Coolier - 新生・東方創想話

紅髪狂~Lunatic Gatekeeper 後編

2008/08/24 04:48:01
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※前回からの続きです。
 美鈴と紅魔館をこよなく愛する方、戻って頂けると幸いです。
 私も戻りたいです。 
 明治十七年の上海アリスでも聞きながらお読み下さい。彼女のテーマ曲です。







――紅魔館 最上階 廊下


月光りが明るく照らす長い廊下。

今の時間帯ならば、この奥に完全で瀟酒なメイド長は居る筈だ。
空間が拡張されていない所を見ると、現在は掃除の真っ最中だろう。その方がこちらとしても都合が良い。
図書館に比べれば短い距離となっているが、光が差し込む分、当然見通しも格段に良くなっている。先程以上に手早く済まさねばなるまい。
途中で幾度か通り過ぎる妖精メイド達に怪しまれない様、軽く挨拶を交えながら奥へと進んでいく。

メイド長はお嬢様の護衛も兼ねている。
とすれば、自ずと彼女の居るべき場所も決まってくる。
お嬢様に何かあれば直ぐに駆けつけられる場所 ――まぁ、時を操る彼女には距離等という概念は凡そ関係が無いのだが―
且つ、掃除という仕事をこなせる場所と言えば……
この廊下の最奥、バルコニーや時計台へと続く階段の手前辺りであろう。

恐らくこの辺りで掃除を……見つけた。
幸先良くメイド長の姿を視認した私は、素早く彼女に駆け寄り、そして



「あら、門番が何故そんな格好で………」






私は自分のスカートを捲る。パンツは既に焼き飛んだ。













『ザ・ワールド(美鈴の世界)!!!!』











彼女の視線が、ある一点へと注がれる。気持ちが良い。
しかしそこは瀟酒なメイド長。

「貴方も『まだ』なのね」と意味深な発言を残し、瞬時に目の前から消える。どうやら逆に『彼女の世界』に引きずり込まれた様だ。
だが私も策士、紅美鈴。 伊達に紅魔館で修羅場を潜ってきてはいない。

冷静に、しかし直ぐに、咲夜さんの布奥の宇宙へと馳せていた妄想を、戦闘用の思考へと切り替える。彼女は何処から出てくる?
今までの経験と彼女の性格、戦術、奇術師としての本能等から導きだされる出現位置を弾き出す。そこは……

真後ろだ。 うむ、捻りも無い。 奇をてらったりしないのかい?
ミスディレクションは精々年齢までにして欲しいものだ。


「まぁ、お互いその内ちゃんと生えて……!?」


突然の事に一瞬の判断が遅れる単細bメイド長。 
それはそうだ。 

『時を止めて、後ろに回り込んだ筈の人物が自分の後ろに居る』とは、彼女と同じ色の髪をしたフランス人でも理解できないだろう。

勿論、私に時を止める等という人智を肥えた能力を行使出来る筈も無い。
たった一つ。 たった一つのシンプルな答えである。
それは、その恐怖の片鱗が「超スピードというチャチなもの」に頼っているという事だ。

未だ動揺している彼女を羽交い締めし、耳たぶを一度甘噛みする。 


彼女のザクロが弾ける。 よし、オチた。


直ぐに両の手を胸元と下半身へと移動させる。
そして「好きですよ」「愛してます」「私は死にましぇん」等の、女性が一生に一度は言われたい愛の言葉を延々と耳元で囁いてあげた。
すると直ぐに顔を赤くし、気をやってしまう。いくら完全で瀟酒なメイド長と言え、年頃の乙女。
ましてやこの私が、文字通り鈴の様な声で囁くのだ。落ちない筈は無い。ソノ気があるのかもしれないが。勘違いされたらどうしよう。

私は紅美鈴。
華も恥じらう乙女である。


さて、例によって彼女のメイド服と下着を奪い、私の服と交換する。
もう少しで私の着替えが終わろうかという丁度良いタイミングで、遠くより飛来音が聞こえる。
ふむ、中々早い。流石はレミリアお嬢様と互角以上に渡り合うだけはある。咲夜さんに服を着せるのは後にしよう。
無防備な姿をしたメイド長を廊下の真ん中に優しく寝かせる。 
するとカーペットの毛が彼女の背をくすぐったのか、メイド長は悩ましげな顔を作り『んっ…』と、多分に艶を含んだ声を、その扇情的な唇から零した。


