Coolier - 新生・東方創想話

東方脳内録話

2004/09/16 04:48:04
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    辺境から暖かさが奪われ、永い冬が訪れた。
    白銀の悪魔は幻想郷の人間を黙らせた。

    時は経ち、次第に春の香りが訪れる頃になった。
    いつもなら、幻想郷は白い吹雪から桜色の吹雪に変わるはずだったのだ。

    そして春はまだ、来ない。




「・・っかし広いなぁ・・・この事件の元凶はどこにいるのやらさっぱりだぜ。」
「ここまで広いと探すのが大変そうね。」
「メイドの力で時間止めてる間に探してもらうってのはどうだ?」
「ちょっと・・・疲れるのは私だけじゃない。」

ここは白玉桜の入り口付近。騒霊3姉妹を退けて結界を(無理矢理)通って来た3人であったが、さすがに冥界
の広さに驚いているようだ。

「まぁ考えてても仕方がないし、ここは手分けして探すことにしましょう。まず、私が南の方を、白黒が東、で
紅白は北ってことで。」
「依存はないぜ。」
「ちょっと、何で私が勝手に北って決められてるのよ。」
「あぁそれなら想像つくぜ。正面が南だったから普通は北に家があるってもんだろ。一番不吉そうなものはやっ
ぱり霊夢がいくって相場がきまってるぜ。」
「決まってないわよ!ってかどんな相場よ!」

結局メイド長の意見にしぶしぶ従いつつも紅白と白黒に瀟洒の3人はそれぞれこの春を奪った元凶を探しに行く
のである。




                 ~白玉桜階段の幻戦~




永遠の巫女、博麗霊夢は一人頭を悩ませていた。この思いをなんとかしてあの二人に思い知らせてやりたいところ
だが、そういうわけにもいかず、ただただため息をつくのであった。

「はぁ・・本当に魔理沙の言うとおりになってきたじゃない・・・・。」

目の前には長く続く階段。あの世の果てまで続いているのではないかという錯覚を思わせるその階段の上を(と
いうか既に冥界なのだが)空を飛ぶ程度の能力で進んでいく。途中途中に魑魅魍魎や妖精に亡霊といろいろ見か
けるだけあって、 さすがは冥界 と一人納得するのであった。

「にしても、ここは暖かいわね・・桜が満開。いっそここで花見でもしようかしら。」

~亡霊たちが騒ぐから何かと思えば、生きた人間だったのね。~

声のした方へと意識を戻す。そこにはいたのは、銀髪でおかっぱ、髪には飾りつけがついており、全体が碧と白
で統一され、ところに白い人魂のような模様のついた服を着た、一見するとただの少女である。ただ、そう思わ
せないのはその小柄な体躯に似合わない背中の長刀と、腰に帯びている小刀、そして彼女自身から発せられる雰
囲気が、霊夢の緊張を解かせようとはしない。

「ようこそ白玉桜へ、ここは死者の住める処、生きた人間が来るところではないわよ。」
「ちょっとした花見に御呼ばれしたんだけど、いいかしら?」
「残念だけど、貴方はまだお呼びじゃないわ。」
「じゃ、花見は諦めるわ、別の用事を済まさせてもらうから。」
「そう、生きた人間に冥界を荒らされると掃除が大変なんですけど?そもそも、どうやって入ったの?」
「入り口から普通に。」
「結界が張ってあったでしょ?」
「破った。」「はぁ?」
「あの程度の結界、簡単に破れたわよ?」
「勝手に破るな!そもそも、結界は『入ってくるな』の意思表示なんだから。貴方、『危険、登るな』って標識
を見たら登るタイプでしょ。」
「否定はしないけどね。まぁ、そもそも登らなくても飛べるし。」
「まったく・・。まぁ、それはそれでこちらにとっては好都合になったわけだ。」
「ん、結界を破ったこと?別に褒められる様な事してないわ。」
「全くそのとおりだ。結界は後でどうにかするとして、春のほうはこれで何とかできそうだ。」
「あぁ、それで思い出した。ここへはその原因を調べに来たんだっけ。で、一つ聞きたいのですけども。」
「答えられる範囲でなら。」
「“幻想郷の春をどうしたの?”」
「ここへ集めただけよ。これでもあと少し足りない。」
「もう十分満開じゃない、早く返して。」
「そういうわけにもいかない、もう少し春がないと、『西行妖』が満開にならない。」
「ふ~ん・・どうやらそれが原因っぽいけど・・貴方それで何がしたいの?」
「『西行妖』を満開にする。それがお嬢様の望みであるから。」
「こんなに春があるから十分じゃない。そのお嬢様って贅沢な奴ね。」
「いまさっきもう少し足りないって言ったのに・・・」
「で、足りないけどどうするの?地上にはもう残ってないわよ?春はここにしかない。」
「そのとおり、春はここにしかない。目の前に、最後の春の欠片が。」

