夜の博霊神社、来る人も少なく、ほとんど静かな所である。
住んでいる巫女が言うには妖怪なら沢山来るらしい。
その神社も今日は少し騒がしかった。
「藍、そっちは手がかりはあったの?」
「……」
重い沈黙が質問を肯定する。
「あいつのことだもの、どっかにはいるはずよ」
勘で感じているのか、自信がある霊夢。だが表情は少し陰っていた
「かもしれない…」
対する藍は俯いて表情が見えない。
「藍、アンタがそんなことでどうするのよ!」
霊夢は藍を叱咤する。
「…すまん」
「…はぁ、ごめんなさい。アンタに怒ったって仕様が無いのよね」
「……すまん」
藍の声色がますます陰る。
「…よし、今日はもう寝る」
「そうか…手伝わせてすまなかった」
「…」
霊夢は無言で藍を見る
藍は何かいるのかと周囲を見渡すが周囲に異常は感じられなかった。
「何?」
「口調」
「口調?」
「もうちょっと柔らかくできないの?ガッチガチでこっちも疲れてくるわ」
「すまない…」
「はぁ…まぁいいわ、明日また探しましょう」
「あぁ…」
藍もマヨヒガに戻ろうと踵を返す。
そこに思い出したように霊夢が語りかける
「八雲藍」
藍は立ち止まって霊夢の方へ振り返り、次の言葉を待つ。
「無理はしすぎない事、夜中にアンタの気配がしたら強制的に寝かしに行くわよ?」
「…感謝する」
そう言って藍はマヨヒガに向けて飛び去って行った。
その背中に向かって霊夢は独り言を漏らす
「…はぁ、あれは重症ね」
霊夢は勘が鋭いので相手の体調もなんとなくはわかるのだった。
しかし、今の藍は誰が見ても分かるほどに疲れていた。
「……寝よ」
霊夢は寝室へ向かって歩きながら最近の事を思い出していた。
紫が突如消息を絶ってから二ヶ月弱が経過していた。
ある日突然書き置きも無く紫は何処かへ居なくなった。
マヨヒガに藍と橙を残して。
最初は誰もが何時もの気まぐれだと思っていた。
だが二週間をすぎた頃事態は急変した。
藍との式を通じてのリンクが切断されたのである。
藍は霊夢に相談をし、捜索に乗り出たのであったが、手掛かりすら見つけられない様な状況であった。
失踪から一ヶ月を過ぎた頃、流石に違和感を感じたのか一人の妖怪と一人の亡霊が神社に訪ねて来た。
花の妖怪である風見幽香と紫の友人である西行寺幽々子であった。
二人は霊夢に紫の居場所を尋ねてきたのであった。
今更隠す事でも無い、と霊夢は全て話した。
聞いた二人は少し思案顔になり、ひと言残して自分達の居場所に戻って行った。
幽香は「どうせそのうち帰ってくるわ」と。
幽々子は「旅行ならお土産もあるかしら?」と。
霊夢は二人が去った後、また紫を探しに空に飛び出して行った。
幽々子はその日以降、妖夢に「お散歩に行ってくるわ~」等と告げ、紫が行きそうな所を回ることが習慣になっていた。
全ては「親愛なる友人」を。否、『無二の親友』を心配しての事だった。
幽香は夢幻館近くの向日葵畑に行ってある妖怪を探し、捕まえた。
捕まった相手は「呼べば行くのに」と不満そうに幽香と対面した。
虫の王、つまりリグル・ナイトバグ彼女であった。
幽香は偉そうに虫の王にあの「嫌な奴」を。『無二の好敵手』を探せと命令した。
虫の王は寛大と言うよりは、寛容だったようで「幽香のお願いなら」と易々と承諾したのだった。
リグルはできるだけ響くように口笛を吹いた。
その数瞬後、森がざわめきだした。
それに合わせるように幽香も幻想郷中の花々に紫を探すように命ずる。
虫の王は威厳をもって、「これでしばらく経てば結果がわかるはずだよ」と幽香に話しかけたが「そう…」と言う返答が返ってきただけであった。
今の幽香は『無二の好敵手』の行方だけしか考えていなかった。あの憎たらしくも愛しい好敵手の行方だけを考えていた。
そのおかげか、横で虫の王が「…重症だね」と呟いたのは聞こえなかった様である。
当然霊夢も何もしなかった訳では無い。
紫の居そうな所、行きそうな所は全部まわったし、それ以外も探して回った。
他の暇そうな奴等にも協力を頼んだが見つかっていない。