――ああ、申し訳ございませんお嬢様。美鈴は不貞な輩です。


その甘い吐息に誘われるが侭に、咲夜さんの白磁の様な首筋へと唇を落とす。
彼女の感触を十二分に堪能した私は、傍迷惑な来客を丁重に持て成すべく、気を取り直して空へと飛び上がる。


『あー、もう! お掃除がはかだられないじゃない』

噛んだ。まあいい。今の私は十六夜咲鈴。
ちょっと髪が紅くてロン毛のメイド長である。 
その上、盤石を期して後ろ髪をアップにしている為、咲夜さんと同じ程度の髪の長さに見える筈だ。
何処から見てもメイド長と瓜二つ。お嬢様でも見間違えるに違いない。
例え何があろうと、紅美鈴の威厳は保てるわ。


「あー……もうツッコむ気力も起きないわね」


どうやら巫女も連戦に次ぐ連戦でバテてきたようだ。やる気の無さが垣間見える。やるなら今だ。


幻術「ミスディレクション」!!!!


といっても何の事はない、さっきと同じく超スピードで左右を行き来してクナイ弾とナイフ弾をバラまいているだけだ。
ナイフは先程メイド長から手に入れた物である。流石メイド長、中々良い物を使っている。一本取っておこう。

とりあえずはこのスペルを放ってはみたものの、巫女はこのスペルの弱点を知っている。
「廊下の端に陣取り、後は横に少しずつ動けば当たらない」のだ。

しかし、そうは問屋が卸さない。幻想郷風に言えば、そうは香霖堂が卸さない。
予め「華想夢葛」も混ぜておいた。だから言ったでしょう?「ミスディレクション」だって。
これは奇術ではない、幻術だ。そこに気付かなかった巫女の読み負けである。

あっはっは、被弾した被弾した。良い気味よ。
余裕を見せる笑みを浮かべながら巫女の姿を確認するが、どうやら彼女もまだまだ余裕がある様だ。
気付いたら後6回は被弾出来る程の気力で満ち満ちている。
これはまずい。

結局、慣れないスペルに戸惑ったのか、2度のミスを誘い、この場を撤退する事が出来た。 YES!イナバクリニック!
だが、撤退時に律儀にエクステンドを落としてしまったのが不覚だった。 後5回も彼女の相手をしなければいけないと思うと、気が滅入る。
そういえば、『エクステンド』って何だろう? 私も給料代わりにと貰っているが、今一使い道が分からない。
今度『ボム』の事と一緒に咲夜さんに聞いておこう。

そんなどうでも良い事を考えつつ、急いであの純情乙女をひん剥いた地点まで戻ると、ほぼ同一の速度で追いかけてきたのだろう。
巫女がすぐ後ろに浮いていた。何故か顔が赤い。風邪か?
手で顔を覆い、しかししっかりとこちらを注視しながら、巫女が質問を投げかけてくる。

「あー…その、言いにくいんだけど、そのー……あんたの足下で横になってるのって……」


そこから先は言わせない。
おのれ巫女! よくも咲夜さんをお嫁に行けない体に!! 許すまじ!
そのようなストーリーを設定、脳内に上書きし、鬼畜外道な行いをした巫女を睨みつける。
いや、その様な輩はもう巫女ではない。妖怪だ。「妖怪花散らし」だ。

いくぞ妖怪花散らし!


幻在「クロックコープス」!!!!
まぁ、これもただの超スピードナイフ投げだ。


「まぁいいけどね。さっさとレミリアに会わせてくれないかしら?」


……やはり巫女の実力は本物だ。

幻在「クロックコープス」
幻象「ルナクロック」
幻符「華想夢葛」

結局全て突破されてしまった。 とりあえず、華想夢葛で2回被弾してくれたのは嬉しい誤算だ。
「操りドール」だと思った巫女が突っ込んで来た所を1回、戸惑ってしまった所為か咲夜さんの姿を見た所為か、気を取られて更に一回。
お陰で符の名前から間違えて使ってしまったのをうまく誤摩化す事が出来た。結果オーライである。


さて、次は最後の難関。 お嬢様だ。
相も変わらず1枚の布も身に着けていないメイド長を辺りの妖精メイド達に任せ、単身時計台へと向かった。






――後ろから黄色い悲鳴が聞こえる……?





