※人魂灯に関するオリ設定があったりなかったりしますがどうぞ
--冬
香霖堂の外には雪が降っていた。
今頃のチルノが大妖精と楽しいそうに遊んでいるのだろう
インドア派の僕は店の中から雪を見て楽しむ方が似合っている
まだ朝早いのでストーブをつけていても寒い
いつまでも雪を窓から眺めるのもアレなのでもう少し寝ることにした
今日は閉店にしておいたので開店時間を気にする必要はない
「久しぶりに・・・ゆっくり寝ることができそうだ」
僕は再び眠りについた
---カラン、カラン
店の入り口にあるベルの音で目が覚めた
確かに店の外に【close】の看板を立てておいたんだがな・・・
泥棒であったら困るため仕方なく布団から出て商品の方へと向かう。
「あ、おはようございます 店主さん」
「君か・・・今日は店を開いてないよ。買い物なら今度にしてくれないか?」
泥棒ではなかった
2本の剣を持ち半霊を引き連れた少女『魂魄 妖夢』が僕の目に映った
意外だった。彼女は魔理沙や霊夢と違い行儀の良い子だし、まして強盗など見つけたらその場叩き切るような子だ
彼女なら表の【close】という看板に気づくと思ったのだが・・・・
「いえ、買い物というわけじゃないです。第一【close】って書いてありましたしね」
やはり、ちゃんと気づいていた
「実は店主さんに1日だけ預かってほしいものがあるんですよ。」
「預かってほしいもの?」
「はい、コレなんですけど・・・」
彼女はそういうと持っていた風呂敷からランプのようなものを出してきた
「これ・・・〔人魂灯〕じゃないか」
彼女が出したものを僕は知っていた。
別に能力で分かったとかではない
以前、彼女が失くしたこの人魂灯拾ったのが僕だったからだ
持っているだけで幽霊集まってくるためあまり良い気分はしない・・・と、いっても別に何か害があるわけではない
「これを僕に?」
「はい、実は幽々子様が最近ここら辺で出るガラ○ワニを食べたいらしくて狩りにきたんですよ。で、ここに来るときに間違えて人魂灯も持ってきっちゃたんですよ。だからガラ○ワニに壊されるといけないので店主さんに預かってほしいんですが」
ガラ○ワニといえば全長10mはある巨大ワニである。捕まえるのが難しい分かなりの美味だときいた。いくら主人のためとはいえ完全に庭師の仕事を逸脱している気がするがツッコまないことにした
「事情はわかったが、なんで僕なんだい?」
一つだけ疑問があった
僕が人魂灯を拾い、彼女が引き取りにきたとき僕は人魂灯を返す代わりに店の雪かきを朝から晩までやってもらったのだ
彼女からすれば僕に頼むは良い気分ではないだろう
「う・・・それはもう貴方しか頼める人がいなくて・・」
一瞬の沈黙に違和感を覚えたが確かに『霊夢』や『魔理沙』に預けるは危険である
預けたら見返りを求めるかもしれないし悪用するかもしれない
それに持っているだけで霊が集まって来るのは良い気分ではない。きっと何人かに断られただろう
そう思うと少し可哀想になってきた
「分かった・・・預かろう」
前に人魂灯を何日も店に置いていたのだ。
別に危険があるわけではない
それに経緯はどうあれ彼女が僕を信じて来てくれたのだ。その気持ちを無碍に断るのは男として駄目だろう
「ほ、ホントですか!!ありがとうございます」
「ああ、一日なんてあっという間だからね」
彼女が顔が満面の笑みに変わった
「じゃあ、明日朝一で取りにきますので。では!」
そういうと彼女は急いで店を出て行った。
僕は人魂灯を寝室まで持っていって枕元においてまた寝た。
「カウンターに置いてたら魔理沙に盗まれるからな・・・」
流石に3度寝ともなると案外早く起きた
時間を見ると1時間ほどしか経っていない
特にやることもないので散歩に行くことにした
人魂灯は留守にしている間に盗まれるといけないので服の中に入れておいた
僕はまだ知らなかった。
この散歩が僕を生死の境に追いやることを・・
久しぶりに遠くの方まで歩いてみた。
人里に来たのは何年ぶりだろうか
「何年たっても変わらないものだな」
歩いている途中に慧音が授業をしてるのが見えた。邪魔をしてはいけないので静かに横を通っていった
疲れてきたので、てきとうに昼食だけ食べて帰ることにした
ふと・・・
人魂灯が服の中で異様な色に光った気がした。気のせいだろうか・・・
帰り道、急に空の色がおかしくなり大雪が降り始めた
これでも何十年も幻想郷に住んでいるのだ
急激な気候の変化など慣れている
のはずだが・・・・・
「寒い・・・」
いくらなんでも異常気象すぎる
