※この作品は創想話内にある『私の隣に』の続編です。まずはそちらをお読みください。
完全に百合作品です。また一人称視点で話が進みます。
また独自な設定や解釈があります。
それと少しですがオリジナルキャラがでてきます。
それらをご了承のうえよろしければお進みください。
・・・・・・ああ、私はきっとそのことに気づいていたはずだ。
なのに気づかない振りをしていた。・・・とても、とても幸せだったから。
それに気づくことで悩み、苦しみ、そして変わってしまうのが怖かったのだろう。どうなってしまうかわからない”未来”が怖くて幸せな”今”に逃げたのだ。
だから、それがあんたをこんなにも苦しめていたことに気づけなかった。・・・おかしいわよね。私よりも聡明なあんたがそのことに気づかないわけがないのに。私はあなたが苦しんでいただなんて考えもしなかった。
愛している。”今”のあなたに送る言葉。でも、これじゃ足りないね。だから、”未来”のあなたに私は誓おう。
━━私は、博麗霊夢はあんたを、八雲紫を永久に愛し続けるということを。
幻想郷の端に位置する博麗神社。参拝客など来る気配はまるでなく、今日も今日とて私はお茶をすすっていた。
「はぁ~、やっぱりお茶っていえば日本茶よね。・・・・・・って、ていっ!」
「あいたっ!?」
スキマからすすっと伸びた手をはたく。こっそりとお煎餅を狙ったのだろうけどスキマの開く気配すら明確にわかるようになってしまった私には通用しない。
「何はしたないことをしているのよ、紫。」
「”霊夢からこっそりお煎餅を奪っちゃおうゲーム”よ♪」
「またわけのわからないことを。・・・ほら、いいからさっさと座りなさい。」
「はぁ~い。」
スキマから全身を現した紫はもうすっかり定位置となった私のすぐ真横に腰をかけた。そして私が事前に用意しておいたお茶を一口。
「はぁ、やっぱり霊夢が淹れてくれたお茶はおいしいわね。」
「大事に飲みなさいよ。今日のは結構上等なものなんだから。」
「あら?それじゃあ少しずついただくわ。」
そう言ってまた一口。ほっと安らいだ顔をしてくれるとただ淹れただけとはいえ私もうれしくなる。まったく、こんなことくらいでうれしくなれるなんて恋とは恐ろしいものだわ。
紫と恋人同士になってからもうすぐ一年が経とうとしていた。ほとんどはそれまでと変わらない日々を過ごしていたが、たまに恋人っぽいこともしたことはある。バレンタインとかいうイベント等だ。
それでせっかくの一周年という記念日なのだから何かしたいと思って最近頭を悩ませている。でも恋人が出来たからってそうした知識が増えるだけでもなく、乏しい頭をフル回転させてもなかなかいい案は思い浮かばなかった。
「・・・ん、どうしたの霊夢。ぼーっとしちゃって?」
「えっ、あ、ああちょっと気が抜けてただけよ。別になんでもないわ。」
「そうなの?でももし何かあったら私に言ってね。絶対に力になるから。」
危ない危ない。紫には内緒にしておきたいのにこんなに態度に出していたらすぐにばれてしまう。これまでのイベントは全部紫から持ち込まれたものだから、こんなときくらいは私から何かしてあげたい。もちろんビックリさせたおいという想いもある。
とはいえこのままでは先に進まないのも確か。ここは一つそれとなく聞いてみよう。
「紫って何かほしいものある?」
「えっ、どうしたの突然?」
(ってこれじゃ率直すぎるじゃない!?え、えっと何か上手くごまかすことを!!)
「ほ、ほら恋人同士になってからそういった基本的な話をしたことがないじゃない?だからちょっとどうなのかな~って思ったのよ!」
嘘ではない。それ以前から付き合いが長かったからか互いのことをあまり話し合ったことはなかった。だから彼女が何をほしがっているのかとか、よくわからないのだ。
・・・これからはもう少しそういうことも話そう。現状に満足したままというのは何かよくない気がするし。
「ああそういうこと。そうね・・・。」
(・・・なんか上手くごまかせたみたいね。)
てっきり不思議がって問い詰めてくるとか思ってたけど。まあもしかしたら彼女も私と同じことを考えたのかもしれないし、気にしていないならそれでいいか。
「・・・・・・何も、ないわね。」
「うそっ!?」
そりゃ確かに何がほしいとかというのは人によって違うけれどだからって何もないとは。それに紫だったらないならないで「霊夢がほしいの。」とか言ってきそうなものなのに。
「・・・だって、今が最高に幸せじゃない。あなたとこうして一緒にいられて。」
「えっ?・・・ええっと、うん。私も。」
思わず顔が熱くなる。そういうことか。それは、まあ私も同じ気持ちだからわからないことはないけれど。でもほしいものとそれは違う気がするような。
(でもそう言われたら仕方ないか。まあ自分で考えるのが恋人としての私の試練だとでも思おう。)
「・・・霊夢。」
突然腕を絡めてくる。そのまま私に寄りかかり身体をすりよせてくる。
「どうしたのよそんな甘えてきて。」
「んっ・・・なんとなく。」
(やれやれ。仕方がないわね。)
最近こうしたことが増えてきた気がする。人前でされると困るけど、まあ二人っきりならいいか。私も紫の温もりを感じられて心が落ち着くしね。
「う~ん、さすがにちょっと大胆だったかしら?」
神社に続く石段を登りながら私はつい先ほど人里のお店に受け取りに行った物を手にし、少しだけ悩む。今さらではあるが手にしてみて初めて自分が作ってもらったものの意味を考える。
(む~、やっぱり指輪にしたのは間違いだったかな。)
そう、それは指輪。一周年の記念にと考えに考えた結果がそれだった。
最初は何か形として残るものにしたいと思い、次は置物などではなく身につけてもらいたいと思った。そうやって試行錯誤していった結果、いつも付けていても邪魔にならなずそれでいてその存在を意識させさらには一応紫が女性であるということも考慮してこの一品となった。
・・・アイディアそのものはいいと思うんだけど。でもやりすぎたような気がしないでもない。
(ま、まあ別にプレゼントとして送ったっておかしいものじゃないし大丈夫でしょ。デザインだってシンプルだし。)
飾りなどを入れていないシンプルなデザインの指輪。唯一の装飾は中央にはめ込まれた金剛石だ。以前地下で起きた異変の際に緊急時の生活の足しになればと拾った天然石などの中にあったものだ。これまた換金すべきかどうか相当悩んだが、一度しかないことと思いこうして指輪の一部にしてもらったのだ。もちろん代金はその他の宝石を売ってまかなった。
(ここまでしたんだから泣いて大喜びくらいしてもらわないとね。)
ちょっと想像してみる。指輪を受け取った紫が泣きながら喜ぶ姿を。・・・うん、悪くない。
今日も紫が来るのは昼をすぎてからだろうし、それまでは記念日をどう過ごすか考えながら待つことにしよう。
「・・・・・・おかえりなさい、霊夢。」
「紫?どうしたの、今日はやけに早いわね。」
神社に着いたらすでに紫が待っていた。まだ昼前だしいつもと比べると数時間は早い。
(あ、ということは何か企んでるってことね。)
良くも悪くも紫はこちらの考えつかないようなことをしてくるためそれに驚かされたことも何度もある。今回もそうなのかもしれないから気をつけないと。
「・・・話があってきたの。」
「改まってということは重要なこと?」
「・・・そうね。とても大事なことかもね。」
表情は真剣そのもの。つまり絶対に何かある。緊急の異変とかならこんなまどろっこしく言わないだろうし、やはり私が驚くようなことを言うつもりだろう。いや行動でくるだろうか?どちらにしろ身構えてさえいれば問題はない。
「・・・・・・私たち別れましょ。」
「・・・・・・へっ?」
・・・・・・あ、ああこれは確かに驚いた。驚いたどころか一瞬目の前が暗くなったわ。まったく、冗談にしても性質が悪いわ。
「冗談じゃないわよ?本気で言っているわ。」
「・・・っつ!?」
空気が変わった。張り詰めた、まるで戦場のような空気に。そして何よりもその鋭い眼光。・・・・・・紫は本気だ。本気で私に”別れよう”と言っているのだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ紫!!なんで、どうしてそんなことを言うの?いつもの冗談よね、そうよね?」
今まで紫から向けられたことのない威圧感を感じ自分の血の気が引いていくのがわかる。もちろんそれだけではない。その言葉のもつ意味が私の心を締め上げていく。
「どうして、ね。・・・そうね、飽きたのよ。」
「あ、き、た?」
「そう、飽きたの。人間の女と付き合ってみるのってどんなものか試したかったのだけど、大したものじゃなかったわね。」
嘘だ。そんなことあるはずがない。紫がそんなこと言うはずがない。だって・・・。
「だって、だって愛してるって言ってくれたじゃない!!ずっと、ずっと隣にいてって言ったじゃない!!」
「それは言うわよ。だって恋人ってそういうものでしょ?」
紫が笑う。でもその目は一切笑っていない。そんな、そんな笑い方しないでよ。いつものように優しく私に笑いかけてよ。
「まあ一応お礼を言っておくわ。ありがとう霊夢。一年間、いい暇つぶしになったわ。」
「待って、待ってよ紫。私はいやだよそんなのって!!」
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
「気まずいでしょうから私はもうここへはこないわ。だから霊夢も私のところへは来ないようにしてちょうだい。もうお互い会わないようにしましょ。」
「待って!!待ってよぉゆかりぃ!!」
「・・・・・・さようなら。」
身体はまるで鉛にでもなったかのように動かず、それでも必死に伸ばした手はただ空を掴むばかりで。・・・そして、紫はスキマの奥へと消えていった。
「・・・あ。」
視界が暗転する。身体の制御がきかない。意識が闇へと喰われていく。
(・・・・・・今日は二人が恋人になってちょうど一年だったのになぁ。)
薄れゆく意識の中でそんなことを思った。
目を覚ます。靄がかかったように思考がぼやけてるが開いた目に差し込む光で今が昼間であることを理解する。
(ここってどこだっけ?)
