多少キャラが壊れております。
「図られた」
白玉楼にて幽々子と二人きりで晩酌を楽しんでいた紫が突発的に飛び上がった。
「どうしたの、紫」
「晩酌してるわ」
藍のことである。
「私の目が誤魔化せるとでも思ったのかしら」
「何の事」
「藍が私の目を盗んで飲んでるっぽいのよ。酒癖が悪いから断酒させたのに」
幽々子がさもおかしそうに笑うのを見て、紫は彼女が藍の酒乱ぶりを知らないことにいささか歯がゆさを覚える。
「酒癖くらい、いいじゃない」
「駄目、絶対。あの狐だけは駄目」
「あ、どこへ行くの。今日は晩酌付き合うって言ったじゃない」
幽々子が止めるのも聞かず、紫は隙間を開き飛び込んだ。
「ごめんなさい、様子だけ見たらすぐ戻るわ」
紫は藍にほぼ全幅の信頼を置いていた。
しかし、酒が絡むと話が違う。彼女は酒乱である。元はと言えば酔っぱらってふざけた紫が幼き藍へと勧めた酒が原因ではあったのだが。
やはり、ここであったか。
博麗神社の境内、例の狐は盛大に月見酒を行っていた。
隙間の中から覗いた限りではあるが、周りに霊夢、魔理沙、レミリア、ルーミアの姿が見えた。
普段見えぬ顔のルーミアであったが、どうやら通りがかりを酔っぱらい連中に捕まえられたと思われる。
さて、この狐どうしてくれたものか。隙間の中で千鳥足を踏みながら紫が考慮していると、藍の爆笑が聞こえてきた。
「や、それが。あの隙間ときたら酷いものだ。自分は酒かっくらってっ癖に私には飲ませようとしない。しやがらない」
紫は耳を疑った。
「いやはや、それに引き替え皆様は神様でございます。神様仏様吸血鬼様」
うわははは。
「そうなのか、そうなのかあ」
酔っぱらい特有のハイテンションな笑い声が聞こえてくる。
「まあ、飲めよ飲め飲め飲め飲め」
立ち上がろうとして、すっ転んだレミリアに代わって霊夢が藍の口にとっくりを突っ込んだ。
「ん、これは」
途端、毒を飲んだかのように喉を押さえ苦しがる藍。
「う、う、う」
「どうした」
不安がる一同の顔を見渡して、藍はここぞとばかりに叫んだ。
「旨いっ」
再び爆笑。
ばたばたと藍の太い尻尾が揺れる。
「人が悪いぜ、全く」
「そうなのか、そうなのかあ」
ぶははは。
以前の失敗を全く顧みないその厚顔無恥さに紫は愕然とした。
「それでは、ここら辺で。一発芸大会っ」
「いよっ、いいぞ。巫女さん」
「それではまず一番、博麗霊夢」
拍手の音が響く。
「咲夜の顔真似」
「うわあ、メイド長だ」
「そうなのか、そうなのかあ」
魔理沙が驚きの余り、レミリアの横顔に酒を噴き出したが、快く許された。
「レミリアお嬢様、お顔が汚れていますよ」
今度はレミリアが霊夢の顔に日本酒を噴き出した。
「に、に、似てる」
何ということだ。この角度からでは、顔真似が見られない。そんな馬鹿な、見たい。どうして見られない。私だって見たい。
紫が隙間の中で地団駄踏んでいると後ろから肩を叩かれた。
振り返ると一升瓶を持った幽々子が笑っていた。
「一緒に飛び込んで付いて来ちゃった」
「いつの間にやら。気が利くわね」
「中々盛り上がってるようじゃない、宴会」
「藍が何かやらかさないかと心配なのよ」
「まあまあ、とりあえず宴会芸でも見ながら一杯」
「あら、そう」
紫は幽々子から、受け取った小さなコップでコップ酒を煽り始めた。
「それにしても、藍の奴。私を差し置いて月見酒だなんて」
「だって、あなたに見つかるとまずいもの」
「それもそうだ」
隙間の中に爆笑がこだました。
結局、みんな酔っぱらっているのだ。
「二番、レミリア。れみりゃやります」
「お、何だ何だ」
「いいぞ、耳年増」
ある種の語に反応して、紫の爪がコップに食い込む。
「あれえ、みんなこんな所で何してるの。れみりゃはねえ」
レミリアが途端に首をかしげて指をしゃぶりだした。
「もっとやれ、もっとやれ」
終いにはメイド長の声真似をする霊夢との掛け合い漫才が始まった。
