東風谷 早苗は困惑していた。
もう遠い昔のような記憶、幻想郷に来る前のワンシーンが脳裏を過ぎる。
それは日常何の変哲もない風景、神奈子と諏訪子との三人で食卓を囲んでいたときの事だった。
その日余程嬉しいことがあったのか、食事中だというのに早苗はついつい話に夢中になってしまい、神様二人に向けて熱弁をふるっていた。
誰がどう見たってお行儀がよろしくない、しかしまだ垢抜けていない早苗はその事実に気が付かなかったのだ。
見かねた諏訪子が注意をしてやろうと咀嚼する口を加速したとき、突然神奈子が立ち上がった。
そして神奈子は、口いっぱいに白米を頬張ったまま言ったのだ。
「食べながらしゃべるんじゃむぁい!」
と。
今早苗の目の前にある光景は、おおよそそのシーンと変わりがなかった。
守矢神社の境内を掃除していた早苗の目の前に突然現れたその人物は、額を石畳に擦りつけながら言ったのだ。
「お願いします……何でもするから、私にカリスマを取り戻して……!」
壊れたラジカセのように同じ台詞を繰り返しながら、早苗にとって初対面の吸血鬼は土下座を続けた。
なぜ突然吸血鬼が神社に現れたのか、一体何を言っているのか早苗には何一つわからなかったが、それでも一つだけ予測がつくことがあった。
また面倒くさいことになるんだろうなぁ、と。
「うぅ、美味しい……久しぶりのまともな食事だわ……」
とりあえず事情を聞いてやることにした早苗は、レミリアと名乗る少女を母屋へとあげてやった。
しきりに腹の虫が鳴いていたようなので夕食の残りの味噌汁と白飯を振る舞うと、レミリアはむせび泣きながらそれにがっついた。
「あの、失礼ですが……レミリアさんは貧乏なんですか?」
「違うわよ! 貧乏なんじゃなくて、従者がまともな食事を作ってくれないの。
咲夜ったらホントに嫌がらせみたいな料理ばっかり作るんだから……『にんにくのガーリック炒め』が毎日食卓に並ぶのよ」
それは私でも食べたくない。
早苗は素直にレミリアに同情した。
「それで、そのレミリアさんがどうしてこんな辺鄙な所まで来られたんでしょうか」
「さっき言ったじゃない。私にカリスマを取り戻すためよ!」
「いえ、そうではなくて……何故他の所ではなく、この守矢神社を選んだのかなと」
「ああ……そういうことね」
お椀の端にこびりついたネギを器用に箸で口に運んでいたレミリアは、ようやく落ち着いた様子を見せた。
「私の能力が言ったのよ。この窮地を脱する手掛かりは守矢の神社にある、ってね」
「能力?」
「そう、私の持つ『運命を操る程度の能力』よ。
操ると言っても好き勝手に運命を変えられるわけじゃないんだけどね……
無限の可能性から一つを選び出すってだけ、っていう何とも融通の利かない能力なんだけど。
今回はこの選択が最良と判断したからここまで来たの」
「つまり……レミリアさんは13または14歳ということですか?」
「誰が中二よッ!!」
レミリアがちゃぶ台に拳を叩き付けると、その衝撃で丸底の鍋が大きく傾く。
そこから豆腐という名の船を浮かべた味噌汁が流れ出し、香り高い運河を開通させた。
「ひっ!?」
「……何ですか、今度は?」
「み、見ればわかるでしょ。流水よ流水! 吸血鬼って種族は流れる水にベラボーに弱いのよ!」
「不便ですねえ」
流れる味噌汁を目の前に慌てふためくレミリアの様子は、早苗からしてもカリスマのカの字も感じられなかった。
「しかしいくら守矢の神社といえども、吸血鬼のような妖怪の悪巧みに手を貸すわけにはいきません。
申し訳ありませんが、今日のところはお引き取り願えませんか」
「悪巧みですって!? どこの口がそんなことを言い出すのよ!!
私はただ生き延びるためにカリスマを取り戻したいだけなのに……!」
今にも泣き出しそうな顔をしながら、レミリアが早苗に寄りすがる。
とその時、唐突にレミリアの後ろから第三者の声が掛かった。
「まぁそう固いこと言いなさんな、早苗」
「八坂様」
突然畳の間に表れたオンバシラの声に、レミリアは過剰なほどびくっと身を竦めた。
まるで小動物である。
「ここは今まで居た世界とは違うんだ、何も助けるのが人間ばかりになるとは限らんだろう。
困ってるみたいだから相談に乗ってやればいいじゃないか。なあ諏訪子?」
「うんうん、神奈子の言うとーり」
いつの間にやら今度は早苗の後ろで諏訪子が胡座をかいている。
「八坂様、洩矢様……本当にいいんですか?」
「私らは構わんさ。どうせ暇だったんだ」
「そうよ、賑やかになっていいじゃない」
二人の顔からは『面白そうだし』という共通した意思が読み取れたが、早苗は特にそれを咎めなかった。
早苗がレミリアを追い返そうとしたのはあくまでも巫女としての体裁を見せただけ、
いくら相手が吸血鬼といえども困っている人物を放っておくのは早苗の性に合わないのだ。
「分かりました。八坂様と洩矢様がそうおっしゃるなら」
「やった! それじゃ早速明日からよろしく頼むわよ。今日は遅いからもう眠たいわ」
「え? でも吸血鬼って夜は眠らないんじゃ……」
「だって夜に起きてても他の奴らが寝てるからつまんないんだもん。私は昼行性の珍しい吸血鬼なのよ!
そんなことよりベッドはどこどこ?」
「……布団はこっちの部屋に敷いてあります。余分がないので私と一緒に寝ましょうか」
途端にうきうきとした様子を見せるレミリアとは対照的に、早苗は小さくため息をついた。
そういう行動がカリスマの欠落を招いているという事実に気がついていないのだろうか?