身体が動かないから視線だけを動かす。どうやらここは家の居間で、畳が目の前にあるということは私は倒れているのだろう。
(あれっ、なんで私倒れてるんだっけ?)
ぼんやりとした頭で記憶を手繰り寄せる。同じように記憶も曖昧だが一つだけ鮮明に覚えていることがあった。
(・・・・・・紫。)
ああそうだった。私は紫にフラれたのだった。あれから数日たったが心の空白は一向に埋まる気配がない。それどころか広がり続けるばかりだ。そうやって”博麗霊夢”という存在が希薄になっていくのがわかる。
(私、このまま死ぬのかな。)
自分という存在の消失はすなわち死そのものだ。それに実際問題肉体的にもそろそろ限界だろう。あれから食事をとった記憶なんてない。まともに身体を動かすこともしていない。私は”生きる”ということを放棄していた。
(それでもいいかもね。もう紫が私の側で笑ってくれることなんてないんだしね。)
紫がいない。たった一つその事実が私を殺す。
(ははっ、まさかこんなにも紫のことを好きになるなんてね。)
一年。人の生にしても僅かで妖怪からしたらそれこそ瞬きをする程度の時間。だが、たったそれだけの時間が私に紫のことをこれほどまでに愛させた。後悔などない。むしろ誇らしい。ああ、誰かを愛するということはなんて素晴らしいのだろう!!
・・・・・・だからこそそれを失ったときの代償が大きい。想いが強ければ強いほどそれは自分へと返ってくる。そして私の紫への愛は自分の生と同じくらい大きく、だから今の私には自分の生がない。
(せめて夢のなかでくらいあなたに会いたい。)
身体から僅かに残った力も抜けていく。意識を手放そうとする。たとえ次の目覚めがなかろうとかまわない。だから、だからせめてよい夢を・・・。
「おーい霊夢、遊びに来たぜ!!」
だが聞こえてきた声がかろうじて私の意識を繋ぎとめる。一体誰だろうか?”私”などいないからさっさと帰ってくれ。
「留守かー?どちらにしても勝手に上がらせてもらうぜ。」
ドタドタと床を蹴る振動が伝わってくる。この声にこの態度、来たのは魔理沙か。
「おーい、ほんとに留守か・・・って、おわぁ!?何倒れてるんだよ霊夢!!」
声のする方へ視線を上げる。やっぱり魔理沙だったか。何驚いた顔してんの・・・っていきなり人が倒れてるのを見たらそりゃあ驚くか。
「寝ているわけじゃないよな。おい、どうしたんだよ霊夢。っておい、顔色凄く悪いぞ!?」
抱き起こされる。数日間飲まず食わずだから当然だろう。精神的にも死人同然だしね。
「どうしたんだ病気か?なら永淋のところか?いやそれよりもまずは熱を測って・・・ていうかまずは布団に横にさせないと!!」
わたわたと慌てる魔理沙。心配してくれてありがとう。でも、私はもういいの。
「・・・ま、り、さ。」
「!?意識はあったのか。霊夢、一体どうしたんだ?病気か?凄くやつれているぞ?」
矢継ぎ早に質問をしてくる。少しは落ち着けばいいのに。あ、でも私が魔理沙の立場だったらやっぱり慌てるかな。
「大丈夫。・・・だから、聞いてほしいことがあるの。」
「聞いてほしいこと?こうなった理由か?いいぜ、何でも言ってみな。」
魔理沙にはこのことを言っておくべきだろう。いや言わなければならない。魔理沙には聞く権利があるのだから。
「実はね・・・・・・。」
ゆっくり少しずつ魔理沙に話していく。そのたびに心は痛むけれど、でもちゃんと話さないといけない。彼女の気持ちに応えられなかった私を、私たちをそれでも応援してくれたのだから。
「・・・・・・そんなことがあったのか。」
「うん。色々と気にかけてくれてたのに、ごめんね。」
語り終えても気分が晴れることはない。紫のことは当然として魔理沙にも本当ならこんな報告をしてはいけなかったから。
「・・・この大バカもの!!」
「はいっ!?」
(ってちょっと待て、なんでいきなり罵倒されなきゃならない?)
「だからこの大バカものって言ったんだよ。なんで見す見す紫を帰しちゃうんだよ!!」
「だ、だって私のこと飽きたって。もう会わないでって言われて・・・。」
「だ・か・ら、それなのになんでお前は何もしないんだよ。まさかお前の想いは飽きたって言われたくらいで冷めてしまう程度のものだったのか?」
「そ、そんなわけないでしょ!!私は本気で紫のことを・・・!!」
「だったら追いかけなきゃダメだぜ。本当に大切ならそんな簡単に手放しちゃダメだ。」
魔理沙の言いたいことは頭ではわかる。でも・・・。
「でも、紫は本気で言っていたんだし・・・。」
「また拒絶されるのが怖いのか?」
「・・・うん。」
そう、怖いのだ。もしもう一度あの目をされもう一度同じことを言われたらと思うと怖くてたまらなくなる。そのときは本当に絶望で死んでしまうんじゃないだろうか。
「それでも、だぜ。どれだけ傷ついても最後の最後まで諦めたらダメだ。だって、だってお前は一度拒絶されたくらいでこんなになってしまうくらい紫が好きなんだろ?」
「・・・。」
「その想いをちゃんと伝えるんだよ。紫の負の言葉をかき消してしまうくらいお前の言葉をぶつけるんだ。想いだってパワーだぜ!」
「そ、う、よね。一方的に言われただけでまだ私はちゃんと話してないもの。ちゃんと私の気持ちを話して、それでダメならそのとき悩めばいいわ。」
「そうそう、その意気だぜ。」
そうだ。こんなところで絶望していたって何も変わらない。本当に大切な人だからこそ手放したくないからこそわがままでもなんでも動き出さなければ。となれば善は急げだ。
「さっそく行ってくるわ!!」
「ってちょっと待て!!そんな状態でいくつもりかよ?」
「・・・あ。」
ここ数日間まともに風呂も入っていないし着替えらしい着替えもしていないため私の格好はボロボロだった。それに勢いよく立ち上がったのはいいけれど身体はフラフラでとても紫のところまでいけそうにない。気力を取り戻してから空腹感も酷い。
「簡単なものなら用意してやるからさ。霊夢は風呂にでも入って身支度をしてな。みっともない格好じゃ紫に会わせる顔がないだろ?」
「・・・そうね。そうするわ。ありがとう魔理沙。」
「どうってことないぜ。そうだお湯を沸かすなら私がやってやろうか。マスタースパークなら一瞬だぜ?」
「冗談、そんなことしたら風呂場ごと吹っ飛ぶわよ。」
軽口を言い合うくらいの余裕はでてきた。気は急くもののここは一度落ち着いた方がいいだろう。
「・・・しかし、紫がいきなりそんなことを言い出すかな?」
「どういうこと?」
「ハッキリ言うけど紫が霊夢のことを飽きたり嫌いになったりするなんてありえない。」
「でも現実にそう言われたわ。・・・纏った気配からしてあれは本気よ。」
「それも変なんだよな。飽きたって言うのにそんな本気になる必要があるか?むしろそういう言葉は気だるそうに言われた方が効きそうだけどな。」
「・・・確かに。」
あのときは私も冷静さを欠いていた。今になって考えてみれば確かに何かおかしい。
「それにな。二人が一緒にいるときって凄い幸せオーラを発してるんだ。見ているこっちまで思わず幸せになってしまうくらいのな。」
「・・・。」
「もちろん二人の表情もそうだ。特に紫なんかとろけきった顔してるんだぜ。それなのにいきなりそんなことになるなんておかしいと思うぜ。霊夢だって一年も一緒にいたんだからそれくらいわかるだろ。」
「・・・うん。」
そうだ。紫が私の側にいて幸せであったことに嘘なんてない。それは互いの温もりが教えてくれていた。・・・そんなことさえわからなくなっていたんだ、あのときの私は。
「まあそれは本人に聞くべきだろな。もしかしたら何か理由があるのかもしれないし。もしそうだった場合は霊夢、お前が力になってやらなきゃな。」
「わかってるわよそんなこと。」
もし紫に何かあるというなら私が力になる。絶対にだ。
「っ!!・・・ふぅ。」
まだ冷たい水が肌を突き刺す。時間が惜しくてお湯が沸く前に入ってしまったが、むしろこの冷たさが意識を覚醒させてくれるので助かる。
「・・・・・・理由、か。」
魔理沙の言葉で私は二人で共に過ごした時間を、その幸せを思い出すことができた。だからもう気持ちは揺らがない。私は紫を愛しているし、私を愛してくれた紫もまた本当だと信じられる。だからこそ紫がなぜあんなことを言ったのか、それが気になって仕方がない。
(・・・・・・愛してるって言っておきながら紫が何を想ってあんなことを言ったのかわからないなんてね。)
ただ側に居られるだけで幸せ。それは素晴らしいことだけど、それにだけ甘えていた結果がこれだ。好きなら、心から愛しているならなおのこと相手を知ろうとしなければならない。・・・ただでさえ人間と妖怪、種族が違うのだから。
(・・・ん、今何か引っかかったような。)
考える。それが手がかりになるかもしれないから。一瞬だけ閃光のように脳裏を掠めたそれを捉えようとする。
(・・・人、・・・妖怪、・・・違い、・・・・・・もしかして!?)