「れみりゃ、おっぱい飲みたい」
「パチュリー様をお呼びします」
「そ、そ、そ、そうなのかあ」
帽子の下で藍の耳がひょこひょこ動くのが見え、ルーミアが爆笑の余り呼吸困難を起こしぶっ倒れた。
「3番、八雲藍。八雲紫の真似」
幽々子はけたけた笑ったが、紫のこめかみには青筋が浮き出た。
「いいぞ、狐。GOGOGO」の声と共に油揚げが宙を舞い、藍の頭の上に乗る。
うわははは。
藍は大きく咳払って、いかめしい顔をすると自前の傘を肩に担いだ。わざわざ、これをやるためだけに傘を持ってきたのである。
「あーん、幽々子ったら。つれないんだから」
魔理沙と霊夢とレミリアは白目を剥いて膝を叩いた。
いよいよ、ここからが藍の本領発揮である。
「一緒に寝ましょうよお」
ふと後ろを見ると幽々子が扇子に顔を埋めて笑い声を殺していた。
「はあ、はあ。あなたったら私の気持ちを分かってくれないのね。私が抱き枕にあなたの名前を付けて夜…」
以下延々と卑猥な物真似が続き、霊夢、魔理沙と頭に酸素が回らなくなった面々が失神した。
「そうなのか、そうなのか、そうなのか、そうなのか、そうなのかあ」
「はあ、はあ。ご静聴ありがとうございました。以上八雲紫のマネです」
「アンコール、アンコール」
腹立たしいのは、狐が僕にあるまじき醜態を曝したことに限らない。物真似があまりにも素晴らしいのだ。自分自身でさえ感心してしまった。
「幽々子」
「な、何?」
平静を装おうとしながらも腹を抱えて涙している幽々子にまた失望した。アホな狐のせいでプラトニックな信頼が失われたのである。
「あと、あの人は奇妙な癖がありましてねえ」
あ、まさか。あれを言うつもりか。
「寝る前に両かかとを頭の後ろに持って行きまして、さらに両手は法衣の中に突っ込み。うーん。ここからは実演いたします」
藍が宙返りと共に奇声を上げて、紫の癖を再現し始めた。
やられた。どうしてあれがばれたものか。
紫は静かに新たな隙間を開き肩を震わせている幽々子を白玉楼に帰した。
この際、幽々子が「もっと見る」と駄々をこねたのは言うまでもない。
あまりに奇妙な藍の振る舞いに一同は愕然としていた。
突如霊夢が藍の尻尾を掴み、それに乗じてルーミアも別の尻尾に噛み付く。
「本当に紫がそんなことするか? 藍。またまたほら吹いたな」
「しますよ、今までの全部本当。何回でもします。見ましたから間違いない。本当にする。痛い、痛い」
野郎、殺す。紫の手の中のコップが粉々に砕けた。
「それじゃあ、最後にイリュージョンやります」
藍が尻尾からルーミアの顔を外し、代わりとばかりに近くの油揚げ(宙返りした際飛んだ)を彼女の口へと突っ込み再び立ち上がる。
「待ってましたあ」
「よっ、大取」
「頼んだぜ、天狐」
藍が法衣に手をかけた。
「おっし。3、2、1、きえいやあ」
「うおお」
法衣を吹き飛ばして半裸になった藍は怒号と共に飛び上がり、上空にて三回転し、そして消えた。
「おおっ、本当に消えたぜ」
「お見事お」
藍はそれきり酒宴に姿を見せなかったが、これを気に留めた者は酔っぱらいの内一人もいなかった。
彼女らは相当量の酒を飲んでいたため、藍が消えてから間もなく全員酔いつぶれた。
「そうなのか、そうなのか」
急に閉所の中に転げ込んだ藍の頭を後ろから紫の手が掴んだ。
「イリュージョンの途中でさあ。誰だよ、おい。んあ」
振り返った藍の帽子がぱさりと音を立てて落ちる。
「あ」
「酔い、覚めた?」
藍は頭をちぎらんばかりに首肯した。
「そう。それはいけないわね。今は宴会の最中なのよ」
「ご、おお」
恐怖の余りか謝罪の言葉が出てこない。
「私の宴会芸、幽々子に見てもらうつもりだったんだけど帰っちゃった」
「ごお」
紫が一升瓶に残った酒をゆっくりと飲み干す。
「四番、紫。弾幕結界」
「図られた」
白玉楼にて幽々子と二人きりで晩酌を楽しんでいた紫が突発的に飛び上がった。
「どうしたの、紫」
