くるくるくるくる。
輪廻は回る。
永劫に回る。
今日もまた、魂を運ぶ。
対岸に渡すために。
閻魔に裁かせる為に。
見知った奴も。
知らない奴も。
みんなみんな、対岸に運ぶ。
閻魔に裁かせるために。
生前、良くない行いをした事のある魂だっていた。
だが、渡し賃があったので、対岸に運んだ。
それが、決まりだから。
生前、良い行いをした事のある魂だっていた。
だが、渡し賃が足りなかったから、川に蹴り落とした。
・・・それが、決まりだから。
色々な色を持つ魂達。
似たような色の魂もある。
だけど、微妙に違う色。
全く同じ色の魂を見るのは、百年に一度程度。
ああ、また来たのかい。
最近、外の世界で大きな戦争が、また起きたらしい。
上司がそう言っていた。
近いうち、向こう側の魂が、こちらにも流れてくるだろう。
最近までは、流れてくる魂も少なかったが、また、大量に流れてくるのだろう。
そう言えば、最近、良く見知った魂を運んだ。
生前は、貧乏だったが、渡し賃は大量にあった。
どうせなら、生前にこれぐらいあれば良かったのにと、運んでいる最中、愚痴をこぼしていた。
まあ、来世にはいいことあるさ。
そういえばこの前、八雲 紫が彼岸に来た。
自分の式と、親友の亡霊嬢、そしてその従者を連れて。
何事か、と聞いたら、知り合いの魂を彼岸まで渡して欲しい、とのことだった。
この面々に、直々に連れてこられた魂。
少々、いや、大変興味深かったが、黙って渡し役をかってでた。
まあ、運ぶ途中で聞けばいい。
そう思っていたら、川幅の何と狭いこと。
対岸が見えるなんて、そうそうあることではない。
ますます興味を持ったが、今となっては後の祭りだ。
けど、亡霊嬢の従者が泣いていたのが印象に残った。
よほど慕われていたのだろう。
無理矢理話を聞くことも出来たかもしれないが、さすがにそこまで無粋なことはしない。
この魂に、来世も幸あらん事を。
その後、上司に酒の席に誘われた。
いつもよりも説教が短かったことを覚えている。
まあ、こんな日もあるだろう。
今日もまた、魂を運ぶ。
対岸に渡すために。
閻魔に裁かせる為に。
戦ったことのある奴も。
酒を酌み交わした事のある奴も。
みんなみんな、対岸に運ぶ。
閻魔に裁かせるために。
生前、嫌いだった魂だっていた。
だが、渡し賃があったので、対岸に運んだ。
それが、決まりだから。
生前、気に入っていた魂だっていた。
だが、渡し賃が足りなかったから、川に蹴り落とした。
・・・それが、決まりだから。
彼岸の花が咲く。
赤い花。
白い花。
黒い花。
紫の花。
たまたま渡し船に乗せていた魂が、チューリップみたいだな、と言っていた。
なるほど、確かにそうだ。
気が合いそうな奴だったが、対岸に運んだ。
・・・今頃、どうしてるだろうか。
そういえば、今日は死者が、現世に帰る日だ。
他の渡し達も総動員。
終わったときには皆、体中ガタガタだった。
これで終わり、と思っていたら、どうやら乗り遅れた魂がいるらしい。
他の渡し達との相談の末、向こう岸に行くついでに、乗せてやることにした。
皆、申し訳なさそうにしていたが、こちらも現世に行くためのついでに渡すのだ、と言ったら、皆苦笑していた。
さて、久しぶりの幻想郷だ。
もう会えない奴も、沢山いるのだろう。
その中には、自分が運んだ奴だっていたかもしれない。
そして、これから出会う奴の中には、将来自分が運ぶ奴がいるのかもしれない。
まあ、その時はその時だ。
その時までには、気の利いた台詞の一つでも考えておこう。
そう言えば、八雲も代替わりしたらしい。
だが、運んだ記憶がないと言うことは、どこかで適当にやっているのだろう。
まあ、八雲 紫らしいというか何というか。
さて、気に入っている酒を飲みながら、幻想郷を見て回ろうか。
願わくば、見知った奴がいて欲しいが、半分以上は叶わないだろう。
恐らく、殆どは新顔のはずだ。
まあ、その時は、弾幕勝負でもして、その後宴会にでも誘えばいい。
数時間後にはうち解けるさ。
なにせ、ここは幻想郷。
あるがままを受け入れる、最後の楽園なのだから。
そうしてまた月日は流れる。
ゆらゆら、ゆらゆら。
魂を運んで向こう岸に渡す。
現世の方から来たのは、見覚えのある色の魂。
お、久しぶりだねぇ・・・いやいや、こっちの話しさ。
渡し賃は・・・また、たくさんあるもんだ。
何?、どうせなら、生前にこれだけあれば良かったのにって?
・・・まあまあ、そういいなさんな。
来世には良いことあるさね。
・・・それで、あんたはどんな人生を送ってきたんだい?。
くるくるくるくる。
輪廻は回る。
永劫に回る。
残酷に回る。
ただ一つだけ、魂は話すことが出来ないらしいですよ。