Coolier - 新生・東方創想話

東方×TF パニック・ザ・バリケード!

2008/08/28 22:35:45
最終更新
サイズ
46.17KB
ページ数
1
閲覧数
857
評価数
5/16
POINT
600
Rate
7.35
 注意! クロス物が嫌いな人にはお勧めできません!
 それでも読んでみますという方はどうぞ。
 読んでくださる方は「トランスフォーマー バリケード」で検索してもらってどんな姿をしているのかを知ってもらうとSSが読みやすくなると思います。


 「あー退屈。何かおもしろいことないかなー」

 不良天人こと天子は暇を持て余していた。
 今日は博麗神社にお茶をたかりに行ったのだが「お茶はー? お菓子はー?」と催促する天子に対して霊夢はまるで誰も居ないかのごとく一人で茶をすすっていた。そして時たま「あら? ハエが飛んでるわ。やーねー」と手でしっしと追い払う仕草をするのである。
 そのあんまりな扱いの腹いせに賽銭箱をひっくり返してやると凄い形相で睨んできたが、何も出てこない賽銭箱に同情して賽銭を恵んでやると、急に態度が豹変して「まあまあまあ、お茶でも飲んでいったら? お菓子も煎餅でよければあるわよ」とご機嫌になった。
 何かムカついたのでそのまま帰ることにしたのである。

 「はぁー、異変が無いと退屈なのは上も下も同じね。こうなったらこっそり異変を起こそうかしら? そしてそれをかっこよく解決! そうすれば皆も今以上に私を尊敬するはずだわ!」

 人それをヤラセ、もしくは自作自演と言う行為を妄想して一人でご満悦になっている天子だったが何やら聞きなれない音がするのに気がついた。
 どうやら道の反対側から聞こえてくるらしい。
 目を凝らしていると黒い箱のようなものが土煙を上げてこちらに向かっているようである。しかもかなりのスピードだ。

 「これは・・・・・・異変の予感!」

 それなら願ってもない。 
 とりあえず謎の物体をよく観察するため道端の木にのぼる天子であった。

 ブァーーーーーーーーーーーーーーン

 その黒い箱のようなものは相変わらずこちらに近づいてきていた。
 その物体とはマスタングというアメリカのパトカーなのであるが車など見たことのない天子には何かの物の怪の類に見える。
 もう少しよく観察したい。
 そう思った天子はパトカーが近くに来た瞬間目の前に飛び降りた。
 天子にわが身の危険を心配するという思考は無いのだろうか。

 「止まりなさーい!」

 ギキィー!!!!

 いきなり目の前に人が降ってきたパトカーは素晴らしい反射神経で何とか天子を避けて道の傍らに停止した。
 パトカーの運転席には外人の警察官らしき人間が乗っていて近づいてくる天子に文句を言おうとするが、それよりも先に天子はパトカーのガラスをバンバンと叩き「開けなさい! 開けないとぶち壊す!」と脅迫をした。

 「・・・・・・」

 その様子に唖然としている警察官だったが、何かを悟ったような顔をすると天子に後ろの座席を示す。するとパトカーの後ろのドアが開く。
 そして乗ってと言われるまでも無くいそいそと乗りこむ天子であった。

 「ねぇねぇコレは何なの? あなたは誰?」

 やぁ、ここはいったい? と言いかけた警察官の言葉をさえぎり、天子はさっそく質問攻めを開始する。
 何かを言おうとするも、興奮した天子と会話が成立しそうにないと判断した警察官は。

 ブーーーーーーーーー!!

 とクラクションを鳴らす。

 「きゃひ!」

 その音量に面食らった天子はやっとこさ静かになった。
 その様子を見て警察官は外人でありながら完璧な日本語で天子に質問を始める。

 「驚かせてすまないね。ただ、こうでもしないと君がまともに話を聞いてくれなさそうで。まず此処はどこだい?」
 「え、えーと、此処は幻想郷といってね・・・」

 少女説明中・・・

 「信じられない・・・此処は日本で地球だって? こんな場所はデータに無かったぞ」
 「それもそうでしょうね。ここは外の世界と隔離された幻想の世界だから」
 「隔離された、幻想の世界?」
 
 そう言うと警察は何か考え始めてだ黙ってしまった。
 
 (ふっふっふ、やはりうろたえているようね)

 実は天子、ここに来た外来人は死ぬ! などと不安を与えるような嘘を交えて説明をしていた。そして、この幻想郷の支配者である私ならあなたを元の世界に帰せるから見返りにこのパトカーをよこせと要求しようと企んでいるのである。

 (このパトカーとやらさえあれば皆に自慢しまくりよ! 特にあのスキマ妖怪なんかは悔しがるんじゃないかしらウヘヘ)

 その光景を思い浮かべてニヤニヤしていると警察官が何かを呟いた。

 「フム、君になら打ち明けてもいいかもな」
 「大丈夫、助けてやるからこのパトカーをっ、てなんだって?」

 天子の問いかけには答えずパトカーは大きな木の陰へと移動し始める。そして木の陰まで来ると。

 「すまないが一回降りてくれるか」

 とパトカーの座席を開ける。
 ? マークを浮かべながら天子がパトカーから降りると信じられない光景を目にした。
 なんと警察官の姿がいきなり掻き消えたのである。
 しかもその直後、更に信じられない事が起こった。
 パトカーが複雑に割れたと思った瞬間

 ギガゴゴゴ!!

 目の前にはパトカーの名残があるものの、5メートル程のロボットが立っていた。

 「デ、デカルチャー!!」

 あまりの事態に天子が狼狽しているとロボットはかがんで天子に視線を合わす。

 「驚かせてすまない。これが俺の本当の姿だ。名前はバリケード。宇宙から来た機械知生命体だ」

 と流暢な日本で自己紹介をしてきた。その声には地球の生物にはまずないであろう機械的な響きがある。
 今だ唖然としている天子を尻目にバリケードと名乗ったロボットは自分の頭部の横に手をかざす。
 すると目から光線が発射され二人の周りは戦火の立体映像に満たされた。
 バリケードは自らの事について、正義と悪の戦いの歴史を、映像に交えながら語り始めるのであった・・・



 「へぇー、あなたは悪者をやっつけた後も地球に残ってパトカーに変装しながら平和を守ってたのね」
 「そうだ、そして何か強力なエネルギーの乱れがあってな。それを調査しようとしたら此処に来てしまったという訳だ」
 「・・・信じられないわね」

 話を終えたバリケードに天子は疑いの眼差しをむける。
 それを見たバリケードは予想していたかのように人間くさく肩をすくめた。

 「まあ、普通は信じられないだろうな・・・しかし、これは真実なのだ」
 「だって、あなたの顔・・・どうみても悪者なんだけど。その顔で正義の味方って笑えるわ」

 そう言いアハハハと笑い始めた天子にバリケードは目を瞬かせながらも、この人間と似て非なる、彼のデータには存在しなかった生き物とのコンタクトに無事成功したことを理解した。

 「しかし、幻想郷にも同士と言える存在に会えるとはな。俺もツいている」
 「へっ、同士って?」
 「お前はこの幻想郷の平和を支配者として守り続けているのだろう? いやいや、この世界に迷い込んで早々平和を守る素晴らしい支配者に会えるとは光栄の極み」
 「いやいやそれほどでも」

 そう答える天子の頬には一筋の汗が落ちる。
 決して熱いわけでは無い。
 自分が話した嘘幻想郷をこのロボットは信じている。先程話した天子幻想郷支配者説はパトカー欲しさに警察官の立体映像に話したデタラメ。
 その欲しかったパトカーがロボットで生きているとなれば、さすがに自分のものにはできないし、このバリケード、正義の味方と言うわりには本当に恐い顔なのだ。自分の話が嘘だと分かれば怒るかもしれないし、もし暴れられたら大変なことになりそうである。
 やべえやべえと焦る天子にお構いなしにバリケードは一人(?)盛り上がっていた。