「晩酌してるわ」
藍のことである。
「私の目が誤魔化せるとでも思ったのかしら」
「何の事」
「藍が私の目を盗んで飲んでるっぽいのよ。酒癖が悪いから断酒させたのに」
幽々子がさもおかしそうに笑うのを見て、紫は彼女が藍の酒乱ぶりを知らないことにいささか歯がゆさを覚える。
「酒癖くらい、いいじゃない」
「駄目、絶対。あの狐だけは駄目」
「あ、どこへ行くの。今日は晩酌付き合うって言ったじゃない」
幽々子が止めるのも聞かず、紫は隙間を開き飛び込んだ。
「ごめんなさい、様子だけ見たらすぐ戻るわ」
紫は藍にほぼ全幅の信頼を置いていた。
しかし、酒が絡むと話が違う。彼女は酒乱である。元はと言えば酔っぱらってふざけた紫が幼き藍へと勧めた酒が原因ではあったのだが。
やはり、ここであったか。
博麗神社の境内、例の狐は盛大に月見酒を行っていた。
隙間の中から覗いた限りではあるが、周りに霊夢、魔理沙、レミリア、ルーミアの姿が見えた。
普段見えぬ顔のルーミアであったが、どうやら通りがかりを酔っぱらい連中に捕まえられたと思われる。
さて、この狐どうしてくれたものか。隙間の中で千鳥足を踏みながら紫が考慮していると、藍の爆笑が聞こえてきた。
「や、それが。あの隙間ときたら酷いものだ。自分は酒かっくらってっ癖に私には飲ませようとしない。しやがらない」
紫は耳を疑った。
「いやはや、それに引き替え皆様は神様でございます。神様仏様吸血鬼様」
うわははは。
「そうなのか、そうなのかあ」
酔っぱらい特有のハイテンションな笑い声が聞こえてくる。
「まあ、飲めよ飲め飲め飲め飲め」
立ち上がろうとして、すっ転んだレミリアに代わって霊夢が藍の口にとっくりを突っ込んだ。
「ん、これは」
途端、毒を飲んだかのように喉を押さえ苦しがる藍。
「う、う、う」
「どうした」
不安がる一同の顔を見渡して、藍はここぞとばかりに叫んだ。
「旨いっ」
再び爆笑。
ばたばたと藍の太い尻尾が揺れる。
「人が悪いぜ、全く」
「そうなのか、そうなのかあ」
ぶははは。
以前の失敗を全く顧みないその厚顔無恥さに紫は愕然とした。
「それでは、ここら辺で。一発芸大会っ」
「いよっ、いいぞ。巫女さん」
「それではまず一番、博麗霊夢」
拍手の音が響く。
「咲夜の顔真似」
「うわあ、メイド長だ」
「そうなのか、そうなのかあ」
魔理沙が驚きの余り、レミリアの横顔に酒を噴き出したが、快く許された。
「レミリアお嬢様、お顔が汚れていますよ」
今度はレミリアが霊夢の顔に日本酒を噴き出した。
「に、に、似てる」
何ということだ。この角度からでは、顔真似が見られない。そんな馬鹿な、見たい。どうして見られない。私だって見たい。
紫が隙間の中で地団駄踏んでいると後ろから肩を叩かれた。
振り返ると一升瓶を持った幽々子が笑っていた。
「一緒に飛び込んで付いて来ちゃった」
「いつの間にやら。気が利くわね」
「中々盛り上がってるようじゃない、宴会」
「藍が何かやらかさないかと心配なのよ」
「まあまあ、とりあえず宴会芸でも見ながら一杯」
「あら、そう」
紫は幽々子から、受け取った小さなコップでコップ酒を煽り始めた。
「それにしても、藍の奴。私を差し置いて月見酒だなんて」
「だって、あなたに見つかるとまずいもの」
「それもそうだ」
隙間の中に爆笑がこだました。
結局、みんな酔っぱらっているのだ。
「二番、レミリア。れみりゃやります」
「お、何だ何だ」
「いいぞ、耳年増」
ある種の語に反応して、紫の爪がコップに食い込む。
「あれえ、みんなこんな所で何してるの。れみりゃはねえ」
レミリアが途端に首をかしげて指をしゃぶりだした。
「もっとやれ、もっとやれ」
終いにはメイド長の声真似をする霊夢との掛け合い漫才が始まった。
「れみりゃ、おっぱい飲みたい」
「パチュリー様をお呼びします」
「そ、そ、そ、そうなのかあ」
帽子の下で藍の耳がひょこひょこ動くのが見え、ルーミアが爆笑の余り呼吸困難を起こしぶっ倒れた。
