目を開けた。
目を開けるという動作を何故知っているのだろう?
疑問に思ったが、目の前に誰かが居る事に気がつく。
「私はアリス、アリス・マーガトロイド。
あなたを創ったのは、この私よ。」
彼女はそう言った。
「言葉が聞こえていたら、頷いてみせて。」
うなずく?
なにそれ、知らない・・・あ、知っている。
こうかな?
コクン
動いた!
あれ、動けるのかな?動けたのかな?動けなかったのかな?
「ふふ、いい子ね。
蓬莱人形」
ほうらいにんぎょう?
ズズズと首を後ろに回す。
誰も居ない。
「蓬莱人形、あなたの名前よ。」
なまえ?
首を、アリスの方に向ける。
そう言いながら、わたしを抱きかかえる。
そして、机の上に座らされる。
目の前に、もう一人誰かが居た。
にっこりと微笑んでいる気がした。
「こっちがあなたの双子のお姉さん、上海人形よ」
髪の長い女の子が両足を前に投げ出して座っていた。
「あなた達二人は、他の人形と違って怨念などは篭っていないわ」
怨念?
「普通、人形は念が篭っていなければ動かないし喋らない。
でも、私が複雑な式を組上げて、変わるものを作り上げたわ。」
変わるもの?
「今はまだ、完成していないけど、専用の体も作っているわ。」
体?
「あなた達二人には、偽りの魂を作ったわ」
魂?
「そう、これは偉大なる一歩よ。
普通、生命のあるものにしか魂、魂魄は存在しない。
元生者の幽霊にも魂があるわ。
そこで私は、物体にも魂を持たせることはできないのだろうか?
と考えたの。」
イキモノ?
「あなた達二人は、偽りとはいえ、生きた人形よ、
私が、必ず、本物にしてみせるわ。」
この日から、アリスに色々話を聞かされた。
ただ、私と上海は、聞いていた。
分からない事ばっかりだったけど、全部、覚えた。
体の事、魂の事、感情の事、心の事、組上げられた式の事、学習の事、
思い出すのは難しいけど、たくさん、教えてもらった。
「さぁ、上海、蓬莱、見えるかしら?」
コクン、コクン。
目に映っているのは、同じ背格好の人形だ。
「これが、新しい体よ。」
体・・・・
「とある魔女2人に協力してもらって作ったの。
人間みたいでしょ?
ウフフ、さぁ、着替えましょう?」
プッ
意識が、途絶える。
バチッ
意識が戻る。
目の前には、アリスと上海がいた。
「蓬莱?」
「ホォラィ?」
なまえを、呼ばれた・・・「ナマェ・・・」
あれ、3人目の声?
あ、頷くんだった。
コクン
「ふふ、上海と同じ事してるわね。」
「シテルワァネェ」
上海がアリスの顔を見て、真似する。
あれ?
上海、口が動いて音が出てる。
なんで?「ナンデ?」
また3人目だ、どこにいるんだろう?
「蓬莱、私の名前を言ってみて?」
「イィテミテェ」
アリス、「アリス、」
「蓬莱、それがあなたの声よ」
「ホライノ、コエ?」
これが、わたしの声・・・・
アリスに、上海に、思いを伝える道具。
「他にも色々できるようになったのよ?」
指、手が動かせる。
空が飛べる。
歩く事ができる。
痛みは感じないけど、異常な箇所はわかる。
今回は使えなくしてあるけど、攻撃もできる。
色々試してみた。
「肌の感触はどうかしら?」
アリスの指が蓬莱のほっぺたを突付く。
ふにッ
「ンゥ?」
上海も真似して突付く。
ふにッ
「ムゥ?」「ヤラァカーイ!」
「ホライモ!」
上海のほっぺたを突付く。
ふにッ
「ヤーラカーィ!」
お互いに体を触りあう。
ふにふに、ぺたぺた、すりすり
「ふふ、仲が良いわね」
アリスがごそごそと袋を探る。
「後は、コレ」
とビー玉位の大きさの青い色のグミを2個、取り出す。
「食事もできるわ。」
「ゴァン?」「ゴハン?」
「そうよ、あなた達の原動力は魔力。
そして、これには、魔力が篭められているわ、はい。」
と上海と蓬莱の口にグミを入れる。
パクッ
「・・・」「・・・」
顔を見合わせて、
モキュモキュ
「そう、噛んだら飲み込んで、」
コクリ
飲み込む。
「ナーカ、シャハーイ、ゲンキィ、ホォライハ?」「ウン、ホライモゲンキ」
「ふふ、魔力を溶かした水で作られているから、魔力を補充できるわ。」
「ホキゥ?」「マリョク?」
「前にも教えたでしょ?
