「大変! 実験の時間に遅れちゃう!」
――私の名前はウドンゲイン、顔もプロポーションにも自信はあるけど、ちょっとドジなのが悩みかな。
「すみません! 遅れてしまいました」
「叱っても仕方ないし、さっさと仕事に入ってもらえるかしら?」
――彼女の名前は八意永琳、月の天才で私の師匠!
この永遠亭を実質仕切っている方で、何をやらせても人間離れ!
けど、求めるレベルが高すぎて、それについていくのがちょっぴり大変。
「冬のために今から薬の備蓄をしなくちゃいけないから、今日から忙しいわよ」
「はい、わかりました!」
ところが今日に限って失敗ばかり、師匠には呆れられて、今日はもういいって言われるし。
「私って、才能ないのかなぁ」
せめてできることはないかって見つけたお仕事。
廊下の乾拭きをしながらため息をついてみる。
もう少し要領が良くなれば、師匠の邪魔にはならないのに。
「さすがはてゐさまだ!」
「てゐさま最高!」
私が落ち込んでいるところに、てゐがお供のイナバを連れてやってきた。
あんちくしょう、元から私よりも人気はあったけれど、いまや財前先生総回診の勢いだ。
胃癌で死んじまえ。あ、近年のは肺癌だっけ?
「あれ? どうしたのさ鈴仙」
哀れむがいいさ、どうせ私は何もできない新参ホイホイに過ぎないのよ。
「新参ホイホイって呼ばれなくなって久しいけど、何か他のポストが見つかった?」
「どうせ弄られ役ぐらいしかありませんよ」
どうせ哀れみの目線を向けてきてると思って顔をあげると、てゐの表情は私の予想から大きく外れたものだった。
あれ、笑って、ない?
「鈴仙、あとで私の部屋にきて、いいもの見せてあげるから」
そういって、てゐは去っていってしまった。
鈴仙は若干訝しげに思いながらも、乾拭きを再開した。
やっぱり、一度始めたものは最後までしなくちゃ収まりが悪くってしょうがない。
「きたわね、鈴仙」
私が襖を開けると、てゐは雑誌のようなものを私に向かって差し出した。
「真剣……ゼミ?」
「そう、真剣ゼミ。最近私のカリスマが上がって、イナバたちが後ろをついてくるようになったでしょ?」
「う、うん」
「それに、姫様が盆栽以外にも、ラジオ体操もはじめた」
「ラジオは外の電波を受信してるのね」
「そう、それも全部真剣ゼミをはじめたからなの」
「じゃあ姫さまなんですぐ仕事辞めてしまうん?」
「この前はおはじきを飴玉だと思って飲み込んでたね、どうしよう」
「さすがの真剣ゼミも姫さまはカバーし切れなかったと、そういうことなのね」
揃って輝夜に合掌。
うちの姫様は深夜仕様。暑いときは行動しないのが合理的と言い張って、この前はご飯抜きにされていた。
通販で購入した夜間迷彩は、おやつを取りにいくとき発揮、へるぷみーえーりん!
「姫さまはどうしようもないとして、とにかく一日三十分もやれば世界が変わるよ。がんばれがんばれできるできるやる気の問題だって!」
てゐの熱い言葉に、少しでも彼女を疑ってしまった自分を恥じた。
この子はこんなにいい子なのに、どうして私は疑ってしまったんだろう。
ああもう耐えられない、一緒に駆け落ちしましょう!
「発情期だからってそこまでするか!」
目の前がブラックアウトして、気がついたら顔に辞書が刺さってました まる
「ごめんてゐ、私万年発情期」
「微妙に語呂がいいのがムカつく」
兎は実は淫乱だったんだよ! という俗説がありますが、あれは本当。
ただし妖怪兎はその範疇ではないというのが最近の研究結果。
というわけで
「ごめんなさい、悪ノリしました」
「許す」
真剣ゼミを千切ろうとするてゐの前で、鈴仙はプライドを投げ捨てて土下座した。
「この真剣ゼミは凄いの、たった一日三十分するだけで成績はグングン上がるし身長は伸びるし彼女はできるしニートは脱出できないし」
「働けないんだ」
「肝心なところで役に立たないってキレてたよ」
「師匠!」
でもラジオ体操するようになっただけ、良いとは思いませんか師匠。
思いませんよね、毎日胃薬飲んでますもんガスターテン。
正露丸は神経麻痺させちゃう劇薬ですが、心の神経までは麻痺させないようで、師匠は毎日泣いてます。
そもそも師匠薬効かないのに幻覚キノコで跳ねちゃうお茶目さんなので設定なんてどうでもいいじゃないですか。
「まぁそんなわけで、鈴仙も真剣ゼミはじめてみない? 月々五千円ぐらいかかるけど」
「現代の貨幣価値で?」
「約100億、もするわけないじゃん。お小遣いから出すのが辛いなら、キャリアアップってことで相談してみたら?」
「ふむぅ」
確かに月々五千円の投資と一日三十分の勉強で劇的に変わるのならば、始めてみて損はないのかもしれない。
いいや、もしかするとこれをきっかけに、私の永遠亭内の扱いもかわってしまうかもしれないのだ。
よく考えて見るんだ鈴仙優曇華院イナバ、大体この名前だって適当に付けられた名前が三個重なったトライアタック。
自分の意思の介在する余裕はまったくもってありはしないのだ、ありの隙間もないほどに。
「うわ鈴仙キモッ!」
てゐが何やら言ってるが私はまったく気にしない。自分で想像してプクススと笑うことぐらい許されて然るべきなのだ。
それに旧存在である今の私がキモくたって何の問題もない。
明日からの三十分で私は変わる。月の軍のヤゴコロブートキャンプ(薬漬けにされる伝統がある)に比べれば、
一日三十分テキストとの睨めっこを制することなど呼吸をするぐらいに容易いことだ。
「ありがとうてゐ! 早速師匠に相談してみるわ!」
