その日、雨は降っていなかった。
そして、雨を降らせるべき者は、そこに居なかった。
何よりその時、太陽は幻想郷を照らしていなかった。
紅魔館は、この未曾有の危機を迎えるべくして迎えることとなった。
---
その日はいつも通り、紅 美鈴(ホン・メイリン)が紅魔郷の門番をしていた。屋敷の
異変……屋敷と付近が軽く揺れることそのものは、割と異変と言うべきものではなかった。
だが、その直後にいつも降り出す土砂降りの雨は、まだやってこない。門の横、雨水をし
のぐ為のスペースに逃げ込んだ美鈴は、冷静に事態の把握に努める。そしてその理由は、
しばし考えればすぐに分かることであった。
その土砂降りの雨は、屋敷の図書館で司書をしているパチュリー・ノーレッジの魔法に
よってもたらされる。そして数刻前、雨を降らせる張本人は、本当に珍しいことに外出し
ていったのだ。つまり、少なくとも彼女によって雨が降ることはない。
門番をしている以上、館に出入りする人間は把握している。彼女の外出を思い出した美
鈴は、それが故に次に起こる可能性のある、最悪の事態も予想できる。
館の主人レミリアが妹、フランドール・スカーレットが野に放たれること。
そうなれば、加減を知らないがため目に映るもの全てを壊してしまうフランは、幻想郷
のあらゆる所をぺんぺん草一つ生えていない荒地に変えてしまうことは必至である。紅魔
館の者は、彼女を外を出さないために二重の対策をしている。そのうち一つは、前述のパ
チュリーの魔法による降雨である。吸血姫は雨の中では動くことが適わない為、屋敷から
出られなくなる。そしてもう一つは、姉であるレミリアによる制止。だが今はそのレミリ
アも留守である。そうなるといずれかの帰還まで、時間を稼がなければならない。それに
適任の人間も屋敷には居るが……
その時、屋敷から飛び出す影が目に映った。美鈴は考えを中断し、最優先すべき事に当
たる。当然、飛び出した影の把握と、それがフランであるなら全力で阻止する事。
そして、事態が予想通りの、最悪の事態になったことを認識する。
「フランドール様、どちらへお出かけですか。」
「あら、使用人ごときが私を止める気。」
「それが仕事ですから。」
「へぇ、でも私は外に行きたい気分なの。止めないで。」
美鈴を無視してその上を通過しようと跳んだフランドールは、しかしその直後、地面を
蹴った勢いを背中の羽で無理やり殺した。直後、本来ならフランの胸のあたりが通過して
いたはずの場所を通過する、一本の紅いナイフが確認できた。
「間一髪、かしら。」
続いて屋敷から飛び出してくる、メイドの服装をした女性。紅魔館の顔役、メイド長こ
と十六夜 咲夜(いざよい さくや)その人である。
その姿が見えるや否や、美鈴はすぐにフランとの距離を開く。直後二人の居た場所には
数本のナイフが降り注ぐ。しかしそのナイフは、フランによって全て叩き落される。
「咲夜さん、私を巻き添えにする気ですか。」
「分かっているでしょ、私達に余裕は無いの。それに分かって避けてるだから文句を言わ
ない。」
そう言いながらも、咲夜はフランへの攻撃の手を緩めない。
「フランドール様、申し訳ありませんが、力ずくで屋敷へお帰ししますよ。」
「あら、そんなことできるのかしら。」
飛んでくるナイフを片っ端から叩き落すフラン。
「咲夜さん、そんなこと出来るのですか。」
美鈴にもそれは無理なことだと思えた。
「フラン様を止められる人間を、私は2人程知っているわ。それにね……」
---
巻き込まれるのを避けるため、美鈴は二人から相当の距離を置く。これから弾幕の乱れ
飛ぶ空間から退避し終わったのを確認した咲夜は、フランに向かって符を展開。ナイフを
投げる。
「私の能力をもってすれば──」
フランに向かって、さっきよりも遥かに多いナイフを投げつける咲夜。
「文字通り時を止めてでも──」
全てを叩き落し切れず、残ってしまったナイフを避けるフラン。
