Coolier - 新生・東方創想話

秋のはじめに

2008/10/08 07:46:01
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「秋はいいわね……」
「うん、雛もいいよ」

 今私とにとりは樹海の中の開けた場所にいる。いつものようににとりが来て、私と話す。私にとっては良くある風景の一つだ。
 秋である今は紅葉が美しくその分落ち葉もそこにたまっているが、それもそれで風流と言えば風流なので私としては気にするほどのものではない。要は心の持ち様の問題よ



「なっ……なな、い、いきなり何言ってるのよ!」
「そのまんま、雛かわいいだけど」
「はぅ!」
「舞い落ちる紅葉と回る雛……うん、キュウリ八百九十一本いけるね!」

 そう言うとにとりは目を瞑って「うん……」と想像し始めた。ややあって目を開け、こちらを見た。

「じゃ、早速やって」
「何をよ!」
「上からのびーるアーム使って落ち葉落とすからその中で回って」
「嫌よ! なんでわざわざ落ち葉被らなきゃいけないのよ!」
「じゃあ川で泳いで。なんとなく」
「じゃあ!? 今寒いから嫌よ!」

 まずなんとなくって何よなんとなくって。

「うー……」

 にとりはいきなりだれた顔をしてその場に寝転んだ。これはもしかして……

「待ってて。今包丁は無いの」
「何が!?」
「え? 止めを刺せって意味じゃないの?」
「どんな解釈!? 普通に寝転がっただけだから!」
「錆付いたのと綺麗なの、どっちがいい?」
「私の話聞いて! というか錆付いたのは危険すぎると思う!」

 危険を感じたにとりは急いで起き上がり、家まで錆びた包丁を取りに行こうとした私の足にしがみついた。

「待って雛! 行かないで!」
「むぅ……。あ、にとり」
「何?」
「転ぶわよ」
「え? うわっ!」

 ──すてーん

 にとりは膝立ちの体勢で落ち葉に滑ってコケた。少し吹いた。

「わ、笑ったね雛!」

 少し顔を赤くしてにとりが言う。

「つい、ね」

 私はくすくすと笑いながらにとりに言った。

「うー!」
「私の足にしがみつくにとりが悪いのよ」
「うー……」
「まぁ厄は取ってあげるから離れてなさい」

 私がそう言うとにとりは匍匐前進で私から離れていった。……意味あるのかしら。

「ねー雛ー」
「何かしら」

 にとりはある程度私から離れたところに行くとまた寝転がった。私は何回転かして、その場に座った。

「しりとりしなーい?」

 唐突ね。

「別にいいけど」
「じゃあ雛大好きのきからね」

 にとりはにこっと笑いながら言った。

「はぅ!? そ、その文章が出てきた意味が分からないわ!」
「雛ーはやくー」

 顔が赤くなるのが分かる。私は冷静に冷静にと思いつつ、きの最初につく言葉を考える。き……き……。

「き、奇形児」
「なんでそんな言葉!?」
「に、にとりの所為よっ! 『き』よ!」
「うーん、『嫌いなわけないよ! 好きだよ雛!』 ……『な』ね」
「はぅ!? た、単語じゃないわよそれ!」

 な、何言ってるのよにとりは!

「じゃあ金……あ、私の負けだね。じゃあまた雛大好きから始めよう」
「また!? というかわざとでしょ!」
「バレたかぁ……。さすが雛」
「誰でもわかるわよ!」

 まずわざとらしくしすぎるのよ。

「うーあー……」

 私がむっとした顔をしていると、またにとりは寝転がり、今度はごろごろと転がり始めた。

「頭大丈夫?」
「大丈夫だよ! ……でもさー、何かほら、やる気がだーっと無くなるって言うか」
「あ、それは分からないでもないわ。私も少しだるいもの」
「うーん……秋だからなのかな」
「秋だからなのかしらね」

 毎年秋はどうしてかそういう気分になるのよね。どうしてなのか今度静葉あたりに聞いてみようかしら。

「雛ぁー」
「何よ」
「暇だよぅ」

 そう言うとにとりはまたごろごろと転がった。というかその帽子よく取れないわね。

「いつものように機械をいじってればいいじゃない」
「雛は?」
「え?」
「雛はいじっちゃだめなの?」
「は……ひゃぅ!? な、ななな何言ってるのよいきなり! ダメに決まってるでしょ!」

 ま、まずいじるって何をする気よ!

「もー、雛はかわいいんだからー」

 にとりはこちらを向き両手を頬に添えると、足をぱたぱたさせてにっこりと笑い、そう言った。

「…………はぅ」

 な、なな何よ! 何なのよ! にとりは私をどうしたいの!?

「ほんと雛ってかわいいって言葉に弱いよね」
「う、うるさいわねっ! 私の勝手でしょ!」

 それに今のはにとりがかわい……な、なな何でもないわ!

「ううん、私の勝手」
「なんで!?」

 訳分からないわ!

「雛の感情は私のもの。そうだよね?」
「私のものに決まってるじゃない!」
「なら奪えばいいんだね?」
「なぜ!? なぜそうなるの!?」

 言うとにとりは目をキランとさせて匍匐前進で私のほうに進行してきた。私は思わず後ずさる。
 今日のにとりは一段とおかしいわ!

