問いかけないようにしておこう」
「賢明ですね」
「……どうしてこう、得体の知れない正体不明の連中ばかりが集まるんだ、この幻想郷というやつは」
 近頃、幻想郷というのは、そういう『エキセントリック』な奴らが集まる理想郷になりつつあるのかもしれないな、と思いつつある慧音は、やっぱり自分の予想は外れていなかったのだという怖い想像に顔を引きつらせる。
 それでは、ごきげんよう。そう、あくまで上品に告げて、メイドはそこを去っていく。もちろん、先ほど、どこへともなく姿を消した連中は、この期に及んでも気配の一つも感じさせていない。
 そして、ふと、気がつけば慧音の手の中から、彼女が先ほどまで読んでいた本が消えていた。
「……面妖な」
 もはや、そうつぶやくことしか、彼女には出来なかった。

 その日、普段は静かな(?)天界に激震が走っていた。
「……いやあの、だからですね? その……何度も言いますけれど、天気を操ったりとかそういうのは色々と……」
「こうして頭を下げているのですから、もう少し、気軽な受け答えをして頂けると、天界に住まう誇り高き方々の誇りが保たれると思いますが」
「やたら尊大に頭を下げられても困るんですが」
 本日、午後未明(表現がおかしいが気にしてはいけない。あらゆる意味で)、天界を訪れた珍客を前に、彼女、永江衣玖は困っていた。どれくらい困っているかというと、どこぞのわがまま天人が自分のわがままのままにわがままなことをしでかし、わがままな結果を招いた結果、そのわがままに振り回されまくっていた時と同じくらいに困っていた。
 はぁ、と彼女はため息をつくと、
「だからですね。もう一度、言いますけれど。
 人には分というものがありまして。その分を超えることは何者もしてはならないという常識が……」
「常識が通じる世界だと思ってるんですか、あなた。この幻想郷が」
「いやもちろん思ってませんけど」
 とりあえず、即答しておく。その辺りに関しては明確な区別をつけておく必要があるからだ。
 それはともあれ。
「だからといって、あなた方の頼みを聞いて、はいはい、というわけにはいかないんです」
 ご理解下さい、と衣玖お姉さん。
 普段なら、ここで引き下がるであろう彼女は、やれやれ、と肩をすくめる。
「無理な注文をしているというのは重々承知しています。
 ですが、そこを曲げて何とか、と頼んでいるのです」
「まずはその変な仮面を外してから言ってください」
「無理です。これは、私が私であることを隠すための証……」
「ああ、もういや……」
 何やら葛藤している相手を前に、衣玖は頭痛を覚えたようだった。頭を抱えて、もう泣きそうな顔をしながら、『ですから――』と、同じ言葉を続けようとする。
 しかし、その相手の言葉を遮る形で、彼女は言った。
「衣玖さま。あなたは確か、空気を読む力を持つと仰っていましたね?」
「……ええ、まあ、読めますよ。
 今の空気を察するに、あなたをここで追い返しておかないと悪い前例を作ってしまう、という」
「今、幻想郷は秋です」
「そうですね。空の上から見る紅葉は、またひとしおです」
「秋と言えば?」
 よくわからない言葉に皮肉を返す衣玖を無視して、彼女は言った。
 その言葉に、一瞬、衣玖は考え込む。
「恋の秋、という言葉、ご存知ありませんか?」
「知って……いますけど……」
「ちなみに衣玖さま、お相手は?」
「……どうせ売れ残りですよ……」
 膝抱えて落ち込む衣玖。まぁ、それはさておき。
「この季節、この時期。それをチャンスと感じて、一生懸命、頑張る女性が多いのは事実です」
「……まぁ、そうですけどね」
 そう言う季節柄のイベントに関しては、きちんと目を配る『空気を読む』能力を持つ衣玖はつぶやいた。
「となれば。
 その季節の空気を演出するのも、また、あなたの役目ではないでしょうか?」
「……は?」
「空気を読む。すなわち、その場所、その瞬間、そして、そこにしかないものを見定め、語りかけるのがあなたの力だと考えていたのですが」
「……えっと……そう……かもしれませんけど……」
「しかしながら、あなたの力はそうではなかったようですね。
 空気を読むことは出来ても、その空気に対して、自分を同一化させたりして演出することは不可能のようですね」
「……そうなのかな……?」
「ですが、その能力は、実にご立派だと思います。
 あとは、今、この幻想郷に満ちあふれる秋の空気を、あなたが読めるかどうかにかかっていたのですが……。いやはや、残念です」
「……わかりました」
 そこで、衣玖さんは立ち上がる。
「この秋の空気……確かに、この永江衣玖が読みましょう! ええ、読みますとも!」
 基本的に、人のいい人は騙されやすいと言う。
 軽い言葉のスパイスに見事騙されて、衣玖は、ぐぐっ、と握り拳を握りしめる。
「確かにそうですね! ただ空気を読むだけじゃ、空気と一緒ですものね! 読んだ空気に対して、私が何を出来るかですよね!」
「ええ、そうです。その通りです」
 ――単純な人で助かったわ……。
 そう、ぽつりと内心でこぼした言葉こそが、衣玖が前にする女性の本心なのだが、もちろん、彼女は気づくことはないだろう。これもまた、相手の『人の良さ』につけこんだということになるのだろうが、はてさて。
「わかりました! 何とかしてみます!