     ~NEXT STAGE~





深夜の時計台へと、窓ガラスをぶち破り登場する。
やはりいい。色鮮やかにド派手な門番はこうでなければ。

「あら、やっと来たのね。 待ちくたびれたわ」

私が一人笑顔を浮かべていると、後ろから声がかかる。
鼻にかかる様な甘い声の中にも、他を圧倒する様な威圧感が存在する。
月を背負い、物静かに佇む彼女こそ、私が仕えし主。


――レミリア・スカーレットだ


「なんだか随分騒いでいたみたいだけど、何やってたのかしら?」

今しがた貴方の友人と従者をぶちのめしてひん剥いてきましたとは言えず、適当にお茶を濁すことにする。
そう、ここでこそ「気を使う程度の能力」の真骨頂。
上手くお嬢様の機嫌を損ねず、その服を奪うのだ。できれば他の物も奪いたい物だが。
しかし、やはりお嬢様だ。こうなる運命を悟っていたのだろう。私を睨みつけ、両手を前に出す。


「少し、自由にさせ過ぎたみたいね。これも主の責任だわ……」


どうやらあれが癖みたいな物なのだろう。この状況では、とても物乞いにも見える姿だとは言い辛い。


「こんなに月も……まぁ、紅くは無いわね。 でも……




――本気で潰すわよ」



ああ、それにしても、いつ見てもお美しいです、お嬢様。 私の月も紅くなっちゃいそう。


「楽しい夜になりそうね」
『愉しい夜になりそうですね』


かくして、レミリアお嬢様との一対一での勝負が実現した。
私が今まで彼女達を一人ずつ確実に潰していった理由。それは「お嬢様と戦う時に、誰にも邪魔をされない為」である。
今から行う作戦には、それが必要だった。
だが、その前に……
その運命を操る程度の能力、防がせて頂きます!

「……?」

レミリアは こんらんしている!

まさかお嬢様も私が「明治十七年の上海アリスを口ずさみながらサンバのリズムに合わせて服を脱ぎだす」とは思わないだろう。
運命とはこれから起こり得る事象であるとパチュリー様が以前仰っていた。
ならば。「まず起こり得ない行動」を取る事で、お嬢様の運命の環から解き放たれる事が出来る筈だ。

私ったら最強ね!

お嬢様の思考が停止している事を確認した私は、テンポが3拍子から4拍子へと移り変わる辺りで、自らのショーツへと手を掛ける。


――全てを……解き放て!


原初の姿へと回帰した私は、そのまま徐々にお嬢様へと近づいていく。


……今だ! 死ねぃ!




「貴女の思考中枢も単純で化学的なのかしら? いや、それ以下ね。
もう良いわ…… 今度は本気で『殺す』わよ」



苛立ち混じりの声が聞こえてきたのは、既に私の後ろに回られたお嬢様が、今正にスカーレットシュートをスペル宣言した瞬間だった。
っ!流石です、お嬢様。ですが……


どうやら運命の女神は私に微笑んでくれたようです。


お嬢様の方へと振り向き、そしてこの時の為に隠し持っていたニンニクにかぶりつく。
――え? 今まで何処に締まっていたか? ……セクハラです。 一欠片なら入るんです。

そんな事はどうでもいい。スカーレットシュートの問題点。それは、第一射までのタイムラグが長い事だ。
お嬢様の手より、紅色の弾が放たれる寸前、私はお嬢様を抱きしめ、そして


ズキュウウウウウウウウン!!!!!