「ねえねえ、あんたなんていう名前なの?」
「東風谷早苗と申します。早苗、と呼んでください」
「わかったわ早苗。ほら! 早くこっちに来てよ」
レミリアは帽子と紅色のワンピースを脱ぐと、手慣れた様子で早苗の布団に潜り込んだ。
西洋の妖怪が雑魚寝に慣れているという辺りにも何か違和感がある。
早苗も巫女服を脱いで寝巻きに着替え、レミリアの邪魔にならないように半分だけ布団を被った。
「それでは、お休みなさい」
「うん、おやすみ。ああ、やっぱり人肌っていい……わ……」
よほど疲れがたまっていたのか、レミリアは布団に入ったばかりの早苗にぴったりとくっついてすぐに寝入ってしまった。
それはまるで母親に寄り添う子供のようで、悪魔だというのに天使のような表情をしている。
早苗はその小さな頭を胸元に抱き寄せた。
「(とても誰しもが恐れるような大妖怪には見えませんけどね……)」
早苗の胸元に額を擦りつけながら、レミリアは猫のようにごろごろと喉を鳴らしている。
どうやら早速懐かれてしまったらしい。
その寝顔がなんだか愛らしくなって、早苗はレミリアを抱き抱えるようにして腕を背中に回した。
可愛らしい口元でそっと耳をすませてみると、うわごとのようなレミリアの呟きが聞こえてくる。
「ふふ……カリスマある私が……仮り住まい……」
早苗は何も聞かなかったことにして、レミリアに背を向けてから眠りについた。
翌朝。
銘々目を覚ました四人は、今後の方針を決める会議を執り行うため昨晩同様にちゃぶ台を囲んだ。
朝っぱらだと言うのに襖を閉め切って明かりを点けているのは、無論他でもないレミリアの為である。
「さて……それじゃもう一度現状を把握しておこうか」
上座に座っている神奈子が音頭を取る。
レミリアは誰に言われるでもなく、襖の近くのいわゆる下座にちょこんと座していた。習性というものは恐ろしい。
「私は紅魔館の主レミリア・スカーレット。……のはずなんだけど、最近館のみんながすごく冷たいの。
私の右腕である咲夜はともかくとして、門番にまで舐められる始末なのよ」
「ふーん、具体的にはどんなことされるの?」
「まだ私がベッドで寝てるのに豪快にシーツを取り替えたり、紅茶に砂糖じゃなくて大量に塩を投与したり、
頼んでもないのに玄関ロビーの天井をステンドグラスにしたり、強烈な西日が差し込むような窓を新しく作ってみたり……
揚げ句の果てには館内で流しソーメンを始めるのよ。私を追い出そうとしてるとしか思えないわ!」
早苗は昨晩目にした味噌汁におののく吸血鬼の姿を思い出した。
企画者が涼を得ると共に厄介払いをしたのならばなかなかの策士である。
「ふむ、つまりお前さんはカリスマとやらが無くなったせいでそういう目に遭ってると言いたい訳だな?」
「その通りよ! カリスマってのは吸血鬼としてのステータスなの。それさえ元通りになれば、あとは野となれ山となれなんだけど」
「……なんか違わない?」
「とにかくおっしゃりたいことはよく分かりました。それで、私たちは一体何をすればいいんでしょう?」
早苗があまりに尤もな意見を述べる。
しかし、それに明確な返答ができる者は居なかった。
「確かにねぇ、お前さんのカリスマを取り戻すにしても何をすればいいのやら。
ところでお前さんはどうして自分のカリスマが無くなったと思ったんだい?」
「今言ったばっかりじゃない。咲夜たちが舐めた真似をするからよ!」
「それじゃあ、そういうことをされた時にガツンと言ってやればよかったんじゃないか?」
「う、うるさいわね……こっちにも色々と事情があるのよ!
あんたたちは咲夜の恐ろしさを何一つ分かってないわ。あの娘ったら、本当に私の苦手なものばっかり持ってくるんだから……!」
心底悔しそうな表情を見せながら、レミリアはどこかから取り出したハンカチを噛んだ。
それがなんだか見覚えのある生地だったので早苗は眉をひそめた。
というか早苗のハンカチだった。
「はいはーい」
「……どうぞ、洩矢様」
「思うんだけどさ、レミリアがヘタレなのは弱点が多すぎるせいじゃないかな。
あれも怖いこれも怖いって言ってるようじゃ、敬われるもんも敬われないよ」
「成る程、一理あるな」
諏訪子の意見に神奈子が賛同する。
「レミリア、お前自分の弱点あげてみ」
「えっと……雨の日は出歩けない、日光の下だと灰になっちゃう、流れる水に近付けない、炒った大豆に弱い、
低血圧で朝なかなか起きれない、ピーマン……ざっとこれくらいかしら」
「ううん、穴だらけだねぇ」
「最後の二つは違うのでは……」
「そんなことだから部下に舐められるんじゃないかい?
弱点突かれ放題じゃないか。現に今だって館中をソーメンが駆け巡ってるんだろう?」
「そ、それはそうだけど……でも直しようがないものもあるわよ。ピーマンなんて食べられるわけないわ」
早苗はもう突っ込まなかった。
「そんじゃ、ここは発想の逆転をするしかないね。その短所を補うような長所を探せばいいんだよ」
「そいつは妙案だ。どうしたい、今日の諏訪子はなかなか冴えてるな」
「でも、長所なんてどうやって探すんですか? 本人に聞く……のは気が引けるんですけど」
早苗がちらりと横目をやると、目をきらきらと輝かせたレミリアの顔が映る。
自分の長所にそんなに自信があるのだろうか。
「あら、私に聞くのがイヤなら他のやつに聞いてもらっても構わないわよ?
なんなら私のすごさを余すことなく知ってるやつのところに案内してあげてもいいけど」
「だってさ。どうする? 早苗」
「どうして私に振るんですか……」
なんだかとてつもなく嫌な予感がして、早苗はげんなりとした表情を見せた。
しかし何一つ手がかりがないこの現状では首を縦に振るほかなかった。
「仕方がありませんね。確かにこのままじっとしていても進展がなさそうですから……
それに他人から見たレミリアさんの評価を知るのも悪くないかもしれません」
「よし、そうとなったら決まりだな」
「うんうん。せっかくの行楽日和なんだし、散歩も兼ねていろいろ当たってみようよ!」
諏訪子はすっくと立ち上がり、両手で勢いよく襖を開け放った。
真夏を過ぎた柔らかい日差しが、あまり広くはない部屋全体に降り注ぐ。
……レミリアにも。
「あ」
「ふふ……最高に灰ってやつだわ……」
「レミリアーーーー!!」
「……はぁ」
眩しいくらいの笑顔を浮かべたレミリアの姿が次第に薄くなっていく。
慌てふためく神奈子と諏訪子を尻目に、早苗は一人冷静に襖を閉め直した。
まだ昼前だというのに薄暗い、魔力を帯びた陰鬱な森。
日差しがあまり届かないことに加えてキノコやらなんやらの胞子がそこら中を舞っているため、視界はそれこそ一寸先しか見えない。
そんな人間にとって最悪の環境である魔法の森を、早苗は慣れない手つきで日傘を差しながら歩いていた。
「あの、レミリア……さん」
「堅苦しい呼び方しないで。お嬢様でいいわよ」
「…………けほっ」
もはや今日何度目かわからない溜め息をつこうとして、早苗は粉っぽい空気を吸い込み咳き込んだ。