人間は、血液が流れているけれど、
あなた達には、魔力を流す特殊な液体が流れていて、それで全身に魔力が送られているわ」
「「・・・・ウン」」
「この魔力がなくなると、動けなくなるわ。
つまり、動きたかったら、生きたかったらまず、魔力を補給するのが重要なの。
わかった?」
「「ウン」」
「ちなみに、持ち運びが不便だけど、液体の状態でも補充はできるわ。
こっちなら、体内に入れるだけで噛まなくてもいいから、早く補給、吸収できるわね。」
幾日かたった。
きょうは、外に出かけた。
いつもは庭の中までだけど、
この日は庭の外に出してもらえた。
空を飛ぶのは、少し疲れる。
「あ、いたいた・・・よっと」
アリスが何かを捕まえてくる。
「ナニィ?ソレ」「ナニ-?」
「これは毛玉と呼ばれる生物よ。
すこし待ってね・・・」
片手で毛玉を掴んだまま、簡単な結界を張り、毛玉を離す。
ひゅんひゅんひゅんひゅん
回転しながら飛び回る。
「ケェダマ?」「ナニスルノ?」
「弾幕ごっこよ。」
「ダァマクゥ?」「ダマク?」
「毛玉はね、攻撃されると、弾を撃ち返してくるの。えい!」
バシュッとアリスの手から魔力弾が放たれる。
ひゅんひゅんひゅんひゅん、バシュシュッ
「よっと!」
撃たれた弾をうまく避ける。
「撃たれたら、避けて、撃ち返す。これが弾幕ごっこの基本よ
今日は、あなた達も攻撃できるように式を組み直したわ。
やってみて。」
コクン
2人が頷く。
「ン、ンー・・・ンゥ!」
上海人形が両手を毛玉に向け、魔力を手に集中させる。
圧縮され収束された魔力が毛玉に向って照射される。
ビィッ
魔力量が少ないために、照射時間はほんの僅かではあるが、紛れもなくレーザーである。
毛玉が避けきれずに被弾する。
バァン!
「ゥア!?」
撃ち返された弾が上海の腕に直撃する。
ふらりと体勢を崩すと、地面に落ちてしまう。
トサッ
むくり、
「アリィス、ウデェ、チィカラ、ヌゥケル」「ナニカデテル」
被弾した箇所は、皮膚が裂け、青い液体が流れ出していた。
「あらら、撃墜できたまでは良かったのにね、
でも、丁度いいわ
上海、蓬莱、それが怪我よ。」
「「ケガ?」」
「そう、たとえば、私だと・・・」
自らの爪を魔力で硬質化して、手の甲の皮膚を軽く裂く。
赤い血液がにじみ出る。
「こうやって切れば、皮膚が裂けて血が出るわ。
体が壊れる事を怪我と言ってもいいわね。」
「コレハ?」
蓬莱が、青い液体を指差す。
「その青い液体はあなた達の体に魔力を循環させる液体よ。
あなた達の血液ってことになるわね。」
しばらくして、アリスの血液が凝固して、傷がふさがる。
「血は空気に触れると凝固するの。
小さな傷なら、勝手に塞がるわ。
あなた達のも同じ。
でも、上海の傷は少し大きいわね」
「ゥン、チィカラ、デナァイ」「シャンハイダイジョウブ?」
「魔力が抜けるのと同じ事だから、力も出なくなるわ。
まずは、傷口を塞いで、血液の流出を止めましょう。」
と、布のような物を手渡される。
「それをはがして、傷口に貼り付けて。」
ペリリ、ペタン
「そしたら、自己の魔力残量を確認して、消費が30%以上なら食事、
未満なら状況、不具合、安全の確認。」
「・・・・・、29%、ウデェ、テ、ドゥサカクニン、オケ、テキ、イナイ」
「あと、頭と、胸部は絶対に守ること!
