「・・・・・・ふう、終わった」
映姫は、今日のストレスをため息に乗せて外へ出した。
やっと山積みの問題がなくなった、と安心した映姫に一つの問題が浮かんできた。
「はぁ・・・・・・、今日最後で、最大の問題がありましたね・・・・・・」
そう呟き、自分の仕事部屋を後にした。
彼岸花の紅さがより紅いものになっていき、それも闇に覆われようとしていくころ。
そこに住む、住人のような大木の木陰にいる、一人の死神の隣へ立つ。
「これだけは日常にしたくない問題なのですが・・・・・・」
一仕事終えて、それを祝うように寝ている彼女を見る。
映姫は話しかけるように呟くが、その言葉は空へと消えていった。
そして一言。
「こら小町! またサボりですか!」
静かな空気を壊すように小町を叱り付ける。
彼女は、まるで鬼が来たかのように飛び起きた。
「わっ、四季様いつの間に!?」
「いつの間に!? じゃありません! いつもいつもサボって、立場がわかっているのですか!」
小町は、怒られると目をきょろきょろさせて、周りに助けがいないか必死で探す。
しかし、そんな人などいるわけもなく、小町は地面へと目線を移す。
「サボってないですよ・・・・・・。ただ客が来ないから暇なだけで・・・・・・」
「たとえ暇でもきちんと職務につくのが仕事でしょう!」
まずい、このままだと何時間説教されるかわかったもんじゃない。
そう思った小町は必死に話題を逸らそうとする。
「四季様は何故ここに?」
「貴方がサボってないか様子を見に来ただけです」
焼け石に水。
しかし、小町は諦めまいと、こっそりと一人で楽しもうと大事に取っておいたものを取り出す。
「あ、四季様! 今日お酒買ってきたんですよ。一緒に飲みませんか?」
「まったく貴方という人は・・・・・・いつそんなものを?」
「仕事中です。えへへ」
「えへへ、じゃありませんよ。まったく・・・・・・」
「それで、いるんですか? いらないんですか?」
「・・・・・・せっかくです、少しだけもらいましょうか」
まだ完全に暗くなっていないが、明るくもない中、二人は酒を飲んだ。
映姫は、小町の仕事中やってきた面白い客の話を、小町は映姫の仕事の愚痴を肴にした。
小町が調子付いてくると、間髪入れず映姫が制止する。二人だけの宴会。
「私がせっかく判決を出したというのにその人は話も聞こうともせず・・・・・・」
「あ、あの、四季様、ちょっといいですか?」
頑固な人の話をしていた映姫に、遠慮気味に小町は突然話を切った。
「四季様は、何故人を裁くんですか?」
何度も、繰り返し小町から聞かされた、その疑問。
何度も、繰り返した答えを、映姫は返した。
「それが仕事だからです。」
しかし、酒の勢いからか、今日の小町は納得がいかなかったようで、それに食い下がる。
「それは閻魔という役職の仕事です。四季様自身は何故人を裁くんですか?」
「それは・・・・・・」
そんなこと、考えたことがなかった。
閻魔という役職の仕事に何の疑問も持たなかった。
人を裁くという行為は、閻魔として当たり前だし、やらなければならないことでもあった。
しかし、四季映姫自身は何故人を裁くのか。
沈黙しか答えることが出来なかった。
しばらくすると小町が呟いた。
「ま、どうでもいいですけどね」
「小町・・・・・・」
小町は再び酒を飲んだ。
映姫も黙ってそれに続く。
結局、酒を飲み終わるまで、映姫と小町はずっと黙っていたままだった。
「さて、帰りますか」
「そうですね・・・・・・」
すっかり闇に覆われて、二人で歩く帰り道。
頼りは、小町の照らす灯りだけ。
ふいに小町は言った。
「四季様は、まだ答える必要がないかも知れません」
「・・・・・・?」
「さっきの質問です」
「・・・・・・ああ。何故です?」
その問いに、小町は大きく一歩を踏み出し、映姫の前に出て振り返り、子供がするような無邪気な笑顔でこう言った。
「秘密です」
「そうですか」
映姫は優しく微笑んだ。
自分には、こんないい部下がついていたんだな、と。
「貴方は優秀な部下ですね。小町」
「そうですか?ありがとうございます」
そして、ポツリと呟く。
「サボり癖を除けば、ですが」
「・・・・・・? 何か言いました?」
「秘密です」
「えー、なんて言ったんですか? 教えてくださいよ・・・・・・」
二人で笑い合って帰る道。
小町と過ごす何気ない、けれどかけがえのない幸せな時間。
映姫は、答えを見つけたかもしれない。そう思った。
映姫は、今日のストレスをため息に乗せて外へ出した。
やっと山積みの問題がなくなった、と安心した映姫に一つの問題が浮かんできた。
「はぁ・・・・・・、今日最後で、最大の問題がありましたね・・・・・・」