そう言い、刀を抜く妖夢。切っ先はまっすぐ霊夢へ。

「・・・・あんまりいい予感しないんだけど?」
「お前が最後の春を持って来てくれた。わずかではあるが、それがあれば・・・望みは叶う。」
「誰が頭が春そうなのよ!」
「?誰もそんなことは言ってない。」
「とりあえず、春はあげない。ついでに返してもらう。」
「貴方はまだお呼びではないのだけど・・致し方がない。」
「黙ってそこを通せば痛い目見ないわよ?幽霊剣士。」
「・・・私は半分幽霊ではない。」
「へぇ・・珍しい。」
「・・とにかく、貴方はここで斬られておしまいなの。」
「で、お嬢様はどこ?」
「話聞いてた?」
「ほどほどに。まぁ、半分幽霊なら、御札も半分は効くでしょ。」
「・・この妖怪が鍛えた桜観剣に、切れぬものなど、あんまりない!」


霊夢の前の空間を一閃。刹那

少なくとも100を越える弾が形成され、霊夢を包囲する形で展開された。常人ではパニックを起こすような弾幕
を前に、なお余裕の霊夢。だてに瀟洒なメイドや紅い悪魔を相手にしてきたわけではない。むしろ、それらに比
べれば・・・・・・

「単調な攻撃ね。その程度の攻撃じゃ、まだまだお呼ばれには早いわね。」
「ふん、なら!」
と、体勢を低く、          【幽鬼剣・妖童餓鬼の断食 !!】

一閃。すると、剣気が渦を成し、弾幕となって霊夢に襲い掛かる。
「ふふん・・この程度なら・・・・・って、うぁあ!?袖少し斬られたぁ!」
「む・・浅かったか・・」

~危ない危ない・・・・・・でも、今のは一体?気のせいか弾との間合いが変化した・・?~

「何処かの殺人メイドと違って、空間を操ってるわけじゃなさそうだけど・・少々厄介ね。」
「そろそろ落ちたらどう?  【餓王剣・餓鬼十王の報い!!】」

剣気が暴風となって襲い掛かる。先の攻撃の数倍は強力であろう弾幕を前に

「冗談じゃないわよっ!!!!  【霊符・夢想封印 集!!】」
「!!」

飛来する暴風を完全に消滅させた7色の光弾が妖夢を襲う。

「くっ・・」

妖夢は辛うじてそれらを避けるが、展開していたスペルカードは破壊されてしまったようだ。

「無駄な足掻きを・・・   【獄界剣・二百由旬の一閃!!】」

スペルカードより紫の大玉が次々と打ち出されていく。この程度の弾幕なら霊夢にとってなんの意味もないのだ
が・・・・・おもむろに妖夢が大玉に向かって巨大な剣気を飛ばす。それこそ、二百由旬はあろうかという。
大玉と剣気がぶつかった瞬間、それらは小さな弾幕に分かれ、更に弾幕を濃くしてゆく。

「・・唯の弾幕とは少し違うようね・・・・それに、さっきと同じで弾との間合いが掴めない。」

普段の冷静さを取り戻し、落ち着いて対処する霊夢。袖から針を取り出す。

~この技は術者を巻き込まないために、スペルカードと術者が離れた距離にいる。ならば・・~

「甘いわよ、亡霊剣士!」
「なっ・・しまった!」

妖夢の斬撃より数瞬早く、霊夢の放つパスウェイジョンニードルがスペルを破壊した。

「いくら弾幕が凄かろうとも、肝心のスペルカードががら空きじゃ、狙ってくれといわんばかりね。」
「・・なるほど・・参考になるわ。まだまだ修行が足りませんね・・。」
「修行にはいつか付き合ってあげるから、今は通してくれない?」
「そういうわけにはいきません。」
「頑固ね、ちょっとぐらいいいじゃない。たまには息抜きも必要よ。」
「職務に忠実 と言って欲しいです。それに、貴方の春さえ奪えば、あとで花見をしながらゆっくり休暇が取れ
ます。」
「開花させる桜がなくなっても職務を全うする必要はあるのかしら?」
「もちろんそんなことはさせません・・   【修羅剣・現世妄執!!】」

妖夢が一直線に霊夢へ向かって来る。長刀の下薙ぎを難なくかわし、背後から一撃を加えようとしたとき・・

「うぁ・・あぶな・・」
「何時までもこの世にしがみついてないで、こっちに来たら?」
「冗談じゃないわよ。」

妖夢の一撃は霊夢のいた空間、正確には、妖夢と霊夢を繋ぐ一線には空間の亀裂が生じ、そこから無尽に弾が展
開されていく。

「ほんと・・何でも切れるのねその剣は。」
「言ったでしょ。切れないものなんてあんまり無いのよ。」
「へぇ、切れないものあるんだ。ちなみに何?」
「・・・・・・・・・・・蒟蒻だ・・(ボソッ)」
「・・え?なんていったの?よく聞こえなかったんだけど?」
「ええぃ、うるさいうるさい!さっさとやられなさい。」