そこを壊されたら、死んでしまうからね」
「シヌ?」「ナァニ?」
さきほど、上海が撃墜した毛玉の死骸を掴みあげ、
「こうやって、動かなくなる事よ。
死んでしまったら、もう二度と起き上がれない、全てが終わりよ。
血液がなくなっても、すぐには死なないけど、
しだいに動けなくなって、生きれなくなって、二度と起きれなくなるわよ?」
「ゥン」「ワカタ」
「さて、それじゃあ、防ぐ方法でも教えようか、魔力で障壁を作るんだけど・・・・」
「死ぬ」ということを教えてもらった。
とても、嫌な気分になった。
アリスにその事を言ったら、
「それが、不快という感情よ」
って言われた。
感情、喜怒哀楽、
アリスが言ってた。
頭には、引き出しと、ペンと、紙があるって
これで、覚えて、思い出せるって。
胸部には、動く為の式と、新しく作られる式、があるって
状況と書かれた式を照らし合わせて動いて、
新しい状況の場合は、行動と結果から、自分で式を書いてるんだって。
声も、人格も、考え方も、全てここに書かれているんだって。
蓬莱には、難しくてわかんなかったけど、頭と胸部は大切だって解った。
幾日かたって、
昨日は、なぜか上海ばっかり、可愛がられた。
今日も、なぜか上海ばっかり、褒められた。
私も、相手してよ、アリス・・・・
どうして、上海ばっかりなの?
さらに2日経った。
「上海、出かけるわ、庭から出ちゃダメだからね
あと、部屋の掃除もしておいてね。
もし、怪我をしたら、救急箱が箪笥の上にあるから、
ご飯は、戸棚の奥にあるから、食べ過ぎちゃだめよ。
わかった?」
「ワァカタ」「・・・・」
「蓬莱、良い子にしてるのよ?」
「・・・ホォライ?」「・・・ン」
「それじゃ、いってきます。」
ガチャ、バタン
「・・・ホォラィ、ドゥシィタ?」「・・・ナンデモナイ」
ふよよよ~
上海から離れたかった。
何もしてないのに、「良い子にしてるのよ?」って言われた。
蓬莱、悪い事してないのに・・・
他の部屋で何をすることもなく、ただ座って部屋を眺めていた。
上海が飛んできて、蓬莱の後ろに着地する。
「ホゥラィ、ソォジ、テツダァテ」「・・・ヤ」
「ホゥラィ?」「・・・・ホライ、ホメラレナイモン」
「ソーナコトォナイヨゥ・・・」「シャンハイ、イイコ、ホライ、ワルイコ、ダモン」
「チィガウヨ!」「フン、ホライ、イラナイコダモン・・・」
「ホゥライ!!」
上海が蓬莱を振り向かせようと、掴もうとした時
「ウルサイ!」
どん!
上海を振り向きざまに突き飛ばす。
「・・・ワァカタ、ホゥライ、ココニィル、シャハーイ、ソージ、シテクルゥ」
「・・・・・・」
「・・・ゴァン、ハ、イショニィタベョネ?」
「・・・・」
どうして、上海を遠ざけてしまったんだろう?
声を掛けられて、本当は、嬉しかったのに・・・
ガチャガチャと音がする。
一人で掃除、かたづけをしているのだろう。
私には関係ない。
望まれていない、私には・・・
ガシャーン!!
「シャンハイ!!?」
すぐさま音のした部屋に飛んでいく。
そこには、ビーカーなどの、割れたガラスの破片と
倒れている上海人形がいた。
「ゥ・・・」「シャンハイ!」
倒れたまま、動かない。
足、太ももを見ると、
青い液体、血をドクドクと流していた。
止まる気配が無い。
「・・・・」「・・・シャンハイ?」
ピクリとも動かない。
動かない?
・・・・・・・死?
上海、死ぬの?
・・・・・・・
ダメ!
ア、アリスを、呼ばなきゃ!
・・・・あ、居ないんだった、
ど、どうしよう・・・思い出せ、思い出せ、蓬莱
”まずは、傷口を塞いで、血液の流出を止めましょう。”
思い出した!
「チ、トメル」
箪笥の、上に・・・
いそいで箪笥の上まで飛び上がる。
「アッタ!」
ぐぃ、
重い、でも、上海が・・・
よろよろと救急箱を運ぶと、上海の足の傷口に例の布を剥がして貼る。
「モゥイチマイ・・・」
ペリリッ
ペタ、
ペリリッ
ペタ、
「・・・ソウダ!ホウタイデ、シバレバ」
くるくる、ギュ!
深く切れているので、なかなか血が止まらない。
それでも、出血量は大分抑えられた。
魔力残量を測ってみる
「・・・ショウモウ、41%、キケン、・・・ドウスレバ、イイノ?」
魔力が無くなったら、死ぬ
・・・補給すれば、いいんだ!
