Coolier - 新生・東方創想話

この主人、迷惑な主人につき要注意

2004/09/05 02:53:12
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白玉楼の昼下がり
適度な気温、適度な風、庭の手入れという職務をするには最高の環境だ
それにしても本当にこの庭は広い。毎日のように思うことだ
手入れをするだけで半日はかかる
・・・・・・今はまだ三分の一程度だ
さっさと終わらせて自分の鍛錬に入ろう
昼御飯も食べたばかりなので、しばらくは幽々子様もおとなしくしているだろう
幽々子様といえば、最近は退屈だからといって意味も無く呼び出されることが無くなった
・・・・・・意味があることは滅多に無いような気もするけど
おいといて

というのには理由がある
三日程前だろうか、いつものように唐突にそいつは現れる
と思ったものの、やってきたのは本人ではなくその式の式
その彼女はいまいち要領を得ない説明とともにあるものをおいてった
その彼女の言葉を借りると
「私やー、藍様がこの中に入って何かするんだってー」
語彙が足りない、明らかに重要な部分すら省かれたその説明を見かねて再度説明しに
今度は元締めがやってきた

「これはテレビといってある特定の出来事をこの箱を通して知らせる物よ
 私が暇なときに勝手に流すわ。あ、伝記は要らないから安心してね。自動で入り切りするから」

よく分からない単語が含まれていたが、色々と説明してもらった結果、何とか理解できた
要するに、暇をつぶすものらしい

正直助かった、事実として幽々子様は翌日からその箱の前に座り、かぶりつくように見入っていた
初めは
「妖夢見なさい、こんな小さな箱に本当に人が入っているわ」
などとうるさかったけれども・・・

その翌日には放送予定表という紙を渡された
幽々子様はそれを眺め、嬉しそうにチェックをしていた
それを横から盗み見るとほとんどが「藍と橙の~~」といった感じの番組名だった
結局はすきま妖怪自体にやる気は無いらしい
私としては、職務も集中してできるため、早々に終わり、自分の時間が増えた
まぁ、それが映っていない間は暇つぶしをさせられるのだけど・・・




というのが四日前
なんだか考えているうちに手が止まっていたようだ
いけない、いけない。只でさえ、最近は色々連れまわされたりして忙しいのだ
ようやく落ち着いてきたのだから、時間を無駄には出来ない
急いで作業に戻るやいなや、突如後ろから声をかけられた
「妖夢、ちょっと付いてきて」
いつも通り突然だ、こういうときは大抵私にとっていいことはあまりない。というよりも無い
「はぁ、何でしょう?」
聞いちゃいない、すでに後ろを向いてふわふわと歩いている
無碍にするわけにもいかないので、少し小走りになりながら付いていく
二人とも無言。それこそ腹の探り合いのように



着いたところは幽々子様の自室。中に入ると幽々子様はテレビの真ん前に座り
「ほら、妖夢もここに座りなさい」
と、自分の横をぽんぽんと叩き、座るように促す
「はぁ・・・」
さっきから空返事ばかりのような気もするが気にしない
とりあえず、指定された場所に座り幽々子様のほうを向く
「で、用とは何ですか?」
「妖夢、向く方向が違うわよ」
と、指差したのはテレビ、言われたとおりに体を向き直す
「黒いですね」
「そうね、黒ね」
「何かあるんですか?」
「私あまり黒は好きじゃないわ。好きな色は桜色よ」
「質問に答えてくださいよー」
ふと、そのテレビからブウンという音が立ち、黒が白く、白が色へと変わっていく
二人とも見入る

チャッチャラッチャ  チャラッチャ チャッチャラッチャ チャッチャッチャチャーラチャ

「・・・・は?」
流れたのはあまりにも間抜けな音楽

”橙とー”
”藍のー”三分間クッキングー””

「幽々子様?これは何ですか?」
「・・・・・・」テレビを直視。何も聞いていない
「ゆゆこさまー」
「妖夢は黙ってみていなさい」
決してテレビからは視線をはずさない。きっと何を言っても無駄だろう
黙って見る以外に選択肢は無いようだ

”まずは、羽毛を毟った鳥を食べたい量だけ用意します”
”しまーす”

・・・料理教室?何故こんなものを見せるんだろう・・・いまいち考えが読めない
読めないのはいつもだけど・・・

三分後
”最後にタレを軽く上塗りして、焼き鳥の完成でーす”
”わー”パチパチパチ
発生源の分からない大量の拍手の音が響く、・・・魔術?
そうこうしている間にも番組は進む
”ねぇ~藍様、早くこれ食べようよー”
”ばかっ、台本と違うだろう。後ちょっと我慢すれば好きなだけ食べていいから
 お別れの挨拶が先だろう”
”そっか、ごめんなさい。私後ちょっと我慢するよ!” と胸元で小さくこぶしを握る
”あぁぁ、もうっ橙はカワイイナァーーーー!!”  欲情した式がその式に抱きついてほお擦りをする
”藍様~~?これも台本にないよ~~?”