「時間を稼ぐことができる──」
フランの後方に飛んでいくナイフが、突如軌道を変え再びフランに襲い掛かる。
「あなたの時間も私のもの──」
その一方で正面からは、咲夜が第二波を投げ終えている。
「クロックコープス!!」
正面から、側面から、後方から、ありとあらゆる方向からナイフに囲まれるフラン。
「ならば全て落とすまで……495年の波紋!!」
フランの周囲の空気が震え、フランを中心に輪を形成。フランを囲うナイフとその空気
の輪が衝突。全てのナイフが叩き落される。
そのままその空気の波動は針を為し、咲夜に向かって襲い掛かる。咲夜は先程より大き
く丈夫な銀のナイフを自分の回りに展開。咲夜の周りで回転するナイフが空気の針の進行
を食い止める。そして咲夜の前方の針が無くなると同時に、それらはいっせいにフランに
向かって襲い掛かる。
「今度は空気ごときじゃ落とせないわよ……夜霧の幻影殺人鬼!!」
一斉に襲い掛かるナイフ、辛うじて避けるフラン。一方の咲夜も、一旦守りに入れば絶
望的な破壊力を持つフランの前に為す術を持たない。将棋で言うなら、常に王手をかけ続
けねばなら無い状態。
「このまま決める……ザ・ワールド!!」
フランが避け後ろへ消えていったはずのナイフが、突然……あくまでフランから見ての
話だが……ありえない方向に進路を修正する。あるナイフは後ろからフランを直接狙い、
あるナイフはフランの退路となるべき場所に向かって飛ぶ。更に正面から、クロックコー
プスの時に比較にならない量の第二波を浴びせる。
再びナイフに囲まれたフランは、
「あらゆるものを傷つける魔の杖──」
手に持った杖で周囲を凪ぐ。
咄嗟に身を引く咲夜。
「全てを燃やし尽くす、火炎の剣──」
咲夜の居た場所を、ナイフのあった場所を、紅い剣閃が通過する。
「邪魔する者に、容赦は要らない──」
剣閃が紅い火の粉と化し、辺り一体に降り注ぐ。
「凍れる時であろうと溶かし斬る──」
火の粉が飛んでくるナイフに、そして咲夜に襲い掛かる。
「レーヴァテイン!!」
後方より戻る第一波、自分に向かってきていた第二波、そして時の止められた空間に配
置されたはずの第三波、全てのナイフが溶けて消える。更にその紅は、咲夜を飲み込もう
と襲い掛かる。
「メギドの火、全てを燃やし尽くす神の業火。さあ、こっちからのチェックメイトよ。」
咲夜に許された手段は、誰にも侵せぬ絶対領域、『プライベートスクウェア』を展開す
ること。しかし、咲夜は分かっていた。これを展開したときが自分の負けであることを。
これはただの防御手段にしかなり得ぬスペル。そして何より、この絶対領域から外に出れ
ば業火、中に居れば攻撃の手段はない。フランはその隙にこの空域を離脱すればいいので
ある。だがあえて咲夜は、他の手段を考えることなくそれを展開した。
そして実際に、フランはその時、勝ちを確信した。この領域が閉じるまでの残り8秒は、
フランが咲夜の空間操作を受け付けない場所まで飛び去るのに十分な時間。そして、あと
はそれを実行に移すだけ。
咲夜は、あと8秒は外からの干渉を受けない代わりに内からも干渉できない領域に居る
のだ。凍った時に止められていたナイフも、先程紅の剣が薙ぎ払っている。あとは咲夜に、
屋敷に別れを告げ、飛び去るだけ。
そのはずだった。その時、咲夜から一言漏れた。
「ミスディレクションよ……勝ちを確信したとき、そいつはすでに敗北している、と。」
直後に身を走る巨大な衝撃。訳も分からず、だが体に力が入らないことだけは分かり、
その場に崩れ落ちるフラン。薄れ行く意識が辛うじて認識したのは、自分の生み出したも
のではない紅であった。
* * *
「フラン様を止められる人間を、私は2人程知っているわ。」
咲夜はそう言うと、美鈴を見てこう言った。
「それにね、そいつらとタメを張れる2人がここに居るのよ。」
