季節は初夏
天気は雨。といっても、おそらく通り雨。風も強くあまり厚みのない雲たちは
そこはかとなく飛んでいく
時刻は夜。丁度夕餉前。暗くなった直後のこと
「夕食の準備が出来ましたので、皆様食事場までお越しください」
将棋のトーナメント戦をしていたところで、庭師の妖夢さんから声がかかる
いつも思うことだけれども庭師というよりも従者だろう。一度尋ねてみたが答えは
「私は西行寺家の庭師であり、半人の剣士なのです」
であるらしく、かたくなに否定をしていた
リリカ、メルラン、そして幽々子さんは子供のように走っていく
リリカ、メルランはおいといて幽々子さんは子供っぽいのか大人っぽいのかよく分からない
どちらが地なのだろう。どちらも地なのかもしれない
ただ一ついえるのは、将棋で負けそうになっていたからといって、わざとらしく
立ち上がるときに盤をひっくり返すのはどうかと思う・・・・・・王手なのに・・・
食事場に着くと、妖夢さんと幽々子さんがもめていた。もとい
幽々子さんが駄々をこねていた
「よーむ!なんでお肉がないのよ」
「いつものことでしょう」
「今日はいつもじゃないわ」
「家は毎日が葬式です、ということは毎日が精進料理です」
「それは違うわ妖夢」
「何故ですか?」
「今日は仕事をしていないわ!」
堂々と胸を張る幽々子さん。対照的に肩をわなわなと揺らす妖夢さん
「・・・でわ・・・昼に渡した業務は・・・」
「妖夢のところに返しておいたわ。今日は出来ないと思ったから」
流石に驚愕する妖夢さん。固まっている
すこし白くも見える
「「「にくーにくーにくー」」」
肉の三重奏
「・・・わかりました・・・、肉料理を一品ですね・・・」
なにかを悟ったのだろう。肩を落とし、背中に哀愁が漂う。気持ちが分からないこともない
一度振り向く
「何の肉がよろしいですか?あればそれで作ります」
すでに立ち直っている。いや、無理矢理そうしているのだろう
なんとなく分かることだが、そうでもしないとやっていけないのかもしれない
「そうね・・・」
「いぬにくー」
とリリカ
「それもいいわね、よーむ紅魔館で捕まえてきなさい。一匹犬がいたでしょう」
「・・・はぁ・・・それは比喩表現です。分かって言ってますね?・・・・・・猪にします・・・」
少し幽々子さんの目が本気だったことは見逃してはいけない
肉料理が運ばれてきたときにわけの分からない歓声奇声怒声が上がった程度の食事は終わり
妖夢さんはすでに洗い物を始め、リリカとメルランは楽しそうにそれを手伝っている
今、食事場にいるのは私と幽々子さんだけ
適度な満腹感に包まれていると、幽々子さんが声をかけてきた
「ちょっと後で話をしてもいいかしら?」
演奏の頼み事だろうか?とりあえず話を聞いておかないことには始まらない
「別に今でもかまいませんけど」
「今はまだ早いわ、・・・もう少し時間が必要」
妖しく笑う。ただそれだけの仕草なのに、本人にはその気はないはずなのに
気圧されている感覚がする
不快ではないけど、そこに食事前の子供っぽさは微塵もなかった
息が苦しくなってきた・・・
すっ・・・とその感覚が消えうせる
なにやら洗い物は終わったようだ。縁側を走る声が聞こえる。なにかを引きずりながら・・・
ドドドドドドド・・・・・・・
「「おふろー♪オフロー♪」」
「ちょっ・・・引きずらないでくだっ・・・痛ぁっ、分かりましたから、入りますから
離してぇぇぇぇ・・・」
「賑やかねぇ」
なんだか感慨深い様子で喋る
・・・大方洗い物が終わったから「二人でお風呂でも入ってこられてはどうでしょう?」
とでも言ったのだろう。あの二人には、いや、二人一緒の時には決して勧めてはいけない
連行されるだけだ。あくまでも自分たちでそれに気づくことが重要だ。しかし・・・
ずっ、とお茶を飲む、・・・・・・家の妹達が無邪気というよりも馬鹿に見えてきた
・・・考えないほうがいい・・・、まぁ、そうなると次の行動は・・・
ドドドドドドド・・・・・・
やっぱり戻ってきた。二人は勢いよく障子を開き、
「「姉さん!!風呂に行くぞー!」」
やはり両腕をつかまれた