 「ここに来たのも何かの縁だ! 俺が悪を倒すのを手伝おうじゃないか」
 「ええー!」
 「その我侭吸血鬼とかマッド薬師とやらはかなり手強そうだが、この俺がいればおそらく勝てる」
 「そ、それは頼もしいわ・・・すごくね」

 天子は決意した。これはもう嘘をつきとおすしかない! そして適当に満足してもらったらとっととお帰りになってもらえば万事解決。
 それに面白そうでもある。
 この機械を利用して己の強大さを皆に再確認してもらうのもいいかもしれない。
 跪く皆の光景を想像した天子はその光景の素晴らしさに思わず昇天しそうになった。

 「よし、悪撲滅に強力を頼むわバリケード!」
 「任せてくれ天子!」

 天子は手を差し出し、バリケードは指を差し出す。
 こうして幻想郷に新たなる異変がもたらされるのであった。




 ところかわって博麗神社。
 そこには霊夢と竜宮の使い、衣玖が居た。

 「あら、いったい何の用? 桃帽子ならさっき帰ったわよ」
 「総領娘様ですか? いいえ、今はあんなのに構っている時ではありません。重要なのは幻想郷に異変が起きたという事実です」
 「異変? 今のところ変わったことは・・・」

 霊夢がそう言いかけた時、突如轟音とともにパトカーが石階段を駆け上がり、二人の前でドリフトをかけて止まった。 そして天子がよろめきながら運転席から降りてくる。
 そしてロボットになるパトカーを見て二人は異変の正体を理解した。
 とりあえず、次に二人がしたことは「霊夢ー、衣玖ー、聞いてー」と駆け寄ってくる桃帽子に拳骨であった。



 「という訳なの! お願い協力してちょうだい!!」
 
 手を合わせて懇願する天子に向けられる眼差しは、自信満々にクイズの答えを言って間違える冷え切った家庭のお父さんへ向けられるものである。

 「・・・嘘はよくないって天子ちゃんはパパに教わんなかったんですかー?」
 「教わってたら自称超天人の総領娘様がこんな面倒なこと起こすはずありませんわ。こんな面倒なこと」
 「そんなこと言われてもー、なっちゃったものはしょうがないじゃない。テヘッ」
 「うわっムカツク! っておいそこのデカブツ! 石畳を踏み抜かないでくれる!?」

 天子の説得など霊夢にとってはどうでもいいようで、気になるのは境内でウロウロしているバリケードである。
 そんな霊夢の怒鳴り声などお構いなしに一とおり境内をみてバリケードは呟く。

 「参拝客の来た形跡が無い・・・話通りのしょぼさだな」
 「!!」

 声にならない声をあげて天子の首を締め上げる霊夢。
 それに抵抗しながらも、霊夢に抑えてちょうだいと頼む天子の健気さに衣玖は助け舟を出してやることにした。

 「まあまあ、霊夢さん。本当のことなんですし悪者扱いされなかっただけよかったじゃないですか」
 「そ、そりゃあ、そうだけど・・・あんなデカブツで強面なのに出入りされたらよけい参拝客が来なくなるわ」
 「元々居ない客がよけい来なくなるなんて、霊夢ったら変なの。 ププッ」
 「お前少し黙ってろ!」

 天子をどついてから霊夢はこの茶番劇に付き合ったほうが懸命だと判断した。 
 しかし転んでもただでは起きぬ。たとえ掴むものが馬糞でも掴んで起きるのが霊夢の信念だ。

 「バリケードとかいったわね。いいわ、大結界を守る巫女として貴方達の悪撲滅に強力しようじゃない。た・だ・し! 見返りはあるんでしょうね」

 その言葉にバリケードは頷くと目から光線をだして立体映像を境内に展開する。
 展開された映像はたくさんの参拝客で賑わう神社、そしてひっきりなしに賽銭が投げ込まれる賽銭箱であった。
 立体映像を終え、バリケードは霊夢に目線を合わせ囁く。

 「協力するなら今の映像を現実のものにする事を約束しよう」

 その言葉を聞いた霊夢はバリケードに土下座した。怒涛の勢いで土下座した。

 「一生ついていきます大将!」
 「ふむ、巫女は決まりだな。そこの・・・衣玖といったな。お前は何を見返りに望む」

 その質問に衣玖は肩をすくめると。

 「いえいえ、私は素直に味方になりますわ。なんといってもKYが私のとりえなので」

 「KYって最近の流行なんですよね」と、どこか得意げの衣玖であったが、バリケードは衣玖がKYをなにか勘違いしているように思えた。しかし自分には関係ないので指摘はしない。
 そしてバリケードは一同を見回して呼びかける。

 「よし、これから俺は幻想郷にはびこる悪を殲滅し、平和を手にすることを誓う。そのためにお前達、俺に力を貸してくれ!」

 バリケードの檄におぉー!! と盛り上る一同。しかし、その中でおずおずと手を上げる者がいた。天子である。

 「あのー殲滅ってことは・・・やっぱり殺すってこと? その、できればそこまでしなくても、少し懲らしめればよくないかしら・・・」
 「支配者ともあろうことが何を悠長なことを! 敵は徹底的に潰すのが」

 思わず声を荒げそうになったバリケードだったが、霊夢や衣玖が「殺すのはさすがにねー」「なんだか物騒な空気になってきましたわ」と話し合っているのに気がつくと何かを考え始めた。そしてすぐにこう切り出す。

 「確かに殺すのはやりすぎだったな。すまない。それならいい方法があるから安心しろ」

 ?マークを浮かべる一同にバリケードは言った。

 「逮捕すればいい」
 「タイホ?」




 やたら紅すぎて景観的に悪いんじゃね? と評判の悪魔の館、紅魔館。
 その館の門番たる美鈴は今日も惰眠を貪っていた。

 「えへへ~咲夜さーん、謝っても許しまへ~ん。おしおきだーぐうぐう」

 この時の美鈴は幸せだった。そしてこの幸せが長続きしないのは理解していた。もうすぐナイフが飛んできて幸せは儚く散るだろう。だからそれまではこの幸せを全力で感じよう。
 そんな切ない美鈴の幸せは予想よりも早く、そしてナイフ以外の物体により終わりを迎えることとなる。

 ブァーーーーーーーーーーーーーーン   

 ドバギッ

 美鈴を轢いた勢いで、天子と衣玖を乗せたパトカーは門を破壊し紅魔館の中へと突入したのであった。

 一方、紅魔館の中は突如進入してきたパトカーによって阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。
 その惨状を聞きつけて、ロr、瀟洒なメイド長こと咲夜が駆けつける。そしてパトカーの中からでてきた天子を見るといつの間にやら取り出した塩を投げつけた。

 「ちょっ、痛い、痛い、気持ちは分かるけど塩はやめてー!」
 「やかましい! この絶壁めが!! その絶壁っぷりに同情して少し優しくすれば付け上がって、今日という今日はボコす。絶対にボコす!!」
 「絶壁っていうなー!! それとあんたがいつ私に優しくしてくれた!? ええい、咲夜! 今日は貴方をロリコン罪で逮捕する!」
 「ロリコン? 何かの間違いでは? 私の胸にあるのは忠誠心ただそれだけよ。今お嬢様はおやすみになっています。 お嬢様の眠りを妨げる者は誰であろうと排除あるのみ」
 「はん! そんな台詞鼻血をだしながら言っても説得力は無くってよ。おおかた、レミリアのパジャマでも想像したんでしょうね! さあバリケード、このロリコンを逮捕するのよ」

 その掛け声に反応してパトカーからトランスフォームしたバリケードが咲夜に襲い掛かる。
 しかし、その手が咲夜を捕らえることは無く咲夜は別の場所に瞬間移動していた。

 「やれやれ、天人は本当に変なものばかり持ってるのね。でもお嬢様方の玩具にはちょうどいいかしら」
 「ムウ、時間を操るとは聞いていたがまさかここまで完璧に操るとはな」