熱い契りを交わした。 
お嬢様は悶え苦しみ、私の腕の中から逃げ出そうともがき始める。
吸血鬼の力を舐めてはいけない。腕には込められるだけの力を入れ、入れた舌は噛まれない様に細心の注意を払ってお嬢様の犬歯を避けていく。
噛まれれば即ゲームオーバーだ。私がコンティニューできないのさ!
一瞬、目の前で頬を紅く染める、主に似た少女の姿が頭を過ったが、直ぐにその考えを振り捨てる。
目の前で女を抱いている時に、他の女の事を考えるのは失礼だ。

しかし、そこでフと違和感に気付く。
なんだか肉感が少なくなっていって物足りないような…じゃない!
しまった、肝心な事を忘れていた。お嬢様はコウモリへと変化できるのではないか。

このままでは振り出しに戻ってしまう。もしそうなれば、今度こそ私にはどうすることもできない。
どうすればいい? どうすれば……









そうだ! こうしよう!







私はお嬢様が変化したコウモリを食べた。 なかなか美味い。






片っ端から捕まえ、胃の中へと納めていく。
最後の一匹のコウモリを食べてしまうと、お嬢様が白玉楼へと旅立ってしまう為、残しておく事にする。
私は門番、紅美鈴。
お嬢様への忠誠を片時も忘れる事は無い。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"なにするのよ!?」


ふむ、どうやらお腹の中のニンニクが効いたらしい。
食べた後に、厳かに、しかし敬意を持って胃から彼岸帰航(リバーサイド ゲェー)させたコウモリが、お嬢様の姿を形作っていく。
お陰様で胃液とニンニクのスメルで大変弱っておいでだ。
お可哀想に、お嬢様……今、楽にして差し上げます。

もはや一枚のスペルも使えない程に弱っているお嬢様を、せめて最後に楽にしてあげるべく






私はお嬢様の口に鰯の頭を突っ込んだ。








――嗚呼、我が主レミリア・スカーレットよ永久の栄光あれ。








さて、目の前に転がる哀れな吸血鬼の衣装を剥ぐとしよう。
しかしここで今までには発生しなかった問題が浮上する。
髪の毛がどうあっても誤摩化す事が出来ないのである。

小悪魔は髪質が似ていた為どうにかなった。
パチュリー様の髪型も二つ纏めにすれば、まぁ見えない事も無かった。
咲夜さんの髪の毛は、ちょっと上げればほぼ瓜二つだった筈だ。

だけど、お嬢様の髪は…透き通る様な空色に、癖のあるセミロング。
ふぅむ、さてどうするか……



……☆


そうだ、こうしよう。
お嬢様の頭のテッペンを剥ぎ取ってみた。私の理論が正しければ……


……よし、見事にコウモリ型に剥ぎ取る事が出来た。
やはり体が離散する時はコウモリになる様だ。
お陰で私の髪を1mmも切る事無く、カツラを用意する事が出来た。
髪は乙女の命なのだ。簡単に切るなどという選択肢を選べる筈も無い。
勿論、我が親愛なるレミリアお嬢様への配慮も忘れない。
髪の毛がコウモリ型に禿げているなどという事が知れれば、それだけで紅魔館の威厳は地に落ちてしまうだろう。
そのような事が無い様に、一本残らず毟り取って差し上げた。



ふむ、さしずめ「永遠に生えない幼き月」と言った所か。上と下、ダブルミーニングである。
今日は十五夜。二つのフルムーンが私の体を優しく照らし出す。
もう一度言おう。髪は乙女の命なのだ。


さて、余興はこの位にし、この乳臭い服に袖を通すとしよう。
まぁあちこちはみ出てはいるが、脇だけを強調する様な破廉恥な女性よりは節度を保てているだろう。
後は破廉恥さんの到達を待つだけ…あれ? 何かを忘れている様な……

あー、そう言えば紅霧異変の折には、途中で咲夜さんが出張ってましたね。
まぁいいわ。どうせ封魔陣を放つ回数が増えるだけですもの。

今は亡き十六夜ボム夜さんに思いを馳せていると、巫女がこちらへと向かってくるのが見える。
私は頭の中に叩き込んだ台詞を必死に暗唱し、ラストを飾る準備を整える。
よし、完璧だ。 今夜は忘れられない夜になるだろう。




「あー…やっぱりこっちの方もそうなんでしょうねぇ…」

『やっぱり、人間って使えないわね』

「さっきのめいどはにんげんだったのかー」

『あなた、殺人犯ね』

「永い夜になりそうね」



よし、どうやらバレていない様だ。会話も何度か紅魔館に来る内に頭に入ってしまったのだろう。
彼女の記憶力には脱帽だ。

ここが最後の踏ん張り所、
後4回、何としても当てる!



