この作品は作者の妄想によりかかれたものです。
過度な期待はしないでください。
それでもいいというかたは、どうぞ。
日常はその人その人によって違ってくる。
その日常を楽しむものもあれば、「平凡だ」と面白くもなさそうに毎日を生き続けるものもいる。
この話は、そんな、ある二人の日常を描いたものである。
日常とはなんだろうか、
「平凡」 「退屈」
その言葉しか浮かばない人物こそ、本当の日常にたどりつけていないのかもしれない。
―――雪の日に、
ザクザクと雪の音を鳴らして歩く二つの影。
一つは白黒の衣装にトンガリ帽子。
もう一つは人形を傍らに飛ばせて、その白黒の手を握っている少女。
どこからどう見ても、恋人同士に近い形で二人は寄り添っている。
こうやって、二人で肩を並べて、手を握り合って歩くのが、彼女たちの「日常」だったのだ。
そう、「だった」
「なあ、アリス」
傍らの白黒がアリスという少女を呼ぶ。
「ん?」
その少女の頬はほんのり赤く染まっていて、それは寒さのせいだけではないことが伺えた。返した言葉こそそっけないものだが、内心は嬉しいに違いない。と、白黒の――霧雨魔理沙は思った。
「……少し、座って話でもしよう」
そのいつもとは違う声色に、アリスは驚く。
「うん、まあ、いいけど」
驚いて、はっきりとした返事ができなくなる。
「じゃあ、この辺でいいや」
雪がかぶって岩肌が見えないところを指差して、魔理沙は手で雪を払い、そこに座る。
アリスも、誘われたことによりその隣に座った。
「どうしたのよ、いきなり」
アリスが先に口を開く。
「魔理沙から誘うなんてめったにないじゃない」
「あー……うん。まあ、な。たまにはこうやって自分から誘うのも悪くはないと思って」
アリスはその言葉にますます不信感を募らせた。
どうも様子がおかしい。
アリスの知っている魔理沙は、強引で不真面目で発する言葉にどうしても疑いしか残らなくて――でも、
でも、こんなにも憂いを帯びた顔は見せたことがなかったはずだ。
「………………」
「………魔理沙?」
返事は帰ってくることがない。
魔理沙はただ、地面に積もった雪を見つめて、言葉を捜しているようにも見えるし――何かを決意したようにも見えた。
そして、そのときは訪れる。
日常は、一言で、ガラリと世界を変えることができる。
「アリス……」
そして、魔理沙はもう一言、
「もう、終わりにしよう……?」
「日常」は「そうでないもの」に切り替わった。
それは、あっけなく、もろく、
崩れていった。
「どういう、意味よ……」
声が震えて小さくしか出せない。こんな質問をしたとしても、自分の心の中でわかっている答えが返ってくる。
そんなこと、わかっている。
わかっているからこそ、「もしかしたら」という希望を一つ見つけ出すのだ。
それが、崩れるということも、知っているのに。
「そのままの、意味だ」
魔理沙は、冷淡な声でその質問に答える。
「冗談でもそんなこと言わないでって――」
「冗談じゃない」
その一言だけで、場の空気は切り替わった。
「…………………」
「…………………」
「………………ねえ」
ポツリとそう漏らしたのは、アリスだった。
「何でいきなり、そんなこと言い出すのよ……?」
「……私がもう、いいと思ったからだ」
帽子のつばを軽く下げて、魔理沙が言う。
「この二つの季節を通り越すときに思ったんだ。もう十分だって」
魔理沙の一つ一つの言葉に、なぜか心の奥底からふつふつと湧き上がるものがある。
「だから、もう終わりにしよう。こんな関係は」
「………や」
「え?」
それは、アリスの声の大きさによってわかること。
「嫌よ、嫌! やっと、やっと二人で想いあえたのに! やっと、やっと……嫌、嫌よ!」
そこにはすでに涙を瞳に浮かばせているアリスの姿。
普段見せない弱さがそこにあった。
ああ、やはり、私は。
それでも――。
「アリス……」
魔理沙は、アリスに一言。
終わりを告げる、言葉を紡ぐ。
「多分、私が持っていた感情は、アリスのものとは違うんだ」
瞬間、アリスの「世界」と「日常」は目の色を変えた。
こみ上げる。
気持ちが、
気持ちが、
気持ちが。
「だから、怒っているのなら気が済むまで殴ればいい。それで、関係が断ち切れるなら」
魔理沙は、俯いている。
「もう森の中でも会わないようにしよう。もし会ってしまったのなら、関係ないように通り過ぎて欲しい」
アリスは立ち上がり、魔理沙を見下げている。
悲しい?
寂しい?
また一人になるの?
また、私は一人なの?
友達であり親友であり。愛する人。
私を一人にする気?