脱兎の勢いで飛び出して、放り出された研究室へとローリング。
永琳はハイテンションなうどんげを見て一瞬目を見開いたけれど、手に持っている雑誌を見て恥性の塊である彼女は悟った。
「うどんげ、真剣ゼミを始めたいのね?」
「はい、私、師匠の役に立ちたくって」
「それを始めても身長は伸びないし彼女もできないしニートも脱出できないのよ?」
「確かに輝夜さまは今でもフリーターですし、脳内でカップリングは作っていてもそれは男同士ですしね」
「まぁでも、今より仕事はできるようになるかもしれないわね。いいわ、それぐらい出してあげる」
「やったー!」
断ったら話が終わる。ご都合主義でSSというものは進んでいくのだ。
「まぁ、さっきは私も言いすぎたわ。手伝ってくれる?」
「はい!」
チクタクチクタック時間は進む。
時折失敗をしてしまっても、とやかくは言われなかった。
鈴仙の、役に立ちたい! という真摯な気持ちが永琳には伝わっていたのだ。
◆
「というわけで、真剣ゼミの教材が届いたわけだけど」
真剣ゼミは凄い。今日の夕飯から八雲紫の年齢までなんでも揃えて見せると豪語する手広さで、鈴仙の学びたい薬学も当然カバーしていた。
申込書を里まで出しに行って待つこと数日、こうして、思ったよりもずっと薄いテキストが届いた。
「でも凄い、図解付きで詳しく説明されてる!」
永琳の持っている薬学書は、知識を持った者が活用するものであり、まだ日の浅いものにはそれは複雑すぎて理解し辛かった。
それでも幻想郷には、ほかにそうした書物は里の医者か、もしくは紅魔館ぐらいにしか存在しない。
噛み砕いた参考書など、もってのほかだったのだ。
「まずは基礎から固めていかないと。名前がわかってても、詳しい効能がわからないのも多いし」
何々を持って来いだとか、濃度を調整して混ぜろだとかの作業はできても、根本から理解できていないのならば身につかない。
食い入るように眺めていると、あっという間に三十分は過ぎてしまった。
「まぁ一日目だから、こんなもんでしょうね」
テキストを閉じると、紅ペン先生への質問コーナーという紙が同封されていたのに気づいた。
なるほど、わからないことがあれば質問できるシステムとはなんとも親切な。
早速鈴仙は、紅ペン先生なる人に質問文を書くことに
『こんにちは、私は永遠亭の鈴仙優曇華院イナバです。このたびは師匠の薬を作る仕事のお手伝いをしたくて、この真剣ゼミを始めてみました!
早速ですが、教えてください。うちのお姫様はやることなすこと気まぐれで、長続きする趣味は大抵生産性がありません。
彼女を働かせるには一体何がいいでしょうか? ちなみに詩を詠むことや、花を生けることは得意だそうです』
「よし、できた!」
いきなり自分のところの恥を晒して一体何がしたいのか、しかし鈴仙はどこか誇らしげに返信用の封筒に手紙をいれた。
「返事も楽しみだし勉強もできそうだし、これからがんばるぞー!」
ちなみに姫は現在お昼寝中。小豆色ジャージでラジオ体操をしたら疲れちゃったんだって。
師匠はいい加減叱っても無駄だって判断して、今は怠惰な姫様をいかに愛でるかと、養っていくかってことに粉骨砕身。
私も師匠のために、もっと役に立てる女にならなきゃねっ!
◆
「ふむ。お姫様だからって無条件に働かなくてもいいというのは間違っています。
やれることからやらせてみて、養ってもらう厳しさというものを教えてみるのはいかがでしょうか。
例えば連歌会を主催してみるだとか、華道の先生になってみるだとか。
ちなみに紅ペン先生も親友がニートなせいで家計が火の車です、っと」
パチュリー・ノーレッジは、手紙を書き終えると大きくため息をついた。
紅魔館の財政が芳しくないとのことで、内職をしろということで始めた真剣ゼミ。
はじめこそ生徒数の数も多くはなかったが、今では幻想郷中に多くの生徒を抱えている。
元来人に教えることは得意なほうではなかったが、持っている知識を噛み砕いてテキストに纏めるのも苦ではないし。
続けるうちに相談に乗るのも悪くはないと思い始めてきた。
しかし。
『うちの従者やイナバたちは、どうにか私を働かせようと必死です。しかし、私はどうしても働きたくはありません。
貴族はむしろ、働かないことこそが美徳ではないのでしょうか? 紅ペン先生に何かいい案はないでしょうか?』
『うちの主人は結界の管理を私に任せっきりで、自分で働く意思をまったく見せません。しかし私は彼女の式なので、命令に逆らうことはできません。
子は親の背中を見て育つと言います。私にも式がいますが、父であり母である私の姿を見て、どんな子に育つのか心配です。
この主人をどうにか働かせるためにいい案はないでしょうか? ついでに足が臭いです。お返事待ってます』
『相談です。私の主人はとても綺麗な方で、聡明でもあられます。しかし、彼女はとても大食らいで、そこだけが私にとっての悩みです。
普段はとても優しい方で、ほかに不満はまったくありません! だからこそ、幽々子さまには自重なさってほしいのです。
お願いします、紅ペン先生の知恵をお貸しください』
3通目に至ってはうっかり主人の名前を出している。大丈夫か白玉楼。
このように、各勢力の悩みがどんどん送られてくるのだ。
むしろこれは月々五千円の悩み相談室、毎日のように傍から見れば面白おかしい手紙が送られてくる。
もう少し、自分たちが幻想郷のパワーバランスを担っていることを自覚すべきだと思うのだが。
「パチュリーさま、今日のお手紙です」
「ん、ああそこに置いておいて」
「はい、よっこらしょっと」
