Coolier - 新生・東方創想話

東方紅魔宴

2008/09/06 14:06:01
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「咲夜」
「はい、何でしょうか、お嬢様」
 レミリアの呼びかけに、咲夜が間髪をおかずに答える。

「あれから、どれくらい経ったかしら?」

 いすの肘掛けに右肘をかけ、その指先は特に意味もなく前髪をいじる。
「そうですね、大体3年くらいになります」
 何が…とは問い返さない。レミリアの問いかけのその前後には何もなかったが、だからわかりませんなどということは、完全で瀟洒なメイド長にはありえないことだった。
「そう、もう3年になるのね。その3年という月日、私には長かったかしら? それとも短かったかしら?」
 肘掛けに両肘をかけ、両手を組み合わせ、その上にあごをのせ、咲夜をじっと見つめる。
 咲夜にはともかく、500年を生きてきたレミリア・スカーレットにとって、3年はどう考えても短い。それでも、あえて尋ねる。それが重要な問題であるのは、醸し出す空気がうかがわせていた。

「間違いなく、長いものでした」

 躊躇なく、十六夜咲夜がそう答えた。
「翼を休め、力を蓄えるのに、間違いなく必要な時間であり、重要な時間であった事実を考慮しましても、大変長い時間でありましたと断言致します」
 そのことをわびるように、主に対して深々と頭を下げる。
「そうね、確かに長かったわ。そして、色々あったわね。何が変わったかしら?」
 組んだ手を外し、代わりに足を組み、右拳をほほに当ててほおづえをつき、さらに深く腰をかける。
「幻想郷の情勢ですね。有力なモノ達の顔見せもほぼ済みましたし、ある程度の棲み分け、力関係の拮抗も見られます」
 頭を下げたまま、スラスラと咲夜が答える。
「そうね、この拮抗した力関係の中、最初に動くのは愚かなことかしら?」
 くすくすと楽しそうに笑う。
「さて、私にはわかりかねます。ただ、座して日和見するよりも、堂々と先制されるのが、私は好ましいと存じます」

 何かきっかけがあったわけではない。ただ…そう、ただあるとするならば、今夜の月がとっても綺麗だった。ただ、それだけだった。


「じゃあ、はじめましょうか」


 明日の献立を決めるかのように軽く、それはなされた。







 …そして、翌日の朝日は上らなかった…







「こいつは…」
 異変が起これば、嵐を喜ぶ子供のようにはしゃぐ霧雨魔理沙だったが、今回は別だった。心にあるのは困惑。どうして…という気持ちの方が強かった。
「タネの割れた手品は、しないのが礼儀だろ」
 そうつぶやき、箒にヒラリと飛び乗ると、颯爽と空を駆ける。

 
 赤い、朱い、紅い霧に覆われた空を。




「これは…」
 傍らで不安そうにしている橙を抱き寄せながら、八雲藍は再び見るこの空に、言いしれぬ不安を感じずにはいられなかった。
「…若いわね」
「紫様」
 いつのまにという修飾も、あまり意味はもたないだろう。当然のように隣に立っていた八雲紫の姿に、藍がかすかに安堵し、そしてそのことに苦笑する。
 何年生きてきたのだ自分は、橙ではあるまいし…そう思うことによって、その意地によって、藍は己を奮い立たせる。
「…ほんと、若いわね」
 誰に聞かせるでもなく、ただそうつぶやいた。


 その独り言は、3年ぶりに幻想郷を包み込んだ紅霧の中にかき消えた。




「れーせん」
 特に何を言うわけでもなく、因幡てゐは空を指さした。
「気が狂いそうな紅ね」
 その空にも負けない赤い目で、鈴仙・優曇華院・イナバが霧の先にいるものを見るように、目を細める。
「どうします、師匠」
「さあ? どうします、姫」
 問われた八意永琳は、その質問をそのまま後ろに立つ人物に流した。
「…めんどくさい。私は何もする気はないわよ」
 とりあえず見に来ただけだとばかりに、蓬莱山輝夜はそう答えた。
「懲りない…というよりは、飽きないわね。また同じことをするなんて」
 自分のことを棚にあげて、そう嘆息した。


 この紅い霧は、あの月の光も遮るのだろうかと考えながら。




「あやややや、このどこかでいつか見た光景は」
 そう言いながら、射命丸文は夕日よりも紅く染まった朝の光景を一枚撮る。
「禍々しいくらいの紅い霧ですね」
 この光景を初めて見る、東風谷早苗はそうつぶやいて、自らが信仰する二柱の神を仰ぎ見る。
「禍々しいのも当然かもね、こりゃあ悪魔の仕業でしょ」
 帽子を被りなおしながら、洩矢諏訪子がそう断言した。
「天狗の記者の様子を見るに、前にもあった光景みたいだけど、これはあれかな」
 カメラでパシャパシャと撮影している文を横目に、八坂神奈子は隣の諏訪子にそう質問なのか微妙な問いかけをした。
「多分そうでしょ。なんとなくだけど、あんたが最初にやって来た時のことを思い出したよ」


 3年ぶりに幻想郷をつつんだその光景に、初めてそれを見たはずの土地を捨てた土着神は、千年以上前の光景と重ね合わせた。




「…あのバカ…」
 苦虫を噛んだ…だけじゃなく、さらにすりつぶして飲んだような顔をして、博麗霊夢はただそれだけを口にした。
 この紅い霧を見て、これがレミリア・スカーレットの仕業であると気づかない者はほとんどいないだろう。なぜなら、この異変は3年前に既に起こったものと全く同じなのだから。
 異変を起こすにしても、まるで同じことをする必要がどこにあるのか? 考えられる理由などたったの一つしかない。

 私がやっている。このレミリア・スカーレットの仕業である! 

 そう自ら宣伝しているのだ。幻想郷に住む、全ての者に対して。…そう、喧嘩を売っているのだ。つまりはそう、宣戦布告に間違いないのだ。
「しょうがないわね」
 珍しく気合いを入れて、紅い空を見つめる。その向こうにいるレミリアを見つめるように。
「私が買ってあげるわよ。そして、全部買い取ってあげる。それで店じまいよ、レミリア」
 幻想郷の異変を、博麗の巫女が解決する。
 そこで終われば、話はそこまでで終わる。これまで起こってきた異変となんら変わることはない。それでおしまいの話で済む。
 だが、そうはさせまいという、レミリアの覚悟は痛いほど伝わってくる。
 全く同じことをしているということは、かつてのやり直しをすると言っているのだ。やり直しに同じ結末を求めているはずがない。今度は違う、結末を変えてみせるという、覚悟表明でもあるのだ。
 戯れに気まぐれに起こした前回の異変とは違う、一歩も引かぬ決意をもって、今度の異変は引き起こされたのだ。




 否! 断じて否!!




 今度のは、異変で済ますつもりはない! 
 博麗の巫女を打ち倒し、他の邪魔するものをなぎはらい、この幻想郷に覇をとなえるのだ!

「準備はいいかしら? いえ、悪くてももう遅い。もう賽は投げた。もう後戻りはできないし、するつもりもないし、そんなつもりは許さない!」

 大広間に紅魔館の全ての住民を集め、館主としてレミリアがそう宣言した。
「…3年か、よく我慢した方かしらね、レミィ」
 事後承諾とも言えるレミリアの宣言に、最初に発言したのはパチュリー・ノーレッジだった。
「そうよ、もう我慢の限界が来たのよ、パチェ」
 悪びれる様子もなく、そう言い放った。
「しょうがないわね。まあ、試してみたい魔法もあるしね」
 ため息をつきながらも、そう言うとニヤリと笑った。
「今朝は朝食が豪華だと思ったら、そういうことでしたか」
 とほほーと、紅美鈴が肩を落とす。
「あら、不満かしら、美鈴?」
 レミリアの背後に静かに立っていた咲夜が、そう口を開いた。
「そうですね、今更言ってもしょうがないですが、一言くらいは相談が欲しかったですね」
「あら、お嬢様の決定の前に、相談があるなんて思っていたのかしら」
 ニッコリと笑ってそう言った咲夜に対して、やれやれしょうがないなと言わんばかりに、美鈴が肩をすくめた。
「もちろん、思っていませんよ」
 パンと拳を打ち鳴らすと、負けずにニッコリと笑った。

「あの…」

 おずおずと手を挙げる。
「何かしら?」
 レミリアが優雅に微笑みながら、その慎ましやかな質問に答える。
「えっと…」
 大広間にいる残り全ての住民の目が、その少女へと向かう。
 そう、この大広間には紅魔館の住民全てが集まっているのだ。
「私もいて、いいの?」
 何かだまされているのではないかという気分で、フランドール・スカーレットが聞いた。
「もちろんよ。いえ、むしろ居てもらわないと困るわ」
 そうはっきりと告げたレミリアの言葉に、フランの顔が輝く。
「私はこの戦いに、塵一つも言い訳を残すつもりはない。自分に対してもだし、他人に対してもよ」
 ああしていれば良かった、こうしていれば良かったという自分に対しての言い訳。つまりは、フランの力を借りていればという言い訳をなくすこと。
 また、誰かに対しての…

 ”フランの力は借りていないから、本気でやったわけじゃないから”

