Coolier - 新生・東方創想話

少食レミリア - Argentum Angel -

2008/10/13 12:30:17
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レミリアは不満に思っていた。
自分の少食を、かのメイド長がひどく嘆くのだ。
この前など、食べないと背が伸びませんよ、だなんて。とんでもない皮肉だ。
まったく、子ども扱いしやがって。あんたは私のカーチャンかっての。
この私の零割四分零厘くらいしか生きてないくせに。

「でも……」




昼前の博麗神社。天気は雲量が7割といったところか。
日傘を差した吸血鬼と腋を晒した巫女が他愛もない会話にふけっている。

「ねぇ、霊夢。」
「何?れみりゃ。」
「その呼び方はやめなさい!ってそんなことより、聞きたいことがあるの。」
「何?」
「たくさん食べるにはどうしたら良い?」
「私にそれを聞くか!」
「そうじゃなくて、うちのメイドが『お嬢様は少食で困る』って五月蝿いのよ。あいつも大概華奢だってのに。
それで、夜の王の私としてはそんなメイドの不満をパァーッと蹴散らしたいわけ。」
「理屈が変な気もするけど……そうねぇ、何も食べなきゃいいんじゃない?胃の中空っぽになるわよ。
かくいう私も朝から何も食べてないし、今なら緑茶だけで3リットルは入るわね。」
「そんなに入るもんなの?どっちにしろあまり問題解決になってないような気もするけど。」
「物の例えよ。しっかし、あんたも遊びに来るなら血の一杯でも持ってきなさいよねー。(ギロリ)」
「は?!」
「あーあ、紫あたりが人肉でも持ってきてくれないかなぁ。ウフフ。」
「!!そ、それじゃあ私はこれで。し、失礼するわ!」

巫女があまりに鬼気迫る表情で睨んできたので、吸血鬼は逃げるように博麗神社から逃げ出した。

「ま、冗談なんだけどね。さて、あまりものの素麺でも食べますか。10月だけど。」
「昨日も素麺、今日も素麺、明日も素麺、毎日素麺、ラーララララー♪」
「げぇっ!紫!」
「何よぅその言いかた。せっかくあなたの大好きな人肉持ってきたのにー。」
「いらないわよ!っていうかまた盗み聞きしてたのね?」
「あら、いつものことじゃない。あと、人肉じゃなくて大蒜よ。」
「本当に?」
「本当に。」








子どもの考えることって単純ね。




「お嬢様、またこんなに残して。というより、手付かず。」
「もういいわ。今日は食欲がないの。」
「最近いつもそうじゃないですか。お体に障りますよ?」
「そうよレミィ。あなた、1週間ほとんど何も食べてないわ。少食と断食は違うよ。」
「もう!私がいいって言うんだからいいの!それじゃ、部屋に帰って寝てるから、絶対入ってこないでね!」
「お嬢様……パチュリー様、お嬢様は何かの病気なんでしょうか?」
「さぁ?ただのわがままじゃない?」
「まったく、美鈴は1人で3人前食べるし、妹様はお行儀が悪いし。パチュリー様は……」
「あなたもね。咲夜。」

お嬢様と同じく少食だと言おうとして遮られる。困惑したような沈黙が訪れた。

「私、お嬢様の部屋に行きます。」








あの子は言った。「死ぬまでは、一緒にいられますよ。」
主の気も知らないで。結局、私を置いてけぼりにするんだ。




そろそろいいかしら。いやもう少し。もう少し、空っぽにしたほうが。
だって、あんなに沢山入るかしら。フフ、ウフフフフ
必ず成功させる。理性を保つのに今まで必死だったんだから。

「お嬢様。失礼します。」
なんだ。入ってくるなといったのに。
「お嬢様、入りますよ。」
だめよ咲夜。あなたには、もう少し待っててほしいの―――

「お嬢様。」
「うわ!」
「お嬢様、お粥をお持ちしました。」
「ちょっと!いつの間に入ってきたの?でてって!」
「いいえ、お嬢様がちゃんと食事をとるまで動きません。」
「もう!こっちはまだ準備が……いえ、勝手にしなさい!」
「何か悩みでもあるのですか?」

粥の食欲をそそるにおいが鼻を突く。

「う……」
「食事も喉を通らないような悩みなのですね?」
「そんなこと…ない…わよ。」
「そんな弱弱しい声を出さないでください。ほら、精のつくものを沢山入れましたよ。」
「く…あ…あ…」

レミリアの中で、何かが切れた。飢餓感に支配された脳が暴走を始める。
従者の囁きと空腹に知ってか知らずかついにレミリアは粥を貪る。なんとなく体が熱い。
食欲も湧いてきたようだ。ついでにこの子も食べてしまおう。彼女が油断している今ならば、今ならバ!
粥を半分程平らげて、レミリアは皿をつき返した。