だが霊夢にはもう一つ心配事があった。
藍の事であった。
紫が居なくなって一番不安なのはきっと藍のはず。少なくとも霊夢はそう考えていた。
この前マヨヒガに行った時は疲れているはずなのに橙を心配させたくは無いのか、普通に振る舞っていた。
九尾の狐といえども肉体、精神疲労共に大きい状態で普通に人を騙せる筈もない。
最近の藍は無茶をしすぎている。それが霊夢には心配であった。
明日はついに紫が失踪してから二ヶ月目に入る。
明日は捜索の中心となっていた、霊夢、藍、幽香、幽々子の四人が神社で話し合う事になっていた。
明日の事を心配しながらも霊夢は眠りにつくのであった。
翌日、博霊神社には一人の人間と二人の妖怪と一人の亡霊がいた。
「さて、紫がどこへ行ったかなんだけど…」
霊夢が話しを始める。
「行きそうな所へは全部行ったわ」
次に幽々子が報告する。
「私もです…」
藍が浮かばない表情で告げる。
「幽香は?」
霊夢が幽香に問う。
「だから、いつか帰ってくるって言ってるじゃない。それとも霊夢は早く帰ってきて欲しいのかしら?」
「…どういう意味?」
少しドスのきいた声で霊夢が問う。
「あら?最近アイツにお熱だと思ってたけど違ったかしら?それで寂しいから帰って来てほしいのかとおもったわ」
「ッ!!!そんな意味じゃないわよ!!」
「あらあら、そうよね~霊夢が紫にお熱だなんてそんなこと…」
幽香はくすくすと笑う。
「幽香」
「何かしら?」
「表に出なさい」
「あらあら野蛮ねぇ、まぁいいけど。いいわ、暇だから付き合ってあげる」
二人は神社の境内で向かい合う。身構える霊夢とは裏腹に幽香は日傘も差したままで余裕である。
そんな様子に霊夢の怒りも肥大してゆく。
「あらあらそんなに怒っちゃって。何か気に食わない所があったのならお詫びいたしますわ」
「ッ!!!全部が気に食わないって言ってんのよッ!!」
幽香の挑発を切っ掛けに霊夢は幽香に殴りかかる。
「それは仕方の無い事ですわ!」
幽香は霊夢の拳に合わせる様に自分の拳を放つ。
―― 「あらあら、殴り合いなんて美しくは無いわよ?」
言葉と同時に二人の拳の前にスキマが開かれ、激突が防がれる。
二人の拳がぶつかりあう寸前の事だった。
その場に居た幽香以外の三人が信じられない様な顔で紫を見つめる。
「「「ゆ、紫(様)!!!!!」」」
「はぁ~い、霊夢それに藍に幽々子に幽香まで。一体なんの騒ぎかしら?」
サンセットなアロハシャツに短パンと言う格好の紫は呑気に言う。
「紫、邪魔しないで頂戴」
「幽香、霊夢を殺そうとしないで頂戴」
「ふん」
幽香はせっかくの勝負が等とぶつぶつと呟きながらそっぽへ向く。
一番先に我に返った霊夢が紫に問い詰める。
「ちょっと紫!何処へ行ってたのよ!!」
「何処って…幽香から聞いてなかったの?」
そう言って紫は幽香の方を見る。
「ゆう…か…?」
霊夢もギギギとぎこちなく幽香の方へ首を向ける。
「あら?だって何度も言ったじゃない。帰ってくるって」
「ッ!!アンタは説明不足で信用出来なさ過ぎなのよッッ!!!!」
「あらひどいわね」
霊夢は紫に向き直る。
「それで。どこ行ってたわけ?」
「あぁ!それなのよ~ちょっとハワイに行ってたのよ~ほら、この前言った外界のリゾート地。今回はお土産もあるのよ~
ほらこの紅白のアロハシャツ、霊夢に似合うかとおもって「紫」なによ」
幽香が割って入る。
「いいからとっととアレよこしなさい。」
「あぁこれね。外界の花の種、はいどうぞ」
「ありがと、じゃぁ私は帰るわね」
「幽香、貴女にも他のお土産あるのよ?」
「どんなのよ」
「えーっとこれねギャn「アンタら…」…霊夢?」
霊夢は俯いて居た為表情は分からなかったが、体からは殺意の波動が滲み出ていた。
霊夢の腕が上がったとおもった次の瞬間、紫と幽香は神社の境内で磔にされていた。
「え?なに?」
「紫…」
「え、はい…」
霊夢の放つ殺気は紫さえも敬語にさせる程だった。
「幽香…」
「霊夢、さっさと放してくれない…?」
幽香すらも弱気気味だった。
「一発なぐらせて」