最早、大雪などというレベルではない吹雪といっても過言ではない程雪がふってきた
まだ1時間も経ってないというのにすでに10cmは積もっていた
「まあ、文句ばかり言っててもしょうがな・・」
雪に足をとられ転倒した
雪が積もっているため痛くも痒くもなかったがポケットから財布がとんだ
「ああ!!」
財布は雪に埋もれなくなってしまった
探せば見つかるだろうがそうも言ってられない。
もう寒さに耐えるのも大分辛くなってきたからだ
「早く帰らないと・・・」
湖まできた。見事に凍っている
幸いチルノがいないため湖の上歩いていけるが・・・・・
「もし氷が割れて落ちたらどうなるだろうか」
冬+吹雪+そこら辺の水とは比べ物にならないほどの低温の水が僕に襲いかかることになる
だが、迷っている場合ではない
何かを得るためにはリスクを負わなければならない
僕は湖の上を歩くことにした
足元の氷が割れないことを信じて・・・・
「もう少し・・・もう少しだ・・」
すでに対岸までおよそ3mの位置にきていた
残りわずかだ
氷の耐久度もわずかだ
なんだが「ピキピキ」と音がでている
「(ここは勝負にでるしかない!!)」
僕は幅跳びと同じ容量で一気に対岸まで行く覚悟を決めた
3mだ。がんばれば跳べない距離ではない
足に力を込め、手をふり
両足を一気に地面から離す!!
次の瞬間地面の氷が割れた
すでに湖から足は離れている
生か死か もう自分の跳躍力にかけるしかない
「うおおおおお!!」
残り1m・・・50cm・・・10・・・
両足が地面についた
と、次の瞬間・・・・
『ズル』
雪で足がすべった
この後の展開がどうなるか・・・そんなことは考えなくても分かった
僕は頭から湖にダイブした
ダイブしたはずだった
まだ岸から1mまでの地点は凍ったままだった
「バキ!」 「パリーン」 「バシャ!!」
という3拍子の音と共に僕は湖に落ちた
湖の中では「冷たい」とは感じなかった。もはや「激痛」という感覚しかない
このままだと凍死してしまう
どうせ死ぬのなら最後まで抵抗してみせる
その思いだけで死ぬ気で上へと泳ぐ
どれだけ痛くても体が動く
氷に頭を打っても目の前が揺れているだけだ死ぬわけじゃない
火事場の糞力というやつかもしれない
僕はいつのまにか地面を踏みしめていた
凍傷で体中が痛い
目の前がかすむ
だが不幸中の幸い、頭から氷にぶつかったため出血自体はない
体温が著しく下がっている今、少量の出血でも死んでしまう
意識が朦朧としながらも歩く
香霖堂まで残り500mを切ったところだろうか・・・
目の前に吸血鬼レミリア・スカーレットが現れた
「あら随分弱ってるようね」
もう会話をできる体力すらない
頼むから血だけは吸わないでほしいものだ
「死にかけのところ悪いけど、あなたの血をもらうわよ」
なんだか今日の運の悪さは異常だ・・・
一年に1回起こっていい程度の出来事が立て続けに起こっている
「お腹がすいてるの♪」
こんなことなら店を出るとき遺書を残していくんだった
吸血鬼にギリギリ死なない程度の血を吸われた後、僕は地面に倒れた
レミリアもまさかそこまで弱っているとは分かってなかったらしく逃げるように去っていた
指が動かせたならダイイングメッセージを書いてるところだ
あれから、どれだけ過ぎただろうか・・・
1分かもしれないし1時間かもしれない
もう起き上がることもできない
雪にあたる顔がやけに冷たかった
手足の感覚はほとんどない
立ち上がる気力も残ってない
ただ激痛と冷気だけが襲いかかる
死ねば楽になれる
そんな言葉が頭をよぎるようになってきた
潔く諦めるのもかっこいいかもしれない・・・
「もう疲れた・・・」
最後につぶやいて眼を閉じる
やけに眠たい。これならすぐ寝れそうだ・・・
----ありがとうございます
ふと・・・
あの少女の声が頭をよぎった
「そうか、人魂灯・・・ここにあるのか。はは、これは返せそうにないかな・・・」
----貴方しか頼める人がいなくて
また聴こえた
「・・・・・」
ここで死ねば楽になる
だが・・・・
ここで死ねば彼女との約束を果たせなくなる
そうだ・・・
彼女は僕を信じて人魂灯を預けてくれたのだ。
信頼されたなら信頼で答えなければならない
自然に足が動く
あれだけ朦朧としていた意識も戻ってきた
体力も倒れたおかげ少しばかり歩ける程度にはなった
凍傷による激痛にもなれた
歩ける
いや、歩くしか選択肢がなかった
このまま店に戻っても死ぬかもしれない
だが約束は果たせる
彼女に人魂灯を返すことができる