諏訪子の提案通り情報収集に行くことが決まったとき、誰がレミリアと共に行くかが問題になった。
当初は四人でレミリアの案内に従うつもりだったが、せっかく人数がいるのだから散り散りになったほうが効率がいいだろうという話になったのだ。
神奈子も諏訪子も誰と一緒でも構わないという姿勢を見せていたが、早苗としては無礼極まりないレミリアを神様と組ませたくはなかった。
つまるところ健気な早苗は、率先して貧乏クジを引くことに決めたのである。
「……本当にこんな所に誰かいるんですか?」
「いるいる。いちばん私を尊敬してくれてる奴がね」
厳しい残暑と魔法の森特有の湿度の高さのせいで、早苗はびっしょりと汗を掻いていた。
滴る汗を拭おうにも片手が塞がっており、窮屈な動きしかままならない。
成る程従者というものはなかなかに大変である。
「あ、ほらあそこ。着いたわよ」
「ああ、確かに建物が……え」
ようやく抜けた雑木林の先には、確かに何かしらの建造物があった。
息苦しさから開放され、早苗がほっと一息をつく。
が、その安息も一瞬のことだった。
「何ですか、これは……」
『こうりんどう』と読める看板をつけたその建物は、古めかしい様式のわりに小奇麗というアンバランスな家屋だった。
しかし早苗が気になったのは建物の外観ではない。
入り口の周りに置いてあるオプションの既視感だ。
通じているはずもないであろう公衆電話。
早苗がまだ小さい頃に食べていたヨーグルトの広告。
立派としか形容のしようがない瀬戸物のタヌキ。
何の脈絡もなく地面に突き刺さっている交通標識。
早苗の知っている限りでは、これらは全て幻想郷ではなく外の世界の産物である。
それが何故こんな森の片隅で大集合しているのか、というか集めようとする人物の神経が信じられない。
嫌な予感はますます強まるばかりで、早苗は不安げに口を開いた。
「あの……ここって何屋さんなんですか……?」
「気分屋よ」
見当外れの返答とともに早苗を置き去りにしながら、レミリアは無造作に扉を開いた。
「邪魔するわよー」
「おやおや、今日もまた来たのか。ん、その後ろの娘は誰だい?」
幻想郷に来てから久しく聞いていなかった男性の声を聞いて、早苗は少しばかり緊張した。
やや暗い店内で目を凝らすと、カウンターの向こう側に眼鏡をかけた店主の姿が見える。
「これはこれは。可愛らしいお嬢さんだね」
「いえ、そんな……」
香霖堂の店主、森近霖之助が早苗を出迎える。
聞く人が聞けば思い切りキザな台詞だったが、早苗はそんなことよりも思ったよりまともな人物が出迎えてくれたことに心から安心していた。
「で、この娘がどうかしたのかな?」
「いやぁね、この娘がどうしても私の素晴らしさを知りたいっていうからさぁ。一番詳しそうなあんたのとこに来たってわけよ」
早苗の握り締めている日傘の柄がみしりと悲鳴をあげた。
「成る程、そういうお客さんか。確かにそれなら僕が適任だ」
「……それじゃあ、お願いします」
早苗は込み上げる怒りを噛み殺しながら、努めて冷静に応対した。
『そういうお客さん』という表現をするということは、この店主は早苗にはわからないレミリアの意図を十分に理解しているのだろう。
正直言ってこの二人に接点があるようには見えなかったが、今までの口ぶりを聞く限りそれは杞憂に終わりそうだ。
「君はレミリアのことはどれくらい知っているのかな?」
「いえ、まだ何も知らないんです。何しろ昨日会ったばかりですから」
「ほほう、そうかい。それなら一度彼女の動きを見せてもらったほうが話が早いような気もするが……」
「動き……ですか?」
「そうだよ。百聞は一見に如かず、ってね。レミリア」
「もう、しょうがないわねぇ……」
うざったいくらいに勿体つけた口振りで、レミリアは霖之助と奥の部屋へと引っ込んでいった。
何の話をしているのかよくわからなかったが、早苗もとりあえず二人の後へとついていく。
カウンターの奥の暖簾をくぐると、守矢神社と同じような畳の部屋が見えてくる。
そしてそこには、またしてもなにやら見覚えのある物体が設置されていた。
「……あの、これってもしかして」
「おや、知っているのかな? これは外の世界から偶然入ってきたゲーム機だよ」
早苗の目が死んだ。
「普通このゲームをするにはこっちのクラシック・コントローラを使うプレイヤーが多いんだけどね、
レミリアはこのリモコンタイプのコントローラを使いこなす数少ない強者なんだ。
しかも彼女はまだこのゲームを始めて一月ほどだというのに、僕がずっと苦杯を舐めさせられてきた蓬莱山輝夜からも勝ち星を重ねている。
本当に、レミリアのコントローラ捌きには恐れ入るばかりだよ。君もゲーマーを目指すのなら、彼女をお手本にするといい」
「ふっふっふ、それもこれも吸血鬼としての反射神経と指先の瞬発力があってこそ成せる業なのよ。
覚えておきなさい早苗、『よこもちのレミリア』とはこの私のことよ!」
早苗の握り締めている日傘の柄がばきりと断末魔をあげた。
「……レミリアさん」
「だからお嬢様でいいってば。何よ?」
「グーとパーどっちがいいですか?」
「え……」
底冷えするような早苗の声が、あくまでも優しくレミリアの鼓膜に響く。
ようやくただならぬ雰囲気を察知したレミリアは、ぎくしゃくとした動きで早苗のほうを振り返った。
「えと、あの…………どっちもイヤ」
「分かりました。チョキですね」
言うが早いか、早苗の人差し指と中指が寸分の狂いもなくずぶりとレミリアの両目を捉えた。
「いやあああああああああああ!! 目が!! 目があああぁぁぁ」
畳を転げ回るレミリアを踏み付けながら、早苗は唖然とする霖之助のほうにゆらりと向き直った。
「い、いや……すまない。レミリアが連れて来たお客さんだから、僕はてっきり君も同類なのかと」
「いえいえ、お気になさらず。あなたには何の非もありませんから。
そんなことより店主さん、何か大きな袋のようなものはありませんか?」
「あ、ああ。透明なゴミ袋がそこに……」
「一枚拝借しますね。ありがとうございます」
早苗は悶えるレミリアにビニール袋を被せると、犬のフンを掴む要領でそれを裏返した。
そして袋の口を思い切り縛ると、そのままずるずると出口へと向かっていく。
「いろいろとお世話になりました。二度と来ませんね」
「……お元気で」
にっこりとした笑みを霖之助に向けたのち、早苗は半開きのドアを蹴倒し幻想郷の空へと飛び立っていった。
後ろ手に持った袋の中からは、灰になりつつあるレミリアの悲鳴が聞こえてくる。
やがてそれさえも聞こえなくなると、店内にはすぐに静寂が戻ってきたのだった。
「どうでしたか八坂様洩矢様、そちらは何か収穫がありましたか?」
「うん、まあいろいろわかったことはあるんだけど……なんでレミリアはそんなにグロッキーなんだい」
「アレは放っておいてください。して八坂様、分かったこととは?」
程なくして守谷神社に戻ってきた早苗は、自分よりも少し遅く戻ってきた神様二人と何食わぬ顔でお茶を啜っていた。