 そしてお互いに武器を構えて対峙する。しかし天子とバリケードには勝算があった。

 「バリケード! 作戦R開始よ!」
 「了解した!」

 そう叫んだバリケードは目から光線を発射する。咲夜から離れた場所に。

 「あなた、いったい何処を狙っているの?」

 まるで見当違いの方向に飛んでいった光線を鼻で笑いながらナイフで敵を粉砕せんと力を籠める。そしていざナイフが宙を舞おうとした刹那。

 「さくやー」
 「お、御嬢様!?」

 寝ているはずのレミリアの声に動揺した咲夜は声のした方向を見た。
 そこに居たのは確かにレミリアであった。ただし、心なしかいつもより更に幼くみえるのは気のせいか? 歩く姿にはヨチヨチという擬音がぴったりだ。
 しかし、鼻の奥に何か熱いものがこみ上げてくるのと同時に何か決定的な違和感を感じていた。

 「はぶぶっ、な、なんかおかしいわ。お嬢様の声が妙に鼻声っぽいような・・・?」

 そう、妙に幼いレミリアの正体はバリケードによる立体映像である。
 映像に関しては天子の持っていたレミリアの写真(釘の跡つき)から作り出すことができたが、声はレミリアと面識のないバリケードに再生は不可能だった。 そこで声に関しては天子が物まねで再現しようと試みたのだが・・・

 「まずい、バレた!?」
 「なにが私に任せろだ、この馬鹿が!! だが、まだフォローできる」

 そう言うとバリケードは起用に指先で天子の頬っぺたをつまんだ。

 「ち、ちょっとイタイ!」

 天子がイタイと言った瞬間映像のレミリアがコテンと転ぶ。それはまるで本当に転んだレイミアが言ったかのような絶妙なタイミングであった。

 「お、お嬢様ー!!」

 それを見た咲夜は鼻から忠誠心を出しながら完全に天子達に背を向ける。

 「今だ!逮捕ーする!!」

 その隙に天子が手錠を咲夜の腕にかけた。

 「はっ、しまった!」
 「ふふ、咲夜の逮捕完了したわ!」

 そして天子とバリケードは親指をビッと立てる。
 だが天子が次に見たものは、あっさり手錠を外しいる咲夜の姿だった。

 「ねぇ、あなたたち。こんな普通の手錠で私を捕まえられるとでも?」
  
 いつの間にか天子の後ろに回りこんだ咲夜は天子の尻にナイフを突きつける。

 「ひゃあ、ど、どこにあててんのよ! バ、バリケード、話が違うー」

 バリケードの話だと拘束は手錠で十分とのことだった。しかし、というかやはりというか手錠はあっさり外され今やお尻の危機だ。
 しかしバリケードは慌てる様子もなく、素早く昨夜の服に手をかけると。

 ビリビリビリ~!!

 次の瞬間咲夜は生まれたときの姿になっていた。

 「えっ・・・きゃーーーーーーーーー!!!」

 あまりにも突然の出来事に天子は唖然とし、咲夜は絶叫すると顔を真っ赤にしてその場に座り込んでしまった。
 そんな咲夜の様子をみてバリケードは満足そうである。

 「ふむ、やはり羞恥心を利用するのが一番か」
 「やべえ! あんた超頭いい!」

 天子が絶賛するとバリケードは得意げな様子で器用に咲夜に手錠をかけ直していた。
 今だ身動きしない咲夜がさすがに心配になった天子は顔を覗き込んでみる。
 すると睨まれた。
 いつかコロス、お前が蟻に生まれ変わっても探し出してコロス。そんな目で睨まれた。
 その視線にビビリながらも、咲夜のグラマーではないが白い肌が美しくスレンダーな裸体を天子は楽しみながらまあまあとなだめようとする。

 「そう恐い顔しないでよ。用件がすんだらすぐに開放するしお詫びもするから」
 「うるさい! せいぜい辞世の句でもほざいてなさいよ!!」
 「レミリアも逮捕したらスッパよ」
 「そ、そんなことさせない・・・あっ貧血」

 そんなやりとりの中、今までエアーと化していた衣玖がバリケードに次の目標を伝えていた。

 「次は寝ている御当主様と妹様の逮捕で? 確か罪状は超絶我侭罪と恐い罪」
 
 そんな罪状なら天子とバリケードも逮捕だなと思う衣玖。

 「そうだ。ついでに魔女ももやし罪で逮捕だったな」

 そう言うがはやいがバリケードは腕から弾丸を天井に向かって撃った。
 すると上のほうから

 「ゎぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」

 と声が落ちてきた。
 その声の主、魔理沙は墜落寸前のところで起用に着地して、「いやー、見つかっちまったぜ」と言っている。
 そんな魔理沙に銃を構えながらバリケードは衣玖に尋ねた。

 「確かこいつは霧雨魔理沙。 こいつも悪の勢力か?」
 「はい。罪状は窃盗罪と浮気症予備軍罪です」
 「なに言ってるのか分からんが、どうらやタダでは帰してくれなさそうだなバケモノ!」

 魔理沙はミニ八卦炉を構え臨戦態勢をとり、それに対してバリケードもホイールブレードを展開し、咲夜のヌードをスッケチしていた天子と衣玖に指示をだす。

 「天子、衣玖、お前達は吸血鬼二人を逮捕してこい」
 「なにっ、フランに何かするつもりか! させないぜ!」

 言うが早いがマスタースパークをバリケードにぶっ放す。
 それをガードするバリケードだったが凄まじい威力に巨体を吹き飛ばされた。

 「おのれ! 人間のくせになんと言う火力だ! だが当たらなければどうということはない!」

 体制を立て直したバリケードは素早く動きながら、瓦礫や弾丸を交えて魔理沙を狙う。その攻撃を避けながら魔理沙は座りこんで動かない咲夜に叫んだ。

 「おーい、咲夜ー! そんなところで座り込んでないで手伝ってくれ!」

 だが咲夜は顔を真っ赤にして叫び返す。

 「無理よ! 邪魔したらお前の裸の映像の上映会をやるって脅されてるのよー!!」
 「はっ、さっきは正義の味方みたいな口ぶりだったがとんだ外道だなバケモノ。是非とも上映会やってくれよな!」
 「だまれ! 正義の為なら多少卑怯な手は必要なのだ!!」

 なおも攻撃を続けるバリケードだったがふいに攻撃をやめる。
 それを見た魔理沙はハッとバリケードの視線を追う。
 そこには裸で爆睡している吸血鬼姉妹が天子と衣玖に抱えられていた。

 「勝負は決したな。降服しろ」
 「くそっ!」

 しぶしぶといった感じで武器を捨て、手をあげる。
 そんな魔理沙の服をやぶろうとするバリケードだったが。

 「触るな! 服ぐらい自分で脱げる!」

 と怒鳴ると手を払いのけ、魔理沙は自分で脱ぎ始める。
 その裸体は少女特有の幼さを残しながらも膨らむところはかわいらしく膨らんでいてしっかり女の子の体であった。
 手錠をかけられる魔理沙の顔はやはり真っ赤。
 しかし羞恥心に塗れても魔理沙には勝算があった。
 まだ、まだパチュリーが残っている。
 彼女ならその明晰な頭脳でこの馬鹿天人とバケモノをギャフンと言わせてくれるはずだ。
 そしたらバケモノはにとりにでもバラしてもらって、天子はスッパに首輪で外を歩かせてやる。
 そんな決意をしているとふらりと紫色の影が現れた。

 「勝負はすんだようね。いいわ。図書館は貴方達の好きに使って」
 「あれー? なんでパチュリーがそっちにいるの?」

 色々楽しい想像をしていた魔理沙が目にしたのは天子達に図書館明け渡しを宣言する切り札のはずのパチュリーであった。

 「パチュリー! どういうことだ!?」
 「ごめんなさい魔理沙! 私、脅されて抵抗できなくて・・・むきゅっ」
 「あー今笑ったな! よくない感じで笑ったな! この裏切りもやし!!」

