現幽の扉は開かれ、微かな春が幻想郷に流れる。
だが、それらは白い季節を終わらせるには足りない。
春に導かれし3人は狂おしい春の中を進んでゆく。
その先にあるのは冬の終わりか、春の終わりか・・
「おぉ、霊夢。ここであったが100年目だぜ。」
「魔理沙、それ使い方違う。」
「その様子を見ると、やっぱりなんかあったようね。配置は完璧だったようね。」
「あんたのせいで大変な目にあったんだから・・」
ここは白玉桜内部。別行動していた3人は元凶と思わしき屋敷の前で何か話し込んでいた。ということもなく、ただもめているようである。
「大体あんたが勝手な采配するせいで、私だけ大変な目にあったじゃない。」
「心配するな霊夢、私はいたって無傷だぜ。」
「誰が心配するか!」
「冷たいなぁ霊夢・・そんなんじゃぁ友達なくすぜ。」
「まったくね、少しはおしとやかに出来ないものかしら?」
「あんた達だけには言われたくは無いわね。どーせ魔理沙の友達といえばアリスぐらいだし、咲夜だって、何処がおしとやかなんだか・・・(ハッ)」
霊夢が恐る恐る振り向くと、そこには先の妖夢にも負けないくらいの殺気を振りまいている二人が。
「誰があんな七色魔法莫迦と友達だって・・・?(ヒクヒク)」
「へぇ・・何?それじゃぁ、私は乱暴でがさつとでも言いたいのかしら?(ニッコリ)」
・・・・・・殺される・・・・・・
今にもスペルカード全開で襲い掛かってきそうな二人をどうやって抑えようか必死に考えてると、ちょうどいいものが目の前に、それも自分から。
「二人とも、今はそんなことよりも、ほら、敵よ敵。」
・・・・霊夢のやつ、うまくかわしやがったな・・・・
・・・・あとでたっぷりお仕置きしてあげなくちゃね・・・・
「どれどれ、あぁ、確かに敵だな。」
「にしても、変わった亡霊ね、半分しかないわ。」
「あら、さっきの庭師じゃない、どうしたの?まさか主人の命令でお迎えにきたって訳じゃないわよね?」
「・・・・残念だが、そのとおりだ。」
ものすごく嫌そうな顔をしてその庭師《魂魄妖夢》は3人を前にして口を開いた。
「おぉ、気が聞くな♪粗茶にお菓子ぐらいは出るんだろうな。」
「残念だが、連れて来るようにと言われたのは紅白一人だけだ。他はお呼びで無い。」
「おぉ、人種差別する気か?そりゃ無いぜ。」
「んじゃ、私は先行ってるから、後頑張ってね~♪」
そういうと霊夢は一人足早に奥へ。
「どうする咲夜、このままだと美味しいところをぜんぶもってかれちまうぜ。」
「とりあえず、やることはわかってるから、それから順番にね。」
「そうだな、まずは・・」「そうね、まずは・・」
『邪魔者を吹っ飛ばす!!』
「まとめて来い、私はそのためにここにいるのだから!」
~開戦~
~時間は少しさかのぼる。白玉桜の中庭で妖夢は一人佇んでいた。
・・・私は負けた、これからどうすればいい?
・・・紅白は言った。 自分で決めろ と。だが、私が信じてきたものは、その敵には通用しなかった。日々鍛錬をこなし、お嬢様のためなら何でも出来ると思っていた。だけど、叶わなかった。
・・・もう一度考え直す。私は何をしたかったのだろうか?お嬢様を守る?西行妖を咲かせる?それは本当に私の意志だったのだろうか?
ふと折れた刀を見つめる。この刀は実は妖夢本人のものではない。行方の知れぬ父・妖忌が置いていったものだ。
・・・そういえば、今まで自分の意思で物事を成すことを忘れていたのではないのか・・?お嬢様を守れという意思は父からの昔からの言葉、西行妖を咲かせるという意思はお嬢様の意思。では、私の意志は・・・?