 私、頑張りますっ!」
「はい、お願い致します。
 ああ、ですけれど、決してご無理はなさらないように。その辺りの根回し……もとい、対処は、きちんと、こちらもいたしますので」
「はい、わかりました。
 ですけど、あまり気にしないでいいですよ。何せ、この私が力を貸すんです! 大船に乗ったつもりでいてくださいね!」
 にこやか笑顔の衣玖さんは、相手の手をぎゅっと握りしめると、『それではっ!』とどこぞへと飛んでいってしまった。その後ろ姿を見送ってから、彼女は、ひょいと肩をすくめる。
「現状の報告を」
『二重三重の策をこしらえてこその勝負です』
「了解しました」
 全員に通達。仕込みは終了した。次の作戦を実行する。
 まるで、どこぞの軍隊のごとく凛とした声を上げる彼女は、大きく、スカートの裾を翻して振り返る。いつの間にか、彼女の背後に、まるで影のように現れていた何者かが、ばっ、とどこかへ散っていった。
 威風堂々、肩で風を切って歩いていく彼女の後ろ姿には自信が満ちあふれている。今回も、勝利を我が手に、というところか。
「……地上の連中ってのは、どうしてこう、真っ当なことに自分の力を使わないもんなのかしらね」
 その様子をぼんやりと、遠巻きに見ていたとある天人に対し、次の瞬間、『お前が言うな』のツッコミが降り注いだのは、もはやご愛敬と言っていい光景だった。

 さて、そんなこんなで日は回る。
 巡らない日々はないと言われているが、こうして、のんびりとした雰囲気に包まれた秋にあってもそれは同じである。まぁ、それはさておいて。
「……あら?」
 厨房の、でっけぇ冷蔵庫――氷室の技術を応用して作ったらしい――のドアを開けて、彼女は首をかしげた。
「……ない」
 今日の夕食に使うはずだった食材がなかった。
 おかしいわね、とドアを閉めて、もう一度、開けてみる。もちろん、それで食材が復活していたらミステリーである。何度かドアを開け閉めしたものの、結局、結論が変わるはずもなく。
「……買い忘れたのかしら」
 にしては、ぎっしりと詰まった冷蔵庫の中、その食材があったはずのスペースだけ、ぽっかりと空いているのが気にかかるのだが。
 だが、こうしているのも時間の無駄であるのに加え、そうしていても事態が進むはずもないため、彼女はさっさと思考を切り替えた。
 即座にポケットの中のお財布を確認。きちんとお金が入っているのを確認してから、「買い出しに行きましょうか」と、彼女――十六夜咲夜はつぶやいた。
 踵を返し、歩き出す彼女。その彼女の前に、すっ、と黒い影が割って入る。
「メイド長、どちらへ?」
 ここ、紅魔館で働くメイドの一人は、にこやかな笑顔で訊ねる。
「買い物よ。今日の夕食に使うはずだった食材がなくてね」
「あら……そうなんですか?