先ずは小手調べに、と通常弾をバラまく。


「で、また彩虹の風鈴ね……はいはい」


只の彩虹の風鈴ではない、今の私はいつもよりHardだ!


さて、そうは言ったものの、もうこれ以上通常攻撃に割けるだけの気力は残っていない。
後は純粋なスペルでの勝負である。負ければ後は無い。
使用するスペルカードを慎重に、しかし、確実に選ばなければならない。
巫女の放つ弾幕を回避しながらの思考を終え、使用するスペルカードを決定する。
「スターオブダビデ」に取って代わるスペル…「セラギネラ9」に「虹色太極拳」を混ぜ込んでみた。混ぜ込み炒飯は私の得意料理の一つだ。
よし、即興でスペルカードに名を付ける。



天罰「スターオブドラゴン」


「あら? 何このスペルピチュッ!?」j


よし、幾ら巫女でもこのスペルを避ける事は叶わなかった様だ。
次は「虹色の冥界」だ。要は極彩颱風である。


「まぁこれなら…って、弾幕いつもより厚ぴちゅるん!?」


よし、もう一度被弾させる事に成功する。当然だ。たまにはルゥーナティックな物も混ぜ込んである。
油断を誘い弾を当てるのは弾幕ごっこの定石だ。
ましてやこの切羽詰まった状況、恥も外聞も有った物では無い。
勝てばよかろうなのだ。勝てば。
間髪入れずに次のスペルを発動する。


呪詛「モウ・タクトウの呪い」


ただの彩虹の風鈴-Lunatic-だ。


「あら、これなら楽ね」

基本はあまり変わらない弾幕である。簡単に読まれてしまった様だ。
ここまでは計算通りだ。次のスペルを発動する。

これは先程、お嬢様から直々に食らいかけたスペル。
そう、紅符「スカーレットシュート」だ。といっても、彩光乱舞の弾数、軌道を難しくしただけだが。
とりあえず虹符「レインボゥシュート」とでも命名しておこう。
忘れてはいけない。これは「命名決闘」だ。 宣言は正しく行われなければならない。

さて、肝心の巫女だが、連続での戦闘に多少の疲れがあったのだろう。後数cm避けていれば、という所で被弾する巫女。 うむ、玉屋。
これで残すは後一度。正真正銘これが最後の戦いとなる。
勿論、それに相応しいスペルカードも用意している。

お嬢様が持つスペルカードの中でも最上級の威力を持つ、文字通りの切り札である「紅色の幻想郷」
それを再現する為、私の持つスペル「芳華絢爛」「彩虹の風鈴」そして「彩光乱舞」を組み合わせる。
これが私のラストスペル、受け取りなさい、霊夢!





「虹色の幻想郷」




スペルカード宣言を終えるや否や、辺り一面が七色の弾で埋め尽くされる。
若干赤色の弾が多いのは、亡き王女の為のレクイエムだとでも思って頂けると、お嬢様も草葉の陰でお喜びになるだろう。
この色鮮やかに虹色な弾幕は、私の残った気力を全て掻き集めて作り上げたスペルである。当然こちらの消耗も激しい。
これが巫女に当たれば勝ち、避けきられれば負けだ。

彼女もこれが最後だと悟ったのだろう。懐からスペルカードを取り出し、宣言する。


夢符「封魔陣」


刹那、私の放った弾幕が全て掻き消える。
それどころか、巫女の放つ弾に乗り、無数の札がこちらへと飛んでくる。
あれに当たれば、この勝負に決着が着いてしまうだろう。
その後の展開は言うまでも無い。