「わ、私の方に来ると厄が移るわよ!」
「そう、かんけいないね」
「か、関係あるから!」
「移れども、行ってみせよう……何でもない。気にしないで」
「思いつかないなら言わないでよ!」
「とりあえず言ってみる。後のころはそれから考える。にとり教育の基本だよ」

 絶対損するわよそれ。

「何よ、にとり教育って」

 私が聞くとにとりは前進を止めて、

「昔、河城にとりを遺伝子から増やそうとする計画があったんだ。……恐るべきにとり計画って言われてるものだね」

 いきなり語りだした。

「あったの!?」
「ううん」
「じゃあ何で言ったの!?」
「だからにとり教育の例を……」
「もういいわ!」

 本当に今日のにとりは変ね。いつも以上に会話が繋がらないっていうか……。

「さ、雛もにとり教育を受けて……」
「ねぇ、にとり」
「無視された……。何?」
「あなた疲れてない?」

 にとりはビクッとした。……いや、何でそこでビクッとするのよ。

「べ、別にー? にとりん元気いっぱいだよー」
「そう、疲れてるのね」
「……うう、そうだけどさ」

 にとりは申し訳なさそうな顔をした。

「別に責めてる訳じゃないのにどうしたのよ」
「いや、雛、キレるでしょ?」
「なぜ!? キレる意味が分からないわ!」

 にとりは私を短気だとでも思ってるのかしら。

「いや、キレはしないけど、『疲れてるなら私の所に来ないで家で休んでなさい』とかって言ってきそうだから」
「当然よ」

 私のところに来るよりかは休んでた方が断然得じゃない。疲れないし不幸にもならない。それどころか体力回復も可能。家で休んでることほど幸せなことは無いわ。

「でも私は雛をさびしくしたくないから休まずに来たんだよ」
「わ、私は寂しくなんか無いわ」
「ウソダ」
「う、嘘じゃないわよ」
「……もー、私は分かってるんだから。雛が本当はすごく寂しがりやだって」
「だ、だから違うって言ってるでしょ!」

 何ニヤニヤしてるのよ! さ、寂しがり屋なんかじゃないわ!
 ややあって、唐突ににとりは「うーん……」と言うとまた仰向けになった。

「ほんとなんか眠くなってきたなぁ……」
「樹海の中は熱が篭ってて暖かいからそれも分からないでもないわ」
「いっそのこと寝てしまおうか」
「寝たらだめよ! 寝たら殺すわ!」
「何でさ! 殺さないでよ!」
「よく言うじゃない。寝たら死ぬぞって」

 私、あれは屋外で寝る者全てに起きるべきだと思うの。

「言うけどさ! その状況は今に当てはまらないと思うよ!」
「そうかもしれないわね。でもこの際そんなことは関係ないわ」
「あるよ!」
「むぅ……そんなことを気にした生活してるとストレスが溜まって仕方ないわよ」
「今は気にしないと殺されるけどね!」

 適当が一番なのよ適当が。日常すべてを完璧に仕上げるなんて最初から無理なんだから。
 ……ちなみにもちろん殺すのは冗談よ。

「あ、もしかして雛は私に寝てほしくないって思うほど寂しがりやさんなの?」
「へ……? そ、そそそんなわけないじゃない! さ、寂しいのなんてもうずっと前に慣れたわ! それに私は寂しがり屋じゃないって言ってるでしょ!」
「必死だねー」

 にとりはニヤニヤしながらこっちを見ている。

「に、にとりは寝なさい! 疲れてるんでしょ!? 私がここにいてにとりの安全を保障するから寝なさい!」
「いいのー? さびしいんじゃないのー?」
「い、いいのよ! 寝なさい!」

 私は顔を赤くして言った。……さ、寂しくなんかないわよ!

「じゃ、私寝るねー。オヤスミー」
「え?」

 にとりは仰向けになると右腕を両目の上に持っていき、言った。

「……あ、膝枕とかしてくれるとうれしいかも」
「し、しないわ!」
「…………」
「……に、にとり?」
「…………」
「ほ、本当に寝たの?」

 にとりは動かない。それどころか「すぅ、すぅ」と寝息も立て始めた。

「……そ、そんな演技には騙されないわよ」

 しかし、相手はにとりだ。もしかしたら私を騙しているのかもしれない。そう思って私は言った。

「…………」
「……………………。……本当に眠ってるの?」

 ……もしかして本当におやすみなさい?
 …………迷う。ここでにとりが起きてたならツッコミ一つで終わる。けどもし眠っていなかったなら……にとりも最近疲れてるみたいだし起こすのは悪いだろう。それに…



「…………。……寝てる、わよね?」

 私は言うとゆっくりにとりに近づいた。今日は厄も少ない。せいぜい顔の上に真っ赤な紅葉が降ってくる程度だ。

「…………」

 私はにとりの前に来ると、膝を折りたたんで座った。そしてここで動作をいったん停止。頭だけをフル稼働させて、やがて決意した。

「…………こ、今回だけよ!」

 そう言うと私はにとりの頭を優しく持ち、膝の上に置いた。にとりは相変わらず寝息を立てていて起きる気配は感じられない。

「…………」

 恥ずかしい。誰も見てないのは分かってるけどすごく恥ずかしい。きっと今の私は耳まで真っ赤だろう。……でも、こう、満足感はあるわね。

「…………はぅ」

 何も考えられなってくる。自分の顔すらも、今どうなっているのか分からない。そして、

「……やっぱり雛は可愛いなぁ。……ありがと、膝枕」
「──っっ!!」

 真っ白になった。
そんな秋の一日。

テストが近いです。
でも何故か私はテストが近くなると執筆速度が上がる傾向にあります。
次回作もにとりんひなちんで書きます。というか執筆ノート(PCが使えないときに書く用)ではもうほとんど書きあがってます。……こっちも疑問なんですが、ノートを使うと執筆速度が増すんですよね。

長いあとがきは添削するのが面倒なのでそろそろ終わりにしましょう……。
メガネとパーマ
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コメント



0.560簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
そこで錆びた方を選ぶかw
雛、恐ろしい子!
9.無評価メガネとパーマ削除
コメントありがとうございます。
>1さん
雛はやるときはやる子です。