 …そんなみっともないとしか言えない言い訳、命乞いとしかとれないそのような言い訳など絶対に残すわけにはいかない。

「…あ、あの、弾幕ごっこですよね?」
 あまりのレミリアの本気度合いに、おずおずと美鈴が聞いた。
「当然よ。弾幕ごっこでの借りは、弾幕ごっこで返すわ。ルールを変えては意味がないわ」
 霊夢と魔理沙に対しては、そのルールからはみ出すつもりはなかった。後は向こうが求めるならどういう勝負でも構わないが、あの二人に対しては別だった。
 じゃんけんで負けたから、喧嘩で勝負というのは、筋違いだ。弾幕ごっこでなかったらこちらが強いのに…などという言い訳は許さない。必ず弾幕ごっこであの二人とは決着をつける。あとは知らん。


 それがレミリアの譲れない一線だった。勝利よりも面子こそ大事だった。





「さあ、宴の始まりよ!!!」




  





  ~東方Project SS~


           「 東方紅魔宴 ~とうほうこうまえん~ 」










 主に空を飛ぶ程度の能力…その能力を最大限に発揮して、霊夢が空を飛ぶ。
 普段は小馬鹿にするような速度…そんなに急いでどうするのよ…が信条の霊夢にしては、今回は驚くほど速いスピードで空を飛ぶ。
 焦っているのかもしれない。冷静…というよりは常に一歩引いて物事に取り組む自分が、とんだ入れ込みようだ。
 焦ったところでしょうがないし、この再び起こった異変に最初にちょっかいをかけるのは、自分か魔理沙くらいしかいない…そうわかっているというのに、焦る気持ちが抑えきれない。
 自分たちが負けたら、これが異変で済むのかどうかわからない。…おそらく、幻想郷全てを巻き込んだ大異変になるだろう。いや、大異変で済めばまだましだ。


 …戦争…そんな、幻想郷にふさわしくない言葉までもが頭に浮かぶ。そんなものは、あっちの世界だけで十分だ。


「何考えているのよ、レミリア!」
 思わず愚痴ってしまった所に、ふよふよと浮かぶ黒い固まりが見えた。
「まさか…という程ではないか」
 諦めにも似たつぶやきを、ため息と共にもらす。

「そんなに急いで、どこへ行く~」

 闇の中から、のんきそうな顔でそう聞いてきたのは、言わずとしれたルーミアだった。
「この紅い霧を見ればわかるでしょ、紅魔館よ」
「そーなのかー」
 わかりきったやりとりを、お互いにわかりきった顔をしておこなった。
「で、そっちは何の用かしら?」
「懐かしい霧の中、さっき魔理沙が飛んでいくのを見たら、なんとなく懐かしくなって」
 その懐かしさの中、何を思いだしたのか。
「巫女は、食べてもいい人類?」
 にぱっと笑うと、いつか聞いた台詞を吐いた。
「しょうがないわね、きっついのを食らわせてあげるわ」
 霊夢が懐から符を取り出すと、扇のように広げる。
 それを見て、戦闘準備が整ったと解釈すると、ルーミアが笑顔で戦闘開始の合図をする。


「じゃあ、行くよー、月符『ムーンライトレイ』!!」




「さっき、ルーミアっぽいのを見かけたが…まあ、気のせいか」
 何か言われた気もするが、とにかく急いでいた。
 魔理沙が本気で飛んだら、追いつけるのは天狗くらいのものだ。そして、今の魔理沙は本気の本気で飛んでいた。
「っと、さむっ!!」
 寒さを感じて、速度を落とす。
 風速が上がると、体感温度は下がる。だが、この寒さはそんなものから来るものではなかった。

「あたいを無視して、この湖の上を通すわけにはいかないよ!」

「やっぱり、言わずもがなのお前だったか」
 冷気をともなって、魔理沙の目の前まで飛んできたのは、言わずもがなのチルノだった。
「ということは、一面飛ばしちまったか、そいつは悪いことをした…とは思わないけどな」
 言葉とは裏腹に、霊夢同様に魔理沙にも余裕があまりなかった。
 霊夢にいつもの一歩ひいたところから見るという余裕がなければ、魔理沙には現状を楽しむという余裕がなかった。
「悪いが、お前の相手をする暇はない!」
「むきー、だからあたいを無視するのはダメなのっ!!」
 空中で器用に地団駄を踏むと、ムキになったように符を取り出す。


「食らえ! 氷符『アイシクルフォール』!!」




「…お嬢様」
「何かしら、咲夜」
 幻想郷全てに喧嘩を売ったというのに、レミリアは優雅に庭で紅茶を飲んでいるところだった。
「偵察に出ていた妖精メイドの話では、霊夢がルーミアと、魔理沙がチルノと、それぞれ交戦中とのことです」
「ふふ、別に頼んだわけでもないのに、前座を買って出てくれた訳ね」
 ルーミアもチルノも、紅魔館の住人でもレミリアの部下でもない。どちらも気まぐれな妖怪と妖精だ。
 ただ3年前と同様のこの紅い霧が、なんとなくそういう気分にさせたのだろう。
「そういえば、パチェはどうしたのかしら。お茶会にはちゃんと誘ったはずだけど」
「下準備…いえ、出迎えの下ごしらえをしているそうです。それで、図書館にこもっておられます」
 大広間でのレミリアの宣言の後、パチュリーは早々に引っ込んでいた。
「魔法にはいろいろ準備がいるんだから、3日前には相談しなさいとおっしゃっておられましたよ」
「しょうがないじゃない。思いついたのは昨夜なんだものね」
 悪びれることなど全くなく、くすくすと笑いながらレミリアはそう言った。
「ねえ、お姉様!」
「何かしら、フラン?」
 レミリアの前に座って紅茶を飲んでいたフランが、目を輝かせて言った。

「魔理沙来てるんだよね、私迎えに行ってくるね!」

「えっ」
「むっ」
 フランのその言葉に、咲夜とレミリアは思わず絶句してしまう。
「…ダメ?」
 さっきの元気が、あっという間にショボンとなくなってしまっていた。
「…いいわよ、好きにしなさい」
 そんなフランの様子にしょうがないとばかりに、レミリアがそう言った。
「やった!」
 レミリアの許しを得て、フランは喜び勇んで庭から飛び立った。
「…3面で、妹様ですか」
 何とも言えないような表情で、咲夜がそう言った。
「まあ、館を壊されるよりはいいんじゃないかしら」
 くいっと、カップの紅茶を飲み干す。

「…それに、館の奥でやってくるのを待つのは、もうイヤなんでしょう」

 何か苦いものがお茶に入っていたかのように、レミリアの表情は曇った。
「…お嬢様、お代わりをお入れします」


 咲夜が静かに、ティーカップに紅い紅茶を注いだ。




「いい加減、墜ちろー!! 霊符『夢想封印』!!!」


「うあーーーー」
 緊迫感のまったくない悲鳴をあげて、ルーミアが敗北の声をあげた。
「はぁはぁはぁ、けっこう手こずらせてくれたわね」
 なんとか勝ちはしたが、相変わらず霊夢に余裕はない。
 確かに昔よりもルーミアの弾幕は良くなっているが、それでも霊夢がこれほど苦戦するほどではなかった。言ってはなんだが、ルーミア如きにスペルカードを2枚も使ってしまっているのは、手こずりすぎだろう。
「霊夢、なんかあんまり余裕ないね」
 ボロボロになりながらも、表情はにこやかにルーミアがそう言った。
「うるさいな、だから急いでるって言ったでしょ」
 どっちが勝ったのかわからないくらいの、余裕の差だった。
「そんなんで、この異変解決できるのかな?」
 負けたのに…いや、負けたからなのか、ルーミアが霊夢の心配をして、そう聞いた。


「うるさい! できるかじゃなくて、するのよ!!」




「食らえ!! 恋符『マスタースパーク』!!!」


 八卦炉を前面に構えて、魔理沙の代名詞とも言えるスペルカードをぶっ放す。
「わきゃーーーー!!!!!!!!!」
 真正面からまともに食らったチルノが、綺麗に撃沈されて湖にボチャンと落ちた。
「まあ、こんなものだろ」
 一戦を終えて、魔理沙はだんだんと余裕を取り戻していた。
 なんだかんだイヤな感じがしたのは事実だったが、所詮、異変は異変。それに自分がダメでも霊夢の奴がなんとかするだろうと思ったら、焦っているのがバカらしくなったというのが本音だった。
「でも、霊夢より先に解決してやるぜ」
 うん…と一つ頷くと、再加速をしようと箒に魔力をそそぎこむ。


「禁弾『スターボウブレイク』!!!」


「うおおぉぉーーーっと!!!!!」
 前方に加速しようとしていた箒を、なんとか上下左右への急速回避行動に変更する。
「魔理沙ー!! 遊ぼーーー!!!!!!!」
 挨拶代わりの弾幕が済むと、ニパッと嬉しそうにフランドール・スカーレットがそう言った。
「フラン! 出るの早いだろ!!」
 いずれ会うことになるかもとは思っていた魔理沙だが、あまりに早いフランの登場に思わずつっこみを入れた。
「だって、待ってるのつまらないもん!」
 あくまで自然に、フランがすねた。そんなフランの様子に、魔理沙に残っていた最後の焦りが消えて無くなった。

「ぷっ…あは、わははははははっ!!!」

「どうしたの、魔理沙ー?」
 いきなり笑い出した魔理沙に、フランがきょとんとする。
「いや、なんでもないぜ! よーし、遊ぶか、フラン!!」
 ニィっと笑うと、魔理沙が戦闘態勢に入る。
「うん! じゃあ弾幕ごっこ、はじめるよー!! スペルカードは32枚!!」
 スペルカードルールに従って、フランが嬉々としてそう宣言した。
「ぶはっ!! 32枚はずるいだろ!!」
 魔理沙の当然と言えば当然のつっこみに…