いい湯だった。
雨はすでに通り過ぎたようで、降られながら風呂に入ることもなかった
露天風呂はいい
自分が何も着ていないから風をそのまま受けることが出来る
心地よい。露天風呂はいいものだ・・・ああいうことさえなければ
あまり語りたくもなく、むしろ言いたくない
露天風呂というものは静かであるべきはずだ
風呂の端っこで恥ずかしいのだろうか小さくなっている妖夢さんに対して
立ち上がり手をわきわきと動かしながらにじみよる
端っこなので逃げることも出来ず怯えるのみの妖夢さん
オヤジくさい笑い声を上げ、奇妙な笑みを浮かべ
「これで、妖夢ルートのフラグが立つぞー!」
と、わけの分からないことを叫びながら・・・・・・襲うリリカとメルランと何故か幽々子さん
なんだか妖夢さんが不憫に思えた
とりあえず・・・せめて前ぐらい隠してください
妖夢さんが用事があるといって出かけたため、自分たちで布団を敷いていると幽々子さんに呼ばれた
「来たわね、まぁ、座って頂戴」
とはいっても縁側の一部なので対面ではなく横に並んでいるという状況だ
「妹さんたち・・・見違えたわね」
呟くように、独り言のように、しかしそれは確実に私に対する言葉
「前に来たときよりも・・・ということでいいのですか?」
確認・・・相手に対するというよりも自分に対するという意味合いのほうが強いかもしれない
「そう、魂についている影が消えたわ」
幽々子さんは大体こちらの状況を知っているようだ
「消えた理由も・・・?」
「そこまでは分からないわ。原因はわかるけどね、メルランの方は実際見たから分かったわ」
やっぱり、ほっと一息
あの二人から出ていた負の感情は消えていたようだ。・・・しかし幽々子さんはわざわざそれを伝えるだけに?
「2人はきれいさっぱり無くなったわね。多分もうあの手の深い影は付かないと思うわよ」
「2人は?」
幽々子さんは一つため息をつく。わざとらしく
「案の定気づいていなかったみたいね。影があるのはあの二人だけだと思っていた?
慢心ね。自分には悩みなんてないって思っていたのでしょう。二人にあってあなたにないはずがないわ
あなた達はそういう存在なのだから」
意識したこともなく、考えたこともなかった
私の影・・・なんだろう・・・思いつかない
「あなたの悩みは考えても分かるはずがないわ。行動のみで分かる悩みだから」
「何も分からないのですが・・・」
「いいでしょう。教えてあげるわ。もとから今日はそのつもりだし」
息を呑む。
「いい?あなたの影は捉えようによっては一番浅いの。現に今がそう
だけど本来は一番深いはずなの」
何を言っているのか分からない。難しすぎる
考えてみるがわからない。しかし幽々子さんは喋ることを止めない。それは独白のようにも見えた
しかし話している内容は自分のこと。決して独白にはなりえない
「あなたの影はもうほとんど消えかけているわ」
「・・・じゃぁ、何故教える必要が?」
当然といえば当然の疑問。しかし当然は打ち消され帰ってくるのは・・・
「言っておくわ。これは決して教えるために言ってるんじゃないのよ。これは忠告
この影だけは何度も出てくる可能性があるわ。そして、自覚しているのとしていないのじゃ
大きな差があるというだけ。そのための忠告」
続ける
「あなたの影はね、妹が悩みを抱えているということに対する悩みよ。あなたは感覚が鋭すぎる
だから二人の悩みが見えたでしょう。だからそれを解かずにはいられなかった
何故自分には解けない・・・とでも自ら追い詰めていたのでしょう」
続ける
「だからあなたの影は二人の影がなくならない限り決してなくならない
その間にもどんどん深く濃くなっていくのよ。今は二人の影が消えたから消えかけているけどね」
「消えたなら何故まだ残っているんです?」
思ったことをそのまま口に出す、言う言葉を考える暇などない
「疑惑よ。本当に消えたかどうかが信じ切れていないんでしょう。あなたは妹に些細な悩みでも出来れば
深い影を作るわ」
「治す方法はね・・・」
その前に一つ聴きたいことがあった
「どうしてここまで教えてくれるんですか?」