また何枚も、紅ペン先生宛ての手紙が積み重なっていく。
ただ、困ったことに。
「なんでレミィからも手紙が来るのよ!」
『こんにちは紅ペン先生! 早速ですが相談です……。私には5つ下の妹がいますが、訳あってあまり仲がよくないのです。
メイドや親友にも相談しているのですが、結局は私に勇気がないのが原因だと思っています。
でも、なんといって妹に話かければいいのでしょうか? お願いです紅ペン先生、私に勇気をください』
本気なのかジョークなのか、パチュリーはマジボケの親友に頭を抱えた。
「しかもさ、妹様からも手紙来てるし!」
『こんにちは紅ペン先生。私には5つ上のお姉ちゃんがいます。ですが、やむをえない事情とは言え私に冷たく当たっていて。
私はもう、そんなことはいいのにと思っているんですが、上手く気持ちを伝えることができません。
門番や泥棒にも相談しているのですが、なかなか上手くいきません。お願いです紅ペン先生、何かいい方法はないでしょうか?』
「まぁこんな調子なら雪解けは間近なんだろうけど」
これらの返事は後で書くとして、パチュリーは魔理沙からの手紙を開いた。
『こんにちは! 私は魔法の森で一人暮らしをしていますが、父親との折り合いがよくありません。
それというのも、私が魔法使いになるときに絶縁されてしまったのです。
今でもきっと許してくれてはいないでしょうが、わかりあうことはできなくても家族は家族です。
何か良い案はないでしょうか? 一緒に考えてください。 霧雨魔理沙』
「もう、馬鹿なんだから」
傲岸不遜を絵に書いたような魔理沙が人並みに悩んでいるのを見ると、意外に感じると同時になんだか寂しさも覚える。
彼女もなんだかんだいって、人間なのだ。そのことをこういったことで知ってしまう。
「けど、この巫女はどうかしてるわ」
『金ください。米ない。 博麗霊夢』
「まずは会費払えよ!」
手紙にツッコミを入れても仕方ないのだが、わざわざ手渡しで手紙を渡しにくる辺り物凄い悪意を感じる。
運んでくるたび美鈴はボコボコになってるし、なんというか忍びない。
「しかも所帯染みたこと書いてくるのもいるし!」
『最近、同居人の腹回りが心配です。歳も歳ですし、メタボリックでしょうか?
彼女は周りからおばさんくさいだとか、ガンキャノンだとか言われていて可哀想です。
あ、ガンキャノン知ってます? 外の世界のロボアニメに出てきた奴なんですが格好がまた傑作で(笑)
喧嘩になったときとかにボソっと言うと顔真っ赤にして黙りこくるんですよね。楽しいです』
「明らかに世間話じゃん! そこらへんの石と話してればいいじゃん! ゴホッゴホッ!」
「ああパチュリーさま! 大きな声を出したら喘息が……」
「え、ええ大丈夫よ。他にも手紙があるから読まなきゃ」
「あ、紅茶淹れてきましたので」
「ありがとう、いただくわ」
小悪魔の淹れてくれた紅茶を啜りながら、新しい手紙を開く。
『こんにちは。私は幻想郷でも最強の妖怪だと自負しているのですが、心はそこまで強くはありません。
先日も幻想郷縁起で最恐の妖怪だとか、危険度が極悪だとか書かれてしまい、一人で泣いてしまいました。
あんなことを書かれてしまったので、お花を愛でていると妖精や妖怪が逃げてしまいますし、里へお買い物へ行ったときも、周りから避けられてしまいます。
一体私が何をしたというのでしょうか? たしかに、戦うことは好きですが、無駄な殺生はしません。
どうすれば私に良き理解者ができるでしょうか? 紅ペン先生、教えてください』
「ぶふっ!」
「パチュリーさま!?」
思わず、むせた。
いつかこのネタでいじめてやろう。そう決めた。
「さて、次」
『おはこんばんちは! ルナサ・プリズムリバーです☆ 実は、妹たちとしている楽団なんですが、私よりもメルランのほうが人気があります……。
明るいキャラクターのほうが、やっぱり人気が出るのかなぁ~? 紅ペン先生はどう思いますか??
私としては、もっともっとみんながライブに来てくれたらそれでいいんだけどね~☆ PS:リリカはいらない子じゃないよ♪』
「キャラちげぇ!」
「パチュリーさまも!」
鬱々としているはずの長女が、まさか文章だとはっちゃけるとは思わなかった。
楽団のパンフレットもたまにテンションの高い文章が載っているが、もしかすると長女が書いているのかもしれない。
これは危ない。
「次々! ええいマトモなのはないのかしら!」
『こんばんは。私は寺子屋で教師をしていますが、なかなか生徒が授業を聞いてくれません。
私の言葉遣いや授業そのものが難解だということはわかっているのですが、なかなか改善することができません。
良ければ、子供にもわかりやすいテキストの編纂も考えてくれないでしょうか。
私の授業を友人に聞かせてみたら、三分経たずに爆睡し、無理やり聞かせた結果、脳みそが沸騰してリザレクションしました』
「後半絶対嘘でしょこれ! 死ぬわけないじゃない!」
「パチュリーさま落ち着いて! きっと彼女なりのジョークなんですよ!」
上白沢慧音が相当硬い人物ということは、結構な頻度で耳に入ってくる。
彼女がどれだけ考えて、このような一文を書いたかを思うと涙が出てくるが、それとこれとは別だ。
だいたい難しい話を聞いているだけで脳みそが沸騰していたら、レミィなんかは三日も持つまい。
「あと数枚ね。ちゃっちゃと読みましょ」
『うぉんちゅー!(挨拶) どうも、三途の川で渡しをやっている死神ですが、どうも最近上司の体調が優れないらしく心配です!
