秋の彼岸も過ぎ、連日続いていた暑さもようやく落ち着きを取り戻し始めた。
窓の外では涼やかな風が草木を揺らし、幻想郷の夏を追い払うように自然と戯れている。
最近はずいぶんと過ごしやすくなってきたものだ。
店内にはやわらかな光が差込み、こんな日は読書の秋とでも洒落込みたいのだが、何事もそうそう上手くいかないのが人生というものだ。
「霖之助さんって、いつも本ばかり読んでて飽きないの?」
そう声を掛けてきたのは、客とは言えないお客様の一人。
僕が自分の為に用意した茶菓子を片手に……更に、僕が自分の為に用意したお茶を飲む、紅と白の少女だった。
「霊夢」
僕はその紅白の少女、博麗霊夢に諭す様に語りかける。
「読書というのは知識を得る為の手段であって、本を読むことが目的ではないんだ。だから、飽きるような事ではないんだよ」
読んでいた本を置き、霊夢の方へと向き直って言葉を続ける。
「例えば、君が空を飛ぶのは遠くへ行くのに便利だからであって、飛ぶ事自体が目的ではないだろう? つまり、僕の読書もそういう事だよ」
「ふーん……それじゃあ霖之助さんの目的って何なのよ?」
霊夢は少しだけ考えた後、僕に再び質問してきた。
やれやれ、もう少し考えて貰いたいものだ。
まぁ、他人の考えなんて、本人以外は分かり難いので仕方がないのだが。
「僕が本を読むのはね、怖いからさ」
「怖い?」
霊夢は小首を傾げ、オウム返しに尋ねてくる。
まぁ、僕も言葉も足りなかったし、理解できないのも無理はない。
「怖い物見たさとでも言うのかな……一度知りたくも無い事を知ってしまうとね、知らないでいるという事がとても恐ろしい事に思えてくるんだ」
例えば、人間は寝てる間に蜘蛛を食べてしまうとか、ゴキブリの頭を切断した際にゴキブリの死因は餓死だとか。
兎に角、知ってしまった以上はその知識が心に残る。
心に残るという事は、生き方が変わるという事だ。
それは僕のような長い一生を過ごす者にとっては重要な事。
だから。
だから僕は本を読む。
どうしても分からない事については考えない事にしているが、それでも出来るだけ多くの知識を得たいと思っている。
「怖いとか知りたくないと思っているのに調べるなんて、よく分からないわね。それで、その知りたくなかった事ってどんな事だったの?」
何とも話しにくい事を聞いてくれる。
まさか、ここでゴキブリの話をして誤魔化す訳にもいかない。
はてさて、これはどう答えればいいものか……
「おいおい、そんなジメッとした話じゃなくて、もっと楽しい話をしようぜ」
そう声を掛けてきたのは、客とも言えないお客様第二号。
売り物の本を片手に、売り物の壷に腰を掛けた黒と白の少女だった。
静かにしていると思っていたのだが、しっかりと聞き耳を立てていたらしい。
「あら魔理沙、楽しい話ってどんな事? お茶の話かしら? それともお酒の話?」
「そうだな……コイバナなんてどうだ。香霖は私達よりずっと長く生きているんだ、ロマンスの一つや二つあったんじゃないのか? とりあえず香霖の初恋の話をしてくれよ」
やれやれ、助け舟を出してくれたのかと思ったが、それはどうやら僕の勘違いだった様だ。
ただ、自分の興味が無い話を続けられたくなかっただけなのか。
それにしても僕の初恋の話とは……
話題が変わっているようでいて、実はあまり変わっていない。
僕が本を読むようになったきっかけ、知りたくなかった事実と僕の初恋の話は深く関わっているのだから。
~☆~
それは博麗大結界が出来るよりも以前。
そこは幻想郷とは別の場所。
とある山に住む妖怪と、その妖怪に攫われてきた女の間に産まれた半妖、それが僕だ。
僕は、良く言えば山に住む妖怪達のコミュニティ、悪く言えば山賊の隠れ家のような場所で幼少時代を過ごした。
はっきりと物心がついた時には、既に母と呼ばれる物はいなかった。
妖怪達の女性の扱いを見れば、それも仕方の無い事だと思う。
彼らは若い女を気まぐれに攫って来ては、犯し、そして食べた。
大半の者は半年もたたずに妖怪達の腹の中に納ってしまっていた。
そんな中、僕を孕み、産むまで生きていた母は随分長生きだったのだろう。
それが幸せな事だったのか、不幸な事だったのかは、本人と言葉を交わした記憶の無い僕には分からない。
そんな環境で生まれた僕は、父親が誰か知らない。
母を犯したという妖怪達や、僕を産んだ母親でさえ、誰が僕の父親か分からなかったのだ。
それくらい数多くの妖怪たちが共に暮らし、攫われて来た女達は日常的に妖怪達の相手をさせられていたのだ。
母親が居らず、父親さえも誰なのか分からない生活を強いた妖怪達だが、特にその事を恨んではいない。
妖怪達は力の弱い僕を役立たず呼ばわりはするが、特に虐待を受けていた訳でもない。