--約束--
その一心で歩き続けた
そして・・・
ついに・・・
辿り着いた
店の中に入ると同時に倒れこむ
ストーブがついているわけではないが、ずっと外にいたためか店の中は暖房を全開にしたような暖かさだった
だがそれも一瞬。
室内の温度は5℃。とにかくストーブをつけるしかない
気を失うのはその後だ
足が動かないため匍匐前進のように店を這う
ストーブをつければ次、気を失った後にまだ生きているかもしれない
そんなことを考えながらストーブの置いてある場所まで進む
上を向く余裕がないため下を向きながらストーブの近くまでいった
下を向いているためストーブは見えないが手を伸ばせば届く位置だ
仮にも自分の家なので、どこになにがあるかなど見なくても分かる
ストーブのスイッチに手を伸ばす。
手が空を切った
不思議に思いもう一度手を伸ばす
やはり、なにもない
仕方ないので最後の体力を使って上を向く
そこにはストーブの代わりに手紙がおいてあった
「スキマの中を暖めたいので少し借ります by紫」
と書かれていた
「あ・・すきま・・・かい・・・のろい・・ろして・・・・や・・」
体力の限界はとっくにすぎていた
次に目覚めるかどうかは分からない
眠気に誘われるまま
僕は目を閉じた・・・
暖かい・・・・
意識が戻った・・・が目は開けていない
死んだなら目の前に閻魔様か死神がいるだろう
生きているなら床が見えるはずだ
思い切って目を開けてみる
「あら、気づいた?」
床でも死神でもなかった
目を開けるとスキマから上半身だけだしたストーブ泥棒がいた
ストーブ泥棒を無視し窓から外をみる。
外が赤いことから夕暮れだとわかった
トラウマになりそうな雪も止んでいる
寝室で布団もかけられていたため夢かと思ったが、凍傷で体が痛むことから現実だと分かる
「ちょっと!お礼は!?」
なにやら無視したことに怒っているらしい
こっちが怒りたいわ
だが、仮に紫がストーブを盗まなくても生き残れる確率は少なかった。そう考えると彼女に感謝こそすれ怒る道理などない
「ああ、ありがとう紫」
お礼をいうと紫は満足そうにしてスキマの中に戻っていった。
まだ体が痛むが普通に歩ける程度には回復した。
「そういえば。」
僕は思いだしたように服の中をまさぐる
あれだけの騒ぎだ。落としていてもおかしくない。
腹のあたりで指がソレに触れた
服から取り出して確認してみる
人魂灯・・・これを失くしてしまっては命がけで帰ってきた意味がない
ほっと胸を撫でおろす
「・・・・」
人魂灯を見て思う
「そういえば、コレを預かったときから変なんだよな」
散歩に出かけようと思ったのは気分だし、今日のことはたまたまかもしれない。
だが・・・・
「考えていてもしょうがない・・あの二人を呼ぶか・・・・」
「明日も寺子屋があるんだが・・・」
「あたいも仕事があるんだけど」
慧音と小町に来てもらった
「一体なんのようだ?」
慧音が不満そうにいう。
「君はコレについて何かしらないか?」
そう言って人魂灯を慧音に渡す
「人魂灯か・・・・」
思ったとおりだ。流石「幻想郷で知らない歴史はない」と豪語するだけある。
人魂灯は冥界のものだが
「これがどうかしたのか?」
「実はかくかくしかじかで・・・・もしかしてこれが普通の幽霊と一緒に悪霊的なものも集めてるんじゃないかと思ってね」
「確かにないとも言い切れないが・・・実際文献だけしか見たことがないからよくわからん」
どうやらあまり知らないらしい。
まあ、そのために霊担当の小野塚小町を呼んでおいたのだが。
「小町、今僕の周りに悪霊見えるかい?」
「・・・」
「小町?」
「・・・・あんた凄い憑いてるよ」
「え?」
「こんなに悪霊が人にくっついてるのをみるのは初めてだよ」
顔が真剣だった。流石に焦る
「え、えっと、それはどうすればいいのかな?」
「その人魂灯に霊が集まるんだろ?だったらそいつを手放せばいい。放っておいたら霊がそっちに寄るからな。さっきの話がホントなら確実にその人魂灯のせいだね。出かけるときまでそんなもの持ってるからだよ・・」
なるほど・・・・
サボり魔の称号がついているとはいえ死神の名は伊達ではない
「ありがとう、参考になったよ」
「ああ、サボったことは言わないでくれよ・・じゃあな」
「役に立たなくて悪かったな」
若干空気になってた慧音がむくれていた。
わざわざ人里から来てくれてコレだから怒るのも無理はない
「いや、君の意見も参考になったよありがとう」
「・・・・もう、夜だから帰る」
少しの沈黙の後それだけ言って彼女は店をでた