やはり船にスクリューを取り付けたのがいけなかったんでしょうか? 普段の十倍ほど魂を運んでいるせいで、まったく休めていないそうです。
そこで相談なんですが、私の昼寝時間を延ばすべきでしょうか!? お返事まってます!!』
「過労死しちゃうううううううううう!!」
「パチュリーさま! 吐血してます!」
危うく三途の川にお世話になりかけながらも、なんとか現実世界に踏みとどまることができた。
働きすぎるというのも考えもので、ユ○ケルを飲みながら働く閻魔の姿が目に浮かぶようだった。
「ま、死ぬ前になんとかなるでしょ。さ、次々」
「は、はい」
『今日も元気だお酒が美味い』
「これは小鬼ね。宴会がしたいっていうアピールかしら?」
「どうしても暇になったら自分で開くんでしょうね、私は呼ばれませんが」
「小悪魔。今度は私と一緒に行きましょう、ね?」
「はい、パチュリーさまっ!」
久しぶりの休憩地点に、主に体がホッとしていた。
ツッコミどころが多すぎると体がついていかないのだ。
『下賎な民よ、ご機嫌いかが? 私は天人なんだけど、どうにも毎日退屈で……。以前異変を起こしたときはたくさん来てくれたのに、もうあまり来なくなっちゃった。
また異変を起こせば、遊んでくれるでしょうか? 寂しくて毎日泣きそうです。お願いです紅ペン先生、天界まで遊びにきてください。待ってます』
「何これ?」
「さあ? 素直になれない年頃なんじゃないですか?」
うっかり、異変を起こしたのは構ってほしかったということを暴露して。
さらには寂しくて堪らないということまで駄々漏れな手紙に二人は顔を見合わせた。
プライドの高さも最初の一文だけ、それ以降はなんだか哀れで見てられない。
「まぁお誘いもきてるわけだしね。小悪魔、今度一緒に行きましょうか?」
「それもいいですね、歓迎されるかはわかりませんが」
「きっと心の中じゃ歓迎してくれるわよ。それじゃあ最後のを読みましょう」
『はじめまして。早速ですが私には友達がいません。人形と同居している生活なのですが、話相手がいないと上手く話せなくなりそうで怖いです。
毎日鏡に向かって話しかけているのですが、自分に向かって話しかけていることを思うと、どうにもやり切れません。
お願いです紅ペン先生。まずは文通でいいので、私と友達になってくれませんか? お返事待ってます』
「アリス!」
いつもクールに振舞っている彼女が、腹の底ではこんなことを考えていただなんて。
同じ魔法使いとしてある種尊敬の念も感じていたが、これを見ると可哀想を通り越してちょっとだけ気持ち悪くなってしまった。
小悪魔も、手紙の衝撃が強すぎて何もいえないようだった。
「私も何も言えないわ、悲しくって」
「パチュリーさま。今度遊びにいってあげてください」
「ええ。それじゃあまぁ、返事をおいおい書いていきましょうか、小悪魔、手伝ってくれるわよね?」
「もちろんです!」
◆
三日後、永遠亭にて。
「凄い! 紅ペン先生から返事がもう来てる!」
手紙を受け取った鈴仙は、自室で急いで手紙を開けた。
『お姫様だからって無条件に働かなくてもいいというのは間違っています。
やれることからやらせてみて、養ってもらう厳しさというものを教えてみるのはいかがでしょうか。
例えば連歌会を主催してみて、その先生をさせてみるだとか、華道の先生になってみるだとか。
ちなみに紅ペン先生も親友がニートなせいで家計が火の車です。関係ないですが、アリスさんとお友達になってあげてください』
「ふむふむ。紅ペン先生も大変なんだなぁ……っと」
一通り手紙を読み終わると鈴仙は、大事なところだけを切り抜いて残りは捨ててしまった。
「連歌会だとか、華道の先生ねっと。師匠に提案してみようかな」
鈴仙はウキウキしながら、テキストを開いた。
ゴミ箱の中では、アリスさんとお友達になってくださいという一文が寂しそうに天井を見ていた。
「れーせーん!」
「わっ! びっくりした」
「勉強はかどってる? 今度抜き打ちで、薬の知識のテストするんだってさ!」
「わぁ! なんか予測してた展開で私もびっくり!」
「予測してたとかしてないとかはまぁいいとしてだよ。助手としていいところ見せたいのならこれがチャンスだよ!」
てゐの言葉に、鈴仙は唾を飲み込んだ。
そう、元はといえば永琳に認められたいからこそ真剣ゼミを始めたのだ。
ここでいい点数を取って、いいところを見せなくては。
「わかった、がんばって勉強してみる!」
「うん、がんばれれーせん!」
ガッチリと硬い握手を交わしてから、鈴仙はテキストと睨めっこし始めた。
「何が出ても大丈夫なようにしなくっちゃ!」
「その調子だよ、がんばれ!」
◆
「ふむぅ」
『働かないことが美徳だということは、結局は嫌な現実から逃げているだけで、なんの解決にもなっていません。
それどころか、周囲の信頼まで失っていく結果になりかねないので、私個人の考えからすれば。
周囲の方々の期待に応えるようにしたほうが良いと思います! がんばってください!』
輝夜は手紙の返事を読みながら、永琳のことを思った。
なんだかんだいって長く居すぎて、甘えるのが当然だと思っていたのかもしれない。
もしかすると、それが永琳にとっての重荷になっているのかもしれないと、輝夜は今更ながら気づいた。
「そうねぇ、それじゃあやれることからやってこうかしら」
ぐっと背伸びをすると、運動不足の背中がグキりと鳴った。
「あいたたた。うー、明日になったら本気だす……」
紫は、藍に届いた手紙を勝手に読み、そこで初めて式の気持ちに気づいた。
『確かに命令されればあなたは断ることができないかもしれません。しかし、本当にあなたの意思は主人へと伝わっているでしょうか?