「トダナ、オク・・・」
急いで飛んで、戸棚を開ける。
小袋があった。
「ンショ、ンショ、」
1つしかもてなかったので、これをもって上海の元に戻る。
「シャンハイ、モテキタヨ!」「・・・・・」
「タベテ!、シンジャウヨ!」
1個グミを取り出し、上海の口に入れる
「・・・・」
だめだ、多分口を動かせるだけの魔力が無いのだろう。
「・・・・ド、ドウシヨウ・・・」
刻まれた記憶から、何か対処法を探し出す。
”液体の状態でも補充はできるわ。”
「!」
上海の口にいれた1個を食べると、噛んでドロドロにして、
上海に口移しで食べさせる。
「ン・・・ン・・・」
コクン、コクン、
飲み込んだ!
「プア!モット・・・」
ゴソゴソ
「アム、・・モグモグモグ・・・ン、ンゥ・・」
「プァ、タリナイ、・・・・」
魔力残量は僅かに回復した程度だ。
このままでは、アリスが帰るまでにご飯がなくなってしまう。
”全身に流れている””吸収が早い”
「ア、ソウカ・・・ン、」
ギリ!
自分の舌を噛み、少し、傷つける。
すぐに、口の中に血が溜まる。
「アム、モグモグモグ・・・ン、ン、」
ゴクン、ゴク、
上海、ぜったい、助ける!
「ただいまー」
玄関の方で声がする。
「ン、・・・ン、!?プァ、アリス!!」
「どうしたの?」
「シャンハイガ!」
「ちょっと、あなたも血だらけじゃない!真っ青よ!」
「シャンハイノホウガ、キケン!」
「わ、わかったわ!」
すこし時間を遡り、
アリスの屋敷から、少し離れた場所、
庭からでは見えない死角
「まったく、酷いわね貴女も。
わざと怪我するように式を書き換えるなんて・・・」
紫色の少女が手に持った水晶を覗きながら言う。
「鬼のようだな、アリス」
隣で見ているのは、黒い魔女だ。
「うるさいわね、魔理沙」
そして、人形たちの親である、アリス。
「・・・って蓬莱も危険そうだけど、ちょっと行ってくるわ!」
「ふむ、まぁ成功ね」
紫の少女が呟く。
「そうみたいだな、嫉妬、心配、恐怖、さらには自己犠牲、か。
パチュリーは予想できたのか?」
パチュリーと呼ばれた紫の少女、そのジト目が魔理沙をにらむ
「まさか、でも、式に書かれた内に”お互いにお互いを好いている”って好意の感情があったんでしょ?」
「みたいだな」
「それと、死の恐怖、失う怖さが作用して、自己犠牲という行動を取らせたのかもね」
「お、さらに追加だぜ」
「なにかしら?」
「助かった安堵感と、助けられた感謝、ってところか?」
4日前から蓬莱に冷たかったのも全て、
教えにくい「感情」
喜怒哀楽、
感謝、嫉妬、心配、安堵、を
実際に体験させるという実験だった。
水晶から、楽しそうな会話が聞こえる。
フッっと水晶から光が消える。
「今後が楽しみね」
「そうだな・・・さて、帰るか、パチュリー」
「えぇ・・・あ、その前に、本を返却してもらおうかしら・・・」
「げ、ちょっとまってくれ・・・」
「せっかく森まできたんだから貴女の家に寄ってくわ」
「さぁ、今日はもう寝ましょう。」
「ン」「ン」
アリスを中心にして、右に蓬莱、左の枕元に上海を横にしてベッドに入る。
「おやすみなさい、良い夢を・・・」
2人の人形は夢を見る。
いつの日か、本当の生きた人形になる夢を。
目を開けるという動作を何故知っているのだろう?
疑問に思ったが、目の前に誰かが居る事に気がつく。
「私はアリス、アリス・マーガトロイド。
あなたを創ったのは、この私よ。」
彼女はそう言った。
「言葉が聞こえていたら、頷いてみせて。」
うなずく?
なにそれ、知らない・・・あ、知っている。
こうかな?
コクン
動いた!
あれ、動けるのかな?動けたのかな?動けなかったのかな?
「ふふ、いい子ね。
蓬莱人形」
ほうらいにんぎょう?
ズズズと首を後ろに回す。
誰も居ない。
「蓬莱人形、あなたの名前よ。」
なまえ?