もしそうだとしたら、私はなんてバカなのだろう。紫がいつこのことに気づいたのかはわからない。だがつい最近なんてことはないだろう。となれば紫はずっと長いこと一人で苦しんでいたことになる。すぐ隣で大切な人が悩み苦しんでいたというのに私ときたら・・・。
「・・・待っててね、紫。」
すぐにあなたのもとへ行くわ。
魔理沙が作ってくれた軽食を胃に詰め込んですぐに私は飛び出した。彼女は意外に料理が上手いからあの短時間でも結構しっかりとした食事を用意してくれたのだ。今度ちゃんとお礼をしないと。
(・・・・・・見えたわ。)
紫の家が視界に映る。だが私は直接向かわずに一旦その近くに降りた。少しだけ心を落ち着ける時間がほしかったし、それに・・・。
「・・・・・・やはり来たな、霊夢。」
「・・・藍。」
私の前に藍が立ちふさがる。表情は真剣で、声も固い。私を威圧するようにして家までの道をふさぐ。
「紫に私を通すなとでも言われてるのね?」
「ああ。紫様からは何があってもお前を通すなと命を受けている。」
「・・・・・・ねぇ、約束を守れなかった私を恨んでいる?」
あの日、私は藍とそして自分の心と一つの約束をした。配慮のなさからこうして自ら破ってしまった約束を。
「霊夢、お前に頼みがある。」
「何よ一体?そんな改まって。」
「・・・ずっと紫様の隣にいてやってくれ。」
「それってどういう意味よ?」
「そのままの意味だ。紫様の隣で、紫様の心を満たしてあげてほしい。」
「何よそれ。紫の心に欠落でもあるっていうの?」
「紫様が遥かに永いときを生きているのは知っているな。そしてまたその力ゆえに多くのものから畏怖の念を受けていることも。」
「ええ。どちらかと言えば私たちのように紫と接するものの方が珍しいのよね。」
「ああそうだ。・・・・・・だから紫様は温もりを求めている。自分の側で自分のことを想ってくれる、自分を満たしてくれるものを。」
「あんたじゃダメなの藍?紫はあんたのことを自分の子どもみたいに大切に想っているみたいだけど。」
「わかっているさ。それに私だって紫様のことを主としてだけではなく母としても慕っている。・・・だが、子ではダメなんだ。」
「どうして?」
「紫様が必要としているのは自分と共に歩んでくれるもの、言うならば人生のパートナーを求めている。もちろんそんなこと表にはださないがな。」
「・・・あんた私にそれを言うってことはそれがどういう意味なのかわかっているの?」
「ああ。だからこれは単なる私のわがままだ。親を想う子どもの、な。」
「・・・まったく、いきなりとんでもなく重いことを言って。残念ながら約束はできないわよ。先のことなんてわからないんだし。」
「・・・当然、だろうな。いやすまない霊夢。変なことを言ったな。」
「・・・・・・でもそれ以外のことなら一つだけ約束してあげる。」
「んっ?」
「私が紫のことを好きでいる限り、そして紫が私のことを好きでいてくれる限り私は紫の側に居続ける。それなら約束してあげるわ。だから、今はそれで妥協しなさい。」
「・・・十分だよ。ありがとう霊夢。」
「別にお礼を言われることじゃないわよ。私が好きで言ったことだもの。」
「それでも、ありがとう。」
「恨んでなんかないさ。今回のことは紫様が自分からしたこと。霊夢に非なんてないよ。」
「・・・・・・紫はどうしてる?」
「・・・あの日から泣き続けている。泣き疲れて眠ってしまうとき以外ずっとな。食事にもまったく手を付けられていない。」
「そっか・・・。」
やっぱり紫は今でも私のことを愛してくれていた。それはとてもとてもうれしい。けど、今彼女を苦しめているのその想いの所為だ。
「あんたはなぜ紫がこんなことをしたのかわかってるの?」
「ああ。その様子だとお前も気づいたのだろう?それが紫様がこんなことをした理由だ。」
「・・・・・・まったく。大切な人が悩み苦しんでいることにも気づかないなんて恋人失格ね。」
「仕方ないさ。自分にとって身近なことには案外気づけないものだ。私だって最近まで気づけなかったし、紫様だって最初からわかっていたわけではないだろう。」
それでも私がそれをわかってあげられていたら、こうやって紫が苦しむことはなかった。
「・・・霊夢。お前がそれに対しどのような答えをだしてここに来たのかはわからない。だがそれがどんなものであれ今の紫様の心に踏み込めるのはお前しかいない。だから、だから頼む霊夢。紫様の涙を止めてやってくれ!!」
そう言って頭を下げる藍。
「私を通してしまっていいの?式が主の命に背くことは大変な命令違反じゃない?」
「わかっているさ。たとえこの身を八つ裂きにされたって構わない。それでも、あんな紫様を放ってはおけないんだ。」
紫がそんなことをするわけがないと思うけどね。・・・その想い、確かに受け取ったわ。
「任せて。紫を、救いにいってくるわ。」
「頼む、霊夢。」
(待ってなさいよ紫。あんたのその苦しみ、私が吹き飛ばしてあげるから。)
「ぐずっ、ひっぐ、・・・ああっ、えっぐ、・・・れいむ、れいむぅ、ぐすっ・・・。」
(・・・紫。)
藍の言っていた通り紫は泣いていた。服も髪もぐしゃぐしゃで泣きすぎたからか声もガラガラ。・・・そんなになってしまうまで私のことを想ってくれてありがとう。だから・・・。
「紫。」
「ひぐっ!?・・・れ、れいむ?なんで、ここに?藍に頼んでおいたのに。」
「その藍にあなたのことを頼まれたわ。あんなに想われて本当にあんたは幸せな母親ね。」
一歩近づく。すると紫は後ずさった。その表情は怯えている。それでも私は一歩一歩近づいていく。
「ダメ、ダメよ霊夢。私たちは別れないといけないの。そうしないと、今ここで別れないと、私・・・!!」
「・・・大丈夫よ、紫。」
「あっ。」
いつかのようにぎゅっと抱きしめる。もしかして少し痩せたのかしら。そういえば藍が食事もとってないって言ってたしね。ただでさえスタイルいいのにそれはずるいわよ。
「大丈夫だから。ねっ、紫。」
真っ赤になった瞳を見つめながら諭すように優しく呼びかける。不安になることはない。その苦しみからあんたを解き放つために私はきたんだから。
「れ・・・いむ、れいむぅ!!わたしっ、わたしっ!!」
強く抱きしめ返される。ほらまた泣いて。そんなに泣かないでよ。
「私、考えてしまったの。これから何十年と時が経って霊夢がいなくなってしまったときのことを。・・・真っ暗だった。あなたのいない世界なんて真っ暗だったの!!それで、怖くなってしまったの。今こうして想像するだけでこれなんだから、これからもっと一緒にいてもっとあなたのことを好きになってもっと幸せになったら一体どうなってしまうのか?考えるだけで怖いの!!」
恐怖に身体を震わせる紫を抱きしめ続ける。紫が苦しんでいたことは人間と妖怪という種族の違いによる寿命の差だった。人間である私は後数十年もすればこの世を去る。紫を残して。残していく方も辛いとは言うが紫はそれから先もずっと生きていかねばならない。その苦しみは私には想像もできないほどだろう。
「だったら、だったら今のうちに別れれば苦しみは軽くて済むと思ったの。今だったらあなたのことを忘れられると思ったの。・・・でも、でもダメだったの。あなたが側にいないともう私はダメなの。・・・ごめんなさい霊夢。自分勝手でごめんなさい。だから、だから私のことを嫌いにならないで!!」
「・・・嫌いになるわけないでしょ。このバカ。」
悪いのは私の方だ。少しでも考えればわかったはずなのに私はそれをしなかった。”今”に満足して”未来”を見ていなかった。
「紫の方こそ私を嫌いにならないでね。大切な人の苦しみをわかってあげられなかったこんな私だけど。」
「なるわけないわ。嫌いになんかなるわけない。だって、だってこんなにもあなたのことが好きなんですもの!!」
叫ぶようにそう言ってくれる紫をより強く抱きしめる。流れ続ける涙が止まってくれるように。
「・・・ねぇ紫。私の想い、聞いてくれる?」
しばらく抱きしめ続けたら紫は少し落ち着きを取り戻したようだった。次は私の想いを告げる番だ。
「大切なこと?」
「そう。とてもとても大切なこと。私たちのこれからを左右するようなこと。」
そう聞いて紫は身構える。私も紫のことをしっかりと見据え言葉を紡ぐ。
「・・・・・・紫、私を妖怪にして。」
「えっ!?そ、それってどういうこと?」
突然のことだし驚くのも当然だろう。だからその言葉の意味を話していく。
「私も紫を残して逝くことを考えるとたまらなく悲しくなるの。あんたとあとたった数十年しか一緒にいられないこともね。・・・だから私はあんたと同じ妖怪になりたいの。それでずっと一緒にいたいの。」
「で、でもそれじゃあ霊夢は・・・!!」
「紫は私が人間だから好きになったの?」
「ち、違うわ!!私は霊夢が”霊夢”だから好きになったのよ!!」
「うん、私も同じ。あんたが”紫”だから好きになったの。種族なんて関係ないわ。人間だろうと妖怪だろうと私は”私”。”八雲紫”を愛している”博麗霊夢”よ。だから大丈夫よ。」
紫と共にあり続けること。それが私の出した答え。私の心からの望み。
「霊夢はそれでいいの?本当にいいの?」
「ええ。私はね紫、これからもあんたと一緒にいたいの。ずっとずっと、何十年も何百年も何千年もね。」
「・・・れいむぅ。ありがとう。ありがとう。」
「また泣く。お礼なんていらないわよ。私がそれを望んでいるんだから。」
ぽんぽんと背中を叩いてやる。ほんとにもう泣き虫なんだから。幽々子あたりが見たら笑うわよ。・・・私も、ありがとう。
「ねぇ紫。あと一つあなたに言いたいことがあるの。」
想いは完全に通じ合った。ならば後はそれを確かな形にしよう。
「ぐすっ。何、霊夢?」
私は隠し持っていたそれを取り出した。
「それは・・・指輪?」
「そう。一周年記念にと思ったんだけど、でも考えてみたらやっぱりこのためのものよね。」
そう言って紫の左手をとる。そしてその薬指にそれをはめる。
「れ、霊夢、ちょっと、これって!?」
「いいこと、一度しか言わないからよく聞きなさいよ。」
一つ深呼吸をする。これから始まるのは私の一世一代の大告白。
「・・・私はあなたのことを愛しています。あなたと共にこれからずっと続いていく生を生きていきたい。私と、結婚してください。」
「っつ!?」
その瞳から再び涙がこぼれだす。私は視線をそらすことなくただひたすら紫を見つめ続ける。