ハートマークが付いてそうな可愛さでとんでもない事を言う霊夢。
「ええ!!!??」
「幽々子と藍もやるわよね?」
「ええ、やるわ」
「…失礼します」
「あ…ああ…」
紫と幽香の顔はみるみるうちに恐怖に染まっていく。目の前には処刑人。
「さぁいくわよ」
最高の可愛さで言い放つ霊夢。
「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!」」
合掌。
数時間後、神社にはぐったりとした二人を回収する為、リグルと藍が来ていた。
二人はそれぞれ回収作業を進めながら少し話をしていた。
「お互いに大変な人と出会ったものだな」
「そうですね~。あ、でも幽香は意外と優しいんですよ?」
「ふむ、そんな一面があったとは…」
「それでも大変なのは変わりませんけどね」
そう苦笑気味にリグルは言った。
はぁ…と二人同時にため息を吐く。
「じゃぁ私はお先に~」
「ああ、いつか酒でも飲もう」
「ええ、ではまた」
聞き耳を立てると「また迷惑かけて」とか、「リグル、今回は流石に怖かったわ」とか
「そうだろうね」等や、「だからリグルを抱き枕にして寝るわ」等や「別にかまわないよ」等の甘い会話が聞こえるが無視する。
ピロートークである、聞いてはならない。
藍は降ろし終えた主をおぶって歩き出す。
なぜ飛ばないのかと聞かれると、そういう気分だったからである。
冷たい夜風におぶっている主の体温が心地よい
「ら~ん」
どうやら主がお目覚めらしい。
「紫様、どうされました?家まではまだ遠めですよ」
「勝手に行ってごめんなさい」
なんだそんなことですか、と藍は内心で肩を竦める。
「紫様がご無事であればそれでいいです。それに何か御用事があったのでしょう?」
「藍…」
紫は少し開けてから喋り出す。
「はい、なんでしょう」
「人がいっぱい死んだわ…」
紫は目をつぶって瞑想するように言う。
「そうですか。お辛かったでしょう、今日は早めにお休みください」
「ねぇ、藍」
「はい」
「お姫様抱っことかしてくれないの?」
主らしくない発言に少し驚いた藍だったがそれもいいか、と思いすぐにいわゆるお姫様抱っこの体制にして歩き出した。
「ふふ」
いきなりくすくすと笑いだした主を不審に思う藍。
「どうされました?」
「いえ、こうしてると新婚の夫婦みたいだと思って…ふふ」
藍は呆れた顔をした後、思いついた様に言う
「なら旦那様は紫様ですね」
「あら、どうして?」
「仕事もして頂けないグータラ亭主様って事です」
「まぁ、ひどいわ、藍」
「二か月も妻を放置したのは誰ですか、浮気するかもしれませんよ?」
にや、と藍は艶やかに笑う。
「その相手から貴女を奪い返すから別にいいのよ」
「大した自信ですね」
「そうでもありませんわ」
紫は口元を手で隠して、オホホとわざとらしい笑い方をする。
「さぁ、我妻よ、ここは寒いわ。家に急いで頂戴」
「承知いたしましたよ旦那様」
月夜に自身の財宝を抱えた狐が翔ける。
住んでいる巫女が言うには妖怪なら沢山来るらしい。
その神社も今日は少し騒がしかった。
「藍、そっちは手がかりはあったの?」
「……」
重い沈黙が質問を肯定する。
「あいつのことだもの、どっかにはいるはずよ」
勘で感じているのか、自信がある霊夢。だが表情は少し陰っていた
「かもしれない…」
対する藍は俯いて表情が見えない。
「藍、アンタがそんなことでどうするのよ!」
霊夢は藍を叱咤する。
「…すまん」
「…はぁ、ごめんなさい。アンタに怒ったって仕様が無いのよね」
「……すまん」
藍の声色がますます陰る。
「…よし、今日はもう寝る」
「そうか…手伝わせてすまなかった」
「…」
霊夢は無言で藍を見る
藍は何かいるのかと周囲を見渡すが周囲に異常は感じられなかった。
「何?」
「口調」
「口調?」
「もうちょっと柔らかくできないの?ガッチガチでこっちも疲れてくるわ」
「すまない…」
「はぁ…まぁいいわ、明日また探しましょう」
「あぁ…」
藍もマヨヒガに戻ろうと踵を返す。