攫われてきた女達の世話さえしていれば、雨風をが吹き込まない寝床と、幾許かの食料を与えられるので、生きるのに困る事は無かった。
妖怪達の狩や遊びに参加しない……否、参加出来ない僕は、攫われてきた女達に食事を与え、怯える彼女達を宥め、時には彼女らの八つ当たりを受けたり、身の上話を聞いたりして日々を過ごしていた。
良くは覚えていないが、そんな生活も、僕がおよそ十になる頃に終わりを告げた。
人里を襲い、さまざまな物を奪って生活をしていた妖怪達だったが、やりすぎたのだろう。
武器を持った人間達が攻めてきたのだ。
妖怪は人間よりも強い。
それが世界の決まりだ。
妖怪は人間よりも力が強く、体も頑丈にできている。
それが世界の選択だ。
中には空を飛ぶ者や、不思議な力を使う者も少なくない。
そんな妖怪達は人間よりも強い。
それが世界の理だ。
だが、その理にも例外があった。
その人間達は、不思議な道具を使い、妖怪を斬り裂いた。
斬り裂かれた妖怪は二度と元通りに戻らない。
その人間は、不思議な術を使い、妖怪を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた妖怪は二度と元通りに動かない。
その人間が怪しげな言葉を唱えると、妖怪は跪き動かなくなった。
動かなくなった妖怪は、そのまま自然へと還る。
ある者は斬られ、ある者は焼かれ、ある者は石に成った。
そんな風に妖怪達を皆殺しにした人間達だが、どういう訳か僕を殺しはしなかった。
人間の血が混じっているからなのか、それとも攫われた女達を世話していたお陰なのか、今となってはその理由は分からない。
僕は、人間達に連れられて行き、村はずれに小さな小屋を与えられ、人間の村で生活するようになったのだ。
/
その日から僕は可哀想な子になった。
ある人間は僕を見て、「可哀想な子だ」と言って、施しを与えた。
ある人間は僕を見て、「可哀想な子だけど」と言って、簡単な仕事をあたえた。
ある人間は僕を見て、「可哀想な子」と言って、指をさし笑った。
ある人間は僕を見て、「可哀想な奴だ」と言って、与えられた物を奪っていった。
そんな生活だったが、ヤクザ者と呼ばれる様な人種には成る事は無かった。
いや、成り果てる事が出来なかった。
盗み等の悪事を働こうにも、村の者から常に監視されている様なもので、僕がどこで何をしていたのかは村の人間には筒抜けだった。
そんな状況で、悪事を働こうものなら村の人間によってたかってボコボコにされるのがオチだ。
力の弱い半妖でしかない僕はそれを撥ね退けるだけの力は無かった。
親が居らず、可哀想な子としての生活を強いた人間達だが、特にその事を恨んではいない。
村には僕を助けてくれる人間もいたし、酷い事をする人間もいた。
ある者は与え、ある者は奪い、ある者は慰め、ある者は蔑んだ。
こんなにも様々な者が居ては、一概に人間という種族を怨んだりは出来ない。
簡単な仕事を行い、その報酬として食事を手に入れ、小さな小屋の隅で丸くなって眠る。
頭を低くして、出来るだけ目立たぬ様に、弱い生き物として振舞い生きる。
結局のところ、人間達は山で妖怪達と暮らしていた時と同じような生活を提供してくれていたのだ。
そんなある日の事。
野良犬の死体を村の外に埋めるといった仕事を終え、家路に着く途中、男達が集まってなにやら騒いでいた。
こんな村のはずれに何かあったのだろうか?
不審に思い近づいて行くと、集まっている人間の一人、顔見知りの男に声を掛けられた。
「おう、妖混じりじゃないか」
「こんにちは、こんな所に集まって何かあったの?」
「魔女が村に潜り込んでいやがったから、追い出していたのさ」
「魔女?」
「ああ、あそこで倒れてる奴がいるだろ。そいつが魔女だ」
男の指した先、30間ばかり離れた先に横たわる人影があった。
遠目にはよく分からないが、魔女というくらいなのだから女性なのだろうか。
「あいつらは怪しげな魔法を使って人を化かしたり、呪ったり、家畜や子供を攫ったりしてるって話だ。俺の目が黒いうちは、そんな怪しげな奴を村を闊歩させたりはしねぇ。お前も怪しげな奴を見たら俺のとこに言いに来い。いいな?」
「う、うん」
男は僕の返事に満足した様で、話はこれで終わりとばかりに周りの人々に声を掛けた。
「よし、それじゃあ皆そろそろ戻るか」
集まっていた人々は、男の言葉に「応」と答え、踵を返し村の方へと戻っていく。
だが、数人の男達は村へと足を向けず、その場にしゃがみこんだ。
そして、
「二度と来るなよ、この魔女め!」
「命を取らないだけありがたく思え!」
と、倒れている魔女に向かって飛礫を打った。
「!?」
その光景に僕は混乱した。
なぜなら、村の人間に石を投げられるのは何時も僕の役割だったから。
だけど今はどうだろう?