 でしたら、わたくしめが……」
「いいわ、これくらいなら、私がひとっ走り行ってくればすむだけの話しだもの」
「左様ですか」
 道中、お気をつけ下さい、と彼女は咲夜に道を譲った。ありがとう、と瞳で微笑むと、咲夜はその場を後にする。
 小さく手を振って彼女を見送っていたメイドは、その姿が完全に自分の視界から消えたことを確認してから、
「こちら、紅魔館メイド部隊ナンバー7、咲夜さまが厨房を出られました」
『了解。ナンバー7、速やかにメイド長の見張りを続けなさい』
「了解しました。次のポイントに移動します」
 何やら怪しい会話を交わし、しゅっ、とかいう擬音と共に姿を消す彼女。何やら面妖なことが起きたような気もするのだが、そこは、吸血鬼の館と言われる紅魔館だ。こういう変な現象が当たり前、というのが世間様一般の認識であるため、何の問題もない。
 続いて、咲夜の行く手に現れるメイドが一人。
 もちろん、彼女は、『今、気づきました』と言わんばかりに、ことさらゆっくりと、咲夜へと振り返る。
「メイド長、どちらへ?」
「買い物よ」
「そうですか」
「ええ。
 だから、館の方、お願いね」
 かしこまりました、と彼女。
 その彼女の脇をすり抜けて歩いていく咲夜へと、彼女は言う。
「ところで、メイド長。
 秋の空の気色は変わりやすいと言います。あまり、外に長居はしないよう、お気をつけ下さいね」
「わかっているわ」
 けど、それは杞憂ね、と咲夜は苦笑する。
 今日一日、空は雲一つない快晴だったのだ。今更、天気が崩れることはほぼあり得ないだろう、と彼女。今日もこの時間帯まで頑張ったのだから、最後まで空は頑張ってくれるだろう、というのがその言い分だった。
 そうかもしれませんね、と笑って、彼女は咲夜を送り出し。またもや、しゅんっ、という音と共に、今度は影の中へと沈んでいく。
 もちろん、そんな変なことが起きているとは知らない咲夜は、外へとつながる扉の前へとやってきて、それに手をかけた。
 そして、次の瞬間である。
「あら、咲夜。どこへ行くのかしら」
 ぴこぴこ、というかわいらしい足音を立てて現れたのは、この館を統べるちっちゃいお嬢様だ。
 彼女の方へと振り返り、咲夜は一礼してから『買い物ですよ』と答えた。
「買い物? 今から?」
「はい。今日のお夕飯に使う予定だった食材を切らしていまして」
「あきれた。それは何? メインディッシュかしら」
「はい」
「それはゆゆしき事態じゃない。
 メインディッシュのない食卓なんて、色を失った秋の野山と一緒、何の意味もなくてよ」
 相変わらず、ダメな子ね、といわんばかりだった。
 しかし、咲夜は、『そうですね』と答えるだけだ。彼女に言われたことは全く正しく、それについては自分の不注意が原因である(と、咲夜は思っている)ため、言い返す言葉がないのである。
「せっかくだから、わたしも手伝ってあげようかしら」
「え? あ、ああ……いえ、そのようなこと……」
「別に構わなくてよ。
 あなたに任せていたら、また買い物を忘れてくるかもしれないじゃない」
 ちょっと待っていなさい、と、またぴこぴこ足音を立てて、お嬢様は去っていく。先日、咲夜が買ってあげた靴が立てる靴音が遠くに離れていって、咲夜は苦笑した。
 そんな彼女の耳に、こんな声が聞こえてくる。
「お姉さまばっかりずるいー! フランも一緒に行ってお菓子買ってもらうのー!」
 ――とまぁ、そんな感じである。
 響いてくるちみっちゃい妹さまの言葉に、『きちんと、彼女の分もおやつを買ってこないといけないわね』と咲夜は笑う。
 そうしてしばらく待っていると、お嬢様が戻ってきた。片手に日傘を構え、『それじゃ、行こうかしら』と彼女。心なしか、羽がぱたぱた、嬉しそうだ。
「はい、わかりました」
 空へと舞い上がる咲夜とお嬢様。
 そんな二人を「いってらっしゃーい」と門番隊の面々が見送る中。
「……まずいわね」
 閉じられた扉の向こうでは、そんな戦慄の声が響いていた。
 予定通り、咲夜を表へと送り出すことまでは成功した。作戦の第一段階は、何の問題もなく完了したのだ。
 だが、第二段階が始まるその瞬間、ちょっとしたイレギュラー要素が混じってしまったのである。もちろん、事前に、お嬢様の登場を予測しなかったわけではない。しかし、万難を排して事態に向かうのが紅魔館メイド部隊のポリシーであるため、そうした不安要素は徹底的に排除したつもりだった。具体的に言うと、お嬢様の部屋に、彼女が最近、気に入っている漫画と美味しいおやつを届けておいたのだ。一杯。
 しかし、それだけでは足りなかったのだ。
 恐らく、彼女は漫画を全て読み終わり、おやつも平らげてしまったのだろう。あと、漫画を一冊、チョコレートを一粒多く持って行っていれば違ったかもしれない。だが、もうすでに事態は動き出してしまった。すでに作戦を止めることは出来ないのだ。
「紅魔館メイド部隊に通達!」
 即座に、彼女は決断を下した。
 一度、動き出してしまった作戦を止めるようなことはせず、そのまま継続することを決断したのだ。その決断力と切り替えの早さがあるからこそ、紅魔館のあらゆるメイド達からの信頼を集める彼女の指示は早い。
「メイドナンバー1、作戦の変更を伝えます! 即座に、外に向かいなさい! ポイントは13!」
「はっ!」
「メイドナンバー2、同じく作戦の変更を伝えます! 指定ポイントに先回りしなさい!」
「了解しました!」
「たっ、大変です!」
「ナンバー5、何事!?」
「は、はい! 黒白の姿を確認しました! どうやら、どこかから、今回の作戦が漏れてしまっていたようです!」
「ちっ……! しつこい……!