「・・・答え、聞かせてもらえる?紫。」
「・・・・・・はいっ!私も、私もあなたのことを愛しています。私と、私と結婚してください!!」
答えは花が咲くような笑顔。笑いながらぽろぽろと泣き続ける。その涙を拭い、改めて抱きしめてやる。
「これからずっと一緒に、幸せになりましょう。紫。」
「ずっとずっと一緒よ霊夢。私から離れたら許さないんだからね!!」
「大丈夫よ。この想いは永遠に変わらないから。」
「私も、私も永遠に霊夢を愛し続けるわ。」
そして永遠の愛を誓い合う口付けを交わしたのだった・・・。
あの日から十数年の時が経った。人間と妖怪の境界をいじったことで私は妖怪となり見た目も当時とほとんど変わっていない。・・・いやもうちょっと成長してからそうしたのでそのときよりは大人びてるけど。
唯一心配していた結界のことだが、どうやら博麗の巫女が人間でなくても構わなかったらしい。ようは結界を管理できる存在なら種族などどうでもよかったようだ。まあそうじゃなかったら流石に紫も私を妖怪になどできなかっただろう。
「どうしたの霊夢、物思いに耽っちゃって?」
「別になんでもないわよ。ただ空が青いなって思っただけ。」
「そうねぇ。今日はまた一段といい空よね。気持ちも晴れ晴れとするわ。」
「寝惚けた目には染みるくらいでしょ。もうすぐお昼になる時間よ。」
「少しくらいいいじゃない。これでも昔に比べるとずいぶん早起きになったんだから。」
そう言って私の愛しい人は笑う。ちょっと茶目っ気の入った、でも優しい笑顔。彼女が幸せでいてくれている証。・・・だがここに悪戯っ子のような笑みが混じってくると用心しなければならない。絶対に何か企んでいるから。それは何年経った今でも変わらない。
「私の生活パターンに合わせるようにしなさいよ。私が起きているのにあんたが寝ていたら、その、寂しいじゃない。」
「も~霊夢ったら可愛いことを言ってくれちゃって。ごめんなさいね、これからはもっと早起きするようにするわ。」
ぶつかるように抱きついてくる。そればかりか頬まで摺り寄せてくる。ちょっと失敗したかもしれない。・・・まあ今さらよね。この姿を見て驚く奴なんて私の周りにはもういないんだし。
「霊夢母さん、掃除終わりました。」
「終わったよ~。」
「お疲れ様。二人ともありがとうね。」
私と同じ巫女服の少女が二人こちらへとやってくる。私たちの娘、私の大切な家族だ。あの日から大きく変わったことといえばこの二人が生まれたことだろう。ちなみに産んだのは紫。なんでも「霊夢の子どもを産みたいの。」ということだった。それで私に紫の能力を使って・・・って真昼間に思い出すことじゃないわね。
「あっ、紫母さんも起きたんですか。おはようございます。」
「紫ママおはよ~。」
「はい二人ともおはよう。」
「でももうお昼ですよ。しかもこんなにいい天気なんですしこういう日は少しでも早く起きた方が一日がもっと楽しくなりますよ。早起きは三文の徳といいますし。」
「も~あなたもうるさいわねぇ。一体誰に似たのかしら。少なくとも私や霊夢じゃないわよ。」
「誰に似たかと聞かれればたぶん藍姉さんですね。小さい頃から色々なことを教えてくれましたし。それに対して母さんたちはいつものんびりラブラブしてただけじゃないですか。」
藍の教育の賜物か姉の方は凄く真面目な優等生みたいな子に育った。私と違って掃除一つとっても真面目にするし博麗の巫女の修行の方も毎日しっかりと取り組んでいる。
「いいじゃんお姉ちゃん。寝る子は育つって言うんでしょ?いっぱい寝てママがいつも元気でいてくれた方がわたしはうれしいよ?」
「言葉の使い方が間違ってるけど・・・でもそうね。母さんたちが元気ならそれがいいわね。」
妹の方はのんびり屋のムードメイカーに育った。天性のものかやけにみんなから人気がありなかばアイドルみたいになっている。
「お、みんなそろっているな。紫様も起きてらっしゃるし。」
「あら藍じゃない。紫にでも用事?」
「ああちょっとな。・・・紫様今日は結界の点検をする日ですよ。八雲の家から姿をくらませたと思ったらやはりここにいたんですか。」
「別にいいでしょ。ここはもう私の家でもあるのよ。」
結界を管理するという役目がある以上どちらかがどちらかの家に完全に移り住むというわけにはいかず、紫の家は未だあちらということになっている。と言っても紫はほとんどの時間をここで過ごしているのでそうした区別はほぼ意味をなくしているのだけど。
「それはいいんですけどね。ただ結界のことに関しては向こうの方が何かと都合がいいから当日は家にいてくださいと言ったでしょう。ほら、行きますよ。」
「え~めんどくさいわ。藍が代わりにやっておいて。」
「ダメですよ。それに今日は二人に結界について教えるって言ってたじゃないですか。」
「そうですよ私楽しみにしていたんですから。藍姉さんから一通りのやり方は教わっていますがやっぱり母さんから直々に教わりたいです。」
「あんたの負けね紫。大人しく仕事してきなさい。」
「ううっ、まるで藍が二人になったみたい。やっぱり教育を間違えたかしら。」
「そもそもあんたは教育してないでしょうが。」
本当に藍を育ててたのかときどき疑問に思う。親はなくとも子は育つということか?これまた意味が違うけど。
「まあでも別にすぐ出かけるってわけじゃないでしょ。もうお昼なんだし先に昼食にしましょ。藍ももちろん食べるでしょ?」
大して時間はかからないのかもしれないけどちょうどいい時間だしみんなで昼食としようと思う。
「そうだな。せっかくだからお言葉に甘えよう。」
「何畏まってるのよ。私たちは”家族”でしょ。」
「・・・そうだったな。そういえばこれから橙もくるんだが一緒に食事の用意をしてもらえないか?」
「もちろんよ。じゃあ作り始めるから二人とも手伝って。」
「はい母さん。」
「は~い。」
「むむっ。私だって料理くらい手伝えるわ。霊夢の隣は私のものなのよ!!」
「私も手伝おう。家族ならそれくらい当たり前だからな。」
「ってそんな大人数で台所に入れるかっ!!」
”過去”から”今”そして”未来”へ。これからも私たちはこんな日々を過ごしていく。そうして失いたくない大切なものが増えていく。だからそれを決して手放さないように歩き続けよう。あんたと共に、ね。
全ての始まりはあんたに恋したこと。その瞬間から二人の時間が始まった。
でもそれを”今”しか見えていなかった”過去”の私が壊しかけた。
でもそれはこうして”未来”である”今”へと繋がった。私とあんたが共に歩き続けることを望んだから。
そして”今”私は幸せだ大切な人たちに囲まれて、あんたが隣にいてくれて。でも”今”で立ち止まってたらいけない。私たちの”未来”はまだずっとずっと続いていくのだから。
”過去”から”今”へとずっと続いている私の想い。その想いをこれからもずっと続いていく”未来”へと誓おう。
━━私は、博麗霊夢はあんたを、博麗紫を永久に愛し続けるということを。
<了>
完全に百合作品です。また一人称視点で話が進みます。
また独自な設定や解釈があります。
それと少しですがオリジナルキャラがでてきます。
それらをご了承のうえよろしければお進みください。
・・・・・・ああ、私はきっとそのことに気づいていたはずだ。
なのに気づかない振りをしていた。・・・とても、とても幸せだったから。
それに気づくことで悩み、苦しみ、そして変わってしまうのが怖かったのだろう。どうなってしまうかわからない”未来”が怖くて幸せな”今”に逃げたのだ。
だから、それがあんたをこんなにも苦しめていたことに気づけなかった。・・・おかしいわよね。私よりも聡明なあんたがそのことに気づかないわけがないのに。私はあなたが苦しんでいただなんて考えもしなかった。
愛している。”今”のあなたに送る言葉。でも、これじゃ足りないね。だから、”未来”のあなたに私は誓おう。
━━私は、博麗霊夢はあんたを、八雲紫を永久に愛し続けるということを。
幻想郷の端に位置する博麗神社。参拝客など来る気配はまるでなく、今日も今日とて私はお茶をすすっていた。
「はぁ~、やっぱりお茶っていえば日本茶よね。・・・・・・って、ていっ!」
「あいたっ!?」
スキマからすすっと伸びた手をはたく。こっそりとお煎餅を狙ったのだろうけどスキマの開く気配すら明確にわかるようになってしまった私には通用しない。
「何はしたないことをしているのよ、紫。」
「”霊夢からこっそりお煎餅を奪っちゃおうゲーム”よ♪」
「またわけのわからないことを。・・・ほら、いいからさっさと座りなさい。」
「はぁ~い。」
スキマから全身を現した紫はもうすっかり定位置となった私のすぐ真横に腰をかけた。そして私が事前に用意しておいたお茶を一口。
「はぁ、やっぱり霊夢が淹れてくれたお茶はおいしいわね。」
「大事に飲みなさいよ。今日のは結構上等なものなんだから。」
「あら?それじゃあ少しずついただくわ。」
そう言ってまた一口。ほっと安らいだ顔をしてくれるとただ淹れただけとはいえ私もうれしくなる。まったく、こんなことくらいでうれしくなれるなんて恋とは恐ろしいものだわ。
紫と恋人同士になってからもうすぐ一年が経とうとしていた。ほとんどはそれまでと変わらない日々を過ごしていたが、たまに恋人っぽいこともしたことはある。バレンタインとかいうイベント等だ。
それでせっかくの一周年という記念日なのだから何かしたいと思って最近頭を悩ませている。でも恋人が出来たからってそうした知識が増えるだけでもなく、乏しい頭をフル回転させてもなかなかいい案は思い浮かばなかった。
「・・・ん、どうしたの霊夢。ぼーっとしちゃって?」
「えっ、あ、ああちょっと気が抜けてただけよ。別になんでもないわ。」
「そうなの?でももし何かあったら私に言ってね。絶対に力になるから。」
危ない危ない。紫には内緒にしておきたいのにこんなに態度に出していたらすぐにばれてしまう。これまでのイベントは全部紫から持ち込まれたものだから、こんなときくらいは私から何かしてあげたい。もちろんビックリさせたおいという想いもある。
とはいえこのままでは先に進まないのも確か。ここは一つそれとなく聞いてみよう。
「紫って何かほしいものある?」
「えっ、どうしたの突然?」
(ってこれじゃ率直すぎるじゃない!?え、えっと何か上手くごまかすことを!!)