たまには立派な姿を見せてほしい。その気持ちが諦めに変わっていれば、何も変わりはしませんよ?
足が臭いかどうかは知りませんが、私に愚痴るよりもまず、あなた自身が気持ちをぶつけてあげてください』
「そうねぇ、私も甘えすぎていたのかしら。藍? ちょっと来なさい?」
紫が呼ぶと、藍は割烹着姿ですぐに現れた。どこか、怪訝そうな顔をしている。
「およびでしょうか? 紫さま」
「今日からしばらく暇を出すわ、橙でも連れてどこか羽を伸ばしてきなさい」
「へ? 何かありましたか? もしかすると認知症とか」
「気が変わらないうちに行きなさい、命令よ」
「め、命令とあらばすぐにでも!」
慌てて駆けていった式の姿を見て、紫はため息をついた。
「私も甘くなったわねぇ。式は道具! って今じゃあ言い切れないわ」
『まずは話合うこと! もしかすると寂しいだけかもしれませんよ?』
妖夢は手紙の返事が短いことをいささか残念に思いながらも、言われた通り、食事時に積極的に幽々子と話すことにしたのだ。
今までは食事の際も他の家事をしていたため、ゆっくりと話している時間などなかったのだ。
「それで、この前里に買い物に行ってきたときなんですが、肌白いねーだなんて言われちゃって」
「もぐもぐ」
「幽々子さまが里に降りていったら、きっとどこの美人さんだーって大盛り上がりでしょうね」
「ごちそうさまでした」
「へ? もういいんですか? いつもの半分も食べてませんけど」
「ううん、これでいいの。やっぱり誰かと食べるご飯って美味しいから、すぐにおなかいっぱいになっちゃって」
優しく微笑む幽々子に、鈍い妖夢もようやく気づいた。
たくさん食べるというのは、物足りない気持ちのアピールだったのだ。
「ゆ、幽々子さま」
「なぁに? 妖夢」
「これからは、一緒にご飯を食べましょうね!」
「ええ、そうしましょう」
「お嬢様、妹様。紅ペン先生からお手紙が返ってきましたよ」
地下室から自由に出ることができるようになったその日から、食事はなるべく姉妹一緒に摂っていた。
けれど二人はどこかぎこちない。咲夜も当人たちも焦りながら、しかし打開策を見出せずにいた。
咲夜はそこに第3者――パチュリー・ノーレッジであってパチュリー・ノーレッジではない、紅ペン先生の起こす化学変化に賭けたのだ。
『レミリアさま、フランドールさま、ご機嫌いかがでしょうか。お二人からのお手紙拝見させていただきました。
お互いに、大事なことを伝えられないというもどかしさがよく伝わってきて、私も心が締め付けられる思いでした。
けれど、お互いに必要なのは歩み寄る第一歩です。大丈夫、二人で半歩踏み出せば、勇気は半分で済むんですから!』
咲夜は思わず吹き出しそうになってしまった。
本の虫で偏屈で、相談されても困ったような顔をするパチュリーが、その実、二人を誰よりも心配していたのだから。
「フラン」
「……」
咲夜はそっと、その場から離れた。
姉妹の雪解けに、自分がいるのも野暮だと思ったからだった。
そっと戸を閉じ、ふぅと小さくため息をつく。
「わっ!」
「ひゃっ! め、美鈴、あなたなんでここに?」
「そりゃ、気になって戸の前まで、ね? でも、中に入るまで私も捻じ曲がってはいませんよっと」
「ふふ、そうね。ねえ美鈴、ちょっとそこらへんまで散歩しにいかない?」
「いいですね、湖の辺りとか綺麗な場所も結構あるんですよ」
魔理沙は紅ペン先生から返ってきた手紙を広げながら、一人腕を組んで睨めっこをしていた。
『いまはお互い、意固地になっているのではないでしょうか?