部屋の隅っこではしゃがみガードの体勢で目元を覆ったレミリアが肩をぶるぶると震わせている。
早苗がビニールを畳む音ががさがさと鳴るたびにその体が一際小さくなった。
「まあ、私たちとレミリアの共通の知り合いなんて知れてるからね。二人で博麗神社に行ってさりげなくレミリアの噂を聞いてみたよ」
「ど……どうだったの!? 私の評価は!」
ようやくレミリアが顔を上げ、神奈子に向けて熱い視線を注ぐ。
その隣にいる早苗とは決して目を合わせようとしなかった。
「ううん、期待してるとこを見るとなんか申し訳ないんだけどね……
霊夢も魔理沙も、少なくともお前さんを怖れているような様子はなかったな」
「どっちかというと気の知れた友達、って感じだったよね」
「そ、そんな……」
レミリアは両手を畳についてがっくりと頭をうなだれた。
友人と思われているのなら悪くはない評価なのだろうが、確かに畏怖の対象であるカリスマとはかけ離れている。
「まあそうでしょうね。昼間っから根暗な友人とテレビゲームに勤しんでるようでは……」
「私は吸血鬼だから基本的に暗いのが好きなの! あんたたちみたいな陽の当たる連中とは違うのよ!」
「いやいやレミリア。問題なのは性格ばっかりじゃないみたいだぞ」
「え、うそ……」
「霊夢も魔理沙も言ってたよ、レミリアはちっちゃくて可愛いから全然怖くなんかないって。
魔理沙なんか『あいつは将来きっといい嫁さんになる!』なんて豪語してたよ」
ちなみに霊夢と魔理沙にはかなりの量の酒が入っていた。
「そんなの嘘よ!! それに私の他にも見た目に威厳がなくたって従者を従えてるやつだっているもん!!」
「やれやれ、どうしてそんなことが言えるのかねえ。ちょいと早苗、稗田の子にもらったアレ持ってきておくれよ」
「あ、はい。幻想郷縁起のことですね」
「見なよ、これを。西行寺幽々子に八意永琳、それに八雲紫……お前さんの言う仲間ってのは、少なくともみんな大人の雰囲気を持ってるじゃないか。
それがなんだいあんたってやつは、まるっきりガキんちょでカリスマの欠片もないだろう。そりゃ少女を通り越して幼女だよ」
「何よ何よ何よ! どっちも大した違いなんてないでしょ! 少女なんて幼女に毛が生えたようなもんじゃない!!」
「え? でも少女って毛はまd」
「エクスパンデッド・オンバシラアアァァァァーーーー!!!!」
諏訪子は星になった。
「うーん、こうして見てみるとお前さんの二つ名も何とも微妙だな。『永遠に幼い紅き月』って冷静に考えてわけがわからんし。
なんで幼いことを痛烈にアピールしてるのやら」
「そうですね。あ、ほらさっきの薬師さんなんか格好いいですよ、『月の頭脳』ですって」
「はっはっは、同じ月でも大違いだな」
「極め付けはこのネーミングセンスですね。
『不夜城レッド』に『レミリアストーカー』って……十六夜咲夜って名前は本当にあなたが付けたんですか?」
「つまりその頃からカリスマが暴落し始めてたんだろうよ。
でも安心しろレミリア、これ以上お前さんのカリスマが下がるってことはないはずだから。おっと、まだマイナスって考え方があったかな?」
「既に大分マイナスな気もしますけどね」
「うううぅぅ……」
幻想郷縁起に目を通しながら、早苗と神奈子が好き放題に罵言を放つ。
その間レミリアは目に涙を浮かべることしかできなかった。
「いっそのこともう根本から全部考え直したほうがいいんじゃないかねえ。
こう言っちゃ悪いけど紅色ってのもなんか分かりにくいんだよな、イメージが湧きにくいというか……
普通にレッドの赤じゃ駄目なのかい?」
「駄目に決まってるでしょ! それじゃ紅魔館が赤魔館になっちゃうじゃない! 俗っぽいにも程があるわよ」
「それじゃもうピンクでいいじゃんピンクで。面白いじゃないか、最後のスペルが『桃色の幻想郷』」
「そんな卑猥なスペルカードが気軽に宣言できるかあああッ!!」
ついにことごとく馬鹿にされ続けたレミリアの堪忍袋の尾が切れる。
その怒りが緋想天に達すると同時に、全身から紅く光る十字架が迸った。
「おお! それだよそれ。今のいい感じだったぞ」
「確かに。カリスマの片鱗は見えましたね」
「え、あ、そう……かな?」
早苗と神奈子にもてはやされて、レミリアはあっさりと機嫌を直した。
「なんだ、お前さんもやればできるんじゃないか。あれこれ画策してたのが馬鹿みたいだよ」
「ほんとほんと。今みたいな姿を見せればきっとあんたの部下も考えを改めるって」
「あら、もう復活なされたんですか洩矢様」
神奈子によって遥か彼方に飛ばされたはずの諏訪子は、いつの間にか部屋へ戻ってきてケロっとした姿を見せていた。
カエルだけに。
「よーし、そんじゃ早速レミリアの家に行こうじゃないか。今の感覚を忘れないうちにな!」
「ええ、ちょ、ちょっと早くない? まだ心の準備ができてないんだけど……」
「八坂様、ビニール袋使いますか?」
「自分で飛ぶ! 自分で飛ぶから!!」
半ば脅しのような早苗の発言を聞いて、柄のない日傘の骨を掴んだレミリアが転げるようにして畳の間を飛び出す。
早苗もビニール袋をポケットにしまうと、レミリアを追う神奈子と諏訪子の後から再び空へと飛び立った。
四人がようやく紅魔館に辿り着いた頃には、もうすっかり太陽が姿を隠してしまっていた。
その原因はあらゆる意味で落ち着きのないレミリアが途中で日傘を大破させてしまい、陽が落ちるのを待つ必要があったためである。
その間早苗は香霖堂で得た情報を神奈子と諏訪子に話したり、動転した様子のレミリアを落ち着けるためにビニール袋をがさがさ言わせることぐらいしかすることがなかった。
「あれが紅魔館ですか。随分とまた毒々しい配色ですね」
「ふぅん、なかなかご立派なお屋敷じゃないか」
「ちょっと! なんで私がまたこういう扱いなのよ」
とりあえずまずは様子を見てみたいというレミリアの意見、もとい懇願によって、早苗たちはこっそりと紅魔館に近付くことにした。
だだっ広い門前には視界を遮るものが何一つないため、四人は早苗が作り出した簡易な結界によって姿を隠している。
しゃがみこんだまま足先の動きだけで前進をする早苗を中心に、その両肩を持って中腰になった神奈子、匍匐前進の要領で早苗の股下に潜り込んでいる諏訪子、
そしてなぜか早苗の背中と神奈子の胸の間に挟まって進行方向に背を向けているレミリア、というなんとも窮屈な陣形が構成されていた。
「……あの、今更ですがこの結界一つに四人は無理があるんですけど」
「どこぞのスネちゃまみたいなことを言わないでおくれよ。仕方がないだろう、他に方法がないんだから」
「そうよ。うちの門番は敏感だから、少しでも気配が漏れたら一発でアウトよ!」
「いや、でもその門番って……どれなのさ」
「へ?」
早苗の脚の間から顔を出している諏訪子の視線の先には、確かに複数の人影があった。
青い衣に身を包んだ妖精と、中華風の出で立ちをした女性、それに金髪を持った少女の姿が確認できる。