最大の質問。それは簡単な言葉で告げられる
「満月だから・・・よ」
空を見上げると満月がこちらを見下ろしていた
それがなんだか、自分の心を見透かされているようで
「満月の日は、宴会が似合うわ。私はあなたにこのことを教えた。報酬が欲しいの」
私の心はすっきりした気がした
なんとなくわかった。幽々子さんは宴会好き
「報酬は、宴会での演奏費用よ」
「お引き受けします」
笑顔で答える
「そう、まだ最後に言うことがあったわ」
「?」
「治し方は、あなた自身が思いっきり楽しむことよ」
妖夢さんの用事は皆を招待しに行くことであって
いつぞやにやられた紅白や、白黒、犬っぽいメイド。
今は知らない人や妖怪が入り乱れて宴会をしている
誰が聞いているとかはどうでもいいのであって、聞いてくれる人がいれば満足なのであって
こんなに激しく演奏のはいつ以来だろう。
リリカもメルランも、そして私も
誰かのペースを気にすることもなく演奏する、音楽家としては最低かもしれないが・・・
これは宴会の場全てが楽しくなる音楽
幽々子さんの言葉を思い出す
「私は今十二分に楽しめている」
今日一日はとても長かった
私たち全ての気持ちが一つとなり、欠けたパズルのピースが見つかって
私は自分から楽しむということを知った
今日一日が永い永い夜のようで
ルナサは柄にもなくこの宴会が終わって欲しくないと思うのだった
「妖夢、見てみなさい。影が全部なくなっているわ」
酒の椀を片手に、頬を朱に染めながら言う
「幽々子様私にはそういうものは見えないのですけど」
「そんなことはどうでもいいのよ」
また一杯飲む
「事実だけで、うれしいというものなのよ。急遽宴会を用意した甲斐があったわね」
「幽々子様今度からは事前に教えてくださいね」
酒を注ぐ
「景気がいいから西行妖でも咲かせてみようかしら」
また飲む
「もう、そういうことは止めてください」
注ぐ
なんだか自棄酒のようにも見える程であったが幽霊と半人間はそれでも何処か楽しそうだった
その視線の先には三姉妹が舞うように演奏していた
天気は雨。といっても、おそらく通り雨。風も強くあまり厚みのない雲たちは
そこはかとなく飛んでいく
時刻は夜。丁度夕餉前。暗くなった直後のこと
「夕食の準備が出来ましたので、皆様食事場までお越しください」
将棋のトーナメント戦をしていたところで、庭師の妖夢さんから声がかかる
いつも思うことだけれども庭師というよりも従者だろう。一度尋ねてみたが答えは
「私は西行寺家の庭師であり、半人の剣士なのです」
であるらしく、かたくなに否定をしていた
リリカ、メルラン、そして幽々子さんは子供のように走っていく
リリカ、メルランはおいといて幽々子さんは子供っぽいのか大人っぽいのかよく分からない
どちらが地なのだろう。どちらも地なのかもしれない
ただ一ついえるのは、将棋で負けそうになっていたからといって、わざとらしく
立ち上がるときに盤をひっくり返すのはどうかと思う・・・・・・王手なのに・・・
食事場に着くと、妖夢さんと幽々子さんがもめていた。もとい
幽々子さんが駄々をこねていた
「よーむ!なんでお肉がないのよ」
「いつものことでしょう」
「今日はいつもじゃないわ」
「家は毎日が葬式です、ということは毎日が精進料理です」
「それは違うわ妖夢」
「何故ですか?」
「今日は仕事をしていないわ!」
堂々と胸を張る幽々子さん。対照的に肩をわなわなと揺らす妖夢さん
「・・・でわ・・・昼に渡した業務は・・・」
「妖夢のところに返しておいたわ。今日は出来ないと思ったから」
流石に驚愕する妖夢さん。固まっている
すこし白くも見える
「「「にくーにくーにくー」」」
肉の三重奏
「・・・わかりました・・・、肉料理を一品ですね・・・」
なにかを悟ったのだろう。肩を落とし、背中に哀愁が漂う。気持ちが分からないこともない
一度振り向く
「何の肉がよろしいですか?あればそれで作ります」
すでに立ち直っている。いや、無理矢理そうしているのだろう
なんとなく分かることだが、そうでもしないとやっていけないのかもしれない