魔理沙さんがお父さんと和解したいと思っているように、お父さんも魔理沙さんと和解したいと思っているかもしれません。
それはわかりませんが、人の気持ちは変わります、いつまでもすれ違うだけでは、きっとそれでは寂しいだけですよ』
「ばっかだなぁ、私って」
そういって魔理沙は、かけてあったお気に入りの帽子を深く被って、立てかけていた箒を握った。
「うじうじ考えてるぐらいなら、正面から突っ込んでいくのが私だろうに」
それに気づかされたのが、顔も知らない第三者の言葉だというのが癪だったが。
これが例えば霊夢であったりパチュリーの言葉なら、きっと反発していたとも思うのだ。
「ま、なるようになるさっと!」
魔理沙は駆け出し、そのまま扉を開け放ったままで里へと飛んだ。
神奈子は激怒した。必ず、かの邪知暴虐な諏訪子の嫌がらせに対抗せねばならぬと決意した。
大体昔から諏訪子はこうなのだ。何かちょっとでも面白そうなことがあると、ダシにしてそれで楽しむ。
それほど悪意がないとわかってはいるが、性質の悪い冗談であれば然るべき処置を加えねばならない。
『夫婦喧嘩でしょうか? 夫婦喧嘩は犬も食わないという言葉もありますし、本意ではないことはわかってはいます。
しかし、腹回りやガンキャノンというのはちょっと(笑)手紙を書いていることを知ったらきっと、傷つきますよ?』
朝から諏訪子の姿は見えなかった。
危険を察知したのか、ただ単に遊びにでかけたのか。
いずれにせよ、神奈子はオンバシラを装着し、ギロリと鋭い視線を周りに向けていた。
早苗はそれを見て、また始まったと肩を落としたのであった。
『人の噂も七十五日といいますし、あまり深く気にしないほうが良いのではないでしょうか?
それにあなたの心優しいところが周りに伝われば、そのような噂も次第に消えていくと思いますよ。
泣いてばかりいず、行動に表して見てください!』
幽香は向日葵に囲まれながら、手紙を何度も読み返していた。
行動に表すにしても、それを見せる相手がいなければどうすればいいのだろうか。
そう考えるとまた段々と、目頭が熱くなってくる。
「おい! そこの馬鹿妖怪!」
慌てて涙を拭って顔をあげると、そこにはいつかからかってやった氷精と、怯えた表情の風精が立っていた。
「前はゆだんしてやられたけど、今度はコテンパンにしてやるんだから!」
「ねぇチルノちゃん、やっぱりやめようよ……」
「……そうね、全力でかかってきなさい? 向日葵にしてあげるから」
幽香はチルノに向かってニッコリと微笑むと、傘で表情を隠した。
いまは不器用な形でしか示せなくても、それも時間が解決してくれる。
まずは、このおばかさんたちと遊んであげなきゃ。
「アイシクルフォール!」
幽香が傘を一振りすると、氷の柱が全部砕け散ってしまった。
氷が太陽の光を乱反射して、キラキラ光ったのがまた痛快だった。
「はん! やるじゃないの! でもぜーんぜん負けてないんだから!」
強がるチルノへと幽香は微笑み、放たれる弾幕とダンスを踊り続けたのだった。
「で、これは何なんだメルラン」
ルナサは、返信の手紙を広げながらメルランを詰問していた。
妹に、自分の名を騙られて手紙を出されていたのだ。
『個人の人気のことを考えるよりも、姉妹同士の結びつきを一層強めてみたらいかがでしょうか?
私もプリズムリバー三姉妹の演奏が大好きで、たまに友人と見に行っています』
「まぁ百歩譲ってお前のほうが人気があるってことは認めよう。
けどな、私がどうして、あんなハイテンションの文章を書かなきゃいけないんだ!」
「えっとー、ノリ?」
「はぁ。まったく、これだからメルランは」
「あなたのことを思うと、私の体は太陽の下に晒された氷みたいで」
「ば、リリカ! お前は何を読んでいるんだ!」
「ルナ姉の机の中にあったノート。ほかにもいっぱい恥ずかしいポエムが」
「なっ! 返せリリカ! ああもうメルラン、叱るのは後だ! まてー!」
三人よれば姦しい。幻想郷でも随一に賑やかな彼女らは、今日も楽しそうだった。
「えーなんだって? 私の脳みそがリザレクションするって?」
「ごめんなさい」
「確かに頭はパンクしたけどさ。さすがにここまでされると私が馬鹿みたいじゃないか」
「すみませんでした」
「慧音はさ。こう、生真面目なのはいいところなんだけど、ギャグはとことん滑るよね?」
「面目ないです」
「うん、私も責めてるわけじゃないんだよ? ただね、こう、空回りするところがさ」
「うぐっ」
「ば、泣くなよ慧音! 怒ってるわけじゃないんだってば!」
「どうせ私なんて、教師に向いていないんだ。そう言いたいんだろう妹紅は」
「あーもー。私はね慧音、一生懸命な慧音が好きだよ。ただもっと、決め付けずに人の話に耳を傾けたっていいじゃないか」
妹紅は慧音の頭をくしゃくしゃと撫で、泣き止むまでずっと寄り添っていた。
それほどかからずに慧音の呼吸も落ち着き、泣き出したことを気恥ずかしそうにしていた。
「ごめん」
どちらともなく、そう切り出した。
「私も」
どちらも同じ気持ちでいたのだから、どちらが先に謝ったかなんて瑣末な問題なのだ。
「手紙、読み直そうか慧音」
「うん」
『わかりにくいと言うのなら、まずは生徒の言葉に耳を傾けてはいかがでしょうか?