「わかった! じゃあ35枚!!!」

「増えるのかよっっ!!!」
「えーーーー!!」
 魔理沙が何が言いたいのかわからないとばかりに、フランが不満そうにする。どれもこれもとっておきのスペルカードなのだ。魔理沙に使いたくて仕方がないのだった。


「ああ、もうそれでいいよ! 来い、フラン!!!」




「ん? あれって」
 湖の上を飛んでいた霊夢の目に飛び込んできた、派手な弾幕。
「魔理沙と…フラン!?」
 今度はチルノかと構えていた霊夢には、かなり予想外の光景だった。

「よー、霊夢ー」

 霊夢の姿をめざとく見つけた魔理沙が、すいーっとそばまで飛んできた。
「わっ、わわっ! こっちくんな!!」
「そりゃねーぜ、霊夢」
 魔理沙の移動と共に、当然のようにフランの弾幕もやってくる。
「あっ、霊夢だ! 霊夢も一緒にやる?」
 ニパッとフランが霊夢に聞いた。
「そ、それは…」
 ルーミアにスペルカードを既に2枚も使っている。ここでフランとの勝負は予定外すぎる。
「おっ、なんだなんだ、私とだけじゃあ不満なのか?」
 とまどう霊夢を余所に、魔理沙が不敵に笑うとそう聞いた。
「ううん、そんなことないよ」
 このフランの言葉は、魔理沙への礼儀というだけではなかった。もっとも、フランはそんなことを気にしない、いつでもまっすぐ素直であり、その言葉も正直な気持ちのあらわれに相違なかった。
 実際、余裕を取り戻した魔理沙は、いつもよりもずっとキレていた。空回っていた気合いが、余裕を取り戻した分、ピタッとあった感じだった。
「てなわけで、私はフランの相手で忙しいから、しょうがなくこの異変は霊夢に任せるぜ」
 にかっと霊夢に笑いかけると、そう言って後を任せた。
「魔理沙っ!」
 霊夢の呼びかけに、魔理沙は一度振り返ると…

「んじゃ、霊夢。あんまりおおごとにとるなよ!」

「…わかってる。おおごとにしたりしないから!」


 …魔理沙の霊夢への激励は、見事に受け取られ損なった。




「さて、そろそろお茶会もおしまいかしら」
 飲み終わったカップをソーサーに置くと、レミリアは湖の方を見つめながらそう言った。
「そうですね。それで、お嬢様はいかがいたしますか」
「私? 当然玉座で待っているわよ」
 自室の愛用のいすを、そんな風に呼んだ。
「そうですか、それでは霊夢や魔理沙と弾幕ごっこはできないかもしれませんよ」
「そうね、それならそれでいいわよ」
 にこやかに宣言した咲夜に対して、にこやかに応じる。
「私はどちらの運命でもかまわないわ。存分に楽しみなさい、咲夜」


「はい、お嬢様」




「見えてきた!」
 飛行する霊夢の目に、見慣れた紅魔館の姿が入ってきた。
 一面に広がっている紅霧の発生源であり、どこよりも濃密な紅に染まっている紅魔館は、普段とはまるで装いが違って見えた。


「華符『芳華絢爛』!!!」


 鮮やかな弾幕による出迎えもいつもと同様だが、いつもよりも密度が濃いと感じたのは果たして霊夢の気のせいだけであろうか。
「ここから先へは、一歩も通しません!」
 紅美鈴が、普段よりもずっと真剣な表情で、そう宣言した。
「出たわね、門番。今回もレミリアに呼ばれて来たんだけど、黙って通してくれないかしら」
 幾分のイラツキを含めながら、霊夢が美鈴にそう告げた。
「なるほど。言われてみれば確かに、今回もお嬢様に呼ばれたんでしょうね」
 霊夢の発言に、美鈴が理解を示す。
 魔理沙と違って、霊夢が紅魔館に訪れるのは、大体がレミリアに呼ばれてのもので、その場合は美鈴も素直に通しているのだったが…

「…ですが、答えは同じです。ここから先へは、一歩も通しません!!」

 さらに気合いを入れて、美鈴が構える。
「予想通りとはいえ、面倒ね、まったく!!」
 イラツキを隠そうともせず、霊夢が懐から符を取り出しながら叫んだ。


「彩符『極彩颱風』!!!!」




「禁忌『レーヴァテイン』!!!」

 
 フランの操る炎の魔剣を、魔理沙が鮮やかにかわし飛ぶ。
 いつもよりずっと速い。
 箒の速度が速い。移動速度云々でなく、一歩目…一駆け目が速い。
 切り替えが速い。加速減速が速い。何よりも、急にかけている制動のはずなのに、スムーズで流れるように飛んでいる。
「すごい! すごいすごいすごい!! すごいよ、魔理沙!!!」
 鮮やかにかわされているというのに、それがあまりにも鮮やかすぎるので、フランは目を見張って感心するしかなかった。

「っっっっ!!!!!!!!!!!」

 いつのまにか、眼前に現れていた魔理沙に、フランが思わず息を飲む。
「悪い、フラン! さっきのバカが気になるんで、ちょっと先に行くぜ!!」
 フランの肩にポンと手を置くと、そのまま紅魔館に向けて飛んでいく。

「………ふえ? って!! ちょっと待てーーーー!!!!!!」

 最初ポカンと魔理沙を見送ってしまったフランだったが、我に返るとあわてて魔理沙を追いかける。
「ずるいよ、魔理沙ー! まだ30枚くらい残ってるんだよ!!」
「鬼ごっこだよ、フラン! ここまでおいでーってやつだ!!」
 ご丁寧に、お尻をペンペンして、魔理沙がフランを挑発する。


「むっきーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」




「華符『彩光蓮華掌』!!!!」


 ますます華麗に、そして激しくなる弾幕に、霊夢がさばききれなくなる。


「くうっ!! 夢符『二重結界』!!!!」


 虎の子のスペルカードを遮二無二使って、美鈴を止めにかかる。
 美鈴との戦いで3枚目、合計で既に5枚目。今日何枚持ってきたか? …そして、何枚使える?

「抜けたっ!?」

 霊夢の弾幕を、半ば無理矢理に美鈴が抜ける。


「こいつで決めます! 極彩『彩光乱舞』…って、えええぇぇぇーーーー!!!!!!」


「禁忌『フォービドゥンフルーツ』!!!!!」


 美鈴の放った弾幕を、更に飲み込む形で、フランの弾幕が放たれた。
「妹様っ! なんでっ!! どうしてっ!!!」
「うるさーい!! 美鈴邪魔ぁぁーーー!!!」
 紅魔館の門前は、弾幕が入り乱れてとんでもないことになっていた。

「先行くぜー!」
 
 鮮やかにその入り乱れた弾幕をかいくぐっていた魔理沙が、どたばたとしている二人にそう声をかけた。


「秘弾『そして誰もいなくなるか?』!!!!!」


 半ばやけくそになっていたフランが、更にスペルカードを繰り出した。その結果…


「…ぎゅうぅぅ~~~」
 

 …紅魔館の門前には、ボロボロになった門番が一人倒れ伏しているのだった。




「魔理沙、どうして! 後は私に任したんじゃなかったの!」
 魔理沙に抱えられていた霊夢が、館内部に入ったと同時に口をひらいた。
「うるせー! 耳元でぎゃーぎゃーわめくなっ!!」
「ぎゃーぎゃーぎゃー!!」
 お姫様だっこの現状に不満なのか、それとも、先ほどの戦いを助けられたと感じていることが…そう感じてしまっていることこそが不満なのか、霊夢がだだっこのようにわめいた。

「…霊夢っ!!」

 ひときわ大きな声…そして、ひときわ真剣な表情で魔理沙が言った。
「…なによ」
 バツが悪そうに、霊夢が応じた。
「霊夢があせる気持ちもわかる。私もあせってたしな」
 しゃべりながらも、名前も知らない妖精メイド達の弾幕をかわし、撃ち落とす。
「もうちょっと私を信用しろよ、お前がダメでも私がいるんだから」
「…魔理沙」
「はっきり言って、今日の私は調子いいぜ。今まででも最高だ」
 さっきの様子を見ていた霊夢も、それには納得せざるを得なかった。
「…そうね、ちょっとあせりすぎだなとは、私も思ってたわ」
 素直にそう認めた。
「…そういえば、魔理沙とは組んだことなかったわよね」
「そういや、そうだな」
 片手間に相手しているというのに、鮮やかに弾幕をかわしながら、二人を乗せて箒は進む。

「…だって、霊夢とは、競い合うライバルだからな」

 にかっと笑って、魔理沙がそう答えた。

「そう? 私はいつも、魔理沙とは組んでいる気分だったわ」

 負けずに、霊夢もにっこり笑ってそう言った。


 競い合うライバルであり、同じ目的の為に邁進する戦友。紛うことなく、それが二人の関係だった。


「みっともなく、私に心配させるんじゃねえぞ」
「ほんとそう、魔理沙に心配されたらおしまいよね」
 いつものように、軽口をたたき合う。
「私はこれから図書館に、パチュリーに会いに行くぜ」
「私は邪魔なメイドを押しのけて、レミリアに文句を言いに行くわ」


「「じゃあ、ね(な)!」」




「さわがしいことね」
 下準備を終え、本を読んでいたパチュリー・ノーレッジが、入り口の方からだんだんと大きくなってくる騒音に、眉をひそめて本を閉じた。
「…パチュリー様」
 心配そうに、小悪魔がパチュリーに声をかけた。しかし、声はすれどもその姿は見あたらない。
「大丈夫よ。小悪魔は打ち合わせ通り、そこにいなさい」
「…わかりました」
 小悪魔の返事に満足そうに頷くと、パチュリーは待ち受ける。
「今度のネズミ獲りは、なかなか大仕掛けよ、魔理沙」

 バァァアアアアーーーーーーン!!!