レミリアもブリッジのような姿勢になりつつ早苗の頭の隣から顔を覗かせた。
「あれ? なんであのバカ二人がいるのかしら……美鈴は何をやってるのよ」
「めいりん、ということはあの中華風の方が門番なんですね」
美鈴と呼ばれたその女性は、何やら苦しそうな様子で例のソーメンを食しているところだった。
風流というよりも場違いな竹のレールからはとめどなく水とソーメンが流れており、既にザルの中にはソーメンがこんもりと山積みになっている。
取り巻きの二人はどうやらそのおすそ分けを貰っているところらしい。
「ここからじゃ声が聞き取りにくいな。早苗、風」
「はい」
神奈子の号令に従って、あまりにも安い一陣の神風が吹く。
その風に乗せられた美鈴たちの声が柔らかに早苗たちを撫でた。
『ほらほら、チルノちゃんもルーミアちゃんも遠慮なく食べてやってください。とても一人じゃ食べ切れませんから……うっぷ』
『お皿は? お皿はどこよ!』
『違うよチルノちゃん、この出口で待ってればいいんだよ。ほら、こうやって口を開いてればソーメンがごぼごぼごぼごぼ』
「……何をやってるんだ、あいつらは」
マーライオンと化したルーミアがだばだばとソーメンを垂れ流しにしている。汚い。
『駄目よ、美鈴』
『ひえっ、咲夜さん!?』
その時、銀髪の女性が唐突に姿を現した。
同時に早苗に密着しているレミリアの身体がびくっと強張る。
どうやらあれが今回の親玉らしい。
『私は美鈴にこのソーメンを食べてほしいのよ。チルノもルーミアも今回はお呼びじゃないわ』
『で、でも咲夜さん……この量を一人で食べ切るのは無理が……』
『あら、いつから美鈴はそんなことが言える立場になったのかしら? 食べ物を粗末にするなんて言語道断よ。
全部食べ切るまでは一歩もそこを動いちゃダメだからね』
『そ、そんなぁ……』
ソーメン流すのやめればいいじゃんという一同の心の突っ込みもむなしく、咲夜が再び姿を消す。
何の意味もない無理難題を押し付けられた美鈴が途方に暮れているであろうことは、哀愁漂う背中越しからイヤというほど伝わってきた。
「あれよ、あれ……私はあの理不尽な拷問に耐え切れなくなって逃げてきたのよ。
これで少しは分かったでしょう? 私の気持ちが!」
「……ありゃあ、ドSだな」
「ドさなえ」
「もぎますよ? 帽子の目」
咲夜が居なくなってからも、美鈴はずるずるとソーメンを啜っている。
よほどあのメイド長が怖いのだろう、端から見ている早苗たちにとっても美鈴に覇気がないことは一目瞭然だった。
「よしレミリア、行け! 門番が気落ちしてる今がチャンスだ」
「え、ちょ……ちょっと待って!! まだ心の準備ができてないわ!!」
「今さら何を躊躇してるんだい、さっき私たちに見せたくらいの威圧感がありゃ大丈夫だよ。
つべこべ言わずさっさと行きな……そらっ!」
「きゃあっ!」
神奈子によって強引に体を押し出され、レミリアは結界の中から砲丸よろしく撃ち出された。
その際に短いはずの足が思い切り早苗の後頭部を蹴り上げてしまったのはご愛嬌である。
『あーーっ! お嬢様!』
『ワ、ワタシオジョウサマチガウ、オジョウサマチガウ……』
逃げる間もなく美鈴に見つかってしまったレミリアは、やっぱりしゃがみガードの体勢で美鈴から必死に目を逸らしていた。
神奈子と諏訪子も遠巻きながら、固唾を飲んでその様子を見守っている。
早苗は大地と接吻をしていた。
『一体どこに行かれてたんですか……! 私はお嬢様のお帰りを心待ちにしていたんですよ』
『ワ、ワタシオジョウサマ……へ?』
「おや、なんだか予想外の展開だぞ」
「ううん、早苗がジャマでよく見えないよ」
諏訪子は倒れた早苗の股の下からもぞもぞと脱出して、神奈子の背中にちょこんと座り込んだ。
ちなみにレミリアの一撃のせいで早苗の結界はすでに影も形もなくなっている。
『お嬢様がいない間、紅魔館は本当に大変だったんですよ!』
『そ、そうよね……! やっぱり主である私がいないと』
『誰が代わりにいじめられてたと思ってるんですか! お嬢様にはちゃんと咲夜さんのサンドバックになってもらわないと困ります!』
「あー、そういうことか」
しゃがんだままのレミリアが器用にずっこけた。
『そのヘタレっぷりといい、リアクションの大きさといい、ウィークポイントの多さといい……
咲夜さんが思い切り弄れるのはお嬢様だけなんです! お嬢様はもう少しその辺りの自覚を持たないとダメですよ!』
『ぐぬぬぬぬ……』
「しかしこれはいい流れだぞ。もう少しだ」
「がんばれー! レミリア!」
レミリアの小さな背中がぷるぷると打ち震え始める。
これは神奈子と早苗が好き放題にレミリアを罵っていた時と同じ展開だ。
『……美鈴。この際だからはっきり言わせてもらうわ』
『へ?』
神奈子と諏訪子は緊張した面持ちで、二人に覆い被さられた早苗は打ち付けた鼻から流れる血を拭いながらレミリアを見守った。
きょとんとした表情をした美鈴の前でレミリアが右膝を折り、左の拳を地面に叩き付け、頭を前に突き出し――
『ホント……急に逃げ出したりしてすみませんでした』
滑らかな動きで華麗な土下座に移行した。
「なんじゃそりゃ!」
「金返せ!」
一応まだ隠れているつもりだった神奈子と諏訪子が思わず声を荒げる。
「なっ!? 誰ですかあなたたちは!」
「ええいレミリア、なんでお前はそんなに根性無しなんだ!」
「だ、だって怖いんだもん……」
「怖くもなんともないじゃん! どっちかと言えばツッコミ待ちだったよ今のは」
それなりに門番らしい反応を見せた美鈴を無視して、神奈子たちはぎゃあぎゃあと姦しく口論を続けている。
しばらくはそれを見つめていた早苗も、ようやく美鈴のそばへと歩み寄ってきた。
「何なんですかあれ? あなたもお仲間なんでしょうか」
「……残念ながら」
「うわ、なんだか鼻血が酷いことになってますけど……
あ、もしかしてあなたも咲夜さんと同じですか? やっぱりお嬢様は可愛いですからねぇ。あなたが興奮するのも無理はぐへぁ」
美鈴が言い終わるよりも早く、早苗の裏拳が美鈴を昏倒させた。
「八坂様洩矢様」
「おお、早苗。お前からもこのヘタレになんとか言ってやっておくれよ」
「どうもレミリアさんが虐げられているのは、カリスマのせいではないような気がします」
「ほほう、というと?」
「今そこで眠っている門番も言っていたように、ここの住人はレミリアさんを嫌っているというわけではなさそうです。
それなのにレミリアさんが酷い目に遭わされていたということは、何か他に一時的な要因があったのではないでしょうか」
「そ、そうよね! 私のカリスマが下がったせいじゃないよね!」
「まぁ元々あるとは思えませんし」
鋭く冷たい眼光と容赦のない言葉を浴びせられ、レミリアは石像のように硬直した。
メデューサ相手に水鏡の盾を持たないとは迂闊である。
「ふむ、それじゃレミリアに対する嫌がらせはカモフラージュに過ぎないと?」
「多少は不甲斐無いレミリアさんへの憤りが混じってはいるのかもしれませんが、真の目的はもっと別のところにあるような気がします。