「………そう」
結局口から漏れた言葉は、これだけで、
「風邪とかひかないように、元気でね………」
ザクザクと雪を踏み鳴らし、雪道を駆けていくアリスを一人、魔理沙は見送る。
「……やっぱり、いつまで経っても」
独り言を呟くと、なぜか目元がにじむ。
ああ、私は、今すごく、
君に謝りたい。
「今のは冗談だったんだ」と、
そういったら君はどんな顔をして怒るだろうか。
そして、どんな顔をして許してくれるだろうか。
「もう、いつもそうなんだから。次ぎやったらぶん殴るどころじゃないけど、今回は許してあげるわ」
そう、言ってくれるだろうか。
ああ、今ならまだ間に合う。
後姿を追いかけて、後ろから抱きついてやれることもできる。
今なら、
今ならば。
でも、できない。
それが、私の出した答え。
「アリス――」
「――私を、嫌いになってくれ」
帽子から少しだけ見える肌に、
一つ、涙の筋が光る。
過度な期待はしないでください。
それでもいいというかたは、どうぞ。
日常はその人その人によって違ってくる。
その日常を楽しむものもあれば、「平凡だ」と面白くもなさそうに毎日を生き続けるものもいる。
この話は、そんな、ある二人の日常を描いたものである。
日常とはなんだろうか、
「平凡」 「退屈」
その言葉しか浮かばない人物こそ、本当の日常にたどりつけていないのかもしれない。
―――雪の日に、
ザクザクと雪の音を鳴らして歩く二つの影。
一つは白黒の衣装にトンガリ帽子。
もう一つは人形を傍らに飛ばせて、その白黒の手を握っている少女。
どこからどう見ても、恋人同士に近い形で二人は寄り添っている。
こうやって、二人で肩を並べて、手を握り合って歩くのが、彼女たちの「日常」だったのだ。
そう、「だった」
「なあ、アリス」
傍らの白黒がアリスという少女を呼ぶ。
「ん?」
その少女の頬はほんのり赤く染まっていて、それは寒さのせいだけではないことが伺えた。返した言葉こそそっけないものだが、内心は嬉しいに違いない。と、白黒の――霧雨魔理沙は思った。
「……少し、座って話でもしよう」
そのいつもとは違う声色に、アリスは驚く。
「うん、まあ、いいけど」
驚いて、はっきりとした返事ができなくなる。
「じゃあ、この辺でいいや」
雪がかぶって岩肌が見えないところを指差して、魔理沙は手で雪を払い、そこに座る。
アリスも、誘われたことによりその隣に座った。
「どうしたのよ、いきなり」
アリスが先に口を開く。
「魔理沙から誘うなんてめったにないじゃない」
「あー……うん。まあ、な。たまにはこうやって自分から誘うのも悪くはないと思って」
アリスはその言葉にますます不信感を募らせた。
どうも様子がおかしい。
アリスの知っている魔理沙は、強引で不真面目で発する言葉にどうしても疑いしか残らなくて――でも、
でも、こんなにも憂いを帯びた顔は見せたことがなかったはずだ。
「………………」
「………魔理沙?」
返事は帰ってくることがない。
魔理沙はただ、地面に積もった雪を見つめて、言葉を捜しているようにも見えるし――何かを決意したようにも見えた。
そして、そのときは訪れる。
日常は、一言で、ガラリと世界を変えることができる。
「アリス……」
そして、魔理沙はもう一言、
「もう、終わりにしよう……?」
「日常」は「そうでないもの」に切り替わった。
それは、あっけなく、もろく、
崩れていった。
「どういう、意味よ……」
声が震えて小さくしか出せない。こんな質問をしたとしても、自分の心の中でわかっている答えが返ってくる。
そんなこと、わかっている。
わかっているからこそ、「もしかしたら」という希望を一つ見つけ出すのだ。
それが、崩れるということも、知っているのに。
「そのままの、意味だ」
魔理沙は、冷淡な声でその質問に答える。
「冗談でもそんなこと言わないでって――」
「冗談じゃない」
その一言だけで、場の空気は切り替わった。
「…………………」
「…………………」
「………………ねえ」
ポツリとそう漏らしたのは、アリスだった。
「何でいきなり、そんなこと言い出すのよ……?」
「……私がもう、いいと思ったからだ」
帽子のつばを軽く下げて、魔理沙が言う。
「この二つの季節を通り越すときに思ったんだ。もう十分だって」
魔理沙の一つ一つの言葉に、なぜか心の奥底からふつふつと湧き上がるものがある。
「だから、もう終わりにしよう。こんな関係は」
「………や」
「え?」
それは、アリスの声の大きさによってわかること。
「嫌よ、嫌! やっと、やっと二人で想いあえたのに! やっと、やっと……嫌、嫌よ!」
そこにはすでに涙を瞳に浮かばせているアリスの姿。
普段見せない弱さがそこにあった。
ああ、やはり、私は。
それでも――。
「アリス……」
魔理沙は、アリスに一言。
終わりを告げる、言葉を紡ぐ。
「多分、私が持っていた感情は、アリスのものとは違うんだ」
瞬間、アリスの「世界」と「日常」は目の色を変えた。
こみ上げる。
気持ちが、
気持ちが、
気持ちが。
「だから、怒っているのなら気が済むまで殴ればいい。それで、関係が断ち切れるなら」
魔理沙は、俯いている。
「もう森の中でも会わないようにしよう。もし会ってしまったのなら、関係ないように通り過ぎて欲しい」
アリスは立ち上がり、魔理沙を見下げている。
悲しい?
寂しい?
また一人になるの?
また、私は一人なの?
友達であり親友であり。愛する人。
私を一人にする気?
「………そう」
結局口から漏れた言葉は、これだけで、
「風邪とかひかないように、元気でね………」
ザクザクと雪を踏み鳴らし、雪道を駆けていくアリスを一人、魔理沙は見送る。
「……やっぱり、いつまで経っても」
独り言を呟くと、なぜか目元がにじむ。
ああ、私は、今すごく、
君に謝りたい。
「今のは冗談だったんだ」と、
そういったら君はどんな顔をして怒るだろうか。
そして、どんな顔をして許してくれるだろうか。
「もう、いつもそうなんだから。次ぎやったらぶん殴るどころじゃないけど、今回は許してあげるわ」
そう、言ってくれるだろうか。
ああ、今ならまだ間に合う。
後姿を追いかけて、後ろから抱きついてやれることもできる。
今なら、
今ならば。
でも、できない。
それが、私の出した答え。
「アリス――」
「――私を、嫌いになってくれ」
帽子から少しだけ見える肌に、
一つ、涙の筋が光る。
続きを待ってます。
まぁ冒頭だからって意味もあるのかもしれませんが