・・・私は、本当は何がしたかった?私は、唯、ただ、お嬢様の役に立ちたかった、守りたかった・・・
知らずのうちに、足が屋敷へと向かう。もう一度自分の意思を確かめるため、そして、その意思があの紅白に通じるかどうかを確かめるため。
白玉桜の屋敷についた妖夢は自分の部屋にいた。かかっている掛け軸を外すと、そこには父・妖忌の楼観剣よりもわずかに短い刀が立てかけられていた。妖夢は、その刀にまつわる話を父から聞いていた。そして、鞘よりわずかに刀身を覗かせる。妖夢はその思い出をじっと思い出していた。霞に沈んでいた、懐かしい思い出を・・・
~いくばくかの昔~
《お生まれになりました。女の子ですよ、妖忌様。》
《ほほぉ・・そうかそうか。》
《その・・やっぱり、半身でしたね・・。》
《・・致し方あるまい、魂魄家の因果か、この子にもワシと同じつらい思いをさせることになるのかも知れんの・・》
《いえ・・きっとこの子は強くなりますよ。その証拠に・・ほら。》
《これは・・二つ?》
《えぇ、大小二つの“楼魄石”をもって生まれた子なんて、初めてですよ。》
《ふむ・・半身と共に継がれる魂魄家の因果、刀の一部となりしもう一つの半身、それが二つ・・。》
《魂魄家始まって以来の大事ですよ、これは。》
《大小の刀を使う双剣士か・・・これは、私もおちおち引退は出来んな、また暫く楽しみが増えた。》
《長生きしてやってください、そして、この子に剣術を教えてやってください。》
《そうだ、名前をつけなくてはな。ワシは、この忌むべき半身の意をこめて妖忌となった。だが、おぬしにはそうなって欲しくは無い。別の未来を開いていって欲しい。ワシの夢だ。“アヤカシのユメを継ぐ者”。妖夢、お前の名前は、魂魄 妖夢だ。》
妖夢は刀を鞘にしまう。妖夢自体も久しぶりの感覚に戸惑う。真の自身の半身の感触。
「これは、私の意思、私の思い・・・・私はもう迷いはしない!」
・・・・・・・・桜舞い散る幻庭の最中・・・・・・・・・
「さて、一人で来たはいいけど、何で案内役がいないのよ。すっかり迷っちゃったじゃない。もしかして、私って方向音痴・・?」
「まぁ、迷ったと思ったら人に聞くのが一番だけど・・・ここに人いないじゃん。死霊ばっかりだし。もうちょっとまともなものは無いの?」
~あら、勝手に人の庭に乗り込んできて、文句ばっかり言ってるなんて。~
「!?」
霊夢が声をしたほうを振り向く。そこには他の死霊とは違い、圧倒的な威圧感をもった亡霊少女が一人、こちらを見据えていた。見た目は間の抜けた少女そのものだが、おそらくあの庭師が言っていたお嬢様だろう。
「どうかしてるわ。」
・・・この私が、これだけ接近するまで気がつかなかった・・・?
内心の驚きと動揺を隠しながら、霊夢はわずかに身構える。
「まぁ、うちは死霊ばっかりだから、まともな人間はいないわ。」
「貴女が、ここのお嬢様?」
「えぇ、私がここの主、西行寺 幽々子というものよ。」
「それは初めまして。」
「貴女が霊夢さん?妖夢から話は聞いたわ。なんでも、珍しい妖怪だとか。」
「ぜんぜん違う!」
「あら、残念。それで、本日はどういった用件かしら?」
「どうでもいいことばっかり聞いてて、肝心なこと聞いてないのか・・・」
「お花見なら歓迎よ、にぎやかなほうが宴は楽しいわ。」
「あらそう、ではお呼ばれしようかしら・・って、亡霊にはお呼ばれされたくないわ。」
「それなら心配ないわ、あなたはまだお呼びで無い。」
「なんか、あの庭師と同じことを繰り返してる気が・・」
「まぁ、とりあえず単刀直入に。集めた春を返してくれない?私は自分のうちで花見がしたいの。」
「だめよ、今返したら、西行妖が満開にならない。」
「それも前聞いた。結局、それを満開にしたら、何かいいことあるの?」
「凄く満開になって綺麗になる。」
「・・・・・・」
「それと同時に、何者かが復活するらしいのよね。」
「何者かもわからないのに復活させちゃダメでしょ。面倒なものだったらどうするの。」
「そのときにまた考えればいいじゃない。」
「あなたの興味本位だけで、こっちはえらい迷惑してるの。」
「あら、それはごめんなさい。でも、桜の封印を説く方法はこれしかなかったのよ。」
「そもそも、わざわざ張ってある封印を無理に解く必要ないでしょ。」
「うちの結界破っておいてよく言うわ。」
「とにかく、ここは冥界よ?ここにいること自体、それは死を意味するわ。生きてるままだと困るのよ。」
「死んでもここで花見は出来るのかしら?」
「あなたの春さえあれば、本当の桜が見られるわよ?・・・・・何者かのオマケつきでね。」
「・・・冗談はそれぐらいにして、」
「そろそろ幻想郷の春を帰してもらおうかしら?」
「大事なことはもっと早く言ってくれないと解らないわ。」
「最初のほうで言ったじゃない・・」
「最後の詰めが肝心なのよ。」
「そう・・それなら・・」
「そうね・・だから・・」
「桜の下に還るといいわ、春の亡霊!!」 「桜の下で眠るがいいわ、紅白の蝶!!」
やはり全体的に難点ありですが、妖夢の回想話が一段と目立ちます。悪い方向で。
回想と現在を混ぜる時は、テンポのコントロールが大事なんです。流れをブッ途切れして過去へジャンプ、そして復帰するのは非常に良くないと思います。
じゃどうしろと言われれば答えることができませんが(私自分も書き手としてアレなので)、読み手として意見を並べでみました。どうか参考にしてください。