 前回、あれほど痛い目にあったというのに……!」
「彼女の辞書に『反省』などという殊勝な文字はありません! ご指示を!」
「メイドナンバー9と12を現地に回しなさい! それから、コードネーム『ドールズ』にも指示を! 彼女を、いざという時のために味方に引き込んでおいてよかったわ!」
「了解しました!」
 次々に飛び交う、ぜってぇメイドさんじゃねぇよこいつら、な言葉の数々。
 にわかに慌ただしくなる館の内部。そこから、扉を介して聞こえてくる声の数々に、門の前に立つ、咲夜に近しい女性は、「やれやれですね」と苦笑と共に肩をすくめるだけだった。

「ねぇ、咲夜。そう言えば、知っていて?」
「何でしょうか?」
「近頃、この村の近くに、とても大きなお店が出来たらしいわね」
「ああ……そうらしいですね」
 そのお店というのは、今、彼女たちが立ち寄っている個人店舗のような店がいくつも集まった集合店舗のようなものだと言うことを、咲夜は風の噂に聞いていた。
 何でも、いくつものお店が一つの区画に集まっており、客はそのお店から好きなものを購入して、最後にその区画を出る時にお金を払って精算するシステムなのだという。
 実際に利用してみなければわからないが、その話を聞いた時には『面白そうだな』と彼女は思ったものだ。
 今度、機会が出来たら利用してみたいな、とも思っていた。美味しい食べ物はあるのかしら。面白いものはあるのかしら。それから……えっと……きれいなお洋服とか、あるのかしら……。
 ――などということを考えたりもする、十六夜咲夜ちょめちょめ歳である。
「どんどん、外の世界も変わっていくものね。
 我が紅魔館も、外の世界の流れに乗らないといけないわね」
「そうですね。パチュリー様が仰ってましたけれど、停滞は心身の荒廃を招くだけだ、ということらしいですし」
「何だかよくわからないわね」
「外の新しいものを取り入れることが出来なくなったら終わりだ、という意味らしいですけれど……」
 正直、私にも難しくてさっぱりです、と彼女は苦笑した。
 さて、そんな会話もそこそこにお目当ての食材を購入した咲夜は踵を返そうとする。だが、ふと、気がつけば手に提げた買い物かごにお菓子が一つ。
 もちろん、誰が入れたかは言うまでもないのだが、彼女はそれを追求しようとはせず、一緒に精算に出すと、
「それじゃ、帰りましょうか」
「そうね。外を軽く散歩して退屈も紛れたわ」
 羽をぱたぱたさせてお嬢様。
 どうやら、自分の悪事が気づかれてないと思っているらしい。そんなところもかわいいのよね、と咲夜は内心で笑うと、彼女を連れて店の外へと。
「……あら?」
 と、この店に入るまではなかったものが、そこにあった。
「咲夜、あれは何かしら?」
「曲芸……か何かでしょうか」
 一人の女性が、手に色とりどりの玉を生み出して、それをジャグリングしている光景がある。その周りには子供達が山と集まり、『おねーちゃんすごーい!』と手を叩いていた。
「ふぅん……ああいう芸も受けるものなのね」
「そうですね。
 今度、紅魔館でも、あの手の隠し芸大会をしましょうか?」
 うちのメイド達は、そう言う隠し技を持っているのも多いですし、と咲夜。
 それは面白そうね、と答えるお嬢様の瞳は輝いていた。どうやら、彼女も、周りの子供達と一緒で目の前の光景が気に入ったらしい。
「お嬢様、もう少し見ていきますか?」
「あら、そう? 咲夜が見たいのなら仕方ないわね」
 全く、あなたは子供なんだから、と笑うお嬢様の顔が、ますます笑顔に輝いたのを見逃さない咲夜ではないのだが、まぁ、それはさておこう。
 きゃっきゃとはしゃぐ子供達の輪の中に入っても、何ら違和感のないお嬢様を後ろで眺めながら、少しだけ、彼女はその輪から外れていく。
「……少しだけ帰るのが遅くなりそうね」
 どこかに座るところがないかしら。
 彼女の瞳は周りをさまよいながら、のんびりとすぎていく秋の景色へと、やがて、向けられていくのだった。

 ――さて。
「こちら、紅魔館メイド部隊ナンバー13、黒白を捕獲しました。これより、パチュリー様の元へ向かいます」
『ナンバー0、了解。丁重におもてなししてあげなさい』
「はっ!」
「こらー! お前らー!