男の人が石を投げている。
男の人が僕以外に向って石を投げている。
それは僕ではなく、あそこで倒れている魔女に向かって。
僕以外の人が石を投げられている。
そして徐々に湧き上がる不思議な感情。
それは、魔女を見て可哀想だとか、石を投げる人たちを見て恐ろしいだとか、そんな感情ではなかった。
言葉で表すならば……悦び。
生まれて初めて目にする、自分よりも立場の弱い人型の生き物に対する優越感だったのだろうか。
妖怪達は、僕よりも遥かに強かった。
攫われて来た女達でさえ、子供である僕よりは力が強い上に、下手に手を出そうものなら妖怪達に何をされるか分かったものじゃなかった。
そして、僕を迫害している現在の人間達は言わずもがな。
だが、向こうに倒れている魔女にならば石を投げても、きっと誰も何も言わないだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
暗い考えが、僕の鼓動を早くする。
自分の息使いが耳を刺激した。
愉悦?
それとも嘲りだろうか。
良心の呵責かもしれない。
ただ気づけば、酷く……自分が酷く興奮しているのが分かる。
気がつけば男達は消えており、此処に居るのは倒れている魔女と僕だけ。
そう、僕だけだった。
いつの間にか、手には石が握り締められていた。
あの女は魔女だ。
村に生きる者の敵だ。
僕も村で生きている内の一人だ。
だから、石を投げても……僕が石をぶつけても良いはずだ。
良いはずなんだ。
心の中の冷静な部分が「やめておけ」と言う。
人に石を投げられる事の辛さ、悲しさはよく分かっている。
だが、今までの誰にもぶつける事ができなかった怒りが、自分以外よりも弱者がいるという喜びが、えもいわれぬ恐怖が、その他のさまざまな感情が僕を動かす。
そして、
―――ヒュッ!
石が飛んだ。
飛んでしまった。
飛ばしてしまった。
僕の手から放たれてしまった。
石は、
飛んで、
飛んで……
放物線を描いて……落ちた。
やって、
やって……しまった。
胸にあるのは薄暗い喜び。
それから、じわりじわりと襲ってくる後悔。
……当たったのだろうか?
石を女の人に当ててしまったのだろうか?
僕は、抵抗も出来ない様な人に石をぶつけてしまったのだろうか?
人に石を投げる事が悪い事だとは分かっていた。
石をぶつけられる恐怖や痛みはよく分かっていたはずなのに我慢できなかった。
どうしても石をぶつけたかった。
石をぶつける側に立ってみたかったのだ。
あの女の人は魔女だから構わない。
さっきの男達だって投げていたんだ。
僕は悪くない。
そう自分に言い聞かせるが、どんどんと後悔が大きくなる。
本当に石を投げつけても良かったのだろうか?
僕にそんな権利はあったのだろうか?
倒れたままの女の人を見つめる。
……動かない。
段々と不安が大きくになってくる。
もしかして、死んでいるのだろうか?
僕が殺してしまったのだろうか?
母を殺した妖怪達のように、父を殺した人間達のように、僕はあの女の人を殺してしまったのだろうか?
魔女は僕を怨んでいないだろうか?
呪っていやしないだろうか?
仲間が報復に来たりしないだろうか?
もしそうなった時、誰も僕を助けてくれる者はいるのだろうか?。
命乞いをしても許してはくれないのではないだろうか?
碌でもない事ばかりが頭をよぎり、堪らずに倒れている女の人の元へと近づく。
生きていたらどうするのか、死んでいたらどうするのか、そんな考えは無かった。
ただ、彼女が生きているのか、それとも死んでいるのかを確認したかった。
倒れているのはまだ若い女の人だった。
見たところ十台半ば位だろうか、魔女と呼ばれるくらいだからシワシワのおばあさんを想像していたのだが、生憎とそうではなかったらしい。
「あ、あの……だいじょうぶ……ですか?」
僕は何を言っているのだろう。
大丈夫なはず無いじゃないか!
彼女が身に着けている服は土で汚れ、所々血がにじんでいる。
紫の長い髪の間から覗く肌は青白く、とても血が通っている様には見えない。
もう……死んでいるんじゃないだろうか?
「う……うぅ……」
突然、目の前の死体からうめき声が上がる。
「ひぃ、ご、ごめんなさい」
驚きのあまり思わず頭を庇い地に伏せる。
5秒……10秒……
……何も起こらない?