首を、アリスの方に向ける。
そう言いながら、わたしを抱きかかえる。
そして、机の上に座らされる。
目の前に、もう一人誰かが居た。
にっこりと微笑んでいる気がした。
「こっちがあなたの双子のお姉さん、上海人形よ」
髪の長い女の子が両足を前に投げ出して座っていた。
「あなた達二人は、他の人形と違って怨念などは篭っていないわ」
怨念?
「普通、人形は念が篭っていなければ動かないし喋らない。
でも、私が複雑な式を組上げて、変わるものを作り上げたわ。」
変わるもの?
「今はまだ、完成していないけど、専用の体も作っているわ。」
体?
「あなた達二人には、偽りの魂を作ったわ」
魂?
「そう、これは偉大なる一歩よ。
普通、生命のあるものにしか魂、魂魄は存在しない。
元生者の幽霊にも魂があるわ。
そこで私は、物体にも魂を持たせることはできないのだろうか?
と考えたの。」
イキモノ?
「あなた達二人は、偽りとはいえ、生きた人形よ、
私が、必ず、本物にしてみせるわ。」
この日から、アリスに色々話を聞かされた。
ただ、私と上海は、聞いていた。
分からない事ばっかりだったけど、全部、覚えた。
体の事、魂の事、感情の事、心の事、組上げられた式の事、学習の事、
思い出すのは難しいけど、たくさん、教えてもらった。
「さぁ、上海、蓬莱、見えるかしら?」
コクン、コクン。
目に映っているのは、同じ背格好の人形だ。
「これが、新しい体よ。」
体・・・・
「とある魔女2人に協力してもらって作ったの。
人間みたいでしょ?
ウフフ、さぁ、着替えましょう?」
プッ
意識が、途絶える。
バチッ
意識が戻る。
目の前には、アリスと上海がいた。
「蓬莱?」
「ホォラィ?」
なまえを、呼ばれた・・・「ナマェ・・・」
あれ、3人目の声?
あ、頷くんだった。
コクン
「ふふ、上海と同じ事してるわね。」
「シテルワァネェ」
上海がアリスの顔を見て、真似する。
あれ?
上海、口が動いて音が出てる。
なんで?「ナンデ?」
また3人目だ、どこにいるんだろう?
「蓬莱、私の名前を言ってみて?」
「イィテミテェ」
アリス、「アリス、」
「蓬莱、それがあなたの声よ」
「ホライノ、コエ?」
これが、わたしの声・・・・
アリスに、上海に、思いを伝える道具。
「他にも色々できるようになったのよ?」
指、手が動かせる。
空が飛べる。
歩く事ができる。
痛みは感じないけど、異常な箇所はわかる。
今回は使えなくしてあるけど、攻撃もできる。
色々試してみた。
「肌の感触はどうかしら?」
アリスの指が蓬莱のほっぺたを突付く。
ふにッ
「ンゥ?」
上海も真似して突付く。
ふにッ
「ムゥ?」「ヤラァカーイ!」
「ホライモ!」
上海のほっぺたを突付く。
ふにッ
「ヤーラカーィ!」
お互いに体を触りあう。
ふにふに、ぺたぺた、すりすり
「ふふ、仲が良いわね」
アリスがごそごそと袋を探る。
「後は、コレ」
とビー玉位の大きさの青い色のグミを2個、取り出す。
「食事もできるわ。」
「ゴァン?」「ゴハン?」
「そうよ、あなた達の原動力は魔力。
そして、これには、魔力が篭められているわ、はい。」
と上海と蓬莱の口にグミを入れる。
パクッ
「・・・」「・・・」
顔を見合わせて、
モキュモキュ
「そう、噛んだら飲み込んで、」
コクリ
飲み込む。
「ナーカ、シャハーイ、ゲンキィ、ホォライハ?」「ウン、ホライモゲンキ」
「ふふ、魔力を溶かした水で作られているから、魔力を補充できるわ。」
「ホキゥ?」「マリョク?」
「前にも教えたでしょ?