「そうね・・・」
「いぬにくー」
とリリカ
「それもいいわね、よーむ紅魔館で捕まえてきなさい。一匹犬がいたでしょう」
「・・・はぁ・・・それは比喩表現です。分かって言ってますね?・・・・・・猪にします・・・」
少し幽々子さんの目が本気だったことは見逃してはいけない
肉料理が運ばれてきたときにわけの分からない歓声奇声怒声が上がった程度の食事は終わり
妖夢さんはすでに洗い物を始め、リリカとメルランは楽しそうにそれを手伝っている
今、食事場にいるのは私と幽々子さんだけ
適度な満腹感に包まれていると、幽々子さんが声をかけてきた
「ちょっと後で話をしてもいいかしら?」
演奏の頼み事だろうか?とりあえず話を聞いておかないことには始まらない
「別に今でもかまいませんけど」
「今はまだ早いわ、・・・もう少し時間が必要」
妖しく笑う。ただそれだけの仕草なのに、本人にはその気はないはずなのに
気圧されている感覚がする
不快ではないけど、そこに食事前の子供っぽさは微塵もなかった
息が苦しくなってきた・・・
すっ・・・とその感覚が消えうせる
なにやら洗い物は終わったようだ。縁側を走る声が聞こえる。なにかを引きずりながら・・・
ドドドドドドド・・・・・・・
「「おふろー♪オフロー♪」」
「ちょっ・・・引きずらないでくだっ・・・痛ぁっ、分かりましたから、入りますから
離してぇぇぇぇ・・・」
「賑やかねぇ」
なんだか感慨深い様子で喋る
・・・大方洗い物が終わったから「二人でお風呂でも入ってこられてはどうでしょう?」
とでも言ったのだろう。あの二人には、いや、二人一緒の時には決して勧めてはいけない
連行されるだけだ。あくまでも自分たちでそれに気づくことが重要だ。しかし・・・
ずっ、とお茶を飲む、・・・・・・家の妹達が無邪気というよりも馬鹿に見えてきた
・・・考えないほうがいい・・・、まぁ、そうなると次の行動は・・・
ドドドドドドド・・・・・・
やっぱり戻ってきた。二人は勢いよく障子を開き、
「「姉さん!!風呂に行くぞー!」」
やはり両腕をつかまれた
いい湯だった。
雨はすでに通り過ぎたようで、降られながら風呂に入ることもなかった
露天風呂はいい
自分が何も着ていないから風をそのまま受けることが出来る
心地よい。露天風呂はいいものだ・・・ああいうことさえなければ
あまり語りたくもなく、むしろ言いたくない
露天風呂というものは静かであるべきはずだ
風呂の端っこで恥ずかしいのだろうか小さくなっている妖夢さんに対して
立ち上がり手をわきわきと動かしながらにじみよる
端っこなので逃げることも出来ず怯えるのみの妖夢さん
オヤジくさい笑い声を上げ、奇妙な笑みを浮かべ
「これで、妖夢ルートのフラグが立つぞー!」
と、わけの分からないことを叫びながら・・・・・・襲うリリカとメルランと何故か幽々子さん
なんだか妖夢さんが不憫に思えた
とりあえず・・・せめて前ぐらい隠してください
妖夢さんが用事があるといって出かけたため、自分たちで布団を敷いていると幽々子さんに呼ばれた
「来たわね、まぁ、座って頂戴」
とはいっても縁側の一部なので対面ではなく横に並んでいるという状況だ
「妹さんたち・・・見違えたわね」
呟くように、独り言のように、しかしそれは確実に私に対する言葉
「前に来たときよりも・・・ということでいいのですか?」
確認・・・相手に対するというよりも自分に対するという意味合いのほうが強いかもしれない
「そう、魂についている影が消えたわ」
幽々子さんは大体こちらの状況を知っているようだ
「消えた理由も・・・?」
「そこまでは分からないわ。原因はわかるけどね、メルランの方は実際見たから分かったわ」
やっぱり、ほっと一息
あの二人から出ていた負の感情は消えていたようだ。・・・しかし幽々子さんはわざわざそれを伝えるだけに?
「2人はきれいさっぱり無くなったわね。多分もうあの手の深い影は付かないと思うわよ」
「2人は?」
幽々子さんは一つため息をつく。わざとらしく
「案の定気づいていなかったみたいね。影があるのはあの二人だけだと思っていた?