フランに察されないようにして伝えられた言葉が、そこにあった。。
「貴方は一度離脱して、氣を練って待ちなさい。フラン様が完全に私だけに頭が行ったと
思った時、その一瞬、一回だけがチャンスだと思いなさい。」
離脱する美鈴に、最後の一言。
「1+1は、2じゃないわ。」
* * *
『彩雨』
美鈴はそのワンチャンスを逃すことなく、渾身の攻撃の符を零距離……つまり一番威力
の高くなる場所から打ち込んだ。気配を殺し、氣を溜め、機をうかがい、鬼を打ち破った
その攻撃は、まさに綺麗の二文字に集約されるべきものであった。
程なくして咲夜の空間が消える。と同時に、咲夜は美鈴に、そして倒れているフランに
近づく。
「ふう、任務完了ね。」
倒れているフランを担ぐ咲夜。
「相変わらずお二人とも強いですね。」
「何言ってるのよ。三人とも、でしょ。」
「そんな、私なんて、まだまだですよ……」
「いつも言ってるでしょ。貴方に足りないのは自信だけだ、って。」
「でも、私一人ではフランドール様を抑えられませんよ。」
「どっかの巫女とか魔女だって、調子が悪いと簡単に負かされてるわよ。それに私達の仕
事には、一人でやれだなんて決まりは無いわ。」
「だったら門番の補充人員もっと下さいよ~。」
「貴方じゃないと勤まらないから一人なのよ。」
「さっきと言ってることが微妙に違いませんか?」
「多分気のせいよ。」
「うーん……」
「まぁ、とりあえずお疲れ様、美鈴。」
「お疲れ様です、咲夜さん。」
「あ、そういえば、自信以外にも足りないものがあったわね。」
「……割と聞きたくない気もしますが。なんしょうか。」
「存在感。」
「……。」
「まぁ、今回はそのおかげでいろいろ助かったし、無くてもいいんじゃないかな。」
「さりげなく酷いですよ咲夜さん……」
まぁ、そんな感じでもしかしたら幻想郷の危機っぽいのは二人によって回避されたっ
つー話。
そして、雨を降らせるべき者は、そこに居なかった。
何よりその時、太陽は幻想郷を照らしていなかった。
紅魔館は、この未曾有の危機を迎えるべくして迎えることとなった。
---
その日はいつも通り、紅 美鈴(ホン・メイリン)が紅魔郷の門番をしていた。屋敷の
異変……屋敷と付近が軽く揺れることそのものは、割と異変と言うべきものではなかった。
だが、その直後にいつも降り出す土砂降りの雨は、まだやってこない。門の横、雨水をし
のぐ為のスペースに逃げ込んだ美鈴は、冷静に事態の把握に努める。そしてその理由は、
しばし考えればすぐに分かることであった。
その土砂降りの雨は、屋敷の図書館で司書をしているパチュリー・ノーレッジの魔法に
よってもたらされる。そして数刻前、雨を降らせる張本人は、本当に珍しいことに外出し
ていったのだ。つまり、少なくとも彼女によって雨が降ることはない。
門番をしている以上、館に出入りする人間は把握している。彼女の外出を思い出した美
鈴は、それが故に次に起こる可能性のある、最悪の事態も予想できる。
館の主人レミリアが妹、フランドール・スカーレットが野に放たれること。
そうなれば、加減を知らないがため目に映るもの全てを壊してしまうフランは、幻想郷
のあらゆる所をぺんぺん草一つ生えていない荒地に変えてしまうことは必至である。紅魔
館の者は、彼女を外を出さないために二重の対策をしている。そのうち一つは、前述のパ
チュリーの魔法による降雨である。吸血姫は雨の中では動くことが適わない為、屋敷から
出られなくなる。そしてもう一つは、姉であるレミリアによる制止。だが今はそのレミリ
アも留守である。そうなるといずれかの帰還まで、時間を稼がなければならない。それに
適任の人間も屋敷には居るが……
その時、屋敷から飛び出す影が目に映った。美鈴は考えを中断し、最優先すべき事に当
たる。当然、飛び出した影の把握と、それがフランであるなら全力で阻止する事。
そして、事態が予想通りの、最悪の事態になったことを認識する。