戻ってきた
角が生えていた
窓から外をみると満月だった
自分の中から大切なものが消えた
小町の言ったとおり呪われているらしい
その日は布団に潜って泣きながら眠りについた
次の日の朝
呪いの元凶である彼女はまだ来ていない
もし来たら前回のように店の雪かきを3日間くらいさせようと思ったが彼女は人魂灯が悪霊も集めることを知っているのだろうか
もしかしたら知らないかもしれない
霊夢に聞いたことがある
白玉楼の外には結界が張られていて普通の人間には入ることさせできない
人魂灯が普段から白玉楼にあるとするなら結界で霊は入れないかもしれない。というか半霊や亡霊には呪いなどは効かないかもしれない
『ボトッ!ゴゴゴッ!!』
そんなことを考えてると店の入り口から変な音がした
気になって外に出てみると・・・
雪の山が出来ていた1mはあるかもしれない
その雪山から2本の剣がはみ出ていた
「んっ~んん!んっん~ん!!」
もう雪をどけて確認するまでもなかった
前にもこんな事があった気がする。
放っておくと死ぬので顔の部分だけ雪をどかしてやる
「冬に店に入るときは雪が落ちてくるからゆっくりドアを開けるようにと言わなかったかな、妖夢」
「う~分かりましたから雪を全部どけてくださいよ~」
「しょうがないな」
雪に刺さった2本の剣を引き抜く
「な、なんで剣だけ抜くんですか~!?」
少女はもう半泣きになっていた
「雪はどかすし、剣も人魂灯も返す。だけど君に一つ聞きたいことがあるんだ」
ずっと考えていたことを聞いてみる
「君は人魂灯が悪霊も呼ぶと知ってたのかい?」
「えっ!い、いや・・・・あ、悪霊なんてくるわけないじゃないですか!!」
非常に分かりやすい。
目が泳いでる
どうやら誘導尋問にかける必要はないらしい
「・・・・・」
「・・あの、なにしてるんですか?」
「見てのとおりだよ。雪は圧縮すると硬くなるからね」
「いや・・・だからなんで雪を押すんですか!!!」
素手で雪を押すは少しきついが彼女は痛い目を見たほうがいい
「うう~寒いよ~白楼剣と人魂灯返してくださいよ~・・」
もう、完全に泣いていた。1000年は生きてるはずだが性格は見た目どおりだ
「しょうがないなあ」
彼女の顔の前に2本の剣と人魂灯をおく
「ほら、ちゃんと返したよ。もう持っているのはうんざりだから持ちかえってくれ」
「うう~しくしく、動かないよ~寒いよ~助けてくださいよ~」
「はは、寒いと感じるなら大丈夫だよ。僕なんてこれのせいで感覚までおかしくなったんだから。じゃ、流石に寒くなってきたから僕は店の中にいるよ」
「ううう~~も、もう何も預けたりしませんからぁ~ちゃんとお詫びもしますからぁ~」
無視して店の中に入る
やはり暖かい
店の窓から外をみてみると彼女の分身である半霊が必死で雪をどけていた。
「半霊って手あるんだなあ~」
しばらくするとようやく動けるようになったのか
剣と人魂灯をもって泣きながら走り去っていった
反省も後悔もしていない
~数日後~
開いた窓から見たこともない蝶が店に入ってきた
見たことのない蝶だがとても綺麗で美しい
思わず触れてみた
次に目が覚めたとき、目の前には小船を漕ぐ死神がいた
反省はしてない 後悔はしている
--冬
香霖堂の外には雪が降っていた。
今頃のチルノが大妖精と楽しいそうに遊んでいるのだろう
インドア派の僕は店の中から雪を見て楽しむ方が似合っている
まだ朝早いのでストーブをつけていても寒い
いつまでも雪を窓から眺めるのもアレなのでもう少し寝ることにした
今日は閉店にしておいたので開店時間を気にする必要はない
「久しぶりに・・・ゆっくり寝ることができそうだ」
僕は再び眠りについた
---カラン、カラン
店の入り口にあるベルの音で目が覚めた
確かに店の外に【close】の看板を立てておいたんだがな・・・
泥棒であったら困るため仕方なく布団から出て商品の方へと向かう。
「あ、おはようございます 店主さん」
「君か・・・今日は店を開いてないよ。買い物なら今度にしてくれないか?」
泥棒ではなかった
2本の剣を持ち半霊を引き連れた少女『魂魄 妖夢』が僕の目に映った
意外だった。彼女は魔理沙や霊夢と違い行儀の良い子だし、まして強盗など見つけたらその場叩き切るような子だ
彼女なら表の【close】という看板に気づくと思ったのだが・・・・
「いえ、買い物というわけじゃないです。第一【close】って書いてありましたしね」
やはり、ちゃんと気づいていた
「実は店主さんに1日だけ預かってほしいものがあるんですよ。」