 図書館の大扉を開け放ち…というか、破壊して、魔理沙が突入してくる。
「来たぜ、パチュリー!」
「待ってたわよ、魔理沙!」
 互いに不敵な笑みを浮かべて、言葉をかわす。
「今日の私は絶好調だぜ、紫もやしに捕らえられるかな」
「大丈夫よ、すばしっこいネズミ用に、ちゃんと罠をしかけているから」


「そうかい! 恋符『マスタースパーク』!!!!」


「そうよ! 日符『ロイヤルフレア』!!!!」




 魔理沙と別れ、レミリアの部屋を目指して、霊夢が廊下を飛ぶ。
「ああ、こりゃあ、あれね」
 かなり長いこと飛んでいるのに、いつまで経っても廊下の終わりが見えない。
「出て来ないのかしら、咲夜? 出てこないのなら、このままレミリアのバカの所に一直線よ」

「…どうやってかしら? この廊下の空間は既に私がいじっているわ。このままどうやってお嬢様の所へたどり着くというのかしら?」

 姿は見えずとも、咲夜の声だけが廊下に響く。
「どうやって? そんなの勘よ、勘」
 霊夢がきっぱりと言い切った。その声色には出てこないならそれならそれでいいと、本気で思っていることがうかがえた。

「なるほど。確かにあなただったら、勘だけで無理矢理たどり着きそうですね」

 その言葉と共に、十六夜咲夜が霊夢の前に姿を現した。
「出てきたわね、咲夜。ちょうどいいわ、あんたにも言いたいことはたくさんあるんだから」
「なにかしら?」
 ご立腹の霊夢に対し、咲夜が瀟洒に受ける。
「レミリアのバカのバカバカしい行動を、ちゃんと止めなさいよ、バカ」
「私が止めて聞く方ではありませんわ。それに、何故止めなければならないのかしら?」

「そんなの、私がめんどくさいからに決まってるでしょ!」

 胸をはって、霊夢がいかにもめんどくさげに言い放った。言葉と態度の節々に、かなりいつもの調子を取り戻していることがうかがえた。
「それこそ、私のうかがい知るところではありませんね」
「ま、こっちは予定通り、あんたをぶちのめしてから、レミリアのバカをとっちめるだけよ」


「それはどうかしら、幻符『殺人ドール』!!!!」


「ぶちのめすわ、夢符『封魔陣』!!!!」




「月符『サイレントセレナ』!!!!」


 パチュリーの繰り出す弾幕を、華麗な箒さばきで魔理沙がかわしていく。
「今日はいつもにも増して、すばしっこいわね」
 ぜぇぜぇと息を荒くしながら、パチュリーが負け惜しみにも似たそんな言葉を言う。
「言っただろ、今日の私は絶好調だって。ぜんぜん余裕だぜ」
 魔理沙のその言葉に嘘偽りは一切なかった。魔理沙が余裕をもってパチュリーの弾幕をかわしているのは、対するパチュリーにもハッキリわかっていた。
「…でも、そっちからも攻撃しないと終わらないわよ。それとも、私のスペルカードが切れるのを待っているのかしら?」
「さーて、どうかな?」
 魔理沙がそう言った瞬間…

「魔理沙ー!! 見つけたーーー!!!!」

 …開け放たれていた図書館の扉から、フランが飛び込んできた。
「妹様っ!?」
 てっきりレミリアの側にいると思っていたフランの登場に、さすがのパチュリーも驚きの声をあげた。
 しかし、そんなパチュリーの驚愕など、フランはお構いなしだった。


「禁忌『レーヴァテイン』!!!!」


 とにかく魔理沙めがけて放たれた弾幕は、その前にいるパチュリーも当然のように巻き込む。
「…くぅっ!」
 ハチャメチャに振り回される炎の魔剣を、パチュリーはなんとか、魔理沙は計算通りとでも言いたげな様子でかわしていく。
「…妹様を待っていたとでも言うの!?」
「ああ、そう言っちゃうぜ!」
 スペルカードを節約するためか、はたまた面白がっているだけなのか、魔理沙はフランの流れ弾でパチュリーを倒す予定のようだった。


「なめるな! 火符『アグニシャイン』!!!!」


「うわわわっ!!」
 さすがは100年を生きる魔女。フランの炎の魔剣と反発しないように、火の魔法を繰り出すことによって、魔理沙を逆に追いつめる。
 どんなに鮮やかに箒を操ろうとも、フランの弾幕にあわせて放たれたパチュリーの弾幕は、物理的に避けようがなかった。


「くっ、しょうがない! 恋符『ノンディレクショナルレーザー』!!!!」


 言葉通りしょうがなく、魔理沙が自分の周りの弾幕をなぎ払う為に、全方位用魔法を使う。
「むかっ」
 魔理沙としては、最適な魔法を使っただけだったが、パチュリーにはお気に召さなかったらしい。
「ほんと、腹を立たせてくれるわね、この泥棒ネズミは。ふんじばって、妹様の隣の部屋に引っ越しさせてあげるわ」
 そのパチュリーの言葉に、フランが目を輝かせる。
「わーい! 魔理沙と一緒だー!!」
 そのフランの様子を横目に、パチュリーが一枚のスペルカードを高く掲げる。


「これでしまいよ! 新魔法の実験台になりなさい!!」




「さすがっ!」
「とーぜん!」
 時間すら止めて、突如ほぼ眼前に繰り出される無数のナイフを、まったくの勘…完全な勘任せで、霊夢がかわしていく。
 霊夢に魔理沙ほどのスピードはない。速度という意味では全然劣っている。
 だが、こと弾幕勝負においては、霊夢には予知とすら言っても過言ではないほどの勘があった。その早さは、物理的な速さを完全に凌駕していた。


「幻世『ザ・ワールド』!!!!」


 時間の止まった…凍りついた世界の中、咲夜のみが動く、咲夜のみが動ける。霊夢を取り囲むようにゼロ距離位置に配置される無数のナイフ、どう考えても避けようがない。光の速さで動いたとしてもどれかには当たるはず、完全にチェックメイト!

「…そして、時は動き出す」


「霊符『夢想封印 散』!!!! 無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁーー!!!」


 咲夜のスペルカードの発動とほぼ同時に、予測済みだと言わんばかりに宣言されていただろう霊夢のスペルカードが、完全に相殺する。
「…なんて、デタラメな」
「時間を操るような奴に、言われたくないわね」
 心の底からわき出ただろう咲夜の発言に、霊夢がキッパリ言い返す。
「ですね、では…」
 手品のように、咲夜の手に一枚のスペルカードが突如現れる。


「とっておきを、お見せしましょう」




「新魔法だって?」
 さすがに警戒する魔理沙の前で、パチュリーの手から放たれた1枚のスペルカードが7つに分かれる。
 7つに分かれたスペルカードは、外側の6つが六芒星を描き、その中心に1つが配置される形で、パチュリーの眼前で浮かぶ。
「とっておき、行くわよ」
 あふれ出る好奇心をかみ殺しながら、パチュリーが宣言する。


「日月火水木金土符『ブラックホール』!!!!!!」


「!!!!!! …ん? …………なんも起きないぜ?」
 大袈裟に繰り出された、パチュリーのとっておきの魔法とやらのはずなのに、見た目には何も起こった様子はなかった。
「小悪魔っ!」
 予定通りに配していた小悪魔に視線をやりながら、パチュリーが合図を送る。
「むきゅ~」
 配置していた場所が悪かったのか、小悪魔は何もしないうちにフランの弾幕でやられていた。

「…………………………」
「…………………………」

 何とも言えない空気が、魔理沙とパチュリーを包む。
「…まあ、いいわ。妹様!」
「ふえっ!? なに、パチュリー?」
 とりあえず様子を見ていたフランに、パチュリーが突如話を振った。
「弾幕を! 何でもいいから!!」
「う、うん…」
「な、なんだなんだ」
 何がなんだかわからないまま、状況は動き出す。


「禁忌『クランベリートラップ』!!!!」


 パチュリーの言うとおりに、フランが弾幕を繰り出す。狙いは当然、魔理沙だ。
「当たらないぜ!」
 完全に計算しつくしたように、魔理沙の箒がフランの弾幕をぬうように駆け抜ける…はず、だった。

「なにぃっ!!!」

 かわせたと思った、かわしたはずの魔法弾が、吸い寄せられるように魔理沙に向かってくる。

「こっ、こんなっ!!」

「…妹様を連れてきたのは、大間違いだったようね、魔理沙」

「………っっっ!!!!」

 雪だるま式に増えてくる弾幕に追われ、魔理沙にはパチュリーの言葉に返す余裕はなかった。


「…ゲームオーバーよ、魔理沙」




「『咲夜の世界』!!!!!!!」


 能力を完全に全て使って、時間と空間を支配する。あらゆる要素をはじき飛ばす、文字通りに完全無欠の『咲夜の世界』を作り出す。

 霊夢の周りに配置するナイフも、十重二十重と取り囲む。紅魔館にある全てのナイフを一堂に会したと言われても、納得せざるを得ない膨大な数だ。

「…決まりよ!」

 それは確信だった。これからどうやって逃げるというのだ。不可能だ! そんな咲夜の叫びは、どこか祈りにも似ていた。


「『夢想天生』!!!!!!!!!」


 咲夜のとっておき、チートに対抗するにはチートしかないと言わんばかりの理屈、霊夢が持つ最大にして唯一の解答を、惜しみなく繰り出す。

「そんなっっ!!!」

 咲夜が瀟洒といえない叫びをあげてしまうのも、無理からぬことだった。

 夢と現の境界に漂うかの如き霊夢には、全てのナイフがかすりもしない、全てがうたかたの夢のようにすり抜けていく。

 もちろん、話は霊夢に弾幕が当たらないだけでは済まない。霊夢から繰り出される無数の札、札、札!