「ほ、ほら恋人同士になってからそういった基本的な話をしたことがないじゃない?だからちょっとどうなのかな~って思ったのよ!」
嘘ではない。それ以前から付き合いが長かったからか互いのことをあまり話し合ったことはなかった。だから彼女が何をほしがっているのかとか、よくわからないのだ。
・・・これからはもう少しそういうことも話そう。現状に満足したままというのは何かよくない気がするし。
「ああそういうこと。そうね・・・。」
(・・・なんか上手くごまかせたみたいね。)
てっきり不思議がって問い詰めてくるとか思ってたけど。まあもしかしたら彼女も私と同じことを考えたのかもしれないし、気にしていないならそれでいいか。
「・・・・・・何も、ないわね。」
「うそっ!?」
そりゃ確かに何がほしいとかというのは人によって違うけれどだからって何もないとは。それに紫だったらないならないで「霊夢がほしいの。」とか言ってきそうなものなのに。
「・・・だって、今が最高に幸せじゃない。あなたとこうして一緒にいられて。」
「えっ?・・・ええっと、うん。私も。」
思わず顔が熱くなる。そういうことか。それは、まあ私も同じ気持ちだからわからないことはないけれど。でもほしいものとそれは違う気がするような。
(でもそう言われたら仕方ないか。まあ自分で考えるのが恋人としての私の試練だとでも思おう。)
「・・・霊夢。」
突然腕を絡めてくる。そのまま私に寄りかかり身体をすりよせてくる。
「どうしたのよそんな甘えてきて。」
「んっ・・・なんとなく。」
(やれやれ。仕方がないわね。)
最近こうしたことが増えてきた気がする。人前でされると困るけど、まあ二人っきりならいいか。私も紫の温もりを感じられて心が落ち着くしね。
「う~ん、さすがにちょっと大胆だったかしら?」
神社に続く石段を登りながら私はつい先ほど人里のお店に受け取りに行った物を手にし、少しだけ悩む。今さらではあるが手にしてみて初めて自分が作ってもらったものの意味を考える。
(む~、やっぱり指輪にしたのは間違いだったかな。)
そう、それは指輪。一周年の記念にと考えに考えた結果がそれだった。
最初は何か形として残るものにしたいと思い、次は置物などではなく身につけてもらいたいと思った。そうやって試行錯誤していった結果、いつも付けていても邪魔にならなずそれでいてその存在を意識させさらには一応紫が女性であるということも考慮してこの一品となった。
・・・アイディアそのものはいいと思うんだけど。でもやりすぎたような気がしないでもない。
(ま、まあ別にプレゼントとして送ったっておかしいものじゃないし大丈夫でしょ。デザインだってシンプルだし。)
飾りなどを入れていないシンプルなデザインの指輪。唯一の装飾は中央にはめ込まれた金剛石だ。以前地下で起きた異変の際に緊急時の生活の足しになればと拾った天然石などの中にあったものだ。これまた換金すべきかどうか相当悩んだが、一度しかないことと思いこうして指輪の一部にしてもらったのだ。もちろん代金はその他の宝石を売ってまかなった。
(ここまでしたんだから泣いて大喜びくらいしてもらわないとね。)
ちょっと想像してみる。指輪を受け取った紫が泣きながら喜ぶ姿を。・・・うん、悪くない。
今日も紫が来るのは昼をすぎてからだろうし、それまでは記念日をどう過ごすか考えながら待つことにしよう。
「・・・・・・おかえりなさい、霊夢。」
「紫?どうしたの、今日はやけに早いわね。」
神社に着いたらすでに紫が待っていた。まだ昼前だしいつもと比べると数時間は早い。
(あ、ということは何か企んでるってことね。)
良くも悪くも紫はこちらの考えつかないようなことをしてくるためそれに驚かされたことも何度もある。今回もそうなのかもしれないから気をつけないと。
「・・・話があってきたの。」
「改まってということは重要なこと?」
「・・・そうね。とても大事なことかもね。」
表情は真剣そのもの。つまり絶対に何かある。緊急の異変とかならこんなまどろっこしく言わないだろうし、やはり私が驚くようなことを言うつもりだろう。いや行動でくるだろうか?どちらにしろ身構えてさえいれば問題はない。
「・・・・・・私たち別れましょ。」
「・・・・・・へっ?」
・・・・・・あ、ああこれは確かに驚いた。驚いたどころか一瞬目の前が暗くなったわ。まったく、冗談にしても性質が悪いわ。
「冗談じゃないわよ?本気で言っているわ。」
「・・・っつ!?」
空気が変わった。張り詰めた、まるで戦場のような空気に。そして何よりもその鋭い眼光。・・・・・・紫は本気だ。本気で私に”別れよう”と言っているのだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ紫!!なんで、どうしてそんなことを言うの?いつもの冗談よね、そうよね?」
今まで紫から向けられたことのない威圧感を感じ自分の血の気が引いていくのがわかる。もちろんそれだけではない。その言葉のもつ意味が私の心を締め上げていく。
「どうして、ね。・・・そうね、飽きたのよ。」
「あ、き、た?」
「そう、飽きたの。人間の女と付き合ってみるのってどんなものか試したかったのだけど、大したものじゃなかったわね。」
嘘だ。そんなことあるはずがない。紫がそんなこと言うはずがない。だって・・・。
「だって、だって愛してるって言ってくれたじゃない!!ずっと、ずっと隣にいてって言ったじゃない!!」
「それは言うわよ。だって恋人ってそういうものでしょ?」
紫が笑う。でもその目は一切笑っていない。そんな、そんな笑い方しないでよ。いつものように優しく私に笑いかけてよ。
「まあ一応お礼を言っておくわ。ありがとう霊夢。一年間、いい暇つぶしになったわ。」
「待って、待ってよ紫。私はいやだよそんなのって!!」
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
「気まずいでしょうから私はもうここへはこないわ。だから霊夢も私のところへは来ないようにしてちょうだい。もうお互い会わないようにしましょ。」
「待って!!待ってよぉゆかりぃ!!」
「・・・・・・さようなら。」
身体はまるで鉛にでもなったかのように動かず、それでも必死に伸ばした手はただ空を掴むばかりで。・・・そして、紫はスキマの奥へと消えていった。
「・・・あ。」
視界が暗転する。身体の制御がきかない。意識が闇へと喰われていく。
(・・・・・・今日は二人が恋人になってちょうど一年だったのになぁ。)
薄れゆく意識の中でそんなことを思った。
目を覚ます。靄がかかったように思考がぼやけてるが開いた目に差し込む光で今が昼間であることを理解する。
(ここってどこだっけ?)
身体が動かないから視線だけを動かす。どうやらここは家の居間で、畳が目の前にあるということは私は倒れているのだろう。
(あれっ、なんで私倒れてるんだっけ?)