 ちくしょーと悔しがる魔理沙をよそにバリケードはパトカーに変形し、天子達は逮捕したメンツをパトカーに乗せ始める。
 パチュリーの魔法ですやすやぷうぷう眠るお嬢様方を「私が抱っこします」と主張する咲夜の主張を受け入れて抱っこさせたが、裸の幼女二人を抱っこし、恍惚の表情を浮かべ震えるスッパな美少女の図はとても危なかった。
 ちなみに魔理沙はパチュリーに抱っこされ、轢かれて気絶したままの美鈴はトランクにぶち込み、小悪魔に見送られながら天子一向は神社へと凱旋するのであった。




 「霊夢の外道巫女ー! 天子の絶壁! 衣玖の魚野郎! もやし!」

 結界の檻に閉じ込められた魔理沙(裸)の罵声も何処吹く風。
 一向は次なる目標を話合っていた。

 「さて、情報源は手に入った。次は何処にするか・・・」
 「そうね、私は永遠亭がいいと思う。あそこの薬師はかなりの脅威よ。潰すなら早いほうがいいわね」
 「私の意見としましては妖怪の山などはどうかと。あそこの河童と天狗は技術もありますしバリケードの技術を提供すればおもしろがって仲間になってくれるのではないかと。それに神の力も魅力的です」
 「えー、悪は全部逮捕じゃないの? まあそこに元、悪のメンツがいるけど」
 「むきゅ、私は悪から更正しただけよ。コレも魔理沙を我がものにする為」
 「そうだ、たとえ悪であっても力になってくれるならば仲間にするのだ」
 「ふーん、動悸丸出しの弁解どうもありがと・・・まあいいわ。それより私が思うに、スキマ妖怪を探し出して一刻も逮捕するべきよ! あいつは私が立て直した神社をまた壊したりとどうもムカツクのよね」

 あー思いだしたらまた腹立ってきた!と天子がプンプン憤慨している時だった。

 「誰がムカツクですって?」

 新たなる声に一同が上が向くと案の定紫がスキマに腰掛けていた。

 「あなたたち、この檻にそこのデカブツの組み合わせはいったいどんな遊びなのかしら」

 笑顔はとても優しかったがこめかみにはしっかり血管が浮かんでいる。
 その笑顔からは、また面倒なこと起こすんじゃねえぞ特にそこの天人もどきが! という思念が読み取れた。

 「あのね紫、これは・・・」

 神社の繁栄のためなんとか紫を説得しようと霊夢が口を開いた時、バリケードが紫の前にでて跪く。

 「八雲紫だな。俺はバリケード゙という名の宇宙から来た機械知生命体だ。話があるから少しこちらへ来てもらえるか?」

 そういうとバリケードは一同から離れた場所へ移動しはじめる。疑いの眼差しを向けながらも紫は跡へ続いた。
 一同が見守る中二人は話し合っている。
 会話に耳をすますと、最初は宇宙、外界、正義などの単語が中心だったが、紫が渋い顔になってからは、枕、永眠、潤い、提供するなどの単語が聞こえてきた。
 そしてバリケードが指でわっかを作った瞬間紫の顔が輝いたのを確認できた。
 紫は一同に向かって微笑みかけると

 「話は聞いたわ。 私も悪撲滅に参加させてもらうわね」

 と爽やかに宣言するのであった。
 まさかの言葉に動揺した一同だったが、紫が味方になるなら邪魔されずに済みそうである。
 ホッとした空気に包まれた中ただ一人納得しなさそうなのがいた。

 「ちょっとバリケード! 私は反対よ!! スキマが悪の帝王だって最初に説明したでしょ!」

 天子はまさかの紫の味方発言が気に入らなかった。
 この前の恨みもあるし、天子は紫をスッパにするのが楽しみだったからだ。
 しかし、バリケードは首を横にふると、悪のボスだったとしても今は正義になったとまともに聞いてくれなかった。
 かくして、不満バリバリの天子にお構いなく一同は悪撲滅作戦を開始するのであった。


 

 竹林。
 慧音と妹紅はイチャついていた。
 それはもうここで詳しく描写できないくらい熱々にイチャついていた。
 
 「ふぅ、慧音は相変わらず激しいな」
 「だって、私は妹紅がかわいくてしょうがないんだ」

 そんなきゃっきゃうふふな二人の前に突如パトカーが出現した。
 驚く二人の前でバリケードは変形すると身構える二人を無視して、先ほど録画していた二人のイチャイチャ動画を再生し始める。

 「えっ? ナニコレ?」
 「わー、やめて、やめてくれー!!」

 その恥ずかしいお宝映像に固まる妹紅と、なんとかやめさせようとじたばた暴れる慧音は顔を真っ赤にしながらもバリケードを指差し怒鳴りつけた。

 「おのれ、貴様! 何が目的だ!」

 するとバリケードは困ったように自分の足元を指しながら弁明する。

 「いや、これは俺の意思ではないのだが・・・これでいいんだろうパチュリー?」

 すると自分の爪を噛みながらバリケードの影からパチュリーが姿を現しボソボソと何か言い始めた。

 「これでいいのよ。罪状はイチャイチャ罪。特定の対象を惨めに惨めにする罪よ・・・あぁ妬ましい!」
 「おい、キャラ間違ってるぞ」

 しかし、妹紅の突っ込みにも反応せずパチュリーは自分の殻に篭ってしまった。
 そんなパチュリーは放置してバリケードは自分のしていることを二人に話した。
 それを聞いた二人はおおむね理解したようでフムフムと頷く。

 「なるほど。しかしだな私達は悪などではないぞ。私は寺子屋の先生で妹紅は竹林で迷った人を案内しているだけだ。証人だって何人もいる」
 「そうか。俺も天子から聞いた話では、悪の勢力にお前達は出てこなかったからな。ここら辺の悪の勢力は永琳がボスの永遠亭だと聞いている」
 「永遠亭が悪の勢力だと? それもおかしな話だ。あそこに居る永琳は里の人間や、妖怪達にも薬を・・・」

 なにか誤解しているらしいバリケードに本当のことを教えようとする慧音だったが、いつの間にか背後に回りこんでいたパチュリーに妹紅もろとも肩を組まれるとバリケードから少し離れた場所に連れて行かれた。そして天子の壮絶嘘幻想郷のせいで外界からきた正義の味方が勘違いしている事情を話した。
 
 「そういうことか・・・まったくあの天人くずれは。分かった。私達もこの茶番劇に付き合うよ」
 「そう。理解が早くて助かるわ」
 「だからよー、そのイチャイチャ罪って恥ずかしい罪は無しにしてくれよな?」
 「妬ましい妬ましい妬ましいねたま」
 「はいはい分かった分かった」

 またまたキャラが崩壊したパチュリーを無視して二人はバリケードのところへ戻っていった。

 「バリケードといったな? 事情は分かった。おとなしく捕まるから手荒なマネはしないでくれるか?」
 「暴れなければ問題ない。では乗ってくれ」

 バリケードはパトカーに変形すると後部ドアを開けて二人を招きいれる。
 パチュリーが助手席に乗り込むとパトカーはゆっくりと発進するのであった。



 「へえー、パトカーってのはおもしろい乗り物だな。こんな乗り物は生まれて初めてだ」

 パトカーの後頭部座席にくつろぎながら妹紅は高速で後ろに流れていく竹林の景色を眺める。
 バリケードは竹林の広くなっている場所を上手に探しながら迷うことなく永遠亭へ向かっていた。
 この竹林を迷わずに進めるなんてたいしたもんだと感心する妹紅。
 その隣の座席では慧音が青い顔をして「気持ち悪い・・・」と呻いている。
 そんな慧音の様子に苦笑して、助手席のパチュリーを見ると、顔が青いどころではなく真っ白になって意識が飛びかけているようだった。
 「なんでお前は乗ってるんだ」という妹紅の声もどうやら届いてないようだ。
 まあ、道案内役のはずだったんだろうなと勝手に納得すると、妹紅はバリケードに質問を始めた。