 いかにしてかわす? 時間を止める? 空間をわたる? …唯一の解答は、この場から逃げ出すくらいしかない。


 否! 断じて否!! そんな選択肢はありえない!!


「絶対に避けきる!!!」




「…ふぅ~」
 パチュリーが一つ、息を吐いた。
「魔理沙、墜ちちゃった」
 フランの言葉通り、魔理沙は先ほどの弾幕を避けきれずに、墜とされた。
 まあ、無理からぬ話ではある。最後の方は、弾幕というかわいらしい名前で呼ぶのもはばかられる、雪崩のような、津波のような、そんなものだったのだから。

 ガラッ…ガラガラ…

「…しつこいネズミね。もう寝たらどうかしら」
 ゆっくりと瓦礫を押しのけて、魔理沙が立ち上がる。
「…いや、そういうわけにはいかないだろ」
 ボロボロになりながらも、その瞳からは光が幾分たりとも失われていない。
「はっきり言うわよ。私の新魔法は、正直ずるいくらい弾幕勝負においては完璧よ」
 最後通牒をつきつけるように、パチュリーがそう告げた。
「…どうかな? いろいろ問題あるみたいだけどな」
 確かにいろいろ問題のある魔法ではあった。その最大のものは、弾幕が一切出ないということだった。弾幕勝負において、弾幕が出ないというのは、致命的と言っていいことだろう。
 だからこそ、パチュリーは小悪魔を露払い役に使わず、奥に隠して配していたのだ。もちろん、発動後の弾幕係として。
 魔理沙がフランを引っ張り出したことによって、小悪魔は役をなさなくなってしまったが、結果としては、フランというそれ以上の弾幕係を得たことになった。
「…しょうがないわね、今度で最後よ」
 パチュリーはそう言いながら、フランに目配せをする。フランもわかったというように頷く。


「日月火水木金土符『ブラックホール』!!!!!!」


「禁忌『クランベリートラップ』!!!!」


 先ほどと全く同じコンボが、魔理沙に襲いかかる。
「へっ、へへっ…」
 吸い寄せられるように、魔理沙に弾幕が襲いかかる。


「なめんじゃねえ!!! 彗星『ブレイジングスター』!!!!!」


 着弾前に、弾幕を突っ切る。

「無駄よ! どんなに速度をあげようとも、逃げ切れない!!」

「うおおおぉぉぉーーーーーーー!!!!!!!!」

 きらめく星々をまき散らしながら、巨大な魔法弾と化して、魔理沙が突き進む。

「こっちに向かって…相打ち狙いっ!?」

 スペルは既に使用中だ。迎え撃つ為の策は、ない。

「ひっ!」

 突っ込んでくる魔理沙に怖れて、パチュリーが思わず目を閉じる。

「!!!!!」

 眼前にせまった魔理沙は、目をつぶっているパチュリーの眼前を…

「っっっっ!!!!!!!!!!」

 …そのまま、通過していった。

「…………………あれ?」

 思っていた衝撃が来なかったことに不審に思い、目を開けたパチュリーの目に映ったものは…


「ひゃあぁぁぁーーーー!!!!!!!!!!!!!!」


 …魔理沙を追いかけていた、光の津波と化した弾幕だった。




「ふーー」
 トントンと、玉串で腰を叩く。
「なんというか、疲れた」
 霊夢の目の前には、咲夜が倒れ伏している。
「…起きてこないわよね」
 霊夢の究極奥義と言っても過言ではない、『夢想天生』をギリギリの所までかわし続けていた咲夜だったが、さすがにかわしきれるものではなかった。
「あー、疲れた。魔理沙に任せて、もう帰ろうかしら」
 とことんやる気のない台詞を吐きながら、しょうがないとばかりに、ふわりと浮き上がる。


「あとは、レミリアをとっちめるだけね」




「むきゅ~」
 図書館の主は、小悪魔同様に沈黙した。
 図書館に残されるのは、あまり嬉しくない客人が二人。
「やっと二人だけで遊べるね、魔理沙」
 ボロボロのパチュリーのことなどなかったように、フランが楽しそうに言った。
「やる気十分だな、フランは」
 ボロボロの体に、大層疲れた表情を浮かべる。
「うん! だって、楽しみにしてたから!!」
 魔理沙の状態などおかまいなし、とことん自分本位の言葉だったが、フランの笑顔を見るとしょうがないなと思うしかなかった。


「しょうがねえな、とことんやってやるぜ!」




「…ようこそ、霊夢」
 椅子に座ったまま、歓迎を意図するかのように両手を広げて、レミリア・スカーレットが霊夢を出迎えた。
「ずいぶんと遅い到着だったわね」
 レミリアのその物言いに、霊夢がはー…とため息をついた。
「そう思うなら、玄関まで出迎えなさいよ。余計な手間をかけさせて」
 霊夢のその発言に、レミリアがくすくすと笑って答える。
「悪いわね、こちらにも様式美というものがあってね。ラスボスがひょこひょこと途中で出てくるのは拍子抜けじゃない」
「フランはひょこひょこと出てきたみたいだけど、姉妹そろって一緒に出てくればいいじゃない」
 様式美を語るレミリアに対し、片やめんどくさげに、霊夢がそう応じた。
「イヤよ。フランはフラン、私は私よ」

「まあ、知ってたけどね。でも、そんなことよりも…」

 霊夢が先ほどまでのめんどくさげな様子をどこかへやり、真剣な表情になる。
「何かしら?」
 真剣な表情の霊夢を、片やニヤニヤと笑いながら、レミリアが応じた。
「なんでこんなことをはじめたの? 何が目的よ」
 ニヤニヤと笑っているレミリアに、カチンと来ながらも、霊夢が聞いた。
「目的? …そんなの当たり前。霊夢…あなたと、それから、魔理沙…そう、幻想郷にいる他のみんなと遊ぶ為よ。そう、盛大にね!」

「遊び…ですって…」

「あとは、なんではじめた? …だっけ? そうね…」


「…月がとっても、綺麗だったから…かしら?」


 ニヤリと、大層楽しそうに笑った。


「レミリアァァァーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」


 堪忍袋の緒が切れた音を、確かに聞いた。

 勢いよく飛ばした針達が、レミリアの元に殺到し、その座っていた椅子を粉々に打ち砕いた。

「…あらら、けっこう気に入っていたのに」

 ふわりと浮かび上がっていたレミリアが、そんなどうでもいい感想を述べた。


「宝具『陰陽鬼神玉』!!!!!」


「天罰『スターオブダビデ』!!!!!」


 話し合いなど雲散霧消、なし崩しのまま、ラストバトルへとなだれ込んだ。




「禁忌『カゴメカゴメ』!!!!!」


「当たるかよ!」
 フランの繰り出す弾幕を、変わらず鮮やかに魔理沙がかわしていく。
 体がボロボロだとか関係ない、気合いとど根性でなんのそのだ。
「あはははっ! すごいすごい! やっぱり今日の魔理沙はすごいよ!!」
 自分の弾幕が全く効果がないというのに、フランは楽しそうに笑う。
 そんなフランの様子を横目に見ながら、冷静に枚数を数える。自分が見ていない所で使ったのかどうかはわからないが、見た限りでも…あと十数枚、なんとかなる、なんとかかわせる。

「くす、くすくすくす…あは、あはははは、あはははははははーーーー!!!!」

 魔理沙の心の内の計算を知ってか知らずか、フランが感極まったように笑う。
「じゃあ、私もパチュリーみたく、とっておきを見せるね」
 フランのその言葉に、魔理沙がドキリとする。
 フランは嘘は言わない。はったりなどない。真っ正直で素直すぎるくらいだ。
 
 つまりは、そう、…本当にとっておきに、間違いないのだ…


「禁忌『フォーオブアカインド』!!!!!」


 スペルカード発動と共に、フランの姿がぶれる。
 ぶれた像は、そのまま新たな像を形なし、また再びぶれて、像をなす。
「…それは、前にも見たぜ…」
 軽口のつもりが、自分でも全然笑えない。
 前に見たことがあるからこそ、このまま終わるはずがない。だって、とっておきなんだから。