ぼんやりとした頭で記憶を手繰り寄せる。同じように記憶も曖昧だが一つだけ鮮明に覚えていることがあった。
(・・・・・・紫。)
ああそうだった。私は紫にフラれたのだった。あれから数日たったが心の空白は一向に埋まる気配がない。それどころか広がり続けるばかりだ。そうやって”博麗霊夢”という存在が希薄になっていくのがわかる。
(私、このまま死ぬのかな。)
自分という存在の消失はすなわち死そのものだ。それに実際問題肉体的にもそろそろ限界だろう。あれから食事をとった記憶なんてない。まともに身体を動かすこともしていない。私は”生きる”ということを放棄していた。
(それでもいいかもね。もう紫が私の側で笑ってくれることなんてないんだしね。)
紫がいない。たった一つその事実が私を殺す。
(ははっ、まさかこんなにも紫のことを好きになるなんてね。)
一年。人の生にしても僅かで妖怪からしたらそれこそ瞬きをする程度の時間。だが、たったそれだけの時間が私に紫のことをこれほどまでに愛させた。後悔などない。むしろ誇らしい。ああ、誰かを愛するということはなんて素晴らしいのだろう!!
・・・・・・だからこそそれを失ったときの代償が大きい。想いが強ければ強いほどそれは自分へと返ってくる。そして私の紫への愛は自分の生と同じくらい大きく、だから今の私には自分の生がない。
(せめて夢のなかでくらいあなたに会いたい。)
身体から僅かに残った力も抜けていく。意識を手放そうとする。たとえ次の目覚めがなかろうとかまわない。だから、だからせめてよい夢を・・・。
「おーい霊夢、遊びに来たぜ!!」
だが聞こえてきた声がかろうじて私の意識を繋ぎとめる。一体誰だろうか?”私”などいないからさっさと帰ってくれ。
「留守かー?どちらにしても勝手に上がらせてもらうぜ。」
ドタドタと床を蹴る振動が伝わってくる。この声にこの態度、来たのは魔理沙か。
「おーい、ほんとに留守か・・・って、おわぁ!?何倒れてるんだよ霊夢!!」
声のする方へ視線を上げる。やっぱり魔理沙だったか。何驚いた顔してんの・・・っていきなり人が倒れてるのを見たらそりゃあ驚くか。
「寝ているわけじゃないよな。おい、どうしたんだよ霊夢。っておい、顔色凄く悪いぞ!?」
抱き起こされる。数日間飲まず食わずだから当然だろう。精神的にも死人同然だしね。
「どうしたんだ病気か?なら永淋のところか?いやそれよりもまずは熱を測って・・・ていうかまずは布団に横にさせないと!!」
わたわたと慌てる魔理沙。心配してくれてありがとう。でも、私はもういいの。
「・・・ま、り、さ。」
「!?意識はあったのか。霊夢、一体どうしたんだ?病気か?凄くやつれているぞ?」
矢継ぎ早に質問をしてくる。少しは落ち着けばいいのに。あ、でも私が魔理沙の立場だったらやっぱり慌てるかな。
「大丈夫。・・・だから、聞いてほしいことがあるの。」
「聞いてほしいこと?こうなった理由か?いいぜ、何でも言ってみな。」
魔理沙にはこのことを言っておくべきだろう。いや言わなければならない。魔理沙には聞く権利があるのだから。
「実はね・・・・・・。」
ゆっくり少しずつ魔理沙に話していく。そのたびに心は痛むけれど、でもちゃんと話さないといけない。彼女の気持ちに応えられなかった私を、私たちをそれでも応援してくれたのだから。
「・・・・・・そんなことがあったのか。」
「うん。色々と気にかけてくれてたのに、ごめんね。」
語り終えても気分が晴れることはない。紫のことは当然として魔理沙にも本当ならこんな報告をしてはいけなかったから。
「・・・この大バカもの!!」
「はいっ!?」
(ってちょっと待て、なんでいきなり罵倒されなきゃならない?)
「だからこの大バカものって言ったんだよ。なんで見す見す紫を帰しちゃうんだよ!!」
「だ、だって私のこと飽きたって。もう会わないでって言われて・・・。」
「だ・か・ら、それなのになんでお前は何もしないんだよ。まさかお前の想いは飽きたって言われたくらいで冷めてしまう程度のものだったのか?」
「そ、そんなわけないでしょ!!私は本気で紫のことを・・・!!」
「だったら追いかけなきゃダメだぜ。本当に大切ならそんな簡単に手放しちゃダメだ。」
魔理沙の言いたいことは頭ではわかる。でも・・・。
「でも、紫は本気で言っていたんだし・・・。」
「また拒絶されるのが怖いのか?」
「・・・うん。」
そう、怖いのだ。もしもう一度あの目をされもう一度同じことを言われたらと思うと怖くてたまらなくなる。そのときは本当に絶望で死んでしまうんじゃないだろうか。
「それでも、だぜ。どれだけ傷ついても最後の最後まで諦めたらダメだ。だって、だってお前は一度拒絶されたくらいでこんなになってしまうくらい紫が好きなんだろ?」
「・・・。」
「その想いをちゃんと伝えるんだよ。紫の負の言葉をかき消してしまうくらいお前の言葉をぶつけるんだ。想いだってパワーだぜ!」
「そ、う、よね。一方的に言われただけでまだ私はちゃんと話してないもの。ちゃんと私の気持ちを話して、それでダメならそのとき悩めばいいわ。」
「そうそう、その意気だぜ。」
そうだ。こんなところで絶望していたって何も変わらない。本当に大切な人だからこそ手放したくないからこそわがままでもなんでも動き出さなければ。となれば善は急げだ。
「さっそく行ってくるわ!!」
「ってちょっと待て!!そんな状態でいくつもりかよ?」
「・・・あ。」
ここ数日間まともに風呂も入っていないし着替えらしい着替えもしていないため私の格好はボロボロだった。それに勢いよく立ち上がったのはいいけれど身体はフラフラでとても紫のところまでいけそうにない。気力を取り戻してから空腹感も酷い。
「簡単なものなら用意してやるからさ。霊夢は風呂にでも入って身支度をしてな。みっともない格好じゃ紫に会わせる顔がないだろ?」
「・・・そうね。そうするわ。ありがとう魔理沙。」
「どうってことないぜ。そうだお湯を沸かすなら私がやってやろうか。マスタースパークなら一瞬だぜ?」
「冗談、そんなことしたら風呂場ごと吹っ飛ぶわよ。」
軽口を言い合うくらいの余裕はでてきた。気は急くもののここは一度落ち着いた方がいいだろう。
「・・・しかし、紫がいきなりそんなことを言い出すかな?」
「どういうこと?」
「ハッキリ言うけど紫が霊夢のことを飽きたり嫌いになったりするなんてありえない。」
「でも現実にそう言われたわ。・・・纏った気配からしてあれは本気よ。」
「それも変なんだよな。飽きたって言うのにそんな本気になる必要があるか?むしろそういう言葉は気だるそうに言われた方が効きそうだけどな。」
「・・・確かに。」
あのときは私も冷静さを欠いていた。今になって考えてみれば確かに何かおかしい。
「それにな。二人が一緒にいるときって凄い幸せオーラを発してるんだ。見ているこっちまで思わず幸せになってしまうくらいのな。」
「・・・。」
「もちろん二人の表情もそうだ。特に紫なんかとろけきった顔してるんだぜ。それなのにいきなりそんなことになるなんておかしいと思うぜ。霊夢だって一年も一緒にいたんだからそれくらいわかるだろ。」
「・・・うん。」
そうだ。紫が私の側にいて幸せであったことに嘘なんてない。それは互いの温もりが教えてくれていた。・・・そんなことさえわからなくなっていたんだ、あのときの私は。
「まあそれは本人に聞くべきだろな。もしかしたら何か理由があるのかもしれないし。もしそうだった場合は霊夢、お前が力になってやらなきゃな。」
「わかってるわよそんなこと。」
もし紫に何かあるというなら私が力になる。絶対にだ。
「っ!!・・・ふぅ。」
まだ冷たい水が肌を突き刺す。時間が惜しくてお湯が沸く前に入ってしまったが、むしろこの冷たさが意識を覚醒させてくれるので助かる。
「・・・・・・理由、か。」
魔理沙の言葉で私は二人で共に過ごした時間を、その幸せを思い出すことができた。だからもう気持ちは揺らがない。私は紫を愛しているし、私を愛してくれた紫もまた本当だと信じられる。だからこそ紫がなぜあんなことを言ったのか、それが気になって仕方がない。
(・・・・・・愛してるって言っておきながら紫が何を想ってあんなことを言ったのかわからないなんてね。)
ただ側に居られるだけで幸せ。それは素晴らしいことだけど、それにだけ甘えていた結果がこれだ。好きなら、心から愛しているならなおのこと相手を知ろうとしなければならない。・・・ただでさえ人間と妖怪、種族が違うのだから。
(・・・ん、今何か引っかかったような。)
考える。それが手がかりになるかもしれないから。一瞬だけ閃光のように脳裏を掠めたそれを捉えようとする。
(・・・人、・・・妖怪、・・・違い、・・・・・・もしかして!?)