ブツン

「・・・切れた?」
終わったようだ、それにしても最後のは何だったのだろう・・・
「あの二人だけだといつもあれで終わるのが難点なのよねぇ」
いつもあれですか・・・
「ところで妖夢」
思い出したかのように向き直る幽々子様。私もそれに合わせる
「今作っていた物と同じものを作りなさい」
「はい?」
「聞き分けが悪いわねぇ。焼き鳥とやらを作りなさい、と言っているのよ」
何か全て納得できた気がした。元から作らせるつもりで見せたというわけだ
・・・結局わがままは言われるようだ
「鳥が無いですよ」
すがるように一つ言う。しかし
「取ってくるのよ」
あっさりと打ち消される。ため息一つ
「でも鳥なんて何処にいますか?」
「あら、妖夢忘れたの?この前の雀を捕まえればいいじゃないの」
・・・あの月を直しに行ったときのことか。でも・・・
「あれ・・・食べるんですか?」「食べるわよ」
いつもながらその雑食性に驚かされる。・・・ここまで来ると雑食じゃ言い表せない気もするが・・・
「しかし幽々子様は雀は小骨が多くて・・・」
「妖夢、もう一度言わせてもらうわ。好き嫌いはよくないわ」
「・・・・・・分かりました。行きますよ」
諦念。その場を立ち外に出ようとすると声をかけられた
「妖夢」
「今度は何ですか?」
「荷物が重くなるだろうから、白楼剣は置いていきなさい」
変なことを言うものだ。返って不気味。しかし幽々子様のいうことにも一理有る
「・・・そうですね、では預かってください」
と剣を渡し外に出る、視界良好
こんな用事でなければ、最高のお出かけになるだろうに・・・


目的地の四分の三ぐらいまでは来ただろうか
幽々子様は事前にねぐらを調査していたようだった
ああ見えて、実は幽々子様は用意周到である。このあたりに始めから頼むつもりだったと言うことが分かる
ふと前方に人を発見した。後姿ですぐに分かる特徴的なメイド服
そう、確かあれは・・・
「こんにちは。えーーと・・・・・・犬」
空気が凍り、すぐ横をナイフが通った・・・ような気がした(実際通ったのだが)
「あら、白玉楼の半幽霊じゃない」
さも今気づいたかのように言う
「ええ、奇遇ですね、神社にでも行くのですか?」
「まさか、お嬢様を連れて行くならまだしも、一人で行くことは滅多に無いわ」

沈黙
何か気まずい空気だ、まぁ、主人を書いた従者同士の会話などこんなものだろう
そこでふと一つ気づく
「あのぅ咲夜さん?」
「何」
「何処に行くのですか?」
「食料調達」
端的だ。さもどうでもいいというような言い方、しかしそれ故に少し引っかかる
嫌な予感もする、予感?いや違うと思う。これは確信
同じ方向に飛び続ける二人。目下の森は代わり映えも無くひたすら続いている
遠くの方に湖も見える。目的地はもうすぐ
その事実に咲夜さんも気付いたのだろう。私と同じく顔が曇る
ふと
「あなた」
「はいっ」
来たっ。思わず緊張してしまう
「・・・今夜の夕飯は?」
「・・・・・・焼き鳥とやらです」
はぁ、と一つため息をつく。やはり同じ理由で、同じ用事らしい
「用があるのはあの雀ですか?」  一応の確認だ
「・・・そうよ、・・・全く、お嬢様はほとんど食べないくせに」
「「はぁ・・・」」
二人でため息。何処の家も主人はわがままらしい。ほんの少しの親近感を覚えた