そう呟き、自分の仕事部屋を後にした。
彼岸花の紅さがより紅いものになっていき、それも闇に覆われようとしていくころ。
そこに住む、住人のような大木の木陰にいる、一人の死神の隣へ立つ。
「これだけは日常にしたくない問題なのですが・・・・・・」
一仕事終えて、それを祝うように寝ている彼女を見る。
映姫は話しかけるように呟くが、その言葉は空へと消えていった。
そして一言。
「こら小町! またサボりですか!」
静かな空気を壊すように小町を叱り付ける。
彼女は、まるで鬼が来たかのように飛び起きた。
「わっ、四季様いつの間に!?」
「いつの間に!? じゃありません! いつもいつもサボって、立場がわかっているのですか!」
小町は、怒られると目をきょろきょろさせて、周りに助けがいないか必死で探す。
しかし、そんな人などいるわけもなく、小町は地面へと目線を移す。
「サボってないですよ・・・・・・。ただ客が来ないから暇なだけで・・・・・・」
「たとえ暇でもきちんと職務につくのが仕事でしょう!」
まずい、このままだと何時間説教されるかわかったもんじゃない。
そう思った小町は必死に話題を逸らそうとする。
「四季様は何故ここに?」
「貴方がサボってないか様子を見に来ただけです」
焼け石に水。
しかし、小町は諦めまいと、こっそりと一人で楽しもうと大事に取っておいたものを取り出す。
「あ、四季様! 今日お酒買ってきたんですよ。一緒に飲みませんか?」
「まったく貴方という人は・・・・・・いつそんなものを?」
「仕事中です。えへへ」
「えへへ、じゃありませんよ。まったく・・・・・・」
「それで、いるんですか? いらないんですか?」
「・・・・・・せっかくです、少しだけもらいましょうか」
まだ完全に暗くなっていないが、明るくもない中、二人は酒を飲んだ。
映姫は、小町の仕事中やってきた面白い客の話を、小町は映姫の仕事の愚痴を肴にした。
小町が調子付いてくると、間髪入れず映姫が制止する。二人だけの宴会。
「私がせっかく判決を出したというのにその人は話も聞こうともせず・・・・・・」
「あ、あの、四季様、ちょっといいですか?」
頑固な人の話をしていた映姫に、遠慮気味に小町は突然話を切った。
「四季様は、何故人を裁くんですか?」
何度も、繰り返し小町から聞かされた、その疑問。
何度も、繰り返した答えを、映姫は返した。
「それが仕事だからです。」
しかし、酒の勢いからか、今日の小町は納得がいかなかったようで、それに食い下がる。
「それは閻魔という役職の仕事です。四季様自身は何故人を裁くんですか?」
「それは・・・・・・」
そんなこと、考えたことがなかった。
閻魔という役職の仕事に何の疑問も持たなかった。
人を裁くという行為は、閻魔として当たり前だし、やらなければならないことでもあった。
しかし、四季映姫自身は何故人を裁くのか。
沈黙しか答えることが出来なかった。
しばらくすると小町が呟いた。
「ま、どうでもいいですけどね」
「小町・・・・・・」
小町は再び酒を飲んだ。
映姫も黙ってそれに続く。
結局、酒を飲み終わるまで、映姫と小町はずっと黙っていたままだった。
「さて、帰りますか」
「そうですね・・・・・・」
すっかり闇に覆われて、二人で歩く帰り道。
頼りは、小町の照らす灯りだけ。
ふいに小町は言った。
「四季様は、まだ答える必要がないかも知れません」
「・・・・・・?」
「さっきの質問です」
「・・・・・・ああ。何故です?」
その問いに、小町は大きく一歩を踏み出し、映姫の前に出て振り返り、子供がするような無邪気な笑顔でこう言った。
「秘密です」
「そうですか」
映姫は優しく微笑んだ。
自分には、こんないい部下がついていたんだな、と。
「貴方は優秀な部下ですね。小町」
「そうですか?ありがとうございます」
そして、ポツリと呟く。
「サボり癖を除けば、ですが」
「・・・・・・? 何か言いました?」
「秘密です」
「えー、なんて言ったんですか? 教えてくださいよ・・・・・・」
二人で笑い合って帰る道。
小町と過ごす何気ない、けれどかけがえのない幸せな時間。
映姫は、答えを見つけたかもしれない。そう思った。
映姫と小町でこういうネタを扱うなら、それ相応の枚数を裂かないと中々いいものは出来ないのではと思います。
とはいえ、処女作にしては文章に大きな違和感もなく、お話として成立しているかと。
これから書き続けていくことで、力もついていくのではないでしょうか。
2作目3作目と頑張ってください。期待しています。
各場面ごとがもっと掘り下げられていれば、評価もだいぶ違ってきたでしょう
文章力は申し分なし、後は構成力です
次への期待を込めて、今回は低めに