恐る恐る顔を上げる。
「……うぅ……み…………」
再び聞こえるうめき声。
もしかしてこの人はまだ死んでいないのではないだろうか。
「もしかして、まだ、生きているの?」
「うぅぅ……み、ず……」
彼女は苦悶の表情と共に声を絞り出していた。
良かった、生きていた。
安堵のため息が漏れる。
「水ですね。すぐ持って来る」
石を投げつけたという後ろめたさも手伝い、僕は水を求めて駆け出した。
/
僕は、家に戻り碗を取り出す。
くたびれた木彫りの茶碗を人様の前に出すのは少し恥ずかしい気もするが、これしか持っていないのだ、しょうがない。
次に川へと走る。
近くに川もあるし、半妖だから水くらい飲まなくても平気だった為、この小屋には水がめが置いていない。
こんな事なら少しでも人間の真似をして、桶にでも汲み置きをしておくべきだったと後悔する。
水を汲み、また走る。
「はぁ、はぁ……水、汲んできたよ」
急いでいた為、こぼれてしまって、半分くらいしか水の入っていない碗を差し出した。
彼女は怪訝な顔で僕を見つめる。
毒でも入ってないかと警戒されているのだろうか?
僕は碗から水を一口だけ飲み、再び差し出す。
この水が安全だと証明する為だ。
彼女は暫くこちらを見つめていたが、やがてノロノロと体を起こし、僕の手から碗を受け取った。
コクリ、コクリ
少しずつ水を口に含む彼女。
「……コホ、コホ」
コクリ、コクリ
彼女は何度かむせながらも碗の水を飲み干した。
コクリ……
「……ふぅ、ありがとう、助かったわ」
碗の水を全て飲み終えた彼女は、僕に碗を差し出した。
空になった碗を受け取り僕は固まる。
僕は彼女に何を言えばいいのだろう。
お礼を言われたから「どういたしまして」だろうか?
それとも、どうしてこんな所に倒れていたのかを聞くべきだろうか?
いや、そうじゃない。
まず始めにしなければいけないのは……
「ごめん……なさい」
謝罪し頭を下げる事だ。
「どうしたの、いきなり謝ったりして。まさか、さっきの水に何か変な薬でも混ぜていたんじゃ……」
彼女は驚いて胸に手を当てる。
恐らく自分の体調を探っているのだろう。
「そ、そんなことしてないよ!」
僕は慌てて首を振った。
「薬とかは入れてないけど、僕はさっきお姉ちゃんに石を投げたから……だから……」
僕の言葉に、彼女は安堵の息を吐いた。
そして静かに言葉を紡ぐ。
「そう……私が人から迫害を受けるのは今に始まったことでは無いわ。だから、今更あなたに謝られてもどうも思わないわ」
その通りだ。
彼女の言いたい事は良く分かる。
僕だって今更村の人間に謝られたところで何も感じないだろう。
そんな事をされても、傷つけられた記憶は消えないし、許す事なんて出来るはず無い。
だから、僕は許してもらえなくて当然だ。
「でもね、人に助けてもらった記憶はあまり無いの。あなたが水を汲んできてくれた事はとても嬉しかったわ。だから、ありがとう」
続く彼女の言葉に、僕は驚きを隠せなかった。
彼女の言葉が嬉しかった。
彼女の静かな笑顔が嬉しかった。
そう、人から感謝の言葉を貰える事が嬉しかった。
遠まわしに許してもらえたのが嬉しかった。
「ひっく、ごめっ……ん、ごめんなさぃ、ごめんなさい、ごめんなざいぃ」
いつの間にか、僕は目からはポロポロと涙がこぼれ落ちていた。
嬉しさの次に、僕を襲ったのは悲しみだった。
こんなに優しい人を、僕と同じ様に人間達から迫害を受ける仲間を、自ら傷つけてしまった事が堪らなく悲しかった。
「怒ってないから泣き止んで頂戴。まいったわね、こんな事なら子供のあやし方を調べておけばよかったわ」
困った顔をしながら何とか僕を泣き止ませようとする彼女。
僕はそれに応えたくて、着物の袖で涙をぬぐい、腹にグッと力を入れて涙をこらえた。
「うん、貴方は強い子ね」
オロオロとしていた彼女はホッと息を吐く。
どうにか涙を止めることが出来たようだ。
これで彼女を困らせずに済む。
「それじゃぁ、私は帰るわね」
「……あ、あの!」
彼女の言葉に思わず声を上げてしまった。
さっき会ったばかりの人なのに、もっと話していたい、もっと傍に居たい、そんな風に思ってしまう。
でも、それは叶わない事だ。
村を追い出された彼女が何時までも此処に居るのは危険な事だし、彼女には帰る場所があるのだ。
僕なんかが引き止めておく訳には行かない。
でも……
「お姉ちゃんは、さっきまで倒れてたのに体は大丈夫なの? もう少し休んでいった方がいいんじゃない?」