 「なあ、バリケード。逮捕するのは永琳だけか?」
 「ほかには、てゐという詐欺師も逮捕する予定だ」
 「ふーん、じゃあ輝夜は?」
 「輝夜? そんな人物は聞いてないぞ」

 そのバリケードの答えを聞いて天子の中で輝夜は居ないことになっているという事を理解した。
 いくら永琳のほうがカリスマがあるといっても存在を認識されないとはなんと哀れと妹紅は長年の宿敵に同情した。
 ここは私が輝夜の存在を教えてやらなければなるまい。
 そう思った妹紅は輝夜のことをバリケードに教えるのであった。


 パトカーが永遠亭に着くと慧音はよろめきながらもぐったりしたパチュリーを助手席から引きずり出し、バリケードに「ちょっと待っててくれ」と言いパチュリーと一緒に永遠亭に入っていった。
「大丈夫なのか?」と心配するバリケードに妹紅は「まあ表向きは診療所だからな危険はないさ」と答えパトカーから降り、バリケードも変形して待機する。
 しばらく待っていると、うどんげとてゐを引き連れ手に書類を持った永琳と、顔色がよくなった慧音とパチュリーが外にでてきた。
 そして永琳はまずてゐを突き出し、次に書類をバリケードに突きつける。

 「話は慧音から聞きました。確かにてゐは普段から詐欺行為を繰り返しているので今回の逮捕に反対する道理はありません。どうぞ持ち帰って存分にお仕置きしてちょうだい」
 「そんなー永琳様。私はただお茶目なだけだよ? だからそんなこと言わないで助けてください」

 手錠をかけられながらも助けを求めるてゐを無視して永琳は言葉を続ける。

 「しかしながら、私が悪だというのは納得いかないわね。そこの書類に今まで扱った薬のデータが書いてあるわ。それでも信用できなければ家宅捜索も許可します。もっとも書類はそれだけだけど」

 永琳から受け取った書類をバラララララと猛スピードで眺めたバリケードだったが納得したように頷く。

 「ウム。確かに信用できる内容だったし、毒物を使った形跡もない。どうやら永琳は悪事を働いていないようだが・・・」
 「そういうことです。私が悪なんて勘違いもいいところだわ。今度天子様とやらに会ったら伝えてください。特製座薬を用意しておくのでお尻を洗って待っていてくださいとね」

 バリケードが気まずそうに「了解した」と答えた時唐突にパチュリーが口を開いた。

 「永琳。あなた今何歳?」
 「なっ、い、今は関係ないでしょう!」

 突然の質問に狼狽する永琳であったが皆の視線が集まっているのに気がつくと咳払いして言った。言ってしまった。

 「じゅ、十七歳よ!」

 こころはね! と小さく続ける永琳だったが、場の空気と皆の視線が氷河期まで遡るのは止められなかった。

 「なっなによ! 私そんなに老けて見えないでしょ!ねぇうどんげ!」

 お前は助けてくれるよな愛しい弟子よ! といった意味を含んだ視線をうどんげに向けるがうどんげはその視線を手で叩き落とす。
 四面楚歌チャーミングな状況をなんとか打開しようと、永琳が今までの人生の中で五本の指にはいるぐらい考えをめぐらせている最中バリケードがとんでもない事を言った。

 「永琳のスキャンデータから推測して年齢はピー」
 「ストーップ、ストォォォォップ!! すいません私が悪かったです! 超年齢詐称罪で逮捕してください!」

 やけくそになった永琳をどうすればいいのか困ったバリケードは周りの皆を見回してみるが、一堂の目は(ここは素直に逮捕してあげて)と言っていた。
 結局のところ、当初の予定通りてゐと永琳は逮捕された。
 しかし、目的が果たされたはずなのにバリケードは帰ろうとしない。
 そして大声で叫びだす。

 「残るはお前だけだ! 輝夜、観念して出てくるがいい!」
 「何よ。そんな大声だして私に何か用?」
 
 その呼びかけに答えていつの間にか輝夜がバリケードの前に立っていた。
 うわ、なかなかゴツイのが来てるわねと興味心身の輝夜にバリケードは指をつきつける。

 「お前は純情な男達に無理難題を突きつけ右往左往するのを見て楽しむ悪女だそうだな! おのれ、なんという奴、逮捕する!」
 「はあ、あんた何言ってんの?」

 初対面のバリケードの言葉に?マークを浮かべる輝夜だったが、やれやれといった感じの慧音とにししと笑っている妹紅を見て大体の予想がついた。
 なぜか永琳が体座りしていて、その永琳をうどんげとてゐが半眼で見ていたが、こちらは割りといつもの光景なので余り気にならなかった。

 「妹紅、あんた適当なことをそのデカイのに吹き込んだわね!」
 「はん、間違ってはいないだろ。悪女さん」
 「事実が捻じ曲がって伝わってる気がするんですけど!?」
 「おーいバリケード。こいつは逮捕するときすんげー抵抗するだろうからサクッとキめたほうがいいぜ」

 その妹紅の言葉にバリケードはすごいスピードで輝夜の服に手をかける。
 そして、「えっ、ちょっ、何?」とうろたえる輝夜の服をベリベリと破った。

 「キャッ! な、なんなのよ! この変態!!」

 あらわになった輝夜の裸体は起伏こそ少ないが細くて儚さを持つ色気に満ちてる。
 その長くて綺麗な黒髪が体の白さを強調して幻想的な美しさを強調していた。
 その裸体を見て妹紅は思わず。

 「・・・綺麗だな」

 と本音をもらした。
 それを聞いた輝夜は。

 「えっ、あ、ありがとう」

 と宿敵の以外な賞賛に顔を真っ赤にして俯く。が、長生きしてるだけ度胸も座っているのかすぐに気を取り直してバリケードに文句を言う。

 「あのね、デカイの。妹紅に何吹き込まれたか知らないけど、そんな野蛮なことされなくても、来てくださいって頼めば行くから。だからとりあえず服は着させなさい」

 あと、弁償しろよと付け加えうさぎに服を持って来させようとする輝夜だったが、その前に言うことがあった。

 「あのね永琳。なんで貴方まで脱いでるの?」
 「さあ姫様。私も裸なので恥ずかしくありませんよ」
 「いや、色んな意味で私が裸になるより恥ずかしいし、すんげー惨めになるんですけど!?」

 そのナイスバディすぎる永琳の裸体を見て輝夜はショックを受けていた。その胸をせめて3センチでも分けてくれよと。
 とにかく服を持ってきてと指示をだそうとすると、永琳に口で手をふさがれ身動きを封じられた。

 「モガー!?(永琳!?)」
 「さあ、バリケード、何をやってるの!? 早く連れてって頂戴!!」

 鬼気迫る永琳に怯えの感情を抱きながらもバリケードがパトカーに変身すると永琳はトランクを開けて輝夜をその中に放り込む。そして自分もトランクの中に入ると器用にトランクを内側から閉めた。
 トランクの中がバタバタとうるさかったが、一同は無視してパトカーに乗り込む。
 
 「姫様と師匠の服は後ほど届けますので。あと師匠の罪に自重しろ罪の追加お願いします」

 微妙に目が死んでるうどんげに見送られながら、バリケード一向は神社へ帰還するのであった。




 守矢神社。

 神奈子と諏訪子は神社の中で二人でなにやら話し合っていた。

 「例の計画は順調だね? あーうー」
 「ああ、河童や天狗のほうからも順調だという報告があったよ・・・これが成功すれば」
 「幻想郷に革命が訪れ信仰も穴子昇りね」
 「それを言うなら鰻だろう。紫には気づかれて無いみたいだし私達の未来は明るいさね!」

 二人してがーはっはっはと笑っていると、遠くからサイレンと車のエンジン音がするのに気がつき懐かしいねー本当だねーと和む。が、すぐに幻想郷には車がなくて、しかもとても険しい山の上であることを思い出す。
 何事?と二人が立ち上がると同時に早苗が尋常じゃなく取り乱し神社に入ってきた。