人間は、血液が流れているけれど、
あなた達には、魔力を流す特殊な液体が流れていて、それで全身に魔力が送られているわ」
「「・・・・ウン」」
「この魔力がなくなると、動けなくなるわ。
つまり、動きたかったら、生きたかったらまず、魔力を補給するのが重要なの。
わかった?」
「「ウン」」
「ちなみに、持ち運びが不便だけど、液体の状態でも補充はできるわ。
こっちなら、体内に入れるだけで噛まなくてもいいから、早く補給、吸収できるわね。」
幾日かたった。
きょうは、外に出かけた。
いつもは庭の中までだけど、
この日は庭の外に出してもらえた。
空を飛ぶのは、少し疲れる。
「あ、いたいた・・・よっと」
アリスが何かを捕まえてくる。
「ナニィ?ソレ」「ナニ-?」
「これは毛玉と呼ばれる生物よ。
すこし待ってね・・・」
片手で毛玉を掴んだまま、簡単な結界を張り、毛玉を離す。
ひゅんひゅんひゅんひゅん
回転しながら飛び回る。
「ケェダマ?」「ナニスルノ?」
「弾幕ごっこよ。」
「ダァマクゥ?」「ダマク?」
「毛玉はね、攻撃されると、弾を撃ち返してくるの。えい!」
バシュッとアリスの手から魔力弾が放たれる。
ひゅんひゅんひゅんひゅん、バシュシュッ
「よっと!」
撃たれた弾をうまく避ける。
「撃たれたら、避けて、撃ち返す。これが弾幕ごっこの基本よ
今日は、あなた達も攻撃できるように式を組み直したわ。
やってみて。」
コクン
2人が頷く。
「ン、ンー・・・ンゥ!」
上海人形が両手を毛玉に向け、魔力を手に集中させる。
圧縮され収束された魔力が毛玉に向って照射される。
ビィッ
魔力量が少ないために、照射時間はほんの僅かではあるが、紛れもなくレーザーである。
毛玉が避けきれずに被弾する。
バァン!
「ゥア!?」
撃ち返された弾が上海の腕に直撃する。
ふらりと体勢を崩すと、地面に落ちてしまう。
トサッ
むくり、
「アリィス、ウデェ、チィカラ、ヌゥケル」「ナニカデテル」
被弾した箇所は、皮膚が裂け、青い液体が流れ出していた。
「あらら、撃墜できたまでは良かったのにね、
でも、丁度いいわ
上海、蓬莱、それが怪我よ。」
「「ケガ?」」
「そう、たとえば、私だと・・・」
自らの爪を魔力で硬質化して、手の甲の皮膚を軽く裂く。
赤い血液がにじみ出る。
「こうやって切れば、皮膚が裂けて血が出るわ。
体が壊れる事を怪我と言ってもいいわね。」
「コレハ?」
蓬莱が、青い液体を指差す。
「その青い液体はあなた達の体に魔力を循環させる液体よ。
あなた達の血液ってことになるわね。」
しばらくして、アリスの血液が凝固して、傷がふさがる。
「血は空気に触れると凝固するの。
小さな傷なら、勝手に塞がるわ。
あなた達のも同じ。
でも、上海の傷は少し大きいわね」
「ゥン、チィカラ、デナァイ」「シャンハイダイジョウブ?」
「魔力が抜けるのと同じ事だから、力も出なくなるわ。
まずは、傷口を塞いで、血液の流出を止めましょう。」
と、布のような物を手渡される。
「それをはがして、傷口に貼り付けて。」
ペリリ、ペタン
「そしたら、自己の魔力残量を確認して、消費が30%以上なら食事、
未満なら状況、不具合、安全の確認。」
「・・・・・、29%、ウデェ、テ、ドゥサカクニン、オケ、テキ、イナイ」
「あと、頭と、胸部は絶対に守ること!
そこを壊されたら、死んでしまうからね」
「シヌ?」「ナァニ?」
さきほど、上海が撃墜した毛玉の死骸を掴みあげ、
「こうやって、動かなくなる事よ。
死んでしまったら、もう二度と起き上がれない、全てが終わりよ。
血液がなくなっても、すぐには死なないけど、
しだいに動けなくなって、生きれなくなって、二度と起きれなくなるわよ?」
「ゥン」「ワカタ」
「さて、それじゃあ、防ぐ方法でも教えようか、魔力で障壁を作るんだけど・・・・」
「死ぬ」ということを教えてもらった。
とても、嫌な気分になった。
アリスにその事を言ったら、
「それが、不快という感情よ」
って言われた。
感情、喜怒哀楽、
アリスが言ってた。
頭には、引き出しと、ペンと、紙があるって
これで、覚えて、思い出せるって。
胸部には、動く為の式と、新しく作られる式、があるって
状況と書かれた式を照らし合わせて動いて、
新しい状況の場合は、行動と結果から、自分で式を書いてるんだって。
声も、人格も、考え方も、全てここに書かれているんだって。
蓬莱には、難しくてわかんなかったけど、頭と胸部は大切だって解った。
幾日かたって、
昨日は、なぜか上海ばっかり、可愛がられた。
今日も、なぜか上海ばっかり、褒められた。
私も、相手してよ、アリス・・・・
どうして、上海ばっかりなの?