「フランドール様、どちらへお出かけですか。」
「あら、使用人ごときが私を止める気。」
「それが仕事ですから。」
「へぇ、でも私は外に行きたい気分なの。止めないで。」
美鈴を無視してその上を通過しようと跳んだフランドールは、しかしその直後、地面を
蹴った勢いを背中の羽で無理やり殺した。直後、本来ならフランの胸のあたりが通過して
いたはずの場所を通過する、一本の紅いナイフが確認できた。
「間一髪、かしら。」
続いて屋敷から飛び出してくる、メイドの服装をした女性。紅魔館の顔役、メイド長こ
と十六夜 咲夜(いざよい さくや)その人である。
その姿が見えるや否や、美鈴はすぐにフランとの距離を開く。直後二人の居た場所には
数本のナイフが降り注ぐ。しかしそのナイフは、フランによって全て叩き落される。
「咲夜さん、私を巻き添えにする気ですか。」
「分かっているでしょ、私達に余裕は無いの。それに分かって避けてるだから文句を言わ
ない。」
そう言いながらも、咲夜はフランへの攻撃の手を緩めない。
「フランドール様、申し訳ありませんが、力ずくで屋敷へお帰ししますよ。」
「あら、そんなことできるのかしら。」
飛んでくるナイフを片っ端から叩き落すフラン。
「咲夜さん、そんなこと出来るのですか。」
美鈴にもそれは無理なことだと思えた。
「フラン様を止められる人間を、私は2人程知っているわ。それにね……」
---
巻き込まれるのを避けるため、美鈴は二人から相当の距離を置く。これから弾幕の乱れ
飛ぶ空間から退避し終わったのを確認した咲夜は、フランに向かって符を展開。ナイフを
投げる。
「私の能力をもってすれば──」
フランに向かって、さっきよりも遥かに多いナイフを投げつける咲夜。
「文字通り時を止めてでも──」
全てを叩き落し切れず、残ってしまったナイフを避けるフラン。
「時間を稼ぐことができる──」
フランの後方に飛んでいくナイフが、突如軌道を変え再びフランに襲い掛かる。
「あなたの時間も私のもの──」
その一方で正面からは、咲夜が第二波を投げ終えている。
「クロックコープス!!」
正面から、側面から、後方から、ありとあらゆる方向からナイフに囲まれるフラン。
「ならば全て落とすまで……495年の波紋!!」
フランの周囲の空気が震え、フランを中心に輪を形成。フランを囲うナイフとその空気
の輪が衝突。全てのナイフが叩き落される。
そのままその空気の波動は針を為し、咲夜に向かって襲い掛かる。咲夜は先程より大き
く丈夫な銀のナイフを自分の回りに展開。咲夜の周りで回転するナイフが空気の針の進行
を食い止める。そして咲夜の前方の針が無くなると同時に、それらはいっせいにフランに
向かって襲い掛かる。
「今度は空気ごときじゃ落とせないわよ……夜霧の幻影殺人鬼!!」
一斉に襲い掛かるナイフ、辛うじて避けるフラン。一方の咲夜も、一旦守りに入れば絶
望的な破壊力を持つフランの前に為す術を持たない。将棋で言うなら、常に王手をかけ続
けねばなら無い状態。
「このまま決める……ザ・ワールド!!」
フランが避け後ろへ消えていったはずのナイフが、突然……あくまでフランから見ての
話だが……ありえない方向に進路を修正する。あるナイフは後ろからフランを直接狙い、
あるナイフはフランの退路となるべき場所に向かって飛ぶ。更に正面から、クロックコー
プスの時に比較にならない量の第二波を浴びせる。
再びナイフに囲まれたフランは、
「あらゆるものを傷つける魔の杖──」
手に持った杖で周囲を凪ぐ。
咄嗟に身を引く咲夜。
「全てを燃やし尽くす、火炎の剣──」
咲夜の居た場所を、ナイフのあった場所を、紅い剣閃が通過する。
「邪魔する者に、容赦は要らない──」
剣閃が紅い火の粉と化し、辺り一体に降り注ぐ。
「凍れる時であろうと溶かし斬る──」
火の粉が飛んでくるナイフに、そして咲夜に襲い掛かる。
「レーヴァテイン!!」