そこに思い出したように霊夢が語りかける
「八雲藍」
藍は立ち止まって霊夢の方へ振り返り、次の言葉を待つ。
「無理はしすぎない事、夜中にアンタの気配がしたら強制的に寝かしに行くわよ?」
「…感謝する」
そう言って藍はマヨヒガに向けて飛び去って行った。
その背中に向かって霊夢は独り言を漏らす
「…はぁ、あれは重症ね」
霊夢は勘が鋭いので相手の体調もなんとなくはわかるのだった。
しかし、今の藍は誰が見ても分かるほどに疲れていた。
「……寝よ」
霊夢は寝室へ向かって歩きながら最近の事を思い出していた。
紫が突如消息を絶ってから二ヶ月弱が経過していた。
ある日突然書き置きも無く紫は何処かへ居なくなった。
マヨヒガに藍と橙を残して。
最初は誰もが何時もの気まぐれだと思っていた。
だが二週間をすぎた頃事態は急変した。
藍との式を通じてのリンクが切断されたのである。
藍は霊夢に相談をし、捜索に乗り出たのであったが、手掛かりすら見つけられない様な状況であった。
失踪から一ヶ月を過ぎた頃、流石に違和感を感じたのか一人の妖怪と一人の亡霊が神社に訪ねて来た。
花の妖怪である風見幽香と紫の友人である西行寺幽々子であった。
二人は霊夢に紫の居場所を尋ねてきたのであった。
今更隠す事でも無い、と霊夢は全て話した。
聞いた二人は少し思案顔になり、ひと言残して自分達の居場所に戻って行った。
幽香は「どうせそのうち帰ってくるわ」と。
幽々子は「旅行ならお土産もあるかしら?」と。
霊夢は二人が去った後、また紫を探しに空に飛び出して行った。
幽々子はその日以降、妖夢に「お散歩に行ってくるわ~」等と告げ、紫が行きそうな所を回ることが習慣になっていた。
全ては「親愛なる友人」を。否、『無二の親友』を心配しての事だった。
幽香は夢幻館近くの向日葵畑に行ってある妖怪を探し、捕まえた。
捕まった相手は「呼べば行くのに」と不満そうに幽香と対面した。
虫の王、つまりリグル・ナイトバグ彼女であった。
幽香は偉そうに虫の王にあの「嫌な奴」を。『無二の好敵手』を探せと命令した。
虫の王は寛大と言うよりは、寛容だったようで「幽香のお願いなら」と易々と承諾したのだった。
リグルはできるだけ響くように口笛を吹いた。
その数瞬後、森がざわめきだした。
それに合わせるように幽香も幻想郷中の花々に紫を探すように命ずる。
虫の王は威厳をもって、「これでしばらく経てば結果がわかるはずだよ」と幽香に話しかけたが「そう…」と言う返答が返ってきただけであった。
今の幽香は『無二の好敵手』の行方だけしか考えていなかった。あの憎たらしくも愛しい好敵手の行方だけを考えていた。
そのおかげか、横で虫の王が「…重症だね」と呟いたのは聞こえなかった様である。
当然霊夢も何もしなかった訳では無い。
紫の居そうな所、行きそうな所は全部まわったし、それ以外も探して回った。
他の暇そうな奴等にも協力を頼んだが見つかっていない。
だが霊夢にはもう一つ心配事があった。
藍の事であった。
紫が居なくなって一番不安なのはきっと藍のはず。少なくとも霊夢はそう考えていた。
この前マヨヒガに行った時は疲れているはずなのに橙を心配させたくは無いのか、普通に振る舞っていた。
九尾の狐といえども肉体、精神疲労共に大きい状態で普通に人を騙せる筈もない。
最近の藍は無茶をしすぎている。それが霊夢には心配であった。
明日はついに紫が失踪してから二ヶ月目に入る。
明日は捜索の中心となっていた、霊夢、藍、幽香、幽々子の四人が神社で話し合う事になっていた。
明日の事を心配しながらも霊夢は眠りにつくのであった。
翌日、博霊神社には一人の人間と二人の妖怪と一人の亡霊がいた。
「さて、紫がどこへ行ったかなんだけど…」
霊夢が話しを始める。
「行きそうな所へは全部行ったわ」
次に幽々子が報告する。
「私もです…」
藍が浮かばない表情で告げる。
「幽香は?」
霊夢が幽香に問う。
「だから、いつか帰ってくるって言ってるじゃない。それとも霊夢は早く帰ってきて欲しいのかしら?」
「…どういう意味?」