 「たたた大変です! パトカーが紫でロボットがギガゴゴゴで!!」

 手をばたばた振り回しながら早苗が何かを言っているが意味不明すぎる。
 しかし二人は紫、パトカーという単語で悟った。
 計画がバレたということを。
 革新の終わりを。
 二人は顔を見合わせ残念だったね、おしかったのにねと黄昏ながら外に出るのであった。

 紫とバリケードが待っていると神奈子と諏訪子が神社から出てきた。

 「二人とも待っていたわ。ちょっと」

 話を聞いてくれるかしらーと続けようとする紫に二人は両手をグーにして差し出す。
 
 「・・・なにやってるの?」
 
 理解不能な行動に紫が尋ねると二人は涙を流しはじめた。
 突然の涙に紫が慌てていると二人は

 『自首します』

 と言った。

 「はぁ?」

 自体が飲み込めない紫とバリケードをよそに二人は勝手に盛り上っていた。

 「確かに私達はあんたの意にそぐわない事をしたかもしれない。でも、これだけは信じておくれ!これは将来にいい結果をもたらすとおもったんだよ!」
 「そうなのそうなの! 今は分からないかもしれないけどこれは革新的なはずなんだよ!」
 「でも、こうなったら仕方が無いね・・・私達は神としておとなしくお縄につくよ」
 「神奈子!」
 「諏訪子!」

 抱き合っておーいおいおいと泣きじゃくる二人を指差して「どうする? 仲間になってもらうのでは?」とバリケードが尋ねると、紫は「めんどくさいから逮捕」と答え。そして。

 「饅頭の甘さが引き起こした哀しい事件だったわね」

 と紫は遠くを見つめた。

 「そうなのか?」
 「いや、ノリで言ってみただけ」



 バリケードがパトカーに変形し、神奈子と諏訪子が犯人よろしくパトカーに乗ろうとした時であった。

 「神奈子様ー! 諏訪子様ー!」

 涙をきらめかせながら早苗が二人の元へ駆けつける。そして二人に駆け寄ろうとするが紫に止められてしまう。それでも早苗は二人に駆け寄ろうとしてあがく。

 「神奈子様! 諏訪子様! お二人が何をしたとしても私、待ってますから、神社で待ってますから!」

 そう叫ぶ早苗に神奈子が「神社はまかせたよ」と言うとドアが閉まり、パトカーは階段をガタガタと器用に降りていった。
 ギャー! ワー! っと悲鳴がするパトカーを見送っていた早苗と紫だったが。

 「刑事ドラマごっこ結構おもしろいですね」
 「割りと癖になるかも」

 と何事も無かったかのように世間話を始めた。

 「そういえば紫さんは乗っていかれないんですね」
 「冗談。パトカーで下山なんてたまったものじゃないわ」

 その二人の視線の先には山を爆走しているパトカーが凄まじい動きをしている光景があった。




 このような要領である時は恥ずかしい映像や情報を入手して相手を脅し、またある時は言葉巧みに味方に引き入れ天子軍団は順調に悪を僕滅していった。




 そして数日後の夜。
 天子軍団は正義の勝利記念として宴会を行っていた。
 新たに軍団には幽香、萃香、幽々子、妖夢、文、椛、にとりが加わり、プリズムリバーの演奏で一緒に騒いでいる。
 一方、逮捕された悪の勢力も裸だった者は服を返してもらった上で事情を聞かされたので、おとなしく檻の中で宴会をしていた。明日には改心したと言って檻から出してもらう予定である。
 ちなみに裸で逮捕された紅魔館組と永遠亭組の一部の者が服の返却に断固反対するという揉め事が起こった。誰と誰でしょうね。
 そんなこんなでこの異変も無事に終わりが近づいている。
 紫がスキマから出したオイルを飲んで酔っ払っているバリケードは上機嫌だった。

 「イヤイヤ、無事に幻想郷の悪を撲滅できて嬉しい限りだ。これも偉大な支配者の天子のおかげだな」
 「オーホッホッホそれほどでもあるわね」

 バリケードの賞賛をあびながら天子は内心ホッとしていた。嘘を突き通せそうだからだ。
 なんとか天子支配者説を通そうと、誰かが本当のことを言わないかと警戒したり、図書館でバリケードが幻想郷の正しい歴史を見そうになると本を燃やしたりして大変な思いをした。
 しかしこれで無事に終わる。その後の後始末や請求書の事を考えると寒気が走るが今は宴会で騒ぎ倒そうと心に決めた。しかし、何か心に引っかかることがある。

 「それでは外界からやってきた正義の味方であるバリケードさん。せっかくなんで取材よろしいでしょうか」
 「ああ、いいぞいいぞ」

 上機嫌で文の取材に答えるバリケードを見て天子は思う。

 (なんか正義の味方って言うわりにはセコイのよね。敵を恥ずかしい目に合わせておとなしくさせようとしたり、力が強い奴だと最初は悪だーとか言ってたのにコロッと仲間にしたり、物で釣ったり)

 宴会ではバリケードが幽々子にお酌をしているが、そのデカイ図体の割にはヘコヘコしているようにも見えなくはない。

 (でもなんだかんだで嫌いじゃないからあんまり疑いたくもないけど)

 にとりが変な鎧みたいなのを着て皆に何か解説している。

 「さあさあ皆さんご注目! バリケードの技術を真似して作った変形トランスフォームスーツだよ! それではさっそくトランスフォーム!」

 メキバキメメタァ

 「ギャース!!」

 変な体制で固まったにとりをみて皆が大笑いしている最中天子は一人物思いにふけるのであった。




 宴も終わり軍団も檻の中の皆も酔い潰れて寝てしまった頃、天子は一人寝ているふりをしていた。
 バリケードの動きを見張っていたのである。
 そのバリケードはというと最初こそ横になっていたが音を立てずに立ち上がるとそのままどこかへ歩きだした。
 天子は気づかれないように細心の注意を払いながら追跡を開始した。
 バリケードは何処か落ち着かない様子で神社から離れた場所で止まるとなにやら奇妙な音を発し、空に向かって光を照射し始める。
 天子はその様子を物陰から見ていたのだがバリケードが何をしているのかがいまいち解らなかった。
 音は意味不明で、光もなにがなんだか。しかし、これを黙って見ていたらまずい気がする。そう直感した天子は緋天の剣を握り締めその場に飛び出す。
 突然の天子の出現に少し慌てたそぶりを見せたバリケードだったが、すぐに落ち着きを取り戻すと「どうした天子、眠れないのか?」と話しかけてきた。

 (うー、思わず飛び出してきたはいいけどこれからどうしようかしら・・・)

 直感で飛び出したはいいが、結局バリケードが何をしていたかは解らないまま。もしかしたら何でもないのかもしれないし、このまま普通に会話したほうがいのかもしれない。
 だが、天子は自分の直感を信じることにした。

 「と、とうとう正体を現したわねこの侵略者! あなた顔が悪そうだからもしやとは思っていたけど予想どおりというやつよ!」
 「おいおい何を・・・」
 「大体今も仲間に連絡でもしてたんでしょ。侵略するのにいい場所があるってね!」
 「・・・・・・」

 場が沈黙に支配される。
 正直天子は自分のでまかせが馬鹿馬鹿しすぎると反省していた。
 これではこてこてというかお約束すぎる。
 沈黙の気まずさになーんちゃってテヘッ! とごまかそうとした時突然バリケードが笑い出した。

 「・・・ふっふっふ、ただの我侭娘だと思っていたが甘く見すぎたようだったな」
 「・・・ふえ?」
 「そうだ。俺は戦いで負けた悪の軍団ディセプティコン所属だ。今まで地球で隠れて復讐の機会をうかがってきたが、思わぬ潜伏場所を手にいれられた。礼を言うぞ」