私が破れ、巫女がお嬢様にチクりを入れ、腸の煮えくり返ったお嬢様によって冥界へと旅立たった私が、
白玉楼の広大な庭を半人半霊と共に仲睦まじくも世間話を交えながら掃除をし、修練の時間になれば彼女と剣と拳を交わして、
その時ウッカリ彼女の発展途上国な胸辺りを触っちゃったりなんかしちゃったりしてお互い赤面しながらも意識をしてしまい微妙な空気が漂う中、幽冥楼閣の亡霊少女におやつの時間よーと呼ばれ、
3人でお茶でも飲みながら談笑し、夜中になれば剣士から少女へと変貌を遂げた彼女が頬を朱に染めながら「責任……取って、下さい……ね?」と目尻に涙を浮かべながら肌を寄せてくる。

こんな毎日が続く事だろう。喜んでお受けします!



しかし痛いのは嫌だなぁ……
そう思い、何処かに隠れられないかと辺りを見渡す。うむ、何も無い。
ならば。 こういう時は逆転の発想である。



『隠れる場所が無ければ新しく作れば良いじゃない』(1987~ ウォーリー 英)



弾幕が文字通り壁の様に迫り来る中、私はお嬢様から賜ったレミ帽の中に体を隠す事にした。
体中の気を操り、折り畳む事によって、レミ帽の中へと入り込む。
そういえば昔、気功によって3歳児の服を来る事に成功した成人男性が居ると聞く。ならばこの程度の事、私に出来ない筈が無い。
端から見れば二本足を生やした帽子がパタパタと浮いている様に見えるだろう。私も一度外から見てみたいものだ。
今度このまま烏天狗の所へお邪魔しようかしら?

まぁ結果的に封魔陣の脅威から去る事が出来た私は、安堵の溜め息と共に、先程まで感じる事が無かった感覚に意識を向ける事にした。
帽子の中ではお嬢様の香りと私の汗の匂いが混ざり合い、何とも言えない官能的な香りを生成している。
ここがヘヴンか。



『ピチューン!!!!』



私がお嬢様と一つになる感覚を味わっていると、フと、その様な何とも気の抜ける擬音が聞こえてくる。
そういえば、興奮して弾をバラまき過ぎたかも知れない。
静寂に包まれる中、恐る恐る顔を出す。キスメの座は頂いた。




――巫女が、居ない。




シィィィィィット!!!!
なんて事だ! これでは私と妖夢の子供が生まれてこないではないか!
ごめんなさい美夢(うつみ)……パパ、貴方の顔を見る事が出来なくなっちゃった……












――ま、それはそれだ。

私の名誉と紅魔館の威厳を守る事には成功したのだし、結果良ければ全て良し、だ。
そのような感慨に浸っていると、東の方より朝日が優しく差し込んでくる。恐らく大義を成し遂げた私の事を祝福してくれているのだろう。


今は全てを忘れ、暫しの間その余韻に浸る事にした――































お嬢様は灰となり空へと還られた。




















――その後の紅魔館



メイド達の話を聞いたのだが、最近館の中の様子がおかしい様だ。

どうやら小悪魔とパチュリー様は顔を付き合わす度に赤面しているらしい。
何か進展があったのだろうか? 全く小悪魔も手が早いものだ。

咲夜さんは私の顔を見ると火が付いた様に慌てだす。
館のメイド達にも、なにやら私達の間柄が噂されている様だ。
「S×MかM×Sか」で二つの勢力が台頭していると言う話も耳に入る。
良く分からない世界だ……まぁ私には関係が無い事だし、ここは静観するのが正解だろう。
なんだか最近咲夜さんにもお菓子を貰う機会が増えたし、たまに猫撫で声で体を擦り寄せてくる事もある。誘うなら今だろうなぁ……

お嬢様は今も私の心の中に居る。



まぁ私の仕事は門を守る事だし、館の中がどうなろうと、そこは咲夜メイド長と、主であるお嬢様の管轄である。
お二方には末永く頑張って貰わねばなるまい。




……そう思っていると、遠くから巫女が飛んできた。
そう言えば、この騒動ですっかり失念していた事が有る。
『巫女は自分が満足するまでやってくる』んだった。

やれやれ、又か……
そう思い、私は重い腰を上げて、巫女を追い返す為に空へと飛び上がった。





























――巫女の隣には、見知った吸血鬼が居た
ごめんなさい。すいません。美鈴愛してる。

次回を上げる予定を書いていなかった事を、先にお詫び申し上げます。
この作品をお待ち下さった方、誠に申し訳ございませんでした。

書いている途中で115kBを超えていた上、人によっては回りくどい表現の多用でダレてしまうと思い、止むなく2部構成へと変更致しました。
不快、面倒に感じてしまった方が居られましたら、こちらに付きましても申し訳ございません。