少しドスのきいた声で霊夢が問う。
「あら?最近アイツにお熱だと思ってたけど違ったかしら?それで寂しいから帰って来てほしいのかとおもったわ」
「ッ!!!そんな意味じゃないわよ!!」
「あらあら、そうよね~霊夢が紫にお熱だなんてそんなこと…」
幽香はくすくすと笑う。
「幽香」
「何かしら?」
「表に出なさい」
「あらあら野蛮ねぇ、まぁいいけど。いいわ、暇だから付き合ってあげる」
二人は神社の境内で向かい合う。身構える霊夢とは裏腹に幽香は日傘も差したままで余裕である。
そんな様子に霊夢の怒りも肥大してゆく。
「あらあらそんなに怒っちゃって。何か気に食わない所があったのならお詫びいたしますわ」
「ッ!!!全部が気に食わないって言ってんのよッ!!」
幽香の挑発を切っ掛けに霊夢は幽香に殴りかかる。
「それは仕方の無い事ですわ!」
幽香は霊夢の拳に合わせる様に自分の拳を放つ。
―― 「あらあら、殴り合いなんて美しくは無いわよ?」
言葉と同時に二人の拳の前にスキマが開かれ、激突が防がれる。
二人の拳がぶつかりあう寸前の事だった。
その場に居た幽香以外の三人が信じられない様な顔で紫を見つめる。
「「「ゆ、紫(様)!!!!!」」」
「はぁ~い、霊夢それに藍に幽々子に幽香まで。一体なんの騒ぎかしら?」
サンセットなアロハシャツに短パンと言う格好の紫は呑気に言う。
「紫、邪魔しないで頂戴」
「幽香、霊夢を殺そうとしないで頂戴」
「ふん」
幽香はせっかくの勝負が等とぶつぶつと呟きながらそっぽへ向く。
一番先に我に返った霊夢が紫に問い詰める。
「ちょっと紫!何処へ行ってたのよ!!」
「何処って…幽香から聞いてなかったの?」
そう言って紫は幽香の方を見る。
「ゆう…か…?」
霊夢もギギギとぎこちなく幽香の方へ首を向ける。
「あら?だって何度も言ったじゃない。帰ってくるって」
「ッ!!アンタは説明不足で信用出来なさ過ぎなのよッッ!!!!」
「あらひどいわね」
霊夢は紫に向き直る。
「それで。どこ行ってたわけ?」
「あぁ!それなのよ~ちょっとハワイに行ってたのよ~ほら、この前言った外界のリゾート地。今回はお土産もあるのよ~
ほらこの紅白のアロハシャツ、霊夢に似合うかとおもって「紫」なによ」
幽香が割って入る。
「いいからとっととアレよこしなさい。」
「あぁこれね。外界の花の種、はいどうぞ」
「ありがと、じゃぁ私は帰るわね」
「幽香、貴女にも他のお土産あるのよ?」
「どんなのよ」
「えーっとこれねギャn「アンタら…」…霊夢?」
霊夢は俯いて居た為表情は分からなかったが、体からは殺意の波動が滲み出ていた。
霊夢の腕が上がったとおもった次の瞬間、紫と幽香は神社の境内で磔にされていた。
「え?なに?」
「紫…」
「え、はい…」
霊夢の放つ殺気は紫さえも敬語にさせる程だった。
「幽香…」
「霊夢、さっさと放してくれない…?」
幽香すらも弱気気味だった。
「一発なぐらせて」
ハートマークが付いてそうな可愛さでとんでもない事を言う霊夢。
「ええ!!!??」
「幽々子と藍もやるわよね?」
「ええ、やるわ」
「…失礼します」
「あ…ああ…」
紫と幽香の顔はみるみるうちに恐怖に染まっていく。目の前には処刑人。
「さぁいくわよ」
最高の可愛さで言い放つ霊夢。
「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!」」
合掌。
数時間後、神社にはぐったりとした二人を回収する為、リグルと藍が来ていた。
二人はそれぞれ回収作業を進めながら少し話をしていた。
「お互いに大変な人と出会ったものだな」
「そうですね~。あ、でも幽香は意外と優しいんですよ?」
「ふむ、そんな一面があったとは…」
「それでも大変なのは変わりませんけどね」
そう苦笑気味にリグルは言った。
はぁ…と二人同時にため息を吐く。
「じゃぁ私はお先に~」
「ああ、いつか酒でも飲もう」
「ええ、ではまた」
聞き耳を立てると「また迷惑かけて」とか、「リグル、今回は流石に怖かったわ」とか