「預かってほしいもの?」
「はい、コレなんですけど・・・」
彼女はそういうと持っていた風呂敷からランプのようなものを出してきた
「これ・・・〔人魂灯〕じゃないか」
彼女が出したものを僕は知っていた。
別に能力で分かったとかではない
以前、彼女が失くしたこの人魂灯拾ったのが僕だったからだ
持っているだけで幽霊集まってくるためあまり良い気分はしない・・・と、いっても別に何か害があるわけではない
「これを僕に?」
「はい、実は幽々子様が最近ここら辺で出るガラ○ワニを食べたいらしくて狩りにきたんですよ。で、ここに来るときに間違えて人魂灯も持ってきっちゃたんですよ。だからガラ○ワニに壊されるといけないので店主さんに預かってほしいんですが」
ガラ○ワニといえば全長10mはある巨大ワニである。捕まえるのが難しい分かなりの美味だときいた。いくら主人のためとはいえ完全に庭師の仕事を逸脱している気がするがツッコまないことにした
「事情はわかったが、なんで僕なんだい?」
一つだけ疑問があった
僕が人魂灯を拾い、彼女が引き取りにきたとき僕は人魂灯を返す代わりに店の雪かきを朝から晩までやってもらったのだ
彼女からすれば僕に頼むは良い気分ではないだろう
「う・・・それはもう貴方しか頼める人がいなくて・・」
一瞬の沈黙に違和感を覚えたが確かに『霊夢』や『魔理沙』に預けるは危険である
預けたら見返りを求めるかもしれないし悪用するかもしれない
それに持っているだけで霊が集まって来るのは良い気分ではない。きっと何人かに断られただろう
そう思うと少し可哀想になってきた
「分かった・・・預かろう」
前に人魂灯を何日も店に置いていたのだ。
別に危険があるわけではない
それに経緯はどうあれ彼女が僕を信じて来てくれたのだ。その気持ちを無碍に断るのは男として駄目だろう
「ほ、ホントですか!!ありがとうございます」
「ああ、一日なんてあっという間だからね」
彼女が顔が満面の笑みに変わった
「じゃあ、明日朝一で取りにきますので。では!」
そういうと彼女は急いで店を出て行った。
僕は人魂灯を寝室まで持っていって枕元においてまた寝た。
「カウンターに置いてたら魔理沙に盗まれるからな・・・」
流石に3度寝ともなると案外早く起きた
時間を見ると1時間ほどしか経っていない
特にやることもないので散歩に行くことにした
人魂灯は留守にしている間に盗まれるといけないので服の中に入れておいた
僕はまだ知らなかった。
この散歩が僕を生死の境に追いやることを・・
久しぶりに遠くの方まで歩いてみた。
人里に来たのは何年ぶりだろうか
「何年たっても変わらないものだな」
歩いている途中に慧音が授業をしてるのが見えた。邪魔をしてはいけないので静かに横を通っていった
疲れてきたので、てきとうに昼食だけ食べて帰ることにした
ふと・・・
人魂灯が服の中で異様な色に光った気がした。気のせいだろうか・・・
帰り道、急に空の色がおかしくなり大雪が降り始めた
これでも何十年も幻想郷に住んでいるのだ
急激な気候の変化など慣れている
のはずだが・・・・・
「寒い・・・」
いくらなんでも異常気象すぎる
最早、大雪などというレベルではない吹雪といっても過言ではない程雪がふってきた
まだ1時間も経ってないというのにすでに10cmは積もっていた
「まあ、文句ばかり言っててもしょうがな・・」
雪に足をとられ転倒した
雪が積もっているため痛くも痒くもなかったがポケットから財布がとんだ
「ああ!!」
財布は雪に埋もれなくなってしまった
探せば見つかるだろうがそうも言ってられない。
もう寒さに耐えるのも大分辛くなってきたからだ
「早く帰らないと・・・」
湖まできた。見事に凍っている
幸いチルノがいないため湖の上歩いていけるが・・・・・
「もし氷が割れて落ちたらどうなるだろうか」
冬+吹雪+そこら辺の水とは比べ物にならないほどの低温の水が僕に襲いかかることになる
だが、迷っている場合ではない
何かを得るためにはリスクを負わなければならない
僕は湖の上を歩くことにした
足元の氷が割れないことを信じて・・・・
「もう少し・・・もう少しだ・・」
すでに対岸までおよそ3mの位置にきていた
残りわずかだ
氷の耐久度もわずかだ
なんだが「ピキピキ」と音がでている
「(ここは勝負にでるしかない!!)」
僕は幅跳びと同じ容量で一気に対岸まで行く覚悟を決めた
3mだ。がんばれば跳べない距離ではない
足に力を込め、手をふり
両足を一気に地面から離す!!