 乙女をぐるぐる巻きにして逆さづりにするなんてどういう了見だー!」
「あんたのどこが乙女なのよ、このバカ魔理沙」
「くそ、この、アリス! 裏切ったな!?」
「私は『アリス』じゃないわ。紅魔館メイド部隊、コードネーム『ドールズ』よ」
「どう見たってアリスだろその派手な衣装!?」
「上海、蓬莱。刺していいわよ」
「わーいてー! そのちくちくはやめてー!」
 わいわい騒ぐ一人のバカを連れて、大勢のメイド達が去っていく。その後ろ姿は、まさに勝ち鬨を上げながら凱旋する戦士の群れであったと、後の記録は述懐するのだが、まぁ、それはさておこう。
 咲夜たちのいる村を監視できる位置に身を潜めているメイド部隊は、その様子を、逐一、本部(要するに紅魔館)へと連絡する。そして、その連絡を受けた、紅魔館のメイド達が指示を下す。
 今現在、咲夜たちを取り巻く包囲網は狭まってきている。目的の達成まで、あともう少し。
「現在の時刻、一七○○時! 作戦決行まで、あと十分!」
「よし、行動を起こしなさい!」
 イエス・マム!
 そろう声が周囲に響き渡り、何事かと、自然そのものが揺らぐ中、一糸乱れぬ統率でもってメイド達が周囲へと散った。
 そして、通りすがりの曲芸師――言うまでもなく、紅魔館メイド部隊の一人――の瞳が、近くへと降りてきた『仲間』達へと向いた。彼女の瞳が、わずかに横へと流れる。それを合図として、一人の小柄なメイドが、目をきらきら輝かせているお嬢様へと近づき、
「お嬢様、失礼!」
「はぅっ!?」
 容赦なく、その体に一撃を見舞った。
 くてっ、とくずおれる彼女を背負い、音速を超えて去っていくメイド。ちなみに、この瞬間、わずかゼロコンマ二秒。まさしく刹那の瞬間である。
「……よろしいのですか? あのようなこと……」
「……ええ、仕方ないわ。メイド長の幸せのために、お嬢様には、ちょっとだけ体を張ってもらうことを許容してもらわなくては……」
 つくづく身勝手極まりない、忠誠心の欠片もないひでぇ言葉だが、これで一応、お嬢様には心からつくそうと誓いを立てている奴らなのだから、本当に、紅魔館というのはわけのわからない空間である。
「けれど、すごいですね。
 油断しているとはいえ、あのお嬢様を一撃で……」
「ええ。彼女は、今回のために特別に雇ったの。
 かつて、幻想郷最強といわれた格闘技『撲針愚』を極めた彼女なら、きっとやってくれると思ったわ」
 ちなみに、そういう人事の決定権はお嬢様及び咲夜にあるのだが、当然として、彼女たちはそんな危険な輩が紅魔館にやってきたことを知らない。
 それはともあれ。
「……あら?」
 そろそろ『疲れたわね』と言いながら、きらきら笑顔でやってくるだろうお嬢様のためにジュースを買ってきた咲夜は、彼女が腰を下ろしていたところに書き置きが残されていたことに気づき、膝を折った。
「えっと……『雨が降りそうだから先に帰るわね レミリア』……」
 空を見上げる。
 確かに、つい先ほどまでは見えなかった雲が姿を見せていた。
「……さっきまで晴れていたのに……」
 本当に、秋の空は心変わりが激しいわね。
 そんなことを思いながら、仕方ない、と彼女は肩をすくめた。ジュースは持って行ってあげようと思ったのか、こぼれないように、しっかりと買い物袋の中に押し込んでから空へと舞い上がる。
 しかし、空へ飛び上がってから一時間もたたないうちに、瞬く間に空は黒雲に覆われ、あっという間の土砂降りが幻想郷を包み込んでしまった。
「……最悪ね」
 わずかに雨に当たっただけなのに、髪の毛の先から雫が落ちていくほどに濡れてしまった咲夜は、手近な木陰で雨宿りをしつつ、空を見上げる。
 降り出した雨が勢いを弱めることはない。むしろ、勢いは強くなってくる。
 あのメイドに言われた時、笑ってないで傘を持ってくればよかった。そう思うのだが、すでに後の祭りである。