もしそうだとしたら、私はなんてバカなのだろう。紫がいつこのことに気づいたのかはわからない。だがつい最近なんてことはないだろう。となれば紫はずっと長いこと一人で苦しんでいたことになる。すぐ隣で大切な人が悩み苦しんでいたというのに私ときたら・・・。
「・・・待っててね、紫。」
すぐにあなたのもとへ行くわ。
魔理沙が作ってくれた軽食を胃に詰め込んですぐに私は飛び出した。彼女は意外に料理が上手いからあの短時間でも結構しっかりとした食事を用意してくれたのだ。今度ちゃんとお礼をしないと。
(・・・・・・見えたわ。)
紫の家が視界に映る。だが私は直接向かわずに一旦その近くに降りた。少しだけ心を落ち着ける時間がほしかったし、それに・・・。
「・・・・・・やはり来たな、霊夢。」
「・・・藍。」
私の前に藍が立ちふさがる。表情は真剣で、声も固い。私を威圧するようにして家までの道をふさぐ。
「紫に私を通すなとでも言われてるのね?」
「ああ。紫様からは何があってもお前を通すなと命を受けている。」
「・・・・・・ねぇ、約束を守れなかった私を恨んでいる?」
あの日、私は藍とそして自分の心と一つの約束をした。配慮のなさからこうして自ら破ってしまった約束を。
「霊夢、お前に頼みがある。」
「何よ一体?そんな改まって。」
「・・・ずっと紫様の隣にいてやってくれ。」
「それってどういう意味よ?」
「そのままの意味だ。紫様の隣で、紫様の心を満たしてあげてほしい。」
「何よそれ。紫の心に欠落でもあるっていうの?」
「紫様が遥かに永いときを生きているのは知っているな。そしてまたその力ゆえに多くのものから畏怖の念を受けていることも。」
「ええ。どちらかと言えば私たちのように紫と接するものの方が珍しいのよね。」
「ああそうだ。・・・・・・だから紫様は温もりを求めている。自分の側で自分のことを想ってくれる、自分を満たしてくれるものを。」
「あんたじゃダメなの藍?紫はあんたのことを自分の子どもみたいに大切に想っているみたいだけど。」
「わかっているさ。それに私だって紫様のことを主としてだけではなく母としても慕っている。・・・だが、子ではダメなんだ。」
「どうして?」
「紫様が必要としているのは自分と共に歩んでくれるもの、言うならば人生のパートナーを求めている。もちろんそんなこと表にはださないがな。」
「・・・あんた私にそれを言うってことはそれがどういう意味なのかわかっているの?」
「ああ。だからこれは単なる私のわがままだ。親を想う子どもの、な。」
「・・・まったく、いきなりとんでもなく重いことを言って。残念ながら約束はできないわよ。先のことなんてわからないんだし。」
「・・・当然、だろうな。いやすまない霊夢。変なことを言ったな。」
「・・・・・・でもそれ以外のことなら一つだけ約束してあげる。」
「んっ?」
「私が紫のことを好きでいる限り、そして紫が私のことを好きでいてくれる限り私は紫の側に居続ける。それなら約束してあげるわ。だから、今はそれで妥協しなさい。」
「・・・十分だよ。ありがとう霊夢。」
「別にお礼を言われることじゃないわよ。私が好きで言ったことだもの。」
「それでも、ありがとう。」
「恨んでなんかないさ。今回のことは紫様が自分からしたこと。霊夢に非なんてないよ。」
「・・・・・・紫はどうしてる?」
「・・・あの日から泣き続けている。泣き疲れて眠ってしまうとき以外ずっとな。食事にもまったく手を付けられていない。」
「そっか・・・。」
やっぱり紫は今でも私のことを愛してくれていた。それはとてもとてもうれしい。けど、今彼女を苦しめているのその想いの所為だ。
「あんたはなぜ紫がこんなことをしたのかわかってるの?」
「ああ。その様子だとお前も気づいたのだろう?それが紫様がこんなことをした理由だ。」
「・・・・・・まったく。大切な人が悩み苦しんでいることにも気づかないなんて恋人失格ね。」
「仕方ないさ。自分にとって身近なことには案外気づけないものだ。私だって最近まで気づけなかったし、紫様だって最初からわかっていたわけではないだろう。」
それでも私がそれをわかってあげられていたら、こうやって紫が苦しむことはなかった。
「・・・霊夢。お前がそれに対しどのような答えをだしてここに来たのかはわからない。だがそれがどんなものであれ今の紫様の心に踏み込めるのはお前しかいない。だから、だから頼む霊夢。紫様の涙を止めてやってくれ!!」
そう言って頭を下げる藍。
「私を通してしまっていいの?式が主の命に背くことは大変な命令違反じゃない?」
「わかっているさ。たとえこの身を八つ裂きにされたって構わない。それでも、あんな紫様を放ってはおけないんだ。」
紫がそんなことをするわけがないと思うけどね。・・・その想い、確かに受け取ったわ。
「任せて。紫を、救いにいってくるわ。」
「頼む、霊夢。」
(待ってなさいよ紫。あんたのその苦しみ、私が吹き飛ばしてあげるから。)
「ぐずっ、ひっぐ、・・・ああっ、えっぐ、・・・れいむ、れいむぅ、ぐすっ・・・。」
(・・・紫。)
藍の言っていた通り紫は泣いていた。服も髪もぐしゃぐしゃで泣きすぎたからか声もガラガラ。・・・そんなになってしまうまで私のことを想ってくれてありがとう。だから・・・。
「紫。」
「ひぐっ!?・・・れ、れいむ?なんで、ここに?藍に頼んでおいたのに。」
「その藍にあなたのことを頼まれたわ。あんなに想われて本当にあんたは幸せな母親ね。」
一歩近づく。すると紫は後ずさった。その表情は怯えている。それでも私は一歩一歩近づいていく。
「ダメ、ダメよ霊夢。私たちは別れないといけないの。そうしないと、今ここで別れないと、私・・・!!」
「・・・大丈夫よ、紫。」
「あっ。」
いつかのようにぎゅっと抱きしめる。もしかして少し痩せたのかしら。そういえば藍が食事もとってないって言ってたしね。ただでさえスタイルいいのにそれはずるいわよ。
「大丈夫だから。ねっ、紫。」
真っ赤になった瞳を見つめながら諭すように優しく呼びかける。不安になることはない。その苦しみからあんたを解き放つために私はきたんだから。
「れ・・・いむ、れいむぅ!!わたしっ、わたしっ!!」
強く抱きしめ返される。ほらまた泣いて。そんなに泣かないでよ。
「私、考えてしまったの。これから何十年と時が経って霊夢がいなくなってしまったときのことを。・・・真っ暗だった。あなたのいない世界なんて真っ暗だったの!!それで、怖くなってしまったの。今こうして想像するだけでこれなんだから、これからもっと一緒にいてもっとあなたのことを好きになってもっと幸せになったら一体どうなってしまうのか?考えるだけで怖いの!!」
恐怖に身体を震わせる紫を抱きしめ続ける。紫が苦しんでいたことは人間と妖怪という種族の違いによる寿命の差だった。人間である私は後数十年もすればこの世を去る。紫を残して。残していく方も辛いとは言うが紫はそれから先もずっと生きていかねばならない。その苦しみは私には想像もできないほどだろう。
「だったら、だったら今のうちに別れれば苦しみは軽くて済むと思ったの。今だったらあなたのことを忘れられると思ったの。・・・でも、でもダメだったの。あなたが側にいないともう私はダメなの。・・・ごめんなさい霊夢。自分勝手でごめんなさい。だから、だから私のことを嫌いにならないで!!」
「・・・嫌いになるわけないでしょ。このバカ。」
悪いのは私の方だ。少しでも考えればわかったはずなのに私はそれをしなかった。”今”に満足して”未来”を見ていなかった。
「紫の方こそ私を嫌いにならないでね。大切な人の苦しみをわかってあげられなかったこんな私だけど。」
「なるわけないわ。嫌いになんかなるわけない。だって、だってこんなにもあなたのことが好きなんですもの!!」
叫ぶようにそう言ってくれる紫をより強く抱きしめる。流れ続ける涙が止まってくれるように。
「・・・ねぇ紫。私の想い、聞いてくれる?」
しばらく抱きしめ続けたら紫は少し落ち着きを取り戻したようだった。次は私の想いを告げる番だ。
「大切なこと?」
「そう。とてもとても大切なこと。私たちのこれからを左右するようなこと。」
そう聞いて紫は身構える。私も紫のことをしっかりと見据え言葉を紡ぐ。
「・・・・・・紫、私を妖怪にして。」
「えっ!?そ、それってどういうこと?」
突然のことだし驚くのも当然だろう。だからその言葉の意味を話していく。
「私も紫を残して逝くことを考えるとたまらなく悲しくなるの。あんたとあとたった数十年しか一緒にいられないこともね。・・・だから私はあんたと同じ妖怪になりたいの。それでずっと一緒にいたいの。」
「で、でもそれじゃあ霊夢は・・・!!」
「紫は私が人間だから好きになったの?」
「ち、違うわ!!私は霊夢が”霊夢”だから好きになったのよ!!」
「うん、私も同じ。あんたが”紫”だから好きになったの。種族なんて関係ないわ。人間だろうと妖怪だろうと私は”私”。”八雲紫”を愛している”博麗霊夢”よ。だから大丈夫よ。」
紫と共にあり続けること。それが私の出した答え。私の心からの望み。
「霊夢はそれでいいの?本当にいいの?」
「ええ。私はね紫、これからもあんたと一緒にいたいの。ずっとずっと、何十年も何百年も何千年もね。」
「・・・れいむぅ。ありがとう。ありがとう。」
「また泣く。お礼なんていらないわよ。私がそれを望んでいるんだから。」
ぽんぽんと背中を叩いてやる。ほんとにもう泣き虫なんだから。幽々子あたりが見たら笑うわよ。・・・私も、ありがとう。