次の瞬間地面の氷が割れた
すでに湖から足は離れている
生か死か もう自分の跳躍力にかけるしかない
「うおおおおお!!」
残り1m・・・50cm・・・10・・・
両足が地面についた
と、次の瞬間・・・・
『ズル』
雪で足がすべった
この後の展開がどうなるか・・・そんなことは考えなくても分かった
僕は頭から湖にダイブした
ダイブしたはずだった
まだ岸から1mまでの地点は凍ったままだった
「バキ!」 「パリーン」 「バシャ!!」
という3拍子の音と共に僕は湖に落ちた
湖の中では「冷たい」とは感じなかった。もはや「激痛」という感覚しかない
このままだと凍死してしまう
どうせ死ぬのなら最後まで抵抗してみせる
その思いだけで死ぬ気で上へと泳ぐ
どれだけ痛くても体が動く
氷に頭を打っても目の前が揺れているだけだ死ぬわけじゃない
火事場の糞力というやつかもしれない
僕はいつのまにか地面を踏みしめていた
凍傷で体中が痛い
目の前がかすむ
だが不幸中の幸い、頭から氷にぶつかったため出血自体はない
体温が著しく下がっている今、少量の出血でも死んでしまう
意識が朦朧としながらも歩く
香霖堂まで残り500mを切ったところだろうか・・・
目の前に吸血鬼レミリア・スカーレットが現れた
「あら随分弱ってるようね」
もう会話をできる体力すらない
頼むから血だけは吸わないでほしいものだ
「死にかけのところ悪いけど、あなたの血をもらうわよ」
なんだか今日の運の悪さは異常だ・・・
一年に1回起こっていい程度の出来事が立て続けに起こっている
「お腹がすいてるの♪」
こんなことなら店を出るとき遺書を残していくんだった
吸血鬼にギリギリ死なない程度の血を吸われた後、僕は地面に倒れた
レミリアもまさかそこまで弱っているとは分かってなかったらしく逃げるように去っていた
指が動かせたならダイイングメッセージを書いてるところだ
あれから、どれだけ過ぎただろうか・・・
1分かもしれないし1時間かもしれない
もう起き上がることもできない
雪にあたる顔がやけに冷たかった
手足の感覚はほとんどない
立ち上がる気力も残ってない
ただ激痛と冷気だけが襲いかかる
死ねば楽になれる
そんな言葉が頭をよぎるようになってきた
潔く諦めるのもかっこいいかもしれない・・・
「もう疲れた・・・」
最後につぶやいて眼を閉じる
やけに眠たい。これならすぐ寝れそうだ・・・
----ありがとうございます
ふと・・・
あの少女の声が頭をよぎった
「そうか、人魂灯・・・ここにあるのか。はは、これは返せそうにないかな・・・」
----貴方しか頼める人がいなくて
また聴こえた
「・・・・・」
ここで死ねば楽になる
だが・・・・
ここで死ねば彼女との約束を果たせなくなる
そうだ・・・
彼女は僕を信じて人魂灯を預けてくれたのだ。
信頼されたなら信頼で答えなければならない
自然に足が動く
あれだけ朦朧としていた意識も戻ってきた
体力も倒れたおかげ少しばかり歩ける程度にはなった
凍傷による激痛にもなれた
歩ける
いや、歩くしか選択肢がなかった
このまま店に戻っても死ぬかもしれない
だが約束は果たせる
彼女に人魂灯を返すことができる
--約束--
その一心で歩き続けた
そして・・・
ついに・・・
辿り着いた
店の中に入ると同時に倒れこむ
ストーブがついているわけではないが、ずっと外にいたためか店の中は暖房を全開にしたような暖かさだった
だがそれも一瞬。
室内の温度は5℃。とにかくストーブをつけるしかない
気を失うのはその後だ
足が動かないため匍匐前進のように店を這う
ストーブをつければ次、気を失った後にまだ生きているかもしれない
そんなことを考えながらストーブの置いてある場所まで進む
上を向く余裕がないため下を向きながらストーブの近くまでいった
下を向いているためストーブは見えないが手を伸ばせば届く位置だ
仮にも自分の家なので、どこになにがあるかなど見なくても分かる
ストーブのスイッチに手を伸ばす。