「「「「うん、ここからだよー」」」」

 現れた4人のフランが、無邪気に笑って宣言する。


「…まさかっ!!」


 …魔理沙が最悪な出来事を想像し…
 
 …悪魔はその最悪な出来事を引き起こす…


「「「「禁忌『レーヴァテイン』!!!!!!!!」」」」


 スペルカードの重ねがけ…しかも四重奏、反則も反則。それはある意味、スペルカードルールの破壊と言えた。




「冥符『紅色の冥界』!!!!!」


「霊符『夢想封印 集』!!!!!」


「あはははははっっ!! 楽しい、楽しいわね! 霊夢!!」
「このっ! 楽しいわけあるかっ!!」
 互いの弾幕が乱れ飛び、その最中に響き渡るのは、紅い悪魔の哄笑。心底楽しそうに笑うレミリアに、霊夢のイライラは募る。
「弾幕ごっこがしたいだけなら、わざわざあんな真似する必要ないじゃない! 何を考えているのよ!」
 一度は打ち切った話を、再び霊夢が切り出す。
「んー? そうね、そうね。当然ね。弾幕ごっこがしたいだけなら、ちょちょっと神社を壊せばいい」
 霊夢の壊すなー!と言うつっこみも無視して、レミリアがしゃべり続ける。
「それだけで、短気な巫女は弾幕ごっこになだれ込む。別にこんなしちめんどくさいことをしなくてもいいわね」
「短気かどうかはおいておいて、その通りよ」
 色々と引っかかるところはあったが、話のとっかかりはできた。
「わざわざみんなに喧嘩を売る必要はない。今あるこの幻想郷に騒動を起こす必要なんて、どこにもないはずよ」
「そうねえ、ないわねえ」
 真剣な霊夢に対して、レミリアはニヤニヤと笑ったままで、あまり真剣味がない。

「なんでよ! 今の幻想郷が好きじゃないの!?」

 霊夢は悔しかった。そう、悔しかったのだ。
 かつては異変を起こした奴も、今はこの幻想郷を好きなはずだと思っていた。そう信じていた。
 特にレミリアは楽しそうだったじゃないか。
 のほほんとした顔で、意味もなく神社に昼間っから遊びに来ていたじゃないか。
 それで、神社でゴロゴロしている萃香にからんでみたり、ひょっこり出てくる紫とこづきあったり、結構楽しそうにすごしていたではないか!

「そうね、今の幻想郷は結構…ううん、かなり好きよ」

 レミリアがニヤニヤ笑いをやめ、ゆったりとした優しい笑顔を浮かべて言った。
「どこかのんびりとした…そうね、まるで霊夢のような幻想郷は、かなり嫌いじゃない。とても具合が良かったわ」
 どこか懐かしむように、レミリアが言う。
「そうよ、霊夢のようだから、好きだったわ。のんびりゆったりするのも悪くない、そう思ったわ」

「だったらっ!!」

「…私がね、霊夢に惹かれたのは、全く私と違うから。真逆の存在だったからよ…」
 霊夢の叫びを無視するように、レミリアが言葉を続ける。
「…自分にないものを持っていたから惹かれた。自分とまったく違うところに憧れた。そののんびりゆったりまったりしたところが、私にはとても心地よかったわ…」
 レミリアは思い出すかのように目を閉じると、ゆったりと微笑を浮かべた。

「…でもね、私の本質はその真逆。だからこそ惹かれたけど、だからこそ染まるわけにはいかない!」

「レミリア…」


「私の翼は何のためにある? 私の爪は何のためにある!? 私の牙は何のためにあるっ!!」


 激しくも寂しさを感じずにはいられない、レミリアの本音。


「闘争こそ本質、それが私なのよっ!!!」




「くあああぁぁぁぁああああぁぁぁぁーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
 かけ声だか悲鳴だか何がなんだかわからないものを口からはき出しながら、魔理沙がかろうじて切り抜けていく。
 4人のフランから同時に繰り出される炎の魔剣、どうあがいても避けきれるはずがない。
 魔理沙がかろうじてながらも避けられているのは、まだフラン達が本気でないからだった。

「「「「あはははははははーーーーー!!!!!」」」」

 フランの笑いが、だんだん凶悪さを増していく。

「「「「どんどん行くよー!!! まだまだ壊れちゃだめだよ、魔理沙ーー!!!!」」」」

「くおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

 魔理沙には、フランに対して返事をする余裕なんかない、ありえない。

「「「「あははははははははははーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」」」」

 その激しさは、先ほどのパチュリーとのコンボと比べてすら、なお激しい!


「くぅっっ!!!! 星符『ドラゴンメテオ』!!!!!!」


 どうしようもなくなって、魔理沙がスペルを使う。一時しのぎであっても、とにかく弾幕を掃討しなければどうしようもない!


「「「「…でも、それだけじゃ足りないよ…」」」」


「っっっっっ!!!!!」

 弾幕の切れ間ができたのは一瞬、すぐにその空白地帯は埋め尽くされた。

「「…残念だったね、魔理沙」」

 激しい衝撃に、箒から放り出される。


「…面白かったよ、魔理沙」


 スローモーションのように本の山の上に墜ちた魔理沙に、フランがにっこりと笑ってそう言った。




「誰が決めたのよ、そんなの! 吸血鬼が戦わなければならないなんて、決まってない! のんびりまったりでもいいじゃない!!」
 霊夢のその叫びに、レミリアがニヤリと笑って答える。
「誰が決めたって? そんなの、私に決まっているじゃない」
「なっ!」
 そのレミリアの答えに、霊夢が絶句する。
「私の運命は、私が決める。私の生き方も、当然、私が決める」
 絶句してしまった霊夢を見て、さらにレミリアが笑みを深める。
「ぬるま湯の中にいるような、あののんびりまったりした世界もいいわよ。うん、それを否定なんかしないわ…」

「…だけど、激しい、炎のような闘争の世界もいいものよ。ええ、きっと素敵よ。そんな幻想郷も見てみたくないかしら?
 そう思ったら、私が起こしたくなった。他の誰でもない、この私が、このレミリア・スカーレットがよ!」

「…そんなの、死ぬわよ、レミリア」
 レミリアの言葉に、霊夢がそれだけを断言した。
「そうね、間違いなくそうなるわね。そういう末路、そういう運命をたどることになるわね」
 憮然とした表情の霊夢に対し、レミリアの笑顔は最高に楽しそうだった。
「でも、それがどうしたの? 闘争の中で死ぬ。それこそ私の本質だわ。
 私の爪がこの幻想郷を引き裂こう! 私の牙がこの幻想郷に消えぬ傷跡を残そう! それこそ、日和見のババァ共がどんなに取り繕おうとしても、消えないほどのね!!」

「させないわよ」

 霊夢が静かに告げた。

「そうこなくちゃね」


 更に楽しそうに、レミリアが笑った。




「さーて、次は霊夢かな」
 フランが新たな標的を、霊夢へと移す。

「…待てよ…」

 箒を杖のようにして、魔理沙がその身を起こす。
「まだ動けたんだ、魔理沙」
 フランがちょっとだけびっくりする。
「…まだ、遊びは終わってないぜ」
 動けるのが不思議なくらいのボロボロになっているのに、魔理沙の軽口は変わらない。
「んー、今度の遊び相手は、霊夢にしようかなと思ったんだけど…」
 フランがうーん…と、考える。

「うん、そうだね。最後まで、魔理沙で遊ぶよ」

 フランがニッコリと笑ってそう言った。

「訂正だぜ、魔理沙と遊ぶだ」

 魔理沙もニッコリと笑ってそう言った。


「あはははっ! 禁忌『フォーオブアカインド』!!!!!」


「…そして、自分にも訂正だ。ちょろちょろ逃げまわるのは、違うぜ…」


「「「「禁忌『レーヴァテイン』!!!!!!!!」」」」


「…弾幕は、パワーだぜ!!」


 八卦炉を上空に構えると、魔力を集中させる。懐から十数枚のスペルカードが飛び出すと、意志を持つかのように八卦炉に飛び込んでいく。


「魔砲『ファイナルスパーク』!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




「止められるかしらっ! 紅符『スカーレットシュート』!!!!!」


「止めるわよっ! 神霊『夢想封印 瞬』!!!!!」


 あまりに激しい弾幕合戦に、ついに紅魔館の屋根が悲鳴をあげて、崩れ落ちた。
「満月っ!? もう夜になっているのっ!?」
 崩れ落ちた屋根から覗くのは、夜の王とでも言わんがばかりに神々しく輝く、紅い満月。
「ああ、今夜の月も、とっても綺麗ね」
 レミリアがその真っ赤な月に向かって飛ぶ。
「咲夜にこの館の時間をいじってもらっていたのよ。ほんの数時間のつもりだったでしょうけど、今は真夜中、私の時間よ」
 レミリアが紅い月を背負って、霊夢に向き直る。

「さあ、楽しみましょう、霊夢!」

「止めるわよ。私のため、幻想郷のため、そして、あんたのためにねっ!」

 レミリアの宣言に、霊夢が答える。
「…私の、ため?」
 先ほどまでの楽しげな様子が、影を潜める。そして、再び微笑んだ。
「何かしら? 私の心配をしてくれてたのかしら?」
 優しげな表情で、レミリアが楽しそうに聞いた。
「そうよ、悪いかしら」
 憮然とした表情で、霊夢が応じる。
「ふふ、あははっ、何かしら、こそばゆいわね。あはははっ、なんて言うのかしらね、この気持ち、あはははははっっ!!」
 ころころと、レミリアが笑う。対する霊夢は、怪訝な表情になる。