「もういい。」
「もう、せっかく食べてくださると思ったのに。」

偉そウに。目の前の女ハ何モノだ?白イ肌、整っタ顔立チ、絹のようナ銀髪、そシて……天使のヨうな微笑ミ。
そうダ、コの私の四分も生キていナい小娘ごトきガ、私の天使様……デモ……ソレガ……ナンテ刺激的。

「ハハ、アハハ」
「お嬢様?」

悪魔にかしズく天使、ナンテ背徳的ナンダロウ!
捕マエナキャ。放ッテオケバ、勝手ニ成長シテ、勝手ニ私ヨリ大キクナッテ、ソシテ最後ニハ……
ソレハ、許セナイ。ダカラ、ダカラ、オイテケボリニシナイデ!

「堕ちよう。」
「はい?」
「私と一緒に堕ちましょう!」
「お嬢様、何を?!」

瞬きするまもなくベッドに押し倒される咲夜。
いまだに自分が何をされたか理解できず、キョトンと主を見上げる。
愚カナ天使様。私ガ誰ダカ忘レタノカ!

「3リットル……」
「お嬢様……?」
「あなたに流れる、血の総量よ!」
「いやあぁぁあああ!」

ときすでに遅く、吸血鬼の牙は従者の首に真っ直ぐ突き刺さっていた。
飢餓感に任せて血を吸い尽くさんとする悪魔。洋服が、ベッドが血に汚れる。
もうすぐ、もうすぐで致死量に!
ここまでは或いは悪魔の思惑通りだったのかもしれない。だが。

「グ…グプッ?」
「う…あ…?」
「…フ…フフフ……ハハハ…」
「おじょ…う…」
「本当に、私としたことが……お粥のせいで、おなか一杯だ……」




翌日。
従者の失血量は実際には致死量に程遠く。
昨日と変わらぬ姿でレミリアの傍らに腰掛けていた。

「本当にどうかしてたわ、私。」
「気にしてませんわ。」

そんなことより、と、従者は吸血鬼を抱き寄せる。
一言私に言ってくださればいいのに。驚いたように顔をあげる吸血鬼に、

「でも、丁重にお断りしますけどね。」
「フン……」

普段は従順な従者もこのときばかりになると頑なであった。

「でも、死ぬまでは一緒にいられますよ。」
「……約束……するわよね?」
「もちろんです。」

私からもお願いが、と従者。

「これからは毎日三食食べてくださいね?」
「うん。」
「お嬢様と天使様の約束ですよ?」
「なッ!!!」
「それでは失礼致します。」
「ちょっと!」

待ちなさい。といい終わらぬうちに従者は姿を消した。
まったく、あの神出鬼没さは隙間妖怪並だわ。

それにしても。あの子はまた、私の前に舞い降りるのだろうか。

「そのときは……。」

必ず自分のものに。私は決して諦めたわけではないわ。

「堕ちなさい……十六夜咲夜。」





子どもの考えることって単純ね。
お初にお目にかかります。

初投稿は見ての通りの毒電波です。ロリコンってこういうことかい?みたいな。
欲に溺れるお嬢様も悪魔的でいいなぁと個人的には思ってたり。
しかし、最後がなんとなく間抜けな感じになってしまいました。レミリアファンの皆様申し訳ない。

タイトルのArgentumはラテン語で「明るい、輝く」の意。
銀の元素記号Agの語源でもあります。「堕ちる」とかけたりかけてなかったり。
私はZUN氏ではないのでこの程度の謎かけです。

食とお嬢様を組み合わせると、直ちに吸血行為が連想されてしまうのが、作者にとっては痛し痒しだなぁ。

最後に、このSSを最後まで見てくださった皆様に感謝いたします。
TOBBY
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コメント



0.810簡易評価
13.60名前無いかも削除
0割0分4厘だと2歳になっちゃうんじゃない?
0割0分4厘=0.004×500=2
0割4分 =0.04×500=20
15.80煉獄削除
咲夜さんは本気で死ぬときまでずっとレミリアと一緒にいるんでしょうねぇ・・・。
それが従者としてなのかまた、別の事なのかは解りませんが。
中々面白かったですし、文章も読みやすく良かったです。
17.80名前が無い程度の能力削除
ゆかりんは素麺食べるのに大蒜持ってきてどうするつもりなんだろう?
20.無評価TOBBY削除
コメントありがとうございます。

>>13様
ご指摘の通りです。お恥ずかしい。修正しました。

>>15様

お褒めいただき光栄です。
お嬢様からすれば、何が起こってるかわからないまま
咲夜さんにしなれてしまうのだろうと思ったのがきっかけです。

>>17様

「本当に」と言う単語を言わせたかっただけですw

それでは、またお会いしましょう。