「そうね……でも、あまり遅くなるとあの子が心配するし…………ねぇ貴方、御礼をするから私が住んでいる屋敷まで手を貸してくれないかしら?」
「うん良いよ!」
僕はその提案を二つ返事で引き受けた。
彼女の左腋の下に首を差込み、右手で体を支え、森の方へと歩き始める。
まだ身長が伸びきっておらず、背丈の高くない僕だったが、彼女の支えとしては丁度良かったらしい。
道中、僕は色んな事を彼女に話した。
妖怪の父と人間の母の間に生まれた事。
両親とも顔も知らない事。
人間の村で生活するようになったきっかけ。
あまり聞いていて楽しい話じゃなかったと思う。
でも彼女は「そう……」とだけ呟き、僕の話を聞いてくれた。
それから、少しだけど、彼女の話も聞いた。
親友の屋敷に住んでいて、向かっているのはそこだという事。
村のはずれで倒れていたのは、新しく覚えた魔法を使って実験用の家畜を手に入れようとしたのがバレたから、らしい。
歩き始めて半刻ほどたった頃には、彼女は僕の背中の上にいた。
肩を貸していたにも関わらず、彼女の体力が尽きてしまったのだ。
そんな体力でどうやって村まで来れたのか尋ねると、空を飛んで来たと答えてくれた。
どうして空を飛んで帰らなかったのかと質問すると、
「今の体調で空を飛んだら、途中で墜落して大怪我をしそうだわ」
と、苦笑交じりの答えが返ってきた。
背中の上の彼女は、子供の僕からしても軽いと思えるほどの重さしかない。
彼女を背負って歩くのは、さしたる苦も無かった。
それは、彼女が軽いからなのか、それとも僕が高揚してるからなのか。
この時点の僕では判断する事が出来なかった。
森を抜けて、もう半刻ほど歩いた頃に彼女の言う屋敷が見えた。
こんなにも大きくて、紅い、西洋風の建物を見るのは初めてで、思わず圧倒されてしまった。
全面が紅く彩られた屋敷と聴けば、毒々しいというイメージが沸く。
しかし、この屋敷は違った。
紅いのが自然としていて、そこにあるのが当然とする。
そう、まるで、自然に喧嘩を売っている様な……そんな馬鹿な事を考えさせられた。
それでもその屋敷は嘲る様に佇んでいる。
しばらく屋敷を見上げていると、門の方から誰かが近づいて来た。
「パチュリー様、ご無事ですか!?」
声をかけてきたのは大陸風の衣装を着た女性。
この屋敷の使用人だろうか?
「ええ、ちょっと疲れたけど彼が助けてくれたから、無事に帰ってこられたわ。もう大丈夫だからおろして頂戴」
腰をかがめ、彼女をそっと地面に降ろす。
幾分か体力が戻ったのか、彼女は自分の足で立ち上がった。
「お姉ちゃんはパチュリーって名前だったの?」
「ええ、そうよ」
村を出てここに着くまで、結構な時間を一緒に居たのに名前を聞いていなかった。
そういえば、僕も名前を教えていない。
「あのね、僕の名前は―――」
「やめておきなさい」
ピシャリと彼女が僕の言葉をさえぎる。
「えっ?」
「自分の真名を軽々しく人に教えるのは危険な事よ。特に魔女なんかに教えるのはお勧めしないわ」
という事は、パチュリーという名前は真名ではないのかもしれない。
「う、うん……分かった」
彼女に自分の名前を教えることが出来ないのは少し寂しかったが、大人しく従うことにした。
「美鈴、この子を私の部屋……は、危ないわね。地下の書庫に案内してあげて。私も着替えたら行くから」
「はい、かしこまりました」
僕は彼女と別れ、使用人の人に連れられ、屋敷の中を案内された。
この紅い屋敷は、異様に窓が少なく、まだ太陽が出ているにも関わらず薄暗い。
そんな薄暗い廊下を抜け、階段を抜け、暗い暗い階段を降り、大きな扉の先で僕を出迎えたのは、一面の本棚と本の群れだった。
「すごい……」
僕は今までこんなに大量の本という物を見た事が無かった。
あっても1冊か2冊程度だ。
そもそもこの世界にこんなにも本の種類があるのかも知らなかった。
「ふふふ、びっくりしましたか? これはパチュリー様自慢の蒐集品ですよ。パチュリー様は、普段は引き篭りがちなんですけど、本やら魔法やらが絡んだ時には妙にアクティブになるんですよね」
美鈴と呼ばれた使用人の言葉はほとんど耳に入ってはいなかった。
それほどに、僕は目の前の本の山に圧倒されていたのだ。
こんなにも沢山の本を見ると、此処には世界中の全ても本が集まっているのではないかとすら思えてくる。
もしかしてパチュリーは此処に有る本の全てに目を通しているのだろうか?
もしそうならば、この世に分からない事なんて一つもないのでは?