「…そう、それは不快ね。それとも、不愉快かしら?」

 唇はつり上げた笑顔のまま、瞳からは笑みが消える。

「私は私の行動に責任を持っている。その結果も、運命も、私が握っている!」

「レミリアっ!!」

「そのことに対して、誰に心配されるいわれもない。たとえ、あなたでもねっ!!」

 レミリアの豹変に、霊夢はたじろぐしかなかった。自分の気持ちに間違いはない。それでも、この反応は予想外だった。


 それが、反応の遅れへと、繋がった…


「紅符『不夜城レッド』!!!!!!!!!!」




「あはは、また負けちゃったか」
 フランが力なく笑った。体はボロボロだったが、表情は晴れやかだった。
「ああ、お前の負けだぜ、フラン」
 対する魔理沙も、負けずにボロボロだった。それでも、ニッカリと笑った。
「魔理沙はやっぱり、強いな」
「おうよ、まあフランもなかなかのもんだぜ」
 そう言って、魔理沙がボロボロの体を立ち上がらせる。
「行くの?」
 フランが心配そうに、そう聞いた。
「まあな、霊夢にも約束してるしな」
 へへっと笑うと、フランにニッコリ笑って告げた。

「今度も、また遊ぼうぜ」


「うん!!」




「…興醒めね。つまらない結末だったわ」
 心底つまらなさそうに、レミリアがつぶやいた。
 一歩反応が遅れた。ただそれだけで、霊夢は墜ちた。
「…ホント、つまらない幕切れだったわ」
 本当に不本意そうに、レミリアが愚痴る。
 お気に入りの椅子はもうないので、仕方がないとばかりに瓦礫に腰を下ろす。
 弾幕ごっこなのだから、こういう幕切れもある。ただ、この幕の切れ方は、やはり気に入らない。
 待ち望んでいたメインディッシュだったというのに、これでは前菜としても物足りないではないか。
「これからに楽しみをとっておくしかないわけか。まあ、強そうなのはまだゴロゴロいるわけだしね」
 自分を納得させるように、レミリアがそう独りごちる。

「うわっ、こりゃひでえな」

 オヤッと思えば、魔理沙が開け放たれ…壊れた扉を乗り越えて入ってきたところだった。
「あら、魔理沙じゃない。フランの相手をしていたと思っていたのだけど…さすがね、あの子を超えてきたのね」
 新しい遊び相手の登場に、妹と変わらぬ無邪気な笑顔を浮かべる。
「ずいぶんボロボロだけど、ちゃんと楽しませてよね、あなたは」
 くすくすと笑いながら立ち上がり、両手を広げて歓迎する。
「まあ、霊夢との約束だからな。あいつがダメだったときは、ちゃんと私がなんとかするって」
 ボリボリと頭をかきながら、魔理沙がしょうがなさげにそう言った。
「ふふふっ、それはいい心がけだわ。ちゃんと相手をしてちょうだい」
 ニヤリと笑うと、スペルカードを構える。
「待てよ。私は言ったぜ」
「何かしら?」
 急にストップをかけた魔理沙に、レミリアが不審げに尋ねる。

「霊夢がダメだったときは…ってな」

 ガラ…ガラガラ…

「ぷはーっ!!」

 瓦礫を押しのけて、霊夢が立ち上がる。パンパンと巫女装束についた埃を払う。
「ふー、びっくりした」
 墜とされたわりには、なかなか元気そうに霊夢が言った。
「ふーん、さすがに私の心配をしてくれるだけはあるわね。あの程度では大丈夫ってことかしら」
 さっきの発言がまだ気に入らないのか、レミリアの言葉には棘があった。
「あんたがどう思おうが関係ない。私は心配するわよ」
 その霊夢の発言に、レミリアのこめかみがピクリと動く。

「だって、私もあんたのこと、嫌いじゃないからねっ!」

 恥ずかしいことを言ったとばかりに、霊夢が顔を真っ赤にする。
「へ?」
 その霊夢の反応に、レミリアは怒りも忘れて、ポカンとした表情を浮かべる。
「霊夢、ツンデレだぜ」
 魔理沙がにししと笑う。
「魔理沙、うるさい!!」
「だってよー。さっきのセリフ、まるでアリスみたいだったぜ」
 レミリアを無視して、二人でぎゃーぎゃーといつものやりとりをする。
 そこに、緊張感はまるでない。二人ともボロボロのくせに、そんなこと関係ないとばかりの、いつもの様子だった。
 
「くっ…ふくく、あは、あははははっっ!!!」

 耐えきれなくなったように、レミリアが笑う。
「まいった、まいったわね、まったく。これじゃあ、構えているのは私くらいなものじゃない」
 心底あきれながら、そして、心底感心しながら、レミリアがそう評した。
「あら、今頃気づいたの?」
 霊夢がふふんと偉そうにふんぞり返る。
「うわー、かなりテンパってたくせに、よく言うぜ」
 魔理沙が霊夢をそう言って茶化す。
「うー、魔理沙はうるさいから、もうあっち行け」
 霊夢が顔を真っ赤にして、部屋のすみっこを指さす。
「へいへい、んじゃ、後はまかせたぜー」
 魔理沙は素直に部屋のすみっこに行くと、どっかりと腰を下ろした。

「んじゃ、特等席で見物させてもらうぜ」

 ニッカリと笑うと、そう二人に告げた。
「ふふ、砂かぶり席ならぬ、弾幕かぶり席ね」
 レミリアがそう言って、ウインクを一つ投げる。
「セルフで避けなさいよ、当たっても知らないから」
 霊夢がそっけなく、そう言った。


「行くわよ! 神槍『スピア・ザ・グングニル』!!!!!」


「来なさい! 神技『八方龍殺陣』!!!!!」


 仕切り直して、天井の大穴から空に駆け上った二人は、きらめく星々よりも派手で、紅い満月よりも荘厳な弾幕を繰り広げる。

「うわー、いいなー、お姉様」

 フランがそう言ってひょこっと顔を出すと、トタトタと駆け寄ってきて、魔理沙の横に座る。
「割と元気そうだな、フラン」
「へへー、この後もう一戦する?」
 無邪気にそう言うフランに、魔理沙は肩をすくめる。
「そいつは勘弁してくれ」


「夜符『デーモンキングクレイドル』!!!!!」


「境界『二重弾幕結界』!!!!!」


 いきさつはどうあれ、動機はどうあれ、一方は楽しげに、一方はどこかめんどくさげで…それでも、どこか楽しそうに、弾幕ごっこを繰り広げる。

「…お嬢様」

「そんな影から覗く必要はないでしょ」

 柱の影からこっそりと二人の弾幕ごっこを見つめていた咲夜に、小悪魔に肩を借りているパチュリーがそう言った。
「いえ、偉そうなことを言った手前、少々気恥ずかしいと申しますか」
「お互い様よ。レミリアだって、偉そうなこと言っていたわりに、実際は何がしたかったのやら」
 互いに苦笑しながらも、一瞬たりとも見逃すまいと、夜空を眺める。


「これでどう! 魔符『全世界ナイトメア』!!!!!」


「ちょこざいなっ! 霊符『博麗幻影』!!!!!」


 館を飛び出した二人の弾幕ごっこは、館の外、門の前からもよく見えた。

「これは、結果オーライになるよね」

「そーなのかー?」

「あはは、たまやー!!!」

 メイド長の折檻が怖いのか、美鈴が自分にそう納得させるようにつぶやく。
 それに対するルーミアの言葉は、いつもの納得というよりは、むしろつっこみに近かった。
 そんな二人を無視して、チルノは花火でも見ているように、かけ声をあげる。


「紅符『ブラッディマジックスクウェア』!!!!!」


「神技『八方鬼縛陣』!!!!!」


 紅い霧に覆われた空の下で、紅い月の光に照らされて、二人はダンスを踊っているようだった。

「…ふふっ、余計な取り越し苦労でしたかね、紫様」

「…そうね。すべて世は事も無し…ということかしら」
 
 スキマから覗いていた二人は、邪魔にならないよう、静かに見続けるだけだった。





「神鬼『レミリアストーカー』!!!!!!」



「大結界『博麗弾幕結界』!!!!!!」










 今回の、レミリア・スカーレットが引き起こした”異変”は、いつものように”楽園の素敵な巫女”博麗霊夢と、”普通の魔法使い”霧雨魔理沙の活躍で、解決した。

 ”レミリア主催の宴は、なかなか盛り上がったぜ”

 …との、普通の魔法使いの談から、今回の異変は”紅魔宴異変”と、名付けてみたいと思います。
 
 以上、復旧作業の続く紅魔館から、ニュースは最速がモットーの射命丸文が伝えました。
東方SSは4回目となりました、須達龍也です。
今回は、自分的にはかなりの大長編となりました。最後まで読んでくださった皆様に、感謝を!
須達龍也
http://www.eonet.ne.jp/~sudati3104/
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コメント



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1.90煉獄削除
どんどん場面が変わっていく戦闘が面白かったです。
でも、私としてはもう少しレミリアとか霊夢たちの心情があれば良かったな~と思いましたね。
まあ、野暮なことは言わないでおいて・・・。
楽しかったですよ。
4.20名前が無い程度の能力削除
戦闘描写はスペルカード名を叫んで乱発してるだけで終始グダグダ、本人達が盛り上がってる分だけ白けました。
あと妹様レーヴァテインばっかり、もう少しやり様はなかったんですか?
9.60名前が無い程度の能力削除
最初のくだりで他勢力の絡みもあるかと思ったのですが・・・ちょっと残念です
上の人も言ってますが、戦闘の描写もスペカ叫ぶ以外の所は薄い感じがしました