「ねぇ紫。あと一つあなたに言いたいことがあるの。」
想いは完全に通じ合った。ならば後はそれを確かな形にしよう。
「ぐすっ。何、霊夢?」
私は隠し持っていたそれを取り出した。
「それは・・・指輪?」
「そう。一周年記念にと思ったんだけど、でも考えてみたらやっぱりこのためのものよね。」
そう言って紫の左手をとる。そしてその薬指にそれをはめる。
「れ、霊夢、ちょっと、これって!?」
「いいこと、一度しか言わないからよく聞きなさいよ。」
一つ深呼吸をする。これから始まるのは私の一世一代の大告白。
「・・・私はあなたのことを愛しています。あなたと共にこれからずっと続いていく生を生きていきたい。私と、結婚してください。」
「っつ!?」
その瞳から再び涙がこぼれだす。私は視線をそらすことなくただひたすら紫を見つめ続ける。
「・・・答え、聞かせてもらえる?紫。」
「・・・・・・はいっ!私も、私もあなたのことを愛しています。私と、私と結婚してください!!」
答えは花が咲くような笑顔。笑いながらぽろぽろと泣き続ける。その涙を拭い、改めて抱きしめてやる。
「これからずっと一緒に、幸せになりましょう。紫。」
「ずっとずっと一緒よ霊夢。私から離れたら許さないんだからね!!」
「大丈夫よ。この想いは永遠に変わらないから。」
「私も、私も永遠に霊夢を愛し続けるわ。」
そして永遠の愛を誓い合う口付けを交わしたのだった・・・。
あの日から十数年の時が経った。人間と妖怪の境界をいじったことで私は妖怪となり見た目も当時とほとんど変わっていない。・・・いやもうちょっと成長してからそうしたのでそのときよりは大人びてるけど。
唯一心配していた結界のことだが、どうやら博麗の巫女が人間でなくても構わなかったらしい。ようは結界を管理できる存在なら種族などどうでもよかったようだ。まあそうじゃなかったら流石に紫も私を妖怪になどできなかっただろう。
「どうしたの霊夢、物思いに耽っちゃって?」
「別になんでもないわよ。ただ空が青いなって思っただけ。」
「そうねぇ。今日はまた一段といい空よね。気持ちも晴れ晴れとするわ。」
「寝惚けた目には染みるくらいでしょ。もうすぐお昼になる時間よ。」
「少しくらいいいじゃない。これでも昔に比べるとずいぶん早起きになったんだから。」
そう言って私の愛しい人は笑う。ちょっと茶目っ気の入った、でも優しい笑顔。彼女が幸せでいてくれている証。・・・だがここに悪戯っ子のような笑みが混じってくると用心しなければならない。絶対に何か企んでいるから。それは何年経った今でも変わらない。
「私の生活パターンに合わせるようにしなさいよ。私が起きているのにあんたが寝ていたら、その、寂しいじゃない。」
「も~霊夢ったら可愛いことを言ってくれちゃって。ごめんなさいね、これからはもっと早起きするようにするわ。」
ぶつかるように抱きついてくる。そればかりか頬まで摺り寄せてくる。ちょっと失敗したかもしれない。・・・まあ今さらよね。この姿を見て驚く奴なんて私の周りにはもういないんだし。
「霊夢母さん、掃除終わりました。」
「終わったよ~。」
「お疲れ様。二人ともありがとうね。」
私と同じ巫女服の少女が二人こちらへとやってくる。私たちの娘、私の大切な家族だ。あの日から大きく変わったことといえばこの二人が生まれたことだろう。ちなみに産んだのは紫。なんでも「霊夢の子どもを産みたいの。」ということだった。それで私に紫の能力を使って・・・って真昼間に思い出すことじゃないわね。
「あっ、紫母さんも起きたんですか。おはようございます。」
「紫ママおはよ~。」
「はい二人ともおはよう。」
「でももうお昼ですよ。しかもこんなにいい天気なんですしこういう日は少しでも早く起きた方が一日がもっと楽しくなりますよ。早起きは三文の徳といいますし。」
「も~あなたもうるさいわねぇ。一体誰に似たのかしら。少なくとも私や霊夢じゃないわよ。」
「誰に似たかと聞かれればたぶん藍姉さんですね。小さい頃から色々なことを教えてくれましたし。それに対して母さんたちはいつものんびりラブラブしてただけじゃないですか。」
藍の教育の賜物か姉の方は凄く真面目な優等生みたいな子に育った。私と違って掃除一つとっても真面目にするし博麗の巫女の修行の方も毎日しっかりと取り組んでいる。
「いいじゃんお姉ちゃん。寝る子は育つって言うんでしょ?いっぱい寝てママがいつも元気でいてくれた方がわたしはうれしいよ?」
「言葉の使い方が間違ってるけど・・・でもそうね。母さんたちが元気ならそれがいいわね。」
妹の方はのんびり屋のムードメイカーに育った。天性のものかやけにみんなから人気がありなかばアイドルみたいになっている。
「お、みんなそろっているな。紫様も起きてらっしゃるし。」
「あら藍じゃない。紫にでも用事?」
「ああちょっとな。・・・紫様今日は結界の点検をする日ですよ。八雲の家から姿をくらませたと思ったらやはりここにいたんですか。」
「別にいいでしょ。ここはもう私の家でもあるのよ。」
結界を管理するという役目がある以上どちらかがどちらかの家に完全に移り住むというわけにはいかず、紫の家は未だあちらということになっている。と言っても紫はほとんどの時間をここで過ごしているのでそうした区別はほぼ意味をなくしているのだけど。
「それはいいんですけどね。ただ結界のことに関しては向こうの方が何かと都合がいいから当日は家にいてくださいと言ったでしょう。ほら、行きますよ。」
「え~めんどくさいわ。藍が代わりにやっておいて。」
「ダメですよ。それに今日は二人に結界について教えるって言ってたじゃないですか。」
「そうですよ私楽しみにしていたんですから。藍姉さんから一通りのやり方は教わっていますがやっぱり母さんから直々に教わりたいです。」
「あんたの負けね紫。大人しく仕事してきなさい。」
「ううっ、まるで藍が二人になったみたい。やっぱり教育を間違えたかしら。」
「そもそもあんたは教育してないでしょうが。」
本当に藍を育ててたのかときどき疑問に思う。親はなくとも子は育つということか?これまた意味が違うけど。
「まあでも別にすぐ出かけるってわけじゃないでしょ。もうお昼なんだし先に昼食にしましょ。藍ももちろん食べるでしょ?」
大して時間はかからないのかもしれないけどちょうどいい時間だしみんなで昼食としようと思う。
「そうだな。せっかくだからお言葉に甘えよう。」
「何畏まってるのよ。私たちは”家族”でしょ。」
「・・・そうだったな。そういえばこれから橙もくるんだが一緒に食事の用意をしてもらえないか?」
「もちろんよ。じゃあ作り始めるから二人とも手伝って。」
「はい母さん。」
「は~い。」
「むむっ。私だって料理くらい手伝えるわ。霊夢の隣は私のものなのよ!!」
「私も手伝おう。家族ならそれくらい当たり前だからな。」
「ってそんな大人数で台所に入れるかっ!!」
”過去”から”今”そして”未来”へ。これからも私たちはこんな日々を過ごしていく。そうして失いたくない大切なものが増えていく。だからそれを決して手放さないように歩き続けよう。あんたと共に、ね。
全ての始まりはあんたに恋したこと。その瞬間から二人の時間が始まった。
でもそれを”今”しか見えていなかった”過去”の私が壊しかけた。
でもそれはこうして”未来”である”今”へと繋がった。私とあんたが共に歩き続けることを望んだから。
そして”今”私は幸せだ大切な人たちに囲まれて、あんたが隣にいてくれて。でも”今”で立ち止まってたらいけない。私たちの”未来”はまだずっとずっと続いていくのだから。
”過去”から”今”へとずっと続いている私の想い。その想いをこれからもずっと続いていく”未来”へと誓おう。
━━私は、博麗霊夢はあんたを、博麗紫を永久に愛し続けるということを。
<了>
GJ!!!!
しかし書こうと思っていた某カップリングSSとモロかぶり・・・
練り直さなくては(**
びっくりするほどゆかれいむ!
これぞマイ、ジャスティィィィィィィィィィィィィィィィィィス!!!!!!!!!!
只一つ疑問。
マヨヒガって自分の意志で行けたっけか?
>「待って!!待ってよぉゆかりぃ!!」
いつだって余裕があり気丈でマイペースな霊夢さんはとても素敵ですがときたまいじめたくなります。
彼女は迷惑かけられたり厄介ごとに巻き込まれたりするのが非常に似合っていると思う。
でも結局は「しょうがないわねぇ」とぼやきながらも構ってあげちゃうんですよ。
まさか結婚して子供産むとはw
想定外
ちょっとインスリン買ってくる。
>1 もはや私の脳内ではゆかれいむがジャスティスです。
>2 ・・・あの、なんと言ったらいいのかわかりませんが頑張ってください。
>5 手持ちの資料がほぼないためWikipediaの幻想郷の項目を確認しましたが紫の屋敷の行き来に関して制限はないようです。それ以外のところで何かしらそうした記述があった場合はすみません。内容にも大きく関わるため訂正できないのでこのままでお願いします。
>6 私の中の霊夢のイメージはまさにそれです。だから人間も妖怪も惹きつけるのではないかと思います。
>8 恋人で終わりではなくその次の段階としてここまで描きたかったんです。
>10 糖尿病にお気をつけください。
>11 人だって妖怪だって支えあって生きていくものではないかと思います。
じゃすてぃす万歳。
さぁ、二人の子供の教育現場を書くんだ!