さらに2日経った。
「上海、出かけるわ、庭から出ちゃダメだからね
あと、部屋の掃除もしておいてね。
もし、怪我をしたら、救急箱が箪笥の上にあるから、
ご飯は、戸棚の奥にあるから、食べ過ぎちゃだめよ。
わかった?」
「ワァカタ」「・・・・」
「蓬莱、良い子にしてるのよ?」
「・・・ホォライ?」「・・・ン」
「それじゃ、いってきます。」
ガチャ、バタン
「・・・ホォラィ、ドゥシィタ?」「・・・ナンデモナイ」
ふよよよ~
上海から離れたかった。
何もしてないのに、「良い子にしてるのよ?」って言われた。
蓬莱、悪い事してないのに・・・
他の部屋で何をすることもなく、ただ座って部屋を眺めていた。
上海が飛んできて、蓬莱の後ろに着地する。
「ホゥラィ、ソォジ、テツダァテ」「・・・ヤ」
「ホゥラィ?」「・・・・ホライ、ホメラレナイモン」
「ソーナコトォナイヨゥ・・・」「シャンハイ、イイコ、ホライ、ワルイコ、ダモン」
「チィガウヨ!」「フン、ホライ、イラナイコダモン・・・」
「ホゥライ!!」
上海が蓬莱を振り向かせようと、掴もうとした時
「ウルサイ!」
どん!
上海を振り向きざまに突き飛ばす。
「・・・ワァカタ、ホゥライ、ココニィル、シャハーイ、ソージ、シテクルゥ」
「・・・・・・」
「・・・ゴァン、ハ、イショニィタベョネ?」
「・・・・」
どうして、上海を遠ざけてしまったんだろう?
声を掛けられて、本当は、嬉しかったのに・・・
ガチャガチャと音がする。
一人で掃除、かたづけをしているのだろう。
私には関係ない。
望まれていない、私には・・・
ガシャーン!!
「シャンハイ!!?」
すぐさま音のした部屋に飛んでいく。
そこには、ビーカーなどの、割れたガラスの破片と
倒れている上海人形がいた。
「ゥ・・・」「シャンハイ!」
倒れたまま、動かない。
足、太ももを見ると、
青い液体、血をドクドクと流していた。
止まる気配が無い。
「・・・・」「・・・シャンハイ?」
ピクリとも動かない。
動かない?
・・・・・・・死?
上海、死ぬの?
・・・・・・・
ダメ!
ア、アリスを、呼ばなきゃ!
・・・・あ、居ないんだった、
ど、どうしよう・・・思い出せ、思い出せ、蓬莱
”まずは、傷口を塞いで、血液の流出を止めましょう。”
思い出した!
「チ、トメル」
箪笥の、上に・・・
いそいで箪笥の上まで飛び上がる。
「アッタ!」
ぐぃ、
重い、でも、上海が・・・
よろよろと救急箱を運ぶと、上海の足の傷口に例の布を剥がして貼る。
「モゥイチマイ・・・」
ペリリッ
ペタ、
ペリリッ
ペタ、
「・・・ソウダ!ホウタイデ、シバレバ」
くるくる、ギュ!
深く切れているので、なかなか血が止まらない。
それでも、出血量は大分抑えられた。
魔力残量を測ってみる
「・・・ショウモウ、41%、キケン、・・・ドウスレバ、イイノ?」
魔力が無くなったら、死ぬ
・・・補給すれば、いいんだ!
「トダナ、オク・・・」
急いで飛んで、戸棚を開ける。
小袋があった。
「ンショ、ンショ、」
1つしかもてなかったので、これをもって上海の元に戻る。
「シャンハイ、モテキタヨ!」「・・・・・」
「タベテ!、シンジャウヨ!」
1個グミを取り出し、上海の口に入れる
「・・・・」
だめだ、多分口を動かせるだけの魔力が無いのだろう。
「・・・・ド、ドウシヨウ・・・」
刻まれた記憶から、何か対処法を探し出す。
”液体の状態でも補充はできるわ。”
「!」
上海の口にいれた1個を食べると、噛んでドロドロにして、
上海に口移しで食べさせる。
「ン・・・ン・・・」
コクン、コクン、
飲み込んだ!