慢心ね。自分には悩みなんてないって思っていたのでしょう。二人にあってあなたにないはずがないわ
あなた達はそういう存在なのだから」
意識したこともなく、考えたこともなかった
私の影・・・なんだろう・・・思いつかない
「あなたの悩みは考えても分かるはずがないわ。行動のみで分かる悩みだから」
「何も分からないのですが・・・」
「いいでしょう。教えてあげるわ。もとから今日はそのつもりだし」
息を呑む。
「いい?あなたの影は捉えようによっては一番浅いの。現に今がそう
だけど本来は一番深いはずなの」
何を言っているのか分からない。難しすぎる
考えてみるがわからない。しかし幽々子さんは喋ることを止めない。それは独白のようにも見えた
しかし話している内容は自分のこと。決して独白にはなりえない
「あなたの影はもうほとんど消えかけているわ」
「・・・じゃぁ、何故教える必要が?」
当然といえば当然の疑問。しかし当然は打ち消され帰ってくるのは・・・
「言っておくわ。これは決して教えるために言ってるんじゃないのよ。これは忠告
この影だけは何度も出てくる可能性があるわ。そして、自覚しているのとしていないのじゃ
大きな差があるというだけ。そのための忠告」
続ける
「あなたの影はね、妹が悩みを抱えているということに対する悩みよ。あなたは感覚が鋭すぎる
だから二人の悩みが見えたでしょう。だからそれを解かずにはいられなかった
何故自分には解けない・・・とでも自ら追い詰めていたのでしょう」
続ける
「だからあなたの影は二人の影がなくならない限り決してなくならない
その間にもどんどん深く濃くなっていくのよ。今は二人の影が消えたから消えかけているけどね」
「消えたなら何故まだ残っているんです?」
思ったことをそのまま口に出す、言う言葉を考える暇などない
「疑惑よ。本当に消えたかどうかが信じ切れていないんでしょう。あなたは妹に些細な悩みでも出来れば
深い影を作るわ」
「治す方法はね・・・」
その前に一つ聴きたいことがあった
「どうしてここまで教えてくれるんですか?」
最大の質問。それは簡単な言葉で告げられる
「満月だから・・・よ」
空を見上げると満月がこちらを見下ろしていた
それがなんだか、自分の心を見透かされているようで
「満月の日は、宴会が似合うわ。私はあなたにこのことを教えた。報酬が欲しいの」
私の心はすっきりした気がした
なんとなくわかった。幽々子さんは宴会好き
「報酬は、宴会での演奏費用よ」
「お引き受けします」
笑顔で答える
「そう、まだ最後に言うことがあったわ」
「?」
「治し方は、あなた自身が思いっきり楽しむことよ」
妖夢さんの用事は皆を招待しに行くことであって
いつぞやにやられた紅白や、白黒、犬っぽいメイド。
今は知らない人や妖怪が入り乱れて宴会をしている
誰が聞いているとかはどうでもいいのであって、聞いてくれる人がいれば満足なのであって
こんなに激しく演奏のはいつ以来だろう。
リリカもメルランも、そして私も
誰かのペースを気にすることもなく演奏する、音楽家としては最低かもしれないが・・・
これは宴会の場全てが楽しくなる音楽
幽々子さんの言葉を思い出す
「私は今十二分に楽しめている」
今日一日はとても長かった
私たち全ての気持ちが一つとなり、欠けたパズルのピースが見つかって
私は自分から楽しむということを知った
今日一日が永い永い夜のようで
ルナサは柄にもなくこの宴会が終わって欲しくないと思うのだった
「妖夢、見てみなさい。影が全部なくなっているわ」
酒の椀を片手に、頬を朱に染めながら言う
「幽々子様私にはそういうものは見えないのですけど」
「そんなことはどうでもいいのよ」
また一杯飲む
「事実だけで、うれしいというものなのよ。急遽宴会を用意した甲斐があったわね」
「幽々子様今度からは事前に教えてくださいね」
酒を注ぐ
「景気がいいから西行妖でも咲かせてみようかしら」
また飲む
「もう、そういうことは止めてください」
注ぐ
なんだか自棄酒のようにも見える程であったが幽霊と半人間はそれでも何処か楽しそうだった
その視線の先には三姉妹が舞うように演奏していた
文末に句読点がない形式は、意図的に行っていらっしゃるのかもしれませんが、
詩的な表現形態等を模索しているのでなければ、通常作法に従ったほうが
読みやすいかと思います。
(一部文末には句点があったりもするので、表現形態としても統一がとれていません。)
内容はもちろん重要ですが、外見が変わるだけでも違って見えるものです。