「で、二人は私を取って焼いて食うためにここに来たと」
二人してうなずく。そんなこんなで巣の前までたどり着く。
鬱蒼と茂った森の中その森の湖に近いところにその雀は巣を作っていた
・・・幽々子様の地図じゃ絶対分からなかった
雀までは20m二息で詰めれる距離
「冗談じゃないわよ!食われてたまるもんか!」
そりゃそうだろう。私だって理不尽だと思う。命令とあらば捕ってくるけど
それに幽々子様の理不尽は今に始まったことではない。そんなことは気にするだけ無駄なのだ
「あなたの言い分なんて聞いてないわよ。これは確定事項なのよ」
にたぁと横で獲物にありついた獣のような笑みを浮かべる。・・・・・・ヤッパリこの人怖い
あーー雀もおびえてる・・・お、持ち直した
「って、同じ相手に二回も負けないわよ!それに前回は二対一だったからよ」
「今回も一匹のようだけど?」
どう見ても一匹だ
「最近新しく友達も出来たんだからっ!!」
すぅーーっと、大きく息を吸い込んで叫ぶ
「チルノちゃーーーーーん!!」
静かな森に大声が響く
それにしても、よりによって呼んだのはあの馬鹿か・・・咲夜さんも苦笑い
・・・・というか嘲笑?
そういえば、ここは湖が近かったような気もする
その馬鹿は、必死な妖精はすぐに来た
ずいぶんと近かったようだ
「何?なに~~?」
「馬鹿の到着ね」
あ、やっぱり嘲笑だ。そしてその馬鹿は私たちを確認すると、やはり必死に喋り始めた
「あ、お前ら!何しに来たんだよ!・・・ここであったが100年目凍り漬けにしてやるわ!!」
何も事情を言ってないのに喧嘩を吹っかけてきた。・・・事情を説明しても結果は変わらない思うけど・・・
どうやら、彼女には私たちを見ると喧嘩を売る癖があるようだ
「どうこれで二対二よ。これなら負けないわ」
「ミスティアちゃんは歌って相手を鳥目にしてて!私が突っ込むから」
・・・何でこの二人はこんなにテンションが高いのだろう
・・・とりあえず構えよう。楼観剣を抜く
疲れる・・・。咲夜さんも気だるそうにナイフを持つ
作戦でも終わったのだろう。こちらをきっと見据えると、やっぱり何も考えずに突っ込んできた
「うっりゃぁぁぁぁぁ!!」
それに合わせて雀も歌い始める。聞いた相手を鳥目にする歌だ。・・・・・・相手?
「あれっ?周りが真っ暗だよ。いきなり夜になったよあいつら何処行ったのさ。ミスティアちゃんは?
 異次元?魔界?すきま?・・・ここ何処?ぎゃっっ・・・!!」
やっぱりチルノは馬鹿でした。自分まで鳥目になるのに気が付かなかったのだろうか・・・
声を出してるから咲夜さんのナイフにでも落とされたのだろう
・・・・・馬鹿を通り越してなんだか不憫だ
残るは一匹、一匹で勝てるわけも無く・・・二匹でも勝てないけど



「あなたやっぱりこれを譲ってくれないかしら?」
「駄目ですよー、私だってお使いなんですから」
みねうちで落としたので、あと四時間ぐらいは起きないだろう
「そうね、どうしようかしら・・・。困ったわね・・・」
弾幕る元気も無いのでじゃんけん勝負にしたところ、運良く勝つことが出来
何とか目当ての物を手に入れることが出来た
・・・・・・これを捌くのかぁ・・・

ふと遠くの方で、朱鷺の群れが飛んでいるのが見えた
「咲夜さん、あの朱鷺で代用したら・・・ってもういないし」
目を戻すと、朱鷺たちはけたたましく鳴いている。群れの列も乱れて・・・
時間が止まったような感覚が一瞬したように思えるとすぐに
・・・あ、一匹落ちた
彼女なら大丈夫だろう。もとより心配したことも無いが私は一足先に帰るとしよう





時刻はすでに夕方。縄で縛られた雀はまだ起きない
その方が都合がよく助かる。何はともあれ、ようやく西行寺家の庭に帰って来た
「ただいま帰りましたー」
ひときわ大きな声を出し、帰還を知らせる
家へと歩を進めるが、いつもなら、こういう使いを頼んだときにはすぐ庭に出てくるはずなのに
・・・・・・おかしい
少し歩く速度を上げる。今日は嫌な予感だらけだ

家へ入るとテレビの音が聞こえる。・・・・・幽々子様の部屋か
ふと、縄の先で雀の起きた気配がする。しかし今はそんなことにかまってはいられない
引きずったまま真っ直ぐ部屋を目指す
「うー、引きずらないでー、体の節々が痛いー。っ!あーーって、前っ前!!柱っ柱だって!!」