そうしてみて改善点が見つかればそこを直す。大丈夫です、きっと真摯に振舞っていれば結果はついてきますよ!』
「だってさ」
「うん」
「泣くなって」
「うん」
また泣き出してしまった慧音の頭を、妹紅はまたくしゃくしゃと撫でた。
「晩御飯、今日うちで食っていけよ慧音」
「うん」
「あんましいいもの、ないけどさ」
「うん」
慧音は泣き止んでからも、ぷいっとそっぽを向いたままでいて、妹紅はどうしていいものか悩んでいた。
「泊まってくか?」
「うん」
「じゃあ、決まりだ」
「フフフ。働けど働けど魂は減らず。さようなら週二勤。こんにちは書類の山。
ああ懐かしきはあの怠惰なる日々。もう還らぬ、日々」
映姫はそう言ったきり、机に突っ伏した。36時間仕事して、3時間仮眠して。
河童から貰ったスクリューを装着したとかで、船のスピードは約十倍に向上。
一体小町はどれだけ溜め込んでいたのか、今までのツケが今になって跳ね返ってきているのだ。
しかし小町は運ぶ仕事をキッチリとこなしているのだ、叱ろうにも叱れない。
「死ぬかも、しれませんね」
ついさっき鏡を見たら、そこには目の下に隈を作った病的な女が映っていた。
それが自分の姿なんだと判断するための脳みそが働くまで、この女に刺されて死ぬんじゃないかという間抜けな想像までしていた。
「四季映姫さーま」
「……あい」
「あいじゃないですよ。ちょっと相談があるんですがいいですかね?」
「あい」
「あのー、スクリューぶっ壊れちゃいました」
「What!?」
小町はニヘラニヘラと笑い、映姫は驚きと疲労で口を半開きにしていた。
「つうわけで、また手漕ぎに戻りますね。仕事大好きエイキッキさまにはちょっと物足りなくなるかもしれませんね」
「そ、そうですね、今ぐらいがちょうどいいぐらいだったんですが、壊れたっていうのならしょうがないです」
「んじゃ、仕事に戻りまーす」
小町はそういって、振り向かずに船乗り場へ帰ってしまった。
映姫は、こうして数日振りにまともな睡眠を取ることができたのだった。
『結局それはあなたの仕事が楽になっただけで。負担を押し付けているだけではないのですか?
あなたはそれに気づいているんですが、誰かに背中を押してもらいたいんでしょうね。
今度は自分の力で、相手のペースに合わせたお仕事をしてみてください』
天子は今日も、天界の端っこで下界を眺めていた。下界の連中は、友人と弾幕ごっこに興じてみたり、お茶に誘って誘われて。
天界では不良とされ、かといって下界に明るいわけでもない天子は、ありていに言えば常に孤独を味わっていた。
「ま、別にいいけどね。ここはここで楽しいし!」
なんたって、綺麗な音楽は流れているし、釣りに興じてみたり桃を齧ってみたり。
一人でいたって、いくらでも楽しみ方はある。
もちろんそれは、天子の強がりなのだが、それが強がりであることすら天子は気づかなかった。
気づいてしまえばきっと、寂しさで押しつぶされてしまうだろうから。
「あー、こんなところにいたー!」
「ったく、手間かけさせないでほしいわ」
後ろから声がかかって、天子が慌てて振り向くと。
瓢箪と包みを抱えた伊吹萃香と、いつか会った時よりも痩せた博麗霊夢が立っていた。
「さ、三人で宴会しよっか」
「まぁちょっと、物足りない気はするけどね」
「ちょ、ちょっと何勝手に決めてるのよ!」
我が物顔に腰を下ろし、茣蓙を広げはじめた二人を天子は必死で止めようとしたが、さしたる抵抗もできずに宴会の準備は整ってしまった。
「霊夢がおなかすいてるっていうもんでさー。だったら一緒に桃でもかじろーかって」
「本当はお米が食べたいんだけど、どーも都合のいい連中がいなくってね」
「そ、そうなの」
「さ、飲みましょう。うー……空きっ腹で飲みたくないなぁ」
「もうちょっと良い物食べればいいのに」
「あったらここまで来ないわよ、あんたは飲まないの? さっきから呆けてるけど」
「の、飲むわよもちろん! さ! たくさん注いでちょうだい!」
「へいへい」
『旅は道連れ世は情け、たまには小宴会を開いてみるのもいいんではないでしょうか。例えばそれは、下界を全部見下ろせる場所とかで』
◆
「この問題……。真剣ゼミでやった問題ばかりだ!」
鈴仙は永琳の抜き打ちテストを前にしても、まったく怯むことなく問題を解いていくことができた。
一日三十分の真剣ゼミは、少しずつではあるが確実に、蓄積されていた経験を知識へと転化させていったのだ。
監督官を志願したてゐは、鈴仙の着実な進歩に目を細めていた。
元々努力家の鈴仙だから、きっと効果は上がると信じていたが、それがいま花開こうとしているのだ。嬉しくないはずがない。
まったく悩むことのない鈴仙の鉛筆に、問題を作成した永琳も驚いていた。
よくて6割7割だと思っていた鈴仙がよもやここまで実力をつけていようとは。
採点するのが楽しみになってきたところで、鈴仙が手を上げた。
「終わりました!」
「じゃあ、すぐに採点するからここで待ってるのよ」
永琳は鈴仙の答案を受け取ると、すぐに別室へと消えていった。
やりきったという表情を浮かべる鈴仙に、てゐは笑顔で駆け寄った。
「鈴仙、がんばったね!」
「ありがとうてゐ。私、真剣ゼミのおかげで変われた! 一日三十分でも、人って変われるんだね!」
「兎だけどね!」
二人で長いようで短い、真剣ゼミ生活の様々な苦労を分かち合った。
紅ペン先生に輝夜のことを密告したこと、同時期に輝夜がギックリ腰を起こして寝込んでしまったこと。
その輝夜が元々の技術を生かして、内職を始めたこと。
思えばあまりに多くの出来事が、二人の間にはあった。
そのうち永琳が別室から、神妙な顔つきで帰ってきた。
「採点が終わったわ」
二人はその後に続く言葉を、固唾を呑んで見守った。
「驚いたわ。ケアレスミスは多少あったけど、まさか九割取られるとは思わなかったわ」
そういって、永琳は久方ぶりに笑ってみせた。
「やったよてゐ!」
「おめでとう鈴仙!」
二人は抱き合って、喜びを分かち合った。
「やれやれ、地力はついてたけど、それを生かせてなかっただけなのね。
おめでとう優曇華、あなたを私の正式の助手として認めるわ」
はじめはあてつけの気持ちもあったけど、今は真剣ゼミをはじめてよかった。鈴仙は本気でそう思った。
てゐにも嫉妬してしまったけど、今回は最初から最後まで、てゐのお世話になりっぱなしだった。
それに、わかりやすいテキストと、悩みの相談にも熱心に乗ってくれた紅ペン先生。
本当に、私は恵まれています!