 赤い目を光らせバリケードは不適に笑う。
 その姿は見るものに恐怖を与える禍々しいものだった。
 しかし、天子も負けじと言い返す。

 「悪いけど、あんたの正体を知った皆がおとなしく言うことを聞くとは思えないわ」
 「そのために弱みを握ってきたのだ。奴他の羞恥心を操る情報があればある程度の命令は聞くだろう」
 「ハン! それで時間を稼いで、仲間が来たら本格的に侵略開始って訳・・・なんという小悪党。決めた。あんたをぶっ壊してただのパトカーに改造してやる。侵略者が来るなら皆で返り討ちよ!」

 天子は緋天の剣を構え、バリケードを睨みつける。
 しかしバリケードはおかしくてしょうがなといった感じで笑い出す。

 「グハハハハ! 貴様が俺に勝てるだと? 愚か者めが!」

 そう言うとバリケードは立体映像を展開し、周りを暗闇にして姿をくらませた。

 「そんな子供騙しが私に通用するとでも」

 少し落ち着けば、音、空気の流れでバリケードがどこにいるかはおおよそ見当がつく。

 (油断しているところに一発でかいのをお見舞いしてやる)

 そう考えた天子が狙いを定めるとバリケードが語りかけてきた。

 「しかしお前は見ていて楽しかったぞ。あんな幼稚な嘘を俺が信じてると思っていたんだろ? 嘘がばれないようにあたふたする姿は本当に滑稽だった」
 「言いたいことはそれだけ? じゃあさっさとくたばりなさい」
 「いやいや、お前は本当におもしろい奴だ。皆があれほどお前を厄介者扱いしてるのに気がついていないとは」
 「・・・え? なんですって?」

 バリケードの言葉に天子は思わずかまえをといて聞き返してしまう。
 すると突然目の前に咲夜が現れた。
 それに驚きながらも今はバリケードを倒すほうが先だと天子は協力を求める。

 「咲夜!いいところに来たわね! バリケードはとんでもない奴だわ。あいつ私達を」
 「うっさいわね。あんた本当に何様のつもりよ」
 「さ、咲夜?」

 思わぬ咲夜の冷たい言葉と表情に後ずさる天子だが、今はそれどころではないと説得しようとする。

 「今はそんなのどうでもいいわ! 本当に大変なんだから!」
 「またまたあんたがくだらないことでもしたんでしょ。そろそろいい加減にしてくれないかしら? うざいわよ」

 今までにはなかった咲夜の拒絶に絶句する天子の周りに今度は霊夢と紫が現れた。

 「れ、霊夢、紫! バリケードが」
 「天子、勘弁してくれない? あんたが来ると私の平穏な時間が台無しになるの」
 「あまり調子に乗ると本当に殺すわよ天人」
 「そ、そこまで言う?」

 二人のあまりにも冷たい態度に天子が青ざめていると周りに魔理沙、パチュリー達が次と現れ侮蔑の眼差しを天子にむける。
 天子はその眼差しに怯えながらもなんとか気丈に振舞おうとした。

 「な、なによ! なによ!! こんなのただの幻術よ騙されないわ!!」
 「そうです。私達は所詮幻覚。しかしながら皆さんの表情はまぎれもない真実なのですよ総領娘様」

 そこには周りの侮蔑の表情とは違う優しい微笑みをたたえた衣玖がいた。そして微笑んだまま淡々と言葉を続ける。

 「私、今までいろんな天人を見てきましたがあなたのような卑しい天人は見たことがありません。天人の、いえ、天界の面汚しといったところでしょうかね」

 衣玖の言葉を震えながら聞いていた天子だったがついにはその場にうずくまってしまう。
 そんな天子の前にバリケードが歩み寄り優しくささやく。

 「だが俺は自意識過剰で傲慢なお前が嫌いじゃない。どうだ、我らデセプティコンの仲間にならないか? 我らの力と貴様の力があれば幻想郷どころか地球、宇宙を征服できるだろう。そうすれば、貴様を厄介者扱いしているやつを奴隷にできる。素晴らしいことではないか! 天子よ。我らの元の来い」

 しばらくうずくまって震えていた天子だったが、やがて震えもおさまると何かボソボソと呟いた。

 「なんだ天子?」

 よく音を拾おうとバリケードが顔を天子に近づけた次の瞬間、バリケードの顔から火花がちり、グアアァ!! と悲鳴をあげると無様にひっくり返る。
 すると周りの暗闇や皆の姿は掻き消えた。

 「ほーっほっほっほ! 馬鹿じゃないのあんた? 皆が私を厄介者扱いですって? そんなわけ無いじゃない。みんな超天人である私を尊敬しているに決まっているわ!」

 緋天の剣をかまえる雄雄しい天子の表情は先程までの怯えた表情は無く、怒りと自信に満ち溢れている。

 「まったく、ずいぶんと気分の悪い幻影を見せてくれたわね。それに超天人である私があんたの言うことを聞くとでも? 馬鹿馬鹿しい。あんたが私の部下になりたいなら荷物持ちぐらいにはしてあげてもいいけど」
 「おのれ小娘! 調子に乗るな!!」
 
 バリケードは起き上がるとすぐに体制を立て直し、激昂すると左腕を蛇の様に伸ばし天子に襲い掛かった。
 その予想外の速さと長さに天子は捕らえられてしまう。

 「くっ、こんな技があったなんて!」
 「裏切るのを前提の相手に全ての技を見せるものか!」

 そしてバリケードは天子を捕らえた左腕に力を籠める。
 骨の軋む音とともに苦しげな呻きを上げる天子にバリケードは語りかけた。

 「このまま黙っていれば命だけは助けてやろう。しかし、動けなくなるまで痛め付けるがな!」

 更に力が籠められようとしたその時である。
 突如稲妻がバリケードの顔を直撃した。

 「グハァ!!」

 突然の激痛にバリケードは思わず天子を放り捨てる。
 そして放り出され地面に叩きつけられそうになった天子を紅い羽衣が受け止めた。

 「大丈夫ですか? 総領娘様。危ないところでしたね」
 「ふん、助けてもらわなくても平気だったわよ。本当に空気が読めないのね。でもお礼は言っておくわ。ありがとう」
 「あら、光栄ですわ」

 顔を抑えながらも武器を展開し戦闘態勢にはいったバリケードは怒りに燃えていた。
 天子と衣玖も身構えバリケードを睨みつける。

 「貴様ら・・・俺をここまでコケにしておいてただですむとは思うなよ!」
 「まったく馬鹿ね。私に喧嘩を売ったところで図体でかいだけのあんたが地べたを這いつくばるだけになるのは目に見えてるのに」
 
 天子の挑発にバリケードは何か叫ぶとホイールブレードを振り回して飛びかかってきた。

 「来ます!!」
 「フン」

 身構える衣玖とは対照的に落ち着いている天子はパチンと指を鳴らす。
 二人にブレードが振り下ろされそうとした刹那。

 ドゴォン!!!!

 と轟音がしてあたりは粉塵でみたされた。
 しばらくして粉塵がはれると二人の前には巨大な要石に押しつぶされ、火花を散らしてもがいているバリケードの姿があった。
 
 「おみごとです」
 「まあね。私にかかればざっとこんなもんよ」

 今だもがき続けるバリケードに天子はあっかんべーをすると、すたすたと歩き始めた。

 「総領娘様、どちらへ?」
 「神社にもどるわ」
 「トドメはささないのですか?」
 「動けやしないわよ。放っておきなさい」
 「でも・・・」

 不安げな様子でバリケードを見る衣玖の手をとると天子は強引にひっぱりだす。
 「あっ、ちょっと」と衣玖は抗議をするが天子はお構いなしに歩く。

 「いいからいいから。それより本物の悪撲滅祝いとして飲みなおすわよ。付き合いなさい」
 「・・・そうですね」

 手をつないで神社に向かう二人の背後からは

 「お願いだ、なんでも言う事を聞くから助けてくれ!」

 という声がしていたが二人にとってはどうでもいいことであった。




 後日、バリケードの処分について話し合われた結果、このまま外界に戻しても悪さをすることは明白なので幻想郷に置いておくことが決定。
 破壊するという意見も多かったが、生かしておいて遊んだほうがおもしろいという天子の強い押しで、皆でコキ使って見張るということになった。
 バリケードの供述だと仲間との通信は失敗したので、幻想郷に新たなディセプティコンは来ないということだったが本当の事は分からない。
 しかしながら外界からの悪は倒れ、幻想郷にはいつもの平和が戻るのであった。