「そうだろうね」等や、「だからリグルを抱き枕にして寝るわ」等や「別にかまわないよ」等の甘い会話が聞こえるが無視する。
ピロートークである、聞いてはならない。
藍は降ろし終えた主をおぶって歩き出す。
なぜ飛ばないのかと聞かれると、そういう気分だったからである。
冷たい夜風におぶっている主の体温が心地よい
「ら~ん」
どうやら主がお目覚めらしい。
「紫様、どうされました?家まではまだ遠めですよ」
「勝手に行ってごめんなさい」
なんだそんなことですか、と藍は内心で肩を竦める。
「紫様がご無事であればそれでいいです。それに何か御用事があったのでしょう?」
「藍…」
紫は少し開けてから喋り出す。
「はい、なんでしょう」
「人がいっぱい死んだわ…」
紫は目をつぶって瞑想するように言う。
「そうですか。お辛かったでしょう、今日は早めにお休みください」
「ねぇ、藍」
「はい」
「お姫様抱っことかしてくれないの?」
主らしくない発言に少し驚いた藍だったがそれもいいか、と思いすぐにいわゆるお姫様抱っこの体制にして歩き出した。
「ふふ」
いきなりくすくすと笑いだした主を不審に思う藍。
「どうされました?」
「いえ、こうしてると新婚の夫婦みたいだと思って…ふふ」
藍は呆れた顔をした後、思いついた様に言う
「なら旦那様は紫様ですね」
「あら、どうして?」
「仕事もして頂けないグータラ亭主様って事です」
「まぁ、ひどいわ、藍」
「二か月も妻を放置したのは誰ですか、浮気するかもしれませんよ?」
にや、と藍は艶やかに笑う。
「その相手から貴女を奪い返すから別にいいのよ」
「大した自信ですね」
「そうでもありませんわ」
紫は口元を手で隠して、オホホとわざとらしい笑い方をする。
「さぁ、我妻よ、ここは寒いわ。家に急いで頂戴」
「承知いたしましたよ旦那様」
月夜に自身の財宝を抱えた狐が翔ける。
その他もろもろ説明不足のところが多すぎる気がします。
もう少し説明がほしかった。
それさえわかれば、良い作品だと思います。
あと、紫は幽々子や藍には先に言っておくはずだと思います。
紫の行動にわずかながら違和感が感じられました。
Get Back いいよね!
その内ジョンとジョージも紫みたいにふらっと帰ってくるような予感がする。
幽香はそれに気付いて話を合わせたのか。
全体的にちょっと説明不足な感があります。
ただ他の方も仰ってる通り、説明不足、違和感(ゆうかりんに言って他のメンツには言わないとか)で台無しになっちゃってるのかも。
キャラに対しての説明不足がないと話が展開出来ないんだろうけど、
読み手に対しての説明不足はまた別の話だと思うんだ。
意味不明の部分をなくせれば、100点。
原因としては人がかなりの数死んだということに起因があるのかもしれませんが、
それも私の予想でしかありませんから、明確な理由が欲しいです。
と、いうか何故ハワイ?(苦笑)
お話としては良い物なんですが、そういう部分が不明確でしたねぇ…。
藍とのやりとりも良かったです。
曲を知ってたらその穴も塞がったのでしょうか?
少なくとも何も報告しなかった負い目を感じているからでしょ。
後俺だったら重要な事は「無二の好敵手」より「無二の親友」に伝えておく。
・ゆかりんは藍にも幽々子にも何も言わず、幽香りんにだけ戦争又はハワイに遊びに行くことを伝えた
(幽香りんはそれを隠す為にリグルを呼んでまでゆかりんを探す振りをした)
・幽香りんはリグルを通して何らかの手段ゆかりんと連絡を取り、戦争に行っていることを知った
式のリンクが切れたのは戦争で消耗したからだと考えれば不思議じゃないんだけど、ここだけが謎です。でも妄想も刺激されるので良いですね。
話の全体の雰囲気も凄く好みでした。GJ。
唐突な大勢の人が死んだというセリフとか。
お願いだからこの謎を解明して欲しい! と切に願います。
戦闘行動中ならMIAっていう便利な言葉があるから餌用人間収集に苦労はしないね。
楽園にいようと地獄にいようと育った故郷がなんだかんだいって最高って事でしょうか。