今もこうしてソーメンが流れているのは、恐らくレミリアさんを紅魔館に近付けないためでしょう。
つまり、ここには何か隠していることがあるはずです」
「なるほど、名推理だ」
神奈子はうんうんと頷いてみせた。
「しかし問題はこの水だよ。私らはともかくこれじゃレミリアが館に入れん」
「問題ありません、私に考えがあります。レミリアさん」
「?」
名前を呼ばれたレミリアが素直に早苗の顔を見上げる。
早苗はその小さな頭にそっと手をやり、
「よいしょ」
ぶちぶちっ
「痛ったあ!?」
思い切り握力を込めてから勢いよく腕を引っ張った。
「なんだそりゃ、レミリアの髪の毛? そんなもんどうするんだい」
「こうするんですよ。……ちょいと、そこのお二人さん」
「へ? あたい?」
「ごぼごぼ?」
早苗は完全に存在を忘れかけられていたチルノとルーミアに手招きをすると、目線の高さを合わせるようにしてしゃがみ込んだ。
「二人ともソーメンが好きなんだね。そこのお姉ちゃんが寝ちゃったみたいだから、代わりにソーメンを食べてあげたらどう?」
「言われなくてもそのつもりよ! あたい知ってるんだから。これって夏のフウブツシってやつよね」
「そうそう、よく知ってるね。でも大変、さっきお水の中からこんなものが流れてきたみたいだよ」
「うわ、何それ……髪の毛? きもちわるっ! なんでそんなもん流すのよ!」
「きっとこの髪の毛の持ち主がね、あなたたちにソーメンを食べさせたくないからジャマをしたんじゃないかな?」
「そーなのかー」
「なにをー、こしゃくな! あたい抗議してくる!!」
チルノは早苗の手からレミリアの髪の毛を奪い取ると、ずんずんと館の入り口へと進んで行った。
それに妖精メイドが応対し、レミリアの髪の毛を見て血相を変える。
何もわかってない様子のチルノとルーミアを差し置いて、館内はにわかに慌しくなった。
「そうか、さっきの髪の毛で館のどっかにレミリアが戻ってきてると思い込ませたわけだな」
「ええ。これで水を流すどころじゃなくなるでしょう」
早苗の予想通り、それほど時間がたたないうちに竹のレールから水が消えた。
「今のうちです、行きましょう」
先陣を切って駆け出した早苗に続いて、神奈子たちもそれに倣う。
髪の毛を抜かれたレミリアは側頭部を抑えながら恨みがましい目で早苗を見ていた。
「本当だ、こんなに広いロビーだってのに誰もいないぞ。こりゃあ今がチャンスだ」
「みんな私の捜索に行ってるってわけね! うちのメイドたちが単純で良かったわ」
「でも、何か隠してるっていってもどこにあるんだろう?」
「よく考えてみてください洩矢様。水というものは高いところから低いところへと流れます」
「なるほどね、ということは――」
諏訪子がそう口を開きかけたとき、突然先頭を立つ早苗の足元にナイフが突き刺さった。
「ふぅん……阿呆ばかりかと思えばそうでもないみたいね」
「誰だっ!?」
いつの間にか広いホールの中央の空間に、両手にナイフを構えた十六夜咲夜が浮かんでいた。
そしてその周囲には同様のメイド服に身を包んだ妖精たちの姿が見える。
レミリアは咲夜の姿を見かけるなり、一目散に神奈子のスカートの影へと隠れてしまった。
「ちっ、黒幕さんのお出ましか」
「……メイドたちの姿が見えなかったのは、私たちをここまでおびき寄せるためだったんですね」
「その通りよ。今回の鼠は大勢みたいだから、まずは逃げ場を無くしてあげようかと思ってね」
「私たちは鼠なんかじゃないよ! 自分の主人を虐めてたようなやつに負けるもんか!」
「虐めていた、とは酷い言われ様ですわね。
あんたなんかに私の気持ちが分かるもんですか……! さぁ行くのよ! メイド部隊出動!」
「「「おー!」」」
咲夜が指示を出すと同時に、何処かからさらに大勢の妖精メイドたちが集まってきた。
それぞれが何か銃のような武器を構え、早苗たちをぐるりと取り囲む。
そして一人がその引き金を引き絞ったのを皮切りに、全員が次々と早苗たちに何かの液体を浴びせはじめた。
「ん、何だこりゃ? 水鉄砲?」
「いえ、ただの水ではありません。これは……聖水です!」
「痛たたたたたたた!! 熱い熱い熱い!!」
「レミリア他にも弱点あるんじゃん!」
ただの水にも弱いレミリアは、当然ながら聖水にも極端に弱かった。
早苗と神奈子、そして諏訪子の三人が背中合わせになり、レミリアを守る盾となる。
当のレミリアはまたしてもしゃがみガードだった。芸がない。
「まずはお嬢様の動きを止めるのよ! 残りの連中は後回しで構わないわ」
「ふん、腐っても一応は従者ってことかい。流石に主人に向けてナイフは投げられないみたいだな!」
「ある意味もっとヒドい気もするけどなぁ……」
読んで字の如く雨あられと降り注ぐ聖水を浴びて、レミリアが次第に大人しくなっていく。
それを防ごうと早苗たちも弾幕で応戦するものの、数に物を言わせたメイドたちの人海戦術の前ではそれほど効果がなかった。
「くそっ、これじゃ埒が明かないな……早苗! ここは私たちに任せて先に行くんだ!」
「八坂様……!」
「あのメイドたちの相手は私がする。その代わり早苗はなんとしても事件の真相を掴んでおいで」
「……わかりました」
「私のことも忘れてもらっちゃ困るね。ケロちゃん聖水にも負けず!」
諏訪子が敵の注意を引いた隙を突いて、早苗はレミリアの手を取り妖精メイドの包囲陣から脱出した。
レミリアが退場したことにより水合戦が弾幕勝負に発展したのか、背後からは地響きのような音や振動が伝わってくる。
しかしそれでも早苗は振り返ることをしなかった。
神奈子と諏訪子、早苗にとってこれ以上信頼できる殿はない。
心配をするほうが野暮というものだろう。
目指すべきは、とにかく上階。
早苗は先に進むことだけを考えて、レミリアを引きずりながら紅い絨毯の上を駆け続けた。
「うぅ、さっきイヤな水をかけられたせいか体に力が入らないよぉ……。さなえぇ、おんぶしてぇ」
「チョキですね」
「みみみみ道案内なら私に任せて!」
抜群の滑舌でマ行を連打したレミリアが、右手でVサインを作った早苗の前に踊り出た。
レミリアはそのまま行く先々に現れる武装したメイドたちを文字通り死に物狂いでなぎ倒し、道無き道を開拓していく。
本来人間である早苗が吸血鬼の脚力についていけるはずもないが、そこはレミリアの異様なまでの心遣いによって事無きを得た。
「よし、もう少し――ん、あれは!?」
「……ご無沙汰ね。レミィ」
曲がり角を直角に跳んだレミリアが最上階への階段の前で急ブレーキをかける。
早苗とレミリアの前に立ち塞がったのは、紅魔館のブレインである七曜の魔女だった。
「そうか、どこからあれだけの水を持ってきてるのかと思ったら……パチェ、どきなさい!」
「咲夜に通すなって言われてるから。貴女の言うことを聞いても紅茶は出ないもの」
「ふん、それなら力尽くで通らせてもらうだけよ。喰らいなさい! デーモンロードア――」