 なるほど、レミリアの慧眼は大したものだな、と思いながら、どうしたものか、とため息。
「時間を止めても濡れるものは濡れるし」
 雨粒一つ一つを回避出来る人間など、伝説に聞くルナシューターでも無理だろう、と彼女は思った。事実、その通りなのだが。
「……」
 木立の枝を何本か拝借して、即席の傘を作るしかないかもしれない。
 ふと、そんなことを思う。こうして雨をしのげるのだから、即席でも、まぁ、ないよりはマシだろう。
 ここでこうしていても雨がやむ気配はない。ついでに言えば、帰るのが遅れれば、お腹をすかせたお嬢様と妹さまがおかんむりになってしまうだろう。主に後者が困るので、時間に限りのあるメイド長は『ちょっとごめんなさいね』と頭の上の枝にナイフを向ける。
 ――と。
「……あ……」
 そんな彼女のすぐ前を、一組の男女が通り過ぎていく。
 普段なら、特に気にもとめない光景だっただろうが、今は違う。
「……傘……か」
 一つの傘に二人で。
 俗に言う、相合い傘というやつだ。それで雨をしのぎながら、足早に家路を急ぐ二人は、何だか、後ろから見ていてもわかるくらいに幸せそうだった。
 羨ましいな……。
 そう、ぽつりとつぶやいてしまって、慌てて唇を押さえる。そして、周りに、今の言葉を聞いた人はいないかと、大慌てで周囲を見渡し、ほっと一息つく。
「……人影なんてあるわけないじゃない」
 そもそも、人影があったら、こんな情けない姿など見せてないのだから。
 ため息をついて、彼女は木の幹に寄りかかった。
 雨は、やまない。
「……誰か迎えに来てくれたりしないかしら」
 今頃、紅魔館は忙しいことになっているだろう。
 お嬢様達のお世話に、昼間のうちに終わらなかった館内のお手入れ。そう言えば、今日は、部屋中のベッドのシーツを取り替える日だったわね。そんなことを思いながら、彼女は、手元の懐中時計に視線を落とす。
「忙しいものね……」
 毎日忙しくて。
 なかなか、誰も彼もが暇を取れなくて。
 しかし、そんな日常が充実しているからこそ、自分たちはあそこで働いていたことを思い出して。
 ――今だけは、もう少しだけ、仕事が暇だったらよかったのに、と思わざるを得なかった。
「どうしよう……」
 何だか、即席の傘を作って云々というのもバカらしくなってしまった。
 いっそのこと、濡れて帰るのもいいかもしれない。咲夜は、そんなことを思った。
 もう、季節は秋。当然、空を渡る風は冷たかった。恐らく、雨に濡れて帰れば風邪を引いてしまうだろう。しばらくの間、ベッドが友達になってしまうかもしれない。
 しかし、今は、それでもいいかもしれないと思ってしまう。
 風邪を引けば、彼女は暇になる。そして、恐らく、お嬢様達も見舞いに来てくれるだろう。『何やってるの、もう。風邪を引くなんて、あなたは本当にドジね』。そう言われてしまうかもしれない。
「……それもいいかも」
 自分の不注意なのだから、それは仕方ない。そして、治るまでの間、みんなに申し訳ない気持ちで一杯になってしまうのも。
「……お見舞い、来てくれるかしら」
 誰が、とは言わなかった。言えなかった。
 誰もいないとはわかっていても、誰かに聞かれてしまいそうだったから。バカだな、と自分を笑って。
「さあ、帰ろうかな」
 誰に言うともなくそう言って、彼女は、即席の傘を作る作業を再開しようと、軽くつま先立ちになった――その時だ。
「待ってました?」
 後ろから、声。
 一瞬、どくん、と胸が高鳴った。あっという間に頬が熱くなっていくのを感じる。きっと、今、自分の顔はあの館くらいに真っ赤なのだろう。
「べ、別に、誰を待つって言うのよ!」
 それが悟られないように。
 本当は、嬉しいのを気づかれないように。
 精一杯の強がりを言いながら、彼女は振り返った。