「ありがとう! 真剣ゼミ!」
◆
パチュリーはお礼の手紙の数々を見て、悪くはないなと思いつつ紅茶を啜っていた。
もちろんその傍らには、小悪魔が控えている。
「紅ペン先生、始めてよかったですね」
「ええ、いまは本当にそう思うわ」
ニッコリ笑ってそう語りかける小悪魔に、パチュリーは微笑を返した。
それだけで、二人の間では十分過ぎるほどに伝わった。
「ところで、アリスさんからは何もお返事が」
「あっ」
丑三つ時の神社で、カコーンカコーンという釘を打つ音が響く。
金色の髪と、白磁のような美しい肌を持つ彼女は、無表情でハンマーを振るっていた。
大木に打ち付けられるはわら人形、そのわら人形の顔の部分には、たった一文字だけが刻まれていた。
すなわち。
「紅」
次の日美鈴が倒れたのは言うまでもない。
楽しませて貰いました!
終始爆笑しっぱなしでしたwwww
誤字脱字っぽい物を。間違ってたらすいません。
明日なったら本気だす→明日になったら本気出す
周囲の方々の期待に答える→周囲の方々の期待に応える
それだと門番が呪われちゃうからーーーーーーー!!!
ば、バカヤロー!! そういう大事なネタは俺が書いてるときに言えー!!
これは評価せざるをえない・・・。
でも、やっぱりアリスが可哀想な役に・・・。(苦笑)
ともあれ、とても面白い作品でした。
ゆうかりんかわいいよゆうかりん
「藍しゃま~!蟹と狸の目覚まし時計が送られてきました~!」
「お~よしよし!よかったね橙~!
・・・来週は虎の歯磨きか。
橙もよろこんでくれるし、始めてよかったかな。子供チャレンジ!」
どこの世界でも真剣ゼミは万能過ぎる
この内容を漫画化して進研ゼミの小冊子にすればかなりの人が集まるだろうなwww
>さようなら二勤。
いやそれもどうですかえーき様。
楽しませてもらいました!
10点減点だ!
紅ペン先生も大変だねw
霊夢にもちゃんと対応してたのが以外でした。
アリスとゆうかりんの悩みは同じようなものなのに、
この対応の差は……。
いろいろ笑ったけど、れいむが1番吹きました
かなり笑わせてもらった手前でかい口叩けないwww
面白かったです!!
さくさく読める作品でした
そしてやっぱり輝夜はニート
笑わせてもらいましたw
パチュリーが神すぎる。
>連歌会を主催してみて、その先生をさせてみるだとか、華道の先生になってみるだとか
紅ペン先生も自分のできることを使って先生になって稼ぐという発想から生まれたのですね。
ところでアリスと天子が友達になればよいのでは?
壊れ系のギャグかな~?と思って読み始めたらものすごくアットホームないいお話じゃあありませんか。
文章のボリュームもたっぷりで十分楽しめました。
で、輝夜に腐女子属性がついてるのはみんなスルーなのかwwww…それとも見ないふりしてるのか。
それと、今はただ、すわかなの夫婦喧嘩が無事に済むことを祈るばかりです。
文章量の割にボリューム満点で非常に楽しめました。
アリスが呪ったのは返事が来なかったからかな?
細かく気になる点はありましたが、120点マイナス20点という事で100点を。
それはさておき面白いお話でした。
紅ペン先生・・・懐かしい・・・
一番面白かったのは感想欄の19のとこだよwwwwwww
誤字なのかそうじゃないのか、判断に迷う。
紅ペン先生、アリスの所に遊びに行ってあげてーーー!!
ところどころにいい話も混ぜていてうまいな~と思いました。
でもアリス落ちが酷すぎるので平均点さげちゃうぞ☆
アリス落ちがなければ90点でした。
ニヤニヤしてる俺きめえwwww
このアリス落ちは拒否反応示す人多いと思うけど、こういうのもたまにはアリかと思えたので減点なしで満点どうぞー
お手紙が多くてだれてしまったかも。
その分君に合わせた練習テストだとか、楽しく学習筆算マスター君みたいなネタを盛り込むと笑い死んでた。
アリスが不憫。
もう最高でした。
所々に入ってるいいエピソードがまた秀逸!
幽華様の奴がよかったです、チルノGJ!
笑わせてもらいましたぜwwww
しかしアリス落ちで心底イラッと来たので-50点
お友達のいない可哀想なアリスが大好きです。
強がっちゃってるアリス可愛いです。
とりあえずアリスかわいいよ
ところどころにいい話が混ざってるのも良かったです
夫婦喧嘩の旦那の言葉の暴力が酷すぎるんですがそれは