 衣玖は天界をふよふよと漂っていた。
 バリケードの監視に行ったところ、今日は紅魔館でレミリアとフランドールの玩具としてコキ使われていてあの二人の神業的ドライビングテクニックによって順調にボコボコになってるようである。
 まあ、しばらく悪さはできないだろうと安心していると、大きな石に腰掛けてため息をついている天子の姿を見つけた。

 「ハァ・・・」
 「ため息なんてらしくないですね」
 「な、私はため息なんてついてないわよ・・・ハァ」
 「言ったそばからついてますよ」

 衣玖の指摘に苦笑する天子だったが、何かに迷う素振りをしたあと、おずおずと口をひらいた。

 「ねぇ、私って厄介者なのかな」

 そのあまりにらしくない質問に、度肝をぬかれた衣玖はまたよからぬ事を考えているのかと警戒するが、その表情は落ち込んでいて何か企んでいるようには見えなかった。
 その珍しい光景に苦笑しながらも衣玖は質問に答える。

 「そうですね。正直申しますと総領娘様の我の強さにイラッとくることはありますね」
 「うぅ・・・」

 ガビーンとショックを受けている天子に衣玖は言葉を続ける。

 「ですが、尊敬できるところでもあります。そこまで自分に自信が持てるのも羨ましいですよ」
 「そ、そうかな」
 「少し客観的になれればこれから先、もっと素敵な総領娘になれると私は思います。例えば私のように空気を読めるようになってみては?」
 「あなたが空気読めるってのは納得いかないけど、そうね、参考にするわ・・・ありがとう」

 頬を紅く染めてプイッとそっぽを向く天子を見て、この我侭娘の成長が微笑ましいと衣玖は思った。
 この不良天人は自分以外の様々な人や妖怪に出会った事で、この世にはそれぞれ違う価値観があることを無意識に学んでいるのだ。
 それに、理由はともあれ天子に衣玖を含め知り合いが増えたのもいいことである。
 最近増えた知り合いの中で今日は人形使いがやってきた。

 「こんにちは天子。今日はあなたに痛い目に会わすため、ここ数日間家にこもって作った人形を持って来たわよ」
 「うわぁ、暗い。あなた家に篭ってたから宴会に来なかったのね」
 「な、何ですって!?また私の知らないところで宴会が!! ギギギ、この恨みをあなたで発散してやる! 行きなさい司令官!(人形の名前)天子を泣かしてしまいなさい!!」
 「かわいそうだから遊んであげるわ。来なさい!」

 激しく戦う二人を眺めながら、天界へ来る者が暴れにではなく遊びに来る日はいつになるのかと思う衣玖であった。
 
 初めましての人もお久しぶりの人もいるかと思います。ゴウテンです。
ここ最近は人生の山場でしばらくSS書いてませんでしたが、なんとか山場を越えられそうになったので久しぶりに投稿してみました。
 今回はいつぞや投稿して厳しい意見をもらった東方とトランスフォーマー(実写映画版)のクロスオーバーSSをリベンジの意味もこめて挑戦しました。
 私は東方もトランスフォーマーも大好きでどちらを贔屓するとかそんな考えはありません。ただただ好きな作品同士を競演させてみたい。そんな想いで書きました。
 このSSは東方中心なのでトランスフォーマーの設定はほぼキャラクターだけで世界観はほとんど持ってきてません。それを考えるとオリキャラと考えてもらってもいいかもしれません。
 前回のクロスSSの評価にはクロス物を投稿すんなというのがいくつかありました。
 確かに東方が好きな人の中にはクロス物が東方を侮辱している感じる方もいると思います。
 ですがクロス物は混ぜる作品の優劣をつけたり侮辱するのではなく、世界観を広めて楽しむものだと私は考えています。
 嫌いなものを否定したい気持ちも分かりますが、嫌い=否定の気持ちを少し抑えてみてはどうでしょうか?
 それでも嫌いなら無理する必要はありませんしね。
 なにはともあれこの未熟なSSを読んでクロス物も悪くないなと思う人が増えたら嬉しいです。
 それではこのへんで失礼します。
 読んでくれた人には感謝を。

 ※追記・タイトル改名と誤字修正しました。
 ※更に追記・またタイトル改名。
ゴウテン
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.350簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
>クロス物は混ぜる作品の優劣をつけたり侮辱するのではなく、世界観を広めて楽しむものだと私は考えています。
他の投稿所で「その他」とか「クロス」とかジャンルがあるとこならともかく、ここは「東方創作話」です
>嫌いなものを否定したい気持ちも分かりますが、嫌い=否定の気持ちを少し抑えてみてはどうでしょうか?
>それでも嫌いなら無理する必要はありませんしね
お前は何をいいたい?

とりあえず、あんたは違う投稿所に投稿しなよ
2.無評価名前が無い程度の能力削除
クロスは無条件で×とは言わないけど、
「ここ」に投稿する以上「東方を主」にしてくれないと
あなたの考えはいろんな作品の二次創作を投稿できる場所の方があってます
3.10名前が無い程度の能力削除
なんでこれだけの大騒ぎを引き起こしたの原因の一つの天子が何のお咎めもないの
4.70からなくらな削除
ここにあっていいものかはともかく、とても読みやすかったです。
その高い文章力を活かして、東方創作話を書いてみてはいかがでしょうか?
5.無評価名前が無い程度の能力削除
>始めましての人もお久しぶりの人もいるかと思います。ゴウテンです。
×始めまして  ○初めまして

>ここ最近は人生の山場でしばらくSS書いてませんでしたが
このSSの山場はどこにあるのでしょうか。もう少し展開に緩急を付けたほうが面白くなるかも知れません。

>「KYって最近の流行なんですよね」
あなたも空気を読んで、投稿場所や内容について再考されてはいかがでしょうか。

>こんにちわ天子
×こんにちわ  ○こんにちは

>天界へ来るの者が~
○天界へ来る者が~
7.50煉獄削除
とても読みやすかったですが…クロスさせる意味あったかなぁ。(苦笑)
私としては、なんだかトランスフォーマーの方が濃すぎる気がしました。
それに変にクロスさせなくても氏は面白い作品が書けるのではと思いますよ。

氏はクロスが好きですか?
私も嫌いではないですが、クロスさせるものにもよりますね。(苦笑)
今回はバリケードの存在が目立ちました。
次回クロスを作るならもっと東方になじめるようなものを期待したいです。
9.無評価名前が無い程度の能力削除
これはいいうんこSS
13.無評価ゴウテン削除
ご意見、誤字報告ありがとうございます。
皆さんのコメントを読んでこれからはクロスするにせよしないにせよ内容をよく考えなければいけないと反省しました。
今度SSを投稿するときは今回の反省点を生かせる様努力したいと思います。
16.無評価名前が無い程度の能力削除
クロスオーバーは創想話には向かないようなので点数は入れませんが
テンポも良くとても読みやすかったと思います。
次回作にも期待してますね。
19.80名前が無い程度の能力削除
バリケード成分が目だつというがトランスフォーマしらない自分にはむしろそっけなく書かれすぎだと思った。
見た目悪くて卑怯だけどなかなか話せる奴なんだな、と思ったところを裏切る!という流れを強調するのに既存のキャラクターの性格を前提とするのはどうかと思う。筆でやって。
そんな理由で山場があっさり風味に感じたけど東方成分の方はおおむね良好wおもしろかったw
20.40名前が無い程度の能力削除
まあ、行われた作戦の8割を破綻させた副官がゲンコツでゆるされる
TFのアニメとか見慣れてると天子のお咎めなしにも納得はできるがwww

着眼点は嫌いじゃないぜ!!

でもやっぱアニメのTFっぽいよなあ ノリがw