「これから帰ろうとしていたところよ。誰も待つはずないじゃない!」
「そうですか。
 一応、傘も持ってきましたけれど」
「そ、そう……。まぁ、それなら、ありがとう、って言っておくわ。一応、ね」
 差し出された傘を、まるで奪い取るように受け取り、つんと視線をそらす。
「けれど、全身、びしょびしょですね。咲夜さん」
「本当にね。困ったものよ、いきなりだもの」
 この季節を甘く見ていたわ、と彼女。
 広げた傘は、見事な銀色。
「……趣味、悪いわね」
「この前、お嬢様が『咲夜の色ね』って買ったの、忘れたんですか?」
「……そうだったかしら」
 ちょっと覚えてないわね、とつぶやいて、ほんの少しだけ、すまなそうな表情を浮かべた。曲がりなりにも、自分が仕える主人が選んだものをバカにしてしまったのだから。知らなかったこととはいえ、彼女自身にとっては許せないことだった。
「……で?」
「え?」
「あなた、傘は?」
「それですから」
 見れば、広げたばかりの傘には水滴がびっしりとついている。
「……」
「それを差して歩いてきたんですけど」
 気づかなかったんですか? と彼女。
 咲夜は顔を真っ赤にして「う、うるさいっ!」と怒鳴った。
「あ、一緒に帰りましょうよ。私も水に濡れるのってあんまり好きじゃないですし」
「うるさいわね! あんたなんてびしょびしょになって帰ってきたらいいじゃない!」
「まあまあ、そう言わずに」
 彼女は笑うと、咲夜の隣へと、何の断りもなく入ってきた。自分のすぐ横でさらりと揺れる長い紅の髪に、咲夜は一瞬だけ、息を呑む。
 思わず、けほけほと咳き込んでしまってから、「……勝手にしなさい」と彼女は歩き出した。
「咲夜さん、もうちょっと詰めてもらえますか?」
「無理よ。これ、ぎりぎりじゃない」
「ふぅん……」
 じゃあ、と。
 彼女の手が、咲夜の手を握った。そして、ぐっ、と軽く咲夜を引き寄せる。
「これならどうですか?」
 訊ねてくる彼女に、咲夜はもう、言葉もない。
 彼女の掌と、顔と。
 両方を何度も何度も見ながら、目を見開いて、口をぱくぱくさせるだけだ。
 誠、かわいらしい『女の子』の姿に、彼女は苦笑した。
「ちょっと冷たいですね。咲夜さん、帰ったらお風呂に入らないと風邪を引いちゃいますよ」
 その笑顔を最後に。
 咲夜は、顔を上げることが出来なかった。
「知ってますか? こうやって、指と指を絡めあうのって『恋人つなぎ』って言うらしいですよ?」
 その一言に後押しされ、咲夜は見事に『撃墜』されてしまったのだった。

「……よかったですね、メイド長……」
 紅魔館に帰ってきた咲夜は、顔を真っ赤にしたまま、あっという間に一同の前から姿を消してしまっていた。恐らく、時間を止めて逃げ出したのだろう。恥ずかしさのあまりに。
 ある意味、余裕を見せつけていた『彼女』は、手にした傘を戻すためにその場を去り。
 そして、今、メイド達の間に歓喜の嵐が吹き荒れていた。
 見事、『奥手なメイド長に雨の日の相合い傘を』作戦が成功したことに対する戦勝祝いでもあるこの大騒ぎの中。
「あなた達! よくも、このレミリア・スカーレットに面白い真似をしてくれたわね!
 そこに直りなさい! 一人残さず、バッドレディでスクランブルの刑よ!」
 お嬢様がきーきーと怒鳴っていた。当たり前だが。
 というか、あそこまでされて怒らない人間(人じゃないが)はいないだろう。メイド達も、作戦は成功したものの、さて、この怒ったお嬢様をどうしたものかと悩んでいる様子であった。
 と、そこへ一人のメイドが歩み寄る。
「まずはあなたからね! いいわ、覚悟しなさい!」
「お嬢様、本日は、大変、申し訳ない真似をいたしました。まずはそれをお詫び致します。
 それから、お詫びといっては何ですが――」
「お詫び? ふん、今更、命乞いかしら?