手が空を切った
不思議に思いもう一度手を伸ばす
やはり、なにもない
仕方ないので最後の体力を使って上を向く
そこにはストーブの代わりに手紙がおいてあった
「スキマの中を暖めたいので少し借ります by紫」
と書かれていた
「あ・・すきま・・・かい・・・のろい・・ろして・・・・や・・」
体力の限界はとっくにすぎていた
次に目覚めるかどうかは分からない
眠気に誘われるまま
僕は目を閉じた・・・
暖かい・・・・
意識が戻った・・・が目は開けていない
死んだなら目の前に閻魔様か死神がいるだろう
生きているなら床が見えるはずだ
思い切って目を開けてみる
「あら、気づいた?」
床でも死神でもなかった
目を開けるとスキマから上半身だけだしたストーブ泥棒がいた
ストーブ泥棒を無視し窓から外をみる。
外が赤いことから夕暮れだとわかった
トラウマになりそうな雪も止んでいる
寝室で布団もかけられていたため夢かと思ったが、凍傷で体が痛むことから現実だと分かる
「ちょっと!お礼は!?」
なにやら無視したことに怒っているらしい
こっちが怒りたいわ
だが、仮に紫がストーブを盗まなくても生き残れる確率は少なかった。そう考えると彼女に感謝こそすれ怒る道理などない
「ああ、ありがとう紫」
お礼をいうと紫は満足そうにしてスキマの中に戻っていった。
まだ体が痛むが普通に歩ける程度には回復した。
「そういえば。」
僕は思いだしたように服の中をまさぐる
あれだけの騒ぎだ。落としていてもおかしくない。
腹のあたりで指がソレに触れた
服から取り出して確認してみる
人魂灯・・・これを失くしてしまっては命がけで帰ってきた意味がない
ほっと胸を撫でおろす
「・・・・」
人魂灯を見て思う
「そういえば、コレを預かったときから変なんだよな」
散歩に出かけようと思ったのは気分だし、今日のことはたまたまかもしれない。
だが・・・・
「考えていてもしょうがない・・あの二人を呼ぶか・・・・」
「明日も寺子屋があるんだが・・・」
「あたいも仕事があるんだけど」
慧音と小町に来てもらった
「一体なんのようだ?」
慧音が不満そうにいう。
「君はコレについて何かしらないか?」
そう言って人魂灯を慧音に渡す
「人魂灯か・・・・」
思ったとおりだ。流石「幻想郷で知らない歴史はない」と豪語するだけある。
人魂灯は冥界のものだが
「これがどうかしたのか?」
「実はかくかくしかじかで・・・・もしかしてこれが普通の幽霊と一緒に悪霊的なものも集めてるんじゃないかと思ってね」
「確かにないとも言い切れないが・・・実際文献だけしか見たことがないからよくわからん」
どうやらあまり知らないらしい。
まあ、そのために霊担当の小野塚小町を呼んでおいたのだが。
「小町、今僕の周りに悪霊見えるかい?」
「・・・」
「小町?」
「・・・・あんた凄い憑いてるよ」
「え?」
「こんなに悪霊が人にくっついてるのをみるのは初めてだよ」
顔が真剣だった。流石に焦る
「え、えっと、それはどうすればいいのかな?」
「その人魂灯に霊が集まるんだろ?だったらそいつを手放せばいい。放っておいたら霊がそっちに寄るからな。さっきの話がホントなら確実にその人魂灯のせいだね。出かけるときまでそんなもの持ってるからだよ・・」
なるほど・・・・
サボり魔の称号がついているとはいえ死神の名は伊達ではない
「ありがとう、参考になったよ」
「ああ、サボったことは言わないでくれよ・・じゃあな」
「役に立たなくて悪かったな」
若干空気になってた慧音がむくれていた。
わざわざ人里から来てくれてコレだから怒るのも無理はない
「いや、君の意見も参考になったよありがとう」
「・・・・もう、夜だから帰る」
少しの沈黙の後それだけ言って彼女は店をでた
戻ってきた
角が生えていた
窓から外をみると満月だった
自分の中から大切なものが消えた
小町の言ったとおり呪われているらしい
その日は布団に潜って泣きながら眠りについた
次の日の朝