文章の方ですが、今回は美鈴の一人称視点で進めるに当たり、
「だが」「しかし」「さて」等の語句を出来るだけ少なくする様に心掛けましたが、如何でしたでしょうか?
それに付け加え、行間の空け方、漢字、句読点の多様等、お見苦しい点がございましたら、感想、批評を頂けましたら嬉しいです。
又、誤字脱字、表現の間違い等が有りましたら、ご報告下さるとありがたいです。修正致します。
なんだか謝ってばかりですいません。あ、又。すい、いえ、ありがとうございます。

それと補足でも。

鰯は左と右の間に挟まれておりました。
何処かは申しません。
にんにくの隠し場所も申し上げられません。
もし白状してしまえば、アップする場所を変えなくてはなりません。

後、美鈴ですが……死神さんの所へ行けば、今何処に居るのかが分かるかも知れません。

次に書こうと思っている物は「橙が人々の尻の穴を巡る物語」か「パチュ×輝シットリ図書館物」の予定です。
友人にはシリアス分を要求されたので、後者になるでしょう。
どちらもギリギリな作品ですが、もし投稿した曉には、お付き合い頂けると幸いです。
それでは締めは彼女にお願い致します。どうぞ。



「私の出番は?」



      ~NEXT STAGE~

『紅髪狂~Lunatic Gatekeeper EXTRA』……続きません

ではここまでのお付き合い、誠にありがとうございました m(__)m

8/24 12:12 最後の一行を修正しました。
毛玉おにぎり
[email protected]
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コメント



0.640簡易評価
4.70からなくらな削除
なんぞこれ(笑)
内容に対して笑えたのと、
「このスペル無理くせー!」
という二つの意味で笑えました。
5.80名前が無い程度の能力削除
>隣には、見知った吸血鬼が居た
これは美鈴の隣?それとも霊夢の隣か?
多分後者だよね・・・?
7.無評価毛玉おにぎり削除
>>からなくらなさん
私も避けられる気がしません。
使われたら多分2ボムです。

>>名前が無い程度の能力さん
すいません、霊夢の隣です。
修正しておきます。
8.50名前が無い程度の能力削除
竜頭蛇尾って感じ
あと、毎回の巫女との戦闘が読むの疲れる(面白くない
11.無評価毛玉おにぎり削除
>>8.名前が無い程度の能力さん

>毎回の巫女との戦闘が読むの疲れる(面白くない
霊夢との戦闘シーンはいっそ端折って、あくまで紅魔館面子との騒動と切り離して展開するか、
それともしっかりと描写を入れて絡ませるかで悩み、今の形にしてみました。
そうですね……確かに冗長で、表現がくどく感じるかもしれません。
いっそ割り切った方が良かったかも知れないです。

>竜頭蛇尾って感じ
オチに近づくに連れて失速していく悪い癖があると、以前も友人に言われました
こちらも、次回作を書く上で、もう少し推敲してみようと思います。御感想、ありがとうございました m(__)m
14.100名前が無い程度の能力削除
紅美鈴嬢にものっそい笑わせて頂きました。
美夢(うつみ)さんルートも見たかったです……。
あと巫女様の戦闘はもちょっとはしょってもだいじょぶだと思いますです。
兎にも角にも(少なくとも自分にとって)素晴らしい作品をありがとうございました。
さぁ次はパチュ輝をぷりーずぷりーず。
だがしかし、その時小悪魔さんはどうなるんだ?
17.100名前が無い程度の能力削除
なんて酷い作品だ……あまりの美鈴の外道っぷりに憤りを感じます。


……え…EXTRAを楽しみになんてしてないんだからね!!