 まぁ、いいわ。わたしも寛大を売りにしているもの、遺言くらい聞いてあげるわ」
「今夜の晩ご飯に、お嬢様の大好きなハンバーグとコーンスープとスパゲッティ、グラタンを用意しました。食後のデザートにプリンとケーキ、フルーツポンチ、それからお飲み物には、先日の美味しいオレンジジュース」
「……」
「明日の三時のおやつにロイヤルチョコレートケーキも用意させて頂きました。
 どうぞ、お怒りをお鎮め下さい」
 ちなみに、ロイヤルチョコレートケーキというのは、『ロイヤル』という名前がつく通り、超がつくほど高貴な味わいを醸し出す、ここ、紅魔館レストランの名物の一つである。一日五食限定、館主であるレミリアすら滅多に口に出来ない、伝説のお菓子なのである。
 ――さて、普通、そこまで怒っていたならこの程度のことで心は揺らがないものである。事実として、レミリアも、尊大に、ちんまりとした腕を組んで相手を見上げていた。そして、彼女の口が開く。
「……お腹がすいたわ」
 見事、つれたらしい。
「それでは参りましょう」
「全く、しょうがないわね。今回だけよ。次回からはないからね」
 顔は難しい顔を維持したまま、しかし、羽はぱたぱた動かしながら、レミリアがメイドに連れられ、消えていく。
「……さすが……」
「お嬢様のことを完璧に把握しているわ……」
「恐るべし……」
 誰もが畏怖と尊敬の視線を向ける、ここ、紅魔館最古参のメイドの背中。それは、とても大きく、また同時に、とても圧倒的なものなのであった。


「……で」
「まぁ、私は結局、保険だったからさー。何事もなくて、逆に丸儲けよ~」
「……そうか」
「で、あの天界のは、色んな意味で『やり遂げた笑み』を浮かべて倒れているところを文が激写して、その後、天狗の住処に宣戦布告したらしいわよ」
「……」
「けど、あれよねー。
 まさに、雨が降って地面が固まったわよねー」
「……いや、まぁ……本気でそう思っているのなら、私は何も言わんが……」
 晴れ渡った青空に、かかるのは虹がただ一つ。
 それを見上げる博麗の巫女の顔は、やたらと笑顔だった。そして、その横に座る慧音の顔は、もう色んな意味で『ダメだこいつら……』な顔だった。
「祝福しないとねー」
「……それについては同意せざるをえんのだが……。
 いや、霊夢殿。結果はともかくとして、もう少し、結果に至るまでの過程をだな……」
「ごめん下さい、霊夢さんはいらっしゃいますか?」
「はいはーい! いますいますいまーす! またお手伝いしまーす!」
 どたばたどたばた……。
 走り去る巫女の後ろ姿を、ただ、慧音は見送るのみ。そして、一言、ぽつりとつぶやく。
「……悪くはないと思うさ。
 だが……その……ああ、いや、やめとこう……。どうせ言っても無駄だろうからな……」
 段々と、『まともな人間』が住みづらくなってくる、ここ幻想郷。
 もう少ししたら、幻想郷の中に、真面目な奴らだけが集まって『新しい幻想郷』が出来るのかもしれないな。しかも、それほど遠くない将来に。
 色んな意味でやるせなくなって、慧音は、彼女が戻ってくる前に、そっとその場を辞したのだった。
季刊? 何かそうなりつつある今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
季節は秋となりました。秋なので秋っぽく秋らしいお話を考えようとしたら、なぜか秋というより
もうダメな秋になってしまいましたが、気にしてはいけません。
この頃、この紅の館の力関係がぐらぐらと揺れまくっているような、そんな気がしてならない日々ですが、のんびりと、秋をご堪能下さい。
haruka
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1850簡易評価
8.80煉獄削除
場面が切り替わるときには、もっと行間を空けたほうが良いですよ。
そうしないと突然変わったようにも感じますから。

話的にはレミリアがモノに釣られるのがちょっと不憫でした。(苦笑)
咲夜さんと美鈴の関係も良かったです。
22.90名前が無い程度の能力削除
>ハンバーグとコーンスープとスパゲッティ、グラタン
なんという魅力的な献立…これは釣れる
24.無評価名前が無い程度の能力削除
お嬢様どうなったの?
25.20名前が無い程度の能力削除
『紅魔館メイド部隊』って、オリキャラの集団ですよね?
しかも、かなりでしゃばっているタイプの。
私にはこのお話の中で霊夢、魔理沙、アリス、パチュリー、慧音、幽香は、
居ても居なくても変わらない“添え物”にしか見えませんでした。
衣玖も微妙。一応ストーリーに絡んではいましたけど、オリキャラにいいように
使われただけですし・・・。
31.90名前が無い程度の能力削除
しょっぱなのゆうかりんに吹いてしまったww
ゆうかりんシリーズも待ってます(笑)