「エレメンタルハーベスター」
「ローやめてえええええ」
哀れレミリアは一度後方に飛んだにも関わらず、歯車の間にまっしぐらに突っ込んでいった。
ぎゃりぎゃりぎゃりという何とも生々しい音が響いたのち、ぼろぼろになったレミリアが吐き出される。
「いたいよお……」
「貴女は誰? レミィの友達かしら」
「……敵がいるということは、道は間違ってなさそうですね」
やや眠たげな、それでいて鋭い視線をパチュリーに向けられ、早苗は一つ深呼吸をした。
「秘術――『グレイソーマタージ』」
そしてそのまま、早苗は宣戦代わりのスペルカードを発動した。
薄く目を閉じた早苗を中心に、まるで星を具現化したかのような青と赤の弾幕がいくつも展開される。
それらが縦横無尽に四方を雪崩れて、紅い廊下を埋め尽くした。
だがもちろん、パチュリーもただでやられるわけではない。
口早に何かを呟くと次々と火の球が現れ、早苗の弾幕を確実に相殺していく。
一瞬とはいえ激しい攻防を終えても両者には傷一つつかず、黒焦げになったのは逃げ遅れたレミリアだけだった。
「ふぅん、少しはできるみたいね。でもその程度で勝てるなんて思わないほうがいいわよ、私にはまだまだ……」
「開海『海が割れる日』」
「え、ちょっとまだ話してるんだけど」
「奇跡『白昼の客星』」
「いや、ダブルスペルとか聞いたことないから……」
「大奇跡『八坂の神風』」
「いやああああああああ」
まるで今までの鬱憤を晴らすかのような情け容赦の無い弾幕に飲み込まれ、パチュリーはあっさりと倒れてしまった。
轟音に次ぐ轟音が床と天井の一部を破り、月明かりが遠慮がちに差し込んでくる。
呆気に取られてその様子を見つめていたレミリアの手を、早苗がぎゅっと掴んだ。
「道案内の続き、お願いします」
「はっ、はいぃ!」
レミリアはもう敬語を使わずにはいられなかった。
「着いたわ! 多分あの部屋よ」
レミリアは最上階の通路の真ん中の部屋、唯一両開きの扉がある部屋の前に止まった。
いかにも豪華といった装飾を施された扉から醸し出されている雰囲気は、確かに重く物々しい。
部屋の入り口を見つめる油絵の老人が月明かりに照らされ、いっそう荘厳さを増している。
その全てを『レミリアのおへや』というルームプレートが台無しにしていたが、心優しい早苗は当然それをスルーした。
「開けますよ」
特に罠らしきものがないことを確認しつつも慎重に、早苗はゆっくりと扉を押した。
部屋の中から生温い空気がじんわりと漏れ出してくる。
同時に何か鼻先につくような生臭さを感じて、早苗は眉をひそめた。
「これは……!」
暗幕で外部の光から遮断された部屋の中心には、淡い光を放つ数珠のようなもので作られた六芒星の魔法陣があった。
その中心で一人の少女がうずくまって何かをぶつぶつとつぶやいている。
「フラン! フランじゃないの」
「だれ……おねえさま……?」
七色の羽を持った少女は、弱々しい声でレミリアを呼んだ。
心配そうな表情を浮かべたレミリアが思わずフランドールの元へと駆け出す。
が、早苗に絶妙のタイミングで足をかけられ盛大に転んでしまった。
「気持ちは分かりますが不用意過ぎます」
「す、すみません……」
早苗は魔法陣の周りを距離をとりながらぐるりと一周し、フランドールを中心とした部屋の様子を観察した。
六芒星の近くには生肉と合わせ鏡が置いてあり、部屋の隅には藁人形が散乱している。
「これは……呪いか何かの儀式ですね」
「儀式ですって!! フ、フラン、咲夜は私を呪い殺す気だったの!?」
「ううん、わかんない……私は咲夜にここでじっとして、藁のお人形さんに釘を打ち込むように言われてたの……
ずっと一人でさみしかったんだよ!」
「そ、そんな……そういえば最近体の調子が悪いような気がしてたのよ……きっと呪いのせいだわあばばばばばば」
豪快に取り乱すレミリアを無視し、早苗はフランドールの持っていた藁人形を拾い上げた。
あまり丁寧な作りとは言えないその人形からは、並々ならぬ怨念が伝わってくる。
そしてその裏側には、ある人物の名前が書いてあった。
「成る程……そういうことでしたか」
早苗の中で全てが繋がったその時、入り口の扉が音を立てて開かれた。
「ちっ……一足遅かったみたいね」
「さ、咲夜」
メイド服を少しだけ傷付けた咲夜が、月光に照らされた廊下をバックに早苗たちの前に現れた。
それよりも一足遅れて、しめ繩にナイフを生やした神奈子がやってくる。
咲夜の登場にレミリアはいよいよ身を竦め、抱き寄ってきたフランの胸に顔を埋めるようにしてがたがたと震えだした。
そんなレミリアの様子は目に入っていないのか、咲夜はかつかつと靴音を鳴らしながら躊躇なく早苗に歩み寄り、早苗の手にしていた藁人形を強引に奪い取った。
「ふん、あの人形遣いに倣ってやってみたけど……ちっとも効果なんてなかったみたいね。どいつもこいつも本当に使えないわ」
咲夜は吐き捨てるように言うと、深々と釘の刺さった藁人形を床に叩きつけた。
自分の足元に転がってきたその人形をレミリアが恐る恐る拾い上げ、後ろから神奈子が覗き込む。
その藁人形の背中には、『森近霖之助』という名前が書かれていた。
「え……? さ、咲夜! どういうことなの!?」
「……」
思わず大声を出したレミリアから目を逸らし、咲夜はばつが悪そうに舌打ちした。
「霖之助……って早苗の言ってた店主の名前じゃないか!
おいレミリア、お前さんどのくらいの頻度で香霖堂へ行ってたんだい?」
「しゅ、週七で……」
「そりゃ毎日って言うんだよ!」
がつん、と神奈子の拳がレミリアの脳天を捉える。
フランドールがその頭をぎゅっと抱き寄せるようにしたので、神奈子はそれ以上は何も言えなかった。
「十六夜さん、どうしてこんな事を?」
「どうしてもこうしてもないわよ! 私はただ、お嬢様にずっと一緒にいてほしかっただけ!
それをあの店主が邪魔するから、お嬢様をたぶらかすから悪いのよ……!
私はお嬢様の従者なのよ。常にお嬢様の傍に居られるのが当たり前じゃない!
そこに割り込むやつがいるなら、いっそ殺してしまったって――」
ぱぁん、と渇いた音が響いた。
「ッ!?」
「独りよがりは止めなさい。十六夜咲夜」
突然早苗に頬を張られ、咲夜は少なからずたじろいだ。
咲夜を見据える早苗の瞳は今までよりも一段と力強さを増している。
「……どうやら、もう私の出番はなさそうだね」
神奈子は微笑みさえ浮かべ、開けっぱなしの扉を静かに閉め直すと、近くの壁に腕を組んで寄り掛かった。
「私欲の為に他人を呪うなど言語道断です。
あなたの術者としての技量が拙かったからまだ良かったようなものの、悪魔の館で吸血鬼に呪術の手伝いをさせるなんて……
それこそ地獄の使者が現れてもおかしくなかったんですよ」
「早苗ーっ! 無事か! ……あれっ」
神奈子よりさらに遅れてやってきた諏訪子によって、三度扉が勢いよく開かれる。
壁際にいた神奈子はもちろん顔面をしたたかに打ち付けた。
「いいのよっ……悪魔が来ようが閻魔が来ようが!