そんな風に思える程の圧倒的な蔵書量だった。
「そうそう、パチュリー様がお世話になったようでありがとうございます」
「あ、……うん」
パチュリーに石をぶつけた事を思い出し、バツが悪いと感じながらも小さく頷いた。
「それでは私はこれで失礼しますね。あまり屋敷の中を動き回らないようにしてくださいよ。お嬢様に見つかったら危険ですから」
「え? う、うん?」
僕は訳も分からないまま再び頷いた。
さっきの言葉はどういう意味なのだろう?
もしかして、お嬢様と呼ばれているのは、目が合った瞬間に襲ってくるような危険な妖怪の類なのだろうか……
「待たせたわね」
美鈴の言うお嬢様について考えを巡らせていたら、目の前にパチュリーがいた。
先ほどまでの血と土で汚れた服ではなく、新品のように綺麗な服に着替えている。
それにしても、何時の間に入ってきたのだろう。
もしかしてこれも魔法の一種なんだろうか?
「さて、貴方に何か礼をしないといけないわね。何か望む物はあるかしら?」
突然の彼女の言葉に僕は戸惑った。
「別にお礼が目的で助けた訳じゃないよ」
「あら、遠慮はいらないわ。何でもいいのよ?」
望み……
僕に望む物なんて有るのだろうか?
食べ物やお金なんて無くても生きていける。
家や寝床だって無くても病気になんてならない。
誰かに復讐しようとかも考えた事が無い。
僕の望みとは何なのだろう……
ただ流されるように生きていた僕に望みなんかあるのだろうか?
何か心が動く様な物が無いかと周りを見渡す。
本、本、本、本の群れ。
世界中の文字を集めたかのように本しかなかった。
ふと、思いついたことがあった。
「ねぇ、お姉ちゃんは此処にある本を全部読んだの?」
「読んでいない本もいくつかあるけど、ほぼ全てに目を通しているわ」
「じゃあ、お姉ちゃんは物知りなの?」
「この世の全てを知っているとは言わないけれど、博識であると自負しているわ」
「それなら教えて! どうして母さんも父さんも死んでしまったの? どうして僕は一人ぼっちなの? どうしてみんな僕を苛めるの? どうして!?」
人間に迫害されている者同士という共感からだろうか、それとも一度涙という弱みをを見せてしまっている為だろうか。
気がつけば今まで誰にも聞くことができなかった疑問を、ぶつけどころの無かった理不尽への怒りを彼女にぶつけてしまっていた。
「そんな事が知りたいの?」
彼女は答えを知っているのだろうか?
僕は首を縦に振る。
「知らない方が良い事もあるわよ。それでも知りたいの?」
再び首を縦に振る。
誰でもいい、僕が恨みをぶつけるべき相手を教えて欲しい。
彼女は困ったように眉をひそめ、僕を見つめる。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「自分で調べなさい」
「え?」
彼女の言葉は思いもよらないものだった。
「答えはこの書庫の中にあるわ、だから自分で探しなさい」
「でも僕は文字を読めないよ」
「それくらい教えてあげるわ」
「いいの?」
「えぇ、それくらいの借りがあるわ。でも今日はもう帰りなさい」
「今日は……という事は、また来てもいいの?」
「書庫では騒がない事、日が暮れる前にこの館を出る事、この二つが守れるならいつでもいらっしゃい」
~☆~
その日から僕は毎日の様に館を訪れる事となった。
村の仕事をする時間が減り、食扶持が減ったが別に死にはしない。
毎日のように森の方へと出かける僕を不審に思い、何をしているのか尋ねて来る者もいたが、森で山菜を取っていると答え誤魔化した。
例え疑われたとしても、妖怪たちが住むような森を越えて行くのだ。
そうそう後を付けられたりはしない。
この時ばかりは、特に食事を必要とせず、病気にもなりにくく、妖怪に襲われにくい体というものは意外と便利なものだと思った。
屋敷では彼女に様々な事を教えてもらった。
まずは文字。
ひらがな、カタカナ、漢字、英語、漢文、etc...