後方より戻る第一波、自分に向かってきていた第二波、そして時の止められた空間に配
置されたはずの第三波、全てのナイフが溶けて消える。更にその紅は、咲夜を飲み込もう
と襲い掛かる。
「メギドの火、全てを燃やし尽くす神の業火。さあ、こっちからのチェックメイトよ。」
咲夜に許された手段は、誰にも侵せぬ絶対領域、『プライベートスクウェア』を展開す
ること。しかし、咲夜は分かっていた。これを展開したときが自分の負けであることを。
これはただの防御手段にしかなり得ぬスペル。そして何より、この絶対領域から外に出れ
ば業火、中に居れば攻撃の手段はない。フランはその隙にこの空域を離脱すればいいので
ある。だがあえて咲夜は、他の手段を考えることなくそれを展開した。
そして実際に、フランはその時、勝ちを確信した。この領域が閉じるまでの残り8秒は、
フランが咲夜の空間操作を受け付けない場所まで飛び去るのに十分な時間。そして、あと
はそれを実行に移すだけ。
咲夜は、あと8秒は外からの干渉を受けない代わりに内からも干渉できない領域に居る
のだ。凍った時に止められていたナイフも、先程紅の剣が薙ぎ払っている。あとは咲夜に、
屋敷に別れを告げ、飛び去るだけ。
そのはずだった。その時、咲夜から一言漏れた。
「ミスディレクションよ……勝ちを確信したとき、そいつはすでに敗北している、と。」
直後に身を走る巨大な衝撃。訳も分からず、だが体に力が入らないことだけは分かり、
その場に崩れ落ちるフラン。薄れ行く意識が辛うじて認識したのは、自分の生み出したも
のではない紅であった。
* * *
「フラン様を止められる人間を、私は2人程知っているわ。」
咲夜はそう言うと、美鈴を見てこう言った。
「それにね、そいつらとタメを張れる2人がここに居るのよ。」
フランに察されないようにして伝えられた言葉が、そこにあった。。
「貴方は一度離脱して、氣を練って待ちなさい。フラン様が完全に私だけに頭が行ったと
思った時、その一瞬、一回だけがチャンスだと思いなさい。」
離脱する美鈴に、最後の一言。
「1+1は、2じゃないわ。」
* * *
『彩雨』
美鈴はそのワンチャンスを逃すことなく、渾身の攻撃の符を零距離……つまり一番威力
の高くなる場所から打ち込んだ。気配を殺し、氣を溜め、機をうかがい、鬼を打ち破った
その攻撃は、まさに綺麗の二文字に集約されるべきものであった。
程なくして咲夜の空間が消える。と同時に、咲夜は美鈴に、そして倒れているフランに
近づく。
「ふう、任務完了ね。」
倒れているフランを担ぐ咲夜。
「相変わらずお二人とも強いですね。」
「何言ってるのよ。三人とも、でしょ。」
「そんな、私なんて、まだまだですよ……」
「いつも言ってるでしょ。貴方に足りないのは自信だけだ、って。」
「でも、私一人ではフランドール様を抑えられませんよ。」
「どっかの巫女とか魔女だって、調子が悪いと簡単に負かされてるわよ。それに私達の仕
事には、一人でやれだなんて決まりは無いわ。」
「だったら門番の補充人員もっと下さいよ~。」
「貴方じゃないと勤まらないから一人なのよ。」
「さっきと言ってることが微妙に違いませんか?」
「多分気のせいよ。」
「うーん……」
「まぁ、とりあえずお疲れ様、美鈴。」
「お疲れ様です、咲夜さん。」
「あ、そういえば、自信以外にも足りないものがあったわね。」
「……割と聞きたくない気もしますが。なんしょうか。」
「存在感。」
「……。」
「まぁ、今回はそのおかげでいろいろ助かったし、無くてもいいんじゃないかな。」
「さりげなく酷いですよ咲夜さん……」
まぁ、そんな感じでもしかしたら幻想郷の危機っぽいのは二人によって回避されたっ
つー話。
分かって避けてるだから>分かって避けているのだから …かな?
それと最後の「回避されたっつー話」という締め方は、全体の語調とあまりに違和感がありミスマッチな気がします。