例えお嬢様に嫌われたって、叱られたって! 私はお嬢様の傍に居たいのよ!」
「それが独りよがりだと言っているんです。
知っていますか? レミリアさんはあなたからどんな仕打ちを受けても、決してあなたを責めようとはしませんでしたよ」
「え……?」
「こうなってしまったのは全て自分のせい。
主としての威厳を失った自らに責任があるんだ、とレミリアさんは何度も話してくれました」
「そ、そんな……! そんなの嘘よ!」
内心の動揺を悟られまいと咲夜は虚勢を張った。
一方神奈子は諏訪子の頬を張った。
「それなら嘘かどうか本人に聞いてみましょうか。レミリアさん」
「咲夜……悪かったわね、あなたの気持ちも考えないで……」
「お、お嬢様……」
フランドールの元を離れたレミリアが、おずおずとした様子で早苗の隣までやってくる。
咲夜と諏訪子は目の端に涙を浮かべてみせた。
「それならそうと言ってくれれば良かったのに。
私はてっきり咲夜が私をキライになったから、いろいろ酷いことをするんだと思ってたんだもん」
「いえ……! 決してそのようなことは……」
「言いたいことがあったのに言えなくて、それがあんな態度に変わっちゃったのね」
レミリアは白い歯を見せながら、隣にいる早苗の顔を見上げた。
「ほらね、早苗。だから言ったでしょ? やっぱり悪いのは私だったじゃない」
「……いいご主人を持ちましたね、十六夜さん」
「う……うわああああん」
膝から崩れ落ちた咲夜の顔を、レミリアの小さな胸がぎゅっと抱き留める。
早苗はその傍らで、穏やかな笑みを浮かべていた。
「嫌な事件だったね……」
「私も言ってみたかったな……それ」
神奈子と諏訪子もしんみりと、抱擁する主従の姿を暖かく見守った。
光のない薄暗い室内に、咲夜の泣き声だけがこだまする。
それが悲哀の未来を象徴するものではないということは、この部屋の誰もが理解していた。
「それじゃあ、本当にもう帰っちゃうの?」
「ええ。私たちの役目は終わりましたから」
雲一つない月明かりの下、紅魔館の門前には早苗たちを見送る紅魔館のメンバーが並んでいた。
フランドールと手を繋いだレミリアの斜め後ろで、真っ赤に目を腫らした咲夜が瀟洒に佇んでいる。
美鈴とパチュリーは早苗の顔を見ようとしなかった。
「もうちょっとゆっくりしていってもいいのに。ほんと、早苗には感謝しても感謝しきれないぐらいなんだから」
「いえ、これは私一人の力ではありませんよ。
八坂様と洩矢様、それに守矢神社のご加護があったからこそ、あなたたちは救われたんです」
「へぇ……そういうもんなのかしら。
早苗の神社は霊夢のとこよりもよっぽど御利益がありそうね。本格的に信仰してみるのもいいかも」
「それはいい心掛けですね。なんなら分社でも建てましょうか?」
「そうね……」
一貫して落ち着いた様子を見せる早苗とは対照的に、レミリアはちょっとだけ淋しそうな顔をしていた。
「……まぁ、いつまでも引き留めてたって仕方ないもんね。また会いましょう、早苗」
「はい、必ず」
「よーし、そんじゃ今度こそ引き上げるとしようか。朝からずっと出ずっぱりだったから、早苗もお腹が空いただろう」
「今日は神奈子が晩ごはん作ってくれるって! でもどうせお粥だよね。神の粥」
「おいおい、その言い方じゃ私が粥しか作れないみたいじゃないか」
わざとらしくおどけてみせる諏訪子の帽子を、神奈子がこつんと小突く。
レミリアはもう一度早苗に向けて笑顔を作ってみせた。
「……あったかいわね、あんたんとこの家族。私も見習わないとね」
「ええ。私は、幸せ者ですよ」
早苗は最後にレミリアとがっちり握手を交わすと、神奈子と諏訪子と共にゆっくりと妖怪の山へ向けて歩いていった。
「それではお嬢様、私たちも……」
「……うん」
咲夜にそう促され、レミリアは一度は館へと戻りかけた。
しかしすぐにその足を止めると、小さくなっていく早苗たちの背中へともう一度振り返った。
「本当にありがとね、早苗ーっ!
幻想郷のことでわからないことがあったら、次は私たちが早苗を助けてあげるからー!」
レミリアがそう呼びかけると、顔だけを後ろに向けた早苗が大きく手を振って見せる。
それがたまらなく嬉しくて、レミリアはさらに続けた。
「それじゃ、また困ったことがあったら遊びに行くからねー!
次に会ったときは香霖堂で私の腕前を披露してあげるわー!」
レミリアの言葉を聞いて、早苗の右腕がぴたりと止まる。
そのバイバイがチョキチョキに変わったので、レミリアはそそくさと館の中へ戻っていった。
ビニール袋って凶器だったんですねwww
もうあの曲聴く度におぜうさまの尻にシュルト級のニーキックを叩き込む早苗さんしか浮かんでこなくなりそうです。
朝から爆笑させてもらいました。
レミリアよ、弄られキャラとして一生生きて逝けw
話の流れでは、なんだか続編や2がありそうな気配もするのですが…いかがでしょ?
チョキが怖すぎるぜ・・・
実に面白かったです。守矢組はいいですねぇ・・・
しかしレミリアのへたれっぷりに涙すべきか、カリスマボスで名前すら出なかった輝夜を嘆くべきか。
レミリアの土下座なんか見た………いくない!!!!
完全に好みというか主義の問題だけど、匿名で50点入れるから許して欲しい。
>また面倒くさいことになるんだろうなぁ、と。
さ、早苗さん!だんだん博麗の巫女に毒されてきてませんか!?
さすがに全員分は返信できないので、特定の方だけコメント返しをさせていただきます。
コメント番号27の方:このメンバーが個人的に気に入ったので、もしかしたら続きが生まれる……かもしれません。
しかし猛烈な遅筆&他にも書いている途中のSSがあるので、キリン級に首を長くしてお待ちください。
コメント番号45の方:うおぉん一応調べたつもりだったんですがナチュラルに間違えてしまいました……
神奈子様が幻想郷縁起を読み間違えたということにしておいてやってくださいorz
早苗とレミリアのキャラが良すぎるw
最高に楽しませてもらいました。
面白かったです。
やっぱりドSはドさなえの略称だと思うの。
思わず時間を忘れて読み込んだ。
ああもう、レミ様ってば可愛いなぁ、もう!
なんという最強早苗さん
いいもん読まさせてもらいました
レミ霖は好きだけど、これじゃただの引き篭もりペアじゃないかww
この早苗さんになら抱かれてもいい。
この早苗さんなら間違いなく緋想天に出れる
ちょっと大地の一部になってくるわノシ
次はレミリアお嬢様のコントローラーさばきを是非是非。
多分早苗すゎんにチョキチョキされる事間違いなし。
それにしてもこれは良いはっちゃけ早苗さん。
そしてラストがこんなに綺麗になるなんて誰にも予想できなかったに違いない。
あとケロちゃんの目玉もいだららめええええええええ!
ド早苗さん最高でした!
意外に温かいオチでほっとしました♪
一つ気になったのですが、「早苗にとってこれ以上信頼できる殿はいない。」というのは誤字でしょうか?
違ったら申し訳ないです
あれはちょっと読みにくいかもしれませんが「しんがり」と読みます。
『隊列や順番などの最後尾』という意味で、つまるところ修学旅行でいう副班長のポジションですね。
漢字だと読みにくいかな、とも思ったのですがひらがなだとあまりにも格好がつかないので漢字にさせてもらいました。
誤解を招くようであればもっと別の表現を使ったほうがよかったかもしれませんね。精進致しますです。
そんなにお嬢様を貶めて何が目的なんだか。
ある程度なら許せるが終始コレだとさすがに許せないな。
だがむしろ可愛い! そして早苗さんはカッコイイ!
「ふふ……最高に灰ってやつだわ……」で吹いた
これって輝夜の間違いじゃ?
まあ評価に関しては、この点数が表してるっしょ。
ちなみに遅筆ですか? 自分もそうです。
そして「ふふ・・・・・最高に灰ってやつだわ・・・・・」で死んだww
シリアスかギャグかどっちかにしてくれw
ギャグしかないだろw
欲を言うならパチェvs早苗戦をもっと続けて欲しかったなーと
ところどころにイイハナシとギャグの割合も丁度良いです。
自分の好きなキャラがひどい目にあっているから低得点というのは評価でもなんでもないので気にしなくてよろしいかと思いますよ。
個人的には本筋の隅で密かに繰り広げられる二柱のコントがツボでした。
早苗良いキャラしてんな
小ネタが多くてテンポも良くて、面白かったです