そうこう言っている間に空間の亀裂は閉じ、スペルは燃え尽きてしまっている。
再び向かい合う二人。手にはそれぞれ一枚のスペル。

【霊符・夢想封印 散!!】   【人神剣・俗諦常住!!】

再びぶつかり合うスペル。お互いの効力が発動する前に相殺しあうカード。
結局、双方発動することなく、燃え尽きる。

「・・・・・・・・」
「お互い、もう余力が無いんじゃない?」
「そうね・・次で決着をつけましょう。だけど、その前に一つ聞いてもいい?」
「?何」
「始めは人間かと思ってたけど・・私と張り合えるだけの能力・・一体何の妖怪かしら?」
「ちょっと、失礼ね!私は正真正銘の人間よ。」
「・・・冗談には聞こえないんですけど・・・」
「・・冗談じゃなくて本当よ。唯の巫女をやってる人間。」
「巫女?もしかして、あの博麗神社の?」
「そうよ、あの博麗の13代目。博麗霊夢。」
「・・なるほど。私は白玉桜の西行時家にお使えする庭師、そしてそのお嬢様である幽々子様の護衛をしてるも
のです。名を魂魄妖夢といいます。」
「それじゃぁ、とても通してくれないわね。」
「えぇ、通りたければ私を倒していくのね、博麗霊夢。」
「わかったわ、そうさせてもらうわよ、魂魄妖夢。」

互いを見つめる二人。そして目の前に展開されるスペルカード。そのスペルに麗夢は手を、妖夢は刀を。
そして叫ぶ。

「天神剣!!」「夢符!!」
一瞬の間、そして閃光。
【三魂七魄!!】【二重結界!!】

霊夢の回りに展開される壁、一瞬、いや半瞬遅れて激しい弾幕と妖夢の桜観剣の刺突。結界際と刀との境では双
方の霊力がしのぎを削っている。一瞬でも気を抜けばお互い無事ではすまない。

「残念だけど・・」
 ビキッ
「!?」
   ピシッ・・
「この勝負、私の勝ちよ!」
パキィィ・・・
「なっ・・・あ・・あぁ・・・」

霊夢の結界が破れ、妖夢の刀が突き出す。しかし、その刀が霊夢に届くことは無い。

「私の・・桜観剣が・・・・・」
「さすがね、この結界を破ったのは貴方が始めて。でも、結界は“2重”なの。その折れた刀じゃ、もう勝負は
ついたようね。」
「えぇ・・私の負けよ・・どうにでもしなさい・・・」
「・・別にどうにもする気は無いわ。私は、春を返してもらうだけ」
「な・」
「何故かって?そんなの決まってる。私は花見をしたいの。ただそれだけ。」
「ふ・・それだけの理由で・・ははっ・・・」

~まいった・・これでは勝てない・・~











「で、私は元凶の元へ行くけど、貴方は?」
「別にどうともしない。私は負けたのだ。信念であった刀も折れた。」
「貴方の信念はその程度で終わるものなの?一度やられたぐらいで立ち上がる勇気も失うわけ?」
「・・・わたしは・・どうすればいい?」
「私に聞かないでよ。そんなもの、自分で決めればいい。」

そう言い放つと霊夢は階段の奥へと進んでゆく。奥へ進むほど妖気が強くなっていく。

~間違いない、この奥ね。~

そう言うと、霊夢はスピードを上げた。早く、早く、冬を終わらせるために。









幻想郷は冬に覆われていた。だが、白玉桜には幻想郷の春が溢れていた。そしてその奥。西行寺の屋敷に、ひと
きわおおきな桜の木があった。まだ満開ではないが、ちらほら咲き始めている。

~もうすこし・・もう少しの春で・・~

少女は桜の前でそう思う。死を運ぶ桜色の少女の霊。その名は西行寺 幽々子といった・・・



~続く~
初投稿です。
二次作品に入るかどうか微妙なところが怖いです・・--;
皆さんは妖々夢や紅魔郷をしているとき、自分なりのストーリーや感情を持ってプレイしていると思います。今回はそれを自分なりに補間して表現してみました。本当は騒霊のストーリーも考えていたのですが、又次回^^;
この後も続けていけたらと思います。
てーる
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コメント



0.640簡易評価
8.無評価てーる削除
誤字脱字おおくて何度も修正・・・--;次回作こそっ!(×д)ノ
12.10裏鍵削除
えと…厳しくなりますが、とりあえず「全体的に地力が不足」ですね。
ストーリーの構成、地の文の読みやすさと明確さ、会話感覚、戦闘シーンの流暢さ、そして全体のテンポ感が乱れてるのは否定できないです。あと改行も。
まぁ、そこは練習のみですね。頑張ってください!