呪いの元凶である彼女はまだ来ていない
もし来たら前回のように店の雪かきを3日間くらいさせようと思ったが彼女は人魂灯が悪霊も集めることを知っているのだろうか
もしかしたら知らないかもしれない
霊夢に聞いたことがある
白玉楼の外には結界が張られていて普通の人間には入ることさせできない
人魂灯が普段から白玉楼にあるとするなら結界で霊は入れないかもしれない。というか半霊や亡霊には呪いなどは効かないかもしれない
『ボトッ!ゴゴゴッ!!』
そんなことを考えてると店の入り口から変な音がした
気になって外に出てみると・・・
雪の山が出来ていた1mはあるかもしれない
その雪山から2本の剣がはみ出ていた
「んっ~んん!んっん~ん!!」
もう雪をどけて確認するまでもなかった
前にもこんな事があった気がする。
放っておくと死ぬので顔の部分だけ雪をどかしてやる
「冬に店に入るときは雪が落ちてくるからゆっくりドアを開けるようにと言わなかったかな、妖夢」
「う~分かりましたから雪を全部どけてくださいよ~」
「しょうがないな」
雪に刺さった2本の剣を引き抜く
「な、なんで剣だけ抜くんですか~!?」
少女はもう半泣きになっていた
「雪はどかすし、剣も人魂灯も返す。だけど君に一つ聞きたいことがあるんだ」
ずっと考えていたことを聞いてみる
「君は人魂灯が悪霊も呼ぶと知ってたのかい?」
「えっ!い、いや・・・・あ、悪霊なんてくるわけないじゃないですか!!」
非常に分かりやすい。
目が泳いでる
どうやら誘導尋問にかける必要はないらしい
「・・・・・」
「・・あの、なにしてるんですか?」
「見てのとおりだよ。雪は圧縮すると硬くなるからね」
「いや・・・だからなんで雪を押すんですか!!!」
素手で雪を押すは少しきついが彼女は痛い目を見たほうがいい
「うう~寒いよ~白楼剣と人魂灯返してくださいよ~・・」
もう、完全に泣いていた。1000年は生きてるはずだが性格は見た目どおりだ
「しょうがないなあ」
彼女の顔の前に2本の剣と人魂灯をおく
「ほら、ちゃんと返したよ。もう持っているのはうんざりだから持ちかえってくれ」
「うう~しくしく、動かないよ~寒いよ~助けてくださいよ~」
「はは、寒いと感じるなら大丈夫だよ。僕なんてこれのせいで感覚までおかしくなったんだから。じゃ、流石に寒くなってきたから僕は店の中にいるよ」
「ううう~~も、もう何も預けたりしませんからぁ~ちゃんとお詫びもしますからぁ~」
無視して店の中に入る
やはり暖かい
店の窓から外をみてみると彼女の分身である半霊が必死で雪をどけていた。
「半霊って手あるんだなあ~」
しばらくするとようやく動けるようになったのか
剣と人魂灯をもって泣きながら走り去っていった
反省も後悔もしていない
~数日後~
開いた窓から見たこともない蝶が店に入ってきた
見たことのない蝶だがとても綺麗で美しい
思わず触れてみた
次に目が覚めたとき、目の前には小船を漕ぐ死神がいた
反省はしてない 後悔はしている
作中に。がついていたりついていなかったり
とはいえ、雰囲気とかは嫌いじゃない。
とんでもない耐久力ですねぇ
まぁ、最後に幽々子の反魂蝶で死んでますが・・・
作品の雰囲気は良かったと思った。
「だkら」が見つからないんですがww
誤字・・・というよりも一字多い場所を発見したのでその報告を。
>チルノが大妖精と楽しいそうに遊んでいるのだろう。
ここの部分で「楽しいそう」になってますが「楽しそう」ですね。
以上、報告でした。(礼
最後ゆゆこにやられてるwww
誤字を再度発見しましたので、報告しますね。
>白玉楼の外には~普通の人間には入ることさせできない。
ここで入ること「させ」となっていますね。 正しくは「入ることさえ」ですね。
度々の誤字報告、失礼。
誤字脱字の多さ、作者の御都合主義が行き過ぎてキャラクターが死んでいる作品でした。
香霖堂は読んだことないから分からないけどこーりんは連絡するための物や術を持ってるのか?