題材はなかなか良いと思うので、次回に期待して厳しめな点数で
11.無評価ぐりる削除
お疲れさまでした。
本格的なバトル物は、東方では初めてですね。
締めは、いつもながら須達さんらしさが出ていますね。

場面の移り変わりが激しく、一つ一つの戦闘が細分化されてしまっているのが、
ちょっと読みにくかったかな。

「誰が決めたって? そんなの、私に決まっているじゃない」
のシーンは格好いいですね。
陳腐なアニメのように、説得されて同様している隙にドカンでは、
白けるのもいいところですからね。
12.80ぐりる削除
って、評価点忘れましたw
15.50司馬貴海削除
確か二次創作では題名に「東方○○」とつけるのをZUN氏がいい顔をしていなかったと思います。
評価については他の方といいたいことは一緒です。
21.無評価須達龍也削除
自分的に一番時間と熱意をかけて、真っ正面から挑んだ作品が、一番ひどい評価を受けたのは笑うしかない状況なんでしょうが、ちっとも笑えませんね。

>弾幕ごっこ
自分の中のスペルカードルール、弾幕ごっこのイメージは、スペルを掲げて、弾幕を撃ち出す。それを避けるか、スペルで相殺するか、そんな感じです。
戦闘描写が薄いと言われても、弾幕についての描写は書ききれない、表しきれない部分があるし、書き切れるはずもないし、ただ冗長になるだけだろうとも思います。
フランのレーバテインは自分的に情景描写がつかめやすく、またしやすいものだったので、多用したところはありますが、そこまでひどいとも感じませんでした。やりようがなかったのかと聞かれても、やりようはなかったですと答えます。
>東方~~
東方~とつけない方がいいというのも、正直はじめて知りました。他にも東方~とついている二次創作は多く目にしていたものですから。

まあ、反論するのも格好悪い状況ですが、とりあえず、言いたいことだけ。
22.無評価名前が無い程度の能力削除
作者の自意識過剰っぷりに引いた
お前程度の文書く奴なんてそれこそアホみたいにいる。
自分の表現と考えは特別、みたいな返答が自己中すぎて気持ち悪いし。
はっきり言って救えないけど、「一番ひどい評価を受けた」とか「笑うしかない」とか「反論するのも格好悪い状況」とか、お前何様?良い評価くれた人を馬鹿にしてんの?
思っても無い評価受けたからって駄々こねるしか出来ない精神的ガキは半年ROMってろ。
23.無評価名前が無い程度の能力削除
点数つける価値もない
24.10名前が無い程度の能力削除
作者の態度が最悪です。ひょっとしてアリスソフトのHPに作品あるから実力勘違いしちゃいました?
あそこは来る者は拒まずの精神なんで質は関係無いですよ。ああアリスCDに入ってるアンタの作品邪魔。
29.無評価名前が無い程度の能力削除
>東方~~
東方~とつけない方がいいというのも、正直はじめて知りました。他にも東方~とついている二次創作は多く目にしていたものですから。

あれか、他の人もやってんのに何で俺は駄目なんだ、ってか
そういう気持ちがなければ、わざわざ後半の文(他にも東方~とついている二次創作は多く目にしていたものですから。)はつけねえわな
30.30名前が無い程度の能力削除
んー、作者さんのレスは置いといて。
戦闘の描写が話題になってるんで、それについてだけ。

僕も、この作品の戦闘描写はいただけないと思います。

戦闘描写は、なにも弾幕の描写だけじゃありません。
お互いの駆け引き、掛け合い、心理描写に情景描写などなど。
上手い人なら、弾幕の描写などしなくても、例えばちょっとした仕種や、二人の会話だけで、戦闘の緊張感を表現出来ると思いますよ。
もちろん、弾幕ごっこ自体を書き込んでいって、読者を楽しませるのもアリですけど。

>戦闘描写が薄いと言われても、弾幕についての描写は書ききれない、表しきれない部分があるし、書き切れるはずもないし、ただ冗長になるだけだろうとも思います。

物書きが文章から逃げてどうするんですか?
「書ききれない、表しきれない」なんて逃げずに、俺の筆でどうにかしてやろうぐらいの気持ちで取り組んで下さいよ。こういう台詞を聴くと、とても悲しくなります。

>スペルを掲げて、弾幕を撃ち出す。それを避けるか、スペルで相殺するか

作者さんの弾幕ごっこのイメージがこの通りならば、それを何とか文章に起こそうとして下さい。
このイメージをいかに膨らませて、肉付けし、自分なりに料理していくか。まさに腕の見せ所でしょう。
結果、冗長になるか否かは、作者さん次第ですが、仮に冗長になってしまったとしても、作者さんがこの難題に取り組んだという姿勢と結果は、後々生きてくるはずです。

次回に期待してます。
気を落とさず、頑張って下さいね。
31.80名前が無い程度の能力削除
いろいろ言われているようですが私は面白いと思いました。
でもせっかく紅魔郷時点ではいなかったキャラたちに異変であると察知させたのですから
霊夢と魔理沙以外のキャラもストーリーに絡ませた方が自然だった気がします。

個人的には「…3面で、妹様ですか」のところがツボでした。
32.無評価名前が無い程度の能力削除
まず作品から。
ある程度『こういう弾幕である』という東方にてその弾幕を見ていることが最低条件でありますね。宣言以降、描写が皆無なスペルもありますし。
あと全体的に感嘆詞が多すぎるように感じました。『!』は重ねると確かに声や強調を大きく感じさせる効果がありますが、あまりに多すぎる(五つ繋げるとか)とその効果が逆に弱くなります。繋げても二つぐらいが無難かと。
あとせっかく地の文を入れてるんですから、心理描写も入れてほしかったです。こう考えていた、と言われたとしても、文章からしか作品を見ることができない読者はおいてけぼりを喰らってるようなものですよ。

で、ここからコメントの方に。
はっきり申し上げて、一物書きとして貴方のその感性が理解出来ません。なぜ笑えるんですか?
正直申し上げまして、弾幕の描写を入れれば冗長になってしまうと言うほどの文章力では、御自分の主張を通される前に『努力してください』としか言えません。真っ当なアドバイスへの切って捨てるような反論なんぞ論外もいいところです。

作品に対しては四十点と言いたいところですが、自分の指摘がどこまで通るか分からない、『今後に期待があまりもてない』という理由であえてフリーレスで。
35.無評価名前が無い程度の能力削除
既にさんざん言われてますが、戦闘描写がダメダメ、というかそれ以前の問題。いつから、弾幕ごっこは自分のスペルカード名をどれだけ大声で叫べるかを競う遊びになったんですか?
レーヴァテインの情景描写が掴めやすく、しやすい? 作中4回も使ってるのに、使われた表現は「炎の魔剣」、これだけ。これのどこに情景描写が?

読者に対して喧嘩を売っているとしか思えない、コメント欄の作者の態度は更に最悪。
作品の筋書き自体は悪くなかっただけに、本当に残念です。
37.無評価名前が無い程度の能力削除
戦闘描写がひどいと思ったが他はそこそこ楽しめました。が真面目に批評した方に対してHPの掲示板、並びにここでのコメントのひどさから点数はフリーレスで。
38.無評価名前が無い程度の能力削除
同じくそこそこ楽しんで読めました。

が、さすがにここでのコメント及びHPの掲示板での愚痴を読むと引かざるを得ないです・・
40.20名前が無い程度の能力削除
ここでのレスやHPの掲示板を見る限りだと、きっと作者はこの場所をもう見ていないと思いますが。
作品そのものに関しての意見は他の方とそう変わらないのでノーコメントで。

批評というのは「批判」も含めた評価だと思います。自分の作品が批判されるのが嫌なら、投稿しないのが一番ですよ。
批判されたから創作意欲が薄れるというのは、物書きの姿勢としていかがなものでしょうか。作者はもう少し落ち着いて周りを見るべきなのでは。
それと、みだりに最高傑作とかそういう類の言葉は使わないほうがいいと思います。作家としての底が知れるので。
41.無評価名前が無い程度の能力削除
>お祭り気分で参加している連中はどうでもいいんですが、真剣に作品の評価をしてくれた方々には申し訳ないことになりました。
・・・・・・・・?・・・・・・・・・・・・・??・・・・・・・・・・・・・・・!
へー
そうかそうか
『批判されたら』、それはお祭り気分で参加したコメントであって、『真剣な評価じゃない』んだ

まじめに感想書くのが馬鹿らしくなりますねw
二度と投稿しないで下さい
42.無評価名前が無い程度の能力削除
お前東方やったことないだろ。
43.無評価名前が無い程度の能力削除
自分の作品は高評価でないと納得できないなら自分のHPの中でだけ活動して外に出てこないで下さい
そもそも、作者が21.のコメント出すまでは悪く無い評価だったとおもいますけどね
どれだけ高評受けないと満足しないんですか

21.のコメントや掲示板のコメント見る前に入れてしまった点を無くしたくて堪りません
46.100名前が無い程度の能力削除
!?え・・・・・・吃驚。面白いじゃないですか。禁忌「レーヴァテイン」は紅魔郷のロマン

スペルカード名見るだけで、弾幕をイメージしてしまう強靭な想像力と見た。

誰にでも多少の失敗、多少の失言はあるよ!

作者様がたくさん時間を掛けたのならば、感傷的になるのは当たり前

執拗に攻め立てるのは誠に薄く、軽挙妄動であるッ!

次回作も期待してます!