ゴンッ

知らないうちに静かになった。これは好都合
部屋の扉を勢いよく開ける
「あら妖夢、おかえりなさい」
ブンブンブンブン
唖然
「・・・幽々子様?何やってるんですか?」
ブンブンブンブン。薄っぺらい棒の真ん中を持って左右に振っている
「これを毎日20分やり続けるとおなかが引き締まるのよ」
ブンブンブンブン
テレビからは昼間見た二人が声をそろえてしきりに”今ならなんと!!・・・”
などと叫んでいるのが聞こえる
「それは分かりました。では何でそれが家にあるのですか?」
「買ったのよ」
・・・・・・よくもまぁそんな堂々と言えたものだ
「だけど5000円とかいうわけの分からない物を請求されたのよね」
この人はお金の概念も分からないのか・・・一回ぐらい買い物に行かせるべきか
「・・・で、どうしたんですか?」
「白楼剣と交換って言ったら快く了承してくれたわ。流石私の友人ね、聞き分けがいいわ」
ピキッ・・・・・・何かが切れる音がした
つかつかとテレビの前に立つ
剣を抜く。冗談の構え
意図を察し幽々子様が私の腕をつかむ
「駄目よ妖夢。万能包丁をまだ注文していないわ・・・万能なのよ」
「この期に及んで・・・切らせてください!こいつのせいでー」
”今ならなんとこの電子手帳も付いて・・・”
二人ともなんだか泣き声である
「手帳も付くのに~」
幽々子様を振り払い一気に剣を叩きつける

グシャァァァア、バキン

火花の飛ぶような音の次に軽い爆発音。一番大きかったのは幽々子様の悲鳴
切られたそれはもう見る影も無くなった
「あぁぁぁぁ・・・私の完全で瀟洒な通販ライフがー」
「どっかの人間の通り名を微妙に真似しないで下さい」
よよよと崩れる幽々子様
しかも
結局その日の夕食はというとタレが無いという理由から焼き鳥は却下され雀は開放された
・・・・・・私の今日一日の苦労はいったい・・・
とにかく
残るやることは一つとなった




翌日
今日も朝早くから出かける
昨日と同じ、天気良好視界良好
目的地が違うだけ。前方に昨日と同じ人影を発見。しかし、今日は殺気立って見える
最もその殺気も今日は怖いとは感じなかった
そして昨日と同じように声をかける
「おはようございます。咲夜さん」
「奇遇ね。目的地もまた同じのようね」
沈黙
しかし、そこに気まずさは無い。それは何かを確認するための沈黙
その沈黙は二人同時に笑い始めることによって破られる
それは笑いと書くには明るすぎて、邪笑と書くのが一番似合う笑い声
そして今日の目的を口に出す

「じゃあ、行きましょう。迷惑な放送局潰しに」
「さあ、行きましょうか。迷惑な放送局潰しに」


その日から全てのテレビが機能しなくなったというのは後日談


どうも光丸です。忘れた方は思い出してやってください
今回の話ですが
何でテレビが・・・とかはスルーしてください
霊気で動くと

永夜抄をやっていたらひたすら妖夢の話が書きたくなったわけです
それもひたすら突っ込み役とかに徹する役で
結局中途半端な役付けになりましたが^^;
次書くときは永夜抄キャラで書いてみたいなぁ・・・と

よろしければ感想などいただけると嬉しいです

PS.なんだかチルノは不憫で終わるのが彼女らしいと思うのです
光丸
[email protected]
http://www.geocities.co.jp/Playtown/7143/index.html
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コメント



0.2710簡易評価
9.60水城削除
何だか凄くストンと落ちた気がします。
おもしろおかしく楽しかった、と。

東方第9弾の主役はこの従者コンビかー(ぇ
21.無評価いち読者削除
2面ボスって、何かとネタにされやすいですね。変な方向で(笑)。
何となくですが、咲夜さんには通販ライフが似合っている気が。
こう、コッソリとふりふり棒(?)を買っておなかを引き締m(殺人ドール
23.50裏鍵削除
妖夢x咲夜という従者同士の物語はいいですね~
この2人、本当に合いそうだし。そういや3人目の従者も咲夜に何かしらぁゃしぃ関係が(ぇ
30.無評価光丸削除
たくさんの人に読んでいただけて嬉しい限りです

>裏鍵さん
同感です。同じ職種同士通じ合う物が・・・ラブコメカケナイですが
三人目・・・言いたい・・・語りたい・・・(抑えろ

2ボスはネタにしやすいです。馬鹿っぽいキャラは使いやすいですね
特にコメディーは(笑
咲夜さんはお嬢様が買って飽きた物をちゃっかりもらってふりふりですよ
自分の中では

<水城
ありがとうです
ミスディレクションとで、さらに上級者向けにw