「プア!モット・・・」
ゴソゴソ
「アム、・・モグモグモグ・・・ン、ンゥ・・」
「プァ、タリナイ、・・・・」
魔力残量は僅かに回復した程度だ。
このままでは、アリスが帰るまでにご飯がなくなってしまう。
”全身に流れている””吸収が早い”
「ア、ソウカ・・・ン、」
ギリ!
自分の舌を噛み、少し、傷つける。
すぐに、口の中に血が溜まる。
「アム、モグモグモグ・・・ン、ン、」
ゴクン、ゴク、
上海、ぜったい、助ける!
「ただいまー」
玄関の方で声がする。
「ン、・・・ン、!?プァ、アリス!!」
「どうしたの?」
「シャンハイガ!」
「ちょっと、あなたも血だらけじゃない!真っ青よ!」
「シャンハイノホウガ、キケン!」
「わ、わかったわ!」
すこし時間を遡り、
アリスの屋敷から、少し離れた場所、
庭からでは見えない死角
「まったく、酷いわね貴女も。
わざと怪我するように式を書き換えるなんて・・・」
紫色の少女が手に持った水晶を覗きながら言う。
「鬼のようだな、アリス」
隣で見ているのは、黒い魔女だ。
「うるさいわね、魔理沙」
そして、人形たちの親である、アリス。
「・・・って蓬莱も危険そうだけど、ちょっと行ってくるわ!」
「ふむ、まぁ成功ね」
紫の少女が呟く。
「そうみたいだな、嫉妬、心配、恐怖、さらには自己犠牲、か。
パチュリーは予想できたのか?」
パチュリーと呼ばれた紫の少女、そのジト目が魔理沙をにらむ
「まさか、でも、式に書かれた内に”お互いにお互いを好いている”って好意の感情があったんでしょ?」
「みたいだな」
「それと、死の恐怖、失う怖さが作用して、自己犠牲という行動を取らせたのかもね」
「お、さらに追加だぜ」
「なにかしら?」
「助かった安堵感と、助けられた感謝、ってところか?」
4日前から蓬莱に冷たかったのも全て、
教えにくい「感情」
喜怒哀楽、
感謝、嫉妬、心配、安堵、を
実際に体験させるという実験だった。
水晶から、楽しそうな会話が聞こえる。
フッっと水晶から光が消える。
「今後が楽しみね」
「そうだな・・・さて、帰るか、パチュリー」
「えぇ・・・あ、その前に、本を返却してもらおうかしら・・・」
「げ、ちょっとまってくれ・・・」
「せっかく森まできたんだから貴女の家に寄ってくわ」
「さぁ、今日はもう寝ましょう。」
「ン」「ン」
アリスを中心にして、右に蓬莱、左の枕元に上海を横にしてベッドに入る。
「おやすみなさい、良い夢を・・・」
2人の人形は夢を見る。
いつの日か、本当の生きた人形になる夢を。
“血”の通う人形の、“血”の通う意味を知るお話。
自分としては、割と予想外の焦点でした。
面白いですね。評点としては表示より更に10点上なのですが、
すごすご上海人形(勝手に命名)が可愛らしく感じられたので、
30点の選択文を選んだ、ということでどうぞひとつよろしく。
>、“血”の通う意味を知るお話。
そこまで考えて書いたわけじゃないです
実際は、アリスなら、自分で勝手に動く人形を作りそうだな~
ってのと、人形メインは珍しいんじゃないかな?
ってのが書いた動機ですね。
>すごすご上海
すねた蓬莱の所でしょうか?
点の選択文・・・「萌え~」
(*´ω`)アリガトウゴザイマス
仮初の魂を持つ人形が人間らしく成長していく、昔のAIロボのような感じでしょうか。
しかし、決定的に違うのは人と同じように血を失えば死ぬ事ですね。
壊れるのではなく死ぬ。
動く人形ではなく、生きる人形、面白い主観がとても気に入りました。
テキストも洗練していて、難もなく読めました。
にしてもアリス、鬼や。繰人形Verアリスとはまるで別人(殺
>壊れるのではなく死ぬ。
これは、私の考え方が、死ぬ事=停止、終結、生きる事=活動、経過、と考えていて、
生きていても、時間の経過には逆らえないのに、止まってしまった肉体は流れていく時間に当然付いていけず、朽ち果てる事になる。=死。
2匹の人形も、全身を流れる魔力が尽きれば動けなくなり、停止するので、動けなくなる=死っていう感じです。
>テキストも洗練していて
いや~、難しい言葉を知らないだけですよw
アリスそんなに鬼ですかね?
蓬莱に冷たかったのも実験なので勘弁してやってくださいな