世の中には様々な文字があることを知った。
すぐに全部を覚える事はできなかったが、少しずつ教えて貰い、いつの間にか簡単な読み書きくらいなら出来るようになっていた。
次に魔法について。
技術者、研究者のサガと言うべきか、こと魔法については詳しく教えてくれた。
魔法の成り立ちから、属性や触媒等。
その中でも僕の興味を引いたのはマジックアイテムだった。
たとえ非力な者であっても、大きな力を振るう事が出来るというそれらは、とても魅力的に思えた。
ただ、妖怪達を襲った人間達が使っていた道具も、マジックアイテムの一種だとは何とも恐ろしいものだと思う。
そして、本の読み方を教えてもらった。
彼女は僕が望んだ答えのありかは教えてくれなかったが、いろいろな本を教えてくれた。
冒険小説を読んではワクワクし、技術書を読んではまだ見ぬ道具に胸を躍らせ、歴史書では遥か昔の生活に思いを馳せた。
そんな生活が1年くらい続いただろうか。
彼女と過ごす時間はとても楽しく、いつしか僕の求めた答えはどうでも良くなっていた。
そして、彼女への思いも共感から恋心に変わっていた。
/
そんな生活も、ある日に終わりを告げる事となった。
その日、僕は彼女に思いを伝えるつもりで屋敷に訪れた。
手には精一杯の花束だ。
僕に出来る唯一の贈り物。
残念ながら花言葉にはまだまだ精通していなくて、意味は考えずに綺麗な花を見繕った。
屋敷についた時は、もう夕暮れで、斜陽が怪しくも紅い屋敷を照らし出している。
「……」
告白の決意の為か、それとも屋敷の不気味さの為か。
少しだけ、膝が震えた。
「おや、今日もいらっしゃったんですね」
「こんにちわ、美鈴さん」
門番である美鈴に会釈して、僕は敷地内へと侵入する。
そして、大きな屋敷の扉を潜った。
「……お邪魔します」
もちろん、返事はない。
だけど、いつもここでヒヤリとした感覚を味わう。
誰かに見られている様な、そんな感覚。
もしかしたら、お嬢様が僕を見ているのかもしれない。
もう随分と長く通っているが、お嬢様には一度も会っていない。
「うふふ」
突然に聞こえた少女の笑い声に、僕は慌てて後ろを向いた。
誰も、いない。
告白の緊張の為だろうか。
それとも告白する僕を見て、お嬢様がからかっているのだろうか。
「お嬢様ですか?」
僕の言葉に返事はない。
それでも、僕は言葉を続けた。
「いつもお世話になっています。パチュリーさんに用事があるので、失礼します」
僕は、返事があるのかどうか確かめる間もなく、地下へと向かった。
地下の書庫では、いつも通り難しげな分厚い本と格闘している彼女がいた。
彼女は僕に気付き”いらっしゃい”とだけ声を掛け、再び視線を落とした。
彼女の前に立つとドキドキと心臓が早鐘のように打ち鳴らされる。
気を抜くとへたり込みそうになる僕を、後ろ手に隠した花々が勇気付けてくれた。
花束はまるでマジックアイテムだ。
僕のまるで露しかない勇気を何倍にも増やしてくれる。
来る途中に見つけた花を摘んできたのだが、これが無かったら倒れてしまっていたのではないだろうか。
落ち着け。
深呼吸をひとつ、ふたつ……よし!
「あの、僕、お姉ちゃんのこと、好き!」
僕は言葉と共に持っていた花を差し出した。
さっきまで以上に鼓動が高鳴り、胸が痛いくらいだ。
耳にまで胸の早鐘は、自分では制御できそうにない。
狂おしい程に、僕の頬は紅潮した。
そんな僕を彼女は困ったような表情で見つめる。
あぁ……やっぱり、迷惑だっただろうか。
「あら?」
彼女は何かに気づいたかの様に口を開いた。
もしかして僕の顔に何かついているのだろうか?
いや、その焦点が定まっているのは僕の後ろ。
不思議に思い、振り返ろうした僕の頬にそっと彼女の手が触れる。
徐々に彼女の顔が近づいてくる。
そして、
唇が
触れた……
「あ、う……」
キスされた?
体中の血が集まってしまったかのように顔が熱い。
嬉しくて、恥ずかしくて彼女の顔が良く見れない。
だけど、浮かれる僕をよそに、彼女は何処か寂しげな目で僕を見ていた。
「貴方はなぜ母親や父親が死んだのか、知りたがっていたわね」
「え?」
「教えてあげるわ」
彼女の言葉に僕は混乱した。
どうして今さら、そんなことを教えてくれるのだろう?
何故、告白の返事をするのでは無く、今更そんな事を教えてくれるのだろうか……
「貴方の母が死んだのは世界の理。妖怪は人間が増えすぎないように、力を持ちすぎないように間引く。それに選ばれるのは、たくさん子を産むであろう若い女性。だから貴方の母親は殺される為に攫われて、たまたま貴方を産んだだけ」
「っ!?」
金槌で、思い切り頭を叩かれた気がした。
僕にはお構いなしに、彼女は言葉を紡ぎ続ける。
「貴方の父親が死んだのは世界の理。妖怪が増えすぎると世界のバランスが崩れてしまう。だから増えすぎた妖怪は退治されてしまう。世界がバランスを保つために退魔士のような人間が現れる。だから貴方の父親は殺された、貴方はたまたま生かされただけ」
どうして今、そんな事を話すのだろう?
さっきまで幸せな気分だったのに、今は心が痛い。
世界の理?
そんな物のせいで僕は独りぼっちになってしまったのだろうか?