「3番、八雲藍。八雲紫の真似」
幽々子はけたけた笑ったが、紫のこめかみには青筋が浮き出た。
「いいぞ、狐。GOGOGO」の声と共に油揚げが宙を舞い、藍の頭の上に乗る。
うわははは。
藍は大きく咳払って、いかめしい顔をすると自前の傘を肩に担いだ。わざわざ、これをやるためだけに傘を持ってきたのである。
「あーん、幽々子ったら。つれないんだから」
魔理沙と霊夢とレミリアは白目を剥いて膝を叩いた。
いよいよ、ここからが藍の本領発揮である。
「一緒に寝ましょうよお」
ふと後ろを見ると幽々子が扇子に顔を埋めて笑い声を殺していた。
「はあ、はあ。あなたったら私の気持ちを分かってくれないのね。私が抱き枕にあなたの名前を付けて夜…」
以下延々と卑猥な物真似が続き、霊夢、魔理沙と頭に酸素が回らなくなった面々が失神した。
「そうなのか、そうなのか、そうなのか、そうなのか、そうなのかあ」
「はあ、はあ。ご静聴ありがとうございました。以上八雲紫のマネです」
「アンコール、アンコール」
腹立たしいのは、狐が僕にあるまじき醜態を曝したことに限らない。物真似があまりにも素晴らしいのだ。自分自身でさえ感心してしまった。
「幽々子」
「な、何?」
平静を装おうとしながらも腹を抱えて涙している幽々子にまた失望した。アホな狐のせいでプラトニックな信頼が失われたのである。
「あと、あの人は奇妙な癖がありましてねえ」
あ、まさか。あれを言うつもりか。
「寝る前に両かかとを頭の後ろに持って行きまして、さらに両手は法衣の中に突っ込み。うーん。ここからは実演いたします」
藍が宙返りと共に奇声を上げて、紫の癖を再現し始めた。
やられた。どうしてあれがばれたものか。
紫は静かに新たな隙間を開き肩を震わせている幽々子を白玉楼に帰した。
この際、幽々子が「もっと見る」と駄々をこねたのは言うまでもない。
あまりに奇妙な藍の振る舞いに一同は愕然としていた。
突如霊夢が藍の尻尾を掴み、それに乗じてルーミアも別の尻尾に噛み付く。
「本当に紫がそんなことするか? 藍。またまたほら吹いたな」
「しますよ、今までの全部本当。何回でもします。見ましたから間違いない。本当にする。痛い、痛い」
野郎、殺す。紫の手の中のコップが粉々に砕けた。
「それじゃあ、最後にイリュージョンやります」
藍が尻尾からルーミアの顔を外し、代わりとばかりに近くの油揚げ(宙返りした際飛んだ)を彼女の口へと突っ込み再び立ち上がる。
「待ってましたあ」
「よっ、大取」
「頼んだぜ、天狐」
藍が法衣に手をかけた。
「おっし。3、2、1、きえいやあ」
「うおお」
法衣を吹き飛ばして半裸になった藍は怒号と共に飛び上がり、上空にて三回転し、そして消えた。
「おおっ、本当に消えたぜ」
「お見事お」
藍はそれきり酒宴に姿を見せなかったが、これを気に留めた者は酔っぱらいの内一人もいなかった。
彼女らは相当量の酒を飲んでいたため、藍が消えてから間もなく全員酔いつぶれた。
「そうなのか、そうなのか」
急に閉所の中に転げ込んだ藍の頭を後ろから紫の手が掴んだ。
「イリュージョンの途中でさあ。誰だよ、おい。んあ」
振り返った藍の帽子がぱさりと音を立てて落ちる。
「あ」
「酔い、覚めた?」
藍は頭をちぎらんばかりに首肯した。
「そう。それはいけないわね。今は宴会の最中なのよ」
「ご、おお」
恐怖の余りか謝罪の言葉が出てこない。
「私の宴会芸、幽々子に見てもらうつもりだったんだけど帰っちゃった」
「ごお」
紫が一升瓶に残った酒をゆっくりと飲み干す。
「四番、紫。弾幕結界」
ただ、多少ばかり文が足りず、伝わりにくい部分があります。
それが改善されると、さらに良い作品になると思います。
やだなあ、もう。
一升瓶でラッパ飲みのあれかwww
面子のセレクトもまた素晴らしい。
さりげなく、ゆかゆゆ要素満載なところもビビっと来てしまいました