それなら僕は、誰に怒りを悲しみをぶるければいいのだろう。
「そして、貴方が一人ぼっちの理由それは―――」
「やめてよ!」
僕は堪らなくなって叫んだ。
「……半妖という生き物は、妖怪のような捕食者でも、人間のような被食者でも無い。いわば食物連鎖の外にいる生き物。でも、そんなものを世界は認めない」
彼女は僕の声を無視して話を続ける。
「だから、世界は貴方を認めない。決して認めない。拒絶している。だから貴方は独りで生きなさい」
世界から認められていない、拒絶されているという事実より、僕には彼女の言葉が、彼女の拒絶が……悲しかった。
今更そんな事を知りたくなかった。
ずっと知らないままで居たかった。
「どうして? どうして今更そんな事を言うの?」
「それはね、私が魔女だからよ。魔女というのは、人を誘惑し、騙し、地獄に突き落とす、悪魔のような女と書くの。貴方と過ごした時間はそれなりに楽しかったわ。だから、もうお帰りなさい」
魔女は妖艶な笑みを浮かべた。
いやらしくも、他人を弄んだ魔女を誇示するかのような笑み。
僕は、
僕はその笑顔を背に、
逃げ出した。
~☆~
と、いうのが僕の初恋にして、本を読むようになる切欠な訳だが、こんな恥ずかしい話を霊夢たちに出来るはずも無い。
さて、どうやって誤魔化せば良いものか。
「で、どんな初恋だったんだ?」
「初恋ねぇ……僕の恋心は悪い魔女に奪われてそれっきりだよ」
だから面白い話なんかは無いよ、と続けようとしたのだが……
僕の答えに霊夢も魔理沙も目を丸くしている。
何かおかしなことを言っただろうか?
「へぇ、意外ね。霖之助さんってもっと落ち着いた女がタイプだと思ってたわ」
「いやー、参ったな。知らず知らずのうちに香霖のハートを盗んでしまうとは……私はとんだ恋泥棒だったわけだな」
なにやら霊夢も魔理沙も誤解しているようだが、誤魔化せている様なので良しとしようか。
「おやおや魔理沙。君は自分の事を悪い魔女だと思っているのかい?」
~★~
あの日、あの時、あの瞬間
少年が去った後の大図書館
パチュリーは先程、半妖の少年が出て行った扉を見つめ、ため息をつく。
そして、おもむろに振り返り、口を開いた。
「レミィ、出てきたらどうなの?」
クスクスクス……
笑い声が書庫に響き、本棚の影から小さな少女が躍り出た。
「ふふふ……貴方もひどい女ね、あんな幼気な子を傷つけて追い出してしまうなんて」
親友の登場にパチュリーは再びため息をつく。
「放って置いたら、貴方が殺してしまいそうだったから帰しただけよ」
「あら、そんなに大事なら、あの子を連れてこの屋敷を出ても良かったのよ」
「貴方を置いて行けるはず無いでしょ」
「そう、それならいいわ」
パチュリーの言葉にレミリアは満足そうに頷く。
それにしても、困った友人を持ったものだとパチュリーは思う。
悪魔の様に残酷で、子供のように我儘で、猫のように気まぐれで、そして誰よりも強い力を持つ少女。
魔女の名がふさわしいのは、私よりも彼女のではないかと。
「それにしても半妖とは珍しい者を見たわね。あの子はどんな運命をたどるのかしら」
「まさか、あの子の運命を操ったの?」
「ふふふふふ……」
レミリアは笑うばかりで答えない。
いや、彼女の様子を見れば答えは出ているようなものだ。
「さて、遠い未来、あの子と貴方の運命が再び交差する時、今度はどんな答えを出すのかしらね?」
新鮮であり、楽しく読ませてもらいました。
りんのすけにも、こういう時があったはずなんですよね・・・。
面白かったです。
そういえば、霖之助の過去なんて一度も考えたことなかったなぁ・・・。
意外性も含めてこの点数で。
それでも救いがあるような「うしととら」みたいな、本来の妖怪や魔女の話が感じられました。
霖之助の名前が本名ではないのを利用した方が良かったかも?
お話自体は、滅多にない霖之助の過去を題材にしてるので面白かったです。
長文失礼しました。
紅魔館に関しても幻想郷に来たのは「吸血鬼異変」ですが、それ以前の日本にあってもなんら問題ないと思います。
少なくとも咲夜が来た時に「和名をつける」程度には馴染んでたんだし。
むしろパチュリーが人間に遅れを取っていることや
使い魔を連れずに出歩いてることに違和感を感じてしまう
石を投げる辺りは自分への絶望感を大変緻密に描き挙げてらっしゃって脱帽。
初恋って苦いもんで、それが魔女であるパチェ相手に実に上手く表現されていると思います。
最後の魔理沙も本編の苦さと対照的で可愛らしいですね。
パチェが初恋の相手だったとは...
霖×パチェ。意外な組み